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特開2023-100073基板分析システム、基板分析方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100073
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】基板分析システム、基板分析方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000459
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正志
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106BA08
4M106BA20
4M106CA38
4M106DB04
4M106DB07
4M106DB13
4M106DB19
4M106DH13
4M106DJ04
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】基板処理についての処理状態を効率よく分析することができる。
【解決手段】分析装置10は、基板表面を撮像する撮像ユニット11と、撮像ユニット11の撮像結果に基づき、基板表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲を推定する欠陥範囲推定部131と、基板表面に対して光が照射された際の欠陥範囲におけるグレイ値を取得するグレイ値取得部132と、グレイ値に基づいて、欠陥範囲における欠陥種類を判別する欠陥種類判別部133と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像結果に基づき、前記基板表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲を推定する欠陥範囲推定部と、
前記基板表面に対して光が照射された際の前記欠陥範囲におけるグレイ値を取得するグレイ値取得部と、
前記グレイ値に基づいて、前記欠陥範囲における欠陥種類を判別する欠陥種類判別部と、を備える基板分析システム。
【請求項2】
前記グレイ値取得部は、前記欠陥範囲における複数の波長それぞれに対応した前記グレイ値を取得し、
前記欠陥種類判別部は、前記複数の波長それぞれに対応したグレイ値に基づき、前記欠陥種類を判別する、請求項1記載の基板分析システム。
【請求項3】
前記欠陥種類判別部は、1つの前記欠陥範囲において前記グレイ値の分布が互いに異なる複数の領域が存在する場合には、前記複数の領域毎に前記欠陥種類を判別する、請求項1又は2記載の基板分析システム。
【請求項4】
前記欠陥種類判別部は、前記複数の波長それぞれに対応したグレイ値の間における変化傾向に基づいて、前記欠陥種類を判別する、請求項2記載の基板分析システム。
【請求項5】
前記欠陥種類判別部によって判別された前記欠陥種類に基づいて、前工程における欠陥発生要因を推定する要因推定部を更に備える、請求項1~4のいずれか一項記載の基板分析システム。
【請求項6】
基板表面を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程における撮像結果に基づき、前記基板表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲を推定する欠陥範囲推定工程と、
前記基板表面に対して光が照射された際の前記欠陥範囲におけるグレイ値を取得するグレイ値取得工程と、
前記グレイ値に基づいて、前記欠陥範囲における欠陥種類を判別する欠陥種類判別工程と、を備える基板分析方法。
【請求項7】
前記グレイ値取得工程では、前記欠陥範囲における複数の波長それぞれに対応した前記グレイ値を取得し、
前記欠陥種類判別工程では、前記複数の波長それぞれに対応したグレイ値に基づき、前記欠陥種類を判別する、請求項6記載の基板分析方法。
【請求項8】
前記欠陥種類判別工程では、1つの前記欠陥範囲において前記グレイ値の分布が互いに異なる複数の領域が存在する場合には、前記複数の領域毎に前記欠陥種類を判別する、請求項6又は7記載の基板分析方法。
【請求項9】
前記欠陥種類判別工程では、前記複数の波長それぞれに対応したグレイ値の間における変化傾向に基づいて、前記欠陥種類を判別する、請求項7記載の基板分析方法。
【請求項10】
前記欠陥種類判別工程において判別された前記欠陥種類に基づいて、前工程における欠陥発生要因を推定する要因推定工程を更に備える、請求項6~9のいずれか一項記載の基板分析方法。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか一項記載の基板分析方法を装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板分析システム、基板分析方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上の積層膜を構成する各層に関する処理後の基板の撮像画像を生成する工程と、積層膜の最表層を含む複数の層それぞれについて、撮像画像に基づいて推定された特徴量を示す情報を示す工程と、を有する基板処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-97218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理についての処理状態を効率よく分析することができる基板分析システム、基板分析方法及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る基板分析システムは、基板表面を撮像する撮像部と、撮像部の撮像結果に基づき、基板表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲を推定する欠陥範囲推定部と、基板表面に対して光が照射された際の欠陥範囲におけるグレイ値を取得するグレイ値取得部と、グレイ値に基づいて、欠陥範囲における欠陥種類を判別する欠陥種類判別部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理についての処理状態を効率よく分析することができる基板分析システム、基板分析方法及び記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】基板処理システムの概略構成を例示する模式図である。
図2】欠陥範囲推定及び欠陥種類判別を説明する図である。
図3】撮像ユニットの構成を模式的に示す縦断面図である。
図4】撮像ユニットの構成を模式的に示す横断面図である。
図5】グレイ値検出ユニットの構成を模式的に示す縦断面図である。
図6】グレイ値検出ユニットの構成を模式的に示す横断面図である。
図7】欠陥種類毎のグレイ値と波長との関係を示す図である。
図8】各波長間におけるグレイ値の変化傾向の一例を示す図である。
図9】回析部のハードウェア構成を例示する模式図である。
図10】基板分析方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び、当該感光性被膜の現像を施すシステムである。また、基板処理システム1は、形成された感光性被膜のパターンに沿って酸化膜・薄膜を削り取るエッチング、及び、エッチング後の洗浄処理を実施する。処理対象の基板としては、半導体ウエハ、ガラス基板、マスク基板、又はFPD(Flat Panel Display)等が挙げられる。基板は、半導体ウエハ等の上に、前段の処理において被膜等が形成されたものも含む。
【0010】
図1は、基板処理システム1の概略構成を例示する模式図である。図1に示される例では、基板処理システム1は、分析装置10(基板分析システム)と、塗布装置20と、現像装置30と、露光装置40と、エッチング装置50と、洗浄装置60と、を備えている。これらの各装置は、任意の2つ以上の装置が1つの装置で実現されていてもよい。例えば、塗布装置20と現像装置30とが1つの塗布・現像装置とされていてもよい。
【0011】
塗布装置20は、基板の表面に感光性被膜であるレジスト膜を形成する。露光装置40は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する露光処理を行う。現像装置30は、露光処理後においてレジスト膜の現像処理を行う。エッチング装置50は、形成されたレジスト膜のパターンに沿って酸化膜・薄膜を削り取るエッチング処理を行う。
【0012】
洗浄装置60は、エッチング処理後の基板に対する洗浄処理を行う。洗浄装置60は、例えば、回転する基板に対してSC1を供給し洗浄した後に、基板に対してIPAを供給し基板を乾燥させる装置を含んでいてもよい。また、洗浄装置60は、例えば、複数枚並ぶ基板群に対してリン酸を供給するバッチ処理を行った後に、基板群に対してIPAを供給し各基板を乾燥させる装置を含んでいてもよい。
【0013】
分析装置10は、基板処理システム1に含まれる各装置における基板処理による基板の処理状態を分析する装置である。分析装置10は、基板における欠陥範囲を推定すると共に、該欠陥範囲におけるグレイ値から、該欠陥範囲における欠陥種類を判別する。また、分析装置10は、判別した欠陥種類に基づいて、前工程における欠陥発生要因を推定してもよい。
【0014】
図2は、欠陥範囲推定及び欠陥種類判別を説明する図である。図2(a)は欠陥範囲推定の一例を説明する図であり、図2(b)は図2(a)に示される欠陥範囲についての欠陥種類判別の一例を説明する図である。図2(a)に示される例では、基板Wを撮像した撮像結果から、基板Wにおける欠陥範囲であると推定される領域d1~d3が特定されている。そして、図2(b)に示されるように、各領域d1~d3について、グレイ値が取得されることにより、領域d1の欠陥が現像液に係る欠陥であり、領域d2の欠陥がイットリウムに係る欠陥であり、領域d3の欠陥がレジストに係る欠陥であることが特定されている。このようにして欠陥種別が判別されることにより、欠陥の要因(欠陥が生じた工程、装置・モジュール)を推定することが可能になる(詳細は後述)。
【0015】
図1に戻り、分析装置10は、撮像ユニット11と、グレイ値検出ユニット12と、解析部13と、を有している。撮像ユニット11と解析部13とは相互に通信可能とされている。また、グレイ値検出ユニット12と解析部13とは相互に通信可能とされている。なお、図1に示された分析装置10の構成は一例であり、分析装置10が備える各構成の配置は図1に示された例に限定されない。つまり、撮像ユニット11や解析部13を構成するそれぞれの機能部が個別にその他の装置に搭載されて、そのそれぞれの機能部間で必要な情報を授受するようにしてもよい。ここで言う解析部13を構成するそれぞれの機能部とは、欠陥範囲推定部131、グレイ値取得部132、欠陥種類判別部133、要因推定部134である。例えば、撮像ユニット11や欠陥範囲推定部131が、塗布装置20等のその他の装置に搭載されていてもよい。また、解析部13の欠陥種類判別部133及び要因推定部134が、その他のサーバ(不図示)に搭載されていてもよい。また、分析装置10自体が、例えば塗布装置20等のその他の装置に搭載されていてもよい。
【0016】
撮像ユニット11は、解析部13の制御に応じて基板Wの表面の撮像を行い、撮像結果を解析部13に送信する。当該撮像結果に基づいて、解析部13によって基板Wの欠陥範囲が推定される(詳細は後述)。
【0017】
図3は、撮像ユニット11の構成を模式的に示す縦断面図である。図4は、撮像ユニット11の構成を模式的に示す横断面図である。撮像ユニット11は、図3及び図4に示されるように、ケーシング110を有している。ケーシング110内には、基板Wが搭載される載置台115が設けられている。この載置台115は、モータ等の回転駆動部116によって、回転・停止が自在である。ケーシング110の底面には、ケーシング110の一端側(図4中のX方向負方向側)から他端側(図4中のX方向正方向側)まで延伸するガイドレール113が設けられている。載置台115及び回転駆動部116は、ガイドレール113上に設けられ、駆動装置117によってガイドレール113に沿って移動できる。
【0018】
ケーシング110内の他端側(図4中のX方向正方向側)の側面には、カメラ111が設けられている。カメラ111としては、例えばラインセンサカメラが用いられる。ケーシング110の上部中央付近には、ハーフミラー114が設けられている。ハーフミラー114は、カメラ111と対向する位置に、鏡面が鉛直下方を向いた状態からカメラ111の方向に向けて45度上方に傾斜した状態で設けられている。ハーフミラー114の上方には、光源112が設けられている。ハーフミラー114及び光源112は、ケーシング110内部の上面に固定されている。光源112からの照明は、ハーフミラー114を通過して下方に向けて照らされる。そして、光源112の下方にある物体(ここでは基板W)によって反射した光は、ハーフミラー114で更に反射して、カメラ111に取り込まれる。このようにして、カメラ111は、基板Wの表面を撮像することができる。すなわち、撮像ユニット11では、基板Wをガイドレール113に沿って一方向(図4中のX方向)に動かすことにより、カメラ111によって基板Wの表面を走査するように撮像する。
【0019】
グレイ値検出ユニット12は、撮像ユニット11による撮像結果に基づき解析部13によって推定された欠陥範囲(詳細は後述)に対して、光を照射した際のグレイ値を検出する構成である。グレイ値検出ユニット12は、短波赤外光を検出するSWIR(Short Wavelength Infra-Red)センサ121を含んで構成されている。短波赤外光とは、例えば700~2500nmの波長帯の光であり、900~1700nmの波長域の光であってもよい。SWIRセンサ121は、例えば種々の薬液(有機、無機の薬液)やメタル等のグレイ値を区別して検出することができる。グレイ値検出ユニット12は、解析部13の制御に応じてグレイ値の検出を行い、検出結果を解析部13に送信する。当該検出結果に基づいて、解析部13によって基板Wの欠陥範囲における欠陥種類の判別が行われる(詳細は後述)。
【0020】
図5は、グレイ値検出ユニット12の構成を模式的に示す縦断面図である。図6は、グレイ値検出ユニット12の構成を模式的に示す横断面図である。グレイ値検出ユニット12は、図5及び図6に示されるように、ケーシング120を有している。ケーシング120内には、基板Wが搭載される載置台125が設けられている。この載置台125は、モータ等の回転駆動部126によって、回転・停止が自在である。ケーシング120の底面には、ケーシング120の一端側(図6中のX方向負方向側)から他端側(図6中のX方向正方向側)まで延伸するガイドレール123が設けられている。載置台125及び回転駆動部126は、ガイドレール123上に設けられ、駆動装置127によってガイドレール123に沿って移動できる。
【0021】
ケーシング120内の他端側(図6中のX方向正方向側)の側面には、SWIRセンサ121が設けられている。なお、SWIRセンサ121は、SWIRカメラであってもよい。ケーシング120の上部中央付近には、ハーフミラー124が設けられている。ハーフミラー124は、SWIRセンサ121と対向する位置に、鏡面が鉛直下方を向いた状態からSWIRセンサ121の方向に向けて45度上方に傾斜した状態で設けられている。ハーフミラー124の上方には、光源122が設けられている。光源122は、少なくとも短波赤外光の波長範囲を含んだ光を照射する光源であり、例えば白色光源である。光源122は、複数波長帯の光を照射し、例えば少なくとも1000nm、1200nm、1400nmの波長帯の光を照射する。ハーフミラー124及び光源122は、ケーシング120内部の上面に固定されている。光源122からの光は、ハーフミラー124を通過して下方に向けて照らされる。光源122からの光は、例えば基板Wの表面の全面に照射される。そして、基板Wの表面において反射した光が、ハーフミラー124で更に反射して、SWIRセンサ121によって検出される。このようにして、SWIRセンサ121は、基板Wの表面の全面からの光を検出し、基板Wの表面の各領域の、複数波長それぞれのグレイ値(グレイ値分布)を検出することができる。なお、SWIRセンサ121は、基板Wの欠陥範囲のグレイ値のみを検出してもよい。具体的には、駆動装置127に及び回転駆動部126によって、基板Wの位置及び向きが調整されることにより、SWIRセンサ121が基板Wの欠陥範囲のグレイ値のみを検出してもよい。
【0022】
なお、上記では、撮像ユニット11及びグレイ値検出ユニット12が互いに異なる構成であるとして説明しているが、1つの撮像ユニットによる撮像により、欠陥範囲の特定及びグレイ値の取得が行える場合には、1つの撮像ユニットのみが設けられていてもよい。
【0023】
図1に戻り、解析部13は、欠陥範囲推定部131と、グレイ値取得部132と、欠陥種類判別部133と、要因推定部134と、記憶部135と、を備えている。
【0024】
欠陥範囲推定部131は、撮像ユニット11の撮像結果(撮像画像)に基づき、基板Wの表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲を推定する。欠陥範囲推定部131は、撮像画像に示された基板Wの表面の各領域の画素値等から、基板Wの表面における欠陥範囲を推定する。
【0025】
グレイ値取得部132は、基板Wの表面に対して光が照射された際の欠陥範囲におけるグレイ値を取得する。具体的には、グレイ値取得部132は、グレイ値検出ユニット12から基板Wの表面の各領域のグレイ値を取得し、その中から上記欠陥範囲のグレイ値を特定(取得)してもよい。グレイ値取得部132は、欠陥範囲における複数の波長帯それぞれに対応したグレイ値を取得してもよい。ここでの複数の波長帯とは、例えば3つ以上の波長帯であり、例えば1000nm、1200nm、1400nmの波長帯である。
【0026】
欠陥種類判別部133は、グレイ値に基づいて、欠陥範囲における欠陥種類を判別する。欠陥種類判別部133は、1つの欠陥範囲においてグレイ値の分布が互いに異なる複数の領域が存在する場合には、複数の領域毎に欠陥種類を判別してもよい。すなわち、欠陥種類判別部133は、1つの欠陥範囲に対して1つの欠陥種類を判別することだけでなく、1つの欠陥範囲においてグレイ値の分布が互いに異なる複数の領域が存在する場合には、各領域の欠陥種類を判別してもよい。
【0027】
欠陥種類判別部133は、複数の波長それぞれに対応したグレイ値に基づき、欠陥種類を判別してもよい。欠陥種類判別部133は、複数の波長それぞれに対応したグレイ値の間における変化傾向に基づいて、欠陥種類を判別してもよい。欠陥種類の判別について、図7及び図8も参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図7は、欠陥種類毎のグレイ値と波長との関係を示す図である。図7において、横軸は波長、縦軸はグレイ値を示している。図7においては、基板の表面に存在することによって欠陥となり得る薬品(レジスト、現像液等)毎に、照射される光の波長毎に検出されるグレイ値が示されている。図7に示されるように、欠陥種類(基板の表面に存在することによって欠陥となり得る各薬品)毎に、各波長におけるグレイ値分布が異なっているため、グレイ値から欠陥種類を判別することができる。
【0029】
ここで、図7に示されるように、1つの波長におけるグレイ値のみからでは、欠陥種類を一意に特定できない場合がある。このため、複数の波長それぞれに対応したグレイ値に基づき、欠陥種類を判別することが好ましい。
【0030】
また、複数の波長それぞれに対応したグレイ値を考慮した場合であっても、グレイ値分布が類似しており、欠陥種類を一意に特定できない場合がある。この場合でも、複数の波長それぞれに対応したグレイ値の間における変化傾向が考慮されることにより、欠陥種類を判別することができる。図8は、各波長間におけるグレイ値の変化傾向の一例を示す図である。図8(a)に示される欠陥分類Aでは、一番短波長側のグレイ値から、隣接する波長帯のグレイ値に向かってグレイ値が下がっており、更に一番長波長側のグレイ値に向かってグレイ値が上がっている。一方で、図8(b)に示される欠陥分類Bでは、一番短波長側のグレイ値から、隣接する波長帯のグレイ値に向かってグレイ値が上がっており、更に一番長波長側のグレイ値に向かってグレイ値が更に上がっている。このように、欠陥分類Aと欠陥分類Bとでは、複数の波長それぞれに対応したグレイ値の間における変化傾向が互いに異なるため、このような変化傾向を考慮することによって欠陥種類を一意に特定することができる。なお、変化傾向とは、例えばグレイ値の上下変動や、上下変動の傾きの程度等である。上述したように、複数波長が3つ以上であると、波長の隣接区間が2つ以上になり、変化傾向をより好適に特定することができる。
【0031】
欠陥種類判別部133は、例えば図7に示されるような欠陥種類毎のグレイ値と波長との関係を示す外部分析器のデータを教師データとして、波長毎のグレイ値のデータを溜めてもい。そして、欠陥種類判別部133は、複数波長のグレイ値のデータから欠陥種類を判別するモデル(回帰モデル、機械学習モデル等)を生成してもよい。この場合、例えば波長毎のグレイ値のデータは、グレイ値×波長1000nm+グレイ値×波長1200nm+グレイ値×波長1400nm等の式によって取得されてもよい。欠陥種類判別部133は、波長毎のグレイ値のデータ、及び、各データから生成されるモデルを記憶部135に格納する。欠陥種類判別部133は、記憶部135に格納されたモデルに基づき、複数波長のグレイ値のデータから欠陥種類を判別する。
【0032】
図1に戻り、要因推定部134は、欠陥種類判別部133によって判別された欠陥種類に基づいて、前工程における欠陥発生要因を推定する。ここでの前工程とは、例えば分析装置10によって基板の処理状態を分析する時点よりも前に実施されている工程であり、例えば、塗布装置20、現像装置30、露光装置40、エッチング装置50、又は洗浄装置60により実施されている工程である。欠陥発生要因を推定するとは、欠陥が発生した工程(具体的な処理)を推定すること、又は、当該工程を実施する装置・モジュールを推定すること等をいう。
【0033】
要因推定部134は、欠陥種類判別部133によって判別された欠陥種類と、欠陥形状・欠陥位置等の欠陥態様と、前工程の装置の情報(顧客のホスト情報等を含む)とに基づいて、欠陥発生要因を推定してもよい。例えば、欠陥種類判別部133によって欠陥種類がIPAによる欠陥であると判別されているとする。この場合、欠陥の形状が、例えば基板上の欠陥が周方向に線を引くような形状又は円弧を成す形状等の、基板の半径方向局所領域に存在する欠陥の形状であるとする。この場合、要因推定部134は、回転処理時の液残りが欠陥発生要因であるとして、回転を伴う洗浄処理が、欠陥が発生した工程(具体的な処理)であると推定してもよい。また、例えば、欠陥の形状が、基板に対して一端側から反対側に向かうような方向性を持つ形状であるとする。この場合、要因推定部134は、リン酸バッチ処理後のIPA供給を行う乾燥処理が、欠陥が発生した工程(具体的な処理)であると推定してもよい。
【0034】
図9は、解析部13のハードウェア構成を例示するブロック図である。解析部13は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。図9に示すように、解析部13は回路190を有する。回路190は、少なくとも一つのプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、入力デバイス195と、表示デバイス196とを含む。
【0035】
ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、分析装置10の情報処理方法を解析部13に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを解析部13に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0036】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に応じて撮像ユニット11及びグレイ値検出ユニット12との間で電気信号の入出力を行う。
【0037】
入力デバイス195及び表示デバイス196は、解析部13のユーザインタフェースとして機能する。入力デバイス195は、例えばキーボード等であり、ユーザによる入力情報を取得する。表示デバイス196は、例えば液晶モニタ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。表示デバイス196は、例えば上記要因情報の表示に用いられる。入力デバイス195及び表示デバイス196は、所謂タッチパネルとして一体化されていてもよい。
【0038】
次に、図10を参照して、分析装置10が実施する基板分析方法の処理手順について説明する。図10は、基板分析方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
図10に示されるように、最初に基板表面が撮像される(ステップS1,撮像工程)。つづいて、撮像工程における撮像結果に基づき、基板表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲が推定される(ステップS2,欠陥範囲推定工程)。
【0040】
つづいて、基板表面に対して光が照射された際の欠陥範囲におけるグレイ値が取得される(ステップS3,グレイ値取得工程)。そして、グレイ値に基づいて、欠陥範囲における欠陥種類が判別される(ステップS4,欠陥種類判別工程)。
【0041】
最後に、欠陥種類判別工程において判別された欠陥種類に基づいて、前工程における欠陥発生要因が推定される(ステップS5,要因推定工程)。
【0042】
次に、本実施形態に係る分析装置10の作用効果について説明する。
【0043】
分析装置10は、基板表面を撮像する撮像ユニット11と、撮像ユニット11の撮像結果に基づき、基板表面において欠陥が生じている範囲である欠陥範囲を推定する欠陥範囲推定部131とを備える。更に分析装置10は、基板表面に対して光が照射された際の欠陥範囲におけるグレイ値を取得するグレイ値取得部132と、グレイ値に基づいて、欠陥範囲における欠陥種類を判別する欠陥種類判別部133と、を備える。
【0044】
本実施形態に係る分析装置10では、まず、基板表面の撮像結果に基づき基板表面における欠陥範囲が推定され、つづいて、基板表面に対して光が照射された際の欠陥範囲におけるグレイ値に基づいて、欠陥範囲における欠陥種類が判別される。グレイ値と欠陥種類との間には相関関係があることから、グレイ値に基づいて、欠陥種類を高精度に判別し、基板処理についての処理状態を適切に分析することができる。そして、大まかな欠陥範囲については撮像結果から推定した上で、当該撮像範囲におけるグレイ値から欠陥種類が判別されることにより、グレイ値に基づく欠陥種類判別を行う範囲を限定しながら、欠陥種類の判別を効率的に行うことができる。また、従来のように、基板処理工程の中で基板の抜き取り検査を行うような、基板1枚に対して時間を要する検査機と比較して、欠陥種類の判別を効率的に行うことができる。以上のように、本実施形態に係る分析装置10によれば、基板処理についての処理状態を効率よく分析することができる。
【0045】
グレイ値取得部132は、欠陥範囲における複数の波長それぞれに対応したグレイ値を取得し、欠陥種類判別部133は、複数の波長それぞれに対応したグレイ値に基づき、欠陥種類を判別してもよい。グレイ値は波長毎に異なるところ、複数の波長それぞれに対応したグレイ値から欠陥種類が判別されることにより、より高精度に欠陥種類を判別することができる。
【0046】
欠陥種類判別部133は、1つの欠陥範囲においてグレイ値の分布が互いに異なる複数の領域が存在する場合には、複数の領域毎に欠陥種類を判別してもよい。これにより、撮像結果から推定されたある欠陥範囲にグレイ値の分布が互いに異なる(すなわち、欠陥種類が互いに異なる)複数の領域が存在する場合においても、それぞれの領域に係る欠陥種類を適切に判別することができる。
【0047】
欠陥種類判別部133は、複数の波長それぞれに対応したグレイ値の間における変化傾向に基づいて、欠陥種類を判別してもよい。このように、単にグレイ値の絶対値で欠陥種類を判別するのではなく、グレイ値間の変化傾向が考慮されることによって、より高精度に欠陥種類を判別することができる。また、例えばノイズの影響によって絶対値が変動しているような場合であっても、グレイ値間の変化傾向に基づけば、正確に欠陥種類を判別することができる。
【0048】
分析装置10は、欠陥種類判別部133によって判別された欠陥種類に基づいて、前工程における欠陥発生要因を推定する要因推定部134を更に備えていてもよい。このような構成によれば、欠陥発生要因(欠陥が発生した工程や装置、モジュール等)を特定して、該欠陥発生要因を改善することによって、欠陥の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…分析装置(基板分析システム)、11…撮像ユニット(撮像部)、131…欠陥範囲推定部、132…グレイ値取得部、133…欠陥種類判別部、134…要因推定部。
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