(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022098710
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】容器用ニス組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 5/00 20060101AFI20220627BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20220627BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220627BHJP
C09D 171/00 20060101ALI20220627BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220627BHJP
B65D 25/34 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C09D5/00 Z
C09D4/02
C09D175/04
C09D171/00
C09D163/00
B65D25/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212270
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】鑓水 清隆
(72)【発明者】
【氏名】木村 菜々子
【テーマコード(参考)】
3E062
4J038
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC02
3E062JA01
3E062JA08
3E062JB22
3E062JC01
4J038DB022
4J038DB251
4J038DF041
4J038DF042
4J038FA122
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA20
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA11
4J038PA17
4J038PB04
4J038PC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化粧品などのプラスチック容器用ニスとして、容器が変形しない紫外線の照射処理で塗膜が硬化し、手で触った際にしっとりとしたソフトな触感を発現する一方、容器として必要な物性を確保できるニス組成物を提供する。
【解決手段】オキセタン化合物(A)20~60質量部、アクリレート化合物(B)10~30質量部、光カチオン重合開始剤(C)1~5質量部、光ラジカル重合開始剤(D)0.5~2質量部、平均粒子径10~25μmかつガラス転移点が-80~0℃のウレタン樹脂ビーズ(E)10~30質量部を含有する樹脂組成物であって、塗工後の乾燥塗面のRSm(粗さ曲線要素の平均長さ)が100~300μmであり、ベースニス部のヤング率が2000~5000MPaの範囲である、ニス組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン化合物(A)20~60質量部、アクリレート化合物(B)10~30質量部、光カチオン重合開始剤(C)1~5質量部、光ラジカル重合開始剤(D)0.5~2質量部、平均粒子径10~25μmかつガラス転移点が-80~0℃のウレタン樹脂ビーズ(E)10~30質量部を含有する樹脂組成物であって、 塗工後の乾燥塗面のRSm(粗さ曲線要素の平均長さ)が100~300μmであり、ベースニス部のヤング率が2000~5000MPaの範囲であることを特徴とするニス組成物。
【請求項2】
前記乾燥塗面の測定速度を10mm/sにおける動摩擦係数が0.4~1.0であり、かつ前記動摩擦係数の測定速度を2mm/sから10mm/sに増加させた場合の動摩擦係数の上昇率が15%以上であるニス組成物。
【請求項3】
請求項1~2の何れか1項に記載のニス組成物を外側面に配置したことを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項3に記載の容器であって、ニス組成物が塗工乾燥された積層フィルムを外側面に配置したことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用、化粧品用などのプラスチック容器の外側面に配置される紫外線硬化型塗料及びそれを用いた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用、化粧品用などに使用されるプラスチック容器には印刷インキの保護や傷つき 防止、光沢保持などを目的としてコーティング剤が塗布されている。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやポリプロピレン(PP)フィルムを貼り付けて構成するラミネート容器の場合にも同様の理由から最外層にはオーバープリント(OP)ニスが塗布されている。
【0003】
近年、これらのニスに人が手で持った際のすべり止め効果や手で触った際にソフトな触感を感じ取れるなどの特徴を付与する技術が報告されている。これは、目の不自由な高齢者や障がい者が触感の違いで内容物を区別できることや、暗い部屋などで容器を持つ際に容器によって違いを感じ取れるなどのメリットがある。これまでに、金属容器用ニスに特定粒子径のフィラーを一定比率添加することで塗膜表面に凹凸を形成させ、更に塗膜表面の動摩擦係数を制御することで滑り止め機能を発現させるニス組成物に関する発明(特許文献1)や、紙などの印刷物用の紫外線硬化型OPニスに低Tgの樹脂ビーズを添加してソフトな触感を発現するニス組成物に関する発明(特許文献2)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-160345号公報
【特許文献2】国際公開第2015/029878号
【0005】
上記特許文献1の組成物は機能として滑り止め効果を発現すると同時に容器性能も有するものであるが、金属容器用として限定されるものであり、ニスの性能を発現させるには塗料を硬化させるために高温での加熱処理が必要である。一方、特許文献2の組成物は紫外線照射にてニスの表面に触感を発現することが可能であるが、容器性能として必要な基材密着性、傷付き性、滑り性は確保されていない。よって、何れの発明もプラスチック容器に適用でき、かつ容器物性と特徴のある触感を兼ね備えたニス組成物を提供するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、化粧品などのプラスチック容器用ニスとして、容器が変形しない紫外線硬の照射処理で塗膜が硬化し、手で触った際にしっとりとしたソフトな触感を発現する一方、容器として必要な物性を確保できるニス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、化粧品などのプラスチック容器用紫外線硬化型ニス組成物としてある種の光硬化性樹脂を一定の比率で混合したベースに特定粒子径のフィラーを一定の比率で添加したニス組成物を紫外線により硬化させ、塗膜表面の粗さ、ベースニス部のヤング率、動摩擦係数を一定の範囲に制御することで容器として必要な物性を確保すると共に、触った際にしっとりとしたソフトな触感を付与できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、オキセタン化合物(A)20~60質量部、アクリレート化合物(B)10~30質量部、光カチオン重合開始剤(C)1~5質量部、光ラジカル重合開始剤(D)0.5~2質量部、平均粒子径10~25μmかつガラス転移点が-80~0℃のウレタン樹脂ビーズ(E)10~30質量部を含有する樹脂組成物であって、塗工後の乾燥塗面のRSm(粗さ曲線要素の平均長さ)が100~300μmであり、ベースニス部のヤング率が2000~5000MPaの範囲であることを特徴とするニス組成物を提供することにある。
【0009】
本発明は更に、測定速度を10mm/sにおける乾燥塗面の動摩擦係数が0.4~1.0であり、かつ前記動摩擦係数の測定速度を2mm/sから10mm/sに増加させた場合の動摩擦係数の上昇率が15%以上であるニス組成物に関する。
【0010】
本発明は更に、前述したニス組成物を外側面に配置したことを特徴とする容器に関する。
【0011】
本発明は更に前述の容器であって、ニス組成物が塗工乾燥された積層フィルムを外側面に配置したことを特徴とする容器に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、プラスチック容器用ニス組成物及びフィルムラミネートプラスチック容器用オーバープリントニスとして必要な容器物性を確保すると共に触った際にしっとりとしたソフトな触感を発現するニス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明はオキセタン化合物(A)20~60質量部、アクリレート化合物(B)10~30質量部、光カチオン重合開始剤(C)1~5質量部、光ラジカル重合開始剤(D)0.5~2質量部、平均粒子径10~25μmかつガラス転移点が-80~0℃のウレタン樹脂ビーズ(E)10~30質量部を含有する樹脂組成物であって、塗工後の乾燥塗面のRSm(粗さ曲線要素の平均長さ)が100~300μmであり、ベースニス部のヤング率が2000~5000MPaの範囲であり、また、硬化塗面の測定速度10mm/sにおける動摩擦係数が0.4~1.0であり、かつ前記動摩擦係数の測定速度を2mm/sから10mm/sに増加させた場合の動摩擦係数の上昇率が15%以上になることを特徴とするニス組成物を提供することで目的とする本発明の効果を奏するものである。
【0014】
本発明のオキセタン化合物(A)とは、その構造中にオキセタニル基を1個以上を有する化合物であればよく、本発明の効果が得られる範囲において特に限定されるものではない。前記オキセタン化合物(A)としては、例えば炭素数6~20の脂肪族系(3-エチル-3ヒドロキシメチルオキセタンなど)、炭素数7~30の芳香族系(キシリレンビスオキセタンなど)、炭素数6~30の脂肪族カルボン酸系(アジペートビスオキセタンなど)、炭素数8~30の芳香族カルボン酸系(テレフタレートビスオキセタンなど)、炭素数8~30の脂環式カルボン酸系(シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタンなど)が挙げられ、好ましくは炭素数7~30の芳香族系(キシリレンビスオキセタンなど)、炭素数8~30の芳香族カルボン酸系(テレフタレートビスオキセタンなど)などを用いることができる。
【0015】
本発明におけるオキセタン化合物(A)の配合量は組成物全体を100質量部とした場合20~60質量部の範囲である。この範囲においてオキセタン化合物(A)によりカチオン重合した塗膜はソフトな感触を得つつ、傷付き性が確保できる硬度を維持するのに適した配合量であるからであり、更に35~50質量部の範囲であれば触感と硬度においてより好適なバランスが取れる。
【0016】
本発明に使用するアクリレート化合物(B)は、その構造中にアクリロイル基を有する化合物であればよく、単官能であっても2官能以上のものであっても良い。これらアクリレート化合物(B)としては、例えばビスフェノールA型ジアクリレート化合物、ビスフェノールF型ジアクリレート化合物、ビスフェノールB型ジアクリレート化合物、グリシジルエーテル型ジアクリレート化合物、メチロール型アクリレート化合物、イソシアヌル酸型ジアクリレート化合物、シクロデカン型ジアクリレート化合物、イソシアネート基とヒドロキシル基を反応させたウレタンアクリレート化合物などが挙げられ、好ましくはビスフェノールA型ジアクリレート化合物、イソシアヌル酸型ジアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物である。これらのアクリレート化合物は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。
【0017】
本発明におけるアクリレート化合物(B)の配合量は、組成物全体を100質量部とした場合10~30質量部の範囲である。この理由はアクリレート化合物(B)によりラジカル重合した塗膜内部は強靭な性質を示し、塗膜表面の柔軟性を残しつつ一定の硬度を維持するのに適した配合量であるからである。更に、15~25質量部の範囲であれば塗膜の内部硬度と塗膜表面の柔軟性においてより好適なバランスが取れる。
【0018】
本発明に使用する光カチオン重合開始剤(C)は、可視光線、紫外線、熱線、電子線などの活性エネルギー線によりカチオン重合反応を起こす開始剤である。これら光カチオン性重合開始剤(C)としては、可視光線、紫外線により酸を発生する光感応性カチオン重合開始剤、熱線により酸を発生する熱感応性カチオン重合開始剤が好ましい。本発明の光カチオン重合開始剤(C)としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩化合物等が挙げられ、具体的にはジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられ、好ましくはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、トリフェニルスルホニウムブロミドなどを用いることができる。
【0019】
本発明における光カチオン重合開始剤(C)の配合量は、組成物全体を100質量部とした場合1~5質量部の範囲である。この理由はオキセタン化合物(A)の光カチオン重合を進めるのに適切な配合量であって、塗膜の触感と硬度を好適に保つ配合量範囲である。更に2~3質量部の範囲であれば塗膜の触感と硬度がより好適なバランスに保たれる。
【0020】
本発明に使用する光ラジカル重合開始剤(D)としては、光エネルギーを吸収しラジカルを直接的または間接的にラジカルを発生させる化合物である。本発明の光ラジカル重合開始剤(D)としては、本発明の効果が得られる範囲において特に限定されるものではないが、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、3,3-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-メトキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられ、好ましくは3,3-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどである。これら光ラジカル重合開始剤(D)は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明における光ラジカル重合開始剤(D)の配合量は、組成物全体を100質量部とした場合0.5~2質量部の範囲である。この理由はアクリレート化合物(B)の光ラジカル重合を進めるのに適切な配合量であって、塗膜内部の強靭性と塗膜表面の柔軟性を好適に保つ配合量範囲である。更に1~1.5質量部の範囲であれば塗膜内部の強靭性と塗膜表面の柔軟性が好適なバランスに保たれる。
【0022】
本発明に使用するウレタン樹脂ビーズ(E)はウレタン樹脂をビーズ状に成形したものであり、その平均粒子径は10~25μmの範囲である。この理由はビーズが塗膜表面へ露出した際、人が手で触った際に触感が感じられやすい粒子径範囲であるからである。更に15~20μmの範囲であれば印刷時の転移不良が発生し難く、より好適に使用できる。
【0023】
本発明に使用するウレタン樹脂ビーズ(E)のガラス転移点は-80~0℃の範囲である。この理由はビーズが塗膜表面に露出した際、人が手で触った際にソフトな触感が得られやすいガラス転移点であるからである。更に-60~-20℃の範囲であればビーズが塗膜表面に露出した際にブロッキングなどを発生し難く、好適に使用できる。。
【0024】
本発明におけるウレタン樹脂ビーズ(E)の配合量は、組成物全体を100質量部とした場合10~30質量部の範囲である。この理由はビーズが塗膜表面に露出する面積を一定に保つためであり、人がソフトな触感を感じられやすい配合量範囲であるからである。更に15~20質量部の範囲であれば良好な流動性が保たれることから、印刷不良を発生し難く、好適に使用できる。
【0025】
本発明に使用できる希釈溶剤としては、本発明の効果が得られる範囲において特に制限されるものでははないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうちメチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
【0026】
本発明のプラスチック容器用紫外線硬化型ニスには、適宜必要に応じ滑剤、消泡剤、レベリング剤、または着色することを目的に有機顔料又は無機顔料を添加して用いることができる。これらの顔料成分としては例えば、クロム酸塩(黄鉛、クロムバーミリオン)フエロシアン化物(紺青)、硫化物(カドミウムエロー、カドミウムレッド)、酸化物(酸化チタン、ベンガラ、鉄黒)硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸鉛)、珪酸塩(群青、珪酸カルシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)燐酸塩(コバルトバイオレット)金属粉末(アルミニウム粉末、ブロンズ)炭素(カーボンブラック)の如き無機顔料、アゾ系(ベンジジンイエロー、ハンザエロー、バルカンオレンジ、パーマネントレッドF5R、カーミン6B、レーキレッドC、クロモフタールレッド、クロモフタールイエロー)、フタロシアニリン系(フタロシアニンブルー、フタロシアニリングリーン)、建染染料系(インダスレンブルー、チオインジゴボルドー)染付レーキ系(エオシンレーキ、キノリンエロー、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ)、キナクドリン系(シンカシアレッド、シンカシアバイオレット)ジオキジシン系(PVファストバイオレットBL)などの有機顔料を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いてよい。これらの顔料は、塗膜を着色し意匠性を付与することを可能とし、求められるデザインに対し、任意に添加することができる。
【0027】
本発明のニス組成物は、エアースプレー、エアレススプレーまたは静電スプレーの等の各種スプレー塗装、浸漬塗装、ロールコーター塗装、グラビアコーターならびに電着塗装等公知の手段により、PET、PE、PP等のプラスチック基材やPETフィルム、PPフィルム等に塗装することが出来る。
【0028】
本発明のニス組成物の塗布量としては、プラスチック基材にダイレクトで塗工する塗料の場合、固形分で5~20g/m2、好ましくは、8~15g/m2の塗工条件で使用すると良好な効果が得られる。また、フィルム用のオーバープリントニスとして使用する場合には3~12g/m2、好ましくは、5~10g/m2の塗工条件で使用される。
【0029】
本発明のニス組成物は、塗工後の樹脂ビーズを含めた硬化塗膜表面のRSm(粗さ曲線要素の平均長さ)が100~300μmであることを特徴とする。RSmが100μm未満の場合は塗膜が平滑過ぎ、塗工物を重ね合わせた際の接触面積が広くなるため、ブロッキング性が低下する恐れがある。一方、RSmが300μmを超えた場合には塗膜の表面凹凸が大き過ぎ、触った際に指に引っ掛かる感触が大きく、しっとりとソフトな感触が得られ難くなる。
【0030】
本発明のニス組成物は、硬化塗膜表面において樹脂ビーズが存在しない箇所をナノインデンテーション法により測定したベースニス部のヤング率が2000~5000MPaの範囲であることを特徴とする。ヤング率が2000MPa未満の場合は塗膜の耐摩耗性や傷付き性が低下し、容器物性を満たすことができなくなる。ヤング率が5000MPaを超えた場合には塗膜の柔軟性が低下することから、ソフトな触感が得られ難くなる。
【0031】
本発明のニス組成物は、樹脂ビーズを含めた塗工後の硬化塗膜表面の測定速度が10mm/sにおける動摩擦係数が0.4~1.0の範囲であり、且つ、測定速度を2mm/sから10mm/sに増加させた場合の動摩擦係数の上昇率が15%以上であることを特徴とする。動摩擦係数が0.4未満の場合は塗膜表面の滑り性が高く、塗膜を触った際に人の指への抵抗が低く、目標とする触感が得られ難くなる。動摩擦係数が1.0を超える場合には塗膜表面の滑り性が低くなり、生産時の搬送性の低下や傷つき性の低下を引き起こす。また、動摩擦係数の測定速度を2mm/sから10mm/sに増加させた場合の動摩擦係数の上昇率が15%未満であると、人が手で塗膜表面を触った際にソフトな触感が得られ難くなる。
【0032】
本発明のニス組成物を硬化させる際のUV照射条件としては、積算光量として200~500mj/cm2の範囲で硬化処理を行うことが好ましい。また、フィルムに塗工する場合、塗工される基材となるプラスチックフィルムとしては特に限定するものでは無いが、ペットフィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム並びにアクリルフィルム等を用いることができる。
【0033】
本発明のプラスチック容器用紫外線硬化型ニスは人が手で触った際にソフトな触感が得られるものであるが、容器物性として傷付き性や耐薬品性などが向上した強靭な塗膜を形成することがより好ましい。これら性能を兼備させるためには紫外線を照射した際、塗膜表面は柔軟な構造とし、塗膜内部は硬化度の高い設計が求められ、ラジカル重合とカチオン重合を組み合わせたハイブリット型のニス組成物として設計することがより好ましい。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。また、例中「部」及び「%」は、「質量部」、「質量%」を各々表わす。
【0035】
表1及び表2に示した割合(表中の数字は固形分重量比率を示す)で下記の原料を配合、分散攪拌機にて回転数:3000rpm、時間:3分間攪拌し、実施例1~7、比較例1~10のニスサンプルを作製した。
(A)オキセタン化合物 :東亜合成社製アロンオキセタン
(B)アクリレート化合物 :DIC株式会社製ユニディック
(C)光カチオン重合開始剤:サンアプロ社製CPIシリーズ
(D)光ラジカル重合開始剤:東京化成工業社製
(E)ウレタン樹脂ビーズ :根上工業社製アートパール
(F)溶剤 :メチルエチルケトン
【0036】
〔試験パネルの作製〕
実施例1~7、及び比較例1~10に示す混合比率のニスを東洋紡社製厚さ50μmのPETフィルムE-5102に乾燥塗膜量が4~6g/m2になるようにバーコーターにて塗布し、100℃/5秒間乾燥加熱して溶剤分を揮発させた後、フュージョンUVシステムズ社製UV照射装置にて積算光量300mJ/cm2にて処理した後、下記の試験法により評価した。
【0037】
〔評価試験方法〕:塗膜表面粗さ
触針式表面粗さ試験器(東京精密製、サーフコム1400D)を用い、JIS-B 0601-2001とJIS-B 0633-2001に準拠して評価した。球状の圧子(先端半径は2μm)を使用し、評価長さ12.5mm、走査速度0.06mm/sで測定を行い、規格に相当した基準長さと低域カットオフ長を使用して粗さ曲線を得たあと、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を得た。RSmが100~300μmを合格範囲とした。
【0038】
〔評価試験方法〕:ベースニス部分のヤング率
ナノインデンター(エリオニクス製、ENT-2100)を用い、ISO14577に準拠して評価した。塗膜の顕微鏡像でフィラーが観測されないベースニス部分を対象として、バーコビッチ圧子を用いて押し込み荷重50μN、押し込み時間10秒、クリープ時間10秒、除荷時間10秒で測定を行い、得られた荷重変位曲線の除荷部からOliver-Pharrの方法を用いてベースニスのヤング率を得た。ベースニスのヤング率は2000~5000MPaを合格範囲とした。
【0039】
〔評価試験方法〕:動摩擦係数
摩擦摩耗装置(新東科学製、トライボギアTYPE-14)を用い、JIS-K 7125に準拠して評価した。Φ12mmの球状ホルダに人工皮革(出光テクノファイン製、サプラーレ)を取り付けて摩擦子として使用した。荷重は100g、測定速度2mm/sと10mm/sにおける動摩擦係数を計測した。10mm/sにおける動摩擦係数、および動摩擦係数上昇率[100×(速度10mm/sの動摩擦係数-速度2mm/sの動摩擦係数)/速度2mm/sの動摩擦係数]をデータとして取得し、上昇率15%以上を合格とした。
【0040】
〔評価試験方法〕:鉛筆硬度
塗装フィルムをJIS-S-6006に規定された高級鉛筆を用いJIS-K-5400に準じて鉛筆硬度を測定した。2H以上を合格とした。
【0041】
〔評価試験方法〕:基材密着性
ニス塗工面に、ニチバン社製セロテープ(登録商標)を貼り付けたのち、セロハンテープを急速に剥離し、塗膜の剥離状態を観察し、次に示すような4段階によって評価し、評点4以上を合格とした。
(評価基準)
5…剥離が全くない。
4…全体の1 ~10%が剥離した。
3…全体の11~30%が剥離した。
2…全体の31~50%が剥離した。
1…全体の51%以上が剥離した。
【0042】
〔評価試験方法〕:印刷適性試験 塗料サンプルをザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深度45μmを有するレーザーグラビア版を取り付けたMD型グラビア印刷機を用いて片面にコロナ放電処理を施したPETフィルム(東洋紡社製厚さ12μm)に印刷した。
印刷速度は200mm/minとし、以下に示す基準で評価を行い、評点4以上を合格とした。
(評価基準)
5…カスレが全くなく、均一に転移している。
4…印刷部全体の1~5%の面積にカスレが見られる。
3…印刷部全体の6~10%の面積にカスレが見られる。
2…印刷部全体の11~30%の面積にカスレが見られる。
1…印刷部全体の31%以上の面積にカスレが見られる。
【0043】
〔官能試験方法〕:手触り(しっとり感)
10名の被験者(男性5名、女性5名)にニス塗工面を手のひらで触れてもらい、しっとり感について次の5段階尺度で質問紙形式の官能評価を行った。集計した値の平均値を採用し、評点の4以上を合格とした。
5:非常にしっとりと感じる
4:しっとりと感じる
3:少ししっとりと感じる
2:僅かにしっとりと感じる
1:しっとりと感じない
【0044】
評価結果及びサンプルの混合比を及び実施例を表1、比較例を表2、表3に示す。
尚、表中の数値は固形分重量比率を示す。
また、各ウレタン樹脂ビーズの平均粒子径は、日立製最所製操作型電子顕微鏡S-3400Nを用いて測定した。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
実施例では手触り感の指標となる塗膜表面粗さ・動摩擦係数、容器物性として傷付き性の指標となるベースニスヤング率、鉛筆硬度、基材密着性、及び印刷適性において何れも合格範囲を満たすことを示す。一方、比較例では、何れかの指標が満足できるものでは無い結果となった。
本発明のニス組成物は人が手で触った際に特徴のある触感を発現すると共に高い滑り止め効果が得られ、各種飲料用のPETボトルや化粧品などのプラスチック容器、歯磨き粉や接着剤などのプラスティックチューブ容器などの広範な用途に幅広く展開され得る。