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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098251
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】月経前便秘改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/54 20060101AFI20220624BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/70 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/896 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/575 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20220624BHJP
   A61K 36/286 20060101ALI20220624BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K36/54
A61K36/736
A61K36/70
A61K36/896
A61K33/00
A61K36/232
A61K36/752
A61K36/575
A61K36/185
A61K36/286
A61P1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211675
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋子
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA72
4C088AB26
4C088AB33
4C088AB41
4C088AB43
4C088AB51
4C088AB59
4C088AB60
4C088AB62
4C088AB65
4C088AB85
4C088BA09
4C088CA05
4C088MA09
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA72
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、月経前便秘改善剤として有効な医薬品を提供することである。
【解決手段】桃核承気湯エキス及び/又は通導散エキスは、月経前に特徴的な便秘を改善する効果に優れているため、月経前便秘改善剤の有効成分として用いられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桃核承気湯エキス及び/又は通導散エキスを含む、月経前便秘改善剤。
【請求項2】
月経周期が規則的な対象に用いられる、請求項1に記載の月経前便秘改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月経前便秘改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
便秘とは排泄物が長時間腸内にとどまり、水分が吸収されて排便に困難を伴う状態、又は排便がまれ(数日間に1回程度)である状態をいう。通常、1日に1~2回の排便が正常といわれているが、2~3日に1回の排便であっても便通状態が普通で、本人が苦痛を感じない場合には便秘とはいわない。一方、毎日排便があっても便が硬くて量が少なく残便感がある場合や、排便に苦痛を感じる場合には便秘とみなされる(非特許文献1~3)。
【0003】
便秘の中でも、女性の慢性便秘に多くみられるのが弛緩性便秘である。弛緩性便秘では、大腸の蠕動運動が障害され、糞便が大腸内に長時間とどまることで水分が過剰に吸収され、その結果便が硬くなり排便困難が生じる症状である。月経のある女性では、月経前に便秘を訴える人も多い。月経前の便秘はプロゲステロンの作用が関連しているとされており、このプロゲステロンの作用により、大腸の蠕動運動が起こりにくくなり、体に水分をためこんで便の水分量が減ることにより排便困難が生じる。
【0004】
便秘の治療に用いられる西洋薬としては刺激性下剤及び塩類下剤が挙げられるが、効果が強いため、腹痛を起こしたり下痢を起こしたりすることがある。このため、西洋薬が体質に合わない人に対しては漢方薬が適用されることがある。
【0005】
便秘に用いられる漢方薬としてはいくつか知られているが、例えば防風通聖散及び調胃承気湯等は、センノシドを主成分とする大黄による腸管蠕動運動促進作用と、芒硝による塩類下剤としての作用とによって瀉下効果を奏すると理解されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山下誠:便秘症日本臨床別冊(消化器症候群・下巻)、653~655、(1994)
【非特許文献2】古川清憲:常習性便秘臨床栄養(臨時増刊・今日の治療食指針―1)、89(4):391~393、(1996)
【非特許文献3】佐々木大輔:慢性便秘症medicina,32(12):222~223、(1995)
【非特許文献4】眞部 紀明、春間 賢:VIII. 慢性便秘の治療―漢方薬の種類とその使い方、日本内科学会雑誌、108:55~62(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、慢性便秘であっても月経前の便秘であっても、大腸の蠕動運動が障害されて便の水分量が減ることで生じるという点でメカニズムは共通している。そこで、本発明者らは、月経前の便秘を訴える女性に対して、腸管蠕動運動促進作用と塩類下剤としての作用とによって瀉下効果を奏するとされている漢方の1つである防風通聖散の効果を検討した。しかしながら、防風通聖散では、月経前の便秘の改善成績が悪くなり、月経前便秘改善剤としての有効性に問題があることが分かった。
【0008】
そこで本発明は、月経前便秘改善剤として有効な医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、桃核承気湯及び通導散が、月経前の便秘に対して特に効果が高い改善効果を奏することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 桃核承気湯エキス及び/又は通導散エキスを含む、月経前便秘改善剤。
項2. 月経周期が規則的な対象に用いられる、項1に記載の月経前便秘改善剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、月経前便秘改善剤として有効な医薬品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.月経前便秘改善剤
本発明の月経前便秘改善剤は、桃核承気湯エキス及び/又は通導散エキスを含むことを特徴とする。以下、本発明の月経便秘改善剤について詳述する。
【0013】
桃核承気湯エキス及び/又は通導散エキス
本発明の月経前便秘改善剤は、有効成分として、桃核承気湯エキス及び/又は通導散エキスを含む。
【0014】
桃核承気湯は、「傷寒論」を原典とする処方であり、その構成生薬としては、トウニン、ケイヒ、ダイオウ、カンゾウ、及びボウショウからなる混合生薬が挙げられる。
【0015】
桃核承気湯を構成する各生薬の分量としては、トウニン2.0~7.0重量部、ケイヒ1.0~5.0重量部、ダイオウ1.0~5.0重量部、カンゾウ0.5~2.5重量部、及びボウショウ0.3~2.0重量部(無水ボウショウ換算量)が挙げられる。
【0016】
通導散は、「万病回春」を原典とする処方であり、その構成生薬としては、トウキ、ダイオウ、ボウショウ、キジツ、コウボク、チンピ、モクツウ、コウカ、ソボク、及びカンゾウからなる混合生薬が挙げられる。
【0017】
通導散を構成する各生薬の分量としては、トウキ0.5~3.0重量部、ダイオウ0.5~3.0重量部、ボウショウ0.5~2.5重量部(無水ボウショウ換算量)、キジツ1.5~3.0重量部、コウボク0.3~2.5重量部、チンピ0.3~2.5重量部、モクツウ0.3~2.5重量部、コウカ0.3~2.5重量部、ソボク0.3~2.5重量部、及びカンゾウ0.3~2.5重量部が挙げられる。
【0018】
桃核承気湯エキス及び通導散エキスをそれぞれの製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されないものの、一例として水又は含水エタノールが挙げられる。また、乾燥処理としても、特に限定されず、公知の方法、例えば、スプレードライ法や、エキス液の濃度を高めた軟エキスに対して適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0019】
本発明において用いられる桃核承気湯エキス及び通導散エキスとしては、前述の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。例えば、桃核承気湯のエキス末としては、「桃核承気湯乾燥エキス-AM」(日本粉末薬品株式会社製)、「桃核承気湯乾燥エキス-F」(アルプス薬品工業株式会社製)等が商品として知られており、商業的に入手することもできる。また、通導散のエキス末については、「通導散エキス細粒Gコタロー」(小太郎漢方製薬)等から商業的に入手することもできる。
【0020】
本発明の月経前便秘改善剤において、有効成分の漢方エキスの含有量としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、有効成分の漢方エキスの乾燥エキス末量換算で、通常5~100重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、更に好ましくは30~60重量%が挙げられる。なお、本発明において、有効成分の漢方エキスの乾燥エキス末量換算とは、漢方エキスの乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり、漢方エキスの液状のエキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、漢方エキスの乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0021】
その他の成分
本発明の月経前便秘改善剤は、有効成分の漢方エキス単独からなるものであってもよいし、製剤形態に応じた添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、月経前便秘改善剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0022】
また、本発明の月経前便秘改善剤は、上記有効成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0023】
製剤形態
本発明の月経前便秘改善剤の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、チュアブル剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、丸剤等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、含有成分の安定性や携帯性等の観点から、好ましくは固形状製剤、より好ましくは錠剤が挙げられる。
【0024】
製造方法
本発明の月経前便秘改善剤の製造方法は、有効成分の漢方エキスと、必要に応じて配合されるその他の成分とを用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0025】
用途
本発明の月経前便秘改善剤は、月経前に生じる便秘を改善する目的で用いられ、より具体的には月経前に生じる便秘を予防又は治療する目的で用いられる。月経前に生じる便秘は、具体的には、月経前に悪化し月経開始とともに軽快する点で、月経前の期間に特徴的に生じる。月経前としては、具体的には、黄体期が挙げられ、より好ましくは黄体後期が挙げられる。
【0026】
なお、本発明の月経前便秘改善剤の適用対象は、月経前の期間に特徴的な便秘を起こす人であればよく、月経前の期間に特徴的な便秘を起こし且つ月経前以外の期間には便秘を起こさない人だけでなく、月経前の期間に特徴的な便秘を起こし且つ月経前以外の期間には(月経前の期間に特徴的な便秘は一旦軽快するが)、時期に関わらず、女性ホルモン変動以外の不特定の要因(例えば、繊維摂取量不足、水分不足、朝食の欠食等)で不定期に便秘を起こす人も含まれる。
【0027】
本発明の月経前肌荒れ改善剤の適用対象は、月経前の期間に特徴的な便秘を起こす対象であれば特に限定されないが、好ましくは月経周期が規則的な対象が挙げられる。月経周期が規則的とは、月経周期日数が25日~38日、出血持続日数が3~7日でかつ変動が6日以内であることをいう。
【0028】
用量・用法
本発明の月経前便秘改善剤は、経口投与によって使用される。本発明の月経前便秘改善剤の用量については、投与対象者の年齢、体質、症状の程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、ヒト1人に対して1日当たり、桃核承気湯エキス及び通導散エキスの総量(乾燥エキス換算量)として、例えば500~7000mg、好ましくは1000~6000mg;桃核承気湯エキス量(乾燥エキス換算量)として、例えば500~5000mg、好ましくは1000~4000mg、より好ましくは1200~2000mg;通導散エキス量(乾燥エキス換算量)として、例えば3000~7000mg、好ましくは4000~6000mgとなる量で、1日1~4回、好ましくは2~3回の頻度で服用すればよい。
【0029】
一日の中での服用タイミングについては、特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、好ましくは食前又は食間が挙げられる。
【0030】
また、月経周期の中での服用タイミングについても特に限定されない。例えば、本発明の月経前便秘改善剤が即効性に優れているため、改善したい月経前の便秘を感じたタイミングで服用を開始することができる。より具体的には、本発明の月経前便秘改善剤は、黄体後期開始時から服用しても、その黄体後期のうちに、便秘改善効果を得ることができる。なお、月経前便秘改善効果をより一層高める観点から、1回の月経周期あたり、例えば2日以上、好ましくは3日以上、より好ましくは4日以上、さらに好ましくは5日以上継続して服用することが好ましい。また、1回の月経周期当たりの服用継続日数としては特に限定されず、月経開始と同時に服用をやめればよい。具体的な服用継続日数としては、月経周期の長さによって異なるが、月経前から月経開始にかけて特徴的に現れる肌荒れに適用される場合においては、例えば9日以下、8日以下、又は7日以下が挙げられる。
【0031】
また、本発明の月経前便秘改善剤は、便秘が起こる時期に先立って予防目的で服用してもよい。例えば、黄体後期から便秘が起こる人の場合、排卵期又は黄体期開始時から服用を始めることができる。この場合も、また、1回の月経周期当たりの服用継続日数としては特に限定されず、月経開始と同時に服用をやめればよい。
【実施例0032】
(1)漢方エキスの調製
(1-1)桃核承気湯エキス
原料生薬を、トウニン3.0重量部、ケイヒ2.4重量部、ダイオウ1.8重量部、カンゾウ0.9重量部、及びボウショウ0.6重量部(無水ボウショウ換算量)の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、桃核承気湯エキス末を得た。得られた桃核承気湯エキス末は、原料生薬混合物8.7g当たり1584mg(1日用量)であった。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0033】
(1-2)通導散エキス
原料生薬を、トウキ2.4重量部、ダイオウ2.4重量部、ボウショウ1.44量部(無水ボウショウ換算量)、キジツ2.4重量部、コウボク1.6重量部、チンピ1.6重量部、モクツウ1.6重量部、コウカ1.6重量部、ソボク1.6重量部、及びカンゾウ1.6重量部の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、通導散エキス末を得た。得られた通導散エキス末は、原料生薬混合物16.64g当たり5200mg(1日用量)であった。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0034】
(1-3)防風通聖散エキス
原料生薬を、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ショウキョウ1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、無水ボウショウ1.5重量部、ビャクジュツ2.0重量部、キキョウ2.0重量部、オウゴン2.0重量部、カンゾウ2.0重量部、セッコウ2.0重量部、及びカッセキ3.0重量部、の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、防風通聖散エキス末を得た。得られた防風通聖散エキス末は、原料生薬混合物27.1g当たり5000mg(1日用量)であった。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0035】
(2)被験者及び投薬スケジュール
(2-1)
月経前に特徴的な便秘を訴える、規則的な月経周期のある20~40歳の女性(N=30)を被験者とした。これらの被験者を、便秘の程度にばらつきが無いように3群(各群N=10)に分け、それぞれの群に、月経前に便秘の出現を感じた時から5日間、桃核承気湯エキス、通導散エキス、又は防風通聖散エキスを、1日3回、食前又は食間に服用させた。服用期間における便秘の症状が、前回の月経周期における月経前の便秘の症状と比較して比較してどの程度改善を感じたかについて、5段階(改善を感じた、どちらかといえば改善を感じた、どちらともいえない、どちらかといえば改善を感じなかった、改善を感じなかった)にて評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
(2-2)
また、上記の被験者は、月経前に特徴的な便秘の他、月経前以外の期間において不定期に、女性ホルモン変動以外の要因で便秘を起こしていた。上記(2-1)の試験を行った後断薬期間を経て、月経前に特徴的な便秘の復活を確認した後、月経前以外の期間において不定期な便秘の出現を感じた時から5日間、桃核承気湯エキス、通導散エキス、又は防風通聖散エキスを、1日3回、食前又は食間に服用させ、上記(2-1)と同様にして当該不定期な便秘の改善の如何を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1に示す通り、桃核承気湯エキス及び通導散エキスは、防風通聖散エキスと比べて、月経前の便秘に対して優れた改善効果を示した。表2に示す通り、桃核承気湯エキス及び通導散エキスが、月経前以外の不定期の便秘に対しては改善効果が乏しく、むしろ防風通聖散エキスの方で改善効果が高いことに鑑みると、月経前の便秘状態と月経前以外の不定期の便秘状態とは、桃核承気湯エキス及び通導散エキスと、防風通聖散エキスとに対する感受性が本質的に異なっており、桃核承気湯エキス及び通導散エキスによる便秘改善効果は、月経前の便秘に対する特有の効果であると認められる。