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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100017
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】減塩パンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 8/02 20060101AFI20230710BHJP
   A21D 13/06 20170101ALI20230710BHJP
【FI】
A21D8/02
A21D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000322
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】益田 美子
(72)【発明者】
【氏名】山本 克広
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DK03
4B032DK43
4B032DP16
4B032DP33
(57)【要約】
【課題】減塩パンの製造方法を提供すること。
【解決手段】中種製パン法であって、穀粉原料100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下の食塩を中種のみに配合し、かつ、脱脂粉乳を、その使用量の20質量%以上を中種に配合し、中種の発酵時間を2時間以上3時間以下にすることを特徴とする減塩パンの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中種製パン法であって、穀粉原料100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下の食塩を中種のみに配合し、かつ、脱脂粉乳を、その使用量の20質量%以上を中種に配合し、中種の発酵時間を2時間以上3時間以下にすることを特徴とする減塩パンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減塩パンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
減塩パンの製造方法として様々な方法が試みられている。
例えば、中種法によってパンを製造するに際して、中種に用いる小麦粉の比率を50%乃至それ以下とし、かつ中種に食塩とエチルアルコールを同時に添加して発酵させることを特徴とするパンの製造法が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、グルテニンサブユニットの遺伝子型が少なくともグルテンの網目構造を密にするGlu-D1dを持ち、かつ、網目構造の量を増やすGlu-B3b、Glu-B3gおよびGlu-B3abの少なくともいずれかを持ち、さらに、Wxy-B1が欠損した小麦品種の小麦を製粉したベース小麦粉と、前記ベース小麦粉とグルテニンサブユニットの遺伝子型が異なる穀物粉とを用いて製造した素材用パンであって、前記素材用パンは、前記ベース小麦粉と前記穀物粉を合わせた全穀物粉量の30~90重量%が前記ベース小麦粉であり、さらに、食塩含有量が0~1重量%であり、無塩、低塩もしくは減塩であることを特徴とする素材用パンが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-23855号公報
【特許文献2】特開2017-6021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、減塩パンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、中種製パン法であって、穀粉原料100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下の食塩を中種のみに配合し、かつ、脱脂粉乳を、その使用量の20質量%以上を中種に配合し、中種の発酵時間を2時間以上3時間以下にすることにより、作業性が良好でパン体積も十分な減塩パンを製造することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、中種製パン法であって、穀粉原料100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下の食塩を中種のみに配合し、かつ、脱脂粉乳を、その使用量の20質量%以上を中種に配合し、中種の発酵時間を2時間以上3時間以下にすることを特徴とする減塩パンの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の減塩パンの製造方法によれば、作業性が良好でパン体積も十分な減塩パンを製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、減塩パンの製造方法であるが、本発明において、減塩パンとは、使用する穀粉100質量部に対して1.5質量部以下の食塩を使用するパンをいう。
通常のパンでは、塩の使用量は、2質量部程度である。
【0008】
本発明において、中種製パン法は、塩及び脱脂粉乳の使用方法、中種の発酵時間以外は一般に行われている中種製パン法を使用することができ、例えば、穀粉の割合は、中種に60質量%~80質量%を使用する。
食塩の使用量は、穀粉原料100質量部に対して0.5質量部以上1.5質量部以下であり、全量を中種に使用する。
塩の使用量が0.5質量部未満では、加水量は著しく減少し、生地がべたついて作業性が劣るため好ましくない。
また、1.5質量部を超えると本発明の減塩パンではなくなる。
塩を本捏に使用した場合は、全量を中種に使用した場合に比較して加水量が減るため好ましくない。
なお、塩は本捏に使用するのが一般的である。
【0009】
本発明では、脱脂粉乳を必須の原料とするが、その使用量は、穀粉100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下である。
全量を中種に使用することが好ましいが、本捏にも一部使用することができる。
この場合、中種に使用する割合が20質量%以上となるように使用する。
脱脂粉乳の配合量が2質量部未満では生地がべたつき作業性が劣り好ましくない。
11質量部を超えると生地が硬くなり進展性が劣るので好ましくない。
好ましい脱脂粉乳の使用量は、穀粉100質量部に対して、4質量部以上8質量部以下である。
なお、脱脂粉乳は本捏に使用するのが一般的である。
【0010】
前記塩と前記脱脂粉乳以外の原料は、従来から中種製パン法に使用されている原料が使用でき、特に限定はない。
例えば、小麦粉は、従来からパン類の製造に使用されている小麦粉が使用でき、強力小麦粉、中力小麦粉、薄力小麦粉等が使用できる。
好ましくは強力小麦粉である。
【0011】
小麦粉以外の原料としては、従来からパン類の製造に使用されている原料であれば特に限定なく使用することができる。
例えば、デュラム小麦粉、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉などの穀粉類、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類、及び、これらの澱粉を、α化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類、イースト、イーストフード、ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトース等の糖類、卵黄、卵白、全卵、その他の卵に由来する成分である卵成分、粉乳、脱脂粉乳等の乳成分、大豆粉乳、ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類、乳化剤、食塩等の無機塩類、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤等を挙げることができる。
【0012】
また、必要により、オリーブ、チーズ類、チョコレート、ナッツ、ごま、果実加工品等を配合したり、トッピング等に使用することもできる。
また、紅茶葉やココアパウダーやインスタントコーヒー、及びこれらを煮出したもの、抹茶やすりごまやアマニ粉末、濃縮果汁、蜂蜜等を配合して製品の特徴づけを行ってもよい。
また、製パン用折込油脂やフラワーペーストを折り込むこともできる。
得られた減塩パンは、惣菜類をサンドイッチしたり、餡、ジャム、クリーム類などを包餡することもできる。
【0013】
本発明では、中種の発酵時間は、2時間以上3時間以下である。
2時間未満では、発酵不足になり、3時間を超えると生地がべたつきやすくなるため作業性が劣り好ましくない。
一般的は中種製パン法では、中種の発酵時間は、4時間程度なので本発明では、製造時間を短縮できる効果もある。
【0014】
本発明で得られた減塩パンは、一般的な中種製パン法で得られたパンと同様に保存や食すことができ使用方法には特に限定はない。
本発明の減塩パン類として、食パン、ロールパン、菓子パン、調理パン等を挙げることができる。
食パンとしては、例えば、白食パン、湯種パン、バラエティーブレッド、イングリッシュマフィン等を挙げることができる。
ロールパンとしては、テーブルロール、バターロール、コッペパン、スィートロール、バンズ等を挙げることができる。
菓子パンとしては、アンパン、ジャムパン、クリームパン、カレーパン等のフィリング類をパンに詰めたものや、メロンパン、レーズンパン、ブリオッシュ、イーストドーナツ、クロワッサン等を挙げることができる。
調理パンとしては、ハンバーガー、ホットドック、ピザ等を挙げることができる。
また、バゲット、パリジャン、バタール、ブール、シャンピニヨン、カンパーニュ等のフランスパンや、パンドロデブ、リュスティック、グリッシーニ、フォカッチャ等の砂糖、卵、油脂などの配合割合が少ないパン類でもよい。
【実施例0015】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1~6、比較例1~2]脱脂粉乳の配合量による影響
強力小麦粉70質量部、イースト2.3質量部、イーストフード0.1質量部、表1に示す量の塩、脱脂粉乳及び水を加え、低速2分間、中速2分間ミキシングした後、2時間発酵させて中種を得た。
本捏として前記中種に、強力小麦粉30質量部、上白糖5質量部、表1に示す量の塩、脱脂粉乳及び水を加え、低速2分間、中速3分間、高速1分間ミキシングし、ショートニング5質量部を加えて、さらに低速1分間、中速3分間、高速5分間ミキシングして本捏生地を得た。
前記本捏生地を、フロアタイムを20分間取り460gに分割しベンチタイムを20分間取り、この分割した生地をワンローフ型に入れ、ホイロを40分間取り210℃、25分間焼成し食パンを得た。
表1中、配合量の単位は、質量部である。
前記工程において、分割する際の作業性を以下の基準で10名のパネラーにより評価を行った。
また、得られた食パンの体積を測定した。
パン体積の測定は、焼成直後の製品を、菜種置換法により測定した。
すなわち、一定容量の容器に満杯に詰めた菜種の体積から、同じ容器に焼成直後の製品と菜種を詰めて満杯にしたときの菜種の体積を差引くことで、焼成直後の体積を求め、パン体積とした。
パン体積の評価基準としてパン体積が1750cc未満の場合は、パン体積が小さく製品価値が低いパンとなるため、パン体積が1750cc以上であることを合格基準とした。
また、加水量の基準として中種と本捏に使用した水の和が、従来の塩の量を使用した場合(参考例2)の65質量部以上であるものを合格基準とした。
前記パン体積の評価基準、及び前記加水量の評価基準を両方満たし、かつ作業性(平均点)が3.0点以上であるものを合格とした。
得られた結果を表1に示す。
・作業性
5点 ベタつきがなく伸展性があり非常に作業しやすく非常に良い
4点 ベタつきが少なく伸展性は少なからずあり、かなり作業しやすく良い
3点 ベタつきや伸展性は普通であり問題なく作業は出来るので、普通
2点 ややベタつきがあり、やや伸展性に欠けて作業しにくく、悪い
1点 ベタつきがあり、伸展性に欠けており、作業しにくく非常に悪い
なお、加水量は作業性が最も良好になるように調整した。
【0016】
【表1】
【0017】
脱脂粉乳を中種ではなく本捏に使用した場合(比較例1)は加水量が少なく、生地がベタついて作業性が劣った。
脱脂粉乳の使用量が多すぎる場合(比較例2)は伸展性が劣り、パン体積も劣った。
【0018】
[実施例6~7、比較例3~4、参考例1~2]食塩の配合量による影響
実施例1において、塩、脱脂粉乳及び水の量を表2に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして評価を行った。
表2中、配合量の単位は、質量部である。
得られた結果を表2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
食塩を全く使用しない場合(比較例3)は加水量を減らしても、生地がベタついて作業性が劣った。
食塩を中種ではなく、本捏に使用した場合(比較例4)は生地のベタつきがあり作業性が劣った。
参考例1は、脱脂粉乳と塩を本捏に配合する従来からの減塩パンの製造方法であるが、生地のベタつきがあり作業性が劣った。
参考例2は、本発明における減塩パンではなく塩を2質量部使用し塩と脱脂粉乳を本捏に使用した一般的に製造されているパンであり、作業性は普通であった。