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特開2022-99613光学異方性層、光学フィルム、円偏光板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置
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  • 特開-光学異方性層、光学フィルム、円偏光板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099613
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】光学異方性層、光学フィルム、円偏光板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220628BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220628BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220628BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220628BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/30 365
G09F9/00 323
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213467
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】小玉 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峻也
(72)【発明者】
【氏名】古木 裕介
(72)【発明者】
【氏名】横田 知瞭
(72)【発明者】
【氏名】中森 剛史
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB05
2H149BA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149DB04
2H149DB15
2H149EA03
2H149EA06
2H149EA17
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA24Y
2H149FA33Y
2H149FA52Y
2H149FA56Y
2H149FA58Y
2H149FD25
2H149FD35
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC37
3K107EE26
3K107FF02
3K107FF14
5C094AA02
5C094BA27
5C094ED14
5G435AA04
5G435BB05
5G435FF05
(57)【要約】
【課題】本発明は、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制することができる光学異方性層、ならびに、光学フィルム、円偏光板および有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層であって、
光学異方性層が、液晶化合物の配向状態を固定してなる層であり、
配向状態が、液晶化合物が捩れ配向し、かつ、光学異方性層の表面に対する液晶化合物の光学軸の角度が厚み方向に沿って連続的に変化している配向状態であり、
液晶組成物が、下記式(I)で表される化合物および下記式(II)で表される化合物の少なくとも一方と、下記式(I)および(II)のいずれにも該当しない、重合性基を有する棒状液晶化合物とを含有する、光学異方性層。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層であって、
前記光学異方性層が、前記液晶化合物の配向状態を固定してなる層であり、
前記配向状態が、前記液晶化合物が捩れ配向し、かつ、前記光学異方性層の表面に対する前記液晶化合物の光学軸の角度が厚み方向に沿って連続的に変化している配向状態であり、
前記液晶組成物が、下記式(I)で表される化合物および下記式(II)で表される化合物の少なくとも一方と、下記式(I)および(II)のいずれにも該当しない、重合性基を有する棒状液晶化合物とを含有する、光学異方性層。
【化1】
ここで、前記式(I)中、
およびPは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
およびSは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。
、A、AおよびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、非芳香族環、芳香族環または芳香族性複素環を表す。ただし、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
およびYは、それぞれ独立に、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または、単結合を表す。ただし、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
m1およびm2は、それぞれ独立に、0~5の整数を表す。
Zは、芳香族置換基を有さない直鎖または分岐状のアルキレン基を表す。ただし、AとAとを最短距離で結んだ結合上の原子の数が3個以上であり、また、前記アルキレン基を構成する1個の-CH-または隣接していない2個以上の-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-CO-、-S-、-SO-、-NR-、-NRSO-、または、-SONR-で置換されていてもよい。Rは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【化2】
ここで、前記式(II)中、
およびPは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
およびSは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、非芳香族環、芳香族環または芳香族性複素環を表す。ただし、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
およびYは、それぞれ独立に、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または、単結合を表す。ただし、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
m3およびm4は、それぞれ独立に、1~5の整数を表す。
Bは、置換基を有していてもよい、下記式(B-1)~(B-11)で表されるいずれかの基を表す。
【化3】
ただし、前記式式(B-1)~(B-11)中の炭素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換されていてもよい。
前記式(B-4)~(B-8)、(B-10)および(B-11)中のXは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、前記式(B-5)中の2個のXは、それぞれ同一の原子であっても異なる原子であってもよく、前記式(B-6)中の2個のXは、それぞれ同一の原子であっても異なる原子であってもよい。
Bが前記式(B-11)で表される基である場合、Bと結合するYおよびYは、いずれも単結合を表す。
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物および前記式(II)で表される化合物の合計の含有量が、前記棒状液晶化合物の質量に対して50質量%以下である、請求項1に記載の光学異方性層。
【請求項3】
前記液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい、請求項1または2に記載の光学異方性層。
【請求項4】
前記液晶組成物が、ベンドの弾性定数K33がスプレイの弾性定数K11よりも大きい液晶化合物と、ベンドの弾性定数K33がスプレイの弾性定数K11よりも小さい液晶化合物とを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学異方性層。
【請求項5】
液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層であって、
前記光学異方性層が、前記液晶化合物の配向状態を固定してなる層であり、
前記配向状態が、前記液晶化合物が捩れ配向し、かつ、前記光学異方性層の表面に対する前記液晶化合物の光学軸の角度が厚み方向に沿って連続的に変化している配向状態であり、
前記液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい、光学異方性層。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学異方性層を有する、光学フィルム。
【請求項7】
第1光学異方性層および第2光学異方性層を有し、
前記第1光学異方性層が、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学異方性層である、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光学フィルムと、偏光子とが積層されてなる円偏光板。
【請求項9】
請求項8に記載の円偏光板を有する、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性層、光学フィルム、円偏光板および有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差を有する光学異方性層は、非常に多くの用途に使用されている。例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置は、金属電極を用いる構造を有するため、外光を反射し、コントラスト低下および映り込みの問題を生じることがある。そこで、従来から、外光反射による悪影響を抑制するために、光学異方性層と偏光子とから構成される円偏光板が使用されている。
【0003】
このような円偏光板に使用される光学異方性層としては、例えば、特許文献1および2には、液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成され、液晶化合物がハイブリッド配向で固定化された位相差層を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/012390号
【特許文献2】国際公開第2015/122387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、有機EL表示装置に代表される表示装置においては、画質のより一層の向上のために、正面および斜め方向における黒色の色味づきの抑制が求められている。より具体的には、現在、円偏光板を有する有機EL表示装置においては、正面方向および斜め方向から見た際に黒色に他の色が混色したような色味(以下、「色味変化」とも略す。)が生じないことが求められている。
【0006】
本発明者らは、特許文献1および2に記載された光学異方性層(位相差層)について検討したところ、チルト角の変量が線形的でない場合があることを明らかとした。
また、本発明者らは、このような光学異方性層を有する円偏光板を作製し、表示装置に貼り付けて、その性能評価を行ったところ、正面方向および斜め方向(特に、斜め方向)における色味変化が生じることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制することができる光学異方性層、ならびに、光学フィルム、円偏光板および有機EL表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、液晶化合物を所定の配向状態で固定してなる光学異方性層に関して、液晶化合物の種類や液晶組成物の所定の弾性定数を特定することで、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1] 液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層であって、
光学異方性層が、液晶化合物の配向状態を固定してなる層であり、
配向状態が、液晶化合物が捩れ配向し、かつ、光学異方性層の表面に対する液晶化合物の光学軸の角度が厚み方向に沿って連続的に変化している配向状態であり、
液晶組成物が、後述する式(I)で表される化合物および後述する式(II)で表される化合物の少なくとも一方と、後述する式(I)および(II)のいずれにも該当しない、重合性基を有する棒状液晶化合物とを含有する、光学異方性層。
[2] 後述する式(I)で表される化合物および後述する式(II)で表される化合物の合計の含有量が、棒状液晶化合物の質量に対して50質量%以下である、[1]に記載の光学異方性層。
[3] 液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい、[1]または[2]に記載の光学異方性層。
[4] 液晶組成物が、ベンドの弾性定数K33がスプレイの弾性定数K11よりも大きい液晶化合物と、ベンドの弾性定数K33がスプレイの弾性定数K11よりも小さい液晶化合物とを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の光学異方性層。
[5] 液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層であって、
光学異方性層が、液晶化合物の配向状態を固定してなる層であり、
配向状態が、液晶化合物が捩れ配向し、かつ、光学異方性層の表面に対する液晶化合物の光学軸の角度が厚み方向に沿って連続的に変化している配向状態であり、
液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい、光学異方性層。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の光学異方性層を有する、光学フィルム。
[7] 第1光学異方性層および第2光学異方性層を有し、
第1光学異方性層が、[1]~[5]のいずれかに記載の光学異方性層である、[6]に記載の光学フィルム。
[8] [6]または[7]に記載の光学フィルムと、偏光子とが積層されてなる円偏光板。
[9] [8]に記載の円偏光板を有する、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制することができる光学異方性層、ならびに、光学フィルム、円偏光板および有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光学異方性層における液晶化合物の配向状態を説明する概略図である。
図2図1の光学異方性層の法線方向から光学異方性層を観察した際の液晶化合物の捩れ方向を示す概略図である。
図3】チルト角を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
【0014】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、それぞれ、波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
面内遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0015】
本明細書において、屈折率nx、ny、および、nzは、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0016】
[光学異方性層]
本発明の光学異方性層、すなわち、後述する本発明の第1の態様および第2の態様に係る光学異方性層は、本発明の液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて形成される光学異方性層である。
また、本発明の光学異方性層は、液晶化合物の配向状態を固定してなる層である。
また、本発明の光学異方性層における液晶化合物の配向状態は、液晶化合物が捩れ配向し、かつ、光学異方性層の表面に対する液晶化合物の光学軸の角度が厚み方向に沿って連続的に変化している配向状態である。以下、液晶化合物のこのような配向状態を、ツイストハイブリッド配向ともいう。
ここで、液晶化合物の光学軸とは、棒状液晶化合物の場合は液晶分子の長軸方向をいい、円盤状液晶化合物の場合は円盤面と直交する方向をいう。
【0017】
以下、図面を用いて、ツイストハイブリッド配向について説明する。
図1に、ツイストハイブリッド配向した液晶化合物を固定してなる光学異方性層10の一例を示す。また、図2に、図1の光学異方性層10の法線方向から光学異方性層10を観察した際の液晶化合物の捩れ方向を示す概略図を示す。なお、図1および2においては、液晶化合物として棒状液晶化合物を使用した例を示しているが、後述する本発明の第2の態様に係る光学異方性層に示す通り、液晶化合物は、棒状液晶化合物のみには限定されない。
図1に示す態様においては、光学異方性層10中の液晶化合物LCのチルト角は、光学異方性層10の一方の表面10Aから他方の表面10B側に向かって大きくなっている。
ここで、図3に示すように、液晶化合物LCのチルト角とは、液晶化合物LCの光学軸と、液晶化合物の光学軸の光学異方性層主面(図1中、xy平面)に対する射影成分LCxyとが成す角度θを意味する。
また、図1および図2に示すように、光学異方性層10中の液晶化合物LCは、厚み方向を回転軸として捩れ配向している。つまり、厚み方向に沿った軸を回転軸として、光学異方性層の一方の表面(主面)から他方の表面(主面)に向かって、液晶化合物が回転している。
ここで、図2に示すように、液晶化合物の捩れ角φは、液晶化合物が一方の表面側から他方の表面側に向かってどの程度捩れているかを示すものであり、本明細書における捩れ角は、法線方向から光学異方性層を観察した際の液晶化合物の光学軸を平面上に投影した図における、一方の表面における光学軸と他方の表面における光学軸とのなす角度を意味する。
なお、チルト角、および、捩れ角(以下、「ツイスト角」ともいう。)の測定方法は、Axometrics社のAxoScan(ポラリメーター)装置を用い、同社の装置解析ソフトウエアを用いて測定する。
【0018】
本発明の光学異方性層は、一方の表面(例えば、後述する光学フィルムにおいて配向膜を有する場合には配向膜側の表面)における液晶化合物のチルト角θ1と、他方の表面(例えば、後述する光学フィルムにおいて第2光学異方性層を有する場合には第2光学異方性層側の表面)における液晶化合物のチルト角θ2との差は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、5~85°が好ましく、15~75°がより好ましい。
θ1としては、0~75°が好ましく、0~65°がより好ましい。
θ2としては、0~85°が好ましく、0~75°がより好ましい。
θ1とθ2との平均は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、15°以上45°未満が好ましく、20°以上45°未満がより好ましい。
【0019】
また、本発明の光学異方性層は、液晶化合物のツイスト角は、10~180°が好ましく、55~120°がより好ましい。
【0020】
本発明の第1の態様に係る光学異方性層は、液晶化合物のツイストハイブリッド配向を固定してなる層のうち、光学異方性層を形成する液晶組成物が、下記式(I)で表される化合物(以下、「化合物I」とも略す。)および下記式(II)で表される化合物(以下、「化合物II」とも略す。)の少なくとも一方と、下記式(I)および(II)のいずれにも該当しない、重合性基を有する棒状液晶化合物とを含有する態様である。
なお、下記式(I)および(II)中の各記号については、後述する。
【化1】
【0021】
本発明の第1の態様に係る光学異方性層は、重合性基を有する棒状液晶化合物とともに、化合物Iおよび化合物IIの少なくとも一方を配合した液晶組成物を用いて形成されているため、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制できる。
この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
ここで、本発明の第1の態様においては、液晶組成物として化合物Iおよび化合物IIの少なくとも一方を配合することにより、ベンドの弾性定数K33が小さくなり、その結果、ツイストハイブリッド配向を採った際に、ベンドの歪み量が多い状態でエネルギー的に安定化することができる。すなわち、本発明の第1の態様においては、ベンドの歪み量が多い状態が線形性に有利であっため、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制できたと考えられる。
【0022】
以下に、本発明の第1の態様に係る光学異方性層を形成する液晶組成物(以下、形式的に「本発明の第1の態様に係る液晶組成物」とも略す。)の各成分について詳細に説明する。
【0023】
〔化合物I〕
化合物Iは、下記式(I)で表される化合物である。
【化2】
【0024】
上記式(I)中、PおよびPは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
また、SおよびSは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。
また、A、A、AおよびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、非芳香族環、芳香族環または芳香族性複素環を表す。ただし、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、YおよびYは、それぞれ独立に、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または、単結合を表す。ただし、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、m1およびm2は、それぞれ独立に、0~5の整数を表す。
また、Zは、芳香族置換基を有さない直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。ただし、AとAとを最短距離で結んだ結合上の原子の数が3個以上であり、また、アルキレン基を構成する1個の-CH-または隣接していない2個以上の-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-CO-、-S-、-SO-、-NR-、-NRSO-、または、-SONR-で置換されていてもよい。Rは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0025】
上記式(I)中、PおよびPの一態様が示す置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルチオール基、N-アルキルカルバメート基、および、重合性基などが挙げられ、中でも、アルキル基、アルコキシ基、または、重合性基が好ましい。
【0026】
置換基の好適例であるアルキル基としては、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシレン基、ヘプチル基、ドデシル基、およびシクロヘキシル基など)がより好ましい。
【0027】
置換基の好適例であるアルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~12のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基およびメトキシエトキシ基など)がより好ましい。
【0028】
置換基の好適例である重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイルオキシ基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイルオキシ基が好ましいが、メタクリロイルオキシ基も重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基が特に好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては、下記式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が挙げられる。中でも、下記式(P-1)、(P-2)、(P-7)および(P-12)のいずれかで表される重合性基が好ましい。
【0029】
【化3】
【0030】
本発明においては、作製される光学異方性層の耐久性が向上する理由から、PおよびPの少なくとも一方が重合性基を表すことが好ましく、PおよびPの両方が重合性基を表すことがより好ましい。
【0031】
上記式(I)中、SおよびSの一態様が示す2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、および、-NH-CO-などが挙げられる。
これらのうち、-O-、-CO-、-COO-、および、-OCO-のいずれかであることが好ましい。なお、SおよびSとしては、単結合であることも好ましい。
【0032】
上記式(I)中、A、A、AおよびAの一態様が示す非芳香族環としては、例えば、シクロアルカン環が挙げられる。
シクロアルカン環としては、具体的には、例えば、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環などが挙げられる。
これらのうち、シクロヘキサン環が好ましく、1,4-シクロヘキシレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基が更に好ましい。
【0033】
また、上記式(I)中、A、A、AおよびAの一態様が示す芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられる。
これらのうち、ベンゼン環(例えば、1,4-フェニル基など)、ナフタレン環が好ましい。
【0034】
また、上記式(I)中、A、A、AおよびAの一態様が示す芳香族性複素環としては、例えば、フラン環、ピロール環、チオフェン環、オキサジアゾール環(1,3,4-オキサジアゾール)、チアジアゾール環(1,3,4-チアジアゾール)、ピリジン環、ピラジン環(1,4-ジアジン)、ピリミジン環(1,3-ジアジン)、ピリダジン環(1,2-ジアジン)、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、フェナンスロリン環などが挙げられる。
これらのうち、チオフェン環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環が好ましい。
【0035】
また、上記式(I)中、A、A、AおよびAが有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のPおよびPの一態様が示す置換基と同様のものが挙げられる。中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基およびシクロヘキシル基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基およびメトキシエトキシ基など)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、上記で例示したアルキル基にオキシカルボニル基(-O-CO-基)が結合した基が挙げられ、中でも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基またはイソプロポキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基がより好ましい。
アルキルカルボニルオキシ基としては、上記で例示したアルキル基にカルボニルオキシ基(-CO-O-基)が結合した基が挙げられ、中でも、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基またはイソプロピルカルボニルオキシ基が好ましく、メチルカルボニルオキシ基がより好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0036】
上記式(I)中、YおよびYは、上述した通り、それぞれ独立に、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または、単結合を表す。
これらのうち、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、および、単結合のいずれかであることが好ましい。
【0037】
上記式(I)中、m1およびm2は、上述した通り、それぞれ独立に、0~5の整数であり、1~4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0038】
上記式(I)中、Zは、上述した通り、芳香族置換基を有さない直鎖状または分岐状のアルキレン基を表すが、本発明においては、AとAとを最短距離で結んだ結合上の原子の数が3個以上である。
また、Zが示すアルキレン基を構成する1個の-CH-または隣接していない2個以上の-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-NRCO-、-CONR-、-NRCOO-、-OCONR-、-CO-、-S-、-SO-、-NR-、-NRSO-、または、-SONR-で置換されていてもよい。Rは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。なお、-COO-などの多原子で構成される2価の連結基で置換される場合であっても、置換される対象は1個の-CH-である。
また、Zが示すアルキレン基が有さない芳香族置換基とは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基等のことをいい、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基、ピリジル基などが挙げられる。
また、AとAとを最短距離で結んだ結合上の原子の数は、上述した通り、3以上であるが、11以下の奇数であることが好ましく、3、5、7または9であることがより好ましい。
ここで、上記式(I)における「A-Z-A」の部分構造の一例を下記式で表すが、下記例におけるAとAとを最短距離で結んだ結合上の原子の数は、下記式中にも明示する通り、6である。
【化4】
【0039】
Zが示すアルキレン基としては、例えば、炭素数が3または5~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が挙げられ、具体的には、プロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、ドデシレン基などが好適に挙げられる。
また、Zが示すアルキレン基を構成する-CH-を置換する対象としては、上述したもののうち、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NR-が好ましい。
【0040】
化合物Iとしては、具体的には、例えば、以下に示す化合物I-1~化合物I-33が挙げられる。
【化5】
【0041】
〔化合物II〕
化合物IIは、下記式(II)で表される化合物である。
【化6】
【0042】
上記式(II)中、PおよびPは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
また、SおよびSは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。
また、AおよびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、非芳香族環、芳香族環または芳香族性複素環を表す。ただし、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Aを複数有する場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、YおよびYは、それぞれ独立に、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または、単結合を表す。ただし、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Yを複数有する場合、複数のYは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、m3およびm4は、それぞれ独立に、1~5の整数を表す。
また、Bは、置換基を有していてもよい、下記式(B-1)~(B-11)で表されるいずれかの基を表す。
【化7】
ただし、上記式式(B-1)~(B-11)中の炭素原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換されていてもよい。
上記式(B-4)~(B-8)、(B-10)および(B-11)中のXは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、上記式(B-5)中の2個のXは、それぞれ同一の原子であっても異なる原子であってもよく、上記式(B-6)中の2個のXは、それぞれ同一の原子であっても異なる原子であってもよい。
Bが上記式(B-11)で表される基である場合、Bと結合するYおよびYは、いずれも単結合を表す。
【0043】
上記式(II)中、PおよびPの一態様が示す置換基としては、上記式(I)中のPおよびPの一態様が示す置換基と同様のものが挙げられ、好適な態様も同様である。
【0044】
本発明においては、作製される光学異方性層の耐久性が向上する理由から、PおよびPの少なくとも一方が重合性基を表すことが好ましく、PおよびPの両方が重合性基を表すことがより好ましい。
【0045】
上記式(II)中、SおよびSの一態様が示す2価の連結基としては、上記式(I)中のSおよびSの一態様が示す2価の連結基と同様のものが挙げられ、好適な態様も同様である。なお、SおよびSとしては、単結合であることも好ましい。
【0046】
上記式(II)中、AおよびAが示す「置換基を有していてもよい、非芳香族環、芳香族環または芳香族性複素環」としては、上記式(I)中のA、A、AおよびAが示す「置換基を有していてもよい、非芳香族環、芳香族環または芳香族性複素環」と同様のものが挙げられ、好適な態様も同様である。
【0047】
上記式(II)中、YおよびYは、上述した通り、それぞれ独立に、-O-、-S-、-OCH-、-CHO-、-CHCH-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-SCH-、-CHS-、-CFO-、-OCF-、-CFS-、-SCF-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHCH-、-OCO-CHCH-、-CHCH-COO-、-CHCH-OCO-、-COO-CH-、-OCO-CH-、-CH-COO-、-CH-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または、単結合を表す。
これらのうち、-COO-、-OCO-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-N=N-、-C≡C-、および、単結合のいずれかであることが好ましい。
【0048】
上記式(II)中、m3およびm4は、上述した通り、それぞれ独立に、1~5の整数であり、1~4の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。
【0049】
上記式(II)中、Bは、上述した通り、置換基を有していてもよい、上記式(B-1)~(B-11)で表されるいずれかの基を表す。
ここで、上記式(B-1)~(B-11)で表されるいずれかの基が有していてもよい置換基としては、上記式(I)中のPおよびPの一態様が示す置換基と同様のものが挙げられる。中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、または、ハロゲン原子が好ましい。なお、これらの具体例は、上記式(I)中のA、A、AおよびAが有していてもよい置換基の具体例と同様である。
【0050】
化合物IIとしては、具体的には、例えば、以下に示す化合物II-1~化合物II-32が挙げられる。
【化8】
【0051】
本発明においては、液晶組成物のベンドの弾性定数(K33)とスプレイの弾性定数(K11)との比(K33/K11)を調整する観点から、上記化合物Iおよび上記化合物IIの合計の含有量が、後述する棒状液晶化合物の質量に対して50質量%以下であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましい。
【0052】
〔棒状液晶化合物〕
本発明の第1の態様に係る液晶組成物が含有する棒状液晶化合物は、重合性基を有する棒状液晶化合物である。
ここで、重合性基としては、例えば、上記式(I)中のPおよびPの一態様が示す置換基の好適例として説明した上記式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が挙げられる。中でも、上記式(P-1)または(P-2)で表される重合性基が好ましい。
【0053】
棒状液晶化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が挙げられる。また、上記のような、低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も挙げられる。
【0054】
棒状液晶化合物としては、具体的には、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号公報、同5622648号公報、同5770107号公報、WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1-272551号公報、同6-16616号公報、同7-110469号公報、同11-80081号公報、および特願2001-64627号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0055】
本発明においては、棒状液晶化合物は、順波長分散性の液晶化合物であっても、逆波長分散性の液晶化合物であってもよいが、順波長分散性の液晶化合物である場合、光学フィルムの製造コストが低下すると共に、耐久性も向上する点で好ましい。
本明細書において、順波長分散性の液晶化合物とは、この液晶化合物を用いて作製された光学異方性層の可視光範囲における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が小さくなるものをいう。一方、逆波長分散性の液晶化合物とは、同様にRe値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が大きくなるものをいう。
【0056】
本発明においては、棒状液晶化合物の含有量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、50~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。
【0057】
〔界面活性剤〕
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、安定的に、または迅速に、コレステリック液晶相の配向に寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましく例示される。
【0058】
界面活性剤の具体例としては、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]に記載の化合物、特開2005-99248号公報の段落[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002-129162号公報の段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0085]中に例示されている化合物、ならびに、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーが挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物が好ましい。
【0059】
任意の界面活性剤の添加量は、棒状液晶化合物の質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.02~1質量%がさらに好ましい。
【0060】
〔キラル剤(光学活性化合物)〕
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、キラル剤を含んでいてもよい。
キラル剤(キラル剤)はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0061】
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線等のフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-080478号公報、特開2002-080851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0062】
任意のキラル剤の含有量は、棒状液晶化合物の含有モル量に対して0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0063】
〔重合開始剤〕
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、重合開始剤を含むのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
任意の光重合開始剤の含有量は、棒状液晶化合物の質量に対して0.1~20質量%が好ましく、0.5~12質量%がより好ましい。
【0064】
〔架橋剤〕
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、および、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
任意の架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、作製される光学素子の耐久性が向上する。
【0065】
〔その他の添加剤〕
本発明の第1の態様に係る液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加できる。
【0066】
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、光学異方性層を形成する際には、液体として用いられるのが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。
【0067】
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、チルト角の変量の線形性がより高くなり、ツイスト角の変量の線形成も良好となる理由から、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きいことが好ましい。
ここで、液晶組成物の弾性定数は、溶媒を除いた液晶組成物の弾性定数である。
また、スプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との大小関係は、スプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との比(K11/K33)が1より大きいか否かで判断することができる。
そして、スプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との比(K11/K33)は、文献「繊維と工業 Vol.42、No.11(1986)、449」に記載の方法に従って測定した値をいう。
【0068】
また、本発明の第1の態様に係る液晶組成物のスプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との比(K11/K33)は、1.0以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。上限については特に制限はないが、通常10以下であることが好ましい。
【0069】
本発明の第1の態様に係る液晶組成物は、ベンドの弾性定数K33がスプレイの弾性定数K11よりも大きい液晶化合物(以下、「化合物L」とも略す。)と、ベンドの弾性定数K33がスプレイの弾性定数K11よりも小さい液晶化合物(以下、「化合物R」とも略す。)とを含有している態様していることが好ましい。
【0070】
ここで、化合物Lとしては、例えば、上述した棒状液晶化合物、および、円盤状液晶化合物などが挙げられる。
円盤状液晶化合物としては特に限定されず、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]および特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載の液晶化合物が挙げられる。
また、円盤状液晶化合物は、重合性基を有していることが好ましい。
重合性基の種類は特に制限されず、上記式(I)中のPおよびPの一態様が示す置換基の好適例として説明した上記式(P-1)~(P-20)のいずれかで表される重合性基が挙げられる。中でも、上記式(P-1)または(P-2)で表される重合性基が好ましい。
一方、化合物Rとしては、例えば、上述した化合物Iおよび化合物IIなどが挙げられる。
【0071】
本発明の第1の態様に係る光学異方性層を作製する方法としては、上述した本発明の第1の態様に係る液晶組成物を塗布して塗膜を形成して、塗膜に配向処理を施して液晶化合物を配向させて、硬化処理を施す方法が挙げられる。
液晶組成物が塗布される対象は特に制限されず、例えば、後述する支持体、または、後述する第2光学異方性層などが挙げられる。
また、形成される光学異方性層の面内遅相軸の方向を所定の方向にするために、液晶組成物が塗布される対象は、ラビング処理が施されていてもよい。例えば、ラビング処理が施された長尺支持体を用いてもよい。なお、面内遅相軸は、特別な断りがなければ、550nmにおける定義である。
【0072】
液晶組成物の塗布方法としては、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、および、ワイヤーバー法が挙げられる。
【0073】
次に、形成された塗膜に、配向処理を施して、塗膜中の液晶化合物を配向させる。
配向処理は、室温により塗膜を乾燥させる、または、塗膜を加熱することにより行うことができる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度または圧力の変化により転移させることができる。リオトロピック性液晶化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
なお、塗膜を加熱する場合の条件は特に制限されないが、加熱温度としては50~250℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、加熱時間としては10秒間~10分間が好ましい。
また、塗膜を加熱した後、後述する硬化処理(光照射処理)の前に、必要に応じて、塗膜を冷却してもよい。冷却温度としては20~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましい。
【0074】
次に、液晶化合物が配向された塗膜に対して硬化処理を施す。
液晶化合物が配向された塗膜に対して実施される硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、光照射処理および加熱処理が挙げられる。なかでも、製造適性の点から、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。
光照射処理の照射条件は特に制限されないが、50~1000mJ/cmの照射量が好ましい。
光照射処理の際の雰囲気は特に制限されないが、窒素雰囲気が好ましい。
【0075】
本発明の第2の態様に係る光学異方性層は、液晶化合物のツイストハイブリッド配向を固定してなる層のうち、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい態様である。
ここで、スプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との大小関係は、上述した第1の態様においても説明した通り、スプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との比(K11/K33)が1より大きいか否かで判断することができる。
そして、スプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との比(K11/K33)は、上述した第1の態様においても説明した通り、文献「繊維と工業 Vol.42、No.11(1986)、449」に記載の方法に従って測定した値をいう。
【0076】
本発明の第2の態様に係る光学異方性層は、形成に用いられる液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きいため、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制できる。
この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
ここで、本発明の第2の態様においては、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きいため、ツイストハイブリッド配向を採った際に、スプレイの歪み量よりもベンドの歪み量が多い状態でエネルギー的に安定化することができる。すなわち、本発明の第2の態様においては、ベンドの歪み量が多い状態が線形性に有利であっため、チルト角の変量の線形性が高く、円偏光板として有機EL表示装置に用いた際に正面方向および斜め方向における色味変化を抑制できたと考えられる。
【0077】
本発明の第2の態様に係る光学異方性層は、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11とベンドの弾性定数K33との比(K11/K33)が、1.0以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。上限については特に制限はないが、通常10以下であることが好ましい。
【0078】
本発明の第2の態様に係る光学異方性層の形成に用いられる液晶組成物は、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい液晶組成物であれば特に限定されず、例えば、従来公知の液晶化合物の他、本発明の第1の態様に係る液晶組成物において説明した界面活性剤、キラル剤、重合開始剤、架橋剤およびその他の添加剤を含有する組成物を用いることができる。ここで、本発明の第2の態様に光学異方性層の形成に用いられる液晶組成物に含まれる液晶化合物は、順波長分散性の液晶化合物であっても、逆波長分散性の液晶化合物であってもよいが、順波長分散性の液晶化合物である場合、光学フィルムの製造コストが低下すると共に、耐久性も向上する点で好ましい。
また、本発明の第2の態様に係る光学異方性層の作製方法は特に限定されず、上述した本発明の第1の態様に係る光学異方性層を作製する方法と同様の方法が挙げられる。
【0079】
本発明の光学異方性層の可視光領域の透過率はそれぞれ特に制限されないが、各種光学用途への適用の点から、60%以上が好ましく、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100%未満が挙げられる。
また、本発明の光学異方性層は、各種光学用途への適用の点から、二色性物質を実質的に含まないことが好ましい。二色性物質を実質的に含まないとは、二色性物質の含有量が、光学異方性層の全質量に対して、0.1質量%以下であることを意味し、0.05質量%以下が好ましい。下限は特に制限されないが、0質量%が挙げられる。
【0080】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、上述した本発明の光学異方性層を有する光学フィルムである。
また、本発明の光学フィルムは、上述した本発明の光学異方性層を第1光学異方性層として有し、第1光学異方性層とは異なる第2光学異方性層を有する光学フィルムであることが好ましい。
更に、本発明の光学フィルムは、他の層構成として、支持体や配向膜などを有していてもよい。
以下に、本発明の光学フィルムにおける任意の組成物構成である、第2光学異方性層、支持体、配向膜について詳細に説明する。
【0081】
〔第2光学異方性層〕
第2光学異方性層は、液晶化合物を用いて形成された層であってもよいし、それ以外の層であってもよい。
液晶化合物を用いて形成された層としては、所定の配向状態の液晶化合物を固定してなる層が挙げられる。液晶化合物が取り得る配向状態としては、例えば、捩れ配向、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、傾斜配向、および、ツイストハイブリッド配向が挙げられる。
上記液晶化合物を用いて形成された層以外の層としては、例えば、延伸樹脂フィルムが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、第2光学異方性層としては、ホモジニアス配向、ハイブリッド配向、または、傾斜配向した第2液晶化合物を固定してなる層、または、捩れ配向、またはツイストハイブリッド配向した第2液晶化合物を固定してなる層が好ましい。
【0082】
第2光学異方性層が捩れ配向した第2液晶化合物を固定してなる層である場合、第1光学異方性層中の第1液晶化合物の捩れ方向と、第2光学異方性層中の第2液晶化合物の捩れ方向とは、同じ方向であってもよいし、逆方向であってもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、第1光学異方性層中の第1液晶化合物の捩れ方向と、第2光学異方性層中の第2液晶化合物の捩れ方向とは、逆方向であることが好ましい。
【0083】
本明細書において、ホモジニアス配向とは、液晶化合物の分子軸(例えば、棒状液晶化合物の場合には長軸が該当)が光学異方性層表面に対して水平に、かつ、同一方位に配列している状態(光学的一軸性)をいう。
ここで、水平とは、厳密に水平であることを要求するものでなく、光学異方性層内の液晶化合物の平均分子軸が光学異方性層の表面とのなす傾斜角が5°未満の配向を意味するものとする。
また、同一方位とは、厳密に同一方位であることを要求するものでなく、面内の任意の20か所の位置で面内遅相軸の方位を測定したとき、20か所での面内遅相軸の方位のうちの遅相軸方位の最大差(20個の面内遅相軸方位のうち、差が最大となる2つの面内遅相軸方位の差)が5°未満であることを意味するものとする。
なお、液晶化合物がホモジニアス配向した場合、光学異方性層の一方の表面における20か所の面内遅相軸方位のいずれか1つと、他方の表面における20か所の面内遅相軸方位のいずれか1つの最大差が5°未満となる。
【0084】
第2光学異方性層の形成に用いられる第2液晶化合物としては、上述した本発明の第1の態様に係る液晶組成物において説明した棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物などが挙げられる。
第2液晶化合物は、順波長分散性の液晶化合物であっても、逆波長分散性の液晶化合物であってもよいが、第2液晶化合物が順波長分散性の液晶化合物である場合、光学フィルムの製造コストが低下すると共に、耐久性も向上する点で好ましい。
【0085】
〔支持体〕
支持体としては、透明支持体が好ましい。なお、透明支持体とは、可視光の透過率が60%以上である支持体を意図し、その透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0086】
支持体は、長尺状の支持体(長尺支持体)であってもよい。長尺支持体の長手方向の長さは特に制限されないが、10m以上の支持体が好ましく、生産性の点から、100m以上が好ましい。なお、長手方向の長さは特に制限されず、10000m以下の場合が多い。
長尺支持体の幅は特に制限されないが、150~3000mmの場合が多く、300~2000mmが好ましい。
【0087】
支持体の波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値(Rth(550))は特に制限されないが、-110~110nmが好ましく、-80~80nmがより好ましい。
支持体の波長550nmにおける面内のレタデーション値(Re(550))は特に制限されないが、0~50nmが好ましく、0~30nmがより好ましく、0~10nmがさらに好ましい。
【0088】
支持体を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、および、等方性などに優れるポリマーが好ましい。
支持体として用いることのできるポリマーフィルムとしては、例えば、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、および、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、並びに、脂環式構造を有するポリマーのフィルム(ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)))が挙げられる。
なかでも、ポリマーフィルムの材料としては、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、または、脂環式構造を有するポリマーが好ましい。
【0089】
支持体には、種々の添加剤(例えば、光学的異方性調整剤、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、および、剥離剤)が含まれていてもよい。
【0090】
支持体の厚みは特に制限されないが、10~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~90μmがさらに好ましい。
また、支持体は複数枚の積層からなっていてもよい。
支持体はその上に設けられる層との接着を改善するため、支持体の表面に表面処理(例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、および、火炎処理)を実施してもよい。
また、支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
支持体は、いわゆる仮支持体であってもよい。
【0091】
また、支持体の表面に直接ラビング処理を施してもよい。つまり、ラビング処理が施された支持体を用いてもよい。ラビング処理の方向は特に制限されず、液晶化合物を配向させたい方向に応じて、適宜、最適な方向が選択される。
ラビング処理は、LCD(liquid crystal display)の液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用できる。即ち、支持体の表面を、紙、ガーゼ、フェルト、ゴム、ナイロン繊維、または、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。
【0092】
〔配向膜〕
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、または、ラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で形成できる。
さらに、電場の付与、磁場の付与、または、光照射(好ましくは偏光)により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
【0093】
[円偏光板]
本発明の円偏光板は、上述した本発明の光学フィルムと偏光子とが積層されてなる円偏光板である。なかでも、第1光学異方性層、第2光学異方性層、および、偏光子の順に積層されている、円偏光板が好ましい。
偏光子は、自然光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であればよく、例えば、吸収型偏光子が挙げられる。
偏光子の種類は特に制限はなく、通常用いられている偏光子を利用でき、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、および、ポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
なお、偏光子の片面または両面には、保護膜が配置されていてもよい。
【0094】
円偏光板の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。
例えば、密着層を介して、光学フィルムおよび偏光子を貼り合わせる方法が挙げられる。
【0095】
[有機EL表示装置]
本発明の有機EL表示装置は、上述した本発明の円偏光板を有する有機EL表示装置である。
通常、円偏光板は、有機EL表示装置の有機EL表示パネル上に設けられる。例えば、有機EL表示装置は、少なくとも、有機EL表示パネルと、光学フィルムと、偏光子とを有する。
なお、有機EL表示装置は、偏光子上にさらに保護膜を有していてもよい。
【0096】
有機EL表示パネルは、陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物薄膜を形成した部材であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0097】
本発明の光学フィルムは、上述した有機EL表示装置以外の他の表示装置に適用してもよい。他の表示装置としては、液晶表示装置が挙げられる。
また、本発明の光学フィルムは、外光反射防止用途以外にも、他の用途にも適用してもよい。他の用途としては、液晶表示装置の光学補償層などが挙げられる。
なお、本発明の光学フィルムは、λ/2板およびλ/4板として種々の用途に適用することが可能である。
【実施例0098】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0099】
〔支持体の準備〕
特開2014-209219号公報の表1に記載の支持体5を、同様の手順に従って、作製し、支持体1とした。得られた支持体1のRth(550)は0nmであった。
【0100】
[実施例1]
特開2014-209219号公報の段落0116~0119の記載の手順に従って、上記で作製した支持体1のアルカリ鹸化処理と、配向膜の形成を行った。
【0101】
〔光学異方性層の形成〕
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対するラビング方向が-14°になるように調節した。
なお、ラビング方向の角度は、後述する光学異方性層Bが積層される面側から支持体を観察して、支持体の長手方向を基準の0°とし、反時計回り方向に正の角度値、時計回りに負の角度値をもって表す。
【0102】
次に、下記表1に示す棒状液晶化合物を含む液晶組成物(RLC(1))を上記作製した配向膜上に#3のワイヤーバーで塗布した。フィルムの搬送速度(V)は5m/minとした。その後、組成物中の溶媒の乾燥および棒状液晶化合物の配向熟成のために、得られた塗膜を80℃の温風で1.5分間加熱した。次に、窒素環境下にて、塗膜に対して75℃にて紫外線(UV)照射(500mJ/cm)を行い、棒状液晶化合物の配向を固定化して、光学異方性層RLC(1)を得た。
【0103】
[実施例2~14、比較例1~5]
光学異方性層の製造の際にラビング方向、および、液晶組成物を下記表1および表2のとおり変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、光学異方性層RLC(2)~(19)およびDLC(1)~(2)を製造した。
なお、光学異方性層RLC(19)、および、光学異方性層DLC(2)は、それぞれ、後述する実施例15および実施例22の第2光学異方性層として用いる光学異方性層である。
【0104】
下記表1および表2に、実施例および比較例で使用した液晶組成物の組成を示す。
なお、各液晶組成物は、溶媒として2-ブタノン(富士フイルム和光純薬製)を用いて固形分濃度を調整した。
下記表1および表2中の化合物1~17の構造を以下に示す。
【0105】
化合物1(以下、化合物の混合物に該当し、数値(%)は各化合物の混合物中における含有量(質量%)を表す。)
【化9】
【0106】
化合物2
【化10】
【0107】
化合物3
【化11】
【0108】
化合物4
【化12】
【0109】
化合物5
【化13】
【0110】
化合物6
【化14】
【0111】
化合物7
【化15】
【0112】
化合物8
【化16】
【0113】
化合物9
【化17】
【0114】
化合物10
【化18】
【0115】
化合物11
【化19】
【0116】
化合物12
FAAC-6(ユニマテック社製)2.5g、および、アクリル酸(富士フイルム和光純薬製)2.5gを通常のラジカル重合手法にて重合し、下記構造の化合物12を得た。
【化20】
【0117】
化合物13
【化21】
【0118】
化合物14
【化22】
【0119】
化合物15
【化23】
【0120】
化合物16
【化24】
【0121】
化合物17
【化25】
【0122】
[評価]
実施例1~14および比較例1~5の評価結果を下記表1および2に示す。
なお、作製した各光学異方性層の空気界面側のチルト角(上チルト角)、配向膜側のチルト角(下チルト角)、ツイスト角およびΔndは、Axometrics社のAxoScanを用いて測定を行った。
【0123】
<弾性定数>
光散乱法により各液晶組成物の75℃における弾性定数を測定し、以下の指標により弾性定数を評価した。
2:K11/K33が1以上である。
1:K11/K33が1未満である。
【0124】
<線型性>
各光学異方性層について、Axometrics社のAxoScanを用いて、550nm、方位角0~180°、極角-40~40°の条件にて光学測定を行った。
まず、各角度における光学異方性層の位相差を最も説明できるよう、チルト角の線型性を表すフィッティングパラメーターaを決定した。
具体的には、Axoscanで実測したミュラーマトリクスを目標関数として、各変数を変化させて、入力した光学構造から偏光光学計算によって求めたミュラーマトリクスと実測のミュラーマトリッスの誤差が最小となるように最適化を行い、下記式で表されるフィッティングパラメーターaを決定し、以下の指標により線形性を評価した。
(式)
θ=θ2+(θ1-θ2)×(a*z+(1-a)*z
θ:位置zにおけるチルト角
z:下界面からの位置(下界面を0、上界面を1とする)
θ1:上界面におけるチルト角
θ2:下界面におけるチルト角
(指標)
4:aがいずれも0.75以上1.25未満である
3:aがいずれも0.50以上1.50未満であり、「4」に該当しない。
2:aがいずれも0.25以上1.75未満であり、「4」および「3」に該当しない。
1:「4」、「3」および「2」に該当しない。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
上記表1および表2に示す結果から、化合物Iまたは化合物IIに相当する化合物を配合せず、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11がベンドの弾性定数K33よりも小さい場合には、チルト角の変量の線型性が劣ることが分かった(比較例1~5)。
これに対し、化合物Iまたは化合物IIに相当する化合物を配合した場合には、チルト角の変量の線形性が高くなることが分かった(実施例1~13)。特に、実施例1と実施例9との対比から、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい場合には、チルト角の変量の線形性がより高くなることが分かった。
また、化合物Iまたは化合物IIに相当する化合物を配合せずとも、液晶組成物のスプレイの弾性定数K11が、ベンドの弾性定数K33よりも大きい場合には、チルト角の変量の線形性が高くなることが分かった(実施例14)。
【0128】
[実施例15]
〔偏光子の作製〕
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色した。
次に、得られたフィルムをホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
【0129】
〔偏光子保護フィルムの作製〕
市販のセルロースアシレート系フィルム「TD80UL」(富士フイルム株式会社製)を準備し、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。
その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に得られたフィルムを1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。
最後に、得られたフィルムを120℃で十分に乾燥させて、表面を鹸化処理した偏光子保護フィルムを作製した。
【0130】
〔円偏光板の作製〕
<光学フィルムの作製>
上述した方法により作製した光学異方性層RLC(19)にラビング処理を施すことなく、上記表1に示す液晶組成物(RLC(1))を、光学異方性層RLC(19)上に#3のワイヤーバーで塗布した。フィルムの搬送速度(V)は5m/minとした。その後、組成物中の溶媒の乾燥および液晶化合物の配向熟成のために、得られた塗膜を110℃の温風で2分間加熱した。次に、窒素環境下にて、塗膜に対して80℃にてUV照射(500mJ/cm)を行い、液晶化合物の配向を固定化して、光学異方性層RLC(1)を形成し、光学フィルムを作製した。なお、光学異方性層RLC(1)の光学異方性層RLC(19)側の表面の面内遅相軸は、光学異方性層RLC(19)の光学異方性層RLC(1)側の表面の面内遅相軸と平行であった。
作製した光学フィルムの支持体の露出表面上に、上述した偏光子および偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合せ、長尺状の円偏光板(P-1)を作製した。
つまり、円偏光板(P-1)は、偏光子保護フィルム、偏光子、支持体、光学異方性層RLC(19)、および、光学異方性層RLC(1)をこの順で有していた。
【0131】
[実施例16~22および比較例6~8]
光学フィルムを下記表3のとおり変更した以外は、実施例15と同様の手順に従って、円偏光板(P-2)~(P-11)を製造した。
【0132】
[実施例23および比較例9]
下記表4に示す液晶組成物(RLC(20)およびRLC(21))を用いて、光学異方性層1および光学異方性層2を一回の塗布で一括製造した。
具体的には、実施例1と同様のラビング支持体上に液晶組成物を塗布し、80℃で60秒間加熱した。この加熱により組成物層の棒状液晶化合物が所定の方向に配向した。
その後、酸素を含む空気下、30℃にて、365nmのLEDランプ(アクロエッジ(株)製)使用して紫外線照射した(70mJ/cm)。
次いで、得られた組成物層を80℃で10秒間加熱した。その後、窒素パージを行って、酸素濃度100体積ppmとして、80℃にて、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を使用して紫外線照射し(500mJ/cm)、液晶化合物の配向状態を固定した光学異方性層を形成した。
【0133】
[実施例24および比較例10]
光学フィルムを下記表5のとおり変更した以外は、実施例15と同様の手順に従って、円偏光板(P-12)および(P-13)を製造した。
【0134】
[評価]
<有機EL表示装置への実装および表示性能の評価>
(表示装置への実装)
有機EL表示パネル搭載のSAMSUNG社製GALAXY SIIを分解し、円偏光板を剥離して、そこに実施例15~22および24、ならびに、比較例6~8および10で作製した円偏光板を、偏光子保護フィルムが外側に配置されるように、表示装置に貼り合せた。
【0135】
作製した有機EL表示装置について、斜め方向からの黒色の色味づきを評価した。表示装置に黒表示をして、極角60度より観察し、下記の基準で評価した。結果は下記表3および表5にまとめて示す。
4:正面と比較しても色味づきが全く視認されない。(許容)
3:正面と比較して色味づきが視認されるものの、ごくわずか。(許容)
2:正面と比較して色味づきがわずかに視認される。(許容)
1:正面と比較して色味づきが視認され、反射光も多く、許容できない。
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
上記表3および表5に示すように、実施例で作製した円偏光板を有機EL表示装置に用いた場合、正面方向および斜め方向における色味変化を抑制することができることが分かった(実施例15~22および24)。
なお、上記実施例では、右捩れ構造を形成する液晶化合物を用いて第1光学異方性層を製造したが、左捩れ構造を形成する液晶化合物を用いた場合も、上述したように偏光子の吸収軸、第1光学異方性層の面内遅相軸、および、第2光学異方性層の面内遅相軸との関係を調整することにより、所望の特性を示す円偏光板を形成することができた。
【符号の説明】
【0140】
10 光学異方性層
10A 光学異方性層の一方の表面
10B 光学異方性層の他方の表面
LC 液晶化合物
LCxy 液晶化合物の光学異方性層主面に対する射影成分
図1
図2
図3