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特開2022-99101非接触式通信媒体の製造方法、及び非接触式通信媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099101
(43)【公開日】2022-07-04
(54)【発明の名称】非接触式通信媒体の製造方法、及び非接触式通信媒体
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20220627BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20220627BHJP
   G11B 23/30 20060101ALI20220627BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
G06K19/07 260
G06K19/07 090
G06K19/077 272
G11B23/30 E
H01Q7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020212863
(22)【出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 英一郎
(57)【要約】
【課題】基準共振周波数と仮共振周波数との相違度を全く考慮せずに外部コンデンサの容量を決定する場合に比べ、共振回路の共振周波数を基準共振周波数に合わせ易くすることができる非接触式通信媒体の製造方法、及び非接触式通信媒体を提供する。
【解決手段】非接触式通信媒体は、アンテナコイルが形成された基板に実装され、内蔵コンデンサを有する処理回路と、予め定められた共振周波数で共振する共振回路を内蔵コンデンサ及びアンテナコイルと共に構成する外部コンデンサと、を備える。非接触式通信媒体の製造方法は、外部コンデンサが処理回路に接続されていない状態で、かつ、処理回路がアンテナコイルに接続されている状態で仮共振周波数を測定すること、及び、非接触式通信媒体が磁界を介して外部と通信を行う場合の基準共振周波数と仮共振周波数との相違度に基づいて外部コンデンサの容量を決定すること、を含む。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられた磁界が作用することで電力を誘起するアンテナコイルが形成された基板に実装され、内蔵コンデンサを有する処理回路と、前記処理回路に対して外付けされる外部コンデンサであって、前記磁界が作用することで予め定められた共振周波数で共振する共振回路を前記内蔵コンデンサ及び前記アンテナコイルと共に構成する外部コンデンサと、を備え、前記処理回路が前記共振回路によって生成された電力を用いて動作する非接触式通信媒体の製造方法であって、
前記外部コンデンサが前記処理回路に接続されていない状態で、かつ、前記処理回路が前記アンテナコイルに接続されている状態で仮共振周波数を測定すること、及び、
前記非接触式通信媒体が前記磁界を介して前記外部と通信を行う場合の基準共振周波数と、前記仮共振周波数との相違度に基づいて前記外部コンデンサの容量を決定すること、
を含む非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項2】
決定した容量を有する前記外部コンデンサを前記基板に実装することにより前記共振回路を形成することを更に含む請求項1に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項3】
前記外部コンデンサを前記基板に対して表面実装方式で接続することにより前記共振回路を形成する請求項2に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項4】
前記アンテナコイルに接続されている状態の前記処理回路を封止材で封止した後に、決定した容量を有する前記外部コンデンサを前記基板に実装する請求項2又は請求項3に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項5】
前記外部コンデンサが前記処理回路に接続されていない状態で、前記処理回路を前記アンテナコイルに接続した後、前記仮共振周波数を測定する請求項1から請求項4の何れか一項に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項6】
前記仮共振周波数を示す信号を送信すること、及び
送信した前記信号を受信すること、を更に含み、
受信した前記信号により示される前記仮共振周波数に基づいて、前記外部コンデンサの容量を決定する請求項1から請求項5の何れか一項に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項7】
前記処理回路は、ICチップ化されている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項8】
前記基板は、フレキシブルタイプの基板である請求項1から請求項7の何れか一項に記載の非接触式通信媒体の製造方法。
【請求項9】
外部から与えられた磁界が作用することで電力を誘起するアンテナコイルが形成された基板に搭載され、内蔵コンデンサを有する処理回路と、
前記処理回路に対して外付けされる外部コンデンサであって、前記磁界が作用することで予め定められた共振周波数で共振する共振回路を前記内蔵コンデンサ及び前記アンテナコイルと共に構成する外部コンデンサと、を備える非接触式通信媒体であって、
前記処理回路は、前記共振回路によって生成された電力を用いて動作し、
前記非接触式通信媒体が前記磁界を介して前記外部と通信を行う場合の基準共振周波数と、前記外部コンデンサが前記処理回路に接続されていない状態で、かつ、前記処理回路が前記アンテナコイルに接続されている状態で測定された仮共振周波数との相違度に基づいて前記外部コンデンサの容量が定められている
非接触式通信媒体。
【請求項10】
前記処理回路は、ICチップ化されている請求項9に記載の非接触式通信媒体。
【請求項11】
前記基板は、フレキシブルタイプの基板である請求項9又は請求項10に記載の非接触式通信媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、非接触式通信媒体の製造方法、及び非接触式通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板と、基板の一方の面に形成されたアンテナ部と、一方の面に形成されたICチップと、基板の他方の面に形成された共通電極と、を有する非接触型ICモジュールが開示されている。特許文献1に記載の非接触型ICモジュールでは、アンテナ部は、螺旋状パターンのアンテナコイルと、アンテナコイルの外周に沿って螺旋状に位置する導体部と、を備える。
【0003】
特許文献2には、アンテナコイルとコンデンサとを有する共振回路を内蔵して少なくとも電磁誘導により非接触で通信を行うICカードが開示されている。特許文献2に記載のICカードは、カード本体と、カード本体に内蔵されたICチップと、カード本体に内蔵され、ICチップに接続され、コンデンサの静電容量値を調整する調整用コンデンサと、少なくともエンボス加工領域におけるカード内部においてICチップと調整用コンデンサとを接続して形成され、エンボス加工領域におけるエンボス加工によって物理的に切断可能に構成された配線部と、を有する。
【0004】
特許文献3には、絶縁基板表面に形成されたアンテナ回路が開示されている。特許文献3に記載のアンテナ回路は、巻回された平面アンテナと、平面アンテナの一端と接続された共通接続パッドと、複数の個別接続パッドと、インダクタンス調整用配線と、を有する。複数の個別接続パッドは、共通接続パッドと所定間隔離間して共通接続パッドの周囲に配設されている。複数の個別接続パッドの何れか1個の個別接続パッドが平面アンテナの他端に接続されている。インダクタンス調整用配線は、平面アンテナの中間端子部と、複数の個別接続パッドのうち平面アンテナの他端に接続された個別接続パッド以外の個別接続パッドとをそれぞれ接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-310898号公報
【特許文献2】特開2009-271656号公報
【特許文献3】特表2006-217185号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、基準共振周波数と仮共振周波数との相違度を全く考慮せずに外部コンデンサの容量を決定する場合に比べ、共振回路の共振周波数を基準共振周波数に合わせ易くすることができる非接触式通信媒体の製造方法、及び非接触式通信媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1の態様は、外部から与えられた磁界が作用することで電力を誘起するアンテナコイルが形成された基板に実装され、内蔵コンデンサを有する処理回路と、処理回路に対して外付けされる外部コンデンサであって、磁界が作用することで予め定められた共振周波数で共振する共振回路を内蔵コンデンサ及びアンテナコイルと共に構成する外部コンデンサと、を備え、処理回路が共振回路によって生成された電力を用いて動作する非接触式通信媒体の製造方法であって、外部コンデンサが処理回路に接続されていない状態で、かつ、処理回路がアンテナコイルに接続されている状態で仮共振周波数を測定すること、及び、非接触式通信媒体が磁界を介して外部と通信を行う場合の基準共振周波数と、仮共振周波数との相違度に基づいて外部コンデンサの容量を決定すること、を含む非接触式通信媒体の製造方法である。
【0008】
本開示の技術に係る第2の態様は、決定した容量を有する外部コンデンサを基板に実装することにより共振回路を形成することを更に含む第1の態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0009】
本開示の技術に係る第3の態様は、外部コンデンサを基板に対して表面実装方式で接続することにより共振回路を形成する第2の態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0010】
本開示の技術に係る第4の態様は、アンテナコイルに接続されている状態の処理回路を封止材で封止した後に、決定した容量を有する外部コンデンサを基板に実装する第2の態様又は第3の態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0011】
本開示の技術に係る第5の態様は、外部コンデンサが処理回路に接続されていない状態で、処理回路をアンテナコイルに接続した後、仮共振周波数を測定する第1の態様から第4の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0012】
本開示の技術に係る第6の態様は、仮共振周波数を示す信号を送信すること、及び、送信した信号を受信すること、を更に含み、受信した信号により示される仮共振周波数に基づいて、外部コンデンサの容量を決定する第1の態様から第5の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0013】
本開示の技術に係る第7の態様は、処理回路は、ICチップ化されている第1の態様から第6の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0014】
本開示の技術に係る第8の態様は、基板は、フレキシブルタイプの基板である第1の態様から第7の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体の製造方法である。
【0015】
本開示の技術に係る第9の態様は、外部から与えられた磁界が作用することで電力を誘起するアンテナコイルが形成された基板に搭載され、内蔵コンデンサを有する処理回路と、処理回路に対して外付けされる外部コンデンサであって、磁界が作用することで予め定められた共振周波数で共振する共振回路を内蔵コンデンサ及びアンテナコイルと共に構成する外部コンデンサと、を備える非接触式通信媒体であって、処理回路は、共振回路によって生成された電力を用いて動作し、非接触式通信媒体が磁界を介して外部と通信を行う場合の基準共振周波数と、外部コンデンサが処理回路に接続されていない状態で、かつ、処理回路がアンテナコイルに接続されている状態で測定された仮共振周波数との相違度に基づいて外部コンデンサの容量が定められている非接触式通信媒体である。
【0016】
本開示の技術に係る第10の態様は、処理回路は、ICチップ化されている第9の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0017】
本開示の技術に係る第11の態様は、基板は、フレキシブルタイプの基板である第9の態様又は第10の態様に係る非接触式通信媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る磁気テープカートリッジの外観の一例を示す概略斜視図である。
図2】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下ケースの内側の右後端部の構造の一例を示す概略斜視図である。
図3】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下ケースの内面に設けられた支持部材の一例を示す側面視断面図である。
図4】実施形態に係る磁気テープドライブのハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。
図5】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下側から非接触式読み書き装置によって磁界が放出されている態様の一例を示す概略斜視図である。
図6】実施形態に係る磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリに対して非接触式読み書き装置から磁界が付与されている態様の一例を示す概念図である。
図7】実施形態に係るカートリッジメモリの裏面構造の一例を示す下面図である。
図8】実施形態に係るカートリッジメモリの表面構造の一例を示す上面図である。
図9】実施形態に係るカートリッジメモリの回路構成の一例を示す概略回路図である。
図10】実施形態に係る共振回路形成システムの一例を示すブロック図である。
図11】実施形態に係る容量決定部の動作の一例を示す説明図である。
図12】実施形態に係る容量決定部の動作の一例を示す説明図である。
図13】実施形態に係る容量決定部の動作の一例を示す説明図である。
図14】実施形態に係るカートリッジメモリの製造工程の一例を示すフローチャートである。
図15】カートリッジメモリの表面構造の変形例を示す上面図である。
図16】磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリの傾斜角度の変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
【0020】
CPUとは、“Central Processing Unit”の略称を指す。RAMとは、“Random Access Memory”の略称を指す。NVMとは、“Non-Volatile Memory”の略称を指す。ROMとは、“Read Only Memory”の略称を指す。EEPROMとは、“Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory”の略称を指す。SSDとは、“Solid State Drive”の略称を指す。USBとは、“Universal Serial Bus”の略称を指す。ASICとは、“Application Specific Integrated Circuit”の略称を指す。PLDとは、“Programmable Logic Device”の略称を指す。FPGAとは、“Field-Programmable Gate Array”の略称を指す。SoCとは、“System-on-a-Chip”の略称を指す。ICとは、“Integrated Circuit”の略称を指す。RFIDとは、“Radio Frequency Identifier”の略称を指す。LTOとは、“Linear Tape-Open”の略称を指す。CMとは、“Cartridge Memory”の略称を指す。
【0021】
以下の説明では、説明の便宜上、図1において、磁気テープカートリッジ10の磁気テープドライブ30(図4参照)への装填方向を矢印Aで示し、矢印A方向を磁気テープカートリッジ10の前方向とし、磁気テープカートリッジ10の前方向の側を磁気テープカートリッジ10の前側とする。以下の構造上の説明において、「前」とは、磁気テープカートリッジ10の前側を指す。
【0022】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、矢印A方向と直交する矢印B方向を右方向とし、磁気テープカートリッジ10の右方向の側を磁気テープカートリッジ10の右側とする。以下の構造上の説明において、「右」とは、磁気テープカートリッジ10の右側を指す
【0023】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、矢印C方向を磁気テープカートリッジ10の上方向とし、磁気テープカートリッジ10の上方向の側を磁気テープカートリッジ10の上側とする。以下の説明において、以下の構造上の説明において、「上」とは、磁気テープカートリッジ10の上側を指す。
【0024】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、磁気テープカートリッジ10の前方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の後方向とし、磁気テープカートリッジ10の後方向の側を、磁気テープカートリッジ10の後側とする。以下の構造上の説明において、「後」とは、磁気テープカートリッジ10の後側を指す。
【0025】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、磁気テープカートリッジ10の上方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の下方向とし、磁気テープカートリッジ10の下方向の側を磁気テープカートリッジ10の下側とする。以下の構造上の説明において、「下」とは、磁気テープカートリッジ10の下側を指す。
【0026】
また、以下の説明では、磁気テープカートリッジ10の仕様としてLTOを例に挙げて説明する。また、以下の説明では、本開示の技術に係るLTOに対して、下記の表1に示す仕様が適用されていることを前提として説明するが、これはあくまでも一例に過ぎず、IBM3592の磁気テープカートリッジの仕様に準じていてもよい。
【0027】
【表1】
【0028】
表1において、「REQA~SELCET系」とは、後述のポーリングコマンドを意味する。「REQA~SELCET系」には、少なくとも“Request A”というコマンド、“Request SN”というコマンド、及び“Select”というコマンドが含まれている。“Request A”は、カートリッジメモリに対して、如何なるタイプのカートリッジメモリであるかを問い合わせるコマンドである。本実施形態において“Request A”は、1種類であるが、これに限らず、複数種類であってもよい。“Request SN”は、カートリッジメモリに対して、シリアルナンバーを問い合わせるコマンドである。“Select”は、カートリッジメモリに対して読み書きの準備を予告するコマンドである。READ系は、後述の読出コマンドに相当するコマンドである。WRITE系は、後述の書込コマンドに相当するコマンドである。
【0029】
一例として図1に示すように、磁気テープカートリッジ10は、平面視略矩形であり、かつ、箱状のケース12を備えている。ケース12は、ポリカーボネート等の樹脂製であり、上ケース14及び下ケース16を備えている。上ケース14及び下ケース16は、上ケース14の下周縁面と下ケース16の上周縁面とを接触させた状態で、溶着(例えば、超音波溶着)及びビス止めによって接合されている。接合方法は、溶着及びビス止めに限らず、他の接合方法であってもよい。
【0030】
ケース12の内部には、カートリッジリール18が回転可能に収容されている。カートリッジリール18は、リールハブ18A、上フランジ18B1、及び下フランジ18B2を備えている。リールハブ18Aは、円筒状に形成されている。リールハブ18Aは、カートリッジリール18の軸心部であり、軸心方向がケース12の上下方向に沿っており、ケース12の中央部に配置されている。上フランジ18B1及び下フランジ18B2の各々は円環状に形成されている。リールハブ18Aの上端部には上フランジ18B1の平面視中央部が固定されており、リールハブ18Aの下端部には下フランジ18B2の平面視中央部が固定されている。リールハブ18Aの外周面には、磁気テープMTが巻き回されており、磁気テープMTの幅方向の端部は上フランジ18B1及び下フランジ18B2によって保持されている。なお、リールハブ18A及び下フランジ18B2は一体として成型されていてもよい。
【0031】
ケース12の右壁12Aの前側には、開口12Bが形成されている。磁気テープMTは、開口12Bから引き出される。
【0032】
一例として図2に示すように、下ケース16の右後端部には、カートリッジメモリ19が収容されている。カートリッジメモリ19は、本開示の技術に係る「非接触式通信媒体」の一例である。本実施形態では、いわゆるパッシブ型のRFIDタグがカートリッジメモリ19として採用されている。
【0033】
カートリッジメモリ19には、管理情報が記憶されている。管理情報は、磁気テープカートリッジ10を管理する情報である。管理情報としては、例えば、磁気テープカートリッジ10を特定可能な識別情報、磁気テープMTの記録容量、磁気テープMTに記録されている情報(以下、「記録情報」とも称する)の概要、記録情報の項目、及び記録情報の記録形式等を示す情報が挙げられる。
【0034】
カートリッジメモリ19は、非接触式で外部装置(図示省略)と通信を行う。外部装置としては、例えば、磁気テープカートリッジ10の生産工程で使用される読み書き装置、及び、磁気テープドライブ(例えば、図4に示す磁気テープドライブ30)内で使用される読み書き装置(例えば、図4図6に示す非接触式読み書き装置50)が挙げられる。
【0035】
外部装置は、カートリッジメモリ19に対して、非接触式で各種情報の読み書きを行う。詳しくは後述するが、カートリッジメモリ19は、外部装置から与えられた磁界に対して電磁的に作用することで電力を生成する。そして、カートリッジメモリ19は、生成した電力を用いて作動し、磁界を介して外部装置と通信を行うことで外部装置との間で各種情報の授受を行う。なお、通信方式は、例えば、ISO14443又はISO18092等の公知の規格に準じる方式であってもよいし、ECMA319のLTO仕様に準じる方式等であってもよい。
【0036】
一例として図2に示すように、下ケース16の右後端部の底板16Aの内面には、支持部材20が設けられている。支持部材20は、カートリッジメモリ19を傾斜させた状態で下方から支持する一対の傾斜台である。一対の傾斜台は、第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bである。第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bは、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されており、下ケース16の後壁16Bの内面及び底板16Aの内面にモジュール化されている。第1傾斜台20Aは、傾斜面20A1を有しており、傾斜面20A1は、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。また、傾斜面20B1も、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。
【0037】
支持部材20の前方側には、一対の位置規制リブ22が左右方向に間隔を隔てて配置されている。一対の位置規制リブ22は、底板16Aの内面に立設されており、支持部材20に配置された状態のカートリッジメモリ19の下端部の位置を規制する。
【0038】
一例として図3に示すように、底板16Aの外面には基準面16A1が形成されている。基準面16A1は、平面である。ここで、平面とは、底板16Aを下側にして下ケース16を水平面に置いた場合において、水平面に対して平行な面を指す。支持部材20の傾斜角度θ、すなわち、傾斜面20A1及び傾斜面20B1の傾斜角は、基準面16A1に対して45度である。なお、45度は、あくまでも一例に過ぎず、“0度<傾斜角度θ<45度”であってもよいし、45度以上であってもよい。
【0039】
カートリッジメモリ19は、基板26を備えている。基板26は、本開示の技術に係る「基板」の一例である。基板26は、フレキシブルタイプの基板であり、略矩形の平板状をしている。基板26は、厚さ方向に2つの面、すなわち、表面26Aと裏面26Bとを有する。基板26は、基板26の裏面26Bを下側に向けて支持部材20上に置かれ、支持部材20は、基板26の裏面26Bを下方から支持する。基板26の裏面26Bの一部は、支持部材20の傾斜面、すなわち、傾斜面20A1及び20B1に接触しており、基板26の表面26Aは、天板14Aの内面14A1側に露出している。
【0040】
上ケース14は、複数のリブ24を備えている。複数のリブ24は、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されている。複数のリブ24は、上ケース14の天板14Aの内面14A1から下側に突設されており、各リブ24の先端面24Aは、傾斜面20A1及び20B1に対応した傾斜面を有する。すなわち、各リブ24の先端面24Aは、基準面16A1に対して45度に傾斜している。
【0041】
カートリッジメモリ19が支持部材20に配置された状態で、上述したように上ケース14が下ケース16に接合されると、各リブ24の先端面24Aは、基板26に対して表面26A側から接触し、基板26は、各リブ24の先端面24Aと支持部材20の傾斜面とで挟み込まれる。これにより、カートリッジメモリ19の上下方向の位置がリブ24によって規制される。
【0042】
一例として図4に示すように、磁気テープドライブ30は、搬送装置34、読取ヘッド36、及び制御装置38を備えている。磁気テープドライブ30には、磁気テープカートリッジ10が装填される。磁気テープドライブ30は、磁気テープカートリッジ10から磁気テープMTが引き出され、引き出された磁気テープMTから読取ヘッド36を用いて記録情報をリニアサーペンタイン方式で読み取る装置である。なお、本実施形態において、記録情報の読み取りとは、換言すると、記録情報の再生を指す。
【0043】
制御装置38は、磁気テープドライブ30の全体を制御する。本実施形態において、制御装置38は、ASICによって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置38は、FPGAによって実現されるようにしてもよい。また、制御装置38は、CPU、ROM、及びRAMを含むコンピュータによって実現されるようにしてもよい。また、AISC、FPGA、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。すなわち、制御装置38は、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されるようにしてもよい。
【0044】
搬送装置34は、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ40、巻取リール42、巻取モータ44、複数のガイドローラGR、及び制御装置38を備えている。
【0045】
送出モータ40は、制御装置38の制御下で、磁気テープカートリッジ10内のカートリッジリール18を回転駆動させる。制御装置38は、送出モータ40を制御することで、カートリッジリール18の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0046】
巻取モータ44は、制御装置38の制御下で、巻取リール42を回転駆動させる。制御装置38は、巻取モータ44を制御することで、巻取リール42の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0047】
磁気テープMTが巻取リール42によって巻き取られる場合には、制御装置38によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
【0048】
磁気テープMTがカートリッジリール18に巻き戻される場合には、制御装置38によって、磁気テープMTを逆方向に走行させるように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
【0049】
このようにして送出モータ40及び巻取モータ44の各々の回転速度及び回転トルク等が調整されることで、磁気テープMTに既定範囲内の張力が付与される。ここで、既定範囲内とは、例えば、磁気テープMTから読取ヘッド36によってデータが読取可能な張力の範囲として、コンピュータ・シミュレーション及び/又は実機による試験等により得られた張力の範囲を指す。
【0050】
本実施形態では、送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等が制御されることにより磁気テープMTの張力が制御されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMTの張力は、ダンサローラを用いて制御されてもよいし、バキュームチャンバに磁気テープMTを引き込むことによって制御されるようにしてもよい。
【0051】
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。磁気テープMTの走行経路は、複数のガイドローラGRが磁気テープカートリッジ10と巻取リール42との間において読取ヘッド36を跨ぐ位置に分けて配置されることによって定められている。
【0052】
読取ヘッド36は、読取素子46及びホルダ48を備えている。読取素子46は、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ48によって保持されており、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTから記録情報を読み取る。
【0053】
磁気テープドライブ30は、非接触式読み書き装置50を備えている。非接触式読み書き装置50は、本開示の技術に係る「外部」の一例である。非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10が装填された状態の磁気テープカートリッジ10の下側にてカートリッジメモリ19の裏面26Bに正対するように配置されている。なお、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態とは、例えば、磁気テープカートリッジ10が読取ヘッド36による磁気テープMTに対する記録情報の読み取りを開始する位置として事前に定められた位置に到達した状態を指す。
【0054】
一例として図5に示すように、非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10の下側からカートリッジメモリ19に向けて磁界MFを放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19を貫通する。なお、磁界MFは、本開示の技術に係る「磁界」の一例である。
【0055】
一例として図6に示すように、非接触式読み書き装置50は、制御装置38に接続されている。制御装置38は、カートリッジメモリ19を制御する制御信号を非接触式読み書き装置50に出力する。非接触式読み書き装置50は、制御装置38から入力された制御信号に従って、磁界MFをカートリッジメモリ19に向けて放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19の裏面26B側から表面26A側に貫通する。
【0056】
非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、コマンド信号をカートリッジメモリ19に空間伝送する。詳しく後述するが、コマンド信号は、カートリッジメモリ19に対する指令を示す信号である。コマンド信号が非接触式読み書き装置50からカートリッジメモリ19に空間伝送される場合、磁界MFには、制御装置38からの指示に従って非接触式読み書き装置50によってコマンド信号が含まれる。換言すると、磁界MFには、コマンド信号が重畳される。すなわち、非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、磁界MFを介してコマンド信号をカートリッジメモリ19に送信する。
【0057】
カートリッジメモリ19の表面26Aには、ICチップ52及び外部コンデンサ54が搭載されている。ICチップ52及び外部コンデンサ54は、表面26Aに接着されている。また、カートリッジメモリ19の表面26Aにおいて、ICチップ52及び外部コンデンサ54は封止材56によって封止されている。ここでは、封止材56として、紫外線に反応して硬化する紫外線硬化樹脂が採用されている。なお、紫外線硬化樹脂は、あくまでも一例に過ぎず、紫外線以外の波長域の光に反応して効果する光硬化樹脂を封止材56として使用してもよいし、熱硬化性樹脂を封止材56として使用してもよいし、接着剤を封止材56として使用してもよい。なお、ICチップ52は、本開示の技術に係る「処理回路」の一例である。外部コンデンサ54は、本開示の技術に係る「外部コンデンサ」の一例である。また、封止材56は、本開示の技術に係る「封止材」の一例である。
【0058】
一例として図7に示すように、カートリッジメモリ19の裏面26Bには、コイル60がループ状に形成されている。ここでは、コイル60の素材として、銅箔が採用されている。銅箔は、あくまでも一例に過ぎず、例えば、アルミニウム箔等の他種類の導電性素材であってもよい。コイル60は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MF(図5及び図6参照)が作用することで誘導電流を誘起する。なお、コイル60は、本開示の技術に係る「アンテナコイル」の一例である。
【0059】
カートリッジメモリ19の裏面26Bには、第1導通部62A及び第2導通部62Bが設けられている。第1導通部62A及び第2導通部62Bは、はんだを有しており、表面26AのICチップ52(図6及び図8参照)及び外部コンデンサ54(図6及び図8参照)に対してコイル60の両端部を電気的に接続している。
【0060】
一例として図8に示すように、カートリッジメモリ19の表面26Aにおいて、ICチップ52及び外部コンデンサ54は、ワイヤ接続方式で互いに電気的に接続されている。具体的には、ICチップ52の正極端子及び負極端子のうちの一方の端子がワイヤ64Aを介して第1導通部62Aに接続されており、他方の端子がワイヤ64Bを介して第2導通部62Bに接続されている。また、外部コンデンサ54は、一対の電極を有する。図8に示す例では、一対の電極は、電極54A及び54Bである。電極54Aは、ワイヤ64Cを介して第1導通部62Aに接続されており、電極54Bは、ワイヤ64Dを介して第2導通部62Bに接続されている。これにより、コイル60に対して、ICチップ52及び外部コンデンサ54は並列に接続される。
【0061】
一例として図9に示すように、ICチップ52は、内蔵コンデンサ80、電源回路82、コンピュータ84、クロック信号生成器86、及び信号処理回路88を備えている。ICチップ52は、磁気テープカートリッジ10以外の用途にも使用可能な汎用タイプのICチップであり、磁気テープカートリッジ用プログラムがインストールされることによって磁気テープカートリッジ用演算装置として機能する。なお、内蔵コンデンサ80は、本開示の技術に係る「内蔵コンデンサ」の一例である。
【0062】
また、カートリッジメモリ19は、電力生成器70を備えている。電力生成器70は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MFが、コイル60に対して作用することで電力を生成する。具体的には、電力生成器70は、共振回路92を用いて交流電力を生成し、生成した交流電力を直流電力に変換して出力する。なお、共振回路92は、本開示の技術に係る「共振回路」の一例である。
【0063】
電力生成器70は、共振回路92及び電源回路82を有する。共振回路92は、外部コンデンサ54、コイル60、及び内蔵コンデンサ80を備えている。内蔵コンデンサ80は、ICチップ52に内蔵されているコンデンサであり、電源回路82もICチップ52に内蔵されている回路である。内蔵コンデンサ80は、コイル60に対して並列に接続されている。また、内蔵コンデンサ80は、外部コンデンサ54に対して並列に接続されている。
【0064】
外部コンデンサ54は、ICチップ52に対して外付けされたコンデンサである。ICチップ52は、本来、磁気テープカートリッジ10とは異なる用途でも用いることが可能な汎用のICチップである。そのため、内蔵コンデンサ80の容量は、磁気テープカートリッジ10で用いられるカートリッジメモリ19で要求される共振周波数を実現するには不足している場合がある。そこで、カートリッジメモリ19では、磁界MFが作用することで共振回路92を予め定められた共振周波数で共振させる上で必要な容量を有するコンデンサとして、ICチップ52に対して外部コンデンサ54が後付けされている。外部コンデンサ54の容量は、後述する共振回路形成システム120(図10参照)によって決定される。なお、予め定められた共振周波数に相当する周波数は、例えば、13.56MHzであり、カートリッジメモリ19及び/又は非接触式読み書き装置50の仕様等によって適宜決定されればよい。なお、13.56MHzは、本開示の技術に係る「予め定められた共振周波数」の一例である。
【0065】
電源回路82は、整流回路及び平滑回路等を有する。整流回路は、複数のダイオードを有する全波整流回路である。全波整流回路は、あくまでも一例に過ぎず、半波整流回路であってもよい。平滑回路は、コンデンサ及び抵抗を含んで構成されている。電源回路82は、共振回路92から入力された交流電力を直流電力に変換し、変換して得た直流電力(以下、単に「電力」とも称する)をICチップ52内の各種の駆動素子に供給する。各種の駆動素子としては、コンピュータ84、クロック信号生成器86、及び信号処理回路88が挙げられる。このように、ICチップ52内の各種の駆動素子に対して電力が電力生成器70によって供給されることで、ICチップ52は、電力生成器70によって生成された電力を用いて動作する。
【0066】
コンピュータ84は、CPU、NVM、及びRAM(何れも図示省略)を備えている。NVMには、磁気テープカートリッジ用プログラムと管理情報とが記憶されている。CPUは、NVMからプログラムを読み出し、RAM上でプログラムを実行することで、カートリッジメモリ19の動作を制御する。
【0067】
具体的には、CPUは、信号処理回路88から入力されたコマンド信号に応じて、ポーリング処理、読出処理、及び書込処理を選択的に行う。ポーリング処理は、カートリッジメモリ19と非接触式読み書き装置50との間で通信を確立する処理であり、例えば、読出処理及び書込処理の前段階の準備処理として行われる。読出処理は、NVMから管理情報等を読み出す処理である。書込処理は、NVMに管理情報等を書き込む処理である。ポーリング処理、読出処理、及び書込処理(以下、区別して説明する必要がない場合、「各種処理」と称する)は何れも、クロック信号生成器86によって生成されたクロック信号に従ってCPUによって行われる。すなわち、CPUは、各種処理をクロック周波数に応じた処理速度で行う。
【0068】
クロック信号生成器86は、クロック信号を生成してコンピュータ84に出力する。コンピュータ84は、クロック信号生成器86から入力されたクロック信号に従って動作する。
【0069】
信号処理回路88は、共振回路92に接続されている。信号処理回路88は、復号回路及び符号化回路(何れも図示省略)を有する。信号処理回路88の復号回路は、コイル60によって受信された磁界MFからコマンド信号を抽出して復号し、コンピュータ84に出力する。コンピュータ84は、コマンド信号に対する応答信号を信号処理回路88に出力する。すなわち、コンピュータ84は、信号処理回路88から入力されたコマンド信号に応じた処理を実行し、処理結果を応答信号として信号処理回路88に出力する。信号処理回路88では、コンピュータ84から応答信号が入力されると、信号処理回路88の符号化回路は、応答信号を符号化することで変調して共振回路92に出力する。共振回路92は、信号処理回路88の符号化回路から入力された応答信号を、磁界MFを介して非接触式読み書き装置50に送信する。すなわち、カートリッジメモリ19から非接触式読み書き装置50に応答信号が送信される場合、磁界MFには、応答信号が含まれる。換言すると、磁界MFには応答信号が重畳される。
【0070】
一例として図10に示す共振回路形成システム120は、ICチップ52と外部コンデンサ54とを、コイル60が形成された基板26に実装することによって、共振回路92を形成するシステムである。共振回路形成システム120は、例えば、カートリッジメモリ19の製造ラインに導入される。
【0071】
一例として図10に示すように、共振回路形成システム120は、ICチップ実装装置124、仮共振周波数測定装置126、外部コンデンサ実装装置128、及び制御装置121を備える。
【0072】
ICチップ実装装置124は、例えば、製造ラインの作業員の操作により、ICチップ52を未完成カートリッジメモリ(以下、「未完成CM」と称する)152のコイル60に接続することによって、ICチップ実装済み未完成カートリッジメモリ(以下、「ICチップ実装済み未完成CM」と称する)154を形成する。未完成CM152とは、基板26にコイル60が形成され、かつ、ICチップ52も外部コンデンサ54も実装されていない状態の製造途中のカートリッジメモリである。ICチップ実装済み未完成CM154とは、コイル60が形成された基板26にICチップ52が実装され、かつ、外部コンデンサ54が実装されていない状態の製造途中のカートリッジメモリである。これにより、外部コンデンサ54を含まず、内蔵コンデンサ80とコイル60とを含む共振回路である仮共振回路148(図12参照)が形成される。また、ICチップ実装装置124は、基板26に接続したICチップ52を封止材56で封止する。
【0073】
仮共振周波数測定装置126は、例えば、インピーダンスアナライザを備え、共振回路の共振周波数を測定する装置である。外部コンデンサ実装装置128は、外部コンデンサ54を基板26にボンディング接続する装置である。仮共振周波数測定装置126及び外部コンデンサ実装装置128は、ケーブルを介して制御装置121に接続されている。
【0074】
制御装置121は、コンピュータ122、受付デバイス136、及びディスプレイ138を備える。コンピュータ122は、CPU122A、NVM122B、及びRAM122Cを備えており、CPU122A、NVM122B、及びRAM122Cは、バス122Dを介して接続されている。図10に示す例では、図示の都合上、バス122Dとして1本のバスが図示されているが、複数のバスであってもよい。また、バス122Dには、シリアルバス、又は、データバス、アドレスバス、及びコントロールバス等で構成されるパラレルバスが含まれていてもよい。受付デバイス136は、共振回路形成システム120を管理する管理者からの指示を受け付ける。ディスプレイ138は、各種情報を表示する。受付デバイス136及びディスプレイ138は、バス122Dを介してコンピュータ122に接続されている。
【0075】
NVM122Bは、容量決定プログラム130及び基準共振周波数132を記憶している。ここでは、NVM122Bの一例として、EEPROM、SSD、又はHDDが採用されるが、これに限らず、これら複数の不揮発性の記憶装置の組み合わせであってもよい。RAM122Cには、各種情報が一時的に記憶される。RAM122Cは、CPU122Aによってワークメモリとして用いられる。
【0076】
CPU122Aは、NVM122Bから容量決定プログラム130を読み出し、読み出した容量決定プログラム130をRAM122C上で実行する。CPU122Aは、RAM122C上で実行する容量決定プログラム130に従って容量決定部134として動作することで、外部コンデンサ54の容量を決定する容量決定処理を実行する。
【0077】
容量決定部134は、受付デバイス136から実行指示を受け付けた場合に、容量決定処理を実行する。実行指示は、例えば、作業者によって受付デバイス136から入力される。
【0078】
一例として図11に示すように、容量決定処理では、容量決定部134は、仮共振周波数測定装置126に仮共振周波数測定指示142を出力することにより、仮共振周波数測定装置126に対して、仮共振回路148の共振周波数である仮共振周波数150(図12参照)を測定させる。また、容量決定部134は、仮共振周波数測定装置126に対して、測定した仮共振周波数150を示す仮共振周波数信号144を容量決定部134に送信させる。なお、仮共振周波数150は、本開示の技術に係る「仮共振周波数」の一例である。仮共振周波数信号144は、本開示の技術に係る「信号」の一例である。
【0079】
一例として図12に示すように、容量決定部134は、仮共振周波数測定装置126から送信された仮共振周波数信号144を受信する。容量決定部134は、NVM122Bから基準共振周波数132を読み出し、受信した仮共振周波数信号144に含まれる仮共振周波数150と基準共振周波数132との相違度に基づいて、外部コンデンサ54の容量を決定する。基準共振周波数132は、本開示の技術に係る「基準共振周波数」の一例である。基準共振周波数132は、カートリッジメモリ19が磁界MFを介して非接触式読み書き装置50と通信を行う場合の周波数として予め定められた周波数であり、例えば、13.56MHzである。
【0080】
容量決定部134で用いられる相違度は、例えば、仮共振周波数150と基準共振周波数132との差分である。なお、差分は、あくまでも一例に過ぎず、例えば、仮共振周波数150及び基準共振周波数132のうちの一方に対する他方の割合であってもよく、仮共振周波数150が基準共振周波数132から乖離している度合いを特定可能な値であればよい。
【0081】
一例として図13に示すように、容量決定部134は、外部コンデンサ実装装置128に、決定した容量に関する情報である容量情報を送信する。外部コンデンサ実装装置128は、容量決定部134から送信された容量情報を受信する。外部コンデンサ実装装置128は、ICチップ実装装置124からICチップ実装済み未完成CM154を取得し、容量情報によって示される容量を有する外部コンデンサ54を表面実装方式でICチップ実装済み未完成CM154に実装する。具体的には、製造ラインには、異なる容量を有する複数種類のコンデンサが予め用意されており、外部コンデンサ実装装置128は、複数種類のコンデンサのうち、決定した容量に最も近い容量を有するコンデンサを外部コンデンサ54としてICチップ実装済み未完成CM154に実装する。これにより、基準共振周波数132を有する共振回路92が形成される。
【0082】
次に、本実施形態による共振回路形成システム120の作用について図14を参照しながら説明する。
【0083】
一例として図14に示す共振回路92の製造工程では、先ず、ステップST101で、ICチップ実装装置124は、ICチップ52を未完成CM152のコイル60に接続する。この後、製造工程は、ステップST102に移行する。
【0084】
ステップST102で、ICチップ実装装置124は、未完成CM152のコイル60に接続したICチップ52を封止材56で封止することにより、ICチップ実装済み未完成CM154を形成する。この後、製造工程は、ステップST103に移行する。
【0085】
ステップST103で、仮共振周波数測定装置126は、ICチップ実装済み未完成CM154に形成された仮共振回路148の共振周波数である仮共振周波数150を測定する。この後、製造工程は、ステップST104に移行する。
【0086】
ステップST104で、仮共振周波数測定装置126は、測定した仮共振周波数150を示す仮共振周波数信号144を容量決定部134に送信する。容量決定部134は、仮共振周波数測定装置126から送信された仮共振周波数信号144を受信する。この後、製造工程は、ステップST105に移行する。
【0087】
ステップST105で、容量決定部134は、NVM122Bから読み出した基準共振周波数132と、仮共振周波数信号144に含まれる仮共振周波数150との相違度に基づき、外部コンデンサ54の容量を決定する。容量決定部134は、決定した容量を示す容量情報を外部コンデンサ実装装置128に送信する。この後、製造工程はステップST106に移行する。
【0088】
ステップST106で、外部コンデンサ実装装置128は、容量情報によって示される容量を有する外部コンデンサ54を、ICチップ実装済み未完成CM154のコイル60に接続する。これにより、共振回路92が形成される。
【0089】
以上説明したように、カートリッジメモリ19は、ICチップ52と外部コンデンサ54とを備える。ICチップ52は、内蔵コンデンサ80を有し、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MFが作用することで電力を誘起するコイル60が形成された基板26に実装されている。外部コンデンサ54は、ICチップ52に対して外付けされている。内蔵コンデンサ80、外部コンデンサ54、及びコイル60は、磁界MFが作用することで予め定められた共振周波数で共振する共振回路92を構成する。ICチップ52は、共振回路92によって生成された電力を用いて動作する。カートリッジメモリ19の製造方法は、外部コンデンサ54がICチップ52に接続されていない状態で、かつ、ICチップ52がコイル60に接続されている状態で仮共振周波数150を測定すること、及び、カートリッジメモリ19が磁界MFを介して非接触式読み書き装置50と通信を行う場合の基準共振周波数132と、仮共振周波数150との相違度に基づいて外部コンデンサ54の容量を決定すること、を含む。従って、本構成によれば、基準共振周波数132と仮共振周波数150との相違度を全く考慮せずに外部コンデンサ54の容量が決定される場合に比べ、共振回路92の共振周波数を基準共振周波数132に合わせ易くすることができる。
【0090】
また、カートリッジメモリ19の製造方法は、決定した容量を有する外部コンデンサ54を基板26に実装することにより、共振回路92を形成することを含む。従って、本構成によれば、基準共振周波数132と仮共振周波数150との相違度を全く考慮せずに外部コンデンサ54の容量が決定される場合に比べ、共振回路92の共振周波数を基準共振周波数132に合わせ易くすることができる。
【0091】
また、カートリッジメモリ19の製造方法では、外部コンデンサ54が基板26に対して表面実装方式で接続されることにより、共振回路92が形成される。従って、本構成によれば、外部コンデンサ54がスルーホール実装方式で基板26に接続される場合に比べ、省スペースで外部コンデンサ54を基板26に対して実装することができる。
【0092】
また、カートリッジメモリ19の製造方法では、コイル60に接続されている状態のICチップ52が封止材56で封止された後に、決定した容量を有する外部コンデンサ54が基板26に実装される。従って、本構成によれば、外部コンデンサ54を基板26に実装する前に、コイル60とICチップ52との接続を保護することができる。
【0093】
また、カートリッジメモリ19の製造方法では、外部コンデンサ54がICチップ52に接続されていない状態で、ICチップ52がコイル60に接続された後、仮共振周波数150が測定される。従って、本構成によれば、外部コンデンサ54がICチップ52に接続された状態で仮共振周波数150が測定される場合に比べ、仮共振周波数150を正しく測定することができる。
【0094】
また、カートリッジメモリ19の製造方法は、仮共振周波数150を示す仮共振周波数信号144を送信すること、及び、送信した仮共振周波数信号144を受信すること、を更に含む。カートリッジメモリ19の製造方法では、受信した仮共振周波数信号144により示される仮共振周波数150に基づいて、外部コンデンサ54の容量が決定される。従って、本構成によれば、仮共振周波数信号144の送受信を行わずに外部コンデンサ54の容量が決定される場合に比べ、外部コンデンサ54の容量を短時間で決定することができる。
【0095】
また、カートリッジメモリ19の製造方法において、内蔵コンデンサ80と各種の駆動素子とはICチップ化されている。従って、本構成によれば、内蔵コンデンサ80と各種の駆動素子とがICチップ化されていない場合に比べ、内蔵コンデンサ80と各種の駆動素子とを容易に基板26に実装することができる。
【0096】
また、カートリッジメモリ19の製造方法において、基板26は、フレキシブルタイプの基板である。従って、本構成によれば、非フレキシブルタイプの基板を用いる場合に比べ、割れにくいカートリッジメモリ19を形成することができる。
【0097】
なお、上記実施形態では、ICチップ実装装置124は、作業員の操作によって、ICチップ52を未完成CM152に実装する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。ICチップ実装装置124は、制御装置121からの指示に応じて、ICチップ52を未完成CM152に実装してもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、容量決定部134からの指示に従って、仮共振周波数測定装置126が仮共振回路148の仮共振周波数150を測定し、測定した仮共振周波数150を示す仮共振周波数信号144を容量決定部134に送信する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。作業員が、インピーダンスアナライザ又はオシロスコープ等を用いて仮共振周波数150を測定し、測定した仮共振周波数150を示す仮共振周波数信号144を、受付デバイス136を介してコンピュータ122に入力してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、ICチップ52とコイル60とがワイヤ接続方式で接続されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、図15に示すように、ICチップ52がフリップチップ接続方式で接続されていてもよい。この場合、例えば、ICチップ52の正極端子及び負極端子のうちの一方の端子が第1導通部62Aに直接接続され、他方の端子が第2導通部62Bに直接接続される。
【0100】
また、上記実施形態では、傾斜角度θとして45度を例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、一例として図16に示すように、カートリッジメモリ19の基準面16A1に対する傾斜角度として、傾斜角度θよりも小さな傾斜角度θ1が採用されてもよい。傾斜角度θ1の一例としては30度が挙げられる。傾斜角度θ1は、傾斜角度θよりも小さな角度であるので、傾斜角度θの場合に比べ、コイル60(図7参照)に対して多くの磁力線を貫通させることができる。この結果、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態で、コイル60は、傾斜角度θの場合に比べ、大きな誘導電流を得ることができる。
【0101】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0102】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0103】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0104】
10 磁気テープカートリッジ
12 ケース
12A 右壁
12B 開口
14 上ケース
14A 天板
14A1 内面
16 下ケース
16A 底板
16A1 基準面
16B 後壁
18 カートリッジリール
18A リールハブ
18B1 上フランジ
18B2 下フランジ
19 カートリッジメモリ
20 支持部材
20A 第1傾斜台
20A1,20B1 傾斜面
20B 第2傾斜台
22 位置規制リブ
24 リブ
24A 先端面
26 基板
26A 表面
26B 裏面
30 磁気テープドライブ
34 搬送装置
36 読取ヘッド
38 制御装置
40 送出モータ
42 巻取リール
44 巻取モータ
46 読取素子
48 ホルダ
50 非接触式読み書き装置
52 ICチップ
54 外部コンデンサ
54A,54B 電極
56 封止材
60 コイル
62A 第1導通部
62B 第2導通部
64A,64B,64C,64D ワイヤ
70 電力生成器
80 内蔵コンデンサ
82 電源回路
84 コンピュータ
86 クロック信号生成器
88 信号処理回路
92 共振回路
120 共振回路形成システム
121 制御装置
122 コンピュータ
122A CPU
122B NVM
122C RAM
122D バス
124 ICチップ実装装置
126 仮共振周波数測定装置
128 外部コンデンサ実装装置
130 容量決定プログラム
132 基準共振周波数
134 容量決定部
136 受付デバイス
138 ディスプレイ
142 仮共振周波数測定指示
144 仮共振周波数信号
148 仮共振回路
150 仮共振周波数
152 未完成カートリッジメモリ
154 ICチップ実装済み未完成カートリッジメモリ
A,B,C 矢印
GR ガイドローラ
MF 磁界
MT 磁気テープ
θ,θ1 傾斜角度
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