(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098516
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】直交変調送信機
(51)【国際特許分類】
H04L 27/36 20060101AFI20220627BHJP
H03D 7/12 20060101ALI20220627BHJP
H03D 7/00 20060101ALI20220627BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
H04L27/36
H03D7/12 C
H03D7/00 D
H04B1/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211923
(22)【出願日】2020-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発「集積電子デバイスによる大容量映像の非圧縮低電力無線伝送技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(72)【発明者】
【氏名】李 尚曄
(72)【発明者】
【氏名】藤島 実
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060CC04
5K060EE05
5K060FF06
5K060HH01
5K060HH25
5K060KK03
(57)【要約】
【課題】高周波数帯で線形性およびSNRに優れた直交変調送信機を提供する。
【解決手段】直交変調送信機10は、正相BB
I信号と平衡LO信号とを混合するハーモニックミキサ(HMX)14
1と、正相BB
Q信号と45度ずれ平衡LO信号とを混合するHMX14
2と、逆相BB
I信号と90度ずれ平衡LO信号とを混合するHMX14
3と、逆相BB
Q信号と135度ずれ平衡LO信号とを混合するHMX14
4と、全周長が(4n+3)λ/2の環状伝送線路151を有する電力結合器15とを備え、環状伝送線路151において、平衡アンテナ100が接続される第1のポートからλ/4離れた位置にHMX14
1の出力およびHMX14
3の出力がλ間隔で接続され、平衡アンテナ100が接続される第2のポートからλ/4離れた位置にHMX14
2の出力およびHMX14
4の出力がλ間隔で接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正相ベースバンドI信号と第1の平衡LO信号とを混合する第1のハーモニックミキサと、
正相ベースバンドQ信号と前記第1の平衡LO信号から45度位相のずれた第2の平衡LO信号とを混合する第2のハーモニックミキサと、
逆相ベースバンドI信号と前記第1の平衡LO信号から90度位相のずれた第3の平衡LO信号とを混合する第3のハーモニックミキサと、
逆相ベースバンドQ信号と前記第1の平衡LO信号から135度位相のずれた第4の平衡LO信号とを混合する第4のハーモニックミキサと、
全周長が(4n+3)λ/2(ただし、nは自然数、λは平衡LO信号の2逓倍信号の波長である。)の環状伝送線路を有する電力結合器とを備え、
前記環状伝送線路において、平衡アンテナが接続される第1のポートからλ/4離れた位置に前記第1のハーモニックミキサの出力および前記第3のハーモニックミキサの出力がλ間隔で接続され、前記平衡アンテナが接続される第2のポートからλ/4離れた位置に前記第2のハーモニックミキサの出力および前記第4のハーモニックミキサの出力がλ間隔で接続されている
ことを特徴とする直交変調送信機。
【請求項2】
前記ハーモニックミキサが、入力される平衡LO信号を2逓倍する周波数ダブラを有し、前記周波数ダブラが生成する2逓倍LO信号と入力されるベースバンド信号とを混合するように構成されている、請求項1に記載の直交変調送信機。
【請求項3】
前記周波数ダブラが、ドレインどうしが接続された二つのトランジスタと、前記二つのトランジスタの共通ドレインに接続されたRFバンドパスフィルタとを有し、
前記二つのトランジスタの各ソースにRF共振器とローパスフィルタとが接続されており、
前記二つのトランジスタのゲートに前記平衡LO信号が入力され、
前記ローパスフィルタに前記ベースバンド信号が入力され、
前記RFバンドパスフィルタからRF信号が出力される、請求項2に記載の直交変調送信機。
【請求項4】
直交振幅変調信号を出力する、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の直交変調送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交変調送信機に関し、特に、高周波数帯の多値QAM通信に好適な直交変調送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ帯、特に300GHz帯は数十GHz以上の広い周波数帯域が利用できることから、より大容量のデータの高速伝送ができる次世帯通信の一つとの候補として注目されている。ところが、CMOSプロセスでの最大周波数は高々200GHz台後半であることから、300GHz帯の送信機をCMOSプロセスで実現するのは困難である。そこで、CMOSプロセスの送信機は、ミキサ(一例として周波数ダブラやトリプラなどの周波数逓倍ミキサ)を最終段に配置し、ベースバンド信号をLO(Local Oscillation)信号でアップコンバートして得られたIF(Intermediate Frequency)信号を最終段のミキサで周波数逓倍してRF(Radio Frequency)信号にして出力するといったミキサラスト構成にされる(例えば、下記特許文献1および非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Lee et al., “An 80-Gb/s 300-GHz-Band Single-Chip CMOS Transceiver,” IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL.54, NO. 12, DECEMBER 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に開示されたような、周波数逓倍ミキサを最終段に配置した構成の送信機ではIF信号をドライバアンプで十分に増幅して周波数逓倍ミキサに入力する必要があるが、IF信号の周波数が高いためドライバアンプが飽和しやすいという問題がある。ドライバアンプが飽和するとミキサ出力信号が歪んで線形性が崩れてしまい、多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)の利用が困難となる。
【0006】
また、上記特許文献1の送信機は周波数ダブラにおいて発生するIF2信号成分を電力結合器でキャンセルするように設計されているが、300GHz帯の高周波数帯となると各周波数ダブラから出力される信号に位相ミスマッチが生じてIF2信号成分が十分にキャンセルしきれなくなる。このため、SNR(Signal-to-Noise Ratio)が悪化するおそれがある。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、高周波数帯で線形性およびSNRに優れた直交変調送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従った直交変調送信機は、正相ベースバンドI信号と第1の平衡LO信号とを混合する第1のハーモニックミキサと、正相ベースバンドQ信号と前記第1の平衡LO信号から45度位相のずれた第2の平衡LO信号とを混合する第2のハーモニックミキサと、逆相ベースバンドI信号と前記第1の平衡LO信号から90度位相のずれた第3の平衡LO信号とを混合する第3のハーモニックミキサと、逆相ベースバンドQ信号と前記第1の平衡LO信号から135度位相のずれた第4の平衡LO信号とを混合する第4のハーモニックミキサと、全周長が(4n+3)λ/2(ただし、nは自然数、λは平衡LO信号の2逓倍信号の波長である。)の環状伝送線路を有する電力結合器とを備え、前記環状伝送線路において、平衡アンテナが接続される第1のポートからλ/4離れた位置に前記第1のハーモニックミキサの出力および前記第3のハーモニックミキサの出力がλ間隔で接続され、前記平衡アンテナが接続される第2のポートからλ/4離れた位置に前記第2のハーモニックミキサの出力および前記第4のハーモニックミキサの出力がλ間隔で接続されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、高周波数帯で線形性およびSNRに優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る直交変調送信機の構成図
【
図2】電力結合器に接続される各種信号を説明する図
【
図4】平衡アンテナが接続されるポートの出力パワースペクトル図
【
図5】平衡アンテナが接続されるポートから出力される各種信号成分のパワーを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、図面に描かれた各部材の寸法、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
【0012】
≪直交変調送信機の構成例≫
図1は、本発明の一実施形態に係る直交変調送信機10の構成図である。直交変調送信機10は、CMOSプロセスによりシリコン基板上に実装されるオンチップ送信機であり、概して、LO回路11、4つのドライバアンプ13
1、13
2、13
3、13
4、4つのハーモニックミキサ(以下、HMXと称する。)14
1、14
2、14
3、14
4、および電力結合器15を備えている。
【0013】
LO回路11は、45度ずつ位相がずれた計8つのLO信号を生成する回路要素である。便宜上、これら8つのLO信号をLO0、LO45、LO90、LO135、LO180、LO225、LO270、およびLO315と表記する。なお、添字は位相を表す。以下、LO信号を個別に参照する場合には添字付きで参照し、総括的に参照する場合には添字なしで参照するものとする。
【0014】
一例として、LO回路11によって生成されるLO信号の周波数は130GHz帯である。このような高周波LO信号は、例えば、43~44GHz程度の原LO信号を図略の周波数トリプラで3逓倍することで生成することができる。そして、3逓倍して得られたLO0を図略の位相シフタで45度ずつ位相をずらすことで他の7つの位相のLO信号を生成することができる。
【0015】
4つのドライバアンプ131、132、133、134は、平衡LO信号を増幅する回路要素であり、いずれも同じ回路構成をしている。以下、これらを個別に参照する場合には添字付きで参照し、総括的に参照する場合には添字なしで参照するものとする。
【0016】
ドライバアンプ131は、LO0,LO180からなる第1の平衡LO信号を増幅する。ドライバアンプ132は、LO45,LO225からなる第2の平衡LO信号を増幅する。ドライバアンプ133は、LO90,LO270からなる第3の平衡LO信号を増幅する。ドライバアンプ134は、LO135,LO315からなる第4の平衡LO信号を増幅する。
【0017】
4つのHMX141、142、143、144は、直交変調送信機10に入力される直交ベースバンド信号と、LO回路11で生成されドライバアンプ13で増幅された平衡LO信号とを混合する回路要素であり、いずれも同じ回路構成をしている。以下、これらを個別に参照する場合には添字付きで参照し、総括的に参照する場合には添字なしで参照するものとする。
【0018】
HMX141は、正相ベースバンドI信号BBIとドライバアンプ131で増幅されたLO0,LO180からなる第1の平衡LO信号を受けてこれら信号を混合する。HMX142は、正相ベースバンドQ信号BBQとドライバアンプ132で増幅されたLO45,LO225からなる第2の平衡LO信号を受けてこれら信号を混合する。HMX143は、逆相ベースバンドI信号BBIバーとドライバアンプ143で増幅されたLO90,LO270からなる第3の平衡LO信号を受けてこれら信号を混合する。HMX144は、逆相ベースバンドQ信号BBQバーとドライバアンプ134で増幅されたLO135,LO315からなる第4の平衡LO信号を受けてこれら信号を混合する。一例として、ベースバンドI信号およびQ信号の周波数は10GHz帯以下である。
【0019】
電力結合器15は、伝送線路を環状にした、全周長が7λ/2の環状伝送線路151で構成される回路要素であり、ラットレース回路とも呼ばれる。ここで、λは平衡LO信号の2逓倍信号の波長である。一例として、2逓倍信号の周波数は260GHz帯である。便宜上、この2逓倍信号をLO2と表す。
【0020】
環状伝送線路151には平衡アンテナ100が接続されるポートが2つある。便宜上、平衡アンテナ100が接続されるポートをΔポートと称する。2つのΔポートの間隔はλ/2である。平衡アンテナ100はオンチップアンテナまたは外部アンテナのいずれでもよい。
【0021】
さらに、環状伝送線路151において、平衡アンテナ100が接続される一方のΔポート(
図1の例では左側のΔポート)からλ/4離れた位置にHMX14
1の出力が接続され、そこからさらにλ離れた位置にHMX14
3の出力が接続されている。また、環状伝送線路151において、平衡アンテナ100が接続される他方のポート(
図1の例では右側のΔポート)からλ/4離れた位置にHMX14
2の出力が接続され、そこからさらにλ離れた位置にHMX14
4の出力が接続されている。環状伝送線路151上でHMX14
3の出力の接続点とHMX14
4の出力の接続点との間隔はλ/2である。
【0022】
環状伝送線路151上でHMX143の出力の接続点とHMX144の出力の接続点との中間点にポート(便宜上、Σポートと称する。)があるが、このΣポートはΔポートの出力を最大化するキャリブレーションのための観測ポートとして用いられる。なお、このキャリブレーションについては本発明者による特願2020-161718に詳しい記載があるのでそちらを参照されたい。
【0023】
図2は、電力結合器15に接続される各種信号を説明する図である。HMX14が周波数トリプラのように振る舞うことで、電力結合器15に、各HMX14から(LO
θ+BB
X)
3を展開した信号成分が入力される。ただし、LO
θは位相θの平衡LO信号、BB
XはベースバンドI信号またはベースバンドQ信号のいずれかを表す。さらに、電力結合器15には各HMX14から平衡LO信号の2逓倍信号成分LO
θ
2も入力される。このうち、BB
Xの1次の項である3(LO
θ)
2BB
XがΔポートから出力すべき所望成分であり、残りは不要成分である。
【0024】
ここで、平衡LO信号における位相θは2逓倍信号ではその2倍相当の2θになることから、LO0
2、LO45
2、LO90
2、LO135
2は、それぞれ、LO2
0、LO2
90、LO2
180、LO2
270に相当する。そして、LO2
0とLO2
180とがλ、すなわち、LO2の1波長間隔で接続されているため、これら信号は電力結合器15上で打ち消し合う。同様にLO2
0とLO2
180も電力結合器15上で打ち消し合う。このように、不要成分のうち平衡LO信号の2逓倍信号LO2は電力結合器15においてキャンセルされる。
【0025】
ベースバンド信号の3次ハーモニックBBX
3の波長は高々数十GHzであり、λと比較して十分に長い。したがって、電力結合器15においてBBI
3と(BBIバー)3とが打ち消し合い、BBQ
3と(BBQバー)3とが打ち消し合う。このように、不要成分のうちベースバンド信号の3次ハーモニックBBX
3もまた電力結合器15においてキャンセルされる。
【0026】
残る不要成分は平衡LO信号の3次ハーモニックLOθ
3と3LOθ(BBX)2であるが、このうちLOθ
3は電力結合器15においてある程度キャンセルされるものの、これらは下記のようにHMX14においてキャンセルされ、電力結合器15には入力されないようになっている。
【0027】
図3は、一例に係るHMX14の要部回路図である。HMX14は、ドレインどうしが接続された二つのnMOSFET(以下、トランジスタと称する。)141、RF信号を通過させるRFバンドパスフィルタ(以下、RFBPFと称する。)142、ベースバンド信号を通過させる二つのローパスフィルタ(以下、LPFと称する。)143、および二つのRF共振器144を備えている。二つのトランジスタ141のゲートは電圧V
Bでバイアスされ、ドライブアンプ13から出力される平衡LO信号がキャパシタ145を介して入力される。キャパシタ145においてドライブアンプ13の信号入力側の一端は所定の電圧でバイアスされており、トランジスタ141のゲートに入力される信号の振幅中心がプラス側にシフトされる。RFBPF142の一端は二つのトランジスタ141の共通ドレインに接続され、他端からRF信号が出力される。より詳細には、RFBPF142はインダクタやキャパシタなどの受動素子で構成される。LPF143の一端はトランジスタ141のソースに接続され、他端にベースバンド信号BBが出力される。より詳細には、LPF143はインダクタやキャパシタなどの受動素子で構成される。RF共振器144は、一端が接地された抵抗素子(ショートスタブ)およびキャパシタが並列接続されてなるLC回路であり、RF信号に共振するように特性調整されている。このようにRF共振器144がトランジスタ141のソースに接続されていることで、ソースから漏れ出るRF信号に対してソースが接地されているように働き、RF信号がベースバンド信号の入力側に回り込まないようにしている。
【0028】
上記構成において、ドレインどうしが接続された二つのトランジスタ141およびその共通ドレインに接続されたRFBPF142からなる回路部分は周波数ダブラに相当する。このように、HMX14は、入力される平衡LO信号を2逓倍する周波数ダブラにLPF143やRF共振器144などを付加して構成されている。したがって、平衡LO信号の奇数次ハーモニック成分はHMX14内でキャンセルされて電力結合器15に入力されないようになっている。
【0029】
≪シミュレーション結果≫
次に、直交変調送信機10のシミュレーション結果について説明する。
図4は、電力結合器15のΔポート(平衡アンテナ100が接続されるポート)の出力パワースペクトル図である。ここで、平衡LO信号の周波数は130GHz、パワーは12dBmであり、入力サイン波信号の周波数は10GHz、パワーは15dBmである。この場合、所望成分は270GHz帯の信号である。
図4のグラフからわかるように、270GHz帯の出力パワーが最大となっており、高SNRが実現できている。
【0030】
図5は、電力結合器15のΔポートから出力される各種信号成分のパワーを示すグラフである。横軸は入力サイン波信号のパワー、縦軸は電力結合器15のΔポートから出力される各種信号成分のパワーである。平衡LO信号の周波数は130GHz、パワーは12dBmであり、入力サイン波信号の周波数は10GHzである。
図5のグラフからわかるように、入力信号のパワーに比例して所望信号の出力パワーが変化している。LO
2リークは電力結合器15において十分に抑制されるため、入力信号のパワーに関係なくほぼ一定である。イメージ信号は所望信号に対して十分に低く抑えられている。
【0031】
≪効果≫
以上のように、本実施形態に係る直交変調送信機10は、高周波数帯で線形性およびSNRに優れている。このため、本実施形態に係る直交変調送信機10を直交振幅変調信号の出力デバイスとして使うことで、高周波数帯域で多値QAMを使った超高速無線データ通信が可能になる。
【0032】
≪変形例≫
環状伝送線路151の全周長は7λ/2に限定されず、さらに長くてもよい。一般化すると、環状伝送線路151の全周長は、nを自然数として、(4n+3)/2で表される。
【0033】
環状伝送線路151におけるHMX141とHMX143の接続位置を入れ替えてもよい。同様に、HMX142とHMX144の接続位置をいれかえてもよい。
【0034】
さらに多くのHMX14を電力結合器15に接続して所望信号のパワーを増強するようにしてもよい。例えば、HMX141、142、143、144をそれぞれ2個に増やして計8個のHMX14を電力結合器15に接続してもよい。その場合、全周長が11λ/2環状伝送線路151に、HMX141の出力とHMX143の出力をλ間隔で交互に接続し、HMX142の出力とHMX144の出力をλ間隔で交互に接続すればよい。
【0035】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
10 直交変調送信機
13 ドライブアンプ
141 ハーモニックミキサ(第1のハーモニックミキサ)
142 ハーモニックミキサ(第2のハーモニックミキサ)
143 ハーモニックミキサ(第3のハーモニックミキサ)
144 ハーモニックミキサ(第4のハーモニックミキサ)
141 トランジスタ
142 RFバンドパスフィルタ
143 ローパスフィルタ
144 RF共振器
15 電力結合器
151 環状伝送線路
100 平衡アンテナ