(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098704
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品
(51)【国際特許分類】
C08F 299/02 20060101AFI20220627BHJP
C08G 59/16 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08F299/02
C08G59/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212260
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西田 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正広
【テーマコード(参考)】
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4J036AD08
4J036CA20
4J036CA24
4J036CA25
4J036CA29
4J036CA30
4J036HA01
4J036JA01
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4J127BE25Y
4J127BF291
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4J127BG05Z
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4J127BG10Z
4J127BG121
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4J127BG14Y
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4J127BG17Y
4J127BG17Z
4J127CA01
4J127FA08
4J127FA21
4J127FA24
4J127FA29
(57)【要約】
【課題】高屈折率性能を有し、硬化物における優れた耐摩耗性を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品を提供する。
【解決手段】一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)と、多塩基酸無水物(B)と、アルキレンオキサイド鎖及び/又はエステル鎖を有する(メタ)アクリレート化合物(C)と、を必須原料とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、前記多塩基酸無水物(B)が、脂環式多塩基酸無水物及び/又は芳香族多塩基酸無水物であり、前記化合物(C)が有するアルキレンオキサイド鎖の繰り返し単位数が、2~20の範囲であり、エステル鎖の炭素原子数が、5以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)と、
多塩基酸無水物(B)と、
アルキレンオキサイド鎖及び/又はエステル鎖を有する(メタ)アクリレート化合物(C)と、
を必須原料とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
前記多塩基酸無水物(B)が、脂環式多塩基酸無水物及び/又は芳香族多塩基酸無水物であり、
前記化合物(C)が有するアルキレンオキサイド鎖の繰り返し単位数が、2~20の範囲であり、
エステル鎖の炭素原子数が、5以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、下記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表されるものである請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)~(4)中、環Aは、それぞれ独立して、芳香環又はシクロ環であり、R
1は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、R
2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、R
3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。Xは、-O-、-SO
2-、下記構造式(5)で表される構造、又は下記構造式(6)で表される構造であり、mは、0又は1~10の整数であり、nは、0又は1~10の整数であり、m+nは、2~20の整数である。また、rは、それぞれ独立して3~8の整数であり、sは、それぞれ独立して1~5の整数であり、tは、それぞれ独立して1~5の整数である。]
【化2】
[式(5)中、R
4、R
5は、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基である。]
【化3】
【請求項3】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、前記多塩基酸無水物(B)及び前記化合物(C)の反応生成物と、前記化合物(A)との反応物を含むものである請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記多塩基酸無水物(B)の使用量が、前記化合物(A)100質量部に対して、30~300質量部の範囲である請求項1~3の何れか1項記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(C)の使用量が、前記化合物(A)100質量部に対して、70~650質量部の範囲である請求項1~4の何れか1項記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化物からなる硬化塗膜を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率性能を有し、硬化物における優れた耐摩耗性を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物、及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等のディスプレイ技術の急速な発展に伴い、それに用いられるシート状又はフィルム状光学部材についても、新しい機能を有するものや、より高品質のものに対する需要が高まっている。このような光学部材としては、例えば、液晶表示装置のバックライトに用いられるプリズムシートやマイクロレンズシート等の輝度向上シートが挙げられる。これらの輝度向上シートは、通常、基材上に、表面に微細な凹凸構造を有する光学機能層が積層されてなるものであり、表面の微細な凹凸構造によって、バックライト光を屈折させることでディスプレイ正面の輝度を向上させることができる。該輝度向上シートには、少ない光量で高輝度を維持するために材料自身が高屈折率性能を有することが求められている。
【0003】
従来知られている輝度向上シート用樹脂材料としては、金属酸化物ナノ粒子を含有した樹脂組成物であり、金属酸化物ナノ粒子がその粒度分布において、累積10%粒子径が5~25nm、累積50%粒子径が7~30nm、累積90%粒子径が15~50nm、累積100%粒子径が50~250nmの分布を持ち、樹脂成分として2つ以上のベンゼン骨格を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物が知られているが(例えば、特許文献1参照。)、このような無機微粒子配合型の樹脂材料は、高屈折率性能を有する一方で、硬化物における耐摩耗性が十分でない等の問題があった。
【0004】
そこで、高屈折率性能を有し、硬化物における優れた耐摩耗性を有する材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高屈折率性能を有し、硬化物における優れた耐摩耗性を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物と、特定の多塩基酸無水物と、特定の(メタ)アクリレート化合物とを必須原料とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)と、多塩基酸無水物(B)と、アルキレンオキサイド鎖及び/又はエステル鎖を有する(メタ)アクリレート化合物(C)と、を必須原料とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、前記多塩基酸無水物(B)が、脂環式多塩基酸無水物及び/又は芳香族多塩基酸無水物であり、前記化合物(C)が有するアルキレンオキサイド鎖の繰り返し単位数が、2~20の範囲であり、エステル鎖の炭素原子数が、5以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる硬化物、及び物品に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、高屈折率性能を有し、硬化物における優れた耐摩耗性を有することから、プリズムシート、マイクロレンズシート等の輝度向上シートなどの光学部材に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)と、多塩基酸無水物(B)と、アルキレンオキサイド鎖及び/又はエステル鎖を有する(メタ)アクリレート化合物(C)とを必須の原料とすることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0012】
前記化合物(A)としては、一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有するものを用いる。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
前記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0015】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
前記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
これらの化合物(A)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
前記多塩基酸無水物(B)としては、脂環式多塩基酸無水物及び/又は芳香族多塩基酸無水物を用いる。
【0019】
前記脂環式多塩基酸無水物としては、本発明では、酸無水物基が脂環構造に結合しているものを脂環式多塩基酸無水物とし、それ以外の構造部位における芳香環の有無は問わないものとする。前記脂環式多塩基酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0020】
前記芳香族多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
【0021】
これらの多塩基酸無水物(B)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0022】
また、前記多塩基酸無水物(B)としては、必要に応じて、前記脂環式多塩基酸無水物及び前記芳香族多塩基酸無水物以外に脂肪族多塩基酸無水物を併用することもできる。
【0023】
前記脂肪族多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。また、前記脂肪族多塩基酸無水物としては、脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0024】
前記多塩基酸無水物(B)としては、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、芳香族多塩基酸無水物を必須として用いることが好ましく、前記芳香族多塩基酸無水物の含有量が、前記多塩基酸無水物(B)中に30~100質量%の範囲が好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0025】
また、前記多塩基酸無水物(B)の使用量は、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、前記化合物(A)100質量部に対して、30~300質量部の範囲が好ましく、50~200質量部の範囲がより好ましい。
【0026】
前記化合物(C)としては、アルキレンオキサイド鎖及び/又はエステル鎖を有する(メタ)アクリレート化合物を用いる。前記化合物(C)がアルキレンオキサイド鎖を有する場合、前記アルキレンオキサイド鎖の繰り返し単位は、2~20の範囲であり、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、4~15の範囲が好ましい。また、前記化合物(C)が、エステル鎖を有する場合、前記エステル鎖の炭素原子数は、5以上であり、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、5~25の範囲が好ましい。
【0027】
前記化合物(C)としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。これらの化合物(C)は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
また、前記化合物(C)の使用量は、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、前記化合物(A)100質量部に対して、70~650質量部の範囲が好ましく、90~500質量部の範囲がより好ましい。
【0029】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能なことから、下記一般式(1)、(2)、(3)又は(4)で表されるものであることが好ましい。
【0030】
【0031】
[式(1)~(4)中、環Aは、それぞれ独立して、芳香環又はシクロ環であり、R1は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、R2は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、R3は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。Xは、-O-、-SO2-、下記構造式(5)で表される構造、又は下記構造式(6)で表される構造であり、mは、0又は1~10の整数であり、nは、0又は1~10の整数であり、m+nは、2~20の整数である。また、rは、それぞれ独立して3~8の整数であり、sは、それぞれ独立して1~5の整数であり、tは、それぞれ独立して1~5の整数である。]
【0032】
【化2】
[式(5)中、R
4、R
5は、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基である。]
【0033】
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法により製造することができる。例えば、必須原料を含む原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、原料を順次反応させる方法で製造してもよい。
【0035】
前記原料を順次反応させる方法としては、例えば、先に多塩基酸無水物(B)と化合物(C)とを、トリフェニルホスフィン存在下、100℃、10時間で反応させ、反応生成物を得、次いで、得られた反応生成物と、化合物(A)とをトリフェニルホスフィン存在下、105℃、10時間で反応させて製造する方法が挙げられる。
【0036】
これらの製造方法の中でも、高屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有する硬化物を形成可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られることから、原料を順次反応させる方法が好ましい。
【0037】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、用いる活性エネルギー線の種類によっては、光重合開始剤を用いることが好ましい。前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等の光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
【0038】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad 1173」、「Omnirad 184」、「Omnirad 127」、「Omnirad 2959」、「Omnirad 369」、「Omnirad 379」、「Omnirad 907」、「Omnirad 4265」、「Omnirad 1000」、「Omnirad 651」、「Omnirad TPO」、「Omnirad 819」、「Omnirad 2022」、「Omnirad 2100」、「Omnirad 754」、「Omnirad 784」、「Omnirad 500」、「Omnirad 81」(IGM Resins社製);「KAYACURE DETX」、「KAYACURE MBP」、「KAYACURE DMBI」、「KAYACURE EPA」、「KAYACURE OA」(日本化薬株式会社製);「Vicure 10」、「Vicure 55」(Stoffa Chemical社製);「Trigonal P1」(Akzo Nobel社製)、「SANDORAY 1000」(SANDOZ社製);「DEAP」(Upjohn Chemical社製)、「Quantacure PDO」、「Quantacure ITX」、「Quantacure EPD」(Ward Blenkinsop社製);「Runtecure 1104」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0039】
また、前記光重合開始剤は、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤を併用することもできる。
【0040】
前記光重合開始剤の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して0.05~20質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1~10質量部の範囲で用いることがより好ましい。
【0041】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、更に必要に応じて、前記化合物(A)、前記多塩基酸無水物(B)、及び前記化合物(C)以外のその他の成分を含有していてもよい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の前記化合物(A)、前記多塩基酸無水物(B)、及び前記化合物(C)の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分中に50~100質量%の範囲が好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0042】
前記その他の成分は、例えば、無機微粒子、シランカップリング剤、リン酸エステル化合物、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤、有機ビーズ、量子ドット(QD)、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等が挙げられる。
【0043】
前記無機微粒子は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜における硬度や屈折率等を調整する等の目的で添加されるものであり、公知慣用の種々の無機微粒子を用いることができる。前記無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。このうち特に汎用性が高いシリカ粒子は、フュームドシリカや、沈殿法シリカ、ゲルシリカ、ゾルゲルシリカ等と呼ばれる湿式シリカなど様々な種類があるが、いずれを用いてもよい。また、無機微粒子の表面はシランカップリング剤等で修飾されていてもよい。無機微粒子の粒子径は所望の塗膜性能等に応じて適宜調節されるが、動的光散乱法による測定値が10~250nmの範囲であることが好ましい。無機微粒子を用いる場合、その添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して、0.1~60質量部の範囲が好ましい。
【0044】
前記シランカップリング剤としては、例えば、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]トリアルキルシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]ジアルキルアルコキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]アルキルジアルコキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]トリアルコキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;トリアルキルビニルシラン、ジアルキルアルコキシビニルシラン、アルキルジアルコキシビニルシラン、トリアルコキシビニルシラン、トリアルキルアリルシラン、ジアルキルアルコキシアリルシラン、アルキルジアルコキシアリルシラン、トリアルコキシアリルシラン等のビニル系シランカップリング剤;スチリルトリアルキル、スチリルジアルキルアルコキシシラン、スチリルアルキルジアルコキシシラン、スチリルトリアルコキシシラン等のスチレン系シランカップリング剤;(グリシジルオキシアルキル)トリアルキルシラン、(グリシジルオキシアルキル)ジアルキルアルコキシシラン、(グリシジルオキシアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(グリシジルオキシアルキル)トリアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリメトキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリアルキルシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]ジアルキルアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]アルキルジアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリアルコキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;(イソシアネートアルキル)トリアルキルシラン、(イソシアネートアルキル)ジアルキルアルコキシシラン、(イソシアネートアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(イソシアネートアルキル)トリアルコキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記リン酸エステル化合物としては、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化合物である日本化薬株式会社製「カヤマーPM-2」、「カヤマーPM-21」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-1M」「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-1A(N)」、SOLVAY社製「SIPOMER PAM 100」、「SIPOMER PAM 200」、「SIPOMER PAM 300」、「SIPOMER PAM 4000」、大阪有機化学工業社製「ビスコート#3PA」、「ビスコート#3PMA」、第一工業製薬社製「ニューフロンティア S-23A」;分子構造中にアリルエーテル基を有するリン酸エステル化合物であるSOLVAY社製「SIPOMER PAM 5000」等の市販品が挙げられる。
【0046】
前記溶剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工粘度調節等の目的で添加されるものであり、その種類や添加量は、所望の性能に応じて適宜調整される。一般には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分が10~90質量%の範囲となるように用いられる。前記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0047】
前記紫外線吸収剤は、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0048】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0049】
前記シリコン系添加剤は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体など如きアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのシリコン添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0050】
前記フッ素系添加剤は、例えば、DIC株式会社「メガフェース」シリーズ等が挙げられる。これらのフッ素系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0051】
前記帯電防止剤は、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はビス(フルオロスルホニル)イミドのピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、又はリチウム塩が挙げられる。これらの帯電防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0052】
前記有機ビーズは、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ-ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらの有機ビーズは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これら有機ビーズの平均粒径は1~10μmの範囲であることが好ましい。
【0053】
前記量子ドット(QD)としては、例えば、II-V族半導体化合物、II-VI族半導体化合物、III-IV族半導体化合物、III-V族半導体化合物、III-VI族半導体化合物、IV-VI族半導体化合物、I-III-VI族半導体化合物、II-IV-VI族半導体化合物、II-IV-V族半導体化合物、I-II-IV-VI族半導体化合物、IV族元素又はこれを含む化合物等が挙げられる。前記II-VI族半導体化合物としては、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等の二元化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe等の三元化合物;CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、CdHgZnTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等の四元化合物などが挙げられる。前記III-IV族半導体化合物としては、例えば、B4C3、Al4C3、Ga4C3等が挙げられる。前記III-V族半導体化合物としては、例えば、BP、BN、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の二元化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP等の三元化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb等の四元化合物などが挙げられる。前記III-VI族半導体化合物としては、例えば、Al2S3、Al2Se3、Al2Te3、Ga2S3、Ga2Se3、Ga2Te3、GaTe、In2S3、In2Se3、In2Te3、InTe等が挙げられる。前記IV-VI族半導体化合物としては、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の二元化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe等の三元化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe等の四元化合物などが挙げられる。前記I-III-VI族半導体化合物としては、例えば、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaSe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaSe2、AgGaS2、AgGaTe2等が挙げられる。前記IV族元素又はこれを含む化合物としては、例えば、C、Si、Ge、SiC、SiGe等が挙げられる。量子ドットは単一の半導体化合物からなっていてもよいし、複数の半導体化合物からなるコアシェル構造を有していてもよい。また、その表面を有機化合物にて修飾したものであってもよい。
【0054】
これら各種の添加剤は、所望の性能等に応じて任意の量添加することができるが、通常、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量部に対して、0.01~40質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0055】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記各配合成分を混合して製造される。混合方法は特に限定されず、ペイントシェイカー、ディスパー、ロールミル、ビーズミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等を用いることができる。
【0056】
本発明の硬化物は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0057】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0058】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/m2であることが好ましく、0.5~10kJ/m2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。
【0059】
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0060】
本発明の物品としては、例えば、光学部材等が挙げられる。
【0061】
前記光学部材としては、例えば、プラスチックレンズ、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム(プリズムシート、マイクロレンズシート等)、光拡散フィルム、ハードコートフィルム、フィルム型液晶素子、タッチパネル等が挙げられる。
【実施例0062】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)の調製)
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フタル酸無水物148質量部(1.00モル)と不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部(1.02モル)と2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール2質量部、4-メトキシフェノール0.2質量部を仕込み、系内を100℃に制御して8時間撹拌した。次いで、温度を60℃まで低下させた後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850-S」)186質量部(0.50モル)を加えて、105℃で7時間撹拌を続け、得られた反応物をろ過回収することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0064】
(実施例2:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(2)の調製)
実施例1で用いた不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部を、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン1モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA1DDM」)231質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(2)を得た。
【0065】
(実施例3:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(3)の調製)
実施例1で用いた不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部をポリエチレングリコールモノアクリレート(EO鎖4.5モル相当)(日油株式会社製「ブレンマーAE-200」)359質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(3)を得た。
【0066】
(実施例4:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(4)の調製)
実施例1で用いた不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部をポリエチレングリコールモノアクリレート(EO鎖10モル相当)(日油株式会社製「ブレンマーAE-400」)540質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(4)を得た。
【0067】
(実施例5:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(5)の調製)
実施例1で用いたフタル酸無水物148質量部をcis-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物154質量部に変更し、かつ、実施例1で用いた不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部をポリエチレングリコールモノアクリレート(EO鎖10モル相当)(日油株式会社製「「ブレンマーAE-400」)540質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(5)を得た。
【0068】
(実施例6:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(6)の調製)
実施例1で用いたビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850-S」)186質量部をナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社「HP-4032SS」)136質量部に変更し、かつ、実施例1で用いた不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部をポリエチレングリコールモノアクリレート(EO鎖4.5モル相当)(日油株式会社製「ブレンマーAE-200」)359質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(6)を得た。
【0069】
(比較例1:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R1)の調製)
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フタル酸無水物148質量部(1.00モル)と不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε-カプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)353質量部(1.02モル)と2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール2質量部、4-メトキシフェノール0.2質量部を仕込み、系内を100℃に制御して8時間撹拌した。次いで、温度を60℃まで低下させた後、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂(株式会社ADEKA製「ED-523T」)108質量部を加えて、105℃で7時間撹拌を続け、得られた反応物をろ過回収することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R1)を得た。
【0070】
(比較例2:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R2)の調製)
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フタル酸無水物148質量部(1.00モル)とヒドロキシエチルアクリレート118質量部と2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール2質量部、4-メトキシフェノール0.2質量部を仕込み、系内を100℃に制御して8時間撹拌した。次いで、温度を60℃まで低下させた後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850-S」)186質量部(0.50モル)を加えて、105℃で7時間撹拌を続け、得られた反応物をろ過回収することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(R2)を得た。
【0071】
上記の実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて、下記の測定及び評価を行った。
【0072】
[屈折率の測定方法]
ガラス板上に実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100質量部に光重合開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 184」)3質量部を添加混合し、硬化時の膜厚が50μmになるようにアプリケーターを使用して塗布し、活性エネルギー線を照射して前記基材の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜を形成した。前記硬化塗膜をガラス基板より剥離し、その屈折率をアッべ屈折率計(株式会社アタゴ製「NAR-3T」)を用いて測定した。
【0073】
[耐摩耗性の測定方法]
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物100質量部に光重合開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 184」)3質量部を添加混合し、適当なプラスチックフィルムに塗布した後、80W高圧水銀ランプで紫外線照射することでフィルム上に硬化塗膜を有する積層体を得た。次いで、スチールウール(日本スチールウール株式会社製「ボンスター#0000」)0.5gで直径2.4センチメートルの円盤状の圧子を包み、該圧子に500g重の荷重をかけて、該積層体の塗装表面を10往復させる磨耗試験を行った。磨耗試験前後の積層フィルムのヘーズ値をスガ試験機株式会社製「ヘーズコンピュータHZ-2」を用いて測定し、それらの差の値(dH)を用いて、以下の基準に従い評価した。なお、差の値(dH)が小さいほど、耐摩耗性に優れる。
【0074】
A:dHが、2.0以下であった
B:dHが、2.0超5.0以下であった。
C:dHが、5.0超10.0以下であった。
D:dHが、10.0超15.0以下であった。
E:dHが、15.0超であった。
【0075】
【0076】
表1に示した実施例1~6は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた例である。これらの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、高い屈折率性能を有し、優れた耐摩耗性を有することが確認できた。
【0077】
一方、比較例1は、本発明で規定する一分子中に少なくとも2つの芳香環及び少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた例である。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、耐摩耗性には優れるものの、屈折率性能が不十分であることが確認できた。
【0078】
比較例2は、本発明で規定するアルキレンオキサイド鎖及び/又はエステル鎖を有する(メタ)アクリレート化合物を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた例である。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、高い屈折率性能を有するものの、耐摩耗性が著しく不十分であることが確認できた。