(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099713
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220628BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20220628BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/00 M
B23K26/064 K
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213677
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 匠悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA01
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB15
4E168CB23
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4E168DA03
4E168DA04
4E168EA11
4E168EA17
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
4E168KA15
5F063AA15
5F063AA28
5F063AA41
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5F063BA33
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5F063CB07
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5F063DD32
5F063DE01
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE33
5F063FF01
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】光学部品の汚染を抑制しつつ、容易にトラブルを原因究明することができるレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザー加工装置は、レーザー発振器22と、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21を集光する集光器23と、外部から遮断された箱24の内部に配設され、レーザービーム21をレーザー発振器22から集光器23へと導く光学部品25と、を備え、箱24の内部で生じたレーザービーム21の散乱光211を受光可能な位置に一端側が配置された第一の光ファイバー32と、箱24の内部と外部とを連通するように箱24に形成されかつ第一の光ファイバー32の他端側に箱24の内部側で接続され、受光した光を検知する光検知ユニット30に接続される第二の光ファイバー33に箱24の外部側で着脱自在に接続される隔壁コネクタ31と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
レーザー発振器と、
該レーザー発振器から発振されたレーザービームを集光する集光器と、
外部から遮断された箱の内部に配設され、該レーザービームを該レーザー発振器から該集光器へと導く光学部品と、
該チャックテーブルに保持された被加工物と該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、
を備えるレーザー加工装置であって、
該箱の内部で生じたレーザービームの散乱光を受光可能な位置に一端側が配置された第一の光ファイバーと、
該箱の内部と外部とを連通するように該箱に形成されかつ該第一の光ファイバーの他端側に該箱の内部側で接続され、受光した光を検知する光検知ユニットに接続される第二の光ファイバーに該箱の外部側で着脱自在に接続される隔壁コネクタと、
を有する、レーザー加工装置。
【請求項2】
該散乱光を該第一の光ファイバーの該一端側の端面に向けて集光する集光レンズを更に有する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該隔壁コネクタと、該隔壁コネクタに接続された該第一の光ファイバーとは、複数設けられ、
該第二の光ファイバーは、複数の該隔壁コネクタのいずれかに変更可能に接続される、
請求項1または2に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を分割してチップ化するために、被加工物の表面に設定されたストリート(分割予定ライン)に沿ってレーザービームを照射するレーザー加工装置が用いられる(特許文献1参照)。このようなレーザー加工装置は、レーザー発振器から発振したレーザービームを複数の光学部品を用いて集光レンズへと導き、被加工物に集光照射することで加工を行っている。これらの光学部品は、パーティクル等の付着による汚染で、加工点における出力低下やビーム形状の歪み等が起こらないように、外部から隔離された箱の内部に配設されるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、箱の内部には、光学部品の他にも、トラブルの原因究明のために、レーザービームの散乱光を受光することによってパルス波形の取得やパーティクルの検知が可能な測定器が配置されている場合がある。このような測定器を備えるレーザー加工装置では、測定器自体からアウトガスが生じたり、校正等の定期交換の際に箱を開けるため内部にパーティクルが侵入したりして、測定器が光学部品の汚染源となってしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部品の汚染を抑制しつつ、容易にトラブルを原因究明することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、レーザー発振器と、該レーザー発振器から発振されたレーザービームを集光する集光器と、外部から遮断された箱の内部に配設され、該レーザービームを該レーザー発振器から該集光器へと導く光学部品と、該チャックテーブルに保持された被加工物と該レーザービームの集光点とを相対的に移動させる移動ユニットと、を備えるレーザー加工装置であって、該箱の内部で生じたレーザービームの散乱光を受光可能な位置に一端側が配置された第一の光ファイバーと、該箱の内部と外部とを連通するように該箱に形成され、かつ該第一の光ファイバーの他端側に該箱の内部側で接続され、受光した光を検知する光検知ユニットに接続される第二の光ファイバーに該箱の外部側で着脱自在に接続される隔壁コネクタと、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のレーザー加工装置において、該散乱光を該第一の光ファイバーの該一端側の端面に向けて集光する集光レンズを更に有してもよい。
【0008】
また、本発明のレーザー加工装置において、該隔壁コネクタと、該隔壁コネクタに接続された該第一の光ファイバーとは、複数設けられ、該第二の光ファイバーは、複数の該隔壁コネクタのいずれかに変更可能に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、光学部品の汚染を抑制しつつ、容易にトラブルを原因究明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置のレーザービーム照射ユニットの概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
まず、本発明の実施形態に係るレーザー加工装置1の構成について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置1の構成例を示す斜視図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。
【0013】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、X軸方向移動ユニット40と、Y軸方向移動ユニット50と、Z軸方向移動ユニット60と、撮像ユニット70と、表示ユニット80と、制御ユニット90と、を備える。実施形態に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、レーザービーム照射ユニット20によってレーザービーム21を照射することにより、被加工物100を加工する装置である。レーザー加工装置1による被加工物100の加工は、例えば、ステルスダイシングによって被加工物100の内部に改質層を形成する改質層形成加工、被加工物100の表面に溝を形成する溝加工、または分割予定ラインに沿って被加工物100を切断する切断加工等である。
【0014】
被加工物100は、実施形態において、シリコン(Si)、サファイア(Al2O3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板とする円板状の半導体デバイスウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。なお、被加工物100は実施形態に限定されず、本発明では円板状でなくともよい。被加工物100は、例えば、環状フレーム110が貼着されかつ被加工物100の外径よりも大径なテープ111が被加工物100の裏面に貼着されて、環状フレーム110の開口内に支持される。
【0015】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。チャックテーブル10は、保持面11上に載置された被加工物100を吸引保持する。チャックテーブル10の周囲には、被加工物100を支持する環状フレーム110を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0016】
チャックテーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13は、X軸方向移動プレート14に支持される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14を介して、X軸方向移動ユニット40によりX軸方向に移動される。回転ユニット13およびチャックテーブル10は、X軸方向移動プレート14、X軸方向移動ユニット40およびY軸方向移動プレート15を介して、Y軸方向移動ユニット50によりY軸方向に移動される。
【0017】
レーザービーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対してパルス状のレーザービーム21を照射するユニットである。レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光器23(
図2参照)は、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置されるZ軸方向移動ユニット60に支持される。レーザービーム照射ユニット20の詳細な構成については、後述にて説明する。
【0018】
X軸方向移動ユニット40は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。X軸方向移動ユニット40は、実施形態において、チャックテーブル10をX軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット40は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0019】
X軸方向移動ユニット40は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。X軸方向移動ユニット40は、周知のボールねじ41と、周知のパルスモータ42と、周知のガイドレール43と、を含む。ボールねじ41は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ42は、ボールねじ41を軸心回りに回転させる。ガイドレール43は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール43は、Y軸方向移動プレート15に固定して設けられる。
【0020】
Y軸方向移動ユニット50は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。Y軸方向移動ユニット50は、実施形態において、チャックテーブル10をY軸方向に移動させる。Y軸方向移動ユニット50は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。
【0021】
Y軸方向移動ユニット50は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。Y軸方向移動ユニット50は、周知のボールねじ51と、周知のパルスモータ52と、周知のガイドレール53と、を含む。ボールねじ51は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ52は、ボールねじ51を軸心回りに回転させる。ガイドレール53は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール53は、装置本体2に固定して設けられる。
【0022】
Z軸方向移動ユニット60は、集光器23(
図2参照)によって集光されたレーザービーム21の集光点を、チャックテーブル10の保持面11に垂直な光軸方向に移動させるユニットである。より詳しくは、Z軸方向移動ユニット60は、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20とを集光点位置調整方向であるZ軸方向に相対的に移動させる。Z軸方向移動ユニット60は、実施形態において、レーザービーム照射ユニット20をZ軸方向に移動させる。Z軸方向移動ユニット60は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置されている。
【0023】
Z軸方向移動ユニット60は、レーザービーム照射ユニット20のうち少なくとも集光器23(
図2参照)をZ軸方向に移動自在に支持する。Z軸方向移動ユニット60は、周知のボールねじ61と、周知のパルスモータ62と、周知のガイドレール63と、を含む。ボールねじ61は、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータ62は、ボールねじ61を軸心回りに回転させる。ガイドレール63は、レーザービーム照射ユニット20をZ軸方向に移動自在に支持する。ガイドレール63は、柱3に固定して設けられる。
【0024】
すなわち、X軸方向移動ユニット40、Y軸方向移動ユニット50、およびZ軸方向移動ユニット60は、チャックテーブル10に保持された被加工物100とレーザービーム21の集光点とを相対的に移動させる移動ユニットである。
【0025】
撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像する。撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラまたは赤外線カメラを含む。撮像ユニット70は、例えば、レーザービーム照射ユニット20の集光器23(
図2参照)に隣接するように固定されている。撮像ユニット70は、被加工物100を撮像して、被加工物100とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット90に出力する。
【0026】
表示ユニット80は、液晶表示装置等により構成される表示部である。表示ユニット80は、例えば、加工条件の設定画面、撮像ユニット70が撮像した被加工物100の状態、加工動作の状態等を、表示面に表示させる。表示ユニット80の表示面がタッチパネルを含む場合、表示ユニット80は、入力部を含んでもよい。入力部は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力部は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。表示ユニット80は、表示面に表示される情報や画像が入力部等からの操作により切り換えられる。表示ユニット80は、報知部を含んでもよい。報知部は、音および光の少なくとも一方を発してレーザー加工装置1のオペレータに予め定められた報知情報を報知する。報知部は、スピーカーまたは発光装置等の外部報知装置であってもよい。
【0027】
制御ユニット90は、レーザー加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物100に対する加工動作をレーザー加工装置1に実行させる。制御ユニット90は、レーザービーム照射ユニット20、X軸方向移動ユニット40、Y軸方向移動ユニット50、Z軸方向移動ユニット60、撮像ユニット70、および表示ユニット80を制御する。制御ユニット90は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザー加工装置1の制御を行う。
【0028】
制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70に被加工物100を撮像させる。制御ユニット90は、例えば、撮像ユニット70によって撮像した画像の画像処理を行う。制御ユニット90は、例えば、画像処理によって被加工物100の加工ラインを検出する。制御ユニット90は、例えば、レーザービーム21の集光点である加工点が加工ラインに沿って移動するようにX軸方向移動ユニット40を駆動させると共に、レーザービーム照射ユニット20にレーザービーム21を照射させる。制御ユニット90は、例えば、後述の出力測定ユニット26によるレーザービーム21の出力の測定データを取得する。制御ユニット90は、例えば、後述の光検知ユニット30から、レーザービーム21の散乱光211のパルス波形を含む受光データを取得する。制御ユニット90は、例えば、光検知ユニット30から取得した受光データに基づいて、パーティクルを検知してもよい。
【0029】
次に、レーザービーム照射ユニット20について、詳細に説明する。
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置1のレーザービーム照射ユニット20の概略構成を模式的に示す模式図である。なお、
図2の矢印は、加工送り時のチャックテーブル10の移動方向を示す。
図2に示すように、レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振器22と、集光器23と、箱24と、光学部品25と、出力測定ユニット26と、隔壁コネクタ31と、第一の光ファイバー32と、集光器34と、光検知ユニット35と、第三の光ファイバー36と、を含む。
【0030】
レーザー発振器22は、被加工物100を加工するための所定の波長を有するレーザービーム21を発振する。レーザービーム照射ユニット20が照射するレーザービーム21は、被加工物100に対して透過性または吸収性を有する波長である。
【0031】
集光器23は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21を、チャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物100に集光して、被加工物100に照射させる。集光器23は、実施形態において、光学部品25(ミラー)に導かれたレーザービーム21を、被加工物100に集光する。レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光器23は、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置されるZ軸方向移動ユニット60に支持される(
図1参照)。
【0032】
箱24は、内側が密封されて外部から遮断された箱状に形成されている。箱24は、実施形態において、光学部品25と、出力測定ユニット26と、第一の光ファイバー32と、集光器34と、を収容している。箱24の内部と外部とを隔てる壁には、隔壁コネクタ31が形成されている。
【0033】
光学部品25は、箱24の内部に配設される。光学部品25は、レーザー発振器22と集光器23との間のレーザービーム21の光路上に設けられる。光学部品25は、レーザー発振器22が発振したレーザービーム21をレーザー発振器22から集光器23へと導く。光学部品25は、本発明では少なくとも一つの光学部品25を含み、実施形態では複数の光学部品25-1、25-2、25-3、25-4、25-5を含む。実施形態において、複数の光学部品25-1、25-2、25-3、25-4、25-5は、レーザービーム21を反射するミラーを含む。
【0034】
例えば、レーザー発振器22から発振されるレーザービーム21がUV(紫外線)の場合、ミラーには、UVを反射する反射膜が形成される。ミラーに形成された反射膜は、レーザービーム21のほとんどを反射するが、レーザービーム21の数%程度を反射せずに透過する。また、レーザー発振器22から発振されるレーザービーム21は、UVであっても、IR(赤外線)やグリーン等の波長の光が混在している場合がある。この場合、ミラーは、UV以外のIRやグリーン等のレーザービーム21を反射せずに透過する。
【0035】
出力測定ユニット26は、光学部品25のミラーで反射されずに透過したレーザービーム21の漏れ光の出力を測定する。出力測定ユニット26は、実施形態において、光学部品25-1を透過したレーザービーム21の漏れ光の出力を測定する出力測定ユニット26-1と、光学部品25-5を透過したレーザービーム21の漏れ光の出力を測定する出力測定ユニット26-2と、を含む。
【0036】
出力測定ユニット26は、例えば、位置検出素子(PSD:Position Sensing Device)を含んでもよいし、サーモパイルパワーメータまたはフォトディテクタパワーメータ等であってもよい。PSDは、光が入射することによって流れる電流の電流値を測定する。例えば、制御ユニット90は、PSDによって測定された電流値に基づいて、レーザービーム21の漏れ光の出力に換算してもよい。出力測定ユニット26がPSDを含む場合、光量を均等に吸収するND(Neutral Density)フィルタを介してレーザービーム21の漏れ光を受光してもよい。出力測定ユニット26は、例えば、一定時間間隔毎に測定結果を制御ユニット90へ出力する。
【0037】
出力測定ユニット26の前方に、波長選択フィルタが設けられていてもよい。波長選択フィルタは、加工に使用する波長のレーザービーム21のみを透過するフィルタである。例えば、レーザー発振器22から発振されるレーザービーム21がUVの場合、波長選択フィルタは、UVのみを透過させる。波長選択フィルタは、例えば、バンドパスフィルタ、ダイクロイックフィルタ、ロングパスフィルタおよびショートパスフィルタのいずれか、またはこれらを組み合わせた構成のフィルタである。バンドパスフィルタは、特定の波長を任意に選択して透過させるフィルタである。ダイクロイックフィルタは、特定の波長領域の光を反射し、残りの波長領域の光を透過させるフィルタである。ロングパスフィルタは、所定の波長より長い波長の光を透過させるフィルタである。ショートパスフィルタは、所定の波長より短い波長の光を透過させるフィルタである。
【0038】
隔壁コネクタ31は、箱24の内部と外部とを連通するように箱24に形成される。隔壁コネクタ31が配置された箱24の孔と隔壁コネクタ31との間は、Oリングで箱24の内部を密封している。隔壁コネクタ31は、例えば、外気を完全に遮断する気密封止構造を有するハーメチック同軸コネクタである。ハーメチック同軸コネクタは、中のピンとハウジングとの隙間が低融点ガラス等で密封されているので、箱24の内部の気圧が大気圧と違う状態(例えば、正圧や真空)でも耐えることが可能である。これにより、隔壁コネクタ31からパーティクル等が侵入することを抑制できる。
【0039】
隔壁コネクタ31は、箱24の内部側に配置される第一の光ファイバー32と、箱24の外部側に配置される光検知ユニット30に接続される第二の光ファイバー33と、を接続する。隔壁コネクタ31は、箱24の内部側で、一端側が箱24の内部の所定の位置に配置される第一の光ファイバー32の他端側が接続される。隔壁コネクタ31は、箱24の外部側で、光検知ユニット30に一端側が接続される第二の光ファイバー33の他端側が着脱自在に接続される。
【0040】
第一の光ファイバー32は、箱24の内部に配置される。第一の光ファイバー32は、箱24の内部で生じたレーザービーム21の散乱光211を受光可能な位置に一端側が配置される。第一の光ファイバー32は、一端側の端面で、レーザービーム21の散乱光211を受光する。第一の光ファイバー32は、箱24の内部側の隔壁コネクタ31に他端側が接続される。
【0041】
隔壁コネクタ31は、実施形態において、複数の隔壁コネクタ31-1、31-2を含む。第一の光ファイバー32は、実施形態において、複数の隔壁コネクタ31-1、31-2にそれぞれ対応して他端側が接続される複数の第一の光ファイバー32-1、32-2を含む。第一の光ファイバー32-1は、例えば、出力測定ユニット26による散乱光211を受光する。第一の光ファイバー32-2は、例えば、光学部品25による散乱光211を受光する。
【0042】
光検知ユニット30は、受光した光を検知する。光検知ユニット30は、箱24の外部に配置される。光検知ユニット30には、第二の光ファイバー33の一端側が接続される。光検知ユニット30は、実施形態において、受光したレーザービーム21の散乱光211の受光量により変化する電圧値を制御ユニット90に出力するフォトダイオードである。光検知ユニット30が出力する電圧値は、レーザービーム21の散乱光211の受光量が多くなると高くなり、受光量が少なくなると低くなる。なお、光検知ユニット30は、実施形態のフォトダイオードに限定されずに、本発明では、例えば、CCD撮像素子またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子等の撮像素子を備えた撮像ユニットでもよい。CCD撮像素子またはCMOS撮像素子を使用することで、散乱光211の散乱状態の変化からレーザービーム21のポインティングの変化等を検知できる。また、光検知ユニット30は、分光器でもよい。光検知ユニット30が分光器である場合、散乱光211の波長成分の変化から迷光の増加等のレーザービーム照射ユニット20の異常を検知できる。
【0043】
第二の光ファイバー33は、箱24の外部に配置される。第二の光ファイバー33は、光検知ユニット30に一端側が接続される。第二の光ファイバー33は、箱24の外部側の隔壁コネクタ31に他端側が着脱自在に接続可能である。第二の光ファイバー33は、他端側が、複数の隔壁コネクタ31-1、31-2のいずれかに変更可能に接続される。
【0044】
光検知ユニット30は、第二の光ファイバー33、隔壁コネクタ31および第一の光ファイバー32を介して、第一の光ファイバー32が受光したレーザービーム21の散乱光211を検知する。すなわち、光検知ユニット30は、第二の光ファイバー33が、隔壁コネクタ31を介して第一の光ファイバー32に接続されることで、箱24の内部の散乱光211を箱24の外部で検知することができる。第二の光ファイバー33が隔壁コネクタ31-1に接続される場合、光検知ユニット30は、第一の光ファイバー32-1が受光したレーザービーム21の散乱光211を検知する。第二の光ファイバー33が隔壁コネクタ31-2に接続される場合、光検知ユニット30は、第一の光ファイバー32-2が受光したレーザービーム21の散乱光211を検知する。
【0045】
集光器34は、レーザービーム21の散乱光211を、第一の光ファイバー32の一端側の端面に向けて集光する。集光器34は、箱24の内部側において、第一の光ファイバー32の一端側の近傍に設けられる。集光器34は、実施形態において、レーザービーム21の散乱光211を、第一の光ファイバー32-1の一端側の端面に向けて集光する集光器34-1と、レーザービーム21の散乱光211を、第一の光ファイバー32-2の一端側の端面に向けて集光する集光器34-2と、を含む。なお、集光器34は、レーザービーム21の散乱光211の強度が高い場合、設けられなくてもよい。
【0046】
光検知ユニット35は、箱24の外部に配置される。光検知ユニット30には、第三の光ファイバー36の一端側が接続される。光検知ユニット35は、第三の光ファイバー36を介して、第三の光ファイバー36が受光したレーザービーム21の散乱光211を検知する。光検知ユニット35は、実施形態において、光検知ユニット30と同様に、受光したレーザービーム21の散乱光211の受光量により変化する電圧値を制御ユニット90に出力するフォトダイオードである。なお、光検知ユニット35は、実施形態のフォトダイオードに限定されずに、本発明では、例えば、CCD撮像素子またはCMOS撮像素子等の撮像素子を備えた撮像ユニットでもよい。光検知ユニット35が出力する電圧値は、レーザービーム21の散乱光211の受光量が多くなると高くなり、受光量が少なくなると低くなる。
【0047】
第三の光ファイバー36は、箱24の外部に配置される。第三の光ファイバー36は、箱24の外部で生じたレーザービーム21の散乱光211を受光可能な位置に一端側が配置される。より詳しくは、第三の光ファイバー36は、被加工物100の加工点の近傍で生じたレーザービーム21の散乱光211を受光可能な位置に一端側が配置される。第三の光ファイバー36は、一端側の端面で、レーザービーム21の散乱光211を受光する。第三の光ファイバー36は、光検知ユニット35に他端側が接続される。
【0048】
以上説明したように、実施形態に係るレーザー加工装置1は、箱24の内部におけるレーザービーム21の散乱光211を受光する第一の光ファイバー32を箱24の内部に配置し、隔壁コネクタ31および第二の光ファイバー33を介して検知する光検知ユニット30を箱24の外部に配置している。すなわち、箱24の内部を密封した状態で、箱24の内部におけるレーザービーム21の散乱光211を箱24の外部で検知することができるので、測定のために光検知ユニット30を箱24の内部に入れる必要がない。
【0049】
したがって、レーザー加工装置1の校正等の定期交換の際に箱24を開けないので、箱24の内部への大気の流入と共にパーティクルが侵入したり、光検知ユニット30自体からのアウトガスが箱24の内部へ侵入したりすることを防止することができる。これにより、パーティクル等の付着による光学部品25の汚染リスクを低減できるので、光学部品25の汚染に起因する、加工点における出力低下やビーム形状の歪み等を抑制することができる。
【0050】
また、隔壁コネクタ31の外部側に第二の光ファイバー33の他端側を接続することによって、光検知ユニット30で第一の光ファイバー32が受光したレーザービーム21の散乱光211を検知できるので、光学部品の汚染を抑制しつつ、容易にトラブルを原因究明することができる。
【0051】
更に、実施形態では、隔壁コネクタ31と第一の光ファイバー32とを複数配置して、箱24の外部から光検知ユニット30に接続された第二の光ファイバーをいずれかの隔壁コネクタ31に差し替えることができる。これにより、高額な光検知ユニット30を複数用意することなく、複数箇所のレーザービーム21の散乱光211のパルス波形の取得が可能である。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、光検知ユニット30および第二の光ファイバー33は、レーザー加工装置1に付属する専用のものであってもよい。
【0053】
また、例えば、出力測定ユニット26によってレーザービーム21の出力を測定する代わりに、光検知ユニット30を利用してレーザービーム21の出力を測定してもよい。光検知ユニット30を利用する場合は、光検知ユニット30が受光するレーザービーム21の光量と出力との相関関係を予め取得しておき、光検知ユニット30が受光した光量に基づいてレーザービーム21の出力を特定する。レーザービーム21の出力測定の所要時間は、サーモパイルパワーメータの場合に数secであるのに対し、光検知ユニット30のフォトダイオードの場合に数msecである。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
211 散乱光
22 レーザー発振器
23 集光器
24 箱
25、25-1、25-2、25-3、25-4、25-5 光学部品
26、26-1、26-2 出力測定ユニット
30 光検知ユニット
31、31-1、31-2 隔壁コネクタ
32、32-1、32-2 第一の光ファイバー
33 第二の光ファイバー
34、34-1、34-2 集光器
35 光検知ユニット
36 第三の光ファイバー
100 被加工物