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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098156
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
G01D5/347 110E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211536
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA06
2F103CA03
2F103CA04
2F103CA08
2F103DA01
2F103DA12
2F103EA02
2F103EA15
2F103EB06
2F103EB12
2F103EB13
2F103EB14
2F103EB32
2F103FA01
(57)【要約】
【課題】構成部材の互いの配置位置が変動し離間距離に偏差が生じたとしても、光源の設計における制約を考慮することなく、信号の検出精度を維持することができる光学式エンコーダの提供。
【解決手段】光学式エンコーダ1は、スケール2と検出ヘッド3とを備える。検出ヘッド3は、光源4と複数の格子板5と受光手段6とを備える。複数の格子板5は、光源4からの光を通過させる第1格子板51と、第1格子板51とスケール2との間に配置される第2格子板52と、第1格子板51とスケール2との間に配置される第3格子板53と、を備える。複数の格子板5の各格子510,520,530は、格子状のパターン20の周期gに基づいて所定の周期P1,P2,P3で形成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを一面に有する板状のスケールと、測定方向に沿って前記スケールと相対移動可能に設けられる検出ヘッドと、を備える光学式エンコーダであって、
前記検出ヘッドは、
前記スケールに向かって光を照射する光源と、
前記光源と前記スケールとの間に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、一面に所定の周期で形成される格子を有する複数の格子板と、
前記スケールにより反射され前記複数の格子板を介した光を受光する受光手段と、を備え、
前記複数の格子板は、
前記光源からの光が照射される第1格子板と、
前記第1格子板と前記スケールとの間に配置され、前記第1格子板を介した光を前記スケールに向かって照射する第2格子板と、
前記スケールと前記受光手段との間に配置され、前記スケールにより反射された光が照射される第3格子板と、
前記第3格子板と前記受光手段との間に配置され、前記第3格子板を介した光を前記受光手段に向かって照射する第4格子板と、を備え、
前記格子状のパターンの所定の周期をgとし、前記格子の所定の周期を定める0から1の間の所定の定数をnとするとき、
前記第1格子板の格子は、g÷nの周期で形成され、
前記第2格子板の格子は、g÷n÷2の周期で形成され、
前記第3格子板の格子は、g÷│1-n│÷2の周期で形成され、
前記第4格子板の格子は、g÷│1-n│の周期で形成されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを一面に有する板状のスケールと、測定方向に沿って前記スケールと相対移動可能に設けられる検出ヘッドと、を備える光学式エンコーダであって、
前記検出ヘッドは、
前記スケールに向かって光を照射する光源と、
前記光源と前記スケールとの間に配置されるとともに前記スケールの板面と平行に配置され、一面に所定の周期で形成される格子を有する複数の格子板と、
前記スケールにより反射され前記複数の格子板を介した光を受光する複数の受光素子を有する受光手段と、を備え、
前記複数の格子板は、
前記光源からの光が照射される第1格子板と、
前記第1格子板と前記スケールとの間に配置され、前記第1格子板を介した光を前記スケールに向かって照射する第2格子板と、
前記スケールと前記受光手段との間に配置され、前記スケールにより反射された光が照射される第3格子板と、を備え、
前記複数の受光素子は、
前記スケールの板面と平行な前記受光手段の一面に所定の周期で形成され、
前記格子状のパターンの所定の周期をgとし、前記格子の所定の周期および前記複数の受光素子の所定の周期を定める0から1の間の所定の定数をnとするとき、
前記第1格子板の格子は、g÷nの周期で形成され、
前記第2格子板の格子は、g÷n÷2の周期で形成され、
前記第3格子板の格子および前記複数の受光素子は、g÷│1-n│÷2の周期で形成されることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された光学式エンコーダにおいて、
前記所定の定数nは、0.5であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された光学式エンコーダにおいて、
前記第1格子板および前記第4格子板、または、前記第1格子板および前記受光手段と、前記第2格子板および前記第3格子板とは、それぞれ同一平面上に配置されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された光学式エンコーダにおいて、
前記第1格子板と前記第2格子板と前記スケールと前記第3格子板と、前記第4格子板または前記受光手段と、のそれぞれの離間距離は、等間隔であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された光学式エンコーダにおいて、
前記光源は、LEDであることを特徴とする光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを一面に有する板状のスケールと、測定方向に沿ってスケールと相対移動可能に設けられる検出ヘッドと、を備える光学式エンコーダが知られている。検出ヘッドは、スケールに光を照射する光源と、スケールを介した光を受光する受光手段と、を備える。
このような光学式エンコーダでは、光源から照射された光は、スケールにおける格子状のパターンを介して複数の回折光となる。複数の回折光は、格子状のパターンと同じ周期の干渉縞を生成する。受光手段は、この干渉縞を受光し、検出ヘッドは、受光手段が受光した干渉縞から信号を検出する。光学式エンコーダは、検出ヘッドによる検出結果(信号)からスケールと検出ヘッドとの相対移動量を算出する。
【0003】
光学式エンコーダでは、例えば3格子原理を応用したものがある。具体的には、光学式エンコーダは、スケールに光を照射する光源と、第1格子に相当する格子状のパターンを有するスケールと、第2格子を有する格子板と、複数の受光素子(第3格子)を有する受光手段と、を備える。スケールには、光源から光が照射される。格子板が有する第2格子は、所定の周期で形成される。格子板は、スケールと複数の受光素子の間に配置されスケールを介した光源からの光を複数の受光素子に向かって照射する。第3格子である複数の受光素子は、所定の周期で配置され、格子板を介した光によって生じた干渉縞をフィルタリングする。光学式エンコーダは、複数の受光素子にてフィルタリングされた干渉縞に基づいてスケールと検出ヘッドとの相対移動量を算出する。
ここで、前述のような3格子原理を用いた光学式エンコーダでは、以下のような問題が生じることがある。
【0004】
図8は、従来の光学式エンコーダを示す図である。具体的には、図8(A)は、第1格子と第2格子と第3格子とが等間隔で配置されている光学式エンコーダ100Aを示す図である。また、図8(B)は、第1格子と第2格子と第3格子とがそれぞれ異なる間隔で配置されている光学式エンコーダ100Bを示す図である。
【0005】
図8に示すように、光学式エンコーダ100A,100Bは、第1格子にあたる格子状のパターンを有する板状のスケール200A,200Bと、スケール200A,200Bに光を照射する光源300と、第2格子を有する格子板400と、第3格子にあたる複数の検出素子を有する受光手段500と、を備える。光源300は、スケール200A,200Bと格子板400との間に配置される。格子板400は、スケール200A,200Bと受光手段500との間に配置される。受光手段500は、スケール200A,200Bとは格子板400を挟んで反対側に配置される。
【0006】
光学式エンコーダ100A,100Bにおいて、スケール200A,200Bは、光源300からの光を格子板400に反射する。格子板400は、スケール200A,200Bを反射した光を受光手段500に向かって通過させる。受光手段500は、格子板400を通過した光を受光する。なお、図8では、説明の都合上、光源300から照射され受光手段500に受光されるまでの光の光路を実線矢印で表す。また、測定方向をX方向とし、X方向とスケール200A,200Bや格子板400の板面上で直交する方向(スケール200A,200Bや格子板400の幅方向)をY方向とし、X方向とY方向と直交する方向をZ方向として説明する。
【0007】
図8(A)に示すように、光学式エンコーダ100Aは、スケール200Aと格子板400と受光手段500とをZ方向にそれぞれ距離D1の間隔を有して配置している。すなわち、光学式エンコーダ100Aは、スケール200Aと格子板400と受光手段500とをZ方向に等間隔に配置している。一方、図8(B)に示すように、光学式エンコーダ100Bは、スケール200Bと格子板400とについてZ方向に距離D1および距離D2の間隔を有して配置している。また、光学式エンコーダ100Bは、格子板400と受光手段500とについてZ方向に距離D1の間隔を有して配置している。すなわち、光学式エンコーダ100Bは、スケール200Bと格子板400との間隔と、格子板400と受光手段500との間隔とについて、距離D2だけ異なる間隔を有して配置している。
【0008】
図8(A)では、光源300から照射された光は、スケール200Aで複数の光に分割されて反射し、格子板400を通過して受光手段500にて合成される。これに対し、図8(B)では、光源300から照射された光は、スケール200Bで複数に分割されて反射し、格子板400を通過して受光手段500にてX方向に距離D3だけ離間(オフセット)して照射される。分割された複数の光がオフセットされて受光手段500に照射されると、その複数の光のオーバーラップ量は、オフセットされないときと比較して減少する。すなわち、光学式エンコーダ100Bでは、分割された複数の光のオーバーラップ量は光学式エンコーダ100Aよりも減少する。光のオーバーラップ量が減少すると、干渉縞が生成されない場合や信号を取得できない場合がある。
【0009】
したがって、スケールの格子状のパターンを第1格子とする従来の光学式エンコーダは、スケールや格子板、受光手段等の配置位置が変動しZ方向における互いの離間距離に偏差が生じると、干渉縞などの信号の検出精度を維持することができないことがあるという問題がある。
【0010】
これに対し、特許文献1に記載の光電子スケール読取り装置は、光源の設計について工夫することで、問題解決を図っている。具体的には、光源の大きさは、所定の大きさに制限されている。そして、光源は、分光器グレーティング(格子を有する格子板)に対して小角度の範囲を定めるように配置される。光源の大きさは、良好で容易に検出される干渉縞を生ずる領域や、分光器グレーティングの格子のピッチ、光源とスケールとの離間距離、スケールと分光器グレーティングとの離間距離などに基づいて設計される。
光電子スケール読取り装置は、光電子スケール読取り装置における各構成部材等が有するパラメータに基づいて光源を設計することで、信号の検出精度の維持を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4750998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の光電子スケール読取り装置は、各構成部材等が有するパラメータに応じた光源を設計する必要がある。これにより、光源に制約が生じるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、構成部材の互いの配置位置が変動し離間距離に偏差が生じたとしても、光源の設計における制約を考慮することなく、信号の検出精度を維持することができる光学式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光学式エンコーダは、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを一面に有する板状のスケールと、測定方向に沿ってスケールと相対移動可能に設けられる検出ヘッドと、を備える。検出ヘッドは、スケールに向かって光を照射する光源と、光源とスケールとの間に配置されるとともにスケールの板面と平行に配置され、一面に所定の周期で形成される格子を有する複数の格子板と、スケールにより反射され複数の格子板を介した光を受光する受光手段と、を備える。複数の格子板は、光源からの光が照射される第1格子板と、第1格子板とスケールとの間に配置され、第1格子板を介した光をスケールに向かって照射する第2格子板と、スケールと受光手段との間に配置され、スケールにより反射された光が照射される第3格子板と、第3格子板と受光手段との間に配置され、第3格子板を介した光を受光手段に向かって照射する第4格子板と、を備える。ここで、格子状のパターンの所定の周期をgとし、格子の所定の周期を定める0から1の間の所定の定数をnとする。このとき、第1格子板の格子は、g÷nの周期で形成される。また、第2格子板の格子は、g÷n÷2の周期で形成される。また、第3格子板の格子は、g÷│1-n│÷2の周期で形成される。また、第4格子板の格子は、g÷│1-n│の周期で形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、光学式エンコーダは、第1格子板と第2格子板と第3格子板と第4格子とのそれぞれの格子の所定の周期をスケールの格子状のパターンの所定の周期に基づいて設計することで、構成部材の互いの配置位置が変動することにより生じる光の進行方向の変化を抑制することができる。光学式エンコーダは、光源を設計しなくとも、複数の格子板が備える格子の設計を工夫することで信号精度の維持を図ることができる。したがって、光学式エンコーダは、構成部材の互いの配置位置が変動し離間距離に偏差が生じたとしても、光源の設計における制約を考慮することなく、信号の検出精度を維持することができる。
【0016】
本発明の光学式エンコーダは、測定方向に沿って所定の周期で形成される格子状のパターンを一面に有する板状のスケールと、測定方向に沿ってスケールと相対移動可能に設けられる検出ヘッドと、を備える。検出ヘッドは、スケールに向かって光を照射する光源と、光源とスケールとの間に配置されるとともにスケールの板面と平行に配置され、一面に所定の周期で形成される格子を有する複数の格子板と、スケールにより反射され複数の格子板を介した光を受光する複数の受光素子を有する受光手段と、を備える。複数の格子板は、光源からの光が照射される第1格子板と、第1格子板とスケールとの間に配置され、第1格子板を介した光をスケールに向かって照射する第2格子板と、スケールと受光手段との間に配置され、スケールにより反射された光が照射される第3格子板と、を備える。複数の受光素子は、スケールの板面と平行な受光手段の一面に所定の周期で形成される。ここで、格子状のパターンの所定の周期をgとし、格子の所定の周期および複数の受光素子の所定の周期を定める0から1の間の所定の定数をnとする。このとき、第1格子板の格子は、g÷nの周期で形成される。また、第2格子板の格子は、g÷n÷2の周期で形成される。また、第3格子板の格子および複数の受光素子は、g÷│1-n│÷2の周期で形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、光学式エンコーダは、第1格子板と第2格子板と第3格子板とのそれぞれの格子の所定の周期と、複数の受光素子の所定の周期と、をスケールの格子状のパターンの所定の周期に基づいて設計することで、構成部材の互いの配置位置が変動することにより生じる光の進行方向の変化を抑制することができる。光学式エンコーダは、光源を設計しなくとも、複数の格子板が備える格子および複数の受光素子の設計を工夫することで信号精度の維持を図ることができる。したがって、光学式エンコーダは、構成部材の互いの配置位置が変動し離間距離に偏差が生じたとしても、光源の設計における制約を考慮することなく、信号の検出精度を維持することができる。
【0018】
また、本発明の光学式エンコーダは、前述の光学式エンコーダが備えていた第4格子板を備えず、受光手段が有する複数の受光素子を第4格子板における格子の代わりとして採用している。したがって、光学式エンコーダは、前述の第4格子板を備えなくてよいため、コスト削減を図ることができる。
【0019】
この際、所定の定数nは、0.5であることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、所定の定数nは、0.5であることで、0.5以外の定数nとした場合と比較して、受光手段における分割された光のオーバーラップ量を安定させることができる。また、0.5以外の定数nとした場合と比較して、所定の周期を容易に算出することができるため、設計における効率化を図ることができる。
【0021】
この際、第1格子板および第4格子板、または第1格子板および受光手段と、第2格子板および第3格子板とは、それぞれ同一平面上に配置されていることが好ましい。
【0022】
ここで、第1格子板と第2格子板とスケールと第3格子板と、第4格子板または受光手段と、のそれぞれの構成部材の離間距離が異なる場合、受光手段に照射される光のオーバーラップ量が減少することがある。しかしながら、このような構成によれば、少なくとも第1格子板および第4格子板と、第2格子板および第3格子板と、の離間距離と、第2格子板および第3格子板と、スケールと、の離間距離を等しくすることができる。したがって、光学式エンコーダは、受光手段における光のオーバーラップ量の減少を抑制することができる。
【0023】
この際、第1格子板と第2格子板とスケールと第3格子板と、第4格子板または受光手段と、のそれぞれの離間距離は、等間隔であることが好ましい。
【0024】
ここで、従来の光学式エンコーダでは、例えばスケールの格子状のパターンを第1格子とし、第3格子板の格子を第2格子とし、第4格子板の格子または受光手段の受光素子を第3格子とし、それぞれの構成部材の離間距離が異なる場合、分割された光の受光手段におけるオーバーラップ量が減少することがあった。しかしながら、本発明の光学式エンコーダでは、前述のように複数の格子板の格子や複数の受光素子の所定の周期を設計することで、オーバーラップ量が減少することを抑制することができる。加えて、このような構成によれば、光学式エンコーダは、第1格子板と第2格子板とスケールと第3格子板と、第4格子板または受光手段と、のそれぞれの離間距離を等間隔とすることで、分割された光の受光手段におけるオーバーラップ量の減少をさらに抑制することができる。
【0025】
この際、光源は、LEDであることが好ましい。
【0026】
ここで、前述の通り、スケールの格子状のパターンを第1格子とする従来の光学式エンコーダは、構成部材の互いの配置位置が変動し離間距離に偏差が生じると、干渉縞等の信号の検出を維持することができないことがあるという問題がある。一方、この問題は、He-Neレーザ等の可干渉領域の広い光源を用いることで解決することができる。具体的には、例えば光源がHe-Neレーザである場合、そのコヒーレント長(可干渉領域)は数mである。このため、例えば第1格子板にて分割された2本の光の受光手段までの光路長の差が大きく異なったとしても、干渉縞を生じさせることができる。すなわち、光源として例えばコヒーレント長が数cmと非常に短い光源を用いた場合、分割された2本の光の分割点から受光手段に照射されるまでの光路長の差が数cm以上であると、干渉縞は生じない。しかし、He-Neレーザ等の可干渉領域の広い光源は高価であるため、コストがかかるという問題がある。また、そのような光源を用いた場合、光学式エンコーダが大型化することもある。
【0027】
これに対し、本発明の光学式エンコーダにおいて、分割された2本の光の光路は、複数の格子板やスケールの板面に直交する直交方向を軸に略線対称となる。このため、2本の光の光路長は、略同じ長さとなる。したがって、光学式エンコーダは、光源のコヒーレント長である数cm以内に分割された各光の光路長の差を収め、光源のコヒーレント性の制限内で確実に干渉縞を生じさせることができる。よって、光学式エンコーダは、光源のコヒーレント性による制限を回避しつつ、高価なHe-Neレーザの代わりに例えばHe-Neレーザと比較して低廉でコヒーレント性の制限が大きいLEDなどを光源として用いることができるため、コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る光学式エンコーダを示す斜視図
図2】前記光学式エンコーダにおける光の光路を示す原理図
図3】前記光学式エンコーダにおける構成部材の配置関係を示す模式図
図4】前記光学式エンコーダにおけるスケールが傾きを有する際の模式図
図5】第2実施形態に係る光学式エンコーダを示す斜視図
図6】前記光学式エンコーダにおける構成部材の配置関係を示す模式図
図7】第3実施形態に係る光学式エンコーダを示す斜視図
図8】従来の光学式エンコーダを示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図1から図4に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る光学式エンコーダ1を示す斜視図である。
光学式エンコーダ1は、図1に示すように、板状のスケール2と、測定方向であるX方向に沿ってスケール2と相対移動可能に設けられる検出ヘッド3と、を備えるリニアエンコーダである。検出ヘッド3は、スケール2に向かって光を照射する光源4と、光源4とスケール2との間に配置される複数の格子板5と、光を受光する受光手段6と、を備える。これらを備えた検出ヘッド3は、スケール2に対して測定方向であるX方向に一体で進退可能に設けられている。リニアエンコーダは、検出ヘッド3をスケール2に沿って移動させることで、スケール2と検出ヘッド3との相対移動量から位置情報を取得する。
なお、以下の説明および各図面において、スケール2の測定方向であり長手方向をX方向とし、スケール2の短手方向をY方向とし、X方向およびY方向と直交する高さ方向をZ方向と記す。
【0030】
スケール2は、ガラス等で形成されている。スケール2の一面には、測定方向であるX方向に沿って所定の周期gで格子状のパターン20が形成されている。格子状のパターン20は、複数の格子板5を介した光源4から照射された光を受光手段6に向かって反射する。このため、格子状のパターン20は、光を反射する素材で形成されている。格子状のパターン20にて反射した光は、複数の格子板5を介して受光手段6に照射される。
光源4は、スケール2の一面に向かって平行光を照射する。光源4は、LED(Light Emitting Diode)が用いられている。なお、以下の説明および各図面において、光源4から照射された光の光路は、矢印にて記載する。光源4にLEDが用いられている理由は後述する。
【0031】
受光手段6は、スケール2の板面であるXY平面と平行に配置される。受光手段6は、スケール2により反射され複数の格子板5を介した光を受光する複数の受光素子60を有する。具体的には、複数の受光素子60は、受光手段6の一面に所定の周期Pで形成される。また、複数の受光素子60は、複数の格子板5を挟んでスケール2の格子状のパターン20と向かい合わせて設置されている。複数の受光素子60は、スケール2および複数の格子板5を介した光を受光し、その光によって生成された干渉縞から信号を検出する。そして、複数の受光素子60には、PDA(Photo Diode Array)が用いられる。PDAは、複数の干渉縞を1度に測定することができる性質を持つ検出器である。なお、複数の受光素子60は、PDAに限らず、PSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge-Coupled Device)等の任意の検出器を用いてもよい。
【0032】
複数の格子板5は、第1格子板51と、第2格子板52と、第3格子板53と、を備える。複数の格子板5は、スケール2の板面であるXY平面と平行に配置される。
具体的には、第1格子板51は、光源4とスケール2との間に配置され、光源4からの光が照射される。第2格子板52は、第1格子板51とスケール2との間に配置され、第1格子板51を介した光をスケール2に向かって照射する。第3格子板53は、スケール2と受光手段6との間に配置され、スケール2により反射された光が照射される。第3格子板53は、スケール2により反射された光を受光手段6に向かって照射する。
【0033】
また、複数の格子板5は、一面にそれぞれ所定の周期で形成される格子を有する。具体的には、第1格子板51は所定の周期P1で形成される格子510を有する。また、第2格子板52は所定の周期P2で形成される格子520を有する。また、第3格子板53は所定の周期P3で形成される格子530を有する。複数の格子板5の格子510,520,530については後述する。
【0034】
光学式エンコーダ1は、第1格子板51および受光手段6を同一平面上に配置している。また、光学式エンコーダ1は、第2格子板52および第3格子板53を同一平面上に配置している。具体的には、第1格子板51および受光手段6は、同一のXY平面S1上に配置されている。第2格子板52および第3格子板53は、XY平面S1から距離d分-Z方向(紙面下方向)に離れたところに位置するXY平面S2上に配置されている。また、第1格子板51と第2格子板とスケール2と第3格子板と受光手段6とは、それぞれ等間隔となる離間距離dを有して配置されている。
【0035】
図2は、光学式エンコーダ1における光の光路を示す原理図である。
以下、図2を用いて、光源4から照射された光の光路と、複数の格子板5の格子510,520,530および複数の受光素子60の設計方法を説明する。なお、図2では、光の光路の説明の都合上、スケール2に照射された光は、図1とは異なりスケール2を透過させた状態で記載している。
【0036】
ここで、スケール2および複数の格子板5を介した光は、複数の回折光に分割され回折される。複数の回折光は、光源から照射された光の光軸と同じ方向に進行する回折光と、光軸の両側を所定の回折角度で進行する回折光と、光軸の両側を所定の回折角度よりも大きな回折角度で進行する回折光と、を有する。
複数の回折光は、光軸と同じ方向に進行する回折光を0次回折光とすると、0次回折光を基準として回折角度が大きくなる方向に向かって±1次回折光、±2次回折光と順序づけることができる。
【0037】
受光手段6は、主に±1次回折光により生成される干渉縞から信号を検出する。したがって、±1次回折光は信号回折光となり、±1回折光よりも次数が高い回折光はノイズ回折光となる。以下の説明および各図面では、干渉縞を生成する信号回折光を実線矢印で記載し、図2では、±1回折光の±の向きをかっこ書き内に記載している。
以下、複数の格子板5の格子510,520,530の設計方法および光源4から受光手段6までの信号回折光の光路について説明する。
【0038】
先ず、スケール2の格子状のパターン20の所定の周期をgとする。次に、複数の格子板5の格子510,520,530の所定の周期P1,P2,P3および複数の受光素子60の所定の周期Pを定める0から1の間の数値である所定の定数をnとする。このとき、第1格子板51の格子510の周期P1は、「g÷n」で形成される。また、第2格子板52の格子520の周期P2は、「g÷n÷2」で形成される。また、第3格子板53の格子530の周期P3および複数の受光素子60の周期Pは、「g÷│1-n│÷2」で形成される。
【0039】
本実施形態では、前述の所定の定数nは、0.5である。所定の定数nを0.5とし例えば格子状のパターン20の所定の周期gが「4μm」であった場合、第1格子板51の格子510の周期P1は「8μm」となる。また、第2格子板52の格子520の周期P2は「4μm」となる。また、第3格子板53の格子530の周期P3および複数の受光素子60の周期Pは「4μm」となる。説明のため単純な周期を用いたが、このようにスケール2の格子状のパターン20の所定の周期gを基準に複数の格子板5の格子510,520,530の所定の周期P1,P2,P3と複数の受光素子60の周期Pを求めることで、容易にこれらを設計することができるとともに、信号の検出精度を維持することができる。なお、格子状のパターン20の所定の周期gはどのような周期であってもよい。
【0040】
続いて、光源4から受光手段6までの信号回折光の光路について説明する。
先ず、光源4からの光は第1格子板の格子510により複数の回折光となり回折される。信号回折光となる±1次回折光は、角度θで第2格子板52に照射される。このとき、光源4からの光の波長をλとしたとき、角度θは、「sinθ=n×λ÷g」にて表すことができる。
次に、第2格子板52に照射された±1次回折光は、格子520により回折されスケール2に照射される。第2格子板52で回折された信号回折光となる±1次回折光は、第1格子板5で回折されたときとは±が反転してスケール2に照射される。このとき、±1次回折光は、角度θでスケール2に入射し、スケール2上で交わる。
【0041】
そして、±1次回折光は、スケール2により反射され、角度θで第2格子板53に照射される。このとき、角度θは、「sinθ=λ÷g-sinθ=λ÷g×(1-n)」にて表すことができる。
第3格子板53に照射された±1次回折光は、格子530により回折され受光手段6に照射される。第3格子板53で回折された信号回折光となる±1次回折光は、スケール2により反射されたときとは±が反転して受光手段6に照射される。このとき、±1次回折光は、角度θで受光手段6に入射し、受光手段6上に干渉縞を生成する。受光手段6の複数の受光素子60は、干渉縞からスケール2に対する検出ヘッド3の移動量に関する信号を検出する。
【0042】
図3は、光学式エンコーダ1における構成部材の配置関係を示す模式図である。具体的には、図3(A)は、XY平面S1上の構成部材とXY平面S2上の構成部材とスケール2とがそれぞれ離間距離dを有して等間隔に配置されている模式図である。図3(B)は、XY平面S1上の構成部材とXY平面S2上の構成部材とは離間距離dを有して配置され、XY平面S2上の構成部材とスケール2とは離間距離dに加え離間距離d1を有して配置されている模式図である。
【0043】
図3(A)に示すように、光学式エンコーダ1において、第1格子板51と第2格子板52とスケール2と第3格子板53と受光手段6と、のそれぞれの離間距離は、距離dにて等間隔となるように配置されている。
【0044】
ここで、従来の光学式エンコーダでは、それぞれの構成部材の離間距離が異なる場合、分割された光の受光手段6におけるオーバーラップ量が減少することがあった。しかしながら、光学式エンコーダ1では、前述のように複数の格子板5の格子510,520,530や複数の受光素子60の所定の周期P1,P2,P3,Pを設計することで、オーバーラップ量の減少を抑制することができる。また、スケール2が光を反射する反射型であることで、光をスケール2にて折り返すことができるため、XY平面S1上の構成部材とXY平面S2上の構成部材とスケール2との離間距離dを等間隔となるように容易に設計することができる。
【0045】
また、光学式エンコーダ1における構成部材を等間隔に配置することで、光源4から照射され第1格子板51にて分割される2本の光の光路は、複数の格子板5やスケール2の板面に直交する直交方向を軸に略線対称となる。このため、2本の光の光路長は、略同じ長さとなる。これにより、光学式エンコーダ1は、光源4にコヒーレント長が数cmと短いLEDを採用することができる。そして、光学式エンコーダ1は、光源4のコヒーレント長である数cm以内に分割された各光の光路長の差を収め、光源4のコヒーレント性の制限内で確実に干渉縞を生じさせることができる。
【0046】
また、図3(B)に示すように、図3(A)と異なりXY平面S2上の構成部材とスケール2とは離間距離dに加え離間距離d1を有して配置されている場合でも、図3(A)に示す光学式エンコーダ1と比較して精度が低下する可能性があるものの、同様の効果を得ることができる。具体的には、光学式エンコーダ1は、複数の格子板5の格子510,520,530や複数の受光素子60の所定の周期P1,P2,P3,Pを設計することで、オーバーラップ量の減少を抑制することができる。また。光源4から照射され第1格子板51にて分割される2本の光の光路は、複数の格子板5やスケール2の板面に直交する直交方向を軸に略線対称となる。このため、光学式エンコーダ1は、光源4のコヒーレント長である数cm以内に分割された各光の光路長の差を収め、光源4のコヒーレント性の制限内で確実に干渉縞を生じさせることができる。
【0047】
図4は、光学式エンコーダ1におけるスケール2が傾きを有する際の模式図である。
図4に示すように、光学式エンコーダ1は、スケール2が傾きを有していたとしても、測定誤差が生じることを抑制し、信号の検出精度を維持することができる。
具体的には、スケール2がY方向を軸に回転し角度αの傾きを有していたとき、第2格子板52からスケール2に照射された光は、スケール2にて反射し、第2格子板52における照射位置から-X方向に距離T1ずれて第3格子板53に照射される。第3格子板53に照射された光は、第1格子板51における照射位置から-X方向に距離T2ずれて受光手段6に照射される。このとき、スケール2から第3格子板53を通過し受光手段6に照射される光には、光てこが作用する。これにより、スケール2が角度αの傾きを有していたとしても、傾きによる影響が相殺されるため、光学式エンコーダ1は、測定誤差が生じることを抑制し、信号の検出精度を維持することができる。
【0048】
このような第1実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)光学式エンコーダ1は、第1格子板51と第2格子板52と第3格子板53とのそれぞれの格子510,520,530の所定の周期P1,P2,P3と、複数の受光素子60の所定の周期Pと、をスケール2の格子状のパターン20の所定の周期gに基づいて設計することで、構成部材の互いの配置位置が変動することにより生じる光の進行方向の変化を抑制することができる。
(2)光学式エンコーダ1は、光源4を設計しなくとも、複数の格子板5が備える格子510,520,530および複数の受光素子60の設計を工夫することで信号精度の維持を図ることができる。したがって、光学式エンコーダ1は、構成部材の互いの配置位置が変動し離間距離に偏差が生じたとしても、光源4の設計における制約を考慮することなく、信号の検出精度を維持することができる。
【0049】
(3)第1格子板51および受光手段6は同一平面S1上に配置され、第2格子板52および第3格子板53とは同一平面S2上に配置されていることで、それぞれの離間距離dを等しくすることができる。したがって、光学式エンコーダ1は、受光手段6における光のオーバーラップ量の減少を抑制することができる。
(4)光学式エンコーダ1は、第1格子板51と第2格子板52とスケール3と第3格子板53と受光手段6と、のそれぞれの離間距離を等間隔とすることで、分割された光の受光手段におけるオーバーラップ量の減少をさらに抑制することができる。
【0050】
(5)光学式エンコーダ1は、光源4のコヒーレント長である数cm以内に分割された各光の光路長の差を収め、光源4のコヒーレント性の制限内で確実に干渉縞を生じさせることができる。したがって、光学式エンコーダ1は、光源4のコヒーレント性による制限を回避しつつ、高価なHe-Neレーザの代わりに例えばHe-Neレーザと比較して低廉でコヒーレント性の制限が大きいLEDなどを光源として用いることができるため、コスト削減を図ることができる。
【0051】
(6)光学式エンコーダ1は、後述する第3実施形態の光学式エンコーダ1Bが備える第4格子板54(図7参照)を備えず、受光手段6が有する複数の受光素子60を第4格子板54における格子540の代わりとして採用している。したがって、光学式エンコーダ1は、第3実施形態における第4格子板54を備えなくてよいため、コスト削減を図ることができる。
(7)所定の定数nは、0.5であることで、0.5以外の定数nとした場合と比較して、受光手段6における分割された光のオーバーラップ量を安定させることができる。また、0.5以外の定数nとした場合と比較して、所定の周期を容易に算出することができるため、設計における効率化を図ることができる。
【0052】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図5および図6に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図5は、第2実施形態に係る光学式エンコーダ1Aを示す斜視図である。
前記第1実施形態では、複数の格子板5の各格子510,520,530の所定の周期P1,P2,P3と、複数の受光素子60の所定の周期Pとを定める所定の定数nは、0.5であった。
第2実施形態では、複数の格子板5Aの各格子510A,520A,530Aの所定の周期P1,P2,P3と、複数の受光素子60Aの所定の周期Pとを定める所定の定数nは、0.5とは異なる0から1の間の数値である点で前記第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態では、所定の定数nは、0.25としている。
【0054】
図5に示すように、光学式エンコーダ1Aの検出ヘッド3Aにおける複数の格子板5Aは、所定の周期P1で形成される格子510Aを有する第1格子板51Aを備える。また、複数の格子板5Aは、所定の周期P1よりも小さい周期P2で形成される格子520Aを有する第2格子板52Aを備える。また、複数の格子板5Aは、所定の周期P2よりも小さい周期P3で形成される格子530Aを有する第3格子板53Aを備える。受光手段6は、所定の周期P3と同じ周期Pで形成される複数の受光素子60Aを有する。
【0055】
第1実施形態と同様に、第1格子板51Aの格子510Aの周期P1は、「g÷n」で形成される。また、第2格子板52Aの格子520Aの周期P2は、「g÷n÷2」で形成される。また、第3格子板53Aの格子530Aの周期P3および複数の受光素子60Aの周期Pは、「g÷│1-n│÷2」で形成される。
【0056】
各所定の周期P1,P2,P3,Pは、所定の定数nを0.25とし、例えば格子状のパターン20の所定の周期gが「4μm」であった場合、次のように求められる。先ず、第1格子板51Aの格子510Aの周期P1は「16μm」となる。次に、第2格子板52Aの格子520Aの周期P2は「8μm」となる。続いて、第3格子板53Aの格子530Aの周期P3および複数の受光素子60Aの周期Pは「2.66666667μm」となる。説明のため単純な周期を用いたが、このようにスケール2の格子状のパターン20の所定の周期gを基準に複数の格子板5Aの格子510A,520A,530Aの所定の周期P1,P2,P3と複数の受光素子60Aの周期Pを求めることで、容易にこれらを設計することができるとともに、信号の検出精度を維持することができる。なお、格子状のパターン20の所定の周期gはどのような周期であってもよい。
【0057】
図6は、光学式エンコーダ1Aにおける構成部材の配置関係を示す模式図である。具体的には、図6(A)は、XY平面S1上の構成部材とXY平面S2上の構成部材とスケール2とがそれぞれ離間距離dを有して等間隔に配置されている模式図である。図6(B)は、XY平面S1上の構成部材とXY平面S2上の構成部材とは離間距離dを有して配置され、XY平面S2上の構成部材とスケール2とは離間距離dに加え離間距離d1を有して配置されている模式図である。
【0058】
図6(A)に示すように、光学式エンコーダ1Aにおいて、第1格子板51Aおよび第2格子板52Aと、第2格子板52Aおよびスケール2と、スケール2および第3格子板53Aと、第3格子板53Aおよび受光手段6Aと、のそれぞれの離間距離は、距離dにて等間隔となるように配置されている。光学式エンコーダ1Aは、前述のように複数の格子板5Aの格子510A,520A,530Aや複数の受光素子60Aの所定の周期P1,P2,P3,Pを設計することで、オーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
【0059】
また、光学式エンコーダ1Aにおける構成部材を等間隔に配置することで、第1格子板51Aにて分割される2本の光の光路は、複数の格子板5Aの板面等に直交する直交方向を軸に略線対称となる。このため、2本の光の光路長は、略同じ長さとなるため、光学式エンコーダ1Aは、光源4のコヒーレント長である数cm以内に分割された各光の光路長の差を収め、光源4のコヒーレント性の制限内で確実に干渉縞を生じさせることができる。
【0060】
また、図6(B)に示すように、図6(A)と異なり、XY平面S2上の構成部材とスケール2とは離間距離dに加え離間距離d1を有して配置されている場合でも、図6(A)の光学式エンコーダ1Aと比較して精度が低下する可能性があるものの、同様の効果を得ることができる。具体的には、光学式エンコーダ1Aは、格子510A,520A,530Aや複数の受光素子60Aの所定の周期P1,P2,P3,Pを設計することで、オーバーラップ量が減少することを抑制することができる。また、図6(A)の光学式エンコーダ1Aと同様に、第1格子板51Aにて分割される2本の光の光路長は、略同じ長さとなるため、光源4にLEDを採用することができる。
【0061】
このような第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(6)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(8)複数の格子板5Aの各格子510A,520A,530Aの所定の周期P1,P2,P3と、複数の受光素子60Aの所定の周期Pとを定める所定の定数nは、前記第1実施形態における0.5以外の数値とすることができる。したがって、光学式エンコーダ1Aは、設計の自由度を向上させることができる。
【0062】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図7に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図7は、第3実施形態に係る光学式エンコーダ1Bを示す斜視図である。
第3実施形態では、光学式エンコーダ1Bは、第4格子板54をさらに備えるとともに、複数の受光部61,62,63を有する受光手段6Bを備える点で前記第1実施形態と異なる。光学式エンコーダ1Bは、第4格子板54および受光手段6Bを除き、第1実施形態における光学式エンコーダ1と略同様の構成を有する。
【0064】
図7に示すように、光学式エンコーダ1Bにおける検出ヘッド3Bは、複数の格子板5Bと、受光手段6Bと、を備える。
複数の格子板5Bは、前記第1実施形態と同様の第1格子板51と、第2格子板52と、第3格子板53と、を備える。また、複数の格子板5Bは、第3格子板53と受光手段6Bとの間に配置され、第3格子板53を介した光を受光手段6Bに向かって照射する第4格子板54をさらに備える。
【0065】
第4格子板54は、所定の周期P4で形成される格子540を有する。第4格子板54の格子540の所定の周期P4は、「g÷│1-n│」で形成される。すなわち、第4格子板54は、前記第1実施形態における複数の受光素子60の周期P「g÷│1-n│÷2」とは異なる周期P4で形成されるものの、複数の受光素子60と同様に光学式エンコーダ1Bにおいて作用する。
【0066】
本実施形態では、所定の定数nは、0.5である。所定の定数nを0.5とし例えば格子状のパターン20の所定の周期gが「4μm」であった場合、第1格子板51の格子510の周期P1は「8μm」となる。また、第2格子板52の格子520の周期P2は「4μm」となる。また、第3格子板53の格子530の周期P3は「4μm」となる。また、第4格子板54の格子540の周期P4は「8μm」となる。説明のため単純な周期を用いたが、このようにスケール2の格子状のパターン20の所定の周期gを基準に複数の格子板5の格子510,520,530,540の所定の周期P1,P2,P3,P4を求めることで、容易にこれらを設計することができるとともに、信号の検出精度を維持することができる。なお、格子状のパターン20の所定の周期gはどのような周期であってもよい。
【0067】
受光手段6Bは、前記第1実施形態における所定の周期Pで配置される複数の受光素子60は備えていない。受光手段6Bは、スケール2により反射され複数の格子板5Bを介した光を受光する。具体的には、受光手段6Bは、第4格子板54を通過した光を受光する。
受光手段6Bは、第1受光部61と第2受光部62と第3受光部63とを有する。
第4格子板54を通過した光は、主に0次回折光と、±1次回折光と、±2次回折光とに分割される。第1受光部61と第2受光部62と第3受光部63とは、それぞれにおいて干渉縞を生じる次数の回折光を信号回折光として受光する。第2受光部62は、主に第4格子板54を通過した0次回折光を信号回折光として受光する。第1受光部61と第2受光部62と第3受光部63とには、それぞれ120°ずつ位相がずれた干渉縞が生成される。受光手段6Bは、第1受光部61と第2受光部62と第3受光部63とに生成された干渉縞に基づいてスケール2に対する検出ヘッド3Bの変位量を検出する。なお、受光手段6Bには、PDAやPSD、CCD等の任意の検出器を採用可能である。
【0068】
光学式エンコーダ1Bは、第1格子板51および第4格子板54を同一平面上に配置している。また、光学式エンコーダ1Bは、第2格子板52および第3格子板53を同一平面上に配置している。具体的には、第1格子板51および第4格子板54は、同一のXY平面S1上に配置されている。第2格子板52および第3格子板53は、XY平面S1から距離d分-Z方向(紙面下方向)に離れたところに位置するXY平面S2上に配置されている。また、第1格子板51と第2格子板とスケール2と第3格子板と第4格子板54とは、それぞれ等間隔となる離間距離dを有して配置されている。
このように、光学式エンコーダ1Bでは、第1実施形態における所定の周期Pで配置される複数の受光素子60を採用できない場合であっても、格子状のパターン20の周期gに基づいて求められる所定の周期P4で配置される格子540を有する第4格子板54を備えることで、測定誤差が生じることを抑制し、信号の検出精度を維持することができる。
【0069】
このような第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(5),(7)および前記第2実施形態における(8)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(9)光学式エンコーダ1Bは、第1格子板51および第4格子板54と、第2格子板52および第3格子板53と、第3格子板53およびスケール2と、の離間距離dを等しくすることができる。したがって、光学式エンコーダ1Bは、受光手段6Bにおける光のオーバーラップ量の減少を抑制することができる。
(10)光学式エンコーダ1Bは、複数の格子板5Bの格子510,520,530,540の所定の周期P1,P2,P3,P4を設計することで、オーバーラップ量が減少することを抑制することができる。
【0070】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、リニアエンコーダである光学式エンコーダ1,1A~1Bに本発明を用いる場合を説明したが、光学式エンコーダであれば、検出器の形式や検出方式等は特に限定されるものではない。
前記各実施形態では、受光手段6,6A~6Bは、主に±1次回折光により生成される干渉縞から信号を検出していたが、受光手段は、光を受光し信号を検出することができれば、どのような光を信号として受光してもよい。
【0071】
前記第1実施形態および前記第2実施形態では、第1格子板51,51Aおよび第2格子板52,52Aと、第2格子板52,52Aおよびスケール2と、スケール2および第3格子板53,53Aと、第3格子板53,53Aおよび受光手段6,6Aとは、それぞれの離間距離dが等間隔となるように配置されていた。また、前記第3実施形態では、第1格子板51および第2格子板52と、第2格子板52およびスケール2と、スケール2および第3格子板53と、第2格子板53および第4格子板54とは、それぞれの離間距離dが等間隔となるように配置されていた。しかしながら、各構成部材の離間距離は、それぞれ等間隔となるように配置されていなくてもよい。
【0072】
前記第1実施形態では、所定の定数nは0.5であり、前記第2実施形態では、所定の定数nは0.25であったが、所定の定数nは、0から1の間の数値であれば、どのような数値を採用してもよい。
前記第1実施形態および前記第2実施形態では、第1格子板51,51Aおよび受光手段6,6AはXY平面S1上に配置されていた。また、第2格子板52,52Aおよび第3格子板53,53AはXY平面S2上に配置されることで同一平面上に配置されていた。前記第3実施形態では、第1格子板51および第4格子板54はXY平面S1上に配置されていた。また、第2格子板52および第3格子板53はXY平面S2上に配置されることで同一平面上に配置されていた。しかしながら、各構成部材は、同一平面上に配置されていなくてもよい。
【0073】
前記第3実施形態では、受光手段6Bは、第1受光部61と第2受光部62と第3受光部63とを有し、それぞれには120°ずつ位相がずれた干渉縞が生成されるようになっていたが、受光手段は、3個の受光部を備えていなくてもよく、1個の受光部を備えていてもよいし、4個の受光部を備えていてもよい。受光手段が4個の受光部を備えている場合は、例えばそれぞれには90°ずつ位相がずれた干渉縞が生成されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明は、光学式エンコーダに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A~1B 光学式エンコーダ
2 スケール
3,3A~3B 検出ヘッド
4 光源
5,5A~5B 複数の格子板
51,51A 第1格子板
510,510A 第1格子板の格子
52,52A 第2格子板
520,520A 第2格子板の格子
53,53A 第3格子板
530,530A 第3格子板の格子
54 第4格子板
540 第4格子板の格子
6,6A~6B 受光手段
60,60A 受光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8