(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098536
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】機能性樹脂組成物、硬化物、機能性成形体、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20220627BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220627BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220627BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220627BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220627BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08L33/04
C08K3/013
C08K5/10
C08J5/18 CEY
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211959
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】内海 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AB03
4F071AB07
4F071AB08
4F071AB09
4F071AB17
4F071AB18
4F071AB19
4F071AB26
4F071AF15
4F071AF17
4F071AF20
4F071AF21
4F071AF37
4F071BA03
4F071BB01
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC01
4F100AA37
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA23B
4F100CA30B
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100JB12
4F100JB12B
4F100JG01
4F100YY00B
4J002BG021
4J002DA036
4J002DA066
4J002DE016
4J002DE166
4J002DJ016
4J002EH077
4J002EH107
4J002EK008
4J002FD016
4J002FD116
4J002FD148
4J002FD158
4J002FD186
4J002FD206
(57)【要約】
【課題】機能性と、成形性、機械強度等の特性を両立できる機能性樹脂組成物、硬化物、機能性成形体、及びそれらの製造方法の提供。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に機能性フィラー(B)が分散してなり、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)および機能性フィラー(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)が2.5~99.9質量部および機能性フィラー(B)が0.1~97.5質量部であることを特徴とする機能性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に機能性フィラー(B)が分散してなり、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)および機能性フィラー(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)が2.5~99.9質量部および機能性フィラー(B)が0.1~97.5質量部であることを特徴とする機能性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)は、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーを含有し、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーの合計100質量部に対して、(メタ)アクリルモノマーが40~90質量部および(メタ)アクリルポリマーが10~60質量部である、請求項1に記載の機能性樹脂組成物。
【請求項3】
更に重合開始剤(C)を含有する、請求項1又は2に記載の機能性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の機能性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項5】
基材層と、前記基材層を被覆する、請求項4に記載の硬化物から構成される硬化層と、を備える機能性成形体。
【請求項6】
(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)および機能性フィラー(B)を配合して、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に機能性フィラー(B)を分散させる工程を有することを特徴とする機能性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)は、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーを含有する、請求項6に記載の機能性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
更に、前記(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に重合開始剤(C)を混合する工程を有する請求項6又は7に記載の機能性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法により機能性樹脂組成物を準備する工程と、
前記機能性樹脂組成物を硬化する工程とを有する、硬化物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の製造方法により機能性樹脂組成物を準備する工程(I)と、
前記機能性樹脂組成物を基材層と接触させる工程(II)と、
前記基材層と接触させた前記機能性樹脂組成物を硬化させる工程(III)と、
を有する、機能性成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性樹脂組成物、硬化物、機能性成形体、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチックに各種機能性フィラーを充填し、導電性、放熱性や抗菌性等を付与することは、各種分野において広く行われている。
また、種機能性フィラーを充填した熱可塑性樹脂組成物の硬化物と、成形樹脂とを一体成形して2層構造の機能性成形体を得ることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各種機能性フィラー充填により、熱可塑性プラスチックの成形性や機械的強度の低下や、成形品重量増等の問題が生じるため、機能性との両立が課題となっている。
一方、導電性や抗菌性等の機能を付与するために、成形品表面に機能性材料を塗装することも可能であるが、コストや工程、環境負荷等により、用途が限定的である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、機能性と、成形性、機械強度等の特性を両立できる機能性樹脂組成物、硬化物、機能性成形体、及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に機能性フィラー(B)が分散してなり、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)および機能性フィラー(B)の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)が2.5~99.9質量部および機能性フィラー(B)が0.1~97.5質量部であることを特徴とする機能性樹脂組成物。
(2)前記(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)は、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーを含有し、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーの合計100質量部に対して、(メタ)アクリルモノマーが40~90質量部および(メタ)アクリルポリマーが10~60質量部である、前記(1)に記載の機能性樹脂組成物。
(3)更に重合開始剤(C)を含有する、前記(1)又は(2)に記載の機能性樹脂組成物。
(4)前記(3)記載の機能性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
(5)基材層と、前記基材層を被覆する、前記(4)に記載の硬化物から構成される硬化層と、を備える機能性成形体。
(6)(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)および機能性フィラー(B)を配合して、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に機能性フィラー(B)を分散させる工程を有することを特徴とする機能性樹脂組成物の製造方法。
(7)前記(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)は、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーを含有する、請求項6に記載の機能性樹脂組成物の製造方法。
(8)更に、前記(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に重合開始剤(C)を混合する工程を有する前記(6)又は(7)に記載の機能性樹脂組成物の製造方法。
(9)前記(8)に記載の製造方法により機能性樹脂組成物を準備する工程と、
前記機能性樹脂組成物を硬化する工程とを有する、硬化物の製造方法。
(10)前記(8)に記載の製造方法により機能性樹脂組成物を準備する工程(I)と、
前記機能性樹脂組成物を基材層と接触させる工程(II)と、
前記基材層と接触させた前記機能性樹脂組成物を硬化させる工程(III)と、
を有する、機能性成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機能性と、成形性、機械強度等の特性を両立できる機能性樹脂組成物、硬化物、機能性成形体、及びそれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<機能性樹脂組成物>
本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)(以下、「(A)成分」という場合がある。)中に機能性フィラー(B)(以下、「(B)成分」という場合がある。)が分散してなる。
【0009】
[(A)成分:(メタ)アクリル樹脂シロップ]
(A)成分は、(メタ)アクリルオリゴマーまたはポリマーが溶解した、モノマーまたはモノマー混合物である。(A)成分は、いわゆる現場重合型(in situ重合型)モノマーである。
【0010】
(A)成分は、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーを含有することが好ましい。
(A)成分が(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーを含有する場合、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーの合計100質量部に対して、(メタ)アクリルモノマーが好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上、更に好ましくは50質量部以上の範囲であってよく、そして、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下の範囲であってよい。また、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーの合計100質量部に対して、(メタ)アクリルポリマーが好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上の範囲であってもよく、そして、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下の範囲であってもよい。
(A)成分中、(メタ)アクリルモノマーおよび(メタ)アクリルポリマーの含有量が上記範囲内であると、現場重合に適度な粘度としやすい。
【0011】
(A)成分の動的粘度は、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上の範囲であってもよく、そして、好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000mPa・s以下、更に好ましくは1000mPa・sの範囲であってもよい。
(A)成分の動的粘度が上記の好ましい範囲内でると、(A)成分中に(B)成分及び(C)成分を良好に分散しやすい。一方、(A)成分の動的粘度が上記の好ましい範囲の下限値以上であると、樹脂組成物の取り扱い性を良好にしやすい。
(A)成分の粘度はレオメータで容易に測定できる。動的粘度は25℃で測定する。(A)成分はニュートン挙動を示し、剪断による減粘がない。従って、動的粘度はレオメータでの剪断から独立し、粘度計でのモービルの速度から独立している。
。
【0012】
(A)成分としては、具体的には、アルケマ社製のELIUMシリーズ等が挙げられる。
【0013】
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物中、(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、2.5質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上の範囲であってもよく、そして、99.9質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下の範囲であってもよい。
(A)成分の含有量が上記の範囲の下限値以上であると、(A)成分中に(B)成分を良好に分散しやすい。一方、(A)成分の含有量が上記の範囲の上限値以下であると、(B)成分による機能性付与の効果が得られやすい。
【0015】
[(B)成分:機能性フィラー]
(B)成分は、樹脂組成物に機能を付与するフィラーである。
(B)成分としては、具体的には、導電性フィラー、抗ウイルス・菌性フィラー、蓄熱性フィラー、耐熱性有機フィラー等が挙げられる。
【0016】
(B)成分における導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維等の炭素系導電性フィラー;金、銀、銅、スズ、ニッケル、クロム、パラジウム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、白金、鉄、亜鉛、ステンレス鋼、黄銅等の金属の粉末、繊維もしくは箔片等の金属系フィラー;酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム等の金属酸化物の粉末等の金属酸化物系フィラー;前記金属系フィラーもしくは金属酸化物系フィラーをガラスビーズ、マイカ、ガラスファイバー、炭素繊維等の無機物にメッキした金属メッキフィラー等が挙げられる。
なかでも、(B)成分における導電性フィラーとしては、炭素系導電性フィラー、金属フィラーが好ましく、炭素系導電性フィラーがより好ましく、カーボンブラック、カーボンナノチューブが更に好ましい。
【0017】
(B)成分における抗ウイルス・菌性フィラーとしては、例えば、リン酸塩系抗菌剤、珪酸塩系抗菌剤(ゼオライト系)、珪酸塩系抗菌剤(シリカゲル系)、ガラス系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、コロイド状無機抗菌剤等が挙げられる。
なかでも、(B)成分における抗ウイルス・菌性フィラーとしては、酸化チタン系抗菌剤が好ましく、特開2017-155368号公報等に記載されている結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する抗ウイルス性材料等が好ましい。
【0018】
(B)成分における蓄熱性有機フィラーとしては、例えば、ポリオレフィン樹脂粒子、二酸化バナジウム粒子、アルミノシリケートおよびシリコアルミノフォスフェート粒子等が挙げられる。
なかでも、(B)成分における蓄熱性有機フィラーとしては、ポリオレフィン樹脂粒子や二酸化バナジウム粒子が好ましい。
【0019】
(B)成分における耐熱性有機フィラーとしては、エンジニアリングプラスチック樹脂粒子、熱硬化樹脂粒子等が挙げられる。
なかでも、(B)成分における耐熱性有機フィラーとしては、エンジニアリングプラスチック樹脂粒子が好ましい。
【0020】
(B)成分の粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.05μm以上の範囲であってもよく、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下の範囲であってもよい。
(B)成分の粒子径が上記の好ましい範囲内であると、(A)成分中に(B)成分を良好に分散しやすくなり、(B)成分による機能性付与の効果が得られやすい。
【0021】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0022】
本実施形態に係る樹脂組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上の範囲であってもよく、そして、97.5質量部以下、好ましくは95質量部以下、より好ましくは90質量部以下の範囲であってもよい。
(B)成分の含有量が上記の範囲の下限値以上であると、(B)成分による機能性付与の効果が得られやすい。一方、(B)成分の含有量が上記の範囲の上限値以下であると、(A)成分中に(B)成分を良好に分散しやすい。
【0023】
[(C)成分:重合開始剤]
本実施形態に係る樹脂組成物は、更に重合開始剤(C)(以下、「(C)成分」という場合がある。)を含有してもよい。樹脂組成物が(C)成分を含有する場合、樹脂組成物の現場重合を良好に進行しやすくなる。
【0024】
(C)成分としては、(A)成分の重合開始剤として公知のものであれば特に限定されない。(C)成分としては、例えば、ジアシル過酸化物、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール、アゾ化合物等が挙げられる。
【0025】
(C)成分としては、具体的には、イソプロピルカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化カプロイル、過酸化ジクミル、tert-過安息香酸ブチル、tert-過(2-エチルヘキサン酸)ブチル、クミルヒドロペルオキシド、1,1-ジ(tert-ブチルぺルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン,tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-過酢酸ブチル、tert-過ピバル酸ブチル、過ピバル酸アミル、tert-ブチルぺルオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)または4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン)等が挙げられる。
【0026】
(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係る樹脂組成物中、(C)成分の含有量は、(A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上の範囲であってもよく、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは9質量部以下、更に好ましくは8質量部以下の範囲であってもよい。
(C)成分の含有量が上記の好ましい範囲内であると、(A)成分の重合反応が良好に進行しやすい。
【0028】
[(D)成分:分散剤]
本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、分散剤(以下、(D)成分という場合がある。)を含有してもよい。
(D)成分としては、特に限定されないが、例えばポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体の水性樹脂、及び、前記水性樹脂の塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド及びエチレンビスステアリルアミド(EBS)等が挙げられる。
【0029】
(D)成分としては、具体的には、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperbykシリーズ、BASF社製のEFKAシリーズ、日本ルーブリゾール株式会社製のSOLSPERSEシリーズ、EVONIK社製のTEGOシリーズ等を使用することができる。
【0030】
(D)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0031】
本実施形態に係る機能性樹脂組成物中、(D)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量以上の範囲であってもよく、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、、更に好ましくは5質量部以下であることが更に好ましい。
(D)成分の含有量が上記の範囲の下限値以上であると、(B)成分の分散性が良好となりやすい。一方、(D)成分の含有量が上記の範囲の上限値以下であると、(B)成分による機能性付与の効果が得られやすい。
【0032】
[(E)成分:熱可塑性樹脂]
本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(E)(以下、「(E)成分」という場合がある。)を含有してもよい、(E)成分は特に限定されず、機能性樹脂として用いられる公知の熱可塑性樹脂を使用できる。
(E)成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)及びポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。
【0033】
(E)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0034】
本実施形態に係る樹脂組成物中、(E)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上の範囲であってもよく、そして、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下の範囲であってもよい。
(E)成分の含有量が上記の好ましい範囲内であると、所望の機能性が発揮しやすい。
【0035】
本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に、機能性フィラー(B)が分散してなる。
本実施形態においては、樹脂成分として(A)成分を用いることにより、(B)成分を(A)成分中に局在化させることができる。そのため、本実施形態に係る機能性樹脂組成物を他のポリマー等と併用することにより、当該他のポリマーにより機械強度等を確保しつつ、機能性フィラーの量を低減することができる。そのため、本実施形態に係る機能性樹脂組成物によれば、機能性と、成形性、機械強度等の特性を両立できる。
また、本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、(A)成分を含むため、低温(室温)、短時間の重合条件で現場重合が可能である。そのため、本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、成形性が高い。また、本実施形態に係る機能性樹脂組成物は、機能性材料を成形品等の表面に塗装する場合に比べて、コストや工程、環境負荷、汎用性等の点で有利である。
【0036】
<硬化物>
本実施形態に係る硬化物は、前記機能性樹脂組成物に重合開始剤(C)を配合して硬化してなる。
本実施形態に係る硬化物は、(A)成分が重合したポリマーマトリックス中に(B)成分が微分散化されている。そのため、本実施形態に係る硬化物は、汎用性が高い機能性材料として有用である。
【0037】
<機能性成形体>
本実施形態に係る機能性成形体は、基材層と、前記基材層を被覆する前記硬化物から構成される硬化層と、を備える。
【0038】
基材層を形成する材料は特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂等が挙げられる。基材層を形成する材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
本実施形態に係る機能性成形体は、前記硬化物からなる硬化層を備える。そのため、基材層により機械強度等を確保しつつ、硬化層により、良好な機能性が得られる。
【0040】
<機能性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る機能性樹脂組成物の製造方法は、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)および機能性フィラー(B)を配合して、(メタ)アクリル樹脂シロップ(A)中に機能性フィラー(B)を分散させる工程を有する。
【0041】
(A)成分中に、(B)成分を分散させる方法は特に限定されず、例えば、湿式粉砕機やコロイドミルなどを用いる方法が挙げられる。また、分散剤(D)を用いてもよい。
【0042】
湿式粉砕機とは、液体中の固形物を粉砕・分散・混合・圧送を同時に行うことが出来る湿式粉砕ポンプである。湿式粉砕ポンプは、液中で固形物を圧送しながら、固形物を固定刃と回転刃、もしくは回転刃とグリッドにより粉砕する機構が好ましく、より好ましくは、切刃、粉砕羽根車、シュラウドリング、グリッドの4点部品の組み合わせにより、3段階に粉砕される機構である。
【0043】
コロイドミルとは、粒子が液体中を浮遊している分散系において粒子サイズを低減するために使用される機械である。コロイドミルは、ロータとステータの組み合わせからなり、固定されたステータに対してロータは高速で回転する。高速回転により、生じる高レベルの剪断により液中の粒子サイズを小さくするために使用される。
【0044】
本実施形態に係る機能性樹脂組成物の製造方法は、更に、(A)成分中に(C)成分を混合する工程を有してもよい。
(A)成分中に(C)成分を混合する方法は特に限定されないが、典型的には、(A)成分中に、(B)成分を分散させた後に、(C)成分を添加し、撹拌する。撹拌時間は、例えば、1分~1時間である。
【0045】
本実施形態に係る機能性樹脂組成物の製造方法によれば、樹脂成分として(A)成分を用いることにより、湿式分散処理等により(B)成分を(A)成分中に局在化させることができる。そのため、本実施形態に係る機能樹脂組成物の製造方法によれば、機能性と、成形性、機械強度等の特性を両立できる機能性樹脂組成物が得られる。
【0046】
<硬化物の製造方法>
本実施形態に係る硬化物の製造方法は、前記機能性樹脂組成物の製造方法により(C)成分を配合した機能性樹脂組成物を準備する工程(以下、「準備工程」という場合がある。)と、前記機能性樹脂組成物を硬化する工程(以下、「硬化工程」という場合がある。)とを有する。
【0047】
(準備工程)
準備工程は、前記機能性樹脂組成物の製造方法と同様である。
【0048】
(硬化工程)
硬化工程では、前記樹脂組成物製造工程で得られた樹脂組成物を硬化する。典型的には、15℃~40℃、好ましくは20~30℃で、15分~5時間、好ましくは30分~3時間重合反応を進行させ、樹脂組成物を硬化して硬化物を得る。
【0049】
本実施形態に係る硬化物の製造方法によれば、低温(室温)、短時間の重合条件で現場重合により、(A)成分が重合したポリマーマトリックス中に(B)成分が局在化した機能性樹脂組成物の硬化物が得られる。そのため、本実施形態に係る硬化物の製造方法によれば、汎用性が高い機能性材料として有用な硬化物が得られる。
【0050】
<機能性成形体の製造方法>
本実施形態に係る機能性成形体の製造方法は、前記機能性樹脂組成物の製造方法により(C)成分を配合した機能性樹脂組成物を準備する工程(I)と、前記機能性樹脂組成物を基材層と接触させる工程(II)と、前記基材層と接触させた前記機能性樹脂組成物を硬化させる工程(III)と、を有する。
【0051】
(工程(I))
工程(I)は、前記前記機能性樹脂組成物の製造方法と同様である。
【0052】
(工程(II))
工程(I)で得られた機能性樹脂組成物を基材層と接触させる方法は特に限定されず、例えば基材層を挿入した成形金型に前記機能性樹脂組成物を注入する方法、基材層を押出機等から引き抜きながら前記機能性樹脂組成物で被覆する方法等が挙げられる。
【0053】
(工程(III))
前記基材層と接触させた前記機能性樹脂組成物を硬化させる方法は特に限定されず、例えばインサート成形により硬化させる方法、インフュージョンや真空成形により硬化させる方法、RTM成形、引き抜き成形等が挙げられる。
成形温度は、典型的には15~40℃である。また、成形時間は、典型的には、15分~5時間である。なお、得られた機能性成形体は熱可塑性を有するため、典型的な温度200~250℃での加熱プレス等を用いた2次加工による賦形あるいは寸法や表面状態の調整が可能である。また、工程(I)で得られた機能性樹脂組成物は基材層への接触前に硬化させ、基材層を硬化物で挟み、典型的な温度200~250℃での加熱プレス、真空成形等で機能性成形体を得ることもできる。
【0054】
本実施形態に係る機能性成形体の製造方法によれば、前記機能性樹脂組成物の硬化物から構成される硬化層を備える機能性成形体が得られる。そのため、基材層により機械強度等を確保しつつ、硬化層により、良好な機能性を発揮する機能性成形体が得られる。
【実施例0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0056】
(実施例1:機能性樹脂組成物(1)の調製)
カーボンブラック(CONDUCTEX7067(Birla社製))20質量部、現場重合型アクリルモノマー(Elium 188 O(アルケマ社製)79質量部及び分散剤(BYK-9076(ビックケミー社製)1wt%を湿式ビーズミルにて分散処理し、機能性樹脂組成物(1)を得た。
【0057】
(実施例2:機能性成形体(1)の製造)
機能性樹脂組成物(1)94質量部に過酸化物(ナイパーFF(日油社製))6質量部を添加し、ビーカー内でマグネチックスターラーで5分間撹拌後、59×58×1mmのPEシートを入れたD2試験片金型に注入後、室温で3時間保持し、60×60×2mmのD2試験片(機能性樹脂組成物(1))を作製した。
【0058】
(比較例1:比較機能性成形体(1)の製造)
カーボンブラック(CONDUCTEX7067(Birla社製))18.8質量部及びポリエチレン(ノバテックHY540(日本ポリエチレン製))81.2質量部を二軸押出機TEM-26SX(芝浦機械株式会社製)(シリンダ温度230℃、スクリュ回転数300rpm、吐出量10kg/hr)にて混練し、比較コンパウンド(1)を得た。
作製したコンパウンド(1)を射出成形機(シリンダ温度230℃ 金型温度50℃)でD2試験片(比較機能性成形体(1))を作製した。
【0059】
各例で得られたD2試験片について、表面抵抗と体積抵抗率、引張、曲げ特性を測定した。
【0060】
(測定例1) 表面抵抗率(Ω/□)、体積抵抗率(Ω・cm)
表面抵抗率(Ω/□)と体積抵抗率(Ω・cm)は、株式会社ADC製の超高抵抗計「R8340A」を用いて23℃、55%RH環境下で測定した。実施例2及び比較例1で作製したD2試験片を、二重リング電極に一定荷重で挟み、印加電圧10V(表面抵抗率)、500V(体積抵抗率)にて測定した。なお該測定サンプルは23℃、55%RH環境下で24時間以上放置してから測定した。
【0061】
(測定例2、3) 強度特性
実施例2及び比較例1で作製したD2試験片を切削し、10×60×2mm試験片を作製した。
引張試験
ISO 527に準拠した測定法により引張特性を測定した。
曲げ試験
ISO 178に準拠した測定法により曲げ強度を測定した。
【0062】