(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022099934
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】パン類用小麦粉、パン類用ミックス、パン類、及びパン類用小麦粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20220628BHJP
A21D 6/00 20060101ALN20220628BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A21D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214017
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】辻 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】宮野 恵
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 哲郎
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LP07
4B023LP20
4B023LQ01
4B032DB01
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK43
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4B032DK54
4B032DL11
4B032DP01
4B032DP02
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP33
4B032DP40
4B032DP60
4B032DP71
(57)【要約】 (修正有)
【課題】喫食時に、弾力、歯切れのある食感が得られ、復元性(外観)が良好なパン類を製造できる、パン類用小麦粉を提供する。
【解決手段】下記の特性を有するパン類用小麦粉:(1)未糊化澱粉の含有割合が70%以上であり、(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下であり、(3)RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下である。また、アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の60%以上500%以下である、パン類用小麦粉。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の特性を有するパン類用小麦粉:
(1)未糊化澱粉の含有割合が70%以上であり、
(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下であり、
(3)RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下である。
【請求項2】
前記パン類用小麦粉のアミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の60%以上500%以下である、請求項1に記載のパン類用小麦粉。
【請求項3】
蛋白質を8質量%以上含有する、請求項1又は2に記載のパン類用小麦粉。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のパン類用小麦粉を含むパン類用ミックス。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のパン類用小麦粉を、パン類に使用する穀粉の合計質量に対して0.1~30質量%含有する、パン類。
【請求項6】
未処理小麦粉を加圧湿熱処理する、パン類用小麦粉の製造方法。
【請求項7】
前記加圧湿熱処理において、圧力条件を0.05MPaG以上とする、請求項6に記載のパン類用小麦粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパン類用小麦粉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷蔵状態、冷凍状態あるいは常温で流通し、喫食前に加熱する食品のニーズが高まっている。例えば、パン生地、半焼成パン、焼成パン等のベーカリー食品を冷凍状態、冷蔵状態あるいは常温で流通・保管し、店頭や家庭において喫食前に電子レンジ等で加熱調理することが行われている。
【0003】
しかしながら、冷凍状態、冷蔵状態、常温状態、冷凍後に解凍した状態にあるベーカリー食品を電子レンジ等で加熱調理すると、ベーカリー食品の食感が硬化する、ヒキが生じる、収縮する(保形性が失われる)、咀嚼時に形が潰れる(復元性が失われる)などという問題があった。また、パン生地または半焼成パンを冷凍状態で流通・保管した場合、乾燥による食感の劣化などという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献1には、小麦粉湿熱処理物を全穀粉類の2~20重量%配合する冷凍ベーカリー製品が開示されている。また、特許文献2には品温100~155℃の範囲で5~350秒間湿熱処理した小麦粉を小麦粉の全量に対して4~17質量%含む製パン用小麦粉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-147947号公報
【特許文献2】特開2014-50367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術は、喫食時に、弾力、歯切れのある食感が得られ、復元性(外観)が良好なパン類を製造できる、パン類用小麦粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、下記の特性を有するパン類用小麦粉を提供する。
(1)未糊化澱粉の含有割合が70%以上であり、
(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下であり、
(3)RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下である。
前記パン類用小麦粉のアミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の60%以上500%以下でありうる。
蛋白質を8質量%以上含有しうる。
本技術は、前記パン類用小麦粉を含むパン類用ミックスを提供する。
本技術は、前記パン類用小麦粉を、パン類に使用する穀粉の合計質量に対して0.1~30質量%含有する、パン類を提供する。
本技術は、未処理小麦粉を加圧湿熱処理する、パン類用小麦粉の製造方法を提供する。
本技術は、前記加圧湿熱加熱処理において、圧力条件を0.05MPaG以上とする、前記パン類用小麦粉の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本技術によれば、喫食時に、弾力、歯切れのある食感が得られ、復元性(外観)が良好なパン類を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1(A)】未糊化澱粉の割合が100%である小麦粉に関する偏光顕微鏡(1000倍率)画像を示す。
【
図1(B)】未糊化澱粉の割合が50%であるの小麦粉に関する偏光顕微鏡(1000倍率)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
なお、以下で説明する加圧湿熱処理(改質処理)を施していない原料小麦粉を「未処理小麦粉」と称する。また、加圧湿熱処理を施したが、本技術のパン類用小麦粉の特性(1)未糊化澱粉の含有割合が70%以上であること、(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下であること、(3)RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下であることの少なくともいずれかを満足しない小麦粉を「非改質小麦粉」と称する。
【0011】
<パン類用小麦粉>
本技術のパン類用小麦粉は、下記(1)~(3)の特性を有する。
(1)未糊化澱粉の含有割合が70%以上である。
(2)小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下である。
(3)RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下である。
【0012】
以下、これらの特性について説明する。
(1)未糊化澱粉の含有割合が70%以上である
澱粉は、直鎖成分のアミロースと分岐成分のアミロペクチンから構成され、これらの成分が部分的に微結晶を発達させた多結晶の粒状構造をもつ。澱粉粒を水中で加熱すると、まず結晶性を消失して膨潤し、さらに加熱すると、澱粉粒が崩壊し、その断片と一部溶解した澱粉分子が混合した糊液となる。つまり「澱粉の糊化」は、一般に水の存在下で加熱することで澱粉粒が不可逆的に膨潤し、さらに崩壊ないし溶解して、結晶性及び複屈折性を失い、粘度が上昇した状態をいう。こうした糊化過程は、一般には、澱粉粒の結晶構造の変化を、澱粉粒の複屈折性から観察する偏光顕微鏡法等によって評価することができる(中村道徳ら編:生物化学実験法19「澱粉・関連糖質実験法」(学会出版センター)p.166(1999))。偏光顕微鏡法による観察において、澱粉の糊化は、結晶性及び複屈折性の喪失により、未糊化澱粉で見られた形成核で交差した偏光十字が見られなくなることで判定することができる。
【0013】
本技術に係るパン類用小麦粉は未糊化澱粉を含む。当該小麦粉が未糊化澱粉を含んでいることは、前述するように、偏光顕微鏡法による観察において澱粉粒形と偏光十字が鮮明に確認できることで判断することができる。前記小麦粉中に含まれる未糊化澱粉の割合は、加圧湿熱処理前の未処理小麦粉に含まれる未糊化澱粉の量(100%)と比較して70%以上である。好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。また、前記小麦粉中に含まれる未糊化澱粉の割合の上限値は特に制限されないが、100%未満であることが好ましい。なお、この割合は偏光顕微鏡法による観察において観察した全ての澱粉粒数と偏光十字が観察された澱粉粒の個数を計測し、その比を算出することで評価することができる。なお、偏光顕微鏡観察は、スライドガラスに被験試料として加圧湿熱処理後の小麦粉又は未処理小麦粉(これらを総称して「小麦粉」という)を少量のせ、上からスポイトで蒸留水を1~2滴たらし、次いでカバーガラスで覆い、200倍率にて観察した。本技術に係るパン類用小麦粉は、加圧湿熱処理しながらも未糊化澱粉を含むことで、従来の湿熱処理小麦粉が有する問題を少なくとも一つ改善する効果を有している。なお、本技術に係るパン類用小麦粉又は非改質小麦粉は、総称して「湿熱処理小麦粉」ともいう。
【0014】
(2)小麦粉に含まれる全蛋白質量中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下
本技術において「酢酸可溶蛋白質」は、小麦粉に含まれる全蛋白質のうち、0.05Nの酢酸水溶液に可溶な蛋白質を意味する。上記酢酸可溶蛋白質の割合(質量%)は、0.05Nの酢酸水溶液を用いて小麦粉から抽出した可溶性画分(抽出液)に含まれる窒素含量と、小麦粉に含まれる全窒素量から換算して求めることができる。
【0015】
小麦粉から酢酸可溶性画分(抽出液)を抽出して、ケルダール法に供する検体(酢酸可溶蛋白質を含む抽出液)を調製する方法を簡単に説明すると以下の通りである。なお、当該抽出操作は25℃、大気圧条件下で実施することができる。
(i)小麦粉2gを、100mL容量の三角フラスコに入れる。
(ii)これに0.05N酢酸を40mL加えて、振盪する(25℃、130rpm、60分間)。
(iii)遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相(抽出液)と下層の固相(残渣)とに分離する。
(iv)上記(iii)で分離した抽出液をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過し、濾液を回収する。
(v)上記(iii)で抽出液を回収した後三角フラスコに残った残渣に、0.05N酢酸40mLを入れてフラスコ壁面についた残渣を洗い流すように軽く撹拌し、遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相(抽出液)と下層の固相(残渣)とに分離する。
(vi)上記(v)で分離した抽出液をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して濾液を回収し、前記(iv)で回収した濾液と混合する。
(vii)濾液をイオン交換水にて100mLに定容する。
(viii)上記の操作で回収した濾液(小麦粉の酢酸抽出液)は25mLを、小麦粉は0.5gを、それぞれ分解に供した。
(ix)分解により得られた試料に、水を30mL加え、ケルダール蒸留滴定装置(スーパーケル1500/1550、アクタック社製)にセットして蒸留及び滴定を行う。
(x)得られた窒素量から下式に基づいて酢酸可溶蛋白質含量(%)を算出する。
【0016】
検体中の窒素含量(g/100g)=f×N×(b-B) /1000)×14×(100/0.5(g))
小麦粉中の窒素含量(g/100g)=f×N×(b-B) /1000)×14×(100/W(g))
f: ファクター
N: 滴定用硫酸の規定数
b: 測定試料の滴定量(mL)
B: ブランク(検体及び小麦粉に代えて水を用いた測定試料)の滴定量(mL)
W: 小麦粉採取量(g)
酢酸可溶蛋白質含量(%)=(検体中の窒素量(%)/小麦粉中の窒素量(%))×100
【0017】
本技術に係るパン類用小麦粉は、上記方法で求められる小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量(質量%)が15質量%以下である。未処理の小麦粉における当該酢酸可溶蛋白質の割合は、50~70質量%であることからわかるように、本技術に係るパン類用小麦粉の上記値はかなり小さい。このことは、未処理小麦粉に本来含まれている酢酸可溶蛋白質の一部が変質して不溶化していることを意味するものと考えられる。小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質の割合(質量%)として、好ましくは13質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下である。その下限値は、特に制限されないものの、通常3質量%以上、好ましくは5質量%以上である。本技術に係るパン類用小麦粉は、小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質の割合(質量%)が15質量%以下と、蛋白質がより変性していることで、良好な食感(例えば、弾力や歯切れ等)を発現することができるという効果を有している。
【0018】
(3)RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下である
本技術に係るパン類用小麦粉は、その懸濁液の粘度変化を連続的に測定するラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)を用いて求められる最高粘度が300cP以上2500cP以下である。
【0019】
当該最高粘度の求め方を簡単に説明すると以下の通りである。なお、当該測定は特に言及しない限り、大気圧条件下で実施することができる。
(i)測定する対象の小麦粉3.5gを25mLの0.5mM硝酸銀水溶液に入れてよくかき混ぜて懸濁し、14質量%濃度の懸濁液を調製する。
(ii)この懸濁液(25℃)を、RVA装置(RVA4500、Perten Instruments社製)(パドル回転数:160rpm)に供する。RVA装置の設定温度条件に従って懸濁液を加温及び冷却し、その間連続的に懸濁液の粘度(cP)を読み取り、時間(秒)を横軸、粘度(cP)を縦軸としたRVAプロファイルを作製する。
【0020】
なお、RVA装置の設定温度条件は次の通りである。
50℃に60秒間保持→50℃より1℃/5秒の速度で昇温→95℃になった時点(加熱開始から282秒後)で同温度にて150秒間保持→その後(加熱開始から432秒後)約1℃/5秒の速度で降温→50℃になった時点(加熱開始から660秒後)で同温度にて120秒間保持。
【0021】
最高粘度は斯くして得られるRVAプロファイルから求めることができる。具体的には、50℃から95℃に温度を上昇させると粘度が上がってピークに達した後、下降する挙動を示すが、そのピーク時の粘度を最高粘度とする。本技術のパン類用小麦粉のRVAにおける最高粘度は、前述するように2500cP以下である。好ましくは2400cP以下、より好ましくは2300cP以下、さらに好ましくは2000cP以下、よりさらに好ましくは1800cP以下、特に好ましくは1500cP以下である。その下限値は、300cP以上である。好ましくは350cP以上、より好ましくは400cP以上、さらに好ましくは500cP以上である。
【0022】
本技術に係るパン類用小麦粉は、上記特性(1)~(3)の特性を有することにより、常温又はチルドで保存したパン類を電子レンジで再加熱しても弾力、歯切れのある食感が得られ、復元性(外観)が良好なものとすることができる。また、本技術に係るパン類用小麦粉を用いて調製した冷凍パン類生地から製造したパン類、半焼成後冷凍したパン類、焼成後冷凍したパン類において、弾力、歯切れのある食感が得られ、復元性(外観)が良好なものとすることができる。
【0023】
本技術に係るパン類用小麦粉は、アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の60%以上500%以下であるのが好ましい。
当該特性は、前述の(1)~(3)の特性に加えて、本技術に係るパン類用小麦粉が有する特性である。なお、本発明でいうアミラーゼはカビ由来のアミラーゼを意味する。
【0024】
アミラーゼ消化性の求め方を簡単に説明すると以下の通りである。なお、当該測定は特に言及しない限り、室温(25℃)及び大気圧条件下で実施することができる。
(小麦粉のアミラーゼ消化性の求め方)
小麦粉試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα-アミラーゼ溶液(Aspergillus oryzae由来,50unit/mL)を1mL添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理する。次いで、クエン酸-燐酸水溶液(pH2.5)を5mL添加して反応を停止させ、遠心分離(1,000g、5分)して上清を得る。この上清0.1mLにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来,2unit/0.1mL)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定する。得られた吸光度から、標準溶液を用いて作成したD-グルコースの検量線を利用して、生成したグルコース量を算出する。
【0025】
未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合における湿熱処理小麦粉のアミラーゼ消化性は、下式から求めることができる。
アミラーゼ消化性={(湿熱処理小麦粉から生成したグルコース量)/(未処理小麦粉から生成したグルコース量)}×100
【0026】
本技術に係るパン類用小麦粉は、前述するようにアミラーゼ消化性が未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の好ましくは60%以上であり、より好ましくは62%以上であり、さらに好ましくは65%以上、さらにより好ましくは70%以上である。なお、上限は、好ましくは500%以下であり、より好ましくは400%以下、さらに好ましくは300%以下、200%以下、さらにより好ましくは150%以下、特に好ましくは110%以下である。本技術においては、アミラーゼ消化性がこの範囲に含まれることにより、パン類の食感、復元性(外観)をさらに向上させることができ、加えて、パン類を製造する場合に、ドウ状生地調製時の作業性を向上させることができ、さらに、焼成後冷凍されたパン類を再度、電子レンジ調理等で加熱した場合に、食感が硬化することなく、またヒキがある食感ではなく、最初の焼成直後と同等の優れた食感を得ることができる。
【0027】
<パン類用小麦粉の製造方法>
上記の特性を有する本技術に係るパン類用小麦粉は、未処理小麦粉を加圧湿熱処理することで製造することができる。より具体的には、未処理小麦粉を、加圧した状態のままで、飽和水蒸気下で100℃以上に加熱処理(湿熱処理)することで調製してもよい。その加熱処理に使用する装置は、加圧密閉容器であればよく、オートクレーブ装置や圧力鍋等が挙げられる。また、ジャケット加熱機構を備えた加圧加熱機を使用することができる。上記の特性を有する本技術に係るパン類用小麦粉を高効率に製造するために、ジャケット加熱機構を備えていることが好ましい。加圧条件としては、好ましくは0.05MPaG以上、より好ましくは0.1MPaG以上、さらに好ましくは0.15MPaG以上を挙げることができる。上限値は、制限されないものの、好ましくは0.5MPaG以下、より好ましくは0.4MPaG以下、さらに好ましくは0.3MPaG以下を挙げることができる。また、加熱条件としては、加圧加熱機内温度が100℃以上の高温であればよく、制限されないものの、105℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上を挙げることができる。上限値は、制限されないものの、通常160℃以下を挙げることができる。さらに、ジャケット加熱機構を備えている場合、ジャケット内温度が加圧加熱機内温度よりも高いことが好ましく、1℃以上高いことがより好ましい。
【0028】
加圧条件下での湿熱処理に要する時間は、前述する特性を有する本技術に係るパン類用小麦粉が調製できる時間であればよく、湿熱処理する小麦粉の量、並びに採用する加圧条件及び温度条件等に応じて適宜設定調整することができる。制限されないものの、上限としては5時間を超えない範囲で設定することができる。
【0029】
加圧湿熱処理する原料として用いる小麦粉は、薄力粉、中力粉、強力粉、及びデュラム小麦粉等、その種類に制限されるものではないが、強力粉を用いることが好ましい。また、湿熱処理する原料として用いる小麦粉は、蛋白質含量が、好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは11質量%以上である。上限値は、特に制限されないが、好ましくは15質量%以下、より好ましくは14質量%以下である。さらに、蛋白質含量が8質量%以上である強力粉を用いることが好ましい。加圧湿熱処理する原料として蛋白質含量が8質量%以上である小麦粉を用いることで、パン類の食感、特に弾力をさらに向上させることができる。さらに、焼成後冷凍されたパン類を再度、電子レンジ等で加熱した場合に、食感が硬化することなく、またヒキがある食感ではなく、最初の焼成直後と同等の優れた食感を得ることができる。なお、この蛋白質含量も前述するケルダール法に従って求めることができる。
【0030】
<パン類用ミックス>
前述する本技術に係るパン類用小麦粉は、そのもの自体をパン類用ミックスとすることができるほか、必要に応じて、製造するパン類の種類に従って、小麦粉以外の穀粉及び/又は澱粉と組み合わせて、例えば、パン類用ミックス粉として調製することができる。
【0031】
小麦粉以外の穀粉としては、例えば、米(うるち米、もち米等)、大麦、ライ麦、オーツ麦、はと麦、とうもろこし、大豆、そば、あわ、ひえ、又は、ホワイトソルガム等から調製される穀粉を挙げることができる。具体的には、米粉(上新粉、上用粉、餅粉、白玉粉、玄米粉等)、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、はと麦粉、とうもろこし粉、大豆粉、そば粉、あわ粉、ひえ粉、きび粉、又は、ホワイトソルガム粉等が挙げられ、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また穀粉のほか、馬鈴薯や甘藷等の芋類やワラビ等の野菜から調製される粉末ポテトやワラビ粉を配合することもできる。
【0032】
澱粉としては、穀物、穀物以外の植物種子、又は、植物体から抽出される澱粉を挙げることができ、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉等が例示される。また澱粉として、加工澱粉を配合することもできる。加工澱粉は、天然澱粉に物理的及び/又は化学的処理等を施した澱粉であり、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉等を原料澱粉として加工処理された酵素処理澱粉、アルファー化澱粉、湿熱処理澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉、漂白澱粉、アセチル化澱粉等のエステル化澱粉、リン酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等のエーテル化澱粉、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等の複数の加工を組み合わせた加工澱粉等が挙げられる。なお、澱粉は、前記した穀物、穀物以外の植物種子、又は、植物体から抽出される澱粉、前記した加工澱粉を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
調製するパン類の種類によっても相違するが、パン類用ミックスには、その他、必要により、各種の添加物を含むことができる。例えば、食塩やその他の塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等);油脂類(例えば、植物性油脂、動物性油脂、加工油脂、粉末油脂等);糖類(例えば、澱粉分解物、デキストリン、ぶどう糖、ショ糖、オリゴ糖、トレハロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、砂糖、マルトース、イソマルトース等の糖類;ソルビト-ル、マルチトール、還元パラチノース、還元水飴等の糖アルコール等;たん白素材(例えば、卵白粉、卵黄粉、全卵粉、小麦たん白、乳たん白、大豆たん白等);増粘剤(例えば、キサンタンガム、グアガム、アルギン酸エステル、ペクチン、タマリンドシードガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガラクトマンナン、ジェランガム等の増粘多糖類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール等);膨張剤(例えば、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、及び酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、グルコノデルタラクトン等の酸性剤を含むベーキングパウダー等);乳化剤(例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等);酵素類;pH調整剤;ビタミン類;イースト、イーストフード;甘味料;香辛料;調味料(例えば、グルタミン酸ナトリウム、粉末醤油等);ミネラル類;エキス類(例えば、酵母エキス、畜肉又は魚介由来エキス等);保存料;着色料、又は香料等を用いることもできる。
【0034】
<パン類>
本技術に係るパン類は、前記本技術に係るパン類用小麦粉又はパン類用ミックスを含有する。前記パン類用小麦粉は、パン類に使用する穀粉の合計質量に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上含有される。また、前記パン類用小麦粉は、パン類に使用する穀粉の合計質量に対し、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下含有される。前記パン類用小麦粉は、パン類に使用する穀粉の合計質量に対し、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.3~20質量%、さらに好ましくは0.5~15質量%含有される。
【0035】
本技術に係るパン類は、前記本技術に係るパン類用小麦粉又は前記パン類用ミックスを含むパン類生地から製造され得る。このようなパン類生地は、さらに前述した小麦粉以外の穀粉及び/又は澱粉、各種の添加物、水を含んでもよい。
【0036】
前記本技術に係るパン類用小麦粉又は前記パン類用ミックスを含むパン類生地は、一般的なパン生地の製造方法で製造することができる。例えば、パン類生地の製造方法としては、直捏法(ストレート法)、中種法、液種法、サワー種法、酒種法、湯種法等が挙げられる。上記方法にて生地原料を混捏し、ドウ状生地を調整した後、必要に応じて分割及び丸め、成形を行ってもよい。また、適宜、フロアタイム(通常、25~30℃、相対湿度70~80%、15~150分間)を設けてもよく、また、分割及び丸めの後にベンチタイム(通常、25~30℃、相対湿度70~80%、15~30分間)を設けてもよく、成形後にホイロ(最終発酵)(通常、35~40℃、相対湿度70~85%、40~80分間の発酵工程)を行ってもよい。
【0037】
また、本技術に係るパン類用小麦粉又は前記パン類用ミックスを含むパン類生地は、冷凍パン類生地として用いることができる。このような冷凍パン類生地として、材料混合後、成形前のパン類生地を凍結した生地玉冷凍パン類生地;成形後、ホイロ(最終発酵)前の生地を凍結した成形済み冷凍パン類生地;ホイロ(最終発酵)後、加熱前の生地を凍結したホイロ済み冷凍パン類生地が挙げられる。また、生地玉冷凍パン類生地は、材料混合後のパン類生地を大分割した状態で凍結されるものと、目的の重量に小分割して凍結されるものがあり、前者は、解凍後に目的の重量に分割して用いられる。
【0038】
本実施形態において、例えば、前記生地原料を混合して、混捏生地を調製し、必要に応じて、前記フロアタイム、前記分割及び丸め、前記ベンチタイム、前記成形といった工程を行った後に生地を凍結することで、冷凍パン類生地を製造することが可能である。また、分割及び丸め後成形前にパン類生地を凍結すること、又は、成形後最終発酵させずにパン類生地を凍結してもよい。
【0039】
パン類生地の凍結条件は、パン類生地の種類や大きさなどによって適宜調整されればよく、限定されないが、凍結温度は、好ましくは-20℃以下であり、より好ましくは-30℃以下であり、急速凍結とすることが好ましい。また、凍結後の冷凍パン類生地の冷凍保管条件は、パン類生地の種類や大きさなどによって適宜調整されればよく、限定されないが、冷凍保管の温度は、好ましくは-15℃以下であり、より好ましくは-20℃以下である。なお、冷凍手段は特に限定されないが、例えば、エアブラストフリージング、液体窒素トンネルフリージング、冷凍庫での静置凍結等が挙げられる。
【0040】
前記冷凍パン類生地が生地玉冷凍パン類生地である場合は、少なくとも解凍後に所望の成形を行った後に、加熱してパン類を製造することができる。前記冷凍パン類生地が成形済み冷凍パン類生地である場合は、少なくとも解凍が行われた生地を加熱することでパン類を製造することができる。
【0041】
前記冷凍パン類生地の解凍方法は、特に限定されず、冷凍パン類生地の解凍において一般的に用いられる方法であればよい。簡易的な解凍手法としては、例えば、常温(室温)解凍、冷蔵解凍などのある一定の温度帯で解凍する手段が挙げられ、応用的な解凍手法としては、解凍温度を適宜変化させて解凍する手段が挙げられる。後者は、ドウコンディショナー等のプログラム制御が行える設備を用いることで簡便に実施が可能である。
【0042】
本技術に係るパン類は、前記パン類生地を焼成、油ちょう、蒸し、電子レンジ加熱等の加熱処理を行うことで製造され得る。また、本技術に係るパン類は、前記冷凍パン類生地を解凍後に、焼成、油ちょう、蒸し、電子レンジ加熱等の加熱処理を行うことで製造され得る。
【0043】
前記加熱処理の条件は、特に限定されず、パン類生地の大きさやパンの種類などに応じて適宜調節されればよい。
【0044】
本技術に係るパン類用小麦粉又はパン類用ミックスは、焼成後冷凍パン類または半焼成後冷凍パン類の製造に用いられ得る。焼成後冷凍パン類又は半焼成後冷凍パン類は、例えば、本技術に係るパン類用小麦粉又はパン類用ミックスを用いてパン類生地を調製し、かかるパン類生地を焼成後又は半焼成後に、冷凍することにより、焼成後冷凍パン類又は半焼成後冷凍パン類を製造することができる。焼成後冷凍パン類又は半焼成後冷凍パン類は、喫食時に解凍及び電子レンジ等で再加熱される。
【0045】
本技術に係るパン類の種類は、特に限定されず、例えば、食パン、ロールパン、食卓パン、調理パン、菓子パン、フランスパン等のハード系パン類、デニッシュペストリー、イーストドーナツ、ピザ、中華まんじゅう、パネトーネ、シュトーレン、蒸しパン、揚げパン、ポンデケージョなどが挙げられる。
【実施例0046】
以下、実施例に基づいて本発明の構成及びその効果を説明する。ただし、これらの実施例はいずれも本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、下記において、特に言及しない限り、実験は室温(25±5℃)、又は大気圧条件下で行った。また、特に言及しない限り、「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0047】
[実験例1]
【0048】
下記2種類の小麦粉を原料小麦粉として用いてパン類用小麦粉の製造を行い、その特性を評価した。なお、原料小麦粉は25℃、50%の恒温恒湿条件下に24時間置いたのちに試験に供した。
原料小麦粉A:「クオリテ」(昭和産業株式会社製(蛋白質含量13.0質量%)(強力粉))
原料小麦粉B:「月桂冠」(昭和産業株式会社製(蛋白質含量7.8質量%)(薄力粉))
【0049】
1.パン類用小麦粉の製造方法
各試験例のそれぞれにおいて、上記原料小麦粉A、Bを用い、圧力条件、加熱条件(温度、時間)、水分条件を適宜調整し、下記性質の湿熱処理小麦粉(試験例1~12)を製造した。表2に、各試験例のそれぞれにおける圧力条件、加熱条件(温度、時間)と処理時間を記載する。なお、試験例1~3においては、密閉下かつ大気圧下で湿熱処理小麦粉を製造した。
【0050】
湿熱処理後、加圧加熱機内の圧力を大気圧に戻した後、加圧加熱機内から湿熱処理小麦粉を排出し、小麦粉を水分含量が10%程度になるまで乾燥処理し、粉砕機にて粉砕処理を行い、粒径が0.5mm以下の湿熱処理小麦粉(試験例1~12)を得た。
【0051】
2.パン類用小麦粉の物性評価方法
(1)未糊化澱粉の割合の測定
上記で調製した湿熱処理小麦粉(試験例1~12)、湿熱処理前の原料小麦粉A(参考例1)、及び湿熱処理前の原料小麦粉B(参考例2)(以上、被験試料)を用いて、未糊化澱粉の割合を測定した。未糊化澱粉の割合は偏光顕微鏡法による観察において観察した全ての澱粉粒数と偏光十字が観察された澱粉粒の個数を計測し、その比を算出することで評価した。なお、偏光顕微鏡観察は、スライドガラスに被験試料として湿熱処理小麦粉又は未処理小麦粉(これらを総称して「小麦粉」という)を少量のせ、上からスポイトで蒸留水を1~2滴たらし、次いでカバーガラスで覆い、200倍率にて観察した。参考例1、2(未処理小麦粉)、試験例1~12(湿熱処理小麦粉)の小麦粉を偏光顕微鏡(200倍率)で観察し、偏光十字の有無を確認した。未糊化澱粉の割合が100%である小麦粉と、未糊化澱粉の割合が50%である小麦粉を1000倍率で撮影した偏光顕微鏡画像を、それぞれ
図1(A)及び
図1(B)に示す。
【0052】
(2)酢酸可溶蛋白質含量(質量%)の測定
小麦粉に含まれる全蛋白質量中の酢酸可溶蛋白質含量(%)の測定は、下記の操作工程により実施した。
(i)上記で調製した湿熱処理小麦粉(試験例1~12)、湿熱処理前の原料小麦粉A(参考例1)又は湿熱処理前の原料小麦粉B(参考例2)2gを、100mL容量の三角フラスコに入れる。
(ii)これに0.05N酢酸を40mL加えて、振盪する(25℃、130rpm、60分間)。
(iii)三角フラスコの内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相と下層の残渣とに分離する。
(iv)上記で分離した上層をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して濾液を回収する。
(v)上記(ii)の三角フラスコに、0.05N酢酸40mLを入れてフラスコ壁面についた残渣を洗い流すように軽く撹拌し、内容物を遠沈管に移して遠心分離(5000rpm、5分間)し、上層の液相と下層の残渣とに分離する。
(vi)分離した上層の液相をろ紙(Whatman、No.42)で吸引濾過して回収した濾液を前記(iv )で回収した濾液と混合する。
(vii)濾液をイオン交換水にて100mLにメスアップする。
(viii)上記の操作で回収した濾液(小麦粉酢酸抽出液)は25mLを、小麦粉は0.5gを、それぞれ分解に供した。
(ix)分解により得られた試料それぞれに、イオン交換水を30mL加え、ケルダール蒸留滴定装置(スーパーケル1500/1550、アクタック社製)にセットして蒸留及び滴定を行う。
(x)下式に基づき、小麦粉酢酸抽出液と小麦粉の窒素量をそれぞれ求めた後、酢酸可溶蛋白質含量(%)を算出する。
【0053】
小麦粉酢酸抽出液中の窒素含量(g/100g)
=f×N×(b-B) /1000)×14×(100/0.5(g))
小麦粉中の窒素含量(g/100g)= f×N×(b-B) /1000)×14×(100/W(g))
f: ファクター
N: 滴定用硫酸の規定数
b: 測定試料の滴定量(mL)
B: ブランク(小麦粉酢酸抽出液及び小麦粉に代えて、水を用いた測定試料)の滴定量(mL)
W: 小麦粉採取量(g)
酢酸可溶蛋白質含量(%)=(小麦粉酢酸抽出液中の窒素量(%)/小麦粉中の窒素量(%))×100
【0054】
(3)RVA粘度特性の評価
上記で調製した湿熱処理小麦粉(試験例1~12)、湿熱処理前の原料小麦粉A(参考例1)、及び湿熱処理前の原料小麦粉B(参考例2)について、それらの各3.5gを25mLの0.5mM硝酸銀水溶液に入れてよくかき混ぜて懸濁し、14質量%濃度の懸濁液を調製した。この懸濁液(25℃)を、ラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA装置)(RVA4500、Perten Instruments社製)(パドル回転数:160rpm)に供して、米国穀物化学会の公定法(AACC Method 76-21)に基づいて下記表1の条件にて粘度を測定し、粘度特性(最高粘度)を評価した。
【0055】
【0056】
(4)アミラーゼ消化性の測定
小麦粉のアミラーゼ消化性の測定は、下記の操作工程により実施した。
(i)上記で調製した湿熱処理小麦粉試料(試験例1~12)、湿熱処理前の原料小麦粉A(参考例1)又は湿熱処理前の原料小麦粉B(参考例2)試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα-アミラーゼ溶液(Aspergillus oryzae由来,50unit/mL)を1mL添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理する。
(ii)次いで、これにクエン酸-燐酸水溶液(pH2.5)を5mL添加して反応を停止させ、遠心分離(1000g、5分)して上清を得る。
(iii)この上清0.1mLにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来,2unit/0.1mL)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定する。
(iv)得られた吸光度から、標準溶液を用いて作成したD-グルコースの検量線を利用して、生成したグルコース量を算出する。
【0057】
未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合における湿熱処理小麦粉のアミラーゼ消化性は、下式から求めることができる。
アミラーゼ消化性={(湿熱処理小麦粉から生成したグルコース量)/(未処理小麦粉から生成したグルコース量)}×100
【0058】
3.パン類用小麦粉の物性評価結果
結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
参考例1、2(未処理小麦粉)、試験例1~12(湿熱処理小麦粉)の小麦粉における未糊化澱粉の割合を測定した。本技術に係る試験例4~10(パン類用小麦粉)の小麦粉は、未糊化澱粉の含有割合が70%以上であることが確認された。一方、試験例12の非改質小麦粉は、未糊化澱粉の割合が50%であり、最高粘度が300cPに満たないものであることが確認された。
【0061】
[実験例2]
【0062】
実験例2では、パン類を製造する場合において、各試験例の小麦粉の配合効果を調べた。なお、本実験例では、パン類の一例として、ロールパンを製造した。
【0063】
1.パン類の製造
[加糖中種法:参考例3~4、試験例2-1~2-12]
下記表3に記載の配合で、加糖中種法によってロールパンを製造した。具体的には、小麦粉A70質量部、パン酵母3質量部、イーストフード0.1質量部、ブドウ糖3質量部を低速で3分間、中速で2分間ミキシングして、混捏生地を調製した。生地の捏上温度は、25℃とした。この混捏生地を、28℃で150分間発酵させて、中種を調製した。次にこの中種に、下記表3の「本捏配合」欄に記載の各成分のうち、小麦粉A29質量部、参考例1~2の小麦粉1質量部又は試験例1~12の小麦粉1質量部、脱脂粉乳2質量部、上白糖20質量部、食塩1.2質量部、全卵10質量部を加え、低速で4分間、中速で5分間、高速で1分間ミキシングした。次に、ショートニング15質量部を加え、さらに低速で4分間、中速で3分間、高速で2分間ミキシングして、混捏生地を調製した。生地の捏上温度は、27℃とした。この混捏生地を28℃で20分間フロアタイムをとった後、60gに分割して丸めた。28℃で20分間のベンチタイムをとった後、ロール状に成形し、38℃、湿度85%で60分間ホイロをとった後、210℃、10分間焼成してロールパンを得た。これを30分間放冷して粗熱をとった後、OPP袋に入れ、封をした。
【0064】
【0065】
本実験例で使用した各材料は、以下のとおりである。
小麦粉A:「クオリテ」(昭和産業株式会社製(蛋白質含量13.0質量%)(強力粉))
小麦粉B:「月桂冠」(昭和産業株式会社製(蛋白質含量7.8質量%)(薄力粉))
ブドウ糖:「含水結晶ぶどう糖」(昭和産業株式会社製)
イーストフード:「Cオリエンタルフード」(オリエンタル酵母工業株式会社製)
パン酵母:「カネカイースト」(株式会社カネカ製)
上白糖:「精製上白糖」(株式会社パールエース製)
食塩:「ナクルフォー2」(ナイカイ塩業株式会社製)
ショートニング:「エンブレム」(ミヨシ油脂株式会社製)
脱脂粉乳:「明治脱脂粉乳」(株式会社明治製)
全卵:「液全卵(殺菌)」(キユーピータマゴ株式会社製)
【0066】
2.評価
【0067】
<室温で1日間保管後>
前記で製造した参考例3~4、試験例2-1~2-12に係るロールパンについて、焼成後、室温で1日間保存したものを喫食して、下記の評価基準に基づいて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。なお、訓練を受けた専門のパネル10名の平均値を算出し、評点を決定した。
【0068】
[弾力(食感)]
5:コントロールと比べて、咀嚼時の歯にあたるときの抵抗感が強く、噛み応えがあり、非常に良好
4:コントロールと比べて、咀嚼時の歯にあたるときの抵抗感があり、噛み応えが感じられ、良好
3:コントロールと同等
2:コントロールと比べて、咀嚼時の歯にあたるときの抵抗感があまりなく、やや噛み応えがなく、やや不良
1:コントロールと比べて、咀嚼時の歯にあたるときの抵抗感がなく、噛み応えがなく、不良
【0069】
[歯切れ(食感)]
5:コントロールと比べて、とても噛み切りやすく、非常に良好
4:コントロールと比べて、噛み切りやすく、良好
3:コントロールと同等
2:コントロールと比べて、やや噛み切りにくく、やや不良
1:コントロールと比べて、とても噛み切りにくく、不良
【0070】
[復元性(外観)]
5:コントロールと比べて、噛み切ったあとのパンの断面が押しつぶされることなく、形状がもとに戻り、非常に良好
4:コントロールと比べて、噛み切ったあとのパンの断面があまり押しつぶされることなく、形状が概ねもとに戻り、良好
3:コントロールと同等
2:コントロールと比べて、噛み切ったあとのパンの断面が押しつぶされ、形状があまりもとに戻らず、やや不良
1:コントロールと比べて、噛み切ったあとのパンの断面が押しつぶされ、形状がもとに戻らず、不良
【0071】
<室温で1日間保管後再加熱>
前記で製造したOPP袋入りロールパンを室温で1日間保管した後、電子レンジ(NE-1902S、パナソニック株式会社製、1500W)で7秒間、加熱し、室温に3分間保管した。その後、上記室温で1日保管後の評価と同様に復元性、歯切れ、及び弾力を評価した。
【0072】
3.結果
結果を上記表3に示す。
【0073】
表3に示すとおり、未糊化澱粉の含有割合が70%以上であり、小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%以下であり、RVAにおける最高粘度が300cP以上2500cP以下である小麦粉を用いた試験例2-4~2-10は、弾力、歯切れ、及び復元性が良好になることが分かった。また、試験例2-4~2-10は、アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の60%以上500%以下であり、弾力、歯切れ、及び復元性が良好になることが分かった。特に、試験例6の小麦粉を用いた試験例2-6は、試験例4の小麦粉を用いた試験例2-4よりも全ての評価項目が極めて良好であることが分かった。これは、同じ製造条件下でも、原料小麦粉として強力粉を用いる方がより好ましいことを示している。本捏配合において試験例4、6の小麦粉を配合した試験例2-4、2-6は、本捏配合において各試験例の湿熱処理を施した小麦粉を配合する代わりに湿熱処理前の原料小麦粉Aのみを配合した参考例3、各試験例の湿熱処理を施した小麦粉を配合する代わりに湿熱処理前の原料小麦粉Bを配合した参考例4に比べて、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて良好な結果であった。
【0074】
小麦粉全蛋白質中の酢酸可溶蛋白質含量が15質量%を超え、RVAにおける最高粘度が2500cPを超える試験例2-1~2-3は、弾力、歯切れ、及び復元性のいずれも劣ったものになることが分かった。
【0075】
RVAにおける最高粘度が300cPに満たない、試験例2-11、2-12は、弾力、歯切れ、及び復元性が劣ったものになることが分かった。また、試験例2-11、2-12は、アミラーゼ消化性が、未処理小麦粉のアミラーゼ消化性を100%とした場合の500%を超えるものであった。
【0076】
[実験例3]
【0077】
実験例3では、小麦粉の含有量を変更して、効果に差が生じるかを検討した。
【0078】
1.パン類の製造
下記表4に示す配合で、前記実験例2と同様の方法を用いて、ロールパンを製造した。
【0079】
2.評価
前記で製造した参考例3、試験例3-1~3-9に係るロールパンについて、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0080】
3.結果
結果を下記表4に示す。
【0081】
【0082】
本実験例で使用した各材料は、実験例2で使用したものと同じである。
【0083】
表4に示すとおり、パン類に使用する穀粉の合計質量に対する試験例6の小麦粉の含有量が0.1~30質量%の範囲内である試験例3-1~3-8は、試験例6の小麦粉を含まない参考例3に比べて、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて良好な結果であった。
【0084】
一方、パン類に使用する穀粉の合計質量に対する試験例6の小麦粉の含有量が50質量%である試験例3-9は、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて悪くなることが分かった。
【0085】
[実験例4]
【0086】
実験例4では、試験例6の小麦粉を用いてパン類を製造した場合のレンジアップ耐性について検討を行った。
【0087】
1.パン類の製造
実験例2と同じ材料、組成、同様の方法を用いてロールパンを製造した。
【0088】
2.評価
【0089】
<10℃で1日間冷蔵保管後再加熱>
前記で製造したOPP袋入りロールパンを10℃で1日間冷蔵保管した後、電子レンジ(NE-1902S、パナソニック株式会社製、1500W)で10秒間、加熱し、室温に3分間保管した。その後、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0090】
<-20℃で1日間冷凍保管後再加熱>
前記で製造したOPP袋入りロールパンを-20℃で1日間冷凍保管した後、電子レンジ(NE-1902S、パナソニック株式会社製、1500W)で20秒間、加熱し、室温に3分間保管した。その後、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0091】
3.結果
結果を下記表5に示す。
【0092】
【0093】
本実験例で使用した各材料は、実験例2で使用したものと同じである。
【0094】
表5に示すとおり、本捏配合において試験例6の小麦粉が配合された試験例4-1は、本捏配合において試験例6の小麦粉の代わりに小麦粉Aを30質量部配合された参考例3に比べて、10℃で1日間冷蔵保管後、及び-20℃で1日間冷凍保管後に電子レンジで加熱後においても、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて良好な結果が得られた。
【0095】
[実験例5]
【0096】
実験例5では、試験例6の小麦粉を用いて焼成後に冷凍したパン類について検討を行った。
【0097】
1.パン類の製造
実験例2と同じ材料、組成、同様の方法を用いてロールパンを製造した。
【0098】
2.評価
【0099】
<-20℃で冷凍保管後室温解凍>
前記で製造したOPP袋入りロールパンを-30℃で60分間急速冷凍して冷凍ロールパンを製造した。-20℃で7日間冷凍保管した後、得られた冷凍ロールパンを20℃で180分間解凍した。その後、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0100】
3.結果
結果を下記表6に示す。
【0101】
【0102】
本実験例で使用した各材料は、実験例2で使用したものと同じである。
【0103】
表6に示すとおり、試験例6の小麦粉が配合された試験例5-1は、試験例6の小麦粉を含まずに、その代わりに小麦粉Aを30質量部配合された参考例3に比べて、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて良好な結果が得られた。
【0104】
[実験例6]
【0105】
実験例6では、試験例6の小麦粉を用いてパン類を製造した場合の冷蔵保管耐性について検討を行った。
【0106】
1.パン類の製造
下記表7に示す配合で、中種法にて、試験例6-1に係る食パンを製造した。具体的には、小麦粉A70質量部、パン酵母2質量部、イーストフード0.1質量部を低速で3分間、中速で2分間ミキシングして、混捏生地を調製した。生地の捏上温度は、25℃とした。この混捏生地を、28℃で4時間発酵させて、中種を調製した。次にこの中種に、下記表7の「本捏配合」欄に記載の各成分のうち、小麦粉A29質量部、試験例6の小麦粉1質量部、上白糖7質量部、食塩2質量部、脱脂粉乳2質量部を加え、低速で3分間、中速で5分間、高速で2分間ミキシングした。次に、ショートニング7質量部を加え、さらに低速3分間、中速で3分間、高速で3分間ミキシングして、混捏生地を調製した。生地の捏上温度は、27℃とした。この混捏生地を28℃で20分間フロアタイムをとった後、220gに分割して丸めた。28℃で20分間のベンチタイムをとった後、U字状に成形し、38℃、湿度85%で60分間ホイロをとった後、200℃、40分間焼成して食パンを得た。これを90分間放冷して粗熱をとった後、1cm幅にスライスし、PP袋に入れ、封をした。また、本捏配合において試験例6の小麦粉を配合せずに、小麦粉Aを30質量部配合する以外は、試験例6-1と同様の方法で参考例5に係る食パンを製造した。
【0107】
2.評価
<10℃で1日間冷蔵保管>
前記で製造したPP袋入り食パンを10℃で1日間冷蔵保管した後、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0108】
<室温で1日間保管後、10℃で1日間冷蔵保管>
前記で製造したPP袋入り食パンを室温で1日間保管後、10℃で1日間冷蔵保管した後、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0109】
3.結果
結果を下記表7に示す。
【0110】
【0111】
本実施例で使用した各材料は、以下のとおりである。
小麦粉A:「クオリテ」(昭和産業株式会社製(蛋白質含量13.0質量%)(強力粉))
パン酵母:「カネカイースト」(株式会社カネカ製)
イーストフード:「Cオリエンタルフード」(オリエンタル酵母工業株式会社製)
上白糖:「精製上白糖」(株式会社パールエース製)
食塩:「ナクルフォー2」(ナイカイ塩業株式会社製)
ショートニング:「エンブレム」(ミヨシ油脂株式会社製)
脱脂粉乳:「明治脱脂粉乳」(株式会社明治製)
【0112】
表7に示すとおり、本捏配合において試験例6の小麦粉が配合された試験例6-1は、本捏配合において試験例6の小麦粉の代わりに小麦粉Aを30質量部配合された参考例5に比べて、10℃で1日間冷蔵保管した場合、及び室温で1日間保管後、10℃で1日間冷蔵保管した場合のいずれも、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて良好な結果が得られた。
【0113】
[実験例7]
【0114】
実験例7では、試験例6の小麦粉を用いて成形済み冷凍パン生地を製造し、得られた成形済み冷凍パン生地を用いてパン類を製造した場合の食感について評価した。また、試験例6の小麦粉を用いて半焼成後冷凍パン類を製造し、得られた半焼成後冷凍パン類を用いてパン類を製造した場合の食感について評価した。
【0115】
1.パン類の製造
(成型後冷凍)
表8に記載の配合で、試験例7-1に係るロールパンを製造した。具体的には、表8に記載の各成分のうち、ショートニング以外の成分を、低速で7分間、中速で5分間、高速で2分間ミキシングした。次に、ショートニングを加え、さらに低速で3分間、中速で4分間、高速で3分間ミキシングして、混捏生地を調製した。生地の捏上温度は、20℃とした。調製した混捏生地について、20℃で5分間フロアタイムをとった後、60gに分割して丸めた後、20℃で15分間のベンチタイムをとった。生地をロール状に成形し、-30℃で60分間急速冷凍して成形済み冷凍パン生地を製造した。-20℃で7日間冷凍保管した後、得られた成形済み冷凍パン生地を20℃で180分間解凍し、36℃、湿度80%で60分間のホイロをとった後、200℃で10分間焼成してロールパンを得た。また、試験例6の小麦粉を配合せずに、小麦粉Aを30質量部配合する以外は、試験例7-1と同様の方法で参考例6に係るロールパンを製造した。
【0116】
(半焼成後冷凍)
表8に記載の配合で、試験例7-1に係るロールパンを製造した。具体的には、表8に記載の各成分のうち、ショートニング以外の成分を、低速で7分間、中速で5分間、高速で2分間ミキシングした。次に、ショートニングを加え、さらに低速で3分間、中速で4分間、高速で3分間ミキシングして、混捏生地を調製した。生地の捏上温度は、20℃とした。調製した混捏生地について、20℃で5分間フロアタイムをとった後、60gに分割して丸めた後、20℃で15分間のベンチタイムをとった。生地をロール状に成形し、-30℃で60分間急速冷凍して成形済み冷凍パン生地を製造した。-20℃で7日間冷凍保管した後、得られた成形済み冷凍パン生地を20℃で180分間解凍し、36℃、湿度80%で60分間のホイロをとった後、180℃で10分間焼成してロールパンを得た。得られた半焼成ロールパンを-30℃で60分間急速冷凍して、-20℃で7日間冷凍保管した後、得られた半焼成冷凍ロールパンをオーブントースター(1000W)で2分間加熱し、ロールパンを製造した。また、試験例6の小麦粉を配合せずに、小麦粉Aを30質量部配合する以外は、試験例7-1と同様の方法で参考例6に係るロールパンを製造した。
【0117】
【0118】
本実験例で使用した各材料は、以下のとおりである。
小麦粉A:「クオリテ」(昭和産業株式会社製(蛋白質含量13.0質量%)(強力粉))
グラニュー糖:「グラニュ糖GS」(三井製糖株式会社製)
食塩:「ナクルフォー2」(ナイカイ塩業株式会社製)
脱脂粉乳:「明治脱脂粉乳」(株式会社明治製)
ショートニング:「エンブレム」(ミヨシ油脂株式会社製)
パン酵母:「カネカイースト」(株式会社カネカ製)
冷凍生地改良剤:「ジョーカーキモ」(ピュラトスジャパン株式会社製)
【0119】
2.評価
<成型後冷凍>
前記で製造した参考例6、試験例7-1に係るロールパンについて、室温で1日間保存したものを喫食して、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
<半焼成後冷凍>
2.評価
前記で製造した参考例6、試験例7-1に係るロールパンを喫食して、前記実験例2と同様の方法を用いて、弾力、歯切れ、及び復元性を評価した。
【0120】
3.結果
結果を上記表8に示す。
【0121】
表8に示すとおり、成型後冷凍された試験例6の小麦粉が配合された試験例7-1及び半焼成後冷凍された試験例6の小麦粉が配合された試験例7-1は、試験例6の小麦粉の代わりに小麦粉Aを30質量部配合された参考例6に比べて、弾力、歯切れ、及び復元性の全てにおいて良好な結果が得られた。