IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097984
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】精神状態改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/37 20060101AFI20220624BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220624BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K36/37
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/00 101
A61K9/20
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211284
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小田 由里子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】関 忍
(72)【発明者】
【氏名】植田 文教
(72)【発明者】
【氏名】飯田 篤史
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF07
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD25
4C076DD29
4C076DD46
4C076EE31
4C088AB12
4C088AC11
4C088CA05
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZA12
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、抑うつ状態、友好性、又は強迫の改善を通じて精神状態を改善することができる精神状態改善剤を提供することである。
【解決手段】本発明によれば、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を含有する、精神状態改善剤が提供される。本発明の精神状態改善剤によれば、抑うつ状態、友好性、又は強迫の改善を通じて精神状態を改善することができる。さらに本発明の精神状態改善剤によれば、腸内の有機酸である乳酸は増加させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を含有する、精神状態改善剤。
【請求項2】
サラシア属植物がサラシア・レティキュラータ、サラシア・オブロンガ、サラシア・プリノイデス、サラシア・キネンシスより選択される1種以上である、請求項1に記載の精神状態改善剤。
【請求項3】
精神状態改善剤がα-グルコシダーゼ阻害活性を有し、α-グルコシダーゼ阻害活性の指標としてのスクラーゼの50%阻害濃度が5μg/ml以上2000μg/ml以下である、請求項1又は2に記載の精神状態改善剤。
【請求項4】
精神状態改善剤が飲食品又は医薬品である、請求項1から3の何れか一項に記載の精神状態改善剤。
【請求項5】
抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも一以上の改善のための、請求項1から4の何れか一項に記載の精神状態改善剤。
【請求項6】
抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも一以上の改善が、
一時的又は心理的なストレスを低減、緩和、軽減、又は和らげること
活力、元気、活気がわいてくる気分、心の健康、又は楽しくおだやかな気分を維持すること、
日常生活における不安感、気分の落ち込み、又は精神的ストレスを緩和すること、
活気・活力感、積極的な気分、いきいきとした気分、又はやる気の低下を軽減する機能、
一時的に落ち込んだ気分を前向きにする、積極的な気分にする、生き生きとした気分にする、又はやる気にすること、
他者に対してポジティブな感情を感じること、
対人コミュニュケーションにおける不安・不快を低減、緩和、軽減、又は和らげること、
ある考えにとらわれたり、行動を続けたり、行動を繰り返したりすることを低減、緩和、軽減、和らげること、
腸内の乳酸が増加することにより、乳酸が体内に取り込まれ、エネルギー源になることにより、気力回復又は気分改善すること、及び
これらの組合せから選ばれる少なくとも一つである、請求項1から5の何れか一に記載の精神状態改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神状態改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属植物の根及び幹は、インド及びスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて天然薬物として利用されてきた。スリランカでは、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)の根皮が、リュウマチ、淋病及び皮膚病の治療に有効であること、そして上記の根皮を初期糖尿病の治療に用いることが伝承されている。
【0003】
サラシア属植物の抽出物又は粉砕物の腸への効果については、腸内細菌数を抑制することが知られている。例えば、特許文献1には、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を含有する腸内細菌数抑制剤であって、腸内細菌が、フソバクテリア(Fusobacteriaceae)科フソバクテリウム(Fusobacterium)属及びデスルホビブリオ(Desulfovibrionaceae)科デスルホビブリオ(Desulfovibrio)属の菌から選ばれる1種以上である、腸内細菌数抑制剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6573639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、サラシア属植物の抽出物の摂取により、特定の腸内細菌数を減らすことができ、これにより、体の疲れ、気分の落ち込み、腹部症状等が改善されることが記載されている。しかしながら、サラシア属植物の抽出物の摂取により、抑うつ状態、友好性、又は強迫が改善されるかどうかについては不明であり、抑うつ状態、友好性、又は強迫の改善を通じて精神状態を改善できるかどうかについても不明であった。
【0006】
精神状態の不調は多くの人が抱える現代病である。しかし、精神状態の不調を抱えた人は病院にいかない場合も多く、精神状態の不調を放置することによりうつ病まで悪化する場合もある。未病状態の人を疾病まで至らないうちに、不調を改善できる精神状態改善剤が求められている。本発明が解決しようとする課題は、抑うつ状態、友好性、又は強迫の改善を通じて精神状態を改善することができる精神状態改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、対象にサラシア属植物の抽出物を摂取させることにより、抑うつ状態、友好性及び強迫が改善されることを見出した。上記の知見は、気分の落ち込みだけではなく、様々な精神状態の不調全般をサラシア属植物の抽出物が改善し、精神状態を安定できることを新たに示したものである。本発明は、上記知見に基づいて完成したものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
【0008】
<1> サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を含有する、精神状態改善剤。
<2> サラシア属植物がサラシア・レティキュラータ、サラシア・オブロンガ、サラシア・プリノイデス、サラシア・キネンシスより選択される1種以上である、<1>に記載の精神状態改善剤。
<3> 精神状態改善剤がα-グルコシダーゼ阻害活性を有し、α-グルコシダーゼ阻害活性の指標としてのスクラーゼの50%阻害濃度が5μg/ml以上2000μg/ml以下である、請求項1又は2に記載の精神状態改善剤。
<4> 精神状態改善剤が飲食品又は医薬品である、<1>から<3>の何れか一に記載の精神状態改善剤。
<5> 抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも一以上の改善のための、<1>から<4>の何れか一に記載の精神状態改善剤。
<6> 抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも一以上の改善が、
一時的又は心理的なストレスを低減する(緩和、軽減、和らげるなどを含む)こと、
活力(元気や活気がわいてくる気分などを含む)、心の健康(楽しくおだやかな気分でいることなどを含む)を維持すること、
日常生活における不安感、気分の落ち込み、精神的ストレスを緩和すること、
活気・活力感(積極的な気分、いきいきとした気分、やる気など)の低下を軽減すること、
一時的に落ち込んだ気分を前向きにする(積極的な気分にする、生き生きとした気分にする、やる気にするなど)こと、
他者に対してポジティブな感情を感じること、
対人コミュニュケーションにおける不安・不快を低減する(緩和、軽減、和らげるなどを含む)こと、
ある考えにとらわれたり、行動を続けたり、行動を繰り返したりすることを低減する(緩和、軽減、和らげるなどを含む)こと、
腸内の乳酸が増加することにより、乳酸が体内に取り込まれ、エネルギー源になることにより、気力回復又は気分改善すること、及び
これらの組合せから選ばれる少なくとも一つである、<1>から<5>の何れか一に記載の精神状態改善剤。
【0009】
<A> サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を、精神状態の改善を必要とする対象に投与することを含む、精神状態の改善方法。
<A1> サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を、精神状態の改善を必要とする対象に投与することを含む、精神状態の改善方法(ただし、医学的方法を除く)。
<B> 精神状態を改善する処置において使用するためのサラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物。
<B1> 精神状態を改善する処置において使用するためのサラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物(ただし、医学的使用を除く)。
<C> 精神状態改善剤の製造のための、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の使用。
<C1> 精神状態改善剤の製造のための、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の使用。(ただし、医学的使用を除く)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の精神状態改善剤によれば、抑うつ状態、友好性、又は強迫の改善を通じて、精神状態を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の精神状態改善剤は、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を含有する。
本発明の精神状態改善剤によれば、十分な精神状態の安定効果を得ることができ、これにより、例えば、引きこもりの防止及び自殺の防止を図ることができる。また、本発明の精神状態改善剤は、腸内の有機酸である乳酸を増加させることもできる。腸内の乳酸が増加することにより、乳酸が体内に取り込まれ、エネルギー源になることにより、気力回復又は気分改善を図れることが期待できる。
【0012】
<サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物>
サラシア属植物は、主としてスリランカ、インド及び東南アジア地域に自生するデチンムル科の植物であり、より具体的にはサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis)、サラシア・ラティフォリア(Salacia latifolia)、サラシア・ブルノニアーナ(Salacia burunoniana)、サラシア・グランディフローラ(Salacia grandiflora)、及びサラシア・マクロスペルマ(Salacia macrosperma)から選ばれる1種類以上の植物が挙げられる。サラシア属植物としては、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、及びサラシア・キネンシス(Salacia chinensis)から選ばれる少なくとも1種の植物であることが好ましい。
【0013】
本明細書において、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物とは、サラシア属植物の根、幹、葉、花、果実等可食部の粉砕物及び/又は抽出物、上記粉砕物及び/又は抽出物の乾燥物を包含する意味で用いられる。本明細書において、乾燥物とは、乾燥粉末(エキス末)でもよい。上記したサラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を調製する際には、サラシア属植物の1種類以上の部位を混合して使用してもよい。サラシア属植物の抽出物としては、より好ましくは、根、及び幹から選ばれる部位から抽出した抽出物を乾燥して得られるエキス末が用いられる。
【0014】
乾燥粉末(エキス末)は、好ましくは、サラシア属植物の可食部等を溶媒によって抽出し、上記で得られた抽出物を乾燥させることによって得ることができる。
抽出に用いる溶媒としては、水、アルコール、又はケトン等が挙げられ、これらを2種以上混合した混合溶媒を用いてもよい。アルコールとしては、メタノール、又はエタノール等が挙げられ、エタノールが好ましい。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサン等が好ましい。
【0015】
上記の中でも、水、アルコール、水とアルコールとの混合溶媒、又は水とケトンとの混合溶媒等が好ましく、水、アルコール、又は水とアルコールとの混合溶媒がより好ましく、50℃~98℃の熱水、エタノール、又は水とエタノールとの混合溶媒がさらに好ましい。
【0016】
水とアルコールとの混合溶媒におけるアルコール含有量は、30質量%~90質量%が好ましく、40質量%~70質量%がより好ましい。
【0017】
抽出物を乾燥して、乾燥粉末(エキス末)を得る際の乾燥方法は、特に制限はなく、公知の乾燥方法、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられる。また、公知の賦形剤、例えば、デキストリン等の糖類を用いて乾燥粉末とすることもできる。より活性の高い乾燥粉末を得る観点からは、抽出物をそのままスプレードライ等により噴霧乾燥させて調整することが好ましい。
【0018】
また、本発明で用いるサラシア属植物の抽出物は、好ましくは、国際公開WO2019/065396に記載されている方法により製造することができる。即ち、本発明で用いるサラシア属植物の抽出物は、サラシア属植物、サラシア属植物抽出物、及びサラシア属植物粉砕物の少なくとも一つからなるサラシア属植物含有原料抽出物に対して抽出溶媒の存在下で0.1~20質量%の活性炭と接触させる抽出工程を含む、精製サラシア属植物抽出物の製造方法によって製造されたものでもよい。
【0019】
活性炭は、その種類及び特性等は特に限定されることなく用いることができる。活性炭の炭素質材料としては、椰子殻、パーム椰子、果実の種、鋸屑、ユーカリ、松などの植物系、石炭系、石油系のコークス及びそれらを原料としたピッチの炭化物、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などをあげることができるが、椰子殻、パーム椰子、果実の種、鋸屑、ユーカリ、松などの植物系材料由来のものが好ましい。
【0020】
活性炭としては、市販品を用いることができ、例えば、白鷺(登録商標)C、白鷺WH2c、白鷺W2c、白鷺WH2x、白鷺X7000H、白鷺X7100H、白鷺LGK-100、白鷺WHA、白鷺M、白鷺A、白鷺P、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、特性白鷺、粒状白鷺LH2c、粒状白鷺KL、粒状白鷺MAC-W(以上、商品名、大阪ガスケミカル(株)製)、太閤Sタイプ(太閤S,太閤DP,太閤SA1000)、太閤Kタイプ(太閤K,太閤A,太閤KA,太閤M)(以上、商品名、フタムラ化学(株)製)等が挙げられる。また、これらの活性炭をさらに精製処理したものであってもよい。
【0021】
活性炭の平均細孔径は、α-グルコシダーゼ活性阻害をより高めた精製サラシア属植物抽出物を得る観点から、0.5~10nmが好ましく、1.0~10nmがより好ましく、3.0~8.0nmがさらに好ましく、3.0~6.0nmがよりさらに好ましい。
【0022】
活性炭の比表面積は、回収率を高める観点から500~2500m/gが好ましく、1000~2000m/gがより好ましく、1200~1800m/gがさらに好ましい。
【0023】
詳細な機構は定かではないが、活性炭がサラシア属植物抽出物中に含まれる特定成分を選択的に除去することにより、α-グルコシダーゼ活性阻害を示す化合物の活性をより高めることができるためと考えられる。
活性炭の平均細孔径および比表面積は、活性炭が市販品の場合、カタログに記載されている値を採用することができる。また、市販品の有無に関わらず、これらの値が不明な場合は、JIS Z 8830(2013)、ISO 9277(2010)に準拠したガス吸着による比表面積測定方法により測定することができる。
【0024】
接触させる活性炭の量は、苦みを低減させる観点から、サラシア属植物含有原料抽出物に対して0.20質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましい。また、回収率を高める観点からサラシア属植物含有原料抽出物に対して15.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましい。
【0025】
活性炭との接触時間は、精製サラシア属植物抽出物を効率よく得る観点から、5分以上であることが好ましく、30分以上がより好ましい。また、α-グルコシダーゼ活性阻害をより高めた精製サラシア属植物抽出物を得る観点から、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましい。
【0026】
活性炭と接触させる抽出工程における抽出溶媒としては、その種類および特性などは特に限定されることなく用いることができ、水及び/又は有機溶媒を用いることができるが、製造コストの観点から水であることが好ましい。水の種類は特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、天然水等から適宜選択して使用することができる。
また、有機溶媒を使用する場合、例えば、エタノール、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステルが例示される。アルコール、ケトン等の親水性有機溶媒が好ましく、製剤または食品への使用を考慮すると、アルコールがより好ましく、エタノールがより更に好ましい。
なお、抽出溶媒は、上述したサラシア属含有原料が含む抽出溶媒であってもよい。すなわち、原料となるサラシア属植物抽出物(エキス)を調製するために使用した溶媒をそのまま抽出溶媒として用いてもよい。
【0027】
活性炭と接触させる際の温度は、得られる精製サラシア植物属抽出物のα-グルコシダーゼ活性阻害能を高める観点から10~100℃が好ましく、25℃~80℃がより好ましく、25~75℃がさらに好ましく、30~65℃がより更に好ましい。
【0028】
活性炭と接触させる手段としては特に限定されることなく、公知の方法を採用することができる。例えば、サラシア属植物の抽出物、またはサラシア属植物の粉砕物に抽出溶媒、活性炭を添加し、撹拌して吸着後、ろ過操作により活性炭を回収するバッチ方法、又は活性炭を充填したカラムを用いて連続処理により接触させるカラム方法等が挙げられる。
バッチ方式は、長時間の接触を容易に実現できるため生産性の観点から好ましく用いることができる。
サラシア属植物含有原料抽出物に対して抽出溶媒を添加後、抽出溶媒を徐々に加温してから活性炭を添加させる方法が生産性の観点から好ましい。
【0029】
抽出工程を経て得られた抽出物を、ろ過、遠心分離、沈殿処理、膜処理等から選択される固液分離処理のうち1種又は2種以上を組合せて行うことにより、サラシア属植物の固形分および活性炭を除去し、精製サラシア属植物抽出物を得ることができる。
ろ過の方法は特に限定されず、例えば、ろ紙、金属製フィルタ、ガスフィルタ等によるフィルタ分離を採用することができる。フィルタのメッシュサイズは、サラシア属植物の固形分および活性炭を確実に除去が可能であれば特に制限はない。
【0030】
遠心分離は、特に限定されず、例えば、分離板型、円筒型、デカンター型等の公知の機器を使用して行うことができる。遠心分離の使用条件(回転数および時間)は、サラシア属植物の固形分および活性炭を確実に除去が可能であれば特に制限はない。
膜処理は、例えば、細孔径が10μm以下の高分子材料からなる膜を通過させる処理であり、膜の形態としては、平膜、中空糸膜等を挙げることができる。
分離工程において、精製効率を高める観点から、抽出工程で得られた抽出物を濃縮又は乾燥により高濃度化する濃縮工程を加えてもよく、分離工程の途中において濃縮工程を利用してもよい。
【0031】
<α-グルコシダーゼ阻害活性>
本発明の精神状態改善剤は、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を含有するが、α-グルコシダーゼ阻害活性を有していてもよいし、α-グルコシダーゼ阻害活性を有していなくてもよい。好ましくは本発明の精神状態改善剤は、α-グルコシダーゼ阻害活性を有している。
【0032】
α-グルコシダーゼ阻害活性の指標としてのスクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は以下の方法で測定することができる。
[実験法1]スクラーゼIC50値の測定
サンプル溶液の準備:チューブに2mgのサンプルを量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
【0033】
基質液の準備:0.2mol/Lマレイン酸バッファー(pH6.0)にスクロース濃度100mmol/Lとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
粗酵素液の準備:10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5分)した。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
【0034】
上記の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温した。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37℃にて60分間反応させた。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させた。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、富士フイルム和光純薬株式会社)を使用して定量を行う。
【0035】
ブランクの準備:上記の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
得られた値より検量線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度(IC50値)を求める。
【0036】
スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)は、好ましくは5μg/ml以上2000μg/ml以下であり、より好ましくは10μg/ml以上1000μg/ml以下であり、さらに好ましくは10μg/ml以上500μg/ml以下であり、特に好ましくは20μg/ml以上200μg/ml以下であり、最も好ましくは30μg/ml以上100μg/ml以下である。
【0037】
<その他成分>
本発明の精神状態改善剤は、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物に加えて、更に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、乳酸菌、ミネラル酵母、フラボノイド、ポリフェノール、及び免疫賦活作用を有する経口物質等が挙げられるが、特に限定されない。上記の他の成分としては、具体的には、特開2015-127340号公報の段落番号0023~0038に記載された成分を挙げることができる。
【0038】
本発明の精神状態改善剤は、さらに、ビタミン、ビタミン様物質、タンパク質、アミノ酸、油脂、有機酸、炭水化物、植物由来原料、動物由来原料、微生物、食品用添加物、及び医薬品用添加物から選択される1種以上等、経口摂取可能な成分を適宜含有させることができる。
【0039】
<製剤>
本発明の精神状態改善剤は、薬学的若しくは食品衛生上許容される各種の担体、例えば賦形剤、滑沢剤、安定剤、分散剤、結合剤、希釈剤、香味料、甘味料、風味剤、及び着色剤から選択される1種以上の添加物を用いて調製することができ、好ましくは経口投与剤として調製することができる。
【0040】
本発明の精神状態改善剤は、本発明の効果を奏するものである限り、特に制限されず、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、咀嚼剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセルに充填されたもの)、液剤、チュアブル剤、また後記する飲食品の形態であってもよい。
上記した投与形態は、当業者に知られた慣用的な方法を用いて調製することができる。
【0041】
錠剤、丸剤及び顆粒剤の場合、必要に応じて慣用的な剤皮を施した剤形、例えば糖衣錠,ゼラチン被包剤、腸溶被包剤、フィルムコーティング剤等とすることもでき、また錠剤は二重錠等の多層錠とすることもできる。
【0042】
本発明においては、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の経時による変色を改善するため、乾燥剤として炭酸カルシウム及び/又は二酸化ケイ素(好ましくは微粒二酸化ケイ素))を配合してもよい。本発明の精神状態改善剤が錠剤又はカプセル剤である場合、本発明の精神状態改善剤は、錠剤又はカプセル剤の質量の1%以上の量の炭酸カルシウム及び/又は二酸化ケイ素を含有してもよい。炭酸カルシウム又は二酸化ケイ素の添加については、それぞれ単独で1質量%以上含有していてもよく、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素の合計が1質量%以上含まれていてもよい。なお、食品用途の場合、食品衛生法により炭酸カルシウムは添加量の上限は2.5質量%であり、二酸化ケイ素の添加量の上限は2.0質量%であることから、本発明の精神状態改善剤を食品として提供する場合には、炭酸カルシウムの添加量は2.5質量%以下であり、二酸化ケイ素の添加量は2.0質量%以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の精神状態改善剤は、食品あるいは食品添加物として利用可能な低吸湿原料、吸湿剤、酸化防止剤等を配合することができる。好ましくは低吸湿性原料としてセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、トレハロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル等が用いられる。吸湿剤としてはケイ酸塩類、炭酸マグネシウム、フェロシアン化物、多糖類等が用いられる。より好ましくは低吸湿性原料として結晶セルロース、微結晶セルロース、乳糖、ショ糖脂肪酸エステルが用いられる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸若しくはアスコルビン酸ナトリウム等が用いられる。
【0044】
本発明の精神状態改善剤は、さらに、粉末、固形剤又は液剤に成型するのに必要な化合物を適宜包含していてもよい。上記化合物の例としては、エリスリトール、マルチトール、ヒドロキシプロピルセルロース、カオリン、タルク等が挙げられる。
【0045】
<使用方法>
本発明の精神状態改善剤は、ヒトを含む動物を投与する対象とし、動物に経口的に摂取させることができる。動物として、ヒト、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、及び霊長類などの哺乳動物を挙げることができるが、これらに限定されない。動物して好ましくはヒトである。
本発明の別の観点によれば、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物を、精神状態の改善を必要とする対象に投与することを含む、精神状態の改善方法が提供される。
【0046】
本発明の精神状態改善剤を、例えば、ヒトに投与する場合、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の投与量は、0.1mg/kg/日以上が好ましく、0.5mg/kg/日以上がより好ましく、1.0mg/kg/日以上がさらに好ましく、2.0mg/kg/日以上がさらに好ましく、4.0mg/kg/日以上がさらに好ましい。サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の投与量の上限は特に限定されないが、一般的には、100mg/kg/日以下であり、好ましくは50mg/kg/日以下である。
【0047】
本発明の精神状態改善剤を、例えば、ヒトに投与する場合、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物のヒト一日の摂取量は、1mg以上10000mg以下(好ましくは5mg以上5000mg以下であり、より好ましくは10mg以上3000mg以下であり、さらに好ましくは20mg以上500mg以下である)である。
【0048】
本発明の精神状態改善剤に含まれるサラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の量は、適宜設定することができる。例えば、1日摂取量が3錠である錠剤を作製する場合、1錠あたり1日摂取量の1/3を含有することが好ましい。
【0049】
本発明の精神状態改善剤は、精神状態又は疾患を予防又は治療するために使用することができる。治療するとは、神経状態に関係する少なくとも1つの状態又は症状を、減弱、低減、又は改善させることを目的として、対象に投与することを意味する。予防するとは、神経状態に関係する少なくとも1つの状態又は症状の発現又は発症を低減又は改善するために、状態又は症状を示していない対象に投与することを意味する。
【0050】
本発明の精神状態改善剤の摂取により、好ましくは、抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも一以上を改善することができ、より好ましくは、抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも二以上を改善することができ、特に好ましくは抑うつ状態、友好性、及び強迫の全てを改善することができる。精神疾患としては、気分障害(うつ病、双極性障害など)などを挙げることができるが、特にこれらに限定されない。
本発明の精神状態改善剤は、長期服用しても安全であり、副作用が少ない。
【0051】
抑うつ(状態)とは、わずらわしい、食欲がない、気が晴れない、集中できない、ゆううつである、億劫である、面倒である、気分が落ち込んでいるなどの状態又は症状を意味する。日常生活ではうつ(又はうつ状態)という用語が用いられるが、本発明において抑うつとは、うつ(又はうつ状態)を含む。
【0052】
友好性とは、他者に対してポジティブな感情を感じること、又は他者を思いやる心を意味する。友好性は協調性とも言える。友好性の傾向として、非利己的で他者に対して受容的、友好的に接すること、他者と競い合うのではなく、相手に合わせて調和を図ったり、協力したりすること、又は自分と相手の双方にとってより良い解決を目指したりすることなどが挙げられる。
【0053】
強迫とは、不安障害を意味し、例えば、強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder; OCD)などが挙げられる。強迫は、強迫観念と強迫行為に特徴づけられる。強迫観念として、無意味、不適切、又は侵入的と判断され、無視又は抑制しようとしても心から離れない思考、衝動、又はイメージなどが挙げられる。強迫行為は、強迫観念に伴って高まる不安を緩和及び打ち消すための行為である。強迫行為として、不安が原因となってある行動を続ける又はある行動を繰り返すことが挙げられる。
【0054】
精神状態の評価は、心の状態又は気持ちの状態に関する質問又は問診により評価することができる。精神状態の改善を評価するに当たり、評価方法は特に限定されないが、本発明では、以下に示す評価を用いることができる。
例えば、抑うつ状態の評価として、世界的に利用されている抑うつ評価尺度として、Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)が挙げられる。CES-Dでは、身体症状・うつ感情・対人関係・ポジティブ感情について質問を回答する(自己評価する)ことにより、抑うつ感情、ストレス状態などを評価することができる。また、友好性の評価として、感情(気分)プロフィール検査Profile of Mood States 2nd Edition(POMS2)を用いて評価することができる。これは、気分状態を網羅し検査評価する質問紙法であり、気分を表す 65 問の質問項目から構成されており、5 段階で回答する検査である。さらに、強迫の評価として、ホプキンス症候群チェックリストを用いて評価することができる。これは、54項目で構成され、4段階で評価させる質問紙である。
【0055】
本発明において、抑うつ状態、友好性、及び強迫のうちの少なくとも一以上の改善として、
一時的又は心理的なストレスを低減こと(緩和、軽減、和らげるなどを含む)、
活力(元気や活気がわいてくる気分などを含む)、心の健康(楽しくおだやかな気分でいることなどを含む)を維持すること、
日常生活における不安感、気分の落ち込み、精神的ストレスを緩和すること、
活気・活力感(積極的な気分、いきいきとした気分、やる気など)の低下を軽減すること、
一時的に落ち込んだ気分を前向きにする(積極的な気分にする、生き生きとした気分にする、やる気にするなど)こと、
他者に対してポジティブな感情を感じること、
対人コミュニュケーションにおける不安・不快を低減する(緩和、軽減、和らげるなどを含む)こと、
ある考えにとらわれたり、行動を続けたり、行動を繰り返したりすることを低減する(緩和、軽減、和らげるなどを含む)こと、
腸内の乳酸が増加することにより、乳酸が体内に取り込まれ、エネルギー源になることにより、気力回復又は気分改善すること、及び
これらの組合せから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。しかし、これらに限定されない。
なお、本発明において、精神状態として、体の疲れ、気分の落ち込み、腹部症状等の改善を除くことが好ましい。
【0056】
<飲食品及び医薬品>
本発明の精神状態改善剤の形態は、特に限定されず、例えば、飲食品(飲料、及びサプリメントを含む)、食品材料、医薬部外品、医薬品、医薬品材料、及び医薬部外品材料の何れでもよい。
【0057】
本発明によれば、本発明の精神状態改善剤を含有する、精神状態を改善するための飲食品及び医薬品が提供される。
【0058】
本発明の医薬品としては、上記した各種形態の本発明の精神状態改善剤を医薬品として提供すればよい。
【0059】
本発明の飲食品としては、健康食品(錠剤、顆粒、カプセル、粉体等)、ドリンク剤、飲料等が挙げられる。
【0060】
本発明の飲食品の形態は、特に限定されず、主として経口経路で体内へ供給可能な種々の形態とすることができる。本発明の飲食品は、例えば、粉末食品、顆粒状食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、又はドリンク剤等の形態において提供することができる。本発明の飲食品は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いることができる。
本発明の飲食品が、機能性食品の形態の場合、栄養ドリンク、滋養強壮剤、嗜好性飲料、冷菓等の一般的な食品類のみならず、錠剤状、顆粒状、カプセル状の栄養補助食品として提供することも好ましい。
【0061】
本発明の精神状態改善剤を含有する飲食品又は医薬品において、機能性関与成分名、保健機能を有する成分、関与成分、又は有効成分名を表示する場合、サラシノール又はサラシア由来サラシノールと表示することが好ましい。
【0062】
本発明の精神状態改善剤を含有する飲食品において、機能性関与成分を含む原材料名を表示する場合、サラシア抽出物、サラシアエキス、サラシアエキス末、サラシア属植物エキス、サラシア属植物エキス末、サラシア濃縮エキス、サラシアエキス顆粒、サラシア・レティキュラ―タエキス、コタラヒムブツ(サラシア・レティキュラータ)エキス末の少なくとも一つから選ばれることが好ましい。
【0063】
本発明の飲食品は、本発明の精神状態改善剤以外に、一般に飲食品に用いられる成分を所望により含有していてもよい。
本発明の飲食品に使用しうる成分としては、例えば、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤(賦形剤)、香料、香辛料抽出物、pH調整剤等が挙げられる。
【0064】
本発明の飲食品のpHは、既述の組成物と同様に、サラシノールの安定性向上の観点から、8.0以下とすることが好ましく、7.0以下とすることがより好ましく、3.0~6.0とすることが更に好ましい。
飲食品におけるpHの調整に使用可能なpH調整剤は、食品分野で通常用いられるものであればいずれも使用することができる。
【0065】
飲食品に使用可能なpH調整剤としては、例えば、グルコン酸、L-酒石酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸及びこれらの誘導体から選ばれる有機酸、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム等の無機酸を挙げることができる。
有機酸は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等の塩の形態をとるものであってもよい。
pH調整剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
飲食品用途において使用可能な他の成分としては、乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質等、又は、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物等が挙げられる。
【0067】
また飲食品は、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン、乳化剤、香料等を配合した自然流動食、半消化態栄養食及び栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤等の加工物の形態をとることができる。
【0068】
飲食品をドリンク剤の形態とする場合は、栄養バランス、及び摂取時の風味を改良するために、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等の栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料及び色素等を配合してもよい。
【0069】
本発明の精神状態改善剤が飲食品として用いられる場合、その含有量は、目的に応じて適宜選択することができる。サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の有効性を十分に発現させるという観点からは、飲食品中におけるサラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の含有量が、飲食品の全量に対して、1質量%~60質量%の範囲であることが好ましく、1質量%~40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0070】
<サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の用途>
本発明の別の観点によれば、精神状態の改善のための処置において使用するためのサラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物が提供される。
本発明のさらに別の観点によれば、精神状態改善剤の製造のための、サラシア属植物の抽出物及び/又は粉砕物の使が提供される。
上記発明における好ましい態様は、本明細書中において上記した通りである。
【実施例0071】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
<錠剤の製造>
サラシア属植物エキス末は、国際公開WO2019/065396の実施例6と同様に製造した。具体的には以下の通りである。サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)の根の部分を粉砕後、70℃の熱水にて抽出して得られた溶液を濃縮し、サラシア属植物含有原料抽出物(固形分濃度10~15質量%)を得た。上記の手順にて調製したサラシア属植物含有原料抽出物に対し、活性炭(平均細孔直径4.5nm、及び比表面積1700m/g)7.00質量%を撹拌しながら添加して混合溶液を得た。得られた混合溶液を撹拌しながら50℃まで加温し、60分間撹拌しながら活性炭と反応させて抽出工程を行った。反応後、ろ過、遠心分離(回転数:1050rpm、時間:10分)を行い、混合溶液の上清液を回収した。続いて上清液の濃縮、スプレー乾燥を経てサラシア属植物エキス末を得た。
【0073】
得られたエキス末を用いて下記表に記載の配合で錠剤(150mg/錠)を製造した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
<スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)の測定>
サンプル溶液の準備:
チューブに2mgのサンプルを量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
【0077】
基質液の準備:
0.2mol/Lマレイン酸バッファー(pH6.0)にスクロース濃度100mmol/Lとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
【0078】
粗酵素液の準備:
10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5min)した。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
前述の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温した。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37℃にて60分間反応させた。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させた。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、富士フイルム和光純薬株式会社)を使用して定量を行う。
【0079】
ブランクの準備:
前述の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
【0080】
上記の測定の結果、サラシア属植物エキス末のIC50は60.6μg/mlであった。
【0081】
<精神状態の改善についての試験>
成人男女30名を対象に、無作為に2群に振り分けた。
第1群には試験食としてサラシア属植物エキス含有錠剤を摂取(1日あたりの摂取量:錠剤600mg、サラシア属植物エキスとして240mg)させ、第2群には、プラセボ錠剤を摂取させた。それぞれ4週間摂取させ、摂取前後及び群間の精神状態の差を検討した。
【0082】
精神状態の評価は、The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)(うつ病自己評価尺度)、気分状態を評価する日本語版 Profile of Mood States 2nd Edition(POMS2)、並びにストレス状態を評価するHopkins Symptom Checklist(HSCL)を、試験開始前と終了時に、用紙に記載する形で実施した。
【0083】
CES-Dについては、以下の項目(http://blog.livedoor.jp/sakikairiku/archives/51247388.html)を評価した。下記の表においては、それぞれの症状が、最近一週間のうちでどれくらいの日数みられたかによって評価する。1項目が3点満点で、合計0点から60点の間で点数がつく。合計点が16点以上であれば、うつ状態又はうつ病が疑われる。
【0084】
【表3】
【0085】
POMS:Profile of Mood States2
Profile of mood status 2(全項目版)は、成人の感情機能を理解するうえで有用な、 幅広い気分状態を網羅し検査評価する質問紙法の1つである。気分を表す 65 問の質問項目から構成されており、過去 1 週間について“0:全くなかった”、“1:少しあった”、“2:まぁまぁあった”、“3:かなりあった”、“4:非常に多くあった”の 5 段階で回答してもらう検査である。[[怒り~敵意(AH) ] [混乱~当惑(CB)][抑うつ~落込み(DD) ] [疲労~無気力(FI)][緊張~不安(TA)][活気 ~活力(VA)][友好(F)]の 7 尺度と,ネガティブな気分状態を総合的に表す[総合的気分状態 (TMD)]から、気分状態を評価する。[友好(F)]の高得点の者は他者に対してポジティブな感情を感じ[活気 ~活力(VA)]と関係が強いとされる。
【0086】
HSCL:Hopkins Symptom Checklist
ストレスによる精神的ストレス反応を測定するために、日本語版 Hopkins Symptom Checklist(以下、HSCL)を用いた。 HSCL は、精神神経科領域において、症状を評価する上で妥当性が高くストレス反応を総合的に測定する尺度として使用頻度が最も高いとされている。「心身症状」、「強迫症状」、「対人関係過敏症状」、「不安症状」、「抑うつ症状」の 5つの下位症状で、54 項目からなる自己報告式の症状調査票である。54 の質問は外来患者によくみられる症状を元に作成され、その症状にどのくらい悩まされているかを「よくある」を 4、「時々ある」を 3、「たまにある」を 2、「全くない」を 1 で回答する4 件法で行う。下位症状の「心身症状(9 項目)」は、身体の機能に障害があるという感覚からくる苦痛を指し、自律神経系に関連した身体機能に関する訴え、身体に対する不安も含んでいる。「強迫症状(9 項目)」とは、自分の意志に関係なく、ある考えにとらわれたり、行動を繰り返したりすることである。「対人関係過敏症状(10 項目)」は、対人関係において適切な行動がとれなかったり、人と比較して劣っていると感じたり、対人コミュニュケーションにおいて自分を軽く見たり、窮屈に感じたり、不快に感じたりすることで、さらに対人関係において自意識過剰となって、悪いことを予測してしまうことである。「不安症状(8 項目)」とは、落ち着きのなさ、神経質、緊張、心配が特徴的で、対象の定まらない不安、又は不安と緊張が極度に高まり自己コントロールができない状態も含まれる。「抑うつ症状(13 項目)」とは、引っ込み、 興味の減退、意欲の低下、エネルギーの低下のサインとなる気分又は感情であり、具体的には、希望のなさ、空虚さ、失意、落胆、悲しみ、不安、心配、自尊心の低下、又は睡眠障害などが見られる。
【0087】
また、被験者の糞便は、約5g程度を保存液の入っていない専用の容器に採取直後又は最長6時間以内(この際は、保冷剤で冷却)にて回収し、すぐに-80℃の冷凍庫にて保存後、液体クロマトグラフィー(LC)(pH緩衝化ポストカラム電気伝導度検出法)にて、乳酸の解析を実施した。
【0088】
上記した解析の結果を以下の表に示す。表4には各群15名のスコアの平均を示した。
【表4】
【0089】
上記の表に示す通り、サラシア属植物エキスの摂取により、複数の精神状態の指標が改善することが判明した。また、サラシア属植物エキスの摂取により、腸内の有機酸である乳酸は増加することが判明した。