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特開2023-100078シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100078
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20230710BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20230710BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20230710BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230710BHJP
   B41J 29/17 20060101ALI20230710BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B65H5/00 B
G03G15/20 535
G03G15/20 525
G03G21/14
G03G21/00 310
B41J29/17
B65H37/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000471
(22)【出願日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】緑川瑠樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山恵介
(72)【発明者】
【氏名】古橋朋裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋航
(72)【発明者】
【氏名】門馬真也
(72)【発明者】
【氏名】浅野翔
【テーマコード(参考)】
2C061
2H033
2H134
2H270
3F101
3F108
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AS13
2C061CM07
2C061CM13
2C061CQ05
2C061CQ23
2H033AA45
2H033AA47
2H033BA02
2H033BA49
2H033BA54
2H033BA55
2H033BA57
2H033BB01
2H033BB28
2H033BE08
2H033CA22
2H033CA35
2H033CA36
2H033CA40
2H134GA07
2H134GA08
2H134GA20
2H134GB10
2H134HA01
2H134HA16
2H134HA17
2H134KB06
2H134KD04
2H134KE06
2H134KE09
2H134KF02
2H134KG06
2H134KG10
2H134KH16
2H270KA57
2H270MC45
2H270MC55
2H270MD10
2H270MD17
2H270PA16
2H270PA34
2H270PA42
2H270PA45
2H270PA83
3F101AB07
3F101LA15
3F101LB03
3F101LB08
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA12
(57)【要約】
【課題】2枚重ねシートの両面を熱加圧するシート処理装置において、2枚重ねシートを搬送しながら清掃部材表面に付着した異物を除去し、2枚重ねシートの搬送不良を抑制する。
【解決手段】2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートSを熱加圧処理する定着ユニット125を有するシート処理装置100であって、前記定着ユニット125は、熱定着部材120と、前記熱定着部材120に当接する清掃部材122を備え、前記清掃部材122の表面速度と前記熱定着部材120の表面速度の間に速度差が生じるように、前記清掃部材122と前記熱定着部材120が相対的に移動するシート処理装置により解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートを熱加圧処理する定着ユニットを有するシート処理装置であって、
前記定着ユニットは、熱定着部材と、前記熱定着部材に当接してこれを清掃する清掃部材を備え、
前記清掃部材の表面速度と前記熱定着部材の表面速度の間に速度差が生じるように、前記清掃部材と前記熱定着部材が相対的に移動する、ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記清掃部材は、前記熱定着部材の回転方向と同方向に回転する、ことを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記清掃部材は、芯金部と、当該芯金部に対して螺旋状に巻き付けられた帯状の表層部とを有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記清掃部材の前記表層部はアラミド繊維で構成されている、ことを特徴とする請求項3に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記清掃部材の前記表層部と前記芯金部が一体的に構成され、前記清掃部材が前記定着ユニットに着脱可能である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記清掃部材の両端の前記芯金部が弾性部材によって前記熱定着部材に向かって押圧されている、ことを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記弾性部材は前記芯金部に対して着脱可能であり、前記清掃部材は前記熱定着部材に対して接離可能である、ことを特徴とする請求項6に記載のシート処理装置。
【請求項8】
前記清掃部材の前記表層部は弾性を有する、ことを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項9】
前記清掃部材の前記表層部は繊維状構造又は多孔質構造を有する、ことを特徴とする請求項3~8のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項10】
前記清掃部材の前記表層部は前記熱定着部材の表層部よりも高い弾性を有する、ことを特徴とする請求項3~9のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項11】
前記清掃部材に固定された駆動部材と、前記熱定着部材に固定された駆動部材が連結され、これら駆動部材が同一の駆動源で駆動される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項12】
前記熱定着部材に対向して配置された前記清掃部材は、前記熱定着部材と同一の駆動源によって回転する、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項13】
前記清掃部材は、前記熱定着部材の表面速度と異なる表面速度で、前記熱定着部材の回転方向と反対方向に回転する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項14】
対向する前記熱定着部材の軸中心を結ぶ直線に対して、前記熱定着部材の軸中心とそれと対向して配置された前記清掃部材の軸中心を結ぶ線とが成す角は鋭角である、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項15】
前記定着ユニットは搬送方向下流側に排出手段を有し、
前記清掃部材は前記排出手段よりも搬送方向上流側に配置されている、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項16】
前記清掃部材の幅が2枚重ねシートの幅よりも大きい、ことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項17】
前記清掃部材の外径は前記熱定着部材の外径よりも小さい、ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項18】
2枚重ねシートを検知するための検知手段が、前記熱定着部材及び前記清掃部材の搬送方向下流側に備えられる、ことを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項19】
少なくとも1つの前記清掃部材がそれぞれの前記熱定着部材に対向して配置される、ことを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載のシート処理装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のシート処理装置と、
画像形成を行う画像形成部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載のシート処理装置を有することを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のシートが重ねられ、一辺が接合(接続)された2枚重ねシート(ラミネートシート又はラミネートフィルム)内に、中紙類(用紙、写真など)を挿入し、熱と圧力を加えて2枚重ねシートを接着するラミネート処理という技術が知られている。
【0003】
しかし、従来のラミネート技術では、定着ローラにラミネートフィルムの糊が付着した場合、糊用のクリーニング手段が装置内になかったため、クリーニング専用のクリーニングシートを通紙して定着ローラに付着した糊を取り除く必要があった。
【0004】
また、既存の画像形成装置などの定着装置には、加圧ローラや加熱ローラに付着したトナー等の異物のためのクリーニング技術が使用されている。しかし、従来のクリーニング技術は、ラミネート糊の除去には対応していない。またクリーニングローラは加圧ローラなどの片側に設置され、粘着体のローラでクリーニングをしたり、多孔質のシートを表層に巻いたローラからオイルを含浸させたりしている。これらの場合、クリーニングローラ側に転写した異物を対向するローラ側へ再度転写させないように、異物を掻き取るブレード機構を追加的に設けたり、異物をさらに転写させるためのシートを追加したりする必要があった。
【0005】
特許文献1には、ラミネートシート部材の分離、ずれ、皺の発生を防止するために、加熱ローラと押圧ローラとの間に記録用紙を挟持し搬送する技術が開示されている。しかし、これらのローラ表面に異物が付着してしまう恐れは排除されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、2枚重ねシートの両面を熱加圧するシート処理装置において、2枚重ねシートを搬送しながら清掃部材表面に付着した異物を除去し、2枚重ねシートの搬送不良を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、2枚のシートが重ねられ、その一部が接合された2枚重ねシートを熱加圧処理する定着ユニットを有するシート処理装置であって、前記定着ユニットは、熱定着部材と、前記熱定着部材に当接してこれを清掃する清掃部材を備え、前記清掃部材の表面速度と前記熱定着部材の表面速度の間に速度差が生じるように、前記清掃部材と前記熱定着部材が相対的に移動する、ことを特徴とするシート処理装置により解決される。
【発明の効果】
【0008】
2枚重ねシートを搬送しながら清掃部材表面に付着した異物を除去し、2枚重ねシートの搬送不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るシート処理装置の全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着ユニットの概略構成図である。
図3】シート処理装置が備える剥離爪の模式図である。
図4】剥離爪の駆動構成の例を示す模式図である。
図5】剥離爪をシートSに挿入した状態を示す斜視図である。
図6】剥離爪とシートSの状態を示す斜視図である。
図7】剥離爪とシートSの状態を示す斜視図(その2)である。
図8】本発明の実施形態に係るシート処理装置を備える画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
図9】本発明の実施形態に係るシート処理装置を備える画像形成システムの一例を示す全体構成図である。
図10】溶融したシートの糊面が熱加圧ローラ120に付着するケースを示す概略図である。
図11】クリーニングローラによる清掃イメージを示す概略図である。
図12】クリーニングローラの構成を示す部分斜視図である。
図13】クリーニングローラの部分平面断面図である。
図14】クリーニングローラの加圧方法を示す斜視図である。
図15】クリーニングローラの加圧方法を示す正面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る弾性部材の構成を示す概略図である。
図17】クリーニングローラの構成を示す概略図である。
図18】クリーニングローラの回転方向を示す概略図である。
図19】クリーニングローラの当接状態でのクリーニングローラの駆動を示す概略図である。
図20】クリーニングローラの離間状態でのクリーニングローラの駆動を示す概略図である。
図21】クリーニングローラの常設状態におけるクリーニングローラの駆動を示す概略図である。
図22】クリーニングローラの表層を示す図である。
図23】クリーニングローラ表層の弾性を示す図である。
図24】クリーニングローラの配置を示す図である。
図25】クリーニングローラの長さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るシート処理装置の全体構成図である。本実施形態のシート処理装置100は、2枚重ねシート(以下、シートSという)を互いに剥離し、その剥離したシートS内にシート状媒体(以下、中紙Pという)を挿入して挟持させる。そしてシート処理装置100は、シートSを熱加圧処理して接着するための、すなわちラミネート処理するための熱加圧ローラ120を有する定着ユニット125を有している。本発明は、このような熱加圧ローラ120の表面に付着した異物を、熱加圧ローラ120に当接した清掃部材であるクリーニングローラ122によって除去するものであり、クリーニングローラ122の表面速度と熱加圧ローラ120の表面速度の間に速度差が生じるように、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120が相対的に移動することを特徴とする。これにより、シートSを搬送しながら、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120の間に生じる線速差を用いて熱加圧ローラ120に付着した糊などの異物を取ることができ、シートSの搬送不良を抑制することができる。
【0011】
ここで、シートSとは、2枚のシートが重ねられ、その一部(又は一辺)が接合された2枚重ねシートである。2枚重ねシートとしては、例えば、片側を透明ポリエステルシートなどの透過性シートとし、反対側を透明又は不透明シートとして、それらの一辺で接合したものがある。また、2枚重ねシートには、ラミネートフィルムも含まれる。
【0012】
中紙Pは、それら2枚重ねシートに挿入されるシート状媒体の一例である。シート状媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙など)、トレーシングペーパー、OHPシートなどが含まれる。
【0013】
図1に示すように、シート処理装置100は、シートSを積載する第1積載手段である給紙トレイ102と、給紙トレイ102からシートSを給送するピックアップローラ105と、第1搬送ローラ107とを備える。また、シート処理装置100の給紙トレイ102には、シートSのサイズを検知する複数のセンサC11が配置されている。
【0014】
中紙挿入が完了したシートSは、第3搬送ローラ113又はそれ以降に配置されたローラ等で排紙トレイ104に排出・スタックする。排紙トレイ104は、シート処理装置100の筐体内部に配置されている。これにより、排紙トレイ104に向かうシートSの垂直搬送が容易化される。
【0015】
第1搬送ローラ107の搬送方向下流には、シートSの搬送位置を検出する搬送センサC1が設けられ、入口ローラ146の搬送方向下流には、中紙Pの搬送位置を検出する搬送センサC2が設けられている。
【0016】
またシート処理装置100は、第1搬送ローラ107の搬送方向下流に、第2搬送ローラ108と、回転部材としての巻付けローラ109と、第3搬送ローラ113と、第4搬送ローラ144と、第5搬送ローラ145と、排出ローラ121と、排紙トレイ104などを備える。巻付けローラ109と第3搬送ローラ113の間に、シートSの幅方向に移動可能に設けられた剥離爪116を備える。剥離爪116はシートSを剥離する剥離手段の一例である。
【0017】
第2搬送ローラ108の搬送方向下流には、シートS及び中紙Pの搬送位置を検出する搬送センサC3が設けられ、巻付けローラ109の搬送方向下流には、シートSの状態を検出する異常状態検出センサC4が設けられている。そして、第3搬送ローラ113の搬送方向下流には、シートSの搬送位置を検出する搬送センサC5が設けられている。
【0018】
なお、ピックアップローラ105、第1搬送ローラ107、第2搬送ローラ108、及び巻付けローラ109は、第1給送手段の一例である。
【0019】
図1において、第2搬送ローラ108及び第3搬送ローラ113は、それぞれ、例えば対となった2つのローラであり、駆動手段(モータなど)により回転駆動される。第2搬送ローラ108は一方向に回転駆動され、第3搬送ローラ113は正逆方向に回転駆動されることで、シートS及び中紙Pを挟持して搬送する。
【0020】
第2搬送ローラ108は、シートS及び中紙Pを第3搬送ローラ113に向けて鉛直下方に搬送する。
【0021】
一方、第3搬送ローラ113は、その回転を正逆の両方向に切り替え可能である。第3搬送ローラ113は、挟持したシートSを排紙トレイ104に向けて鉛直下方に搬送できるとともに、その逆方向(引き戻す方向)となる巻付けローラ109に向けてシートSを鉛直上方に搬送することもできる。
【0022】
また、シート処理装置100は、これら第2搬送ローラ108と第3搬送ローラ113との間に、回転部材である巻付けローラ109と、剥離爪116とを備える。巻付けローラ109は、駆動手段(モータなど)により正逆方向に回転駆動され、その回転を両方向(時計回り/反時計回り)に切り替え可能である。
【0023】
巻付けローラ109は、ローラ部材111と、ローラ部材111に設けられ、シートSを把持する可動の把持手段110とを有する。可動の把持手段110は、ローラ部材111とともにシートSの先端を把持することを特徴とする。この把持手段110は、ローラ部材111の外周に一体に成形してもよいし、別部品として構成してもよい。
【0024】
続いて、図1を用いて、シート処理装置100の一連の動作、すなわちシートSの剥離から中紙Pの挿入までの動作を説明する。
【0025】
図1において、給紙トレイ102上のシートSは、2枚のシートの接合された一部が、ピックアップローラ105の給送方向(搬送方向)の下流側に位置するように積載される。そして、シート処理装置100は、給紙トレイ102上のシートSをピックアップローラ105にてピックし、第1搬送ローラ107に向けて搬送する。
【0026】
次いで、第1搬送ローラ107の搬送方向下流に配置された第2搬送ローラ108により、シートSを巻付けローラ109に向けて搬送する。ここでシート処理装置100は、シートSの4辺中の一辺である端部が接合された側を鉛直方向(鉛直下方)の下流側として搬送する。
【0027】
続いて、シート処理装置100は、鉛直方向(鉛直下方)におけるシートSの後端部が巻付けローラ109を通過した時点で、その搬送を一時停止する。
【0028】
次に、シート処理装置100は、把持手段110を開口するとともに、第3搬送ローラ113の回転方向を反転し、把持手段110の開口部に向けて、シートSを鉛直上方に搬送する。
【0029】
続いて、シート処理装置100は、シートSの端部を開口した把持手段110に挿入した時点で搬送を停止し、把持手段110を閉じてシートSの端部を把持する。なお、これら動作は、シートSを指定量搬送することで実施される。
【0030】
次いで、シート処理装置100は巻付けローラ109を時計回りに回転し、シートSを巻付けローラ109に巻き付ける。ここでシートSは、2枚のシートの接合されていない側から巻付けローラ109に巻き付けられる。
【0031】
シートSを巻付けローラ109に巻き付けると、2枚重ねシートの巻き付け周長差(巻き付け量の差)によって内周側のシートが余り、シートSの接合した端に向けて弛みが生じる。その結果、2枚のシート間に空間が生じる。この生じた空間に剥離爪116をシートSの両側から挿入することで、2枚のシート間の空間を確実に維持することができる。なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0032】
シート処理装置100は、シートSに生じた空間に剥離爪116を挿入した状態で、巻付けローラ109を反時計回りに回転し、シートSの剥離した空間を鉛直方向(鉛直下方)におけるシートSの後端部まで移動させる。そして、指定量移動した時点で把持手段110を開放し、シートSの後端を上下に分離した状態とする。
【0033】
この状態で、シート処理装置100はシートSの搬送を一時停止し、今度は剥離爪116をシート幅方向へ更に移動することで、シートSの後端の全域を剥離する。なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0034】
次いで、シート処理装置100は今度は第3搬送ローラ113を反時計回りに回転させ、シートSを逆搬送方向に搬送する。シート先端が搬送センサC5を抜けたタイミングで、分岐爪118を切り替えることが可能となる。非定着経路にシートSを搬送する場合、分岐爪118は図示の位置のままとなるが、定着経路128にシートSを搬送する場合は、分岐爪118は定着経路側に切り替えられる。
【0035】
シートSの剥離された2枚のシートは、剥離爪116によりそれぞれ左右方向に案内され、2枚のシート全体が互いに剥離される。そして、シート処理装置100はシートSの搬送を一時停止し、シートSの接合部を第3搬送ローラ113にて把持(ニップ)した状態とする。したがって、シートSは接合された一辺を端として、大きく開口することになる。
【0036】
なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0037】
次いで、シート処理装置100は、第2搬送ローラ108を回転し、画像形成装置側から搬送された中紙Pを第3搬送ローラ113に向けて鉛直下方に搬送する。画像形成装置については図8を用いて後述する。
【0038】
続いて、シート処理装置100は、第3搬送ローラ113を回転してシートSと中紙Pを合流させ、開口したシートS内に中紙Pを挿入する。
以上が、シートSの剥離から中紙Pの挿入までの動作である。なお、開口したシートSの様子は図9に示されている。
【0039】
次いで、シート処理装置100は、第3搬送ローラ113により、中紙Pが挿入されたシートSを鉛直下方に搬送することで、シートSの2枚のシートを再度重ね、開口を閉じる。そして、中紙Pが挟み込まれたシートSを、第3搬送ローラ113又はそれ以降に配置されたローラ等により、熱加圧ローラ120を有する定着ユニット125へ搬送する。
【0040】
中紙Pが挿入されたシートSは、熱加圧ローラ120によって両側から加圧しながら熱を加えられ、シート内面の糊成分が溶融し、剥離したシートと中紙Pが一体に定着される。定着されたシートSは下流の搬送ローラによって下流方向へ引っ張られ、カールや皺を抑制しながら排紙トレイ104に排出される。
【0041】
このシート処理装置100は、シートSの給紙、剥離、中紙Pの挿入、及び熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作を1台で実施できる構成である。この一連の動作を、人手を要さずに自動で実施でき、従来技術よりも利便性を向上できる。シート処理装置100が熱加圧ローラ120を有する定着ユニット125を備えており、ラミネート処理を実施できるため、シート処理装置100は狭義にはラミネート処理装置であると言ってもよい。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態に係る定着ユニットの概略構成図である。
定着ユニット125は、熱定着部材である熱加圧ローラ120と、熱加圧ローラ120に当接してこれを清掃する清掃部材であるクリーニングローラ122を備えている。シート処理装置100の剥離部にて剥離され、中紙を挿入されたシートSは、鉛直下向きに定着ユニット125に搬送される。定着ユニット125の内部に構成された熱加圧ローラ120は、対向して設けられた第1熱加圧ローラ120aと第2熱加圧ローラ120bから成り、互いに当接しながらローラ軸を中心に回転する。熱加圧ローラ120は、上流から搬送されたシートSをニップして圧力を掛けながら加熱し、下流へ搬送する。搬送されたシートSは、搬送方向下流側に位置する対向して設けられた排出ローラ121でニップされ、鉛直下向きに搬送される。排出ローラ121は、対向して設けられた第1排出ローラ121aと第2排出ローラ121bから成る。このように、定着ユニット125は搬送方向下流側に排出手段としての排出ローラ121を有し、クリーニングローラ122は排出ローラ121よりも搬送方向上流側に配置されている。熱加圧ローラ120を排出ローラ121よりも上流でクリーニングすることで、下流側に位置するローラへの糊の転写を防止することができる。クリーニングローラ122は、第1クリーニングローラ122aと第2クリーニングローラ122bから成る。
【0043】
熱加圧ローラ120の中心部は中空の芯金構造となっており、芯金の中空内径の内側にニクロム線のヒータが通っている。ヒータに電流が流れることで熱加圧ローラ120の芯金から弾性層、表層のフィルム層まで熱伝達され、ローラ表面が加熱される。
【0044】
ラミネートフィルム糊の溶融点は80~90℃程度であり、ラミネートフィルムを接着するために、フィルムの厚さや中紙の厚さによって120~180℃まで熱加圧ローラ120の表面温度を上昇させ、フィルムをニップすることでラミネート接合を行う。
【0045】
このため熱加圧ローラ120による搬送時、溶融したシートSの糊面が硬化する前にローラ表層へ付着すると、シートからローラ表層へ糊が転写されることがある。
【0046】
熱加圧ローラ120の表層に糊が付着すると、ローラ表面が粘着性を有してしまう。これにより、粉塵などの異物がローラ表面に付着したり、後続して搬送されるシートSにローラが張り付き滞留を引き起こしたりすることで搬送不良が生じることがある。
【0047】
熱加圧ローラ120から搬送されたシートSは、搬送センサ126によって検知され、所定の時間でセンサ位置までシートSが搬送されたことが分かる。しかし、ローラ表層の糊付着による貼り付きなどのためにシートSが搬送されないという搬送不良が発生した場合、センサ位置までシートSが到達しない。この場合、装置は異常を検知したことになり処理が停止するため、ユーザが連続して複数枚のラミネート処理を行いたかったとしても、次フィルム以降の処理を直ちに行うことができなくなってしまう。
【0048】
本実施形態の定着ユニット125においては、シートSを検知するための検知手段である搬送センサ126が熱加圧ローラ120及びクリーニングローラ122の搬送方向下流側に配置されている。これにより、クリーニング機能のOFF時、クリーニング中又はクリーニング後にフィルム滞留が発生したとしても、フィルム滞留を搬送センサ126で検知することが可能となる。
【0049】
しかしながら、搬送センサ126の配置はこの限りではなく、例えば、搬送センサ126を排出ローラ121の下流に配置し、この位置でのシートS先端の到達タイミングを検知してもよい。また、搬送センサ126を熱加圧ローラ120の上流に配置し、シートSの後端が搬送センサ126を通り過ぎ、非検知となるタイミングを検知する配置であってもよい。検出用のセンサは反射型センサ又はフィラーを用いた透過型センサなどの光学式センサであってもよい。センサは搬送路近傍に設置される。
【0050】
ここで、剥離爪116について補足説明する。
【0051】
図4はシート処理装置が備える剥離爪の模式図であり、図5は剥離爪の駆動構成の例を示す模式図である。また、図6は剥離爪をシートSに挿入した状態を示す斜視図である。
【0052】
図3に示すように、剥離爪116は、搬送方向上流側から見て、高さ方向の寸法が幅方向中央から後端に向けて徐々に大きくなっている。また、高さ方向から見て、搬送方向の寸法は、先端から中央に向けて徐々に大きくなっている。そして、幅方向から見て、剥離爪116は、十時型の形状となっている。
【0053】
また、図4に示すように、本実施形態では、2つの剥離爪116を互いに対向させて配置し、それぞれを(a)ベルト駆動、又は(b)ラック&ピニオンなどにより接近/離間する構成としている。
【0054】
具体的に、(a)ベルト駆動では、駆動プーリ30aと従動プーリ30bの間にベルト32が張架され、そのベルト32に2つの剥離爪116a、bが互いに対向して取り付けられている。ここで、一方の剥離爪116aは下側のベルト32に、他方の剥離爪116bは上側のベルト32にそれぞれ接続されている。
【0055】
また、駆動プーリ30aには駆動伝達ギヤ34が設けられており、この駆動伝達ギヤ34に、駆動モータ36の回転出力がモータ出力ギヤ35を介して伝達される。すなわち、駆動モータ36の回転出力は、ベルト32に伝達される。
【0056】
したがって、駆動モータ36を(図正面から見て)時計回りに回転すれば、剥離爪116a、bを互いに接近でき、駆動モータ36を反時計回りに回転すれば、剥離爪116a、bを互いに離間できる。
【0057】
また、(b)ラック&ピニオンでは、1つのピニオン40に噛み合う2つのラック42a、bが互いに反対方向に伸びて設けられ、それぞれのラック42a、bに2つの剥離爪116a、bが互いに対向して取り付けられている。ピニオン40には駆動伝達ギヤ44が設けられており、この駆動伝達ギヤ44に、駆動モータ46の回転出力がモータ出力ギヤ45を介して伝達される。すなわち、駆動モータ46の回転出力は、ラック42a、bにそれぞれ伝達される。
【0058】
したがって、駆動モータ46を(図正面から見て)時計回りに回転すれば、剥離爪116a、bを互いに接近でき、駆動モータ46を反時計回りに回転すれば、剥離爪116a、bを互いに離間できる。
【0059】
このように本実施形態の剥離爪116は、上記形状を有し、シートSの幅方向に移動可能な構成であるため、図5に示すようにシートSに生じた空間にスムーズに挿入できる。
【0060】
シート処理装置100の一連の動作説明に戻る。シート処理装置100は、シートSに生じた空間に剥離爪116を挿入した状態で、巻付けローラ109を時計回りに回転し、シートSの剥離した空間をシートSの正搬送方向(矢印A方向)における後端部まで移動させる。そして、指定量移動した時点で把持手段110を開放し、シートSの後端を上下に分離した状態とする。
【0061】
この状態で、シート処理装置100はシートSの搬送を一時停止し、今度は剥離爪116をシート幅方向へ更に移動することで、シートSの後端の全域を剥離する。なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0062】
図6は、剥離爪116とシートSの状態を示す斜視図である。剥離爪116は、剥離したシートSをそれぞれ異なる方向へと案内する分岐爪の形状(機能)も有するため、シートSの2枚のシートは、それぞれ別の経路に搬送可能な姿勢となる。
【0063】
また、剥離爪116は幅方向に移動可能な構成であるため、図7に示すように、シートSの姿勢を支えるのに適した位置に配置できる。したがって、シートSのサイズや腰の強さが変わっても、シートSを所望の分岐方向へ案内できる。これは、搬送路幅全域に亘るシート分岐用部材、及び分岐爪の駆動装置が不要になるため、従来と比較して低コストにできる。
【0064】
続いて、シート処理装置100は、シートSの後端の全域を剥離した状態から、今度は出口ローラ対である第3搬送ローラ113を反時計回りに回転し、シートSを逆搬送方向(矢印B方向)に搬送する。すなわち、シートSの剥離された2枚のシートは、剥離爪116によりそれぞれ上下方向に案内され、2枚のシート全体が互いに剥離される。
【0065】
そして、シート処理装置100はシートSの搬送を一時停止し、シートSの接合部を第3搬送ローラ113にて把持(ニップ)した状態とする。したがって、シートSは接合された一辺を端として、大きく開口することになる。
【0066】
なお、これら動作は、搬送センサC5によるシートSの先端検出をトリガとし、搬送センサC5から指定量搬送することで実施される。
【0067】
図8は、本発明の実施形態に係るシート処理装置を備える画像形成装置の一例を示す全体構成図である。この画像形成装置300は、中紙Pなどに画像形成を行う画像形成部と、シート処理装置部として外部にシート処理装置100とを備える。シート処理装置100は、シートSを積載する給紙トレイ102を備えるとともに、中紙Pを画像形成装置300から中継装置310を介して給紙可能に構成されている。したがって、画像形成装置300(例えば、プリンタ、コピー機など)により、シートSの中に挿入する中紙Pに画像をインラインで挿入できる。そのため、画像形成装置300は、シートSの給紙から剥離、中紙挿入、熱加圧によるラミネート処理までの一連の動作を、人手を要さずに実施可能である。
【0068】
画像形成装置300の外装部には、画像形成装置300における情報表示や、操作入力の受付を行う表示操作手段である操作パネル10が設置されている。また、この操作パネル10は、ユーザに知覚信号を発する報知手段としての役割を兼ねる。なお、代替として、操作パネル10以外の報知手段を、画像形成装置300に別途設ける構成としてもよい。
【0069】
図9は、本発明の実施形態に係るシート処理装置を備える画像形成システムの一例を示す全体構成図である。画像形成システムは、画像形成装置300、中継装置310、シート処理装置100及び後処理装置400を有する。
本画像形成システムは、中継装置310を介して画像形成装置300から中紙Pを給紙可能に構成されており、画像形成装置300の下流にさらに別の後処理装置400を設置することで、ラミネート処理しない印刷ジョブの効率を落とすことなくユーザが使用可能である。
【0070】
ラミネート処理を行わない印刷ジョブの場合、画像形成装置300から給紙される中紙Pは、シート処理装置100の入口ローラ146で受け入れられ、入口ローラ146の搬送方向下流に位置する排紙ローラ147により、シート処理装置100の下流にある後処理装置400に搬送される。後処理装置400では、ラミネート処理を行っていないシートSにステープル処理などの後処理を行うことが可能である。中紙Pは、後処理装置400の排紙トレイ150にスタックされる。
【0071】
ラミネート処理を実施する印刷ジョブの場合、シート処理装置100では、シートSをスタックする給紙トレイ102からピックアップローラ105及び第1搬送ローラ107によってシートSを給紙する。剥離状態のシートSRは第3搬送ローラ113に保持されており、画像形成装置300から給紙される中紙Pはシート処理装置100の入口ローラ146で受け入れられ、第2搬送ローラ108によってシートSと合流され、シートSは熱加圧ローラ120にて加圧及び加熱によりラミネート処理される。ラミネート処理されたシートSGは、排出ローラ121から排紙トレイ104に積載される。
【0072】
図10は、溶融したシートの糊面が熱加圧ローラ120に付着するケースを示す概略図である。
溶融したシートの糊面が熱加圧ローラ120に付着するケースとして、主に、一辺が接続されたラミネートシートの残り三辺のうちシート後端から糊がはみだして付着するケース(図10(a))、シートの側部両端から糊がはみだして付着するケース(図10(b))と、シートの糊面が剥き出しなった状態でシートが搬送されるイレギュラー時に糊が付着するケース(図10(c))が考えられる。
【0073】
図11は、クリーニングローラによる清掃イメージを示す概略図である。
図10(a)及び図10(b)に示したように、一辺が接続されたラミネートシートの残り三辺からのはみだしにより糊が付着する場合、付着する糊は線状又は点状であり、シート1枚当たりの熱加圧ローラ表層への糊付着量は微量である。
シートがA4フィルムである場合、シートの搬送方向(長手方向)長さは約300mmであるため、直径30mm程度のローラの場合、約3回転分の堆積量が生じる。
【0074】
そこで本発明では、熱加圧ローラ表層に付着した糊が熱加圧ローラ表層上で堆積する前に、クリーニングローラ122によって清掃することで、搬送不良を防止する。
【0075】
図11に示すように、少なくとも1つのクリーニングローラ122がそれぞれの熱加圧ローラ120に対向して配置され、当接されている。本実施形態においては、1つのクリーニングローラ122がそれぞれ配置されているが、2以上のクリーニングローラ122が配置されてもよい。
図11において、熱加圧ローラ120の第1熱加圧ローラ120aと第2熱加圧ローラ120bは常に当接した状態であるため、どちらか一方に付着している糊が他方へ転写される場合がある。しかし、クリーニングローラ122を複数本配置することにより、第1熱加圧ローラ120aと第2熱加圧ローラ120bのどちらのローラに糊が付着している場合でも、それぞれに当接した第1クリーニングローラ122a及び第2クリーニングローラ122bのどちらかが清掃をすることが可能である。
【0076】
また、クリーニングローラ122の外径は熱加圧ローラ120の外径よりも小さい。これにより、装置全体のサイズを小型化することができる。しかしながら、クリーニングローラ122の外径は熱加圧ローラ120と同径又はそれよりも大径であってもよい。クリーニングローラ122の外径が大きくなればなるほど、クリーニングローラ自身の総回転量が減り、ローラ寿命が延びる。
【0077】
図12はクリーニングローラの構成を示す部分斜視図、図13はクリーニングローラの部分平面断面図である。
本実施形態におけるクリーニングローラ122では、金属製の芯金201がその軸を中心に回転する。クリーニングローラ122の芯金201は、長手方向中央部に位置する中央部202と両端に設けられた軸部203を有する(図13)。
【0078】
金属製の芯金201において、軸の両端に設けられた軸部203は中央部202より小径であり、芯金201の両端がそれぞれ、金属又は樹脂の滑り軸受や玉軸受などの軸受部材205を介して支持部材204(図12)に取り付けられており、それによりクリーニングローラ122が回転可能である。芯金201の材質はステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属である。また、中央部202の内部は空洞であってもよく、空洞の場合、比重が小さくクリーニングローラ122が軽くなるため、ユニット全体の重量を軽量化することができる。この場合、比較的比重が小さい材質で構成された円筒形状の中央部202に対し、回転による摩耗が少ない材質で構成された両端の軸部203を圧入又は溶接することで、又はねじ固定などの方法により、芯金201を一体構造とすることができる。
【0079】
図14はクリーニングローラの加圧方法を示す斜視図、図15はクリーニングローラの加圧方法を示す正面図である。
本実施形態では、クリーニングローラ122の両端の芯金201が弾性部材206によって熱加圧ローラ120に向かって押圧されている。弾性部材206は例えばトーションスプリングである。加圧用の弾性部材206を取り付けることにより、熱加圧ローラ120に対してクリーニングローラ122を常に当接させることができる。この際、軸受部材205が、1本のクリーニングローラ122の芯金201の軸両端にそれぞれ設けられ、弾性部材206は、軸受部材205と軸受部材205を支持する支持部材204とで付勢されように押圧しながら配置されている。これにより、クリーニングローラ122の両端をばねで押して熱加圧ローラ120に対して一定の圧力を掛けることができるため、クリーニング性が向上する。
【0080】
図14において、クリーニングローラ122の軸両端の一方を装置前方F、他方を装置後方Rとした場合、軸両端を弾性部材206によってそれぞれ同じ加圧力で押圧することで、前後偏差を発生させず均等に、クリーニングローラ122を熱加圧ローラ120に押し付けることができる。
【0081】
図16は、本発明の一実施形態に係る弾性部材の構成を示す概略図である。
弾性部材206であるトーションスプリングを設置するために、支持部材204にねじを圧入し、そこにトーションスプリングの円筒部206aを通す方法がある。本実施形態においては、支持部材204に段付きねじ207を締結して固定する。段付きねじ207は、ねじ先に設けられたねじ切部207aと、ねじ切部の終端からねじ頭の根元までの摺動部207bと、ねじ頭とを有する。摺動部207bはねじ切部207aよりも1段大径の部分である。
【0082】
その摺動部207bに、トーションスプリングの円筒部206aを通して段付きねじ207を支持部材204に固定することで、トーションスプリングの円筒部206aと段付きねじ207の摺動部207bが摺動しながら、摺動部207bの軸を中心に回転方向に回動する。
【0083】
段付きねじ207を用いることにより、段付きねじ207を取り外すと弾性部材206の離脱が可能となる。弾性部材を取り外すと付勢が解除されるため、熱加圧ローラ120に当接していたクリーニングローラ122は自重により熱加圧ローラ120から離間する。すなわち、弾性部材206はクリーニングローラ122の芯金201に対して着脱可能であり、クリーニングローラ122は熱加圧ローラ120に対して接離可能である。このような着脱可能なトーションスプリングを用いることで、クリーニングのON/OFFを切り替えることが可能となる。クリーニングのON/OFFを切り替えは、例えば、一定期間清掃が不要な場合に清掃機能をOFFにしてクリーニングローラ122を稼働させずにローラ寿命を延ばしたいときなどに利用できる。
【0084】
仮に清掃機能をOFFにして熱加圧ローラ120の表層に糊が堆積し、それにより搬送中のフィルムが滞留した場合でも、搬送センサ126(図2)によってフィルムの滞留を検知することができる。これにより異常発生が報知され得る。
【0085】
クリーニングローラ122の加圧構成に関して、トーションスプリングによるばね付勢に限られず、圧縮コイルばねにより支持部材204から軸受部材205を押圧してもよい。または、引っ張りコイルばねによってクリーニングローラ122の軸受部材205又は芯金201の軸部203を熱加圧ローラ120の芯金に付勢させてもよい。または、ばねの代わりにゴムやクッション材などの弾性部材206による押し当てやラックアンドピニオン方式による押さえ部材による押し当て等を用いてもよい。
【0086】
図17は、クリーニングローラの構成を示す概略図である。
クリーニングローラ122は、芯金201と、芯金201に対して螺旋状に巻き付けられた帯状の表層部208とを有する。熱加圧ローラ120の表面に付着した糊は、クリーニングローラ122の表層部208によって清掃される。表層部208をクリーニングローラ122の周方向に巻き付けた場合、帯と帯の間に発生するごく僅かな段差部には熱加圧ローラ120の糊が接触しないことがある。そのため、芯金201に対して帯状のアラミド繊維を螺旋状に巻き付けることで、巻き付けたアラミド繊維表面の一部が必ず糊に接触するようになる。言い換えれば、クリーニングローラ122が、熱加圧ローラ120上の糊を掻き取るときに熱加圧ローラ120の全面に接触することになる。表層部208が周方向に対してクリーニングローラ122に斜めに重なっているため、表層部208が接触しない部分が生じない。
【0087】
クリーニングローラの表層部208としてアラミド繊維を用いるのが好ましい。組成としてはメタ系アラミド繊維でも、パラ系アラミド繊維でもよい。これは、熱加圧ローラ120の最高加熱温度が約180℃の高温であるため、それに耐えうる耐熱温度特性を持つ素材が必要だからである。よって、アラミド繊維に限らず、耐熱温度が高く、耐久性が確保できる素材であればよい。このような高い耐熱性と高い強度を有する素材を用いることで熱的影響が抑制されるため、クリーニングローラが熱加圧ローラと長時間当接することが可能となる。
【0088】
クリーニングローラ122の表面層は、芯金201の中央部202に清掃部分である表層部208(本実施形態の場合、アラミド繊維)を巻き付けて一体に構成されている。すなわち、クリーニングローラ122の表層部208と芯金201が一体的に構成されている。表層部208の裏面と芯金201の表面間は、接着剤等を用いた溶着や両面テープ等の固着部材によって一体化されているため、クリーニングローラ122の表層部交換が必要となった場合でも、定着ユニット125の支持部材204から軸受部材205を取り外すことで、クリーニングローラ122を表層部208ごと着脱することが可能である。クリーニングローラ122が一体的に取り外せるため、良好なメンテナンス性・交換作業性が実現される。
【0089】
図18は、クリーニングローラの回転方向を示す概略図である。
従来技術において、熱加圧ローラ120に当接されたクリーニングローラ122は、熱加圧ローラ120に連れ周り回転することによって含侵オイルを塗布したり、付着したトナー等の異物を清掃したりしていた(図18(a))。この場合、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120の間に線速差が生じていない。しかし、溶融したフィルム糊の場合、その粘性が高いため連れ周り回転によるフィルム糊の除去が困難である。
【0090】
図18(a)のように、クリーニングローラ122が熱加圧ローラ120に押圧して連れ周り回転する場合、熱加圧ローラ120の表面速度をv1としたときに、連れ周りにより同一速度で逆方向に回転するクリーニングローラ122の表面速度を-v1とする。
【0091】
本発明の実施形態においては、図18(b)の右側に示すように、熱加圧ローラ120の回転方向(例えばCCW方向)に対して、クリーニングローラ122の回転方向を同方向(CCW方向)とする、つまり、クリーニングローラ122は熱加圧ローラ120の回転方向と同方向に回転する。クリーニングローラ122が、熱加圧ローラ120に連れ周りせずにそれと同方向に回転することで、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120の間に線速差が生じ、両者の間に摩擦が生じ、熱加圧ローラ120に付着した糊を掻き取るように清掃でき、異物除去力が向上する。
図18(b)の右側に示すように、熱加圧ローラ120の表面速度をv1としたときに、同一速度で同方向に回転するクリーニングローラ122の表面速度をv1と表現する。
【0092】
一方で、図18(c)の実施形態では、クリーニングローラ122は、熱加圧ローラ120の表面速度と異なる表面速度で、熱加圧ローラ120の回転方向と反対方向に回転する。このように、熱加圧ローラ120の回転方向(例えばCCW方向)に対してクリーニングローラ122の回転方向を逆方向(この場合、CW方向)にして、線速差をつけることにより糊を掻き取ってもよい。これにより、クリーニングローラ122が熱加圧ローラ120に対して逆方向に回転するものの連れ周りせず、線速差が生じることになり、線速差によって生じた摩擦で異物除去力が向上する。
【0093】
線速差は、クリーニングローラ122の表面速度を熱加圧ローラ120に対して速くする場合でも遅くする場合でも生じさせることができる。
図18(c)のように、熱加圧ローラ120の表面速度v1に対して、異なる表面速度をv2と表現する。
【0094】
また回転する熱加圧ローラ120に対して、クリーニングローラ122のみを停止させて糊を掻き取る方法があるが、この場合クリーニングローラ122の停止位置(熱加圧ローラ120との当接位置)にて糊の滞留が発生する。そこでクリーニングローラ122を一定時間停止させたら、クリーニングローラ122の回転を始め、停止と回転を繰り返すことで、糊がクリーニングローラ122の一部に蓄積せずに清掃を行うことができる。
【0095】
図18(d)の実施形態のように、表面速度v1で回転する熱加圧ローラ120に対して、クリーニングローラ122の表面速度はv0(停止:速度0)→v1→v0→v1とする。停止時間の長さは任意の時間である。また回転時の速度v1は任意の速度であり、ローラ同士の接触位置を変えられれば、回転速度は速くても遅くてもよい。これによっても、クリーニングローラ122の表面速度と熱加圧ローラ120の表面速度の間に速度差が生じるように、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120が相対的に移動することになる。
【0096】
図19は、クリーニングローラの当接状態でのクリーニングローラの駆動を示す概略図である。図20は、クリーニングローラの離間状態でのクリーニングローラの駆動を示す概略図である。
第1熱加圧ローラ120a及び第2熱加圧ローラ120bはそれぞれ、芯金の端部に取り付けられ一体で駆動する駆動ギヤ301を有する。第1駆動ギヤ301a及び第2駆動ギヤ301bがそれぞれ回転することで、各ローラが回転し、ニップされたシートSを加熱しながら搬送する。第1駆動ギヤ301a及び第2駆動ギヤ301bは同一駆動源で駆動され、第2熱加圧ローラ120bが第1熱加圧ローラ120aに対して同一速度で回転する。
【0097】
第1アイドラギヤ302aと第2アイドラギヤ302bがそれぞれ、第1駆動ギヤ301aと第2駆動ギヤ301bに噛み合うように配置されている。第1クリーニングローラ122aの芯金201に一体に固定された第3駆動ギヤ303aと第2クリーニングローラ122bの芯金201に一体で固定された第4駆動ギヤ303bはそれぞれ、第1アイドラギヤ302aと第2アイドラギヤ302bに噛み合うように配置されている。これにより、クリーニングローラ122に当接した熱加圧ローラ120が駆動し回転すると、クリーニングローラ122も同一方向に回転する。また第2クリーニングローラ122bは第1クリーニングローラ122aと同一速度である。
【0098】
結局、クリーニングローラ122に固定された駆動部材としての第3駆動ギヤ303a及び第4駆動ギヤ303bと、熱加圧ローラ120に固定された駆動部材としての第1駆動ギヤ301a及び第2駆動ギヤ301bが連結され、これら駆動部材が同一の駆動源で駆動される。これにより、熱加圧ローラ120の回転に応じてクリーニングローラ122も回転し作用する。
【0099】
また、熱加圧ローラ120に対向して配置されたクリーニングローラ122は、熱加圧ローラ120と同一の駆動源によって回転する。クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120を同じ駆動源によって同時に回転させることで、省スペース化及び動作ずれの防止が実現される。
【0100】
図19のように、例えば第1熱加圧ローラ120aがCW方向、第2熱加圧ローラ120bがCCW方向に回転する場合、第1クリーニングローラ122aがCW方向、第2クリーニングローラ122bがCCW方向に回転する。
【0101】
図20のように、クリーニングローラ122を離間させた場合、芯金201と一体形成された第3駆動ギヤ303a及び第4駆動ギヤ303bも第1アイドラギヤ302a及び第2アイドラギヤ302bから離れ、駆動列から切り離される。そのため、駆動源を回転させても、クリーニングローラ122は回転しなくなる。これは、離間状態における清掃機能を設けない方式を選択した場合に使用される。
【0102】
図21は、クリーニングローラの常設状態におけるクリーニングローラの駆動を示す概略図である。
クリーニングローラ122が熱加圧ローラ120に常に当接する場合、図19に示す第3駆動ギヤ303a及び第4駆動ギヤ303bの駆動部材をクリーニングローラ122の芯金201に固定する必要はない。本実施形態では、クリーニングローラ122用の駆動部材として第1プーリ305a及び第2プーリ305bを使用し、第1アイドラギヤ302a及び第2アイドラギヤ302bを使用せず、これらプーリを、それぞれ第1タイミングベルト306a及び第2タイミングベルト306bによって第1駆動ギヤ301a及び第2駆動ギヤ301bと連接し駆動させてもよい。これにより、第1熱加圧ローラ120a及び第2熱加圧ローラ120bはそれぞれ、第1クリーニングローラ122a及び第2クリーニングローラ122bと同一方向に回転駆動する。
【0103】
本実施形態では同一駆動源によって熱加圧ローラ120及びクリーニングローラ122を回転させているが、それぞれが駆動源を有し、それぞれのローラが独立して回転してもよい。ただし、その分装置レイアウト上のスペースが必要となる。
【0104】
図22は、クリーニングローラの表層を示す図である。
クリーニングローラ122の表層は、アラミド繊維を圧縮してシート状にした不織布である。繊維同士がランダムに絡み合ってできたクリーニングローラ122の表層は、不織布であるために繊維状構造又は多孔質構造を有する。そのため、熱加圧ローラ120に堆積する前に掻き取られた糊401は、この多孔質の繊維同士の隙間から深部へ侵入する。よって、シート状のアラミド繊維は溶融した糊401を侵入させるための厚みが必要となる。φ20のクリーニングローラ122を用いる場合、不織布が2mmの厚みを有することにより、不織布の第1表層L1で掻き取った溶融した糊が加圧され、さらに内部の第2表層L2、第3表層L3へと侵入し、深部で定着する。これにより表層から取り込まれ溶融した糊は外部へ露出、放出することはなく、クリーニングローラ表面に溜まって熱加圧ローラ120に再転写することなく、継続して清掃することができる。
【0105】
図23は、クリーニングローラ表層の弾性を示す図である。
図23(a)に示すように、例えば芯金201のような高硬度の表層によりニップ部が接触する場合(図23(a))、ニップ部はつぶれず線接触となる。一方、図23(b)の実施形態のように、クリーニングローラ122の表層が繊維素材を巻き付けることによって生じる弾性を有する場合、ニップ部がつぶれるため面で接触することができる。クリーニングローラ122の表層部の弾性によって、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120のニップ面積を広くすることができ、より長時間クリーニングローラ表面を熱加圧ローラ表面に接触させることができる。熱加圧ローラ表面との接触時間が長くなると、熱加圧ローラ回転1周当たりの表面付着した糊を掻き取る時間が長くなるため、表層に溶融した糊の除去効率を向上することができる。
【0106】
また、クリーニングローラ122の表層部は熱加圧ローラ120の表層部よりも高い弾性を有する。これにより、クリーニングローラ122の表層部が熱加圧ローラ120の表層部よりも柔らかくなるため、糊を掻き取るための面積が広くなり、異物除去性が向上する。
【0107】
また熱加圧ローラの表面層は、例えばゴムや発泡ウレタン素材などの弾性を有する素材で構成される。
【0108】
図24は、クリーニングローラの配置を示す図である。
図24(a)のように、クリーニングローラ122は、その中心が熱加圧ローラ120の軸中心に対して鉛直下方に来るよう配置されてもよい。この場合、例えば熱加圧ローラ120が水平方向(搬送方向に対し垂直方向)に離間動作を行う際に、クリーニングローラ122とのニップ位置をずらしながら当接状態を維持する。この配置の場合、搬送経路が長くなる。本実施形態では上下方向長さが長くなるため、装置高さが大きくなる。
【0109】
図24(b)のように、対向する熱加圧ローラ120の軸中心を通る線をPとする。熱加圧ローラ120の外径とクリーニングローラ122の外径が接するようにこれらローラを配置し、第1熱加圧ローラ120a及び第2熱加圧ローラ120bの軸中心と、それと対向して配置された第1クリーニングローラ122a及び第2クリーニングローラ122bの軸中心を線で結ぶ。この線をそれぞれQ1、Q2とする。このとき、線Pに対して線Q1が成す角R1とQ2が成す角R2はそれぞれ鋭角である。
【0110】
図2に示したように、熱加圧ローラ120の下流には搬送センサ126が配置される。そのため、熱加圧ローラ120のそれぞれの軸中心を基準に、クリーニングローラ122の配置を、搬送経路中心から遠ざける方向(熱加圧ローラ同士の中心を結ぶ水平方向)にずらして、R1、R2を鋭角にすると、この方向が熱加圧ローラ下流の搬送センサ126との接触を回避する方向であるため、搬送経路をより短くすることができる。
【0111】
図25は、クリーニングローラの長さを示す図である。
図示のように、クリーニングローラ122の幅W2は、通紙するシートS(ラミネートフィルム)の幅W1より大きい。W1<W2であれば、たとえ熱加圧ローラ120のニップによって糊がシートSからはみ出し、熱加圧ローラ表面に付着したとしても、クリーニングローラ表層によって糊や異物の清掃が可能である。また、熱加圧ローラ120のシート通紙範囲の全てを一度にクリーニングすることができ、クリーニングのための横シフトが不要となる。厳密には、シートSが傾いて搬送されることが想定されるため、そのスキュー量を加味した幅を加算した幅をクリーニングローラ122の長さW2とすることで、確実に清掃を行うことができる。
【0112】
以上のように、本発明の実施形態に係るシート処理装置は、クリーニングローラ122の表面速度と熱加圧ローラ120の表面速度の間に速度差が生じるように、クリーニングローラ122と熱加圧ローラ120が相対的に移動することを特徴とする。これにより、シートSを搬送しながらクリーニングローラ表面に付着した異物を除去でき、シートSの搬送不良が抑制される。
【符号の説明】
【0113】
100 シート処理装置
120 熱加圧ローラ(熱定着部材)
121 排出ローラ(排出手段)
122 クリーニングローラ(清掃部材)
125 定着ユニット
126 搬送センサ(検知手段)
201 芯金部
206 弾性部材
208 表層部
300 画像形成装置
301a、301b 第1駆動ギヤ、第2駆動ギヤ(駆動部材)
303a、303b 第3駆動ギヤ、第4駆動ギヤ(駆動部材)
S シート(2枚重ねシート)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【特許文献1】特開平10-016351号公報
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