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  • 特開-半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-半導体装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097809
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
H01L23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210969
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴斗
(72)【発明者】
【氏名】藤井 芳雄
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パッケージ基材から分離してワイヤのみで保持されている簡便な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】中空パッケージ内で、パッケージ基材1上に水溶性樹脂5を介して半導体素子2を接着する。その後、半導体素子2とパッケージ基材1をワイヤ4で接続する。水により浸漬させて水溶性樹脂5を除去することで、半導体素子2をワイヤ4のみで保持する構成の半導体装置を形成する。
【効果】中空パッケージ内に水溶性樹脂5が残留しないため、半導体素子2が汚染されることがない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空パッケージ内で、半導体素子の電極がパッケージ基材上の電極にワイヤにより接続され、前記半導体素子は前記パッケージ基材から分離して前記ワイヤのみで保持されている半導体装置の製造方法において、
前記パッケージ基材上に水溶性樹脂を塗布する工程と、
前記水溶性樹脂上に前記半導体素子を接着させる工程と、
前記半導体素子の前記電極と前記パッケージ基材上の前記電極とを前記ワイヤで接続する工程と、
前記水溶性樹脂を除去し、前記半導体素子を前記パッケージ基材から分離する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体素子を前記パッケージ基材から分離する工程は、前記半導体素子の前記電極と前記パッケージ基材上の前記電極とを前記ワイヤで接続した後、前記半導体素子および前記パッケージ基材を水あるいは親水性溶媒に浸漬させ、前記水溶性樹脂を除去する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法、特に中空パッケージ内で半導体素子をワイヤにより接続する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は、回路実装技術の向上により高密度実装品が増えるとともに、小型化の要求が強くなっている。また、IoT向けの技術開発が進む中で、電子部品においては、小型化の要求だけに留まらず、多様なパッケージ形状、過酷な使用環境など、多種多様な対応を行う必要がある。
【0003】
ところで、半導体装置の使用環境温度としては、従来の150℃程度から300℃以上の高温でも耐え得るものが求められている。しかし、高温の環境下において、半導体装置に熱ストレスが加わると、例えばセラミック等からなる基板の応力が半導体素子に付加され、半導体装置の特性が変動してしまうという問題があった。
【0004】
そこで本願出願人は、中空パッケージ内で、半導体素子の電極がパッケージ基材上の電極がワイヤにより接続され、半導体素子がパッケージ基材から分離してワイヤのみで保持された構造の半導体装置およびその製造方法を開示した(特許文献1)。
【0005】
本願出願人が先に提案した製造方法を図2に示す。まず、中空パッケージを構成するパッケージ基材1上に半導体素子2を樹脂3で取り付け、この半導体素子2の電極をパッケージ基材1上の電極にワイヤ4により接続する(図2a)、その後、昇温と降温の処理を施すことにより硬化した樹脂3を破断し、樹脂3の硬化部に隙間Sを形成する(図2b)。この隙間Sが形成されることで、半導体素子2をワイヤ4のみで保持する構造となり、パッケージ基材1の応力は半導体素子2に付加されず、熱ストレスによる半導体素子2への影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-88047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで本願出願人が先に提案した半導体装置の製造方法は、隙間Sを形成するために、高温で長時間の熱処理を必要とし製造コストの増加につながってしまう。またこの熱処理の際に樹脂3から発生するアウトガスにより半導体素子2が汚染されてしまうという問題があった。本発明はこれらの問題点を解決し、パッケージ基材から分離してワイヤのみで保持されている簡便な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、中空パッケージ内で、半導体素子の電極がパッケージ基材上の電極にワイヤにより接続され、前記半導体素子は前記パッケージ基材から分離して前記ワイヤのみで保持されている半導体装置の製造方法において、前記パッケージ基材上に水溶性樹脂を塗布する工程と、前記水溶性樹脂上に前記半導体素子を接着させる工程と、前記半導体素子の前記電極と前記パッケージ基材上の前記電極とを前記ワイヤで接続する工程と、前記水溶性樹脂を除去し、前記半導体素子を前記パッケージ基材から分離する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体素子を前記パッケージ基材から分離する工程は、前記半導体素子の前記電極と前記パッケージ基材上の前記電極とを前記ワイヤで接続した後、前記半導体素子および前記パッケージ基材を水あるいは親水性溶媒に浸漬させ、前記水溶性樹脂を除去する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水溶性樹脂を用いてパッケージ基材上に半導体素子を接着させるため、水溶性樹脂を除去するのみで半導体素子をパッケージ基材から分離されることができる。水溶性樹脂の除去は、水あるいは親水性溶媒に浸漬させるだけでよく、簡便な方法である。
【0011】
また、中空パッケージ内に水溶性樹脂が残留しないため、半導体素子が汚染されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図2】従来の半導体装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、中空パッケージ内で、半導体素子がパッケージ基材から分離し、ワイヤのみで保持されている半導体装置を簡便に形成できる製造方法であり、特に、水溶性樹脂を用いた製造方法である。
【実施例0014】
本発明の実施例について説明する。まず、セラミック等からなるパッケージ基材1に水溶性樹脂5を塗布する(図1a)。この水溶性樹脂は、紫外線を照射させることで硬化し、硬化後であっても水あるいは親水性溶媒で除去することができるものである。例えばこの種の水溶性樹脂は、特開2020-122120号公報に開示されているものを使用することができる。
【0015】
次に水溶性樹脂5上に半導体素子2を載置した後、照射条件500~2000mJ/cmで紫外線を照射し、水溶性樹脂5を硬化させる。(図1b)。この水溶性樹脂5の硬化により半導体素子2がパッケージ基材1に確実に接着する。
【0016】
その後、アルミニウムや銅のワイヤ4によって、半導体素子2の上面の電極とパッケージ基材1の電極を接続する(図1c)。このワイヤ4による接続は、半導体素子2が確実にパッケージ基材1に接着しているため可能となっている。
【0017】
次に半導体素子2およびパッケージ基材1を水中に浸し、3~10分間程度の超音波洗浄を行い、硬化した水溶性樹脂5を除去することで、半導体素子2をパッケージ基材1から分離し、半導体素子2をワイヤ4のみで保持する構造とする(図1d)。ここで水溶性樹脂5を除去する溶媒は水に限らず、親水性溶媒であってもよい。
【0018】
最後にリッド6を接着材によってパッケージ基材1の上部に取り付け、半導体装置を完成させる(図1e)。
【0019】
このように本発明によれば、従来のように高温で長時間の熱処理を行うことなく、中空パッケージ内で、半導体素子がパッケージ基材から分離され、ワイヤのみで保持されている半導体装置を形成することが可能となる。また水溶性樹脂が中空パッケージ内に残留することがないため、高温環境下において樹脂から発生するアウトガスによる半導体素子の汚染を防止することが可能となる。
【0020】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、水溶性樹脂は半導体素子2をパッケージ基材1上に接着させることができ、水等に溶解することで除去することが可能な樹脂であれば紫外線の照射により硬化する樹脂に限らない。具体的には、熱硬化型の水溶性樹脂や不完全に硬化した水溶性樹脂等を用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
1:パッケージ基材、2:半導体素子、3:樹脂、4:ワイヤ、5:水溶性樹脂、6:リッド、S:隙間
図1
図2