(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100237
(43)【公開日】2023-07-18
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20230710BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20230710BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20230710BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20230710BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/06
C22B3/26
C22B23/00 102
C22B47/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073707
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2022000704の分割
【原出願日】2022-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有吉 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】荒川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA11
4K001DB03
4K001DB22
4K001DB30
4K001DB31
4K001DB34
4K001DB36
(57)【要約】
【課題】pH調整剤としての水酸化ナトリウムの使用を抑制し、効率よくリチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法を提供する。
【解決手段】リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法であって、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属が溶解した金属含有溶液から該金属を取り出す湿式処理を含み、前記湿式処理で取り出したリチウムを、当該湿式処理において使用するpH調整剤に用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法であって、
リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属が溶解した金属含有溶液から該金属を取り出す湿式処理を含み、
前記湿式処理で取り出したリチウムを、当該湿式処理において使用するpH調整剤に用いる、リチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法。
【請求項2】
前記湿式処理で前記リチウムを水酸化リチウム水溶液として取り出し、前記水酸化リチウム水溶液を前記pH調整剤として用いる、請求項1に記載の金属回収方法。
【請求項3】
前記湿式処理で取り出したリチウムを、当該湿式処理において使用する全てのアルカリ性pH調整剤に用いる、請求項1又は2に記載の金属回収方法。
【請求項4】
前記湿式処理において使用する全てのアルカリ性pH調整剤が、ナトリウムを含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項5】
前記湿式処理が、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属含有溶液を得る酸浸出工程と、溶媒抽出により前記金属含有溶液から前記金属を分離させる一以上の抽出工程とを含み、
少なくとも一の前記抽出工程において使用するpH調整剤に、前記湿式処理で取り出したリチウムを用いる、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項6】
前記金属が、コバルト、ニッケル及びマンガンを含み、
前記抽出工程が、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程及びニッケル抽出工程をこの順序で含み、
ニッケル抽出工程で得られる抽出残液から、前記湿式処理において使用するpH調整剤に用いるリチウムを取り出す、請求項5に記載の金属回収方法。
【請求項7】
前記抽出残液が硫酸リチウム水溶液であり、
ニッケル抽出工程の後、前記硫酸リチウム水溶液から水酸化リチウム水溶液を得る水酸化工程を含む、請求項6に記載の金属回収方法。
【請求項8】
前記硫酸リチウム水溶液の一部を前記水酸化工程に供し、残部を前記酸浸出工程で前記酸の少なくとも一部として用いる、請求項7に記載の金属回収方法。
【請求項9】
酸浸出工程、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程、ニッケル抽出工程及び水酸化工程を含む一連の工程を複数回にわたって繰り返し行い、当該一連の工程にて前記リチウムの少なくとも一部を液中で循環させる、請求項7又は8に記載の金属回収方法。
【請求項10】
前記一連の工程の繰返しにより、該一連の工程へのリチウムイオン電池廃棄物中の金属の投入に伴い、液中のリチウムイオン濃度が増加し、
前記液中のリチウムイオン濃度に応じて、前記水酸化工程の後、前記水酸化リチウム水溶液の一部から水酸化リチウムを析出させる晶析工程をさらに行うことを含む、請求項9に記載の金属回収方法。
【請求項11】
前記コバルト抽出工程及びニッケル抽出工程がそれぞれ、前記金属含有溶液中の金属イオンを溶媒に抽出すること、及び、前記溶媒中の前記金属イオンを硫酸酸性溶液で逆抽出することを含み、
前記コバルト抽出工程の後及び、ニッケル抽出工程の後にそれぞれ、逆抽出後液中の前記金属イオンを結晶化させ、硫酸塩を得る結晶化工程をさらに含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項12】
前記湿式処理の前に、リチウムイオン電池廃棄物の焙焼を含む処理により電池粉を得る乾式処理を含み、
前記電池粉を前記湿式処理の酸浸出に供し、前記金属含有溶液を得る、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、製品寿命もしくは製造不良その他の理由より廃棄されたリチウムイオン電池廃棄物から、そこに含まれるコバルトやニッケル等の有価金属を回収することが、資源の有効活用の観点から広く検討されている。
【0003】
リチウムイオン電池廃棄物から有価金属を回収するには、たとえば、リチウムイオン電池廃棄物の焙焼その他の所定の乾式処理を経て得られる電池粉に対し、湿式処理を施す。
湿式処理では、具体的には、電池粉中のコバルト、ニッケル、マンガン、リチウム、アルミニウム、鉄等の金属を酸で浸出させ、当該金属が溶解した金属含有溶液を得る。次いで、たとえば特許文献1に記載されているように、中和ないし溶媒抽出により、金属含有溶液に溶解している各元素のうち、アルミニウム、鉄及びマンガン等を順次に又は同時に除去する。その後、金属含有溶液中のコバルトやニッケルを溶媒抽出によって分離するとともに濃縮する。ニッケルを抽出によって分離させた後は、リチウムが溶解して残留したリチウム含有溶液が得られる。このようにして得られたリチウム含有溶液に対しては、溶媒抽出を繰り返すこと等によってリチウムイオンを濃縮した後、炭酸塩の添加や炭酸ガスの吹込み等により炭酸化を行うことで、リチウム含有溶液に含まれるリチウムイオンを炭酸リチウムとして回収することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウムイオン電池廃棄物から有価金属を回収するに当り、たとえば溶媒抽出での抽出時等におけるpHの調整に用いるpH調整剤には、主に水酸化ナトリウムが使用され、リチウム含有溶液には比較的多量のナトリウムが溶解していることがある。炭酸リチウムを精製する工程においてナトリウムはリチウムから分離させて除去するが、ナトリウム含有量が多い場合は除去が難しく、例えばリチウムの洗浄工程を繰り返し行うこと等が必要になる場合がある。この場合、リチウム回収率の低下や回収コストの増大を招く可能性がある。
【0006】
この明細書では、pH調整剤としての水酸化ナトリウムの使用を抑制し、効率よくリチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書で開示するリチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法は、リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法であって、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属が溶解した金属含有溶液から該金属を取り出す湿式処理を含み、前記湿式処理で取り出したリチウムを、当該湿式処理において使用するpH調整剤に用いるというものである。
【発明の効果】
【0008】
上述したリチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法によれば、pH調整剤としての水酸化ナトリウムの使用を抑制し、効率よくリチウムイオン電池廃棄物から金属を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一の実施形態に係るリチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法に含まれる湿式処理を示すフロー図である。
【
図2】
図1の電池粉をリチウムイオン電池廃棄物から得るために行うことができる乾式処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、上述したリチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法の実施の形態について詳細に説明する。
一の実施形態の金属回収方法は、リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収するに当り、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属が溶解した金属含有溶液から該金属を取り出す湿式処理を含む。湿式処理には、
図1に例示するような各工程が含まれ得る。
【0011】
そしてここでは、湿式処理で金属含有溶液からリチウムを取り出し、当該リチウムを、その湿式処理において使用するpH調整剤として用いる。これにより、これまでにpH調整剤として用いていた水酸化ナトリウムの使用量を減らし、又は水酸化ナトリウムが不要になる。その結果、不純物になるナトリウムの混入が抑制され、金属を効率よく回収することができる。また、湿式処理で取り出したリチウムをpH調整剤に用いることにより、pH調整剤として水酸化ナトリウムを別途使用する場合に比して、処理コストを低減することもできる。
【0012】
好ましくは、湿式処理で取り出したリチウムを、湿式処理において使用する全てのアルカリ性pH調整剤に用いる。そして、湿式処理において使用する全てのアルカリ性pH調整剤が、ナトリウムを含まないようにすることが好適である。そのようにするには、湿式処理でリチウムのロスをできる限り抑制し、液中のリチウムイオン濃度をある程度高く維持することが望ましい。液中のリチウムイオン濃度が高ければ、たとえば後述する晶析工程等にてリチウムを取り出す際の収率を高めることもできる。
【0013】
なお多くの場合、湿式処理の前に、リチウムイオン電池廃棄物に対して、
図2に示すような乾式処理を施し、電池粉を得る。その後、この電池粉を湿式処理に供する。
【0014】
(リチウムイオン電池廃棄物)
リチウムイオン電池廃棄物は、携帯電話その他の種々の電子機器等で使用され得るリチウムイオン二次電池で、電池製品の寿命や製造不良またはその他の理由によって廃棄されたものである。このようなリチウムイオン電池廃棄物からコバルトやニッケル等の有価金属を回収することは、資源の有効活用の観点から好ましい。
【0015】
リチウムイオン電池廃棄物は、その周囲を包み込む外装として、アルミニウムを含む筐体を有する。この筐体としては、たとえば、アルミニウムのみからなるものや、アルミニウム及び鉄、アルミラミネート等を含むものがある。
【0016】
また、リチウムイオン電池廃棄物は、上記の筐体内に、リチウム、ニッケル、コバルト及びマンガンからなる群から選択される一種の単独金属酸化物又は、二種以上の複合金属酸化物等からなる正極活物質や、正極活物質が、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)その他の有機バインダー等によって塗布されて固着されたアルミニウム箔(正極基材)を含むことがある。またその他に、リチウムイオン電池廃棄物には、銅、鉄等が含まれる場合がある。
【0017】
さらに、リチウムイオン電池廃棄物には通常、筐体内に電解液が含まれる。電解液としては、たとえば、エチレンカルボナート、ジエチルカルボナート等が使用されることがある。
【0018】
(乾式処理)
上述したリチウムイオン電池廃棄物に対しては、乾式処理として、焙焼工程、破砕工程及び篩別工程を行うことがある。
焙焼工程では、ロータリーキルン炉又はその他の加熱設備を用いて、上記のリチウムイオン電池廃棄物を加熱する。焙焼工程では、リチウムイオン電池廃棄物を、たとえば450℃~1000℃、好ましくは600℃~800℃の温度範囲で0.5時間~4時間にわたって保持する加熱を行うことが好適である。
【0019】
焙焼工程の後は、衝撃式等の粉砕機で、リチウムイオン電池廃棄物の筐体を破壊し、そこから正極材及び負極材を取り出すための破砕工程を行うことができる。
【0020】
破砕工程の後、たとえばアルミニウムの粉末を除去する目的で、適切な目開きの篩を用いてリチウムイオン電池廃棄物を篩分けする篩別工程を行う。
上述した乾式処理により、リチウムイオン電池廃棄物から粉末状の電池粉が得られる。このような電池粉に対し、次に述べるような湿式処理を施し、電池粉に含まれる金属を回収する。
【0021】
(酸浸出工程)
酸浸出工程では、上記の電池粉を硫酸等の酸性浸出液に添加すること等により、リチウムイオン電池廃棄物に含まれていたリチウムを含む金属を酸で浸出させる。それにより、当該金属が溶解した金属含有溶液が得られる。
【0022】
なお、電池粉からリチウムのみを予め取り出すため、酸による浸出の前に電池粉を水と接触させ、電池粉中のリチウムを水に浸出させた後、その水浸出残渣を酸浸出に供することも可能である。但し、この場合、水浸出及び酸浸出のそれぞれの設備が必要になるとともに、両方を行うことにより処理時間が増大する他、水によってリチウムを有効に浸出させるための焙焼条件等を管理しなければならない。またそのように管理しても、水によるリチウムの浸出率をそれほど高めることができない場合がある。それ故に、乾式処理で得られた電池粉は、水浸出を行わずに酸浸出工程の酸浸出に供し、これにより、リチウムイオンを含む金属含有溶液を得ることが好ましい。水浸出を行わない場合、湿式処理での液中のリチウムイオン濃度を高く維持しやすくなる。
【0023】
酸浸出工程は公知の方法ないし条件で行うことができるが、pHは0.0~2.0とすることが好ましく、酸化還元電位(ORP値、銀/塩化銀電位基準)は0mV以下になることがある。ここで、酸性浸出液のpHを調整する希釈液として、後述するようにニッケル抽出工程の抽出残液(硫酸リチウム水溶液等)を用いることができる。このようにすることで、湿式処理における一連の工程内でリチウムイオンが循環し、該工程内で液中のリチウムイオンを濃縮することができる。
【0024】
酸浸出工程で得られる金属含有溶液は、電池粉から溶解した金属として、リチウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及びマンガンイオンが含まれる。金属含有溶液は、さらにアルミニウムイオンや鉄イオンが含まれ得るが、これらの金属イオンをほぼ含まないことが好ましい。アルミニウムイオン及び鉄イオンをある程度含む場合、後述するマンガン抽出工程の前に中和工程が必要になり、この中和工程でリチウムがアルミニウムとの複合化合物を形成して沈殿し、リチウムのロスが生じる懸念があるからである。金属含有溶液にアルミニウムイオンや鉄イオンがほぼ存在しなければ、この実施形態のように上記の中和工程を省略することができる。なお、電池粉に含まれることのある銅は、酸浸出で溶解させずに酸浸出残渣に残し、固液分離により除去することができる。
【0025】
たとえば、酸浸出工程で得られる金属含有溶液中のリチウムイオン濃度は3g/L~35g/L、コバルトイオン濃度は5g/L~30g/L、ニッケルイオン濃度は5g/L~30g/L、マンガンイオン濃度は1g/L~10g/L、アルミニウムイオン濃度は0.3g/L~10g/L、鉄イオン濃度は0.1g/L~5g/L、銅イオン濃度は0.001g/L~0.05g/Lである場合がある。
【0026】
(マンガン抽出工程)
酸浸出工程で得られる金属含有溶液に対しては、必要に応じて後述の中和工程を行った後、溶媒抽出により上記の金属含有溶液からマンガンイオンを分離させるマンガン抽出工程を行うことができる。
【0027】
マンガン抽出工程では、燐酸エステル系抽出剤を含む溶媒を使用することが好ましい。ここで、燐酸エステル系抽出剤としては、たとえばジ-2-エチルヘキシルリン酸(商品名:D2EHPA又はDP8R)等が挙げられる。抽出剤は、芳香族系、パラフィン系、ナフテン系等の炭化水素系有機溶剤を用いて、濃度が10体積%~30体積%となるように希釈し、これを溶媒とする場合がある。
【0028】
マンガン抽出工程の溶媒抽出では、平衡pHを、好ましくは2.3~3.5、より好ましくは2.5~3.0とする。このときに使用するアルカリ性等のpH調整剤には、後述するようにして取り出されるリチウム、より詳細には水酸化リチウム水溶液を用いる(
図1参照)。pH調整剤に湿式処理で取り出したリチウムを用いることで、水酸化ナトリウムをpH調整剤として用いる場合の、後述のニッケル抽出工程後の抽出残液への当該ナトリウムの残留及び、その抽出残液から生成させる水酸化リチウム水溶液への不純物の当該ナトリウムの混入を抑制することができる。抽出に際しては、各抽出に供する水相と溶媒との流れの向きが逆向きの向流式の多段抽出で抽出を行うことが望ましい。このようにすることで、コバルトイオン、ニッケルイオン、リチウムイオンが抽出されることを抑制し、マンガンイオンの抽出率を高めることができる。
【0029】
マンガンイオンを抽出した溶媒には、コバルトイオン、ニッケルイオン、リチウムイオンが含まれることがあるため、スクラビング、逆抽出及びスカベンジングにより該溶媒に含まれ得るこれらのイオンを水相に抽出する。スクラビング液は、たとえば、硫酸酸性溶液とすることができ、pHは2.0~3.0とすることができる。逆抽出液は、たとえば、硫酸酸性溶液とすることができ、pHは0.0~1.0とすることができる。スクラビング後液や逆抽出後液、スカベンジング後液はマンガン抽出工程に使用すること(たとえば、スクラビング後液を金属含有溶液と混合させ、それを抽出前液としてマンガン抽出工程の溶媒抽出に使用したり、逆抽出後液をマンガン抽出工程のスクラビングに使用したり、スカベンジング後液をマンガン抽出工程の逆抽出液に使用したりすること)が望ましい。これにより、コバルトイオン、ニッケルイオン、リチウムイオンをロスすることなく、工程内で循環ないし滞留させることができる。ただし、マンガンイオンを抽出した溶媒に、コバルトイオン、ニッケルイオン、リチウムイオンが含まれない場合には、スクラビングや逆抽出、スカベンジングは行わなくてもよい。
【0030】
(コバルト抽出工程及び結晶化工程)
コバルト抽出工程では、マンガン抽出工程でマンガンイオンを抽出した後に得られる抽出残液としての金属含有溶液から、溶媒抽出によりコバルトイオンを分離させる。
【0031】
ここでは、ホスホン酸エステル系抽出剤を含む溶媒を用いることが好ましい。なかでも、ニッケルとコバルトの分離効率等の観点から2-エチルヘキシルホスホン酸2-エチルヘキシル(商品名:PC-88A、Ionquest801)が特に好適である。抽出剤は、芳香族系、パラフィン系、ナフテン系等の炭化水素系有機溶剤を用いて、濃度が10体積%~30体積%となるように希釈し、これを溶媒とする場合がある。
【0032】
コバルトイオンを抽出する際には、湿式処理で取り出したリチウムを含む水酸化リチウム水溶液等のpH調整剤でpHを調整することにより、抽出時の平衡pHを、好ましくは5.0~6.0、より好ましくは5.0~5.5とすることができる。pHが5.0より小さい場合、コバルトイオンが十分に溶媒に抽出できないおそれがある。これにより、コバルト含有溶液中のコバルトイオンを溶媒に抽出することができるが、それとともに、後述するように、本工程では不純物イオンになるニッケルイオンやリチウムイオン等も若干抽出されることがある。なお、コバルトイオンの抽出に際しても、各抽出に供する水相と溶媒との流れの向きが逆向きの向流式の多段抽出で抽出を行うことが望ましい。このようにすることで、ニッケルイオンやリチウムイオンが抽出されることを抑制しつつ、コバルトイオンの抽出率を高めることができる。
【0033】
次いで、必要に応じて、コバルトイオンを抽出した溶媒に対し、スクラビング液を用いて、該溶媒に含まれ得るニッケルイオン等の不純物を除去する一回以上のスクラビングを行ってもよい。スクラビング液は、たとえば、硫酸酸性溶液とすることができ、pHは3.5~5.5とすることができる。ここで、スクラビング後液にはニッケルイオンおよびリチウムイオンが含まれ得る。そのため、スクラビング後液の一部または全部をコバルト抽出工程の溶媒抽出に使用すること(つまり、スクラビング後液の一部または全部を金属含有溶液と混合させ、それを抽出前液としてコバルト抽出工程の溶媒抽出を行うこと)が望ましい。これにより、ニッケルイオンおよびリチウムイオンをロスすることなく、工程内で循環ないし滞留させることができる。ただし、コバルトイオンを抽出した溶媒に、ニッケルイオン、リチウムイオンが含まれない場合には、スクラビング工程は行わなくてもよい。
【0034】
その後、コバルトイオンを抽出した溶媒に対し、逆抽出を行う。逆抽出に用いる逆抽出液は、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸のいずれでもよいが、後述する結晶化工程で硫酸塩を得る場合は硫酸が望ましい。ここでは、できる限り全てのコバルトイオンが有機相(溶媒)から水相に抽出されるようなpHの条件で行う。具体的にはpHは2.0~4.0の範囲とすることが好ましく、2.5~3.5の範囲とすることがより一層好ましい。なお、O/A比と回数については、適宜決めることができる。液温は常温でもよいが、好ましくは0℃~40℃である。
【0035】
コバルト抽出工程で得られた逆抽出後液に対しては、結晶化工程を行う。コバルト抽出工程後の結晶化工程では、コバルトイオンが結晶化し、硫酸コバルトが得られる。結晶化工程では、逆抽出後液を、たとえば40℃~120℃に加熱して濃縮する。これにより、コバルトイオンは硫酸コバルトとして結晶化する。このようにして製造した硫酸コバルトは、ニッケル含有量が、好ましくは5質量ppm以下であり、ニッケルが十分に除去されていることから、リチウムイオン二次電池その他の電池の製造の原料として有効に用いることができる。ここで、結晶化後液には結晶化しなかったコバルトイオンおよびリチウムイオンが含まれている場合がある。そこで、結晶化後液は、結晶化工程で逆抽出後液に混合させて再度の結晶化に使用したり、あるいは、コバルト抽出工程のスクラビング液のコバルト濃度を調整する目的で使用したり、さらに、コバルト抽出工程の溶媒抽出に使用することが望ましい。このように工程内で繰り返し使用することで、コバルトイオンおよびリチウムイオンをロスすることなく、工程内で循環ないし滞留させて濃縮することができる。
【0036】
(ニッケル抽出工程及び結晶化工程)
コバルト抽出工程で金属含有溶液からコバルトイオンを分離させた後は、コバルト抽出工程の抽出残液としての金属含有溶液に対し、ニッケル抽出工程を行う。
【0037】
ニッケル抽出工程では、好ましくはカルボン酸系抽出剤を使用し、金属含有溶液からニッケルイオンを分離させる。カルボン酸系抽出剤としては、たとえばネオデカン酸、ナフテン酸等があるが、なかでもニッケルイオンの抽出能力の理由によりネオデカン酸が好ましい。抽出剤は、芳香族系、パラフィン系、ナフテン系等の炭化水素系有機溶剤を用いて、濃度が10体積%~30体積%となるように希釈し、これを溶媒とする場合がある。
【0038】
ニッケル抽出工程でニッケルイオンを抽出するに当っては、平衡pHを、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.8~7.2とする。このときのpHの調整に使用するpH調整剤も、後述するようにして取り出される水酸化リチウム水溶液を用いる。ニッケル抽出工程においても、上述したコバルト抽出工程と同様に向流式の多段抽出で抽出を行うことが望ましい。このようにすることで、リチウムイオンが抽出されることを抑制し、ニッケルイオンの抽出率を高めることができる。
【0039】
なお、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程及びニッケル抽出工程を含む湿式処理で使用する全てのアルカリ性pH調整剤は、湿式処理で取り出したリチウムを含み、ナトリウムを含まないことが好適である。これにより、アルカリ性pH調整剤としての水酸化ナトリウムが不要になり、後述の水酸化工程で得られる水酸化リチウム水溶液中の不純物のナトリウムイオンを十分に低減することができる。
【0040】
次いで、必要に応じて、ニッケルイオンを抽出した溶媒に対し、スクラビング液を用いて、該溶媒に含まれ得るリチウムイオンやナトリウムイオン等の不純物を除去する一回以上のスクラビングを行ってもよい。スクラビング液は、たとえば、硫酸酸性溶液とすることができ、pHは5.0~6.0とすることができる。ここで、スクラビング後液にはリチウムイオンが含まれることがある。そのため、スクラビング後液の一部または全部をニッケル抽出工程の溶媒抽出に使用すること(つまり、スクラビング後液の一部または全部を金属含有溶液と混合させ、それを抽出前液としてニッケル抽出工程の溶媒抽出を行うこと)が望ましい。これにより、リチウムイオンをロスすることなく、工程内で循環ないし滞留させて濃縮することができる。ただし、ニッケルイオンを抽出した溶媒に、リチウムイオンが含まれない場合には、スクラビング工程は行わなくてもよい。
【0041】
次に、当該溶媒に対して、硫酸、塩酸もしくは硝酸等の逆抽出液を使用して逆抽出を行う。その後に結晶化工程を行う場合は、なかでも硫酸が望ましい。pHは1.0~3.0の範囲が好ましく、1.5~2.5がより好ましい。なお、O/A比と回数については適宜決めることができるが、O/A比は5~1、より好ましくは4~2である。
【0042】
逆抽出により硫酸ニッケル溶液が得られた場合、必要に応じて電解及び溶解を行った後、結晶化工程で40℃~120℃に加熱し、ニッケルイオンを硫酸ニッケルとして結晶化させることができる。これにより硫酸ニッケルが得られる。ここで、結晶化後液には結晶化しなかったニッケルイオンおよびリチウムイオンが含まれている場合がある。そこで、結晶化後液は、結晶化工程で逆抽出後液に混合させて再度の結晶化に使用したり、あるいは、ニッケル抽出工程のスクラビング液のニッケルイオン濃度を調整する目的で使用したり、さらに、ニッケル抽出工程の溶媒抽出に使用することが望ましい。このように工程内で繰り返し使用することで、ニッケルイオンおよびリチウムイオンをロスすることなく、工程内で循環ないし滞留させて濃縮することができる。
【0043】
(水酸化工程)
ニッケル抽出工程後に得られる抽出残液は、先述した各抽出工程でマンガンイオン、コバルトイオン及びニッケルイオンのそれぞれが分離された結果、実質的にリチウムイオンのみが含まれる。この抽出残液から、湿式処理で使用するpH調整剤用のリチウムを取り出すことができる。より詳細には、ニッケル抽出工程後の抽出残液が硫酸リチウム水溶液である場合、その硫酸リチウム水溶液から水酸化リチウム水溶液を作製する水酸化工程を行うことができる。
【0044】
硫酸リチウム水溶液から水酸化リチウム水溶液を得るには、種々の手法を用いることができる。
たとえば、まず硫酸リチウム水溶液に炭酸塩を添加し又は炭酸ガスを吹き込むこと等により、炭酸リチウム水溶液を得る。その後、いわゆる化成法では、炭酸リチウム水溶液に水酸化カルシウムを添加し、Li2CO3+Ca(OH)2→2LiOH+CaCO3の反応式の下、水酸化リチウム水溶液を生成させることができる。液中に残留することがあるカルシウムイオンは、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂等により除去することが可能である。
あるいは、硫酸リチウム水溶液に水酸化バリウムを添加し、Li2SO4+Ba(OH)2→2LiOH+BaSO4の反応に基づき、水酸化リチウム水溶液を得ることもできる。なお、このときに液中に溶解し得るバリウムは、陽イオン交換樹脂やキレート樹脂等を用いて分離させて除去することができる。
あるいは、いわゆる電解法を採用する場合、陽極側と陰極側とを区分けする陽イオン交換膜を設けた電解槽内で、陽極側に硫酸リチウム水溶液を供給して電気分解を行うことにより、陰極側に水酸化リチウム水溶液を生成させることができる。
【0045】
このようにして得られた水酸化リチウム水溶液は、
図1に示すように、後述の中和工程でのpH調整剤(中和剤)のほか、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程及びニッケル抽出工程のそれぞれにて、アルカリ性pH調整剤として有効に用いることができる。
【0046】
ところで、硫酸リチウム水溶液の一部を水酸化工程に供し、残りの一部(残部)は、
図1に示すように、酸浸出工程で酸の少なくとも一部として用いることが好ましい。この場合、硫酸リチウム水溶液の当該一部を酸浸出工程で用いることにより、一連の工程内でのリチウム濃度を高くすることができる他、水酸化工程で、pH調整剤等に必要な分だけ水酸化リチウム水溶液を得ることで、水酸化リチウムの製造等を含むプロセス全体でのコストを削減することができる。
【0047】
(晶析工程)
酸浸出工程、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程、ニッケル抽出工程及び水酸化工程を含む一連の工程を複数回にわたって繰り返し行うとき、上述したように硫酸リチウム水溶液の一部を酸浸出工程に送ると、そこに含まれるリチウムは各抽出工程で僅かに分離されることもあるが、一連の工程を繰り返すと、その都度、新たにリチウムイオン電池廃棄物が一連の工程に投入されることに伴って、各工程において前工程から当該工程に入ってくるリチウムイオンの量と当該工程から次工程に移動するリチウムイオンの量とがほぼ一致し、各工程でリチウムイオンの増加量が飽和して一定量のリチウムイオンが滞留する。その場合、pH調整剤として各工程に用いられる水酸化リチウム水溶液由来のリチウムイオンや、酸浸出工程に用いられる硫酸リチウム水溶液由来のリチウムのほとんどは、ニッケル抽出工程後の硫酸リチウム水溶液に再び含まれる。つまり、一連の工程でリチウムの少なくとも一部は液中で循環することになる。
【0048】
そして、一連の工程を繰り返すと、その都度、新たにリチウムイオン電池廃棄物が一連の工程に投入されることに伴って、硫酸リチウム水溶液等の液中のリチウムイオン濃度が次第に増加し得る。
【0049】
このようにして液中のリチウムイオン濃度が増加した場合等においては、当該液中のリチウムイオン濃度に応じて、水酸化工程の後に、水酸化リチウム水溶液の一部から水酸化リチウムを析出させる晶析工程をさらに行うことができる。これにより、水酸化リチウムを回収することが可能である。ここで、これまでは、ニッケル抽出工程後のリチウムイオンを含む抽出残液中のリチウムイオン濃度が低いため、リチウム濃縮工程を行って液中のリチウムイオン濃度を高める必要があったが、本実施形態においては、このようなリチウム濃縮工程を行う必要がなく、複雑な工程を行うことなく高濃度のリチウム水溶液を得ることができるため、当該工程におけるリチウムのロスや製造コストを低減することができる。
【0050】
晶析工程では、水酸化リチウムを析出させるため、加熱濃縮又は減圧蒸留等の晶析操作を行うことができる。加熱濃縮の場合、晶析時の温度は高いほど処理が速く進むので好ましい。ただし、晶析後、晶析物の乾燥時の温度は、結晶水が脱離しない60℃未満の温度で実施するのが好ましい。結晶水が脱離すると、無水の水酸化リチウムとなり潮解性を有するため取り扱いが困難となるからである。
【0051】
なおその後、上記の水酸化リチウムを、必要な物性に調整するため、粉砕処理等を行うことができる。
【0052】
(中和工程)
酸浸出工程で得られる金属含有溶液中に、鉄およびアルミニウムが含まれる場合、中和工程を行い、そこからアルミニウムの少なくとも一部及び/又は鉄を分離させることが望ましい。例えば、アルミニウムイオン濃度が0.5g/L以上、鉄イオン濃度が0.001g/L以上である場合、先述したマンガン抽出工程において、アルミニウムイオンを充分に除去できないことや、溶媒に抽出された鉄イオンが残留して蓄積することで溶媒の抽出能力が低下することが懸念されるため、中和工程を行うことが望ましい。中和に際しては、はじめに、アルカリの添加によりpHを4.0~6.0、酸化還元電位(ORP値、銀/塩化銀電位基準)は-500mV~100mVとすることで、アルミニウムを沈殿させることができる。その後、酸化剤を添加するとともに、pHを3.0~4.0の範囲内に調整することにより、鉄を沈殿させることができる。このときに使用するアルカリ性等のpH調整剤には、上述したようにして取り出されるリチウム、より詳細には水酸化リチウム水溶液を用いる。
【0053】
以上に述べたように、湿式処理で取り出したリチウムをpH調整剤に用いることにより、pH調整剤としての水酸化ナトリウムの使用を抑制し、効率よくリチウムイオン電池廃棄物から金属を回収することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法であって、
リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属が溶解した金属含有溶液から該金属を取り出す湿式処理を含み、
前記湿式処理が、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属含有溶液を得る酸浸出工程と、溶媒抽出により前記金属含有溶液から前記金属を分離させる一以上の抽出工程と、前記抽出工程の後、リチウムイオンを含む抽出残液から水酸化リチウム水溶液を得る水酸化工程とを含み、
前記湿式処理の少なくとも一の前記抽出工程において使用するpH調整剤に、前記湿式処理で取り出したリチウムを使用し、
前記抽出残液の一部を前記水酸化工程に供し、残部を前記酸浸出工程で前記酸の少なくとも一部として用いる、リチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法。
【請求項2】
前記湿式処理の前記水酸化工程で前記リチウムを水酸化リチウム水溶液として取り出し、前記水酸化リチウム水溶液を前記pH調整剤として用いる、請求項1に記載の金属回収方法。
【請求項3】
前記湿式処理で取り出したリチウムを、当該湿式処理において使用する全てのアルカリ性pH調整剤に用いる、請求項1又は2に記載の金属回収方法。
【請求項4】
前記湿式処理において使用する全てのアルカリ性pH調整剤が、ナトリウムを含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項5】
前記金属が、コバルト、ニッケル及びマンガンを含み、
前記抽出工程が、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程及びニッケル抽出工程をこの順序で含み、
ニッケル抽出工程で得られる抽出残液から、前記湿式処理において使用するpH調整剤に用いるリチウムを取り出す、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項6】
前記抽出残液が硫酸リチウム水溶液であり、
ニッケル抽出工程の後、前記水酸化工程で、前記硫酸リチウム水溶液から水酸化リチウム水溶液を得る、請求項5に記載の金属回収方法。
【請求項7】
酸浸出工程、マンガン抽出工程、コバルト抽出工程、ニッケル抽出工程及び水酸化工程を含む一連の工程を複数回にわたって繰り返し行い、当該一連の工程にて前記リチウムの少なくとも一部を液中で循環させる、請求項5又は6に記載の金属回収方法。
【請求項8】
前記一連の工程の繰返しにより、該一連の工程へのリチウムイオン電池廃棄物中の金属の投入に伴い、液中のリチウムイオン濃度が増加し、
前記液中のリチウムイオン濃度に応じて、前記水酸化工程の後、前記水酸化リチウム水溶液の一部から水酸化リチウムを析出させる晶析工程をさらに行うことを含む、請求項7に記載の金属回収方法。
【請求項9】
前記コバルト抽出工程及びニッケル抽出工程がそれぞれ、前記金属含有溶液中の金属イオンを溶媒に抽出すること、及び、前記溶媒中の前記金属イオンを硫酸酸性溶液で逆抽出することを含み、
前記コバルト抽出工程の後及び、ニッケル抽出工程の後にそれぞれ、逆抽出後液中の前記金属イオンを結晶化させ、硫酸塩を得る結晶化工程をさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【請求項10】
前記湿式処理の前に、リチウムイオン電池廃棄物の焙焼を含む処理により電池粉を得る乾式処理を含み、
前記電池粉を前記湿式処理の酸浸出に供し、前記金属含有溶液を得る、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属回収方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
この明細書で開示するリチウムイオン電池廃棄物の金属回収方法は、リチウムイオン電池廃棄物から金属を回収する方法であって、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属が溶解した金属含有溶液から該金属を取り出す湿式処理を含み、前記湿式処理が、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを含む金属を酸で浸出させ、前記金属含有溶液を得る酸浸出工程と、溶媒抽出により前記金属含有溶液から前記金属を分離させる一以上の抽出工程と、前記抽出工程の後、リチウムイオンを含む抽出残液から水酸化リチウム水溶液を得る水酸化工程とを含み、前記湿式処理の少なくとも一の前記抽出工程において使用するpH調整剤に、前記湿式処理で取り出したリチウムを使用し、前記抽出残液の一部を前記水酸化工程に供し、残部を前記酸浸出工程で前記酸の少なくとも一部として用いるというものである。