(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097880
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】移動式水素供給設備
(51)【国際特許分類】
F17C 13/12 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
F17C13/12 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211115
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 広喜
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB20
3E172BA01
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA23
3E172EA35
3E172JA05
3E172KA03
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】安全性に優れ、なお且つ、コストの低減が可能な移動式水素供給設備を提供する。
【解決手段】水素供給配管4から分岐して設けられた水素放出配管6と、水素放出配管6を閉塞するガス作動式安全弁8と、ガス作動式安全弁8を作動させる作動ガスG1をガス作動式安全弁8に供給する作動ガス供給配管10と、蓄圧器2の周囲に1つ以上配置されて、作動ガス供給配管10を閉塞する熱作動式安全弁12とを備え、蓄圧器2の周囲が特定の温度まで上昇したときに、熱作動式安全弁12が作動ガス供給配管10を開放し、作動ガス供給配管10を介してガス作動式安全弁8に作動ガスG1が供給されることによって、ガス作動式安全弁8が水素放出配管6を開放し、蓄圧器2内の水素が水素放出配管6を介して外部へと放出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を供給する設備として移動可能とされた移動式水素供給設備であって、
水素を蓄圧した状態で貯留する蓄圧器と、
前記蓄圧器に貯留された水素を車両に搭載された車載タンクに充填するディスペンサと、
前記蓄圧器から前記ディスペンサへと水素を供給する水素供給配管と、
前記水素供給配管から分岐して設けられた水素放出配管と、
前記水素放出配管を閉塞するガス作動式安全弁と、
前記ガス作動式安全弁を作動させる作動ガスを前記ガス作動式安全弁に供給する作動ガス供給配管と、
前記蓄圧器の周囲に1つ以上配置されて、前記作動ガス供給配管を閉塞する熱作動式安全弁とを備え、
前記蓄圧器の周囲が特定の温度まで上昇したときに、前記熱作動式安全弁が前記作動ガス供給配管を開放し、前記作動ガス供給配管を介して前記ガス作動式安全弁に作動ガスが供給されることによって、前記ガス作動式安全弁が前記水素放出配管を開放し、前記蓄圧器内の水素が前記水素放出配管を介して外部へと放出されることを特徴とする移動式水素供給設備。
【請求項2】
前記水素供給配管を開閉する1つ以上の開閉弁を備え、
前記水素放出配管は、前記水素供給配管の前記開閉弁よりも前記蓄圧器側から分岐して設けられていることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の移動式水素供給設備。
【請求項3】
水素を供給する設備として移動可能とされた移動式水素供給設備であって、
水素を蓄圧した状態で貯留する蓄圧器と、
前記蓄圧器に貯留された水素を車両に搭載された車載タンクに充填するディスペンサと、
前記蓄圧器から前記ディスペンサへと水素を供給する水素供給配管と、
前記水素供給配管から分岐して設けられた水素放出配管と、
前記水素放出配管を閉塞するガス作動式安全弁と、
前記蓄圧器と前記水素放出配管との間に配置されて、前記水素供給配管を開閉するガス作動式開閉弁と、
前記ガス作動式安全弁を作動させる計装ガスを前記ガス作動式安全弁に供給する一方の計装ガス供給配管と、
前記ガス作動式開閉弁を作動させる計装ガスを前記ガス作動式開閉弁に供給する他方の計装ガス供給配管と、
前記一方の計装ガス供給配管に設けられた一方のガス作動式三方弁と、
前記他方の計装ガス供給配管に設けられた他方のガス作動式三方弁と、
前記一方のガス作動式三方弁及び前記他方のガス作動式三方弁を作動させる作動ガスを前記一方のガス作動式三方弁及び前記他方のガス作動式三方弁に各々供給する作動ガス供給配管と、
前記蓄圧器の周囲に1つ以上配置されて、前記作動ガス供給配管を閉塞する熱作動式安全弁とを備え、
前記蓄圧器の周囲における温度が特定の値まで上昇したときに、前記熱作動式安全弁が前記作動ガス供給配管を開放し、前記作動ガス供給配管を介して前記一方のガス作動式三方弁及び前記他方のガス作動式三方弁に作動ガスが各々供給されるのに伴って、
前記他方のガス作動式三方弁が前記他方の計装ガス供給配管を開放し、前記他方の計装ガス供給配管を介して前記ガス作動式開閉弁に作動ガスが供給されることによって、前記ガス作動式開閉弁が前記水素供給配管を開放し、
前記一方のガス作動式三方弁が前記一方の計装ガス供給配管を開放し、前記一方の計装ガス供給配管を介して前記ガス作動式開閉弁に作動ガスが供給されることによって、前記ガス作動式安全弁が前記水素放出配管を開放し、
前記蓄圧器内の水素が前記水素放出配管を介して外部へと放出されることを特徴とする移動式水素供給設備。
【請求項4】
前記計装ガスが圧縮空気であることを特徴とする請求項3に記載の移動式水素供給設備。
【請求項5】
前記作動ガスを貯留するガスタンクを備え、
前記作動ガス供給配管は、前記ガスタンクと接続されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の移動式水素供給設備。
【請求項6】
前記作動ガスが圧縮空気であることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の移動式水素供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式水素供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の車載タンクに水素を充填する水素供給設備として、水素ステーションが利用されている(例えば、下記特許文献1~3を参照。)。
【0003】
水素ステーションでは、水素を圧縮機で昇圧(圧縮)し、この昇圧された水素を蓄圧器に一時的に貯蔵(蓄圧)する。また、車両側のレセプタクルにディスペンサ側のノズルを差し込むことによって互いに接続した状態とし、このディスペンサを介して蓄圧器に貯蔵された水素を車載タンクに充填することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-155027号公報
【特許文献2】特開2011-117543号公報
【特許文献3】特開2005-024061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した水素ステーションのような水素供給設備には、スタンドなどの設置場所に定置される定置式水素ステーション(定置式水素供給設備)と、トレーラーやトラックなどの車両により移動可能とされた移動式水素ステーション(移動式水素供給設備)とがある。
【0006】
このうち、定置式水素ステーションでは、火災等の発生時に、蓄圧器内の圧力が上昇した場合、蓄圧器内の圧力を自動的に開放する圧力リリーフ弁が設置されている。一方、移動式水素ステーションでは、高圧ガス保安法に基づく技術上の基準として、「蓄圧器には、適切な位置に、一定以下の温度で作動する安全弁(熱作動式安全弁)を設けること。」(一般高圧ガス保安規則第8条の2第1項第3号を参照。)が義務付けられている。
【0007】
すなわち、この移動式水素ステーションでは、火災等で蓄圧器の周囲の温度がある温度以上になったときに、蓄圧器内の水素を外部に放出するための熱作動式安全弁の設置が必要となっている。
【0008】
さらに、移動式水素ステーションでは、一般高圧ガス保安規則の規則関連条項として、「熱作動式安全弁は、蓄圧器の長手方向に1.65m以内毎に1つ設置することとし、その設置位置は蓄圧器の直近とすること。」(一般高圧ガス保安規則関係例示基準13の3.を参照。)が定められている。
【0009】
したがって、現在の一般的な移動式水素ステーションでは、1個の蓄圧器に対して、2~3個の熱作動式安全弁が設置されている。これにより、火災等の発生時には、熱作動式安全弁の溶栓が100℃付近で溶けることで、この熱作動式安全弁により閉塞された配管を開放し、この配管から蓄圧器内の水素を外部へと放出することが可能となっている。
【0010】
しかしながら、蓄圧器の周囲に複数の熱作動式安全弁を配置した場合、熱作動式安全弁の数に応じた配管の引き回しが必要となる。このため、配管の継手部や接続部などの増加によって、水素が漏洩する可能性のある箇所が増えてしまう。また、高圧ガス設備用の機器を選定する必要があるため、費用が嵩むだけでなく、長納期品となる可能性もある。さらに、交換時に申請届出等の法的手続き必要となってしまう。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、安全性に優れ、なお且つ、コストの低減が可能な移動式水素供給設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 水素を供給する設備として移動可能とされた移動式水素供給設備であって、
水素を蓄圧した状態で貯留する蓄圧器と、
前記蓄圧器に貯留された水素を車両に搭載された車載タンクに充填するディスペンサと、
前記蓄圧器から前記ディスペンサへと水素を供給する水素供給配管と、
前記水素供給配管から分岐して設けられた水素放出配管と、
前記水素放出配管を閉塞するガス作動式安全弁と、
前記ガス作動式安全弁を作動させる作動ガスを前記ガス作動式安全弁に供給する作動ガス供給配管と、
前記蓄圧器の周囲に1つ以上配置されて、前記作動ガス供給配管を閉塞する熱作動式安全弁とを備え、
前記蓄圧器の周囲が特定の温度まで上昇したときに、前記熱作動式安全弁が前記作動ガス供給配管を開放し、前記作動ガス供給配管を介して前記ガス作動式安全弁に作動ガスが供給されることによって、前記ガス作動式安全弁が前記水素放出配管を開放し、前記蓄圧器内の水素が前記水素放出配管を介して外部へと放出されることを特徴とする移動式水素供給設備。
〔2〕 前記水素供給配管を開閉する1つ以上の開閉弁を備え、
前記水素放出配管は、前記水素供給配管の前記開閉弁よりも前記蓄圧器側から分岐して設けられていることを特徴とすることを特徴とする前記〔1〕に記載の移動式水素供給設備。
〔3〕 水素を供給する設備として移動可能とされた移動式水素供給設備であって、
水素を蓄圧した状態で貯留する蓄圧器と、
前記蓄圧器に貯留された水素を車両に搭載された車載タンクに充填するディスペンサと、
前記蓄圧器から前記ディスペンサへと水素を供給する水素供給配管と、
前記水素供給配管から分岐して設けられた水素放出配管と、
前記水素放出配管を閉塞するガス作動式安全弁と、
前記蓄圧器と前記水素放出配管との間に配置されて、前記水素供給配管を開閉するガス作動式開閉弁と、
前記ガス作動式安全弁を作動させる計装ガスを前記ガス作動式安全弁に供給する一方の計装ガス供給配管と、
前記ガス作動式開閉弁を作動させる計装ガスを前記ガス作動式開閉弁に供給する他方の計装ガス供給配管と、
前記一方の計装ガス供給配管に設けられた一方のガス作動式三方弁と、
前記他方の計装ガス供給配管に設けられた他方のガス作動式三方弁と、
前記一方のガス作動式三方弁及び前記他方のガス作動式三方弁を作動させる作動ガスを前記一方のガス作動式三方弁及び前記他方のガス作動式三方弁に各々供給する作動ガス供給配管と、
前記蓄圧器の周囲に1つ以上配置されて、前記作動ガス供給配管を閉塞する熱作動式安全弁とを備え、
前記蓄圧器の周囲における温度が特定の値まで上昇したときに、前記熱作動式安全弁が前記作動ガス供給配管を開放し、前記作動ガス供給配管を介して前記一方のガス作動式三方弁及び前記他方のガス作動式三方弁に作動ガスが各々供給されるのに伴って、
前記他方のガス作動式三方弁が前記他方の計装ガス供給配管を開放し、前記他方の計装ガス供給配管を介して前記ガス作動式開閉弁に作動ガスが供給されることによって、前記ガス作動式開閉弁が前記水素供給配管を開放し、
前記一方のガス作動式三方弁が前記一方の計装ガス供給配管を開放し、前記一方の計装ガス供給配管を介して前記ガス作動式開閉弁に作動ガスが供給されることによって、前記ガス作動式安全弁が前記水素放出配管を開放し、
前記蓄圧器内の水素が前記水素放出配管を介して外部へと放出されることを特徴とする移動式水素供給設備。
〔4〕 前記計装ガスが圧縮空気であることを特徴とする前記〔3〕に記載の移動式水素供給設備。
〔5〕 前記作動ガスを貯留するガスタンクを備え、
前記作動ガス供給配管は、前記ガスタンクと接続されていることを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の移動式水素供給設備。
〔6〕 前記作動ガスが圧縮空気であることを特徴とする前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の移動式水素供給設備。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、安全性に優れ、なお且つ、コストの低減が可能な移動式水素供給設備を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る移動式水素ステーションの構成を示す系統図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る移動式水素ステーションの構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1に示す移動式水素ステーション1Aについて説明する。
なお、
図1は、移動式水素ステーション1Aの構成を示す系統図である。
【0016】
本実施形態の移動式水素ステーション1Aは、水素Hを供給する設備として、例えばトレーラーやトラックなどの車両により移動可能とされた移動式水素供給設備である。
【0017】
具体的に、この移動式水素ステーション1Aは、
図1に示すように、蓄圧器2と、ディスペンサ3と、水素供給配管4と、冷凍機5と、第1の水素放出配管6及び第2の水素放出配管7と、第1のガス作動式安全弁8及び第2のガス作動式安全弁9と、作動ガス供給配管10と、ガスタンク11と、熱作動式安全弁12と、第1のガス作動式開閉弁13及び第2のガス作動式開閉弁14と、第1の計装ガス供給配管15、第2の計装ガス供給配管16及び第3の計装ガス供給配管17と、第1の電磁弁18、第2の電磁弁19及び第3の電磁弁20と、制御部21と、圧力計22と、圧力放出配管23と、バネ式安全弁24とを備えている。
【0018】
蓄圧器2は、圧縮機(図示せず。)により圧縮された高圧の水素Hを蓄圧した状態で貯留する耐圧容器(タンク)である。なお、蓄圧器2は、高圧の水素Hを蓄圧することができるものであればよく、その材質や形状等については特に限定されるものではない。
【0019】
ディスペンサ3は、蓄圧器2に貯留された水素Hを、例えばFCVなどの車両100に搭載された車載タンク101に充填するものであり、蓄圧器2と水素供給配管4を介して接続されている。
【0020】
ディスペンサ3は、車両B側のレセプタクル102に対して着脱自在に接続されるノズル3aと、ノズル3aに接続されたホース3bとを有している。ディスペンサ3は、レセプタクル102にノズル3aを差し込むことによって互いに接続した状態とし、蓄圧器2と車載タンク101との間の差圧によって、蓄圧器2から水素供給配管4を介して供給される水素Hを車載タンク101に充填する。
【0021】
水素供給配管4は、蓄圧器2からディスペンサ3へと水素Hを供給する配管であり、蓄圧器2とディスペンサ3との間を接続している。
【0022】
冷凍機5は、プレクーラとして、蓄圧器2から水素供給配管4を介してディスペンサ3に供給される水素Hを予め冷却(プレクール)するものであり、水素供給配管4のディスペンサ3よりも上流側に設けられている。本実施形態では、水素供給配管4のディスペンサ3と第2のガス作動式開閉弁14との間に冷凍機5が設けられている。
【0023】
本実施形態の移動式水素ステーション1Aでは、この冷凍機5により水素Hを約-40℃に冷却することで、ディスペンサ3側から供給される水素Hを車両100の車載タンク101に急速に充填(急速充填)することが可能となっている。
【0024】
第1の水素放出配管6及び第2の水素放出配管7は、蓄圧器2内の水素Hを外部へと放出(大気放出)するための配管であり、それぞれ水素供給配管4から分岐して設けられている。このうち、第1の水素放出配管6は、水素供給配管4の蓄圧器2と第1のガス作動式開閉弁13との間から分岐して設けられている。一方、第2の水素放出配管7は、水素供給配管4の第1のガス作動式開閉弁13と第2のガス作動式開閉弁14との間から分岐して設けられている。また、第1の水素放出配管6及び第2の水素放出配管7の水素Hを外部へと放出(大気放出)する開口端部(出口)は、法で定められた、本供給設備の上部に配置されている。
【0025】
第1のガス作動式安全弁8は、非作動時に閉塞した状態から、作動時に作動ガスG1である圧縮空気の圧力によって開放される空動弁である。第1のガス作動式安全弁8は、第1の水素放出配管6に設けられて、この第1の水素放出配管6を非作動時に閉塞している。
【0026】
第2のガス作動式安全弁9は、非作動時に閉塞した状態から、作動時に計装ガスG2である圧縮空気の圧力によって開放される空動弁である。第2のガス作動式安全弁9は、第2の水素放出配管7に設けられて、この第2の水素放出配管7を非作動時に閉塞している。
【0027】
作動ガス供給配管10は、第1のガス作動式安全弁8に作動ガスG1を供給するための配管であり、第1のガス作動式安全弁8の作動部と接続されている。
【0028】
ガスタンク11は、作動ガスG1を貯留する耐圧容器であり、作動ガス供給配管10と接続されている。ガスタンク11には、第1のガス作動式安全弁8を作動させるのに十分な圧力の圧縮空気が充填されている。また、ガスタンク11は、火災等の熱の影響を受けない材料、配置となっている。
【0029】
熱作動式安全弁12は、非作動時に閉塞した状態から、温度上昇時(作動時)に自動的に開放される安全弁である。熱作動式安全弁12は、作動ガス供給配管10に設けられて、この作動ガス供給配管10を非作動時に閉塞している。
【0030】
熱作動式安全弁12には、例えば火災等の熱により金属性の溶栓が溶けて安全弁が作動する「溶栓式」と、火災等の熱によりガラス製の容器内に封入された液体が膨張し、ガラスが割れることにより安全弁が作動する「ガラス玉式」とがあり、何れの方式のものを用いることができる。なお、本実施形態では、熱作動式安全弁12として、溶栓式のものを用いている。
【0031】
ところで、蓄圧器2には、「適切な位置に、一定以下の温度で作動する熱作動式安全弁12を設けること」が義務付けられている。また、熱作動式安全弁12は、「蓄圧器2の長手方向に1.65mm以内毎に1つ設置することとし、その設置位置は蓄圧器2の直近とすること」が定められている。熱作動式安全弁12は、これらの要件を満たすように、蓄圧器2の周囲に1つ以上(本実施形態では2つ)配置されている。
【0032】
熱作動式安全弁12を2つ以上(複数)配置した場合、作動ガス供給配管10は、熱作動式安全弁12毎に並列して配置される。また、各作動ガス供給配管10の一端側が互いに合流しながら、第1のガス作動式安全弁8の作動部と共通に接続されている。また、各作動ガス供給配管10の他端側が互いに合流しながら、ガスタンク11と共通に接続されている。
【0033】
第1のガス作動式開閉弁13及び第2のガス作動式開閉弁14は、計装ガスG2の圧力により開閉される自動弁である。このうち、第1のガス作動式開閉弁13は、水素供給配管4の第1の水素放出配管6と第2の水素放出配管7との間に設けられて、この第2の水素放出配管7を開閉する。一方、第2のガス作動式開閉弁14は、水素供給配管4の第2の水素放出配管7と冷凍機5との間に設けられて、この第2の水素放出配管7を開閉する。
【0034】
第1の計装ガス供給配管15は、第1のガス作動式開閉弁13に計装ガスG2を供給するための配管であり、第1のガス作動式開閉弁13の作動部と接続されている。第2の計装ガス供給配管16は、第2のガス作動式開閉弁14に計装ガスG2を供給するための配管であり、第2のガス作動式開閉弁14の作動部と接続されている。第3の計装ガス供給配管17は、第2のガス作動式安全弁9に計装ガスG2を供給するための配管であり、第2のガス作動式安全弁9の作動部と接続されている。
【0035】
第1の電磁弁18、第2の電磁弁19及び第3の電磁弁20は、電気的な駆動により開閉される自動弁である。このうち、第1の電磁弁18は、第1の計装ガス供給配管15に設けられて、この第1の計装ガス供給配管15を開閉する。一方、第2の電磁弁19は、第2の計装ガス供給配管16に設けられて、この第2の計装ガス供給配管16を開閉する。一方、第3の電磁弁20は、第3の計装ガス供給配管17に設けられて、この第3の計装ガス供給配管17を開閉する。
【0036】
制御部21は、第1の電磁弁18、第2の電磁弁19及び第3の電磁弁20と電気的に接続されて、これら第1の電磁弁18、第2の電磁弁19及び第3の電磁弁20の作動を制御する制御信号を出力する。
【0037】
圧力計22は、水素供給配管4内の圧力を測定するものであり、水素供給配管4の第2の水素放出配管7と第2のガス作動式開閉弁14との間に設けられている。圧力計22には、圧力伝送器が用いられている。但し、圧力計22については、圧力の測定が可能なものであればよく、これに必ずしも限定されるものではない。圧力計22によって測定された水素Hの圧力値は、蓄圧器2内の圧力と略一致する。また、圧力計22は、制御部21と電気的に接続されており、その圧力の測定値(測定信号)を制御部21へと送信(伝送)する。
【0038】
制御部21は、受信した圧力の測定値を参照しながら、第1の電磁弁18、第2の電磁弁19及び第3の電磁弁20の作動を制御し、第1のガス作動式開閉弁13及び第2のガス作動式開閉弁14を開閉する制御、並びに、第2のガス作動式安全弁9を開放する制御を行う。
【0039】
圧力放出配管23は、蓄圧器2内の圧力(水素H)を外部へと放出(大気放出)するための配管であり、水素供給配管4上に設けられている第1の水素放出配管6と第2の水素放出配管7との間に位置する水素供給配管4から分岐して設けられている。また、圧力放出配管23の圧力(水素H)を外部へと放出(大気放出)する開口端部(出口)は、法で定められた、本供給設備の上部に配置されている。
【0040】
バネ式安全弁24は、非作動時にバネ力により閉塞した状態から、圧力上昇時(作動時)にバネ力に抗して自動的に開放される安全弁である。バネ式安全弁24は、圧力放出配管23に設けられて、この圧力放出配管23を非作動時に閉塞している。
【0041】
以上のような構成を有する本実施形態の移動式水素ステーション1Aでは、車両100側のレセプタクル102にディスペンサ3側のノズル3aを差し込むことによって、互いに接続した状態とする。この状態で、ディスペンサ3側から供給される水素Hを車両100の車載タンク101に充填することが可能となっている。
【0042】
具体的には、車両100側のレセプタクル102にディスペンサ3側のノズル3aを接続した後に、車両100側の開閉弁(図示せず。)を開放する。その後、制御部21からの制御信号により作動した第1の電磁弁18及び第2の電磁弁19が第1の計装ガス供給配管15及び第2の計装ガス供給配管16を開放する。
【0043】
このとき、第1の計装ガス供給配管15及び第2の計装ガス供給配管16を介して第1のガス作動式開閉弁13及び第2のガス作動式開閉弁14に計装ガスG2が供給される。また、この計装ガスG2の圧力により作動した第1のガス作動式開閉弁13及び第2のガス作動式開閉弁14が水素供給配管4を開放する。
【0044】
これにより、蓄圧器2と車載タンク101との間の差圧によって、蓄圧器2に貯留された水素Hが水素供給配管4を介してディスペンサ3から車両100へと供給され、車載タンク101に水素Hが充填されることになる(これを「差圧充填」という。)。
【0045】
また、本実施形態の移動式水素ステーション1Aでは、圧力計22により測定された水素供給配管4内における圧力が特定の値(例えば93MPa)まで上昇したときに、制御部21からの制御信号により作動した第3の電磁弁20が第3の計装ガス供給配管17を開放する。
【0046】
このとき、第3の計装ガス供給配管17を介して第2のガス作動式安全弁9に計装ガスG2が供給される。また、この計装ガスG2の圧力により作動した第2のガス作動式安全弁9が第2の水素放出配管7を開放する。
【0047】
これにより、水素供給配管4内の水素Hが第2の水素放出配管7を介して外部へと放出されるため、蓄圧器2内における水素Hの過度な圧力上昇を防ぐことが可能である。また、このような蓄圧器2内の圧力が上昇した場合に、蓄圧器2内の圧力を開放する経路を設けることで、保安距離を短くすることが可能である。
【0048】
また、本実施形態の移動式水素ステーション1Aでは、水素供給配管4内における圧力が特定の値(例えば99MPa)まで上昇したときに、バネ式安全弁24が圧力放出配管23を自動で開放する。これにより、水素供給配管4内の水素Hが圧力放出配管23を介して外部へと放出されるため、蓄圧器2内における水素Hの過度な圧力上昇を防ぐことが可能である。なお、バネ式安全弁24の設置については、法的に義務付けられている。
【0049】
ところで、本実施形態の移動式水素ステーション1Aでは、火災等の発生により蓄圧器2の周囲が特定の温度(例えば100℃付近)まで上昇したときに、熱作動式安全弁12の溶栓が溶けることで、この熱作動式安全弁12が作動ガス供給配管10を開放する。
【0050】
このとき、ガスタンク11に貯留された作動ガスG1が作動ガス供給配管10を介して第1のガス作動式安全弁8に供給される。また、この作動ガスG1の圧力により作動した第1のガス作動式安全弁8が第1の水素放出配管6を開放する。これにより、蓄圧器2内の水素Hが第1の水素放出配管6を介して外部へと放出されるため、火災等の発生における蓄圧器2の安全性を確保することが可能である。
【0051】
以上のように、本実施形態の移動式水素ステーション1Aでは、上述した作動ガス供給配管10に熱作動式安全弁12を設けた構成となるため、配管の継手部や接続部などから水素Hが漏洩することがない。また、熱作動式安全弁12及び作動ガス供給配管10が高圧ガス設備とはならないため、これらの選定費用や製作費用等を削減することが可能である。さらに、交換や点検等の際に、納期を短縮したり申請届出等の法的手続きを簡素化したりすることが可能である。
【0052】
したがって、本実施形態の移動式水素ステーション1Aは、安全性に優れ、なお且つ、コストを低減することが可能である。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図2に示す移動式水素ステーション1Bについて説明する。
なお、
図2は、移動式水素ステーション1Bの構成を示す系統図である。また、以下の説明では、上記移動式水素ステーション1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0054】
本実施形態の移動式水素ステーション1Bは、
図2に示すように、上記移動式水素ステーション1Aの構成のうち、第1の水素放出配管6及び第1のガス作動式安全弁8を省略した構成となっている。
【0055】
一方、本実施形態の移動式水素ステーション1Bは、上記移動式水素ステーション1Aの構成に加えて、第1のガス作動式三方弁25及び第2のガス作動式三方弁26とを備えた構成となっている。
【0056】
第1のガス作動式三方弁25及び第2のガス作動式三方弁26は、作動ガスG1の圧力により、作動ガスG1と計装ガスG2との流路の切り替えを行う自動弁である。このうち、第1のガス作動式三方弁25は、一方のガス作動式三方弁として、一方の計装ガス供給配管となる第3の計装ガス供給配管17に設けられている。すなわち、この第1のガス作動式三方弁25の3つの接続部のうち、1つ目の接続部に第3の電磁弁20と接続された第3の計装ガス供給配管17の入側が接続され、2つ目の接続部に第2のガス作動式安全弁9と接続された第3の計装ガス供給配管17の出側が接続されている。
【0057】
一方、第2のガス作動式三方弁26は、他方のガス作動式三方弁として、他方の計装ガス供給配管となる第1の計装ガス供給配管15に設けられている。すなわち、この第2のガス作動式三方弁26の3つの接続部のうち、1つ目の接続部に第1の電磁弁18と接続された第1の計装ガス供給配管15の入側が接続され、2つ目の接続部に第1のガス作動式開閉弁13と接続された第1の計装ガス供給配管15の出側が接続されている。
【0058】
作動ガス供給配管10は、熱作動式安全弁12毎に並列して配置された各作動ガス供給配管10の一端側が互いに合流した後に、第1のガス作動式三方弁25側に向けて分岐された第1の作動ガス供給配管10aと、第2のガス作動式三方弁26側に向けて分岐された第2の作動ガス供給配管10bとを有している。
【0059】
第1の作動ガス供給配管10aは、第1のガス作動式三方弁25の作動部と3つ目の接続部とに分岐して接続されている。第2の作動ガス供給配管10bは、第2のガス作動式三方弁26の作動部と3つ目の接続部とに分岐して接続されている。
【0060】
以上のような構成を有する本実施形態の移動式水素ステーション1Bでは、車両100側のレセプタクル102にディスペンサ3側のノズル3aを差し込むことによって、互いに接続した状態とする。この状態で、ディスペンサ3側から供給される水素Hを車両100の車載タンク101に充填することが可能となっている。
【0061】
具体的には、車両100側のレセプタクル102にディスペンサ3側のノズル3aを接続した後に、車両100側の開閉弁(図示せず。)を開放する。その後、制御部21からの制御信号により作動した第1の電磁弁18及び第2の電磁弁19が第1の計装ガス供給配管15及び第2の計装ガス供給配管16を開放する。
【0062】
このとき、第2のガス作動式三方弁26は、第1の計装ガス供給配管15の入側及び出側を開放し、且つ、第2の作動ガス供給配管10bの入側を閉塞している。これにより、第1の計装ガス供給配管15を介して第1のガス作動式開閉弁13に計装ガスG2が供給される。また、この計装ガスG2の圧力により作動した第1のガス作動式開閉弁13が水素供給配管4を開放する。
【0063】
一方、第2の計装ガス供給配管16を介して第2のガス作動式開閉弁14に計装ガスG2が供給される。また、この計装ガスG2の圧力により作動した第2のガス作動式開閉弁14が水素供給配管4を開放する。
【0064】
これにより、蓄圧器2と車載タンク101との間の差圧によって、蓄圧器2に貯留された水素Hが水素供給配管4を介してディスペンサ3から車両100へと供給され、車載タンク101に水素Hが充填されることになる。
【0065】
また、本実施形態の移動式水素ステーション1Bでは、圧力計22により測定された水素供給配管4内における圧力が特定の値(例えば93MPa)まで上昇したときに、制御部21からの制御信号により作動した第3の電磁弁20が第3の計装ガス供給配管17を開放する。
【0066】
このとき、第1のガス作動式三方弁25は、第3の計装ガス供給配管17の入側及び出側を開放し、且つ、第1の作動ガス供給配管10aを閉塞している。これにより、第3の計装ガス供給配管17を介して第2のガス作動式安全弁9に計装ガスG2が供給される。また、この計装ガスG2の圧力により作動した第2のガス作動式安全弁9が第2の水素放出配管7を開放する。
【0067】
したがって、この第2の水素放出配管7を介して水素供給配管4内の水素Hが外部へと放出されるため、蓄圧器2内における水素Hの過度な圧力上昇を防ぐことが可能である。また、このような蓄圧器2内の圧力が上昇した場合に、蓄圧器2内の圧力を開放する経路を設けることで、保安距離を短くすることが可能である。
【0068】
また、本実施形態の移動式水素ステーション1Bでは、水素供給配管4内における圧力が特定の値(例えば99MPa)まで上昇したときに、バネ式安全弁24が圧力放出配管23を自動で開放する。これにより、水素供給配管4内の水素Hが圧力放出配管23を介して外部へと放出されるため、蓄圧器2内における水素Hの過度な圧力上昇を防ぐことが可能である。
【0069】
ところで、本実施形態の移動式水素ステーション1Bでは、火災等の発生により蓄圧器2の周囲が特定の温度(例えば100℃付近)まで上昇したときに、熱作動式安全弁12の溶栓が溶けることで、この熱作動式安全弁12が作動ガス供給配管10を開放する。
【0070】
このとき、ガスタンク11に貯留された作動ガスG1が第2の作動ガス供給配管10bを介して第2のガス作動式三方弁26に供給される。また、この作動ガスG1の圧力により作動した第2のガス作動式三方弁26が第1の計装ガス供給配管15の入側を閉塞し、且つ、第2の作動ガス供給配管10bの入側を開放する。
【0071】
これにより、ガスタンク11に貯留された作動ガスG1が第2の作動ガス供給配管10bから第1の計装ガス供給配管15の出側を介して第1のガス作動式開閉弁13に供給される。また、この作動ガスG1の圧力により作動した第1のガス作動式開閉弁13が水素供給配管4を開放する。
【0072】
一方、ガスタンク11に貯留された作動ガスG1が第1の作動ガス供給配管10aを介して第1のガス作動式三方弁25に供給される。また、この作動ガスG1の圧力により作動した第1のガス作動式三方弁25が第3の計装ガス供給配管17の入側を閉塞し、且つ、第1の作動ガス供給配管10aの入側を開放する。
【0073】
これにより、ガスタンク11に貯留された作動ガスG1が第1の作動ガス供給配管10aから第3の計装ガス供給配管17の出側を介して第2のガス作動式安全弁9に供給される。また、この作動ガスG1の圧力により作動した第2のガス作動式安全弁9が第2の水素放出配管7を開放する。
【0074】
したがって、この第2の水素放出配管7を介して蓄圧器2内の水素Hが外部へと放出されるため、火災等の発生における蓄圧器2の安全性を確保することが可能である。
【0075】
以上のように、本実施形態の移動式水素ステーション1Bでは、上述した作動ガス供給配管10に熱作動式安全弁12を設けた構成となるため、配管の継手部や接続部などから水素Hが漏洩することがない。また、熱作動式安全弁12及び作動ガス供給配管10が高圧ガス設備とはならないため、これらの選定費用や製作費用等を削減することが可能である。さらに、交換や点検等の際に、納期を短縮したり申請届出等の法的手続きを簡素化したりすることが可能である。
【0076】
また、本実施形態の移動式水素ステーション1Bでは、上述した圧力上昇時に計装ガスG2の作動により第2のガス作動式安全弁9を開放するだけでなく、火災等の発生時に作動ガスG1に作動により第2のガス作動式安全弁9を開放することが可能である。
【0077】
したがって、本実施形態の移動式水素ステーション1Bは、上記移動式水素ステーション1Aと同様に、安全性に優れ、なお且つ、コストを低減することが可能である。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、移動式水素ステーションに本発明を適用した場合を例示しているが、高圧ガスを供給する設備として移動可能とされた移動式水素供給設備に対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B…移動式水素ステーション(移動式水素供給設備) 2…蓄圧器 3…ディスペンサ 4…水素供給配管 5…冷凍機 6…第1の水素放出配管 7…第2の水素放出配管 8…第1のガス作動式安全弁 9…第2のガス作動式安全弁 10…作動ガス供給配管 11…ガスタンク 12…熱作動式安全弁 13…第1のガス作動式開閉弁 14…第2のガス作動式開閉弁 15…第1の計装ガス供給配管(他方の計装ガス供給配管) 16…第2の計装ガス供給配管 17…第3の計装ガス供給配管(一方の計装ガス供給配管) 18…第1の電磁弁 19…第2の電磁弁 20…第3の電磁弁 21…制御部 22…圧力計 23…圧力放出配管 24…バネ式安全弁 25…第1のガス作動式三方弁(一方のガス作動式三方弁) 26…第2のガス作動式三方弁(他方のガス作動式三方弁) G1…作動ガス G2…計装ガス H…水素