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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099828
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/47 20190101AFI20220628BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20220628BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20220628BHJP
   B29B 7/74 20060101ALI20220628BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20220628BHJP
【FI】
B29C48/47
C08J3/215 CFD
B29B7/48
B29B7/74
B29C48/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213848
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊佑
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓朗
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB24
4F070AC04
4F070AE04
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC06
4F201AA25
4F201AB18
4F201BA01
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK40
4F201BK47
4F207AA25
4F207AB18
4F207AR09
4F207AR12
4F207KA01
4F207KK13
4F207KK34
(57)【要約】
【課題】カーボンブラックを良好に分散させることが可能な熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ニーディングディスクが装着された一対のスクリューをバレル内に有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する工程を含む、熱可塑性樹脂の製造方法であって、ニーディングディスクの先端部と、バレルの内壁における、ニーディングディスクの先端部の対向位置との距離の最大値が1.0~5.0mmである熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニーディングディスクが装着された一対のスクリューをバレル内に有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する工程を含む、熱可塑性樹脂の製造方法であって、
前記ニーディングディスクの先端部と、前記バレルの内壁における、前記ニーディングディスクの先端部の対向位置との距離の最大値が1.0~5.0mmである、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記二軸押出機のスクリュー回転数が250~600rpmであり、前記バレルの内径が40~85mmである、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記カーボンブラックの一次粒子径が10~60nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂と前記カーボンブラックとを溶融混練する工程の前に、前記熱可塑性樹脂と前記カーボンブラックとを予備混練する工程をさらに含み、
前記予備混練する工程において、厚さが0.05D~0.3Dのニーディングディスクを0.5D~5.0Dの長さとなるように装着された一対のスクリューを用いて前記熱可塑性樹脂と前記カーボンブラックとを溶融混練する、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックを含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、成形性、機械特性、又は耐候性等の性能に優れることから、射出成形用途を中心として、各種自動車部品、電気・電子部品などの用途に広く使用されている。一般に、熱可塑性樹脂において上記のような性能を更に向上させたり、熱可塑性樹脂の短所を補ったりするため、種々の添加剤を添加して樹脂組成物として用いられる。例えば、熱可塑性樹脂組成物を黒色に着色するには、カーボンブラックを添加するのが一般的である。一例として、熱可塑性樹脂のペレット又は粉末に、カーボンブラックを配合し、押出機により溶融混練してストランド状に押出したものを切断してペレット状にする態様が挙げられる。
【0003】
カーボンブラックを用いて熱可塑性樹脂組成物を黒色に着色する場合、熱可塑性樹脂との溶融混練時にカーボンブラックの分散不良が発生し、それに由来する凝集塊が問題となる。カーボンブラックの一次粒径を大きくすると分散不良による問題は起こりにくくなるが成形品の機械物性及び漆黒度が低下するという別の問題が発生する。また、漆黒度の低下を抑えるため、カーボンブラックの添加量を増加すると、熱可塑性樹脂組成物の物性に悪影響を及ぼしたり、絶縁性が低下したりする問題が発生する。
【0004】
以上のことから、成形品の機械強度、絶縁性を維持するため小粒径のカーボンブラックを使用することが好ましい。しかし、上記の通り、一次粒子径の小さなカーボンブラックを溶融混練する場合、カーボンブラックの分散不良による凝集塊の発生を抑制する必要がある。そこで、特許文献1には、一次粒子径が70~200nmのカーボンブラックを最大粒子径50μm以下で分散させることで、カーボンブラックの凝集塊を抑えた熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5206903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、カーボンブラックを分散させるに際し、二軸押出機の原料投入位置から吐出位置までの全長(L)に対し、熱可塑性樹脂及びカーボンブラックの原料投入位置から3L/10までの間の熱可塑性樹脂組成物の滞留時間(初期滞留時間)を所定時間としたり、混練部において複数枚のニーディングディスクを設置したりするなどしている。しかし、一次粒子径が小さく凝集し易いカーボンブラックの分散に対しては、満足できる結果が得られているとは言い難い。また、特許文献1には、ニーディングディスクの先端とバレルの内壁との距離を大きくして溶融混練することについては記載されていない。
【0007】
本発明は、カーボンブラックを良好に分散させることが可能な熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)ニーディングディスクが装着された一対のスクリューをバレル内に有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する工程を含む、熱可塑性樹脂の製造方法であって、
前記ニーディングディスクの先端部と、前記バレルの内壁における、前記ニーディングディスクの先端部の対向位置との距離の最大値が1.0~5.0mmである、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0009】
(2)前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂である、前記(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0010】
(3)前記二軸押出機のスクリュー回転数が250~600rpmであり、前記バレルの内径が40~85mmである、前記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0011】
(4)前記カーボンブラックの一次粒子径が10~60nmである、前記(1)~(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【0012】
(5)前記熱可塑性樹脂と前記カーボンブラックとを溶融混練する工程の前に、前記熱可塑性樹脂と前記カーボンブラックとを予備混練する工程をさらに含み、
前記予備混練する工程において、厚さが0.05D~0.3Dのニーディングディスクを0.5D~5.0Dの長さとなるように装着された一対のスクリューを用いて前記熱可塑性樹脂と前記カーボンブラックとを溶融混練する、前記(1)~(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カーボンブラックを良好に分散させることが可能な熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において用いる二軸押出機の構成を示す概念図である。
図2】バレル内におけるニーディングディスク(2条)の配置態様の一例を示す部分断面図である。
図3】バレル内におけるニーディングディスク(偏心3条)の配置態様の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、ニーディングディスクが装着された一対のスクリューをバレル内に有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する工程を含む、熱可塑性樹脂の製造方法である。そして、ニーディングディスクの先端部と、バレルの内壁における、ニーディングディスクの先端部の対向位置との距離の最大値が1.0~5.0mmであることを特徴としている。
【0016】
二軸押出機に熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを投入して溶融混練することでカーボンブラックを分散させる場合、二軸押出機への投入当初のカーボンブラックはミリメートルオーダーに凝集している。漆黒度を高めるには、分散に際し、そのような凝集したカーボンブラックを解砕してマイクロメートルオーダーの粒子とすることが望まれる。ところが、カーボンブラックは特に一次粒子径が小さいほど強く凝集しており解砕するのが困難である。
二軸押出機を用いて熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する際にカーボンブラックを細かく解砕しようとする場合、凝集塊の残存を低減するには、カーボンブラック全体に満遍なく剪断応力を付与することが望まれる。そこで、本実施形態においては、二軸押出機において、ニーディングディスクの先端部と、バレルの内壁における、ニーディングディスクの先端部の対向位置との距離の最大値を所定の範囲としている。すなわち、本実施形態においては、ニーディングディスクの先端部と、当該先端部の対向位置にあるバレルの内壁との間隙がより広く設定されているため、溶融混練時に熱可塑性樹脂とカーボンブラックとの混合物の当該間隙を通過する量が増大する。その結果、カーボンブラックの凝集塊を解砕するのに十分な剪断応力が印加されることとなる。従って、カーボンブラックの凝集塊の残存を減少させ、マイクロメートルオーダーへの解砕が可能となる。ひいては、カーボンブラックを良好に分散することが可能となり、特に解砕が困難である、一次粒子径が小さいカーボンブラックであっても良好に分散することができる。また、カーボンブラックの一次粒子径が小さいほど漆黒度見合いでの配合量を少なくすることができるため、本実施形態においては、一次粒子径が小さいカーボンブラックを用いてその配合量を減らしても、十分な漆黒度を確保することができる。
【0017】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法においては、二軸押出機を用い、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する。二軸押出機としては、例えば、図1に示す構成のものが挙げられる。図1に示す二軸押出機10は、熱可塑性樹脂を投入するためのホッパー12を備える第1供給口14、可塑化ゾーン16、第2供給口18、予備混練ゾーン20、混練ゾーン22、及びダイ部24を備える。第1供給口14に投入される粒状の熱可塑性樹脂は、可塑化ゾーン16に固体輸送され溶融される。熱可塑性樹脂の大部分の溶融が見込まれれば可塑化ゾーン16のエレメント構成に制限はない。例えば、片側のニーディングディスクの先端部とバレルの内壁との距離が0.4mmである1.0D(ディスク厚み0.2D×5枚、ずらし角45°)の順送り2条ニーディングディスクエレメントを2組と、片側のニーディングディスクの先端部とバレルの内壁との距離が0.4mmである1.0D(ディスク厚み0.2D×5枚、ずらし角45°)の逆送り2条ニーディングディスクエレメント1組とを組み合わせて可塑化ゾーンとすることができる。
第2供給口18は、例えば、サイドフィーダースクリューを有し、ここからカーボンブラックを二軸押出機10へ供給することができる。
予備混練ゾーン20は、混練ゾーン22の上流側に位置し、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを含む組成物を予備混練する、必要に応じて設けられるゾーンである。予備混練は、混練ゾーン22において行う、溶融樹脂とカーボンブラックとの混練前に、溶融又は未溶融の状態の熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを積極的に接触(濡れ)させ、カーボンブラックの凝集を抑制するために実施する。
混練ゾーン22は、予備混練ゾーン20の下流側に位置し、予備混練を終えた、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを含む組成物を溶融混練するゾーンである。
なお、以下において、混練ゾーン22において使用するニーディングディスクを「ニーディングディスクA」とも呼び、予備混練ゾーン20において使用するニーディングディスクを「ニーディングディスクB」とも呼ぶ。
【0018】
本実施形態においては、二軸押出機10の混練ゾーン22において、ニーディングディスクAが装着された一対のスクリューをバレル内に有する。そして、ニーディングディスクAの先端部と、バレルの内壁における、ニーディングディスクAの先端部の対向位置との距離の最大値が1.0~5.0mmである。当該距離の最大値が1.0mm未満であると、剪断応力が与えられる溶融樹脂とカーボンブラックの混練物の量が限られ、混練物全体に対して良好な分散性を確保できなくなり、5.0mmを超えるとカーボンブラックを解砕するのに十分な剪断応力を与えることができなくなる。当該距離の最大値は、1.5~4.5mmが好ましい。
【0019】
本実施形態に係るニーディングディスクAについて、図2を参照して説明する。図2は、バレル32内において、一対のスクリュー(図示しない)に装着されたニーディングディスク34、36の配置態様を示している。バレル32は、2つの筒状体の一部が重なりあった形状であり、当該2つの筒状体のそれぞれにスクリューが配置されている。一対のスクリューは、バレル32内において、駆動手段により互いに同方向又は逆方向に回転するが、その回転軸の軸心は筒状体の断面を円として見た場合の円の中心と一致する。ニーディングディスク34、36はいずれも同じ形状であり、回転軸(それぞれ、バレル32の内壁38、40を円として見た場合の中心)に対して非対称の形状を有する。より具体的には、図2の左側に位置するニーディングディスク34の場合、上側先端部と、バレル32の内壁38における、上側先端部の対向位置との距離はd1離間している。当該距離d1の最大値が1.0~5.0mmである。一方、ニーディングディスク34の下側先端部と、バレル32の内壁における、下側先端部の対向位置との距離は距離dよりも短く、例えば0.5mm以下である。このように、ニーディングディスク34の先端部はバレル32の内壁38から距離d1離間することで、カーボンブラック全体に均一又は均一に近い状態で剪断応力を与えることができる。逆に、下側先端部はバレル32の内壁38と近接しており、ニーディングディスク34が回転することで、バレル32の内壁38をクリーニングする機能を有する。図2の右側のニーディングディスク36も、左側のニーディングディスク34と同様である。なお、ニーディングディスクの先端部すべてのが、バレルの内壁の対向位置と離間している構成としてもよい。
【0020】
次いで、本実施形態に係るニーディングディスクの別の形態について説明する。図3に示す形態は、ニーディングディスクの形状において図2の形態とは異なる。図3は、バレル内において、一対のスクリュー(図示しない)に装着されたニーディングディスク44、46の配置態様を示している。ニーディングディスク44、46は、3回回転対称の略正三角形状を有し、対称中心は点bである。一方、スクリューの回転軸、すなわちニーディングディスク44、46の回転中心は点aであり、それぞれ、対称中心である点bの位置とは異なる。すなわち、ニーディングディスク44、46は、スクリューの回転軸に対して偏心回転するように装着されている。従って、ニーディングディスク44の場合、先端部と、バレルの内壁48における、各先端部の対向位置との距離d2は、スクリューの回転によらず一定である。そして、当該距離d2の最大値が1.0~5.0mmである。図3の右側のニーディングディスク46も、左側のニーディングディスク44と同様である。
【0021】
以上、図2及び図3を参照して、本実施形態に係るニーディングディスクAの形態について説明したが、本実施形態においては図2及び図3の形態に限定されることはない。すなわち、ニーディングディスクAの先端部とバレルの内壁との距離の最大値が1.0~5.0mmを確保できれば特に限定されることはない。通常のニーディングディスク、ショルダーエレメント、偏心エレメントなどいずれでもよい。
【0022】
ニーディングディスクAの厚みは、0.05D~0.5Dが好ましく、0.1D~0.3Dがより好ましい。当該厚みが0.05D~0.5Dであると、強度や耐久性が十分であるとともに、通過する熱可塑性樹脂に対して十分な剪断応力を与えることができる。また、スクリューに対する負荷が小さい。
なお、本明細書において、Dはバレルの内径を意味する。例えば、ニーディングディスクAの厚みが0.05Dと表記された場合、当該厚みはバレルの内径の0.05倍であることを意味する。
【0023】
混練ゾーン長さは、0.5D~10.0Dが好ましく、1.0D~9.0D がより好ましく、1.5D~8.0Dがさらに好ましい。混練ゾーン長さが0.5D~10.0Dであると、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを十分に混練することができるとともに、スクリューの長さが過度に長くならず、他のゾーンの確保が容易となる。なお、ゾーン長さの合計が0.5D~10.0Dであれば、混練ゾーンは単独存在していても、複数に分割して存在してもよい。
【0024】
ニーディングディスクAは、順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、直交ニーディングディスクのいずれでもよいが、滞留時間や発熱の点から、順送りニーディングディスクが好ましい。
【0025】
ニーディングディスクAの好ましい具体例について以下に示すが、ニーディングディスクの先端部とバレルの内壁との距離の最大値が所定範囲のものであれば、以下に示す例と異なるものを使用してもよい。また、以下のニーディングディスクは単独で使用してもよいし、複数を組合せて使用してもよい。なお、以下においては、ニーディングディスクの先端部と、バレルの内壁における、ニーディングディスクの先端部の対向位置との距離を「先端部とバレル内壁との距離」と表記している。後記のニーディングディスクBやその他の説明においても同様に表記している。
(1)先端部とバレル内壁との距離がいずれの側も3.0mmである0.5D(ディスク厚み0.1D × 5枚、ずらし角45°)の順送り2条ニーディングディスクエレメント
(2)先端部とバレル内壁との距離がいずれの側も3.0mmである0.5D(ディスク厚み0.2D × 5枚、ずらし角45°)の順送り2条ニーディングディスクエレメント
(3)先端部とバレル内壁との距離が各々の側において0.4mmと4.0mmである0.5D(ディスク厚み0.2D × 5枚、ずらし角45°)の順送り2条ニーディングディスクショルダーエレメント
(4)先端部とバレル内壁との距離が各々の側において0.4mm、4.0mm、4.0mmである0.5D(ディスク厚み0.2D × 5枚、ずらし角45°)の順送り3条偏心エレメント
【0026】
本実施形態において、カーボンブラックの分散性をより良好にする観点から、スクリュー回転数は250~600rpmであることが好ましく、270~580rpmであることがより好ましい。また、同様の観点から、バレルの内径は40~85mmであることが好ましく、45~80mmであることがより好ましい。特に、バレルの内径が85mm以下であると、剪断速度が過度に上昇することがなく、再凝集を防止することができる。
【0027】
本実施形態においては、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練する工程の前に、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを予備混練する工程をさらに含むことが好ましい。換言すると、図1に示す通り、混練ゾーンの上流側に予備混練ゾーンを設けることが好ましい。予備混練する工程においては、厚さが0.05D~0.3Dのニーディングディスクを0.5D~5.0Dの長さとなるように装着された一対のスクリューを用いて熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを溶融混練することが好ましい。予備混練する工程を含むことで、上述の通り、混練ゾーンにおいて行う、溶融樹脂とカーボンブラックとの混練前に、溶融又は未溶融の状態の熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを積極的に接触(濡れ)させ、カーボンブラックの凝集を抑制することができる。
【0028】
予備混練ゾーンにおいて使用するニーディングディスクBの厚みは、0.05D~0.3Dが好ましく、0.1D~0.2Dであることがより好ましい。ニーディングディスクBの厚みが0.05D~0.3Dであると、強度や耐久性が十分であるとともに、溶融又は未溶融の状態の熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを積極的に接触(濡れ)させることができる。また、スクリューに対する負荷が小さい。
【0029】
予備混練ゾーン長さは、0.5D~5.0Dが好ましく、1.0D~4.0Dがより好ましい。予備混練ゾーン長さが0.5D~5.0Dであると、濡れが十分で、スクリューの長さが過度に長くならず、他のゾーンの確保が容易となる。
【0030】
予備混練ゾーンにおいて使用するニーディングディスクBの形状は特に制限はなく、ニーディングディスク、ショルダーカットニーディングディスク、偏心ニーディングディスクのいずれでもよい。
【0031】
ニーディングディスクBの先端部と、バレルの内壁における、ニーディングディスクBの先端部の対向位置との距離の最大値は、混練ゾーンにおいて使用するニーディングディスクAに準ずる。すなわち、剪断発熱抑制の観点から、当該距離の最大値は、0.5~5.0mmとすることが好ましい。もっとも、当該距離は0.1~5.0mmの範囲であれば特に制限はない。
【0032】
ニーディングディスクBは、順送りニーディングディスク、逆送りニーディングディスク、直交ニーディングディスクのいずれでもよいが、滞留時間や発熱の点から、順送りニーディングディスクが好ましい。
ニーディングディスクBの好ましい具体例としては、先端部とバレル内壁との距離がいずれの側も0.4mmである0.5D(0.1D × 5枚、ずらし角45°)の順送りニーディングディスクを6組用いて、3.0Dの長さとしたものである。
【0033】
以下に、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に用いられる各成分について説明する。
【0034】
[熱可塑性樹脂]
本実施形態に係る熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」とも呼ぶ。)、液晶性樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂などが挙げられ、本実施形態においては、PBT樹脂に特に有用である。以下に、PBT樹脂を挙げて説明するが、本実施形態においてはそれに限定されるものではない。
【0035】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂)
PBT樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られる樹脂である。PBT樹脂は、ポリブチレンテレフタレートに限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0036】
PBT樹脂の末端カルボキシル基量は、本実施形態に係る熱可塑性樹脂の効果を阻害しない限り特に限定されない。PBT樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
【0037】
PBT樹脂の固有粘度は、0.65~1.20dL/gであることが好ましい。かかる範囲の固有粘度のPBT樹脂を用いる場合には、得られる樹脂組成物が特に機械的特性と流動性に優れたものとなる。逆に固有粘度0.65dL/g未満では優れた機械的特性が得られず、1.20dL/gを超えると優れた流動性が得られないことがある。
また、固有粘度が上記範囲のPBT樹脂は、異なる固有粘度を有するPBT樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度0.9dL/gのPBT樹脂と固有粘度0.7dL/gのPBT樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.8dL/gのPBT樹脂を調製することができる。本明細書中のPBT樹脂の固有粘度は、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定したときの値である。
【0038】
PBT樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体と併用可能なジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0040】
PBT樹脂において、1,4-ブタンジオールと併用可能なグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0042】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0043】
[カーボンブラック]
カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。
【0044】
カーボンブラックは、熱可塑性樹脂組成物を黒色に着色するために配合する。一般的に、カーボンブラックの一次粒子径が大きくなるほど、配合量見合いの漆黒度は低下し、漆黒度見合いでの絶縁性は低下する。しかし、本実施形態においては、カーボンブラックの凝集塊の個数を大きく低減することができ、カーボンブラックを良好に分散することができる。従って、カーボンブラックが少ない配合量であっても、熱可塑性樹脂組成物を十分な漆黒度で着色することができる。
【0045】
上記の通り、本実施形態においては、一次粒子径が小さいカーボンブラックであっても、良好に分散することができる。例えば、一次粒子径が10~60nmのカーボンブラックであっても良好に分散することができる。従って、少ない配合量であっても十分な漆黒度が得られる。また、カーボンブラックが少ないため、熱可塑性樹脂への悪影響や絶縁性の低下を抑えることができる。
なお、本実施形態におけるカーボンブラックの一次粒子径は、ASTMD3849規格に準じ、取得された拡大画像から3,000個の単位粒子径を測定し、求められる平均値をいう。
【0046】
本実施形態において、熱可塑性樹脂100質量部に対するカーボンブラックの配合量は、所望の漆黒度等に応じて適宜設定することができるが、例えば、10~200質量部とすることが好ましく、5~40質量部とすることがより好ましい。
【0047】
その他、本実施形態において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、特に限定されないが、50~600m/gであることが好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217における窒素吸着量からS-BET式で求めた比表面積である。一般に、粒子径が小さいほど、比表面積は大きくなる。
また、カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸収量は、特に限定されないが、45~200cm/100gが好ましい。カーボンブラックのDBP吸収量は、カーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレート量であり、JIS K6221に記載される方法に準じて測定される値である。一般に、カーボンブラック一次粒子の凝集構成体であるストラクチャーが発達しているほど、DBP吸収量が大きくなる。
さらに、カーボンブラックの揮発量は、特に制限されないが、7%以下であることが好ましい。カーボンブラックの揮発量は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときの揮発(減量)分(元の質量に対する揮発分質量の割合)である。一般に、表面官能基が多いほど、揮発成分は多くなる。
【0048】
[他の成分]
本実施形態においては、必要に応じて、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば、滑剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤、又は、有機高分子材料、無機若しくは有機の繊維状、粉体状、板状の充填剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【実施例0049】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1~18、比較例1~2]
各実施例・比較例において、図1に示す二軸押出機を用い、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、カーボンブラック(A又はB)28質量部とを以下の押出条件にて溶融混練し、ペレット状の組成物を得た。なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、第1供給口14から供給し、カーボンブラックは第2供給口18から供給した。また、使用した各成分の詳細は以下の通りである。
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂
ポリプラスチックス(株)製、PBT樹脂(固有粘度(o-クロロフェノール中において温度35℃で測定):0.88dL/g))
(2)カーボンブラック
カーボンブラックA:三菱ケミカル(株)製、#750B(粒子径:22nm)
カーボンブラックB:三菱ケミカル(株)製、#10(粒子径:75nm)
【0051】
(押出条件)
・シリンダー温度:260℃
・バレル径:各実施例・比較例において、バレル径の異なる以下の二軸押し出し機を用いた。
32mm 型番名:TEX30αII、日本製鋼所(株)製
47mm 型番名:TEX44αII、日本製鋼所(株)製
58mm 型番名:TEX54αII、日本製鋼所(株)製
69mm 型番名:TEX65αII、日本製鋼所(株)製
82.5mm 型番名:TEX77HCT、日本製鋼所(株)製
・ニーディングディスクA(混練ゾーン)
ニーディングディスクA1:2条ニーディングディスク
形状:先端部とバレル内壁との距離が互いに等しく、片側における先端部とバレル内壁との距離の最大値(表1において「最大クリアランス」と示す。)が表1に示す通りである0.5D(0.1D × 5枚、ずらし角45°)の順送りニーディングエレメントを4組用いて、2.0Dの長さとした。
ニーディングディスクA2:偏心3条ニーディングディスク
形状:先端部とバレル内壁との距離が各々0.4mm、4.0mm、4.0mmである0.5D(ディスク厚み0.2D × 5枚、ずらし角45°)の順送り3条偏心エレメントを4組用いて、4.0の長さとした。
・ニーディングディスクB(予備混練ゾーン)
ニーディングディスクB:ニーディングディスク
形状:片側の先端部の隙間が0.4mmである0.5D(0.1D × 5枚、ずらし角45°)の順送りニーディングエレメントを6組用いて3.0Dの長さとした。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
[評価]
(1)カーボンブラックの分散度合い
各実施例・比較例において、得られたペレット状の組成物を、ポリブチレンテレフタレート樹脂2,000gに対して40g配合し、一ヶ所のベント口を有し、吐出部に300メッシュのスクリーンメッシュを装着したバレル径30mmの二軸押出機を用いて、L/D=35、押出温度260℃、スクリュー回転数160rpm、ベント真空度-700mmHg、吐出量18kg/hrの条件で押出操作を行った。押出操作完了後、スクリーンメッシュを取り出し、付着樹脂を除去した。次いで、顕微鏡を用いて、300メッシュのスクリーンメッシュの観察を行い、14cmの面積の凝集塊の数を数えて、以下のA~Dの基準で分類して評価した。評価結果を表1~3に示す。
A:凝集物が20個未満
B:凝集物が20個以上80個未満
C:凝集物が80個以上100個未満
D:凝集物が100個以上
【0056】
(2)漆黒度(L値)
実施例14及び16において得られたペレット状の組成物をPBT樹脂ペレット100質量部に対して10質量部配合し、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J55AD)を用い、縦50mm×横90mm×厚さ2mmの平板状の試験片を射出成形した。成形した試験片に対し、日本電飾工業(株)製、Spectrophotometer SE6000を用いて明度(L値)を測定した。L値が小さいほど漆黒度は高く、黒着色を目的とした場合に着色が良好であることを示す。
【0057】
表1及び表2より、実施例1~18においてはいずれも、カーボンブラックを良好に分散することができたことが分かる。特に、予備混練を行った実施例17及び18においては分散性が極めて良好であった。また、実施例14と実施例16の漆黒度を比較すると、一次粒子径が小さいカーボンブラックを用いた実施例14の方が漆黒度が高かった。この結果から、カーボンブラックの濃度見合いで高い漆黒度を求められる場合はカーボンブラックの一次粒子径が小さいほうが好ましいことが分かる。
図1
図2
図3