(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100390
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】混合イオン交換樹脂の分離塔、及びこれを用いた混合イオン交換樹脂の分離方法
(51)【国際特許分類】
B01J 49/09 20170101AFI20230711BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230711BHJP
【FI】
B01J49/09
C02F1/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001038
(22)【出願日】2022-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA03
4D025BA08
4D025BA13
4D025BA22
4D025BB04
(57)【要約】
【課題】 混床式イオン交換装置などで使用した混合イオン交換樹脂を精度よく分離することの可能な混合イオン交換樹脂の分離塔を提供する。
【解決手段】 混合イオン交換樹脂の分離塔1は、円筒形の分離塔本体1Aの底部に注排水口2が設けられているとともに、複数の吐出ノズル3Aを備えた給水管3が設けられていて、頂部には排水口4が形成されている。この分離塔本体1Aの吐出ノズル3Aの上側には集水板5が配置されている。また、分離塔1内の上下方向の中間付近には第1~第3のアニオン交換樹脂抜出配管6A、6B,6Cが設けられているとともに、このアニオン交換樹脂の抜出配管6Cの下側で集水板5よりわずかに上側にカチオン交換樹脂抜出配管27が設けられている。一方、分離塔1の側面にはのぞき窓8を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の異なる2種類の混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する混合イオン交換樹脂の分離塔であって、
比重の小さい方の第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部が上下方向に複数系列配置されている、混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項2】
前記混合イオン交換樹脂の分離塔の側面にのぞき窓を有する、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項3】
前記第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂との分離界面を検知する界面センサを備える、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項4】
前記界面センサの分離界面の検知結果に基づき、第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部を複数の系列から選択する制御手段を有する、請求項3に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項5】
前記第一のイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂であり、前記第二のイオン交換樹脂がカチオン交換樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項6】
比重の異なる2種類の混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する混合イオン交換樹脂の分離塔を用いた混合イオン交換樹脂の分離方法であって、
前記混合イオン交換樹脂の分離塔が、比重の小さい方の第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部が上下方向に複数系列配置されており、
前記混合イオン交換樹脂の分離塔に上向流で通水して前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離し、前記第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面に応じて、前記複数系列の第一のイオン交換樹脂抜出部のいずれかを選択して、該選択された第一のイオン交換樹脂抜出部から第一のイオン交換樹脂を抜き出す、混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項7】
前記混合イオン交換樹脂の分離塔が側面にのぞき窓を有しており、該のぞき窓から前記第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面に応じて、前記複数系列の第一のイオン交換樹脂抜出部のいずれかを選択して、該選択された第一のイオン交換樹脂抜出部から第一のイオン交換樹脂を抜き出す、請求項6に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項8】
前記混合イオン交換樹脂の分離塔内に第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂との分離界面を検知する界面センサが設けられていて、該界面センサの分離界面の検知結果に基づき、前記複数系列の第一のイオン交換樹脂抜出部のいずれかを選択して、該選択された第一のイオン交換樹脂抜出部から第一のイオン交換樹脂を抜き出す、請求項6に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【請求項9】
前記第一のイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂であり、前記第二のイオン交換樹脂がカチオン交換樹脂である、請求項6~8のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置などに用いる混床式イオン交換装置などで使用した混合イオン交換樹脂の分離塔、および混床式イオン交換装置などから抜き出した混合イオン交換樹脂を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置では原水中の不純物を除去して水の清浄度を高めているが、イオン性の不純物、すなわちアニオン性の不純物とカチオン性の不純物を除去するためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合充填した混床式イオン交換装置が汎用的に用いられている。この混床式イオン交換装置では、イオン交換樹脂はイオン交換容量に相当する量のイオンを交換すると、それ以上のイオン性不純物は除去できずに破過する。そこで、ある程度の水量を処理したら、この混床式イオン交換装置からイオン交換樹脂を回収してそれぞれに分離し、カチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔でそれぞれ硫酸や苛性ソーダなどにより再生し、CRMやCRM-HXなどの工業的な用途で再利用している。
【0003】
この混合イオン交換樹脂を分離して再利用するにあたっては、樹脂の再生状態をより高度に維持することが好ましいが、そのためには逆再生をできるだけ生じさせない必要がある。逆再生とは、アニオン交換樹脂の混入したカチオン交換樹脂を塩酸や硫酸など酸溶液で再生する際、アニオン交換樹脂がCl形やSO4形などに再生され、またカチオン交換樹脂の混入したアニオン交換樹脂を水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で再生する際、カチオン交換樹脂がNa形などに再生されることである。逆再生された樹脂は処理水へClまたはNaをリークし、水質悪化を招くため、混入率の低減が重要な課題となる。
【0004】
混床式イオン交換装置から抜き出された樹脂は分離塔に投入され、バブリングや逆洗を実施後、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを比重差を利用して分離し、それぞれ分離塔から抜き出す。
【0005】
この従来の混合イオン交換樹脂の分離塔の一例を
図6に示す。
図6において、混合イオン交換樹脂の分離塔21は、円筒形の分離塔本体21Aの底部に注排水口22が設けられているとともに、複数吐出ノズル23Aを備えた吐水部としての給水管23が設けられていて、頂部には排水口24が形成されている。この分離塔本体21Aの吐出ノズル23Aの上側には集水板25が配置されている。そして、分離塔21内の上下方向の中間付近にはアニオン交換樹脂抜出部としてのアニオン交換樹脂抜出配管26が設けられているとともに、このアニオン交換樹脂抜出配管26の下側で集水板25よりわずかに上側にカチオン交換樹脂抜出配管27が設けられている。また、分離塔21の側面にはのぞき窓28を備える。なお、29は分離塔21の側面上側に設けられた使用済の混合イオン交換樹脂の投入口である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような従来の分離塔21においては、アニオン交換樹脂の抜出配管26およびカチオン交換樹脂の抜出配管27は、それぞれ1本(1系列)ずつ設置されているが、混床式イオン交換装置におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率は、顧客の給水水質に応じて異なる設定がなされることが多い。このため、混床式イオン交換装置によって、比重分離した際のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との界面の位置が異なるためアニオン交換樹脂の抜出位置が最適でなく、混入率の上昇の要因となっている。そこで、従来はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合比率から、アニオン交換樹脂の抜出配管26で最適に抜き出し可能となるようにのぞき窓28で目視により確認しながら分離塔21に投入する樹脂量を調整しているが、作業性が良くないばかりか、アニオン交換樹脂又はカチオン交換樹脂を抜き出した際に他の樹脂の混入率を十分に低減できない、という問題点があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、混床式イオン交換装置などで使用した混合イオン交換樹脂を精度よく分離することの可能な混合イオン交換樹脂の分離塔を提供することを目的とする。また、本発明は、混床式イオン交換装置などで使用した混合イオン交換樹脂を精度よく分離することの可能な混合イオン交換樹脂の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、比重の異なる2種類の混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する混合イオン交換樹脂の分離塔であって、比重の小さい方の第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部が上下方向に複数系列配置されている、混合イオン交換樹脂の分離塔を提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面の位置に応じて、第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、最適な位置から第一のイオン交換樹脂を抜き出すことができるので、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂とを他方のイオン交換樹脂の混入を低減して分離することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記混合イオン交換樹脂の分離塔の側面にのぞき窓を有することが好ましい(発明2)。
【0011】
かかる発明(発明2)によれば、のぞき窓から第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面を視認して、この分離界面の位置に応じて第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、最適な位置で第一のイオン交換樹脂を抜き出すことができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂との分離界面を検知する界面センサを備えることが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明3)によれば、色度センサなどの光学的な界面センサにより第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面を判定して、この分離界面の位置に応じて第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、最適な位置で第一のイオン交換樹脂を抜き出すことができる。
【0014】
上記発明(発明3)においては、前記界面センサの分離界面の検知結果に基づき、第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部を複数の系列から選択する制御手段を有することが好ましい(発明4)。
【0015】
かかる発明(発明4)によれば、界面センサの分離界面の判定結果に基づき、制御手段により第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部を選択するように制御することで、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離工程を自動化することができる。
【0016】
上記発明(発明1~4)においては、前記第一のイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂であり、前記第二のイオン交換樹脂がカチオン交換樹脂であることが好ましい(発明5)。
【0017】
かかる発明(発明5)によれば、一般にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とでは、アニオン交換樹脂の方が比重は小さいので、比重分離した際にはアニオン交換樹脂は上側にカチオン交換樹脂は下側に沈降する。そこで、その後両者の界面を判定して上側のアニオン交換樹脂抜出部からアニオン交換樹脂を精度よく抜き出すことができる。
【0018】
また、本発明は第二に、比重の異なる2種類の混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する混合イオン交換樹脂の分離塔を用いた混合イオン交換樹脂の分離方法であって、前記混合イオン交換樹脂の分離塔が、比重の小さい方の第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部が上下方向に複数系列配置されており、前記混合イオン交換樹脂の分離塔に上向流で通水して前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離し、前記第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面に応じて、前記複数系列の第一のイオン交換樹脂抜出部のいずれかを選択して、該選択された第一のイオン交換樹脂抜出部から第一のイオン交換樹脂を抜き出す、混合イオン交換樹脂の分離方法を提供する(発明6)。
【0019】
かかる発明(発明6)によれば、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面の位置に応じて、第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、最適な位置から第一のイオン交換樹脂を抜き出すことができるので、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂とを他方のイオン交換樹脂の混入を低減して分離することができる。
【0020】
上記発明(発明6)においては、前記混合イオン交換樹脂の分離塔が側面にのぞき窓を有しており、該のぞき窓から前記第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面に応じて、前記複数系列の第一のイオン交換樹脂抜出部のいずれかを選択して、該選択された第一のイオン交換樹脂抜出部から第一のイオン交換樹脂を抜き出してもよい(発明7)。
【0021】
かかる発明(発明7)によれば、のぞき窓から第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面を視認して、第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、最適な位置から樹脂を抜き出すことができる。
【0022】
上記発明(発明6)においては、前記混合イオン交換樹脂の分離塔内に第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂との分離界面を検知する界面センサが設けられていて、該界面センサの分離界面の検知結果に基づき、前記複数系列の第一のイオン交換樹脂抜出部のいずれかを選択して、該選択された第一のイオン交換樹脂抜出部から第一のイオン交換樹脂を抜き出してもよい(発明8)。
【0023】
かかる発明(発明8)によれば、色度センサなどの光学的な界面センサにより第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面を判定して第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、最適な位置から樹脂を抜き出すことができる。また、別途制御手段を設けることで、界面センサの分離界面の判定結果に基づき、第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部を選択するように制御することで、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離工程を自動化することができる。
【0024】
上記発明(発明6~8)においては、前記第一のイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂であり、前記第二のイオン交換樹脂がカチオン交換樹脂であることが好ましい(発明9)。
【0025】
かかる発明(発明9)によれば、一般にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とでは、アニオン交換樹脂の方が比重は小さいので、比重分離した際にはアニオン交換樹脂は上側にカチオン交換樹脂は下側に沈降する。そこで、その後両者の界面を判定して上側のアニオン交換樹脂抜出部からアニオン交換樹脂を精度よく抜き出すことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔によれば、比重の小さい方の第一のイオン交換樹脂を抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部が上下方向に複数系列配置されているので、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂の分離界面の位置に応じて、第一のイオン交換樹脂の抜き出す第一のイオン交換樹脂抜出部の系列を選択することで、第一のイオン交換樹脂と第二のイオン交換樹脂とを他のイオン交換樹脂の混入を低減して分離することができる。これにより、分離塔に投入する混合イオン交換樹脂の投入量を調整する必要がない、という効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第一の実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示す概略図である。
【
図2】同実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔による逆洗工程を示す概略図である。
【
図3】同実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔による分離工程を示す概略図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示す概略図である。
【
図5】本発明の第三の実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示す概略図である。
【
図6】従来の混合イオン交換樹脂の分離塔を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔の第一の実施形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0029】
第1の実施形態
〔混合イオン交換樹脂の分離塔〕
図1は、本発明の第一の実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示している。
図1において、混合イオン交換樹脂の分離塔1は、円筒形の分離塔本体1Aの底部に注排水口2が設けられているとともに、複数の吐出ノズル3Aを備えた吐水部としての給水管3が設けられていて、頂部には排水口4が形成されている。この分離塔本体1Aの吐出ノズル3Aの下側には集水板5が配置されている。また、分離塔1内の上下方向の中間付近には、上下方向に複数系列(本実施形態においては3系列)のアニオン交換樹脂抜出部としての第1~第3のアニオン交換樹脂抜出配管6A、6B,6Cが設けられているとともに、このアニオン交換樹脂の抜出配管6A、6B,6Cの下側で集水板5より上側にカチオン交換樹脂抜出配管7が設けられている。一方、分離塔1の側面にはのぞき窓8を有する。なお、9は分離塔1の側面上側に設けられた使用済の混合イオン交換樹脂の投入口である。
【0030】
上述したような混合イオン交換樹脂の分離塔1において、抜出配管6A、6B,6Cの分岐箇所(基端部)には、該抜出配管6A、6B,6Cを開閉する開閉弁(図示せず)がそれぞれ設けられており、これら抜出配管6A、6B,6Cのいずれかの抜出配管の弁を開成し、その他を閉鎖するように手動で制御可能となっている。
【0031】
〔混合イオン交換樹脂の分離方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離塔1を用いた混合イオン交換樹脂の分離方法について説明する。
【0032】
(樹脂導入)
まず、
図1に示すように混床式イオン交換装置内に充填されている使用済の混合イオン交換樹脂を取り出して、混合イオン交換樹脂の分離塔1に使用済の混合イオン交換樹脂の投入口9から充填する。この混合イオン交換樹脂Rの導入は、フレキシブルコンテナ等で運ばれてきた混合イオン交換樹脂を水槽に受け、チューブポンプによって分離塔1の側面に設けられた使用済の混合イオン交換樹脂の投入口9から分離塔1内に導入すればよいが、これに限定されない。
【0033】
このとき分離塔本体1Aの集水板5の上側空間には、約40~70容積%を占める程度に使用済の混合イオン交換樹脂を充填する。本実施形態において混合イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合樹脂である。この混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の割合(容積比)は、特に制限はないがアニオン交樹脂:カチオン交換樹脂=30:70~70:30程度である。また、これらアニオン交樹脂及びカチオン交換樹脂は、ポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい。導入された混合イオン交換樹脂Rの上面の高さは、最上部の第1のアニオン交換樹脂抜出配管6Aよりも上側、特に100~700mm程度上方となるようにすることが好ましい。
【0034】
(水張り)
次に示すように底部の注排水口2から所定量の分離用水(純水)を分離塔1内に導入する。この際、分離用水の水面が分離塔1内のイオン交換樹脂の上面より上位、特に500mm以下程度上位とする。
【0035】
(エアーバブリング)
次に注排水口2からエアーを分離塔1内に注入し、イオン交換樹脂Rをバブリングする。これによりコロイド状に絡みついた樹脂粒子をほぐすと共に、樹脂粒子表面に付着した汚れを剥離させる。
【0036】
(休止)
バブリングングを停止し、混合イオン交換樹脂Rを集水板5上に沈降させる。この沈降に際して、比重の大きいカチオン交換樹脂が先に沈降し、比重の小さいアニオン交換樹脂が遅れて沈降する。
【0037】
(満水水張り)
逆洗に備えて、分離塔1内が満水となるように注排水口2から水(分離用水)を導入する。
【0038】
(逆洗・分離)
この満水の状態で分離塔本体1Aの吐出ノズル3Aから水W(上記分離用水と同じ水)を導入して上向流にて通水し、
図2に示すように樹脂を展開させる。その後、静置することにより、比重差にて
図3に示すようにアニオン交換樹脂Aが上層部、カチオン交換樹脂Cが下層部に分離する。分離されたか否かの判断はのぞき窓8から目視にて行い、状況により時間を延長するようにしてもよい。
【0039】
(アニオン交換樹脂抜き出し)
のぞき窓8から目視によりアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが分離されたことを確認した後、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管(本実施形態においては、第3のアニオン交換樹脂抜出配管6C)を選択して、この第3のアニオン交換樹脂抜出配管6Cの開閉弁を開成するとともに、第1及び第2のアニオン交換樹脂抜出配管6A、6Bの開閉弁を閉鎖する。そして、第3のアニオン交換樹脂抜出配管6Cから吸引してアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このアニオン交換樹脂・水混相流は、フレキシブルコンテナ等で受け止めればよい。なお、アニオン交換樹脂Aにカチオン交換樹脂Cが混入するのを確実に忌避したい場合には、第2のアニオン交換樹脂抜出配管6Bから抜き出すようにしてもよい。
【0040】
(カチオン交換樹脂抜出)
このようにしてアニオン交換樹脂Aを抜き出した後は、カチオン交換樹脂抜出配管7から吸引することで、集水板5上から所定の高さのカチオン交換樹脂Cを抜き出せばよい。この際、アニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面付近では両樹脂が混在する可能性が高いので、混合イオン交換樹脂の全量に対して5~20容積%の樹脂を分離塔1内に残存させるようにカチオン交換樹脂抜出配管7からカチオン交換樹脂Cを抜き出せばよい。なお、この分離塔本体1Aに残存させたイオン交換樹脂は、取り出して次回のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合樹脂の分離時に再利用すればよい。
【0041】
(再生工程)
このようにして分離したアニオン交換樹脂A及びカチオン交換樹脂Cは、それぞれの樹脂の再生塔により公知の再生工程を行えばよい。
【0042】
第2の実施形態
次に本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔の第二の実施形態について添付図面を参照にして説明する。
【0043】
〔混合イオン交換樹脂の分離塔〕
図4は、本発明の第二の実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示している。本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離塔は、前述した第一の実施形態と基本的には同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図4に示す混合イオン交換樹脂の分離塔1は、分離塔1の側面にのぞき窓8の代わりに界面センサ8Aが設けられている。この界面センサ8Aは図示しないパーソナルコンピュータなどの制御手段に判断結果を送信可能となっていて、制御手段はこの判断結果に基づいて、第1~第3の抜出配管6A、6B,6Cの分岐箇所(基端部)に設けられた開閉弁を開閉制御可能となっている。
【0045】
上述したような混合イオン交換樹脂の分離塔1において、界面センサ8Aは、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とでは色彩が相違するので、その色彩の差異から界面を判断するものが好ましい。具体的には、CCDカメラ(特にカラーCCDカメラ)、2次元イメージセンサなどのように反射光を、CCD画像(特にカラーCCD画像)のような2次元の受光画像として受光してその色度を測定するものが好ましいが、点または1次元の信号として受光する光センサ、ラインセンサのようなものであってもよい。
【0046】
〔混合イオン交換樹脂の分離方法〕
このような構成を有する本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離塔1における混合イオン交換樹脂の分離方法は、前述した第一の実施形態において、のぞき窓8から視認により、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管を選択し、第1~第3のアニオン交換樹脂抜出配管6A、6B,6Cの開閉弁を操作する作業を、界面センサ8A及び制御手段で行う以外同じである。
【0047】
本実施形態のように第1~第3のアニオン交換樹脂抜出配管6A、6B,6Cの開閉弁を操作する作業を、界面センサ8A及び制御手段で行うことにより、混合イオン交換樹脂の高精度の分離作業を自動化することが可能となる。
【0048】
第3の実施形態
次に本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔の第三の実施形態について添付図面を参照にして説明する。
【0049】
〔混合イオン交換樹脂の分離塔〕
図5は、本発明の第三の実施形態による混合イオン交換樹脂の分離塔を示している。本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離塔は、前述した第一の実施形態と基本的には同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図5に示す混合イオン交換樹脂の分離塔1は、アニオン交換樹脂抜出配管が、分離塔本体1Aに水平方向に配置されたアニオン交換樹脂抜出主配管61と、この主配管61から分岐して垂直下方に延在する長さの異なる第1の抜出配管61Aと第2の抜出配管61Bが設けられている。そして、この第1及び第2の抜出配管61A、61Bの分岐箇所(基端部)には、該抜出配管61A、61Bを開閉する開閉弁(図示せず)がそれぞれ設けられており、これら抜出配管61A、61Bのいずれかの弁を開成し、その他を閉鎖するように制御可能となっている。
【0051】
〔混合イオン交換樹脂の分離方法〕
このような構成を有する本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離塔1における混合イオン交換樹脂の分離方法は、前述した第一の実施形態と同じであり、のぞき窓8から視認により、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管を選択し、第1又は第2のアニオン交換樹脂抜出配管61A、61Bの開閉弁を操作すればよい。
【0052】
以上、本発明について添付図面を参照にして前記各実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、カチオン交換樹脂抜出配管7は前記実施形態においては一系列としたが、複数系列としてもよい。一方、カチオン交換樹脂抜出配管7は設けずに分離塔1内でカチオン交換樹脂Cを再生してもよいが、アニオン交換樹脂Aが混入している可能性が高い点に留意が必要となる。また、第三の実施形態において、のぞき窓8の代わりに界面センサ8Aを設けてもよい。さらに、前記実施形態においては、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の2種類の樹脂の場合について説明したが、異なるグレードあるいは異なる性状のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を複数種用いた場合にも適用可能である。なお、本明細書において、イオン交換樹脂とは、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂に限らず、これらのイオン交換樹脂に触媒金属を担持させた触媒樹脂や、ホウ素選択性吸着樹脂なども含む。
【実施例0053】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
[実施例1]
図1に示すイオン交換樹脂の分離塔1(直径1000mmΦ、高さ6000mm)を用いて、ポーラス型アニオン交換樹脂とポーラス型カチオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を充填し、上向流でLV5m/hで1時間逆洗し、混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離して通水を停止した。その分離界面をのぞき窓8から目視により確認した。そして、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管として第3のアニオン交換樹脂抜出配管6Cを選択して、アニオン交換樹脂Aを抜き出した。その後、下側のカチオン交換樹脂抜出配管7からカチオン交換樹脂Cを抜き出して、分離境界面付近の約10容積%のイオン交換樹脂は抜き出さずに残存させた。
【0055】
抜き出したカチオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を求めたところ、0,004容積%であり良好であった。この結果を分離条件とともに表1に示す。
【0056】
[実施例2]
図2に示すイオン交換樹脂の分離塔1(直径1000mmΦ、高さ6000mm)を用いて、ポーラス型アニオン交換樹脂とポーラス型カチオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を充填し、上向流でLV5m/hで1時間逆洗し、混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離して通水を停止した。その分離界面を界面センサ8Aによりセンシングした。そして、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管として第3のアニオン交換樹脂抜出配管6Cを選択して、アニオン交換樹脂Aを抜き出した。その後、下側のカチオン交換樹脂抜出配管7からカチオン交換樹脂Cを抜き出して、分離境界面付近の約10容積%のイオン交換樹脂は抜き出さずに残存させた。このときのイオン交換樹脂の残存量は界面センサ8Aのセンシング結果に基づき微調整を行った。
【0057】
抜き出したカチオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を求めたところ、0,002容積%であり良好であった。この結果を分離条件とともに表1にあわせて示す。
【0058】
[実施例3]
図5に示すイオン交換樹脂の分離塔1(直径1000mmΦ、高さ6000mm)を用いて、ポーラス型アニオン交換樹脂とポーラス型カチオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を充填し、上向流でLV5m/hで1時間逆洗し、混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離して通水を停止した。その分離界面をのぞき窓8から目視により確認した。そして、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管として、第2のアニオン交換樹脂抜出配管61Bを選択して、アニオン交換樹脂Aを抜き出した。その後、下側のカチオン交換樹脂抜出配管7からカチオン交換樹脂Cを抜き出して、分離境界面付近の約10容積%のイオン交換樹脂は抜き出さずに残存させた。
【0059】
抜き出したカチオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を求めたところ、0,005容積%であり良好であった。この結果を分離条件とともに表1にあわせて示す。
【0060】
[実施例4]
図5に示すイオン交換樹脂の分離塔1(直径1000mmΦ、高さ6000mm)を用いて、ポーラス型アニオン交換樹脂とポーラス型カチオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を充填し、上向流でLV5m/hで1時間逆洗し、混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離して通水を停止した。その分離界面を界面センサ8Aによりセンシングした。そして、アニオン交換樹脂抜出配管の吸込口の下端がアニオン交換樹脂Aとカチオン交換樹脂Cとの分離界面の上面に最も近いアニオン交換樹脂抜出配管として、第2のアニオン交換樹脂抜出配管61Bを選択して、アニオン交換樹脂Aを抜き出した。その後、下側のカチオン交換樹脂抜出配管7からカチオン交換樹脂Cを抜き出して、分離境界面付近の約10容積%のイオン交換樹脂は抜き出さずに残存させた。このときの残存量は界面センサ8Aのセンシング結果に基づき微調整を行った。
【0061】
抜き出したカチオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を求めたところ、0,003容積%であり良好であった。この結果を分離条件とともに表1にあわせて示す。
【0062】
[比較例1]
図6に示すイオン交換樹脂の分離塔21(直径1000mmΦ、高さ6000mm)を用いて、ポーラス型アニオン交換樹脂とポーラス型カチオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を充填し、上向流でLV5m/hで1時間逆洗し、混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離して通水を停止した。その分離界面をのぞき窓8から目視により確認した。そして、アニオン交換樹脂抜出配管26からアニオン交換樹脂Aを抜き出した。その後、下側のカチオン交換樹脂抜出配管27からカチオン交換樹脂Cを抜き出して、分離境界面付近の約10容積%のイオン交換樹脂は抜き出さずに残存させた。
【0063】
抜き出したカチオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を求めたところ、0,14容積%であった。この結果を分離条件とともに表1にあわせて示す。
【0064】
[比較例2]
図6に示すイオン交換樹脂の分離塔21(直径1000mmΦ、高さ6000mm)において、のぞき窓8の代わりに界面センサ8Aを設けたものを用いて、ポーラス型アニオン交換樹脂とポーラス型カチオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂=50:50(容積比))を充填し、上向流でLV5m/hで1時間逆洗し、混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離して通水を停止した。その分離界面を界面センサによりセンシングした。そして、アニオン交換樹脂抜出配管26からアニオン交換樹脂Aを抜き出した。また、下側のカチオン交換樹脂抜出配管27からカチオン交換樹脂Cを抜き出して、分離境界面付近の約10容積%のイオン交換樹脂は抜き出さずに残存させた。
【0065】
抜き出したカチオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を求めたところ、0,14容積%であった。この結果を分離条件とともに表1にあわせて示す。
【0066】