(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097952
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】直視型液晶表示装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13357 20060101AFI20220624BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20220624BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20220624BHJP
G02F 1/19 20190101ALI20220624BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20220624BHJP
【FI】
G02F1/13357
G02F1/1347
G02F1/133 535
G02F1/133 575
G02F1/19
G02F1/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211221
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 勝
【テーマコード(参考)】
2H189
2H193
2H391
2K101
【Fターム(参考)】
2H189AA22
2H189AA27
2H189AA35
2H189CA36
2H189HA16
2H189LA19
2H189LA20
2H189LA22
2H193ZA37
2H193ZG04
2H193ZG14
2H193ZG43
2H193ZG48
2H391AA04
2H391AB04
2H391AC13
2H391AC32
2H391CB14
2H391CB43
2H391CB52
2K101AA04
2K101AA11
2K101BA03
2K101BB40
2K101BD61
2K101CA06
2K101EA56
2K101EF23
2K101EJ11
2K101EJ21
2K101EK03
(57)【要約】
【課題】光の利用効率が高い直視型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】LCD直視型表示装置1は、導光板20とLCD70との間に位置し、入射光を導光板20側に反射する又は入射光をLCD70側に透過する素子で構成された光量制御手段40と、光量制御手段40の後段に位置し、光量制御手段40を透過した光を拡散させる拡散板50と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトからの入射光を液晶表示手段に導光する導光板と、前記入射光により映像を表示する前記液晶表示手段とを備える直視型液晶表示装置であって、
前記導光板と前記液晶表示手段との間に位置し、前記入射光を前記導光板側に反射する又は前記入射光を前記液晶表示手段側に透過する素子で構成された光量制御手段と、
前記光量制御手段の後段に位置し、前記光量制御手段を透過した光を拡散させる拡散板と、
を備えることを特徴とする直視型液晶表示装置。
【請求項2】
前記光量制御手段は、電気泳動方式により前記素子毎に前記入射光を反射又は透過することを特徴とする請求項1に記載の直視型液晶表示装置。
【請求項3】
前記光量制御手段は、各素子が前記入射光を反射する粒子が封入されたカプセルを有し、前記粒子を前記カプセル内で移動させることで、前記素子毎に前記入射光を反射又は透過することを特徴とする請求項2に記載の直視型液晶表示装置。
【請求項4】
前記光量制御手段は、前記入射光が入射する入射面に対し、前記粒子が垂直に並ぶことで前記素子が前記入射光を透過すると共に、前記粒子が水平又は放物線状に並ぶことで前記素子が前記入射光を反射することを特徴とする請求項3に記載の直視型液晶表示装置。
【請求項5】
前記光量制御手段は、エレクトロウェッティング方式により前記素子毎に前記入射光を反射又は透過することを特徴とする請求項1に記載の直視型液晶表示装置。
【請求項6】
前記光量制御手段は、複数の前記素子からなるブロックで構成され、
映像信号が入力され、入力された前記映像信号の各画素を前記ブロックに割り当てるブロック割当手段と、
前記ブロック毎に前記映像信号の最大画素値を検出する最大画素値検出手段と、
前記ブロック内で前記入射光を透過する素子数毎に前記拡散板を含めた透過率を予め設定し、前記ブロック毎の最大画素値及び前記透過率に基づいて、前記素子数を算出して前記光量制御手段を前記ブロック単位で駆動する第1駆動手段と、
前記透過率に基づいて前記映像信号のレベル補正を行い、レベル補正後の前記映像信号で前記液晶表示手段を駆動する第2駆動手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の直視型液晶表示装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項6に記載の直視型液晶表示装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直視型液晶表示装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(Liquid Crystal Display)直視型表示装置は、LCDがバックライトの光強度を変調することで画像を表示する(例えば、非特許文献1)。
図13に示すように、従来のLCD直視型表示装置100は、導光板110と、偏光板120,150と、LCD駆動素子130と、LCD140と、バックライト160とを備える。LCD直視型表示装置100では、導光板110がLCD140の裏側に配置されており、バックライト160からの光が導光板110に入射する。この入射光は、導光板110で反射を繰り返し、偏光板120で偏光方向を整えられてLCD140に入射する。このように、LCD直視型表示装置100では、画像内容には関係なく、全ての入射光がLCD140に一様に入射する。そして、LCD駆動素子130が映像の内容に応じてLCD140を駆動して入射光の偏光方向を制御するので、偏光板150からの出射光の輝度が変化し、映像を表示することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“液晶ディスプレイの原理と技術”,[online],[令和2年10月26日検索],インターネット<URL:https://jp.sharp/products/lcd/tech/s2_3.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記した従来技術では、風景など通常の画面に含まれる明るい領域が一部だけなので、LCDに入射するバックライトからの入射光のほとんどが使用されず、光の利用効率が低くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、光の利用効率が高い直視型液晶表示装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る直視型液晶表示装置は、バックライトからの入射光を液晶表示手段に導光する導光板と、入射光により映像を表示する液晶表示手段とを備える直視型液晶表示装置であって、光量制御手段と、拡散板とを備える構成とした。
【0007】
かかる直視型液晶表示装置において、光量制御手段は、導光板と液晶表示手段との間に位置し、入射光を導光板側に反射する又は入射光を液晶表示手段側に透過する素子で構成されている。そして、拡散板は、光量制御手段の後段に位置し、光量制御手段を透過した光を拡散させる。
【0008】
かかる直視型液晶表示装置では、映像の明るさに応じて光量制御手段が入射光を導光板側に反射するので、この入射光が導光板で再反射されて液晶表示手段に入射し、入射光の利用効率を高くすることができる。
【0009】
なお、本発明は、コンピュータを、前記した直視型液晶表示装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光の利用効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態において、映像の一例を説明する説明図である。
【
図2】従来の電子インク技術を説明する説明図である。
【
図3】(a)~(c)は、従来の電子インク技術における表示原理を説明する説明図である。
【
図4】第1実施形態に係るLCD直視型表示装置の概略構成図である。
【
図5】(a)~(c)は、第1実施形態における光量制御手段の模式図である。
【
図6】(a)~(d)は、第1実施形態において、光を透過する素子数と映像の明暗との関係を説明する説明図である。
【
図7】(a)~(d)は、第1実施形態において、光を透過する素子数と映像の明暗との関係を説明する説明図である。
【
図8】(a)及び(b)は、第1実施形態において、光を透過する素子数と映像の明暗との関係を説明する説明図である。
【
図9】第1実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】第1実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11】(a)及び(b)は、第2実施形態における光量制御手段の模式図である。
【
図12】(a)及び(b)は、変形例における光量制御手段の模式図である。
【
図13】従来のLCD直視型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
[LCD直視型表示装置の原理]
まず、各実施形態に係るLCD直視型表示装置(直視型液晶表示装置)1の原理について説明する。
図4に示すように、LCD直視型表示装置1は、映像の明るさに応じて、導光板20からの光を導光板20に戻す光量制御手段40を備えているので、LCD70に入射する光量を制御できる。すなわち、LCD直視型表示装置1は、映像暗部において導光板20に反射される光量により、映像明部においてLCD70に入射する光量が増加するので、入射光を有効に利用できる。例えば、
図1に示すように、半分(左上及び右下)が黒色で、残りの半分(左下及び右上)が白色の映像Vの場合を考える。この場合、LCD直視型表示装置1では、映像Vの黒色領域に入射した光が導光板20に反射されるので、映像Vの白色領域に入射する光量が2倍となる。
図1の例では、同一光量で輝度が2倍になる。
【0014】
次に、前記した光量制御手段40を実現する技術について説明する。
例えば、光量制御手段40は、電子ペーパーで用いられている電子泳動方式で実現できる。この電子泳動方式は、電子インク技術に基づいた電子ペーパーで広く採用されている。
図2に示すように、電子ペーパー200は、電極210,230と、電子インクカプセル220と、駆動回路240とを備える。この電子ペーパー200は、2枚の電極210,230の間に多数の電子インクカプセル220が配置されている。また、駆動回路240は、電極210,230に電圧を印加することで、電子インクカプセル220を駆動する。
【0015】
図3に示すように、各電子インクカプセル220は、透明な液体で満たされ、多数の白色の微粒子(粒子)221と黒色の微粒子222とが封入されている。ここで、2枚の電極210,230に印可する電圧を変化させることにより、電子インクカプセル220内で微粒子221,222の位置を制御できる。ここで、図面上側から周囲光が照射されていることとする。
図3(a)に示すように、上側の電極210に正の電圧、下側の電極230に負の電圧を印加すると、上側に白色の微粒子221が集まり、下側に黒色の微粒子222が集まる。その結果、図面上側から入射した周囲光が白黒色の微粒子221で反射されるので、「白」を表現できる。
【0016】
また、
図3(b)に示すように、上側の電極210に負の電圧、下側の電極230に正の電圧を印加すると、上側に黒色の微粒子222が集まり、下側に白色の微粒子221が集まる。その結果、図面上側から入射した周囲光が黒色の微粒子222に吸収されるので、「黒」を表現できる。
【0017】
また、
図3(c)に示すように、電極210,230の左下及び右上に正の電圧を印加すると、左上と右下に黒色の微粒子222が集まり、右上と左下に白色の微粒子221が集まる。この場合、上下共に白色の微粒子221及び黒色の微粒子222が半々になるので、図面上側から入射した周囲光の半分が反射され、残り半分が吸収されるので、「灰色」を表現できる。
【0018】
このように、光量制御手段40では、入射光の反射を制御する電子泳動方式を利用できる(参考文献1)。
なお、光量制御手段40では、電子泳動方式に代わり、エレクトロウェッティング方式も利用できる(参考文献2)。
【0019】
参考文献1:[online],[令和2年11月2日検索],インターネット<URL:https://jp.eink.com/electronic ink.html>
参考文献2:[online],[令和2年11月2日検索],インターネット<URL:https://japanese.engadget.com/jp-2008-10-19-colorbright.html>
【0020】
[LCD直視型表示装置の構成]
図4を参照し、LCD直視型表示装置1の構成について説明する。
図4に示すように、LCD直視型表示装置1は、バックライト10と、導光板20と、偏光板30と、光量制御手段40と、拡散板50と、LCD駆動素子60と、LCD(液晶表示手段)70と、偏光板80と、制御装置90とを備える。なお、
図4には、水平方向(X軸)、垂直方向(Y軸)、奥行き方向(Z軸)を図示した。また、光を破線のブロック矢印で図示し、ブロック矢印の太さが光の明るさを表している。
【0021】
バックライト10は、LCD直視型表示装置1のバックライトである。本実施形態では、バックライト10は、導光板20の側方に位置し、水平方向に光を出射する。例えば、バックライト10としては、一般的なLED(Light Emitting Diode)光源があげられる。
【0022】
導光板20は、バックライト10からの入射光をLCD70に導光するものである。例えば、導光板20としては、側方からの入射光を下側に拡散する一般的な拡散パネルがあげられる。
【0023】
偏光板30は、導光板20で拡散された入射光のうち、所定方向の偏光成分のみを透過させるものである。本実施形態では、偏光板30は、導光板20と対向するように、導光板20と一定の間隔を空けて位置している。例えば、偏光板30としては、X軸方向の直線偏光を透過する一般的な偏光フィルムがあげられる。
【0024】
光量制御手段40は、導光板20とLCD70との間に位置し、入射光を導光板20側に反射する又は入射光をLCD70に透過する素子で構成されたものである。この光量制御手段40は、前記した電気泳動方式により素子毎に入射光を反射又は透過する。本実施形態では、光量制御手段40は、偏光板30と拡散板50との間に挿入されており、後記する制御装置90からの指令に基づいて、ブロック単位で各素子が駆動する。なお、光量制御手段40については、詳細を後記する。
【0025】
拡散板50は、光量制御手段40の後段に位置し、光量制御手段40を透過した光を拡散させるものである。例えば、拡散板50は、光量制御手段40の出射面に隣接する一般的な拡散フィルムである。
【0026】
LCD駆動素子60は、制御装置90からの指令に基づいて、LCD70を駆動するものである。本実施形態では、LCD駆動素子60は、LCD70の入射面に隣接している。
LCD70は、入射光により映像を表示する一般的な液晶素子である。このLCD70の駆動方法については、詳細を後記する。
【0027】
偏光板80は、LCD70を透過した光のうち、偏光板30の偏光軸と直交する偏光成分のみを透過させるものである。本実施形態では、偏光板80は、LCD70の出射面に隣接している。例えば、偏光板80としては、Z軸方向の直線偏光を透過する一般的な偏光フィルムがあげられる。
【0028】
制御装置90は、LCD直視型表示装置1の各種制御を行うものである。具体的には、制御装置90は、光量制御手段40及びLCD駆動素子60の制御を行う。なお、制御装置90での信号処理については、詳細を後記する。
【0029】
<光量制御手段の構造>
以下、光量制御手段40の構造ついて、詳細に説明する。
従来の電子泳動方式では、球形の電子インクカプセル220(
図3)を用いている。この従来方式に対して、光量制御手段40では、直方体状の形状で壁面が電極であり、光を反射する白色の微粒子45だけが封入されている点が異なる。
【0030】
説明を簡易にするため、
図5に示すように、光量制御手段40は、2つの素子41(41
1,41
2)を有することとする。各素子41は、透明な電極42,43と、カプセル44と、基材46とを備える。また、図面上側から入射光が入射することとする。
【0031】
電極42(421,422)は、カプセル441,442のそれぞれに対応するように、光量制御手段40の入射面側に水平方向で形成されている。ここで、電極421,422は、カプセル441,442のそれぞれに電圧を印加できれば一体であってもよく、別々であってもよい。
電極43(431,322)は、カプセル441,442のそれぞれに対応するように、カプセル441,442の側面(例えば、図面左側)に垂直方向で形成されている。
【0032】
カプセル44(44
1,44
2)は、透明な筐体内部を透明な液体で満たし、白色の微粒子45を多数封入した電子インクカプセルである。つまり、カプセル44は、黒色の微粒子222が封入されていない以外、
図3の電子インクカプセル220と同様のものである。
基材46は、電極43及びカプセル44を支持する透明部材である。
【0033】
この光量制御手段40では、電極42,43に印可する電圧を制御することで、カプセル44内で微粒子45を移動させることができる。
図5(a)に示すように、1つ目の素子41
1では、電極43
1に正の電圧を印加し、電極42
1に負の電圧を印加したので、微粒子45が電極43
1に沿うようにカプセル44
1の側面に移動する。従って、素子41
1では、
図5(b)及び(c)に示すように、入射光が入射する入射面(X-Z平面)に対して微粒子45が垂直に並ぶので、大部分の入射光が透過する。なお、図面を見やすくするために微粒子45を少数図示したが、実際にはカプセル44
1の側面で多数の微粒子45が重なり合う状態となる。また、
図5(c)では、図面を見やすくするため、電極42,43の図示を省略した。
【0034】
また、
図5(a)に示すように、2つ目の素子41
2では、電極42
2に正の電圧を印加し、電極43
2に負の電圧を印加したので、微粒子45が電極42
2に沿うようにカプセル44
1の上面に移動する。従って、素子41
2では、
図5(b)及び(c)に示すように、微粒子45が入射面と水平に並ぶので、大部分の入射光が反射する。なお、実際にはカプセル44
1の上面で多数の微粒子45が重なり合う状態となる。
【0035】
なお、現状の電子ペーパーでは、完全に入射光を反射及び吸収できないので、大部分の入射光を反射及び吸収すると表記している。以後、
図5(b)及び(c)左側のように素子41が入射光を透過する状態を「On」と表記し、
図5(b)及び(c)右側のように素子41が入射光を反射する状態を「Off」と表記する。
【0036】
ここで、光量制御手段40は、複数の素子41からなるブロックで構成されている。
図6では、光量制御手段40は、縦3×横3で配列された9つの素子41を1ブロックとしたが、縦2×横2や縦4×横4であってもよい。全体でブロック数が100以上あれば、現在のローカルディミング処理と同様な信号処理を実現できる。
【0037】
図6~
図8には、ある1ブロックにおいて、0~9個の素子41をOnにした状態を図示した。ここで、Onにした素子41の数が多くなる程、映像Vが明るくなる。
図6(a)では、9つの素子41が全てOffなので、映像Vが最も暗い状態である。なお、
図6~
図8では、映像Vの明暗をドットの濃淡で図示した。
【0038】
図6(b)では、中央の素子41が1つだけOnなので、映像Vが2番目に暗い状態である。ここで、Onの素子41が1~8個の場合、光を透過する明部と、光を反射して暗部とが別々に形成されてしまい、映像Vの明暗がまだら状になってしまう。そこで、光量制御手段40の後段に拡散板50を配置することで、明部と暗部との光量を平均化し、映像Vの全体を均一の明るさにできる。
【0039】
図6(c)では、中央上下に位置する2つの素子41がOnなので、映像Vが3番目に暗い状態である。
図6(d)では、左上から右下に並んだ3つの素子41がOnなので、映像Vが4番目に暗い状態である。
図7(a)~(d)では、4~7個の素子41がそれぞれOnなので、映像Vが5~8番目に暗い状態である。
図8(a)では、中央の素子41が1つだけOffなので、映像Vが2番目に明るい状態である。
図8(b)では、9つの素子41が全てOnなので、映像Vが最も明るい状態である。
【0040】
なお、各ブロックでOnにする素子41の位置は特に制限されない。
図6(b)の例であれば、中央以外の周囲に位置する8個の素子41のうち、何れか1個の素子41をOnにしてもよい。
【0041】
<制御装置での信号処理>
以下、制御装置90での信号処理について、詳細に説明する。
図9に示すように、制御装置90は、ブロック割当手段91と、最大画素値検出手段92と、第1駆動手段93と、第2駆動手段94とを備える。
【0042】
ブロック割当手段91は、映像信号が入力され、入力された映像信号の各画素をブロックに割り当てるものである。本実施形態では、ブロック割当手段91は、以下の(3)式を用いて、映像信号の各画素を何れかのブロックに割り当てる。
【0043】
ここで、LCD70の画素数をIP×JPとする。また、光量制御手段40をN素子単位でブロックに分割したときのブロック数をIS×JSとする。説明を簡易にするため、映像信号がモノクロ信号であることとする。なお、映像信号がカラー信号の場合、以下で説明する信号処理の各式をRGB毎に定義すればよい。
【0044】
画素位置(i,j)での映像信号をv(i,j)と表記する。映像信号(電気信号)xに対する電気・光変換関数をγ(x)とすると、画素(i,j)での光出力L(i,j)は、(1)式で表される。例えば、ハイビジョンでの電気・光変換関数は、(2)式で表される。また、画素(i,j)が割り当てられたブロック(iS,jS)は、(3)式で表される。なお、(3)式では、[a]は、任意の実数aを超えない最大の整数を示す。
【0045】
【0046】
最大画素値検出手段92は、ブロック毎に映像信号vの最大画素値を検出するものである。本実施形態では、最大画素値検出手段92は、以下の(4)式を用いて、ブロック割当手段91が割り当てたブロック(iS,jS)毎に、映像信号の最大画素値vM(iS,jS)を検出する。ここで、ブロック(iS,jS)に含まれる映像信号vの各画素(i,j)の中において、最大画素値vM(iS,jS)は、(4)式で表される。
【0047】
【0048】
第1駆動手段93は、後記する透過率P(n),p(N)を予め設定し、ブロック毎の最大画素値vM(iS,jS)及び透過率P(n),p(N)に基づいて、入射光を透過する素子数nを算出して光量制御手段40を駆動するものである。本実施形態では、第1駆動手段93は、以下の(7)式を用いて、入射光を透過する素子数nを算出する。
【0049】
ここで、光量制御手段40の各ブロックは、N個の素子41で構成されており、n個の素子41がOnになることとする。透過率P(n)は、ブロック(iS,jS)内で入射光を透過する素子数(Onになる素子数)がn個のときの透過率である。この透過率P(n)は、素子数n毎に設定しておく。また、透過率P(N)は、ブロック(iS,jS)でN個の素子41が全てOnになるのときの透過率である。この場合、n個の素子41がOnになるとき、拡散板50を含めたブロック(iS,jS)の透過率P0(n)は、(5)式で表される。この(5)式は、後記する(7)式の左辺に対応させるため、(6)式のように定義する。
【0050】
【0051】
また、光量制御手段40でブロック(iS,jS)に対応する素子41のうち、Onになる素子数をn(iS,jS)とする。この場合、Onになる素子数n(iS,jS)は、最大画素値検出手段92が検出した最大画素値vM(iS,jS)を用いて、(7)式で表される。
【0052】
【0053】
すなわち、第1駆動手段93は、(7)式を用いて、ブロック(iS,jS)でOnになる素子数n(iS,jS)を算出し、この素子数n(iS,jS)でブロック(iS,jS)を駆動する指令を光量制御手段40に出力する。
【0054】
第2駆動手段94は、透過率P0に基づいて映像信号v(i,j)のレベル補正を行い、レベル補正後の映像信号でLCD70を駆動する。本実施形態では、第2駆動手段94は、以下の(8)式を用いて、レベル補正後の映像信号を算出する。
【0055】
ここで、LCD70に出力する映像信号をv´とする。この場合、n個の素子41がOnとなるブロック(iS,jS)に割り当てられた映像信号v´の画素v´(i,j)は、(8)式で表される。なお、γ-1(x)は、電気・光変換関数γ(x)の逆関数である。
【0056】
【0057】
[制御装置の動作]
図10を参照し、制御装置90の動作について説明する。
図10に示すように、ステップS1において、ブロック割当手段91は、(3)式を用いて、映像信号の各画素をブロックに割り当てる。
ステップS2において、最大画素値検出手段92は、(4)式を用いて、ブロック毎に映像信号の最大画素値を検出する。
ステップS3において、第1駆動手段93は、(7)式を用いて、ブロック内で入射光を透過する素子数を算出して光量制御手段40を駆動する。
ステップS4において、第2駆動手段94は、(8)式を用いて、レベル補正後の映像信号を算出してLCD70を駆動する。
【0058】
[作用・効果]
以上のように、第1実施形態に係るLCD直視型表示装置1では、映像の明るさに応じて、光量制御手段40が入射光を導光板20側に反射し、この入射光が導光板20で再反射されてLCD70に入射するので、入射光の利用効率を高くすることができる。つまり、LCD直視型表示装置1では、
図3の光量制御手段40の構成と、
図9の制御装置90による信号処理とを組み合わせることで、映像の暗部に入射する光を明部に振り分けて光を有効利用できる。
【0059】
例えば、HDTV(high definition television)放送では、平均信号レベルが約40%であり(参考文献3)、この平均信号レベルがピーク輝度の約1/7となる。ここで、LCD直視型表示装置1では、従来と同様なバックライト10を用いて映像を表示した場合、ピーク輝度が従来の約7倍になる。
参考文献3:岸本他「仮定の視聴環境に即した液晶テレビの最適表示輝度」、映像情報メディア学会誌、Vol.64、No.6、pp.881‐890、2010年
【0060】
(第2実施形態)
[LCD直視型表示装置の構成]
図4及び
図11を参照し、第2実施形態に係るLCD直視型表示装置1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
図11に示すように、光量制御手段40Bでは、入射光を反射する際、微粒子45が放物線状に並ぶ点が第1実施形態と異なる。
【0061】
図4に示すように、LCD直視型表示装置1Bは、バックライト10と、導光板20と、偏光板30と、光量制御手段40Bと、拡散板50と、LCD駆動素子60と、LCD(液晶表示手段)70と、偏光板80と、制御装置90とを備える。なお、光量制御手段40B以外の各手段は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0062】
<光量制御手段の構成>
以下、光量制御手段40Bの構成について、詳細に説明する。
説明を簡易にするため、光量制御手段40Bは、2つの素子41B(41B1,41B2)を有することとする。各素子41Bは、透明な電極42,43と、カプセル44Bと、基材46とを備える。また、図面上側から入射光が入射することとする。なお、カプセル44B以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0063】
カプセル44B(44B1,44B2)は、第1実施形態と同様、透明な液体で満たされ、白色の微粒子45が多数封入されている。また、カプセル44Bは、上面側に透明なガイド部材47が配置されている。このガイド部材47は、カプセル44B内で微粒子45の位置をガイドするものである。
【0064】
この光量制御手段40Bでは、電極42,43に印可する電圧を制御することで、カプセル44B内で微粒子45を移動させることができる。
図11(a)に示すように、1つ目の素子41B
1では、電極43
1に正の電圧を印加し、電極42
1に負の電圧を印加したので、微粒子45が電極43
1に沿うようにカプセル44B
1の側面に移動する。従って、素子41B
1では、
図11(b)に示すように、入射光が入射する入射面(X-Z平面)に対して微粒子45が垂直に並ぶので、大部分の入射光が透過する。なお、実際にはカプセル44Bの側面で多数の微粒子45が重なり合う状態となる。
【0065】
また、
図11(a)に示すように、2つ目の素子41B
2では、電極42
2に正の電圧を印加し、電極43
2に負の電圧を印加したので、微粒子45がガイド部材47に沿うようにカプセル44Bの上側に移動する。従って、
図11(b)に示すように、素子41B
2では、微粒子45が入射面に対して放物線状に並ぶので、大部分の入射光が反射する。なお、実際にはガイド部材47に沿うように多数の微粒子45が重な合う状態となる。
【0066】
[作用・効果]
以上のように、第2実施形態に係るLCD直視型表示装置1Bでは、第1実施形態と同様、入射光の利用効率を高くすることができる。
【0067】
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0068】
前記した第2実施形態では、光量制御手段が1素子単位でOn、Offを制御することとして説明したが、これに限定されない。
図12に示すように、光量制御手段40Bは、2素子単位でOn、Offを制御することもできる。なお、第1実施形態に係る光量制御手段も同様に2素子単位で制御できることは言うまでもない。
【0069】
説明を簡易にするため、光量制御手段40Bは、4つの素子41B(41B1~41B4)を有することとする。また、光量制御手段40Bは、左2つの素子41B1,41B2を一組、右2つの素子41B3,41B4を一組としてOn、Offする。従って、左2つの素子41B1,41B2の間、及び、右2つの素子41B3,41B4の間に電極43がそれぞれ形成されている。
【0070】
この光量制御手段40Bでは、電極42,43に印可する電圧を制御することで、カプセル44B内で微粒子45を移動させることができる。
図12(a)に示すように、左2つの素子41B
1,41B
2では、電極42に正の電圧を印加し、電極43に負の電圧を印加したので、微粒子45がガイド部材47に沿うようにカプセル44Bの上側に移動する。従って、
図12(b)に示すように、素子41B
1,41B
2では、微粒子45が入射面に対して放物線状に並ぶので、大部分の入射光が反射する。なお、実際にはガイド部材47に沿うように多数の微粒子45が重な合う状態となる。
【0071】
また、
図12(a)に示すように、右2つの素子41B
3,41B
4では、電極43に正の電圧を印加し、電極42に負の電圧を印加したので、微粒子45が電極43に沿うようにカプセル44Bの側面に移動する。従って、
図12(b)に示すように、素子41B
3,41B
4では、微粒子45が入射面に対して垂直に並ぶので、大部分の入射光が透過する。なお、実際にはカプセル44Bの側面で多数の微粒子45が重なり合う状態となる。
【0072】
前記した各実施形態では、制御装置を独立したハードウェアとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した制御装置として動作させるプログラムで実現することもできる。これらのプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1B LCD直視型表示装置(直視型液晶表示装置)
10 バックライト
20 導光板
30 偏光板
40,40B 光量制御手段
41,411,412 素子
41B,41B1~41B4 素子
42,421,422 電極
43,431,322 電極
44,441,442 カプセル
45 微粒子
46 基材
47 ガイド部材
50 拡散板
60 LCD駆動素子
70 LCD(液晶表示手段)
80 偏光板
90 制御装置
91 ブロック割当手段
92 最大画素値検出手段
93 第1駆動手段
94 第2駆動手段
100 LCD直視型表示装置
110 導光板
120,150 偏光板
130 LCD駆動素子
140 LCD
160 バックライト
210,230 電極
220 電子インクカプセル
221,222 微粒子
240 駆動回路