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特開2023-100598試験測定装置及び試験測定装置の動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100598
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】試験測定装置及び試験測定装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/34 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G01R13/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000468
(22)【出願日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/297,218
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/148,709
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】パベル・アール・ジブニー
(57)【要約】
【課題】サンプリング回路からのキックアウト・エネルギー量を低減する。
【解決手段】試験測定装置には、入力信号を受ける入力ポート102がある。サンプリング回路110は、入力信号からサンプルを生成するように構成され、このとき、入力信号からサンプルを生成すると、ある量のキックアウト・エネルギーが生成される。ピックオフ/終端回路120は、サンプリング回路110からのキックアウト・エネルギーの量を減少させるように構成されたエネルギー低減回路として、サンプリング回路110と試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントとの間に結合される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受信する入力ポートと、
上記入力信号からサンプルを生成するように構成され、上記入力信号からサンプルを生成すると、ある量のキックアウト・エネルギーを生成するサンプリング回路と、
該サンプリング回路と上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントとの間に結合され、上記サンプリング回路からの上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減するように構成されたエネルギー低減回路と
を具える試験測定装置。
【請求項2】
上記エネルギー低減回路が、抵抗性回路網を有する請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記エネルギー低減回路が、
ピックオフ回路と、
該ピックオフ回路と上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントとの間の物理的相互接続部と、
該物理的相互接続部の影響を最小限に抑えるように構成されたイコライザと
を有する請求項1の試験測定装置。
【請求項4】
上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントが、クロック・リカバリ回路を含む請求項1の試験測定装置。
【請求項5】
上記サンプリング回路が、ストローブ・サンプリング信号を生成するコンポーネントによって駆動され、上記エネルギー低減回路が、上記ストローブ・サンプリング信号を入力とするバルブを有し、該バルブは、上記ストローブ・サンプリング信号を受信するときに、上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントへの上記キックアウト・エネルギーの通過を遮断するように構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項6】
上記バルブが、上記ストローブ・サンプリング信号の生成に続くある期間にわたって、上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントへの上記キックアウト・エネルギーの通過を遮断するように構成される請求項5の試験測定装置。
【請求項7】
試験測定装置の動作方法であって、
入力ポートで入力信号を受信する処理と、
ある量のキックアウト・エネルギーを生成する、上記入力信号からサンプルを生成する処理と、
エネルギー低減回路において上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減する処理と、
上記エネルギー低減回路からの信号をピックオフする処理と、
ピックオフされた信号を上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントに送る処理と
を具える試験測定装置の動作方法。
【請求項8】
上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減する処理が、
上記測定装置のリモート・ヘッドとメイン測定装置との間の物理的相互接続部によって上記ある量のキックアウト・エネルギーの少なくとも一部を吸収する処理を含む請求項7の試験測定装置の動作方法。
【請求項9】
上記物理的相互接続部の物理的特性に基づいて状態が予め設定されたイコライザによって、上記ある量のキックアウト・エネルギーの少なくとも一部を吸収する処理を更に具える請求項7の試験測定装置の動作方法。
【請求項10】
上記入力信号から上記サンプルを生成する処理が、ストローブ・サンプリング信号によって開始され、上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減する処理が、上記ストローブ・サンプリング信号によって制御されるバルブを動作させる処理を含む請求項7の試験測定装置の動作方法。
【請求項11】
上記ストローブ・サンプリング信号を生成した後のある期間について、上記バルブが、該バルブを通るキックアウト・エネルギーの通過を遮断する請求項10の試験測定装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置に関し、特にサンプリング・オシロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
リアルタイム・オシロスコープ(RTO)は、アナログ入力信号を比較的高いサンプル・レートでサンプリングすることにより、アナログ入力信号からサンプリングされた波形データ(単に「波形」とも呼ばれる)を忠実に作成するように構成されている。このような高いサンプリング・レートでオシロスコープを作成するには、概して、高価な部品が必要になるため、RTOは、通常、他のタイプのオシロスコープや他の測定装置よりも高価である。アナログ入力信号が繰り返し信号の場合は、等価時間サンプリング・オシロスコープ(ETO)を使用して、入力信号に忠実なサンプリング波形データを作成することもできる。ETOとRTOの違いの1つは、RTOが1つの波形の多数のサンプルを取得してサンプリングされた波形を作成するのに対し、ETOは、代わりに、多数の時間的に異なる反復波形のそれぞれから数サンプルのみを取得し、複数のサンプルを組み合わせて最終的なサンプリング波形を構築することである。
【0003】
ETOオシロスコープでサンプリングされる入力信号は、変化しない繰り返し信号なので、ETOのサンプリング・コンポーネントは、RTOのサンプリング・コンポーネントとほぼ同じ速度で動作する必要がなく、このため、ETOはRTOで作成されたサンプリング波形と同等の精度をはるかに低コストで作成できる。RTOと比較したETOの数少ない欠点の1つは、ETOがRTOよりも入力信号のもっと多数の波形をサンプリングするため、ETOが同じサンプリング波形を生成するのに、RTOよりもはるかに時間がかかることである。しかし、多くの場合、RTOを使用するなどして忠実な表現を迅速に作成するよりも、ETOなどの安価な測定装置を使用して入力信号の忠実な表現を作成することの方が重要である。別の欠点は、正確なタイミングのトリガが必要なことである。これは多くの場合、ハードウェア・クロック・リカバリ回路を必要とする。
【0004】
従来のETOアーキテクチャには、被試験デバイス(DUT)からアナログ入力信号を受信するための入力ポートがあり、アナログ入力信号は、次いで、スプリッタによって2つの別々の信号に分割される。分割信号の1つは、上述した信号サンプラに供給され、他方の分割信号は、クロック・リカバリ・システム又は他のタイプのトリガ・システムに供給される。クロック・リカバリ・システムにより、ETO(又は、任意のオシロスコープ)は、オシロスコープに別個のクロック信号を供給することなく、入力信号自体から入力信号に関するタイミング情報を抽出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2654737号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「オシロスコープのすべて」、特に25及び26頁の等価時間サンプリングの説明、2018年4月発行、文書番号03Z-8605-7、テクトロニクス、[online]、[2022年12月31日検索]、インターネット<https://download.tek.com/document/XYZs_of_Oscilloscopes_03Z-8605-7.pdf>
【非特許文献2】「サンプリング・オシロスコープ 8シリーズ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2022年12月31日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/8-series-sampling-oscilloscope>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
入力信号をサンプリングする前に入力信号を分割すると、第1に、スプリッタの存在によって入力信号の信号忠実度が損なわれたり低下したりするという問題が生じる。第2に、入力信号を分割して、一方の部分はサンプラに行き、もう一方の部分はクロック・リカバリ又はトリガシステムに行くと、入力信号のエネルギーが分割され、信号サンプラと2番目の回路の両方の信号対ノイズ比(SNR)が低下する。
【0008】
単にスプリッタを取り外して、入力信号をサンプリングした後にクロック・リカバリを行うだけでは、実用的な解決手法ではない。なぜなら、サンプラによってシステムに導入されるエネルギー、いわゆるキックアウト・エネルギーは、通常は、スプリッタの存在によって、DUT及びクロック・リカバリ・システムからブロック又は制限されるが、これでは、ブロックされなくなってしまうからである。クロック・リカバリ・システムとDUTに伝わるキックアウト・エネルギーは、クロック・リカバリの動作を妨げることがあり、潜在的に、DUT自体の動作を妨げる可能性がある。いずれの場合も、ETOがDUTからの入力信号に忠実な波形サンプルを生成するのを妨げる可能性がある。
【0009】
本開示による実施形態は、従来のサンプリング・システムに関するこれら及び他の問題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0011】
実施例1は、試験測定装置であって、入力信号を受信する入力ポートと、上記入力信号からサンプルを生成するように構成され、上記入力信号からサンプルを生成すると、ある量のキックアウト・エネルギー(kickout energy)を生成するサンプリング回路と、該サンプリング回路と上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネント(構成要素)との間に結合され、上記サンプリング回路からの上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減するように構成されたエネルギー低減回路とを具える。
【0012】
実施例2は、実施例1に係る試験測定装置であって、上記エネルギー低減回路が抵抗性回路網を有する。
【0013】
実施例3は、実施例2に係る試験測定装置であって、上記抵抗性回路網が、1つ以上の可変抵抗器を有する。
【0014】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定装置であって、上記エネルギー低減回路が、ピックオフ回路と、該ピックオフ回路と上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントとの間の物理的相互接続部と、該物理的相互接続部の影響を最小限に抑えるように構成されたイコライザとを含む。
【0015】
実施例5は、実施例4に係る試験測定装置であって、上記相互接続部が、同軸ケーブルである。
【0016】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの試験測定装置であって、上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントが、クロック・リカバリ回路を含む。
【0017】
実施例7は、実施例6に係る試験測定装置であって、入力ポート、サンプリング回路、エネルギー低減回路をリモート・ヘッドに配置し、クロック・リカバリ回路を相互接続部を介してリモート・ヘッドに接続されたメイン測定装置に配置する。
【0018】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定装置であって、上記エネルギー低減回路が、増幅回路を有する。
【0019】
実施例9は、実施例1から8のいずれかの試験測定装置であって、上記サンプリング回路が、ストローブ・サンプリング信号を生成するコンポーネントによって駆動され、上記エネルギー低減回路が、上記ストローブ・サンプリング信号を入力とするバルブを有し、該バルブは、上記ストローブ・サンプリング信号を受信するときに、上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントへの上記キックアウト・エネルギーの通過を遮断するように構成される。
【0020】
実施例10は、実施例9に係る試験測定装置であって、上記バルブが、上記ストローブ・サンプリング信号の生成に続くある期間にわたって、上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントへの上記キックアウト・エネルギーの通過を遮断するように構成される。
【0021】
実施例11は、実施例1から10のいずれかの試験測定装置であって、上記入力ポートと上記サンプリング回路との間に信号スプリッタが配置されていない。
【0022】
実施例12は、実施例1から11のいずれかの試験測定装置であって、上記入力ポートが、光信号を受信するように構成され、上記入力ポートと上記サンプリング回路との間に配置された光電変換回路を更に具える。
【0023】
実施例13は、試験測定装置の動作方法であって、入力ポートで入力信号を受信する処理と、ある量のキックアウト・エネルギーを生成する上記入力信号からサンプルを生成する処理と、エネルギー低減回路において上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減する処理と、上記エネルギー低減回路からの信号をピックオフ(摘み取り)する処理と、ピックオフされた信号を上記試験測定装置の1つ以上の他のコンポーネントに送る処理とを具える。
【0024】
実施例14は、実施例13による方法であって、上記エネルギー低減回路が、抵抗性回路網を有する。
【0025】
実施例15は、実施例13又は14による方法であって、上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減する処理が、上記測定装置のリモート・ヘッドとメイン測定装置との間の物理的相互接続部によって上記ある量のキックアウト・エネルギーの少なくとも一部を吸収する処理を含む。
【0026】
実施例16は、実施例15による方法であって、上記物理的相互接続部の物理的特性に基づいて状態が予め設定されたイコライザ(等化回路)によって、上記ある量のキックアウト・エネルギーの少なくとも一部を吸収する処理を更に具える。
【0027】
実施例17は、実施例13から16のいずれかの方法であって、上記エネルギー低減回路が、増幅回路を有する。
【0028】
実施例18は、実施例13から17のいずれかの方法であって、上記入力信号から上記サンプルを生成する処理が、ストローブ・サンプリング信号によって開始され、上記ある量のキックアウト・エネルギーを低減する処理が、上記ストローブ・サンプリング信号によって制御されるバルブを動作させる処理を含む。
【0029】
実施例19は、実施例18による方法であって、上記ストローブ・サンプリング信号を生成した後のある期間について、上記バルブが、該バルブを通るキックアウト・エネルギーの通過を遮断する。
【0030】
実施例20は、実施例13から19のいずれかの方法であって、上記入力信号から上記サンプルを生成する前に上記入力信号を分割しないことを更に具える。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A図1Aは、開示された実施形態による、ピックオフ及び終端回路を含むリモート・ヘッドを含む試験測定システムのブロック図である。
図1B図1Bは、開示された実施形態による、ピックオフ及び終端回路を含むリモート・ヘッドを含み、クロック・リカバリ回路がメイン測定装置に配置された試験測定システムのブロック図である。
図2図2は、開示技術の実施形態による、図1A又は図1Bのリモート・ヘッドのピックオフ/終端コンポーネントの実施形態例を示すブロック図である。
図3図3は、本開示技術の実施形態による、図1A又は図1Bのリモート・ヘッドのピックオフ/終端コンポーネントの他の実施形態例を示すブロック図である。
図4図4は、本開示技術の実施形態による、図1A又は図1Bのリモート・ヘッドのピックオフ/終端コンポーネントの更に別の実施形態例を示すブロック図である。
図5図5は、本開示技術の実施形態による、図1A又は図1Bのリモート・ヘッドのピックオフ/終端コンポーネントの追加の実施形態例を示すブロック図である。
図6図6は、本開示技術の実施形態による、図1A又は図1Bのリモート・ヘッドのピックオフ/終端コンポーネントの更なる実施形態例を示すブロック図である。
図7図7は、開示された実施形態による、被試験デバイス(DUT)から光信号を受信するように構成された統合試験測定システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
開示される技術の実施形態は、概して、クロック・リカバリを使って動作する等価時間サンプリング・オシロスコープ(ETO)その他の測定装置のシステムを改善する。図1Aは、測定装置50及びリモート・ヘッド(遠隔ヘッド)100を含む試験測定システムのブロック図である。リモート・ヘッド100は、ピックオフ及び終端回路を含み、これは、開示される実施形態によれば、サンプリング回路によって導入されるエネルギーがDUTにフィードバックされるのを最小化する。
【0033】
概して、測定装置50は、デジタル・サンプリング・オシロスコープとしても知られている等価時間サンプリング・オシロスコープ(ETO)などのオシロスコープであっても良いが、このメイン測定装置は、本発明の実施形態による利益を得る任意のタイプの測定装置であっても良い。測定装置50は、1つ以上のメイン・プロセッサ60を含み、これは、プロセッサ・メモリ62に結合され、これは、RAM、ROMやキャッシュ・メモリを有していても良い。プロセッサ・メモリ62は、1つ以上のプロセッサ60に対する命令に加えて、測定装置50によって使用されるデータを記憶しても良い。記憶されたデータは、入力信号を表すデジタル化された値、タイムベース(時間軸)校正値、ルックアップ・テーブルなどを有していても良い。いくつかの実施形態では、入力信号を表すデジタル化された値は、リモート・ヘッドからサンプルを受信するアクイジション・メモリ70に記憶される。アクイジション・メモリは、また、1つ以上のプロセッサ60に結合されるので、ここに記憶された内容は、メイン測定装置50の一部を形成する測定ユニット90などの他のコンポーネントで利用可能である。測定ユニット90は、1つ以上の別個の回路又はモジュールであってもよく、被試験デバイス(DUT)80から受信した信号の特性(例えば、電圧、アンペア数、振幅、エネルギーなど)を測定できる任意のコンポーネントを含むことができる。
【0034】
ユーザ入力部64及びユーザ出力部68は、プロセッサ60に結合される。ユーザ入力部64は、測定装置50をセットアップ及び制御するためにユーザが利用可能なキーボード、マウス、タッチスクリーン又は他の任意の操作装置を有していても良い。ユーザ入力部64は、メイン表示部66と連動して操作されるグラフィカル・ユーザ・インタフェースやテキスト/文字インタフェースによって実現されても良い。ユーザ入力部64は、測定装置50上のユーザからの又はリモート・デバイスからのプログラム入力部(programmatic inputs)を更に有していても良い。メイン表示部66は、波形、測定値及び他のデータをユーザに表示するためのデジタル・スクリーン、ブラウン管ベースのディスプレイ又は他の任意のモニタであっても良い。ユーザ出力部68は、試験データ及び他の結果のために使用されても良く、これらは、メイン表示部66に表示されても良いし、表示されなくても良い。例えば、ユーザは、後の分析のために又は別のデバイスによる分析のために、ユーザ出力部68からデータのセットを生成するように測定装置50を制御しても良い。ユーザ出力部68は、別のデバイスによってアクセスされて、ユーザ出力のエクスポートを容易にするように、インターネット又はローカル・ネットワークなどのネットワーク69に送信しても良い。
【0035】
試験装置50のコンポーネント(構成要素)は、試験測定装置内に一体化されているものとして描かれているが、当業者であれば、これらのコンポーネントのいずれかが、リモート・ヘッド100内又は別の装置内など、試験装置50の外部にあっても良く、任意の従来の方法(例えば、有線や無線の通信媒体やメカニズム)で試験装置50に結合されても良いことが理解できよう。例えば、いくつかの実施形態では、メイン表示部66は、試験測定装置50から遠隔にあっても良いし、又は、この装置は、表示出力を測定装置50上で表示することに加えて、表示出力をコピーしてネットワーク69に送信するように構成されても良い。
【0036】
図示の環境では、メイン測定装置がリモート・ヘッド100に結合され、リモート・ヘッド100は、メイン測定装置による処理のためにDUT80から1つ以上の信号を受信する。概して、リモート・ヘッド100は、DUTから測定される信号(シグナル)のインテグリティ(integrity:信号の品質、忠実性)を最大化するために、DUT80の近くに配置されるか又はDUTに物理的に取り付けられることさえある。また、概して、リモート・ヘッドは、典型的には、1本以上の同軸ワイヤ92である1本以上の通信ワイヤを介してメイン測定装置50に結合される。
【0037】
リモート・ヘッド100には、1つ以上のポート102があり、これは、任意の電気信号伝送媒体であっても良い。図7を参照して説明する実施形態では、入力ポートは、DUT80から光信号を受信する。ポート102は、レシーバ、トランスミッタやトランシーバを有していても良い。各ポート102は、試験測定装置50のチャンネルである。これらポート102は、最初にサンプリング回路110に結合され、サンプリング回路110は、以下に説明するストローブ信号によって制御される。サンプリング回路110がストローブ信号を受信すると、サンプリング回路は、DUT80からの入力信号の測定を行う。このようにサンプルを取得すると、上述のキックアウト・エネルギーと呼ばれる少量のエネルギーが生成される。キックアウト・エネルギーは、サンプリング回路110を起動して、DUT80からの入力信号の測定を行うと生成される。本開示による実施形態は、以下で詳細に説明するように、特定のハードウェアを含み、DUT80に送り返されるキックアウト・エネルギーの量を最小化するための特定の処理を行う。
【0038】
サンプリング回路110がサンプルを取得した後、サンプルは、増幅回路112によって増幅されるのに加えて、1つ以上のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)116によってデジタル信号に変換されても良い。更に、他の信号又はサンプリングの調整回路が存在しても良い。その後、サンプルは、メイン測定装置に送られ、ここで受信される。上述したように、ETOオシロスコープでは、入力信号からの数千、数百万又は数十億個に達する多数のサンプルが、メイン測定装置50によって組み立てられ、後でこの測定装置で使用するために、アクイジション・メモリ70に記憶される。
【0039】
このとき、上述した測定装置とは異なり、入力ポート102とサンプリング回路110との間に信号スプリッタは存在しないことに注意されたい。従来の測定装置は、スプリッタを使用して入力信号を分割し、第1の部分はサンプリング回路に供給され、もう1つの部分はクロック・リカバリ又はトリガ回路に供給されたことを思い出してほしい。このプロセスにより、DUT80から受信したシグナル・インテグリティ(信号品質、忠実性)が低下する。その代わりに、本開示による実施形態は、スプリッタ回路を含まず、代わりに、入力ポート102から受信した信号をサンプリング回路110に渡し、阻害をうけていない入力信号について測定を行う。
【0040】
従来の測定装置のように、入力信号を分割する代わりに、サンプリング回路110が入力信号から現在のサンプルを用意した後、その信号は、以下で詳細に説明するピックオフ/終端回路120に渡される。いくつかの実施形態では、ピックオフ/終端回路120は、少なくとも2つの機能を実行する。1つ目の機能としては、信号の終端があり、DUT80からの入力信号が典型的な方法で終端される。即ち、DUTの動作を妨害したり、入力信号のシグナル・インテグリティを低下させたりすることがある、DUTへ戻る信号の反射がない。ピックオフ/終端回路120のこの機能は、サンプリング・ストローブ信号の動作によって生じ、サンプリング回路110に入るキックアウト・エネルギーを最小化又は遮断するため、ストローブ・ブロックと呼ぶことにする。
【0041】
ピックオフ/終端回路120のもう1つの機能としては、クロック・リカバリ又はトリガ処理などの後処理のために、入力信号のある部分を取り出すメカニズムを提供することがある。入力信号のその部分がピックオフ/終端回路120によって「ピックオフ(摘み取り)」された後、クロック・リカバリ・システム150に送られ、クロック・リカバリ・システム150は、DUT80が供給する別のクロック信号を必要とせずに、入力信号からクロック信号を直接生成する。
【0042】
いくつかの実施形態では、クロック・デスキュー・ブロック140が、クロック・リカバリ・システムに送られる前の信号について動作するか、又は、リカバリ・クロックについて動作し、この場合には、クロック・デスキュー・ブロック140は、クロック・リカバリ・システム150の前ではなく、後に配置されることになろう。
【0043】
他の実施形態では、このようなデスキュー・システムは、クロック・リカバリ・システム150自体に統合される。また、いくつかの実施形態では、クロック・リカバリ・システム150と、潜在的にクロック・デスキュー・ブロック140が、図1Aに図示されるようなリモート・ヘッド100中ではなく、メイン測定装置50に配置される。クロック・リカバリ・システム150及びクロック・デスキュー・ブロック140がメイン測定装置50に配置される、この第2実施形態は、図1Bに示されている。
【0044】
クロック・リカバリ・システム150のリカバリ・クロックは、(図1Aのように)メイン測定装置50に供給されるか、又は、(図1Bのように)メイン測定装置50内で生成される。いずれの場合も、ピックオフ終端回路120からの出力は、クロック・リカバリ機能の前後のいずれかでメイン測定装置50に供給される。信号は、相互接続部を介して供給され、この相互接続部は、概して1つ以上の同軸ワイヤ92であるが、他のタイプの相互接続部が使用されても良い。
【0045】
図1Aでは、メイン測定装置50は、リカバリ・クロック信号をトリガ処理システム82に供給する。図1Bでは、メイン測定装置は、クロック・リカバリ・システム150においてクロック・リカバリ信号を生成する。いずれの場合も、クロック・リカバリ信号は、トリガ処理システム82に供給される。トリガ処理システムは、リカバリ・クロックを使用してサンプリング・ストローブ信号を生成し、サンプリング・ストローブ信号は、リモート・ヘッド100に送り返される。サンプリング・ストローブ信号は、サンプリング回路120に次のサンプルを作成させる信号である。
【0046】
上述したように、トリガ処理システム82は、反復する入力信号内で、次のサンプルを生成するのに使用される、入力信号の別の部分を特定するようにサンプリング・ストローブ信号を生成するために、様々な遅延量を生成しても良い。クロック・リカバリ・システム150又はトリガ処理システム82のいずれかが、いつサンプリング・ストローブ信号を生成するかを更に制限するホールド・オフ回路を有していても良い。トリガ処理システム82は、トリガ条件、間引き(decimator)機能及び他のアクイジションに関連するパラメータを変更するために、測定装置50によって更に制御されても良い。例えば、トリガ処理システム82は、ユーザ入力部に応答して、トリガ閾値レベル、ホールド・オフ、ポスト・トリガ・アクイジションなどのトリガ・パラメータを制御するために、測定装置50の1つ以上のプロセッサ60からの入力を受けても良い。
【0047】
試験測定装置50やリモート・ヘッド100は、更なる分析のために、DUT80からの受信信号を波形に忠実に変換するための調整回路(conditioning circuits)や他の回路などの追加のハードウェアやプロセッサを有していても良い。例えば、測定装置50は、入力信号から受信した信号のパターンと、パターンの不規則性を認識するための1つ以上のパターン処理モジュールを有していても良い。更に、測定装置50は、入力信号から収集されたタイミング情報を管理するため又は測定装置を動作させるための1つ以上のタイムベース(timebase:時間軸、時間基準)プロセッサを更に有していても良い。
【0048】
図2は、本開示技術の実施形態による、図1A又は図1Bのリモート・ヘッドのコンポーネントの中でも、特に、ピックオフ/終端コンポーネント220の実施形態例を示すブロック図である。ピックオフ/終端コンポーネント220は、図1A又は図1Bのピックオフ/終端コンポーネント120の一例であっても良い。図示の環境では、ピックオフ/終端コンポーネント220には、3つの抵抗器222、224及び226から形成される抵抗性回路網がある。抵抗器222は、サンプリング回路と、抵抗器222及び224の間に位置するノード223との間に抵抗を提供する。抵抗226は、ノード223と、図1A又は図1Bのクロック・リカバリ・システム150のような入力信号を使用する下流の回路との間に抵抗を提供する。更に、ピックオフ/終端コンポーネント220は、もう1つ別の抵抗212と連動して動作しても良く、これは、DUT208とサンプリング回路210との間に配置されても良い。
【0049】
概して、ピックオフ/終端コンポーネント220は、図1A及び図1Bを参照して説明したピックオフ/終端コンポーネント120で説明した2つの機能を提供する。例えば、サンプリング回路210(図1A又は図1Bのサンプリング回路110の一例であっても良い)からの入力信号は、抵抗222、224を通過してグラウンド基準電位に達することで、終端される。しかし、入力信号の一部は、終端される前に「ピックオフ(摘み取り)」される。この部分は、クロック・リカバリなどの下流の処理に提供される前に、抵抗器226を通過する。
【0050】
抵抗器212、222、224及び226の夫々の抵抗値は、任意のキックアウト・エネルギー、即ち、サンプリング回路210の動作によって生じるエネルギーが、DUT208に反射されて戻されるのを最小にするように選択されても良い。このため、ピックオフ/終端コンポーネント220内の抵抗性回路網に加えて、抵抗器212(もし存在する場合には、サンプリング回路210とDUT208の間)の存在によって、キックアウト・エネルギーが最小限に抑えられると同時に、入力信号を試験測定システムの全体で使用する能力も提供される。
【0051】
更に、システムの別のコンポーネントも、キックアウト・エネルギーを低減しており、これは、実際上、図1Bのピックオフ/終端コンポーネント120の出力信号が、同軸ケーブル92を介して測定装置50に結合されているという点にある。同軸ケーブル92の存在は、任意のキックアウト・エネルギーを更に減少させるように作用するが、これは、サンプリング回路210の動作によって生じるエネルギーの一部が抵抗器226を通過し、更に同軸ケーブル92を通過するので、これが、サンプリング回路によって生成された任意のキックアウト・エネルギーを更に消散するように作用するからである。
【0052】
また、以下で図3から図6を参照して説明する回路その他の処理が、そのようなキックアウト・エネルギーの影響を、クロック・リカバリに伝わる前に、最小限に抑えるために使用されても良い。なお、図2から図6は、抵抗器226を通過する入力信号の部分が、クロック・リカバリ・システムに伝達されることを図示しているが、いくつかの実施形態では、抵抗器226を通過する入力信号の部分が、試験測定システム内の下流の任意のコンポーネントに提供されても良く、必ずしもクロック・リカバリ・システムでなくても良いことに注意されたい。概して、抵抗器212、222、224、226は、実装形態の設計及び詳細に応じて、任意の組み合わせで、それぞれ0から200オームの間の抵抗値を有するように選択されても良い。
【0053】
図2のピックオフ/終端コンポーネント220は、抵抗性分圧回路網を使用しているが、厳密に、分圧回路又は抵抗性分圧回路を使用する必要はない。代わりに、いくつかの実施形態では、抵抗器224が、完全に省略されても良い、即ち、その抵抗値を0オームに設定し、フルの信号がクロック・リカバリ又は他のシステムに伝達されるようにしても良い。
【0054】
また、図2を参照して説明したような固定抵抗器を用いる代わりに、本発明の実施形態は、ピックオフ/終端コンポーネント120に可変抵抗器を含めることによって、又は、DUT208とサンプリング回路210との間に結合される抵抗器312を可変抵抗器とすることで、抵抗値を変化させても良い。
【0055】
図3は、本開示技術の実施形態によるピックオフ/終端コンポーネント320からなる別の実施形態例を示すブロック図であり、これは、図1A又は図1Bのピックオフ/終端コンポーネント120の実施形態であっても良い。加えて、DUT208及びサンプリング回路210も、図3に図示されている。図示の実施形態では、図2の全ての抵抗器212、222、224及び226は、それぞれ可変抵抗器312、322、324及び326に置き換えられている。いくつかの実施形態では、抵抗器212、222、224及び226のうちの1、2又は3個のみが可変抵抗器に置き換えられる。
【0056】
可変抵抗器322、324及び326を使用することにより、ピックオフ/終端コンポーネント320は、サンプリング回路210を介してDUT208に反射されるキックアウト・エネルギーの量を最小化するように調整できる一方で、同時に、測定装置50内のクロック・リカバリ・システム又は他のシステムに伝達される信号の品質を最大化できる。更に、可変抵抗器312を用いて、サンプリング回路210で発生するエネルギがDUT208に大きな影響を与えないように直接抑制(control:制御)する。ピックオフ/終端コンポーネント320内の可変抵抗器322、324を制御することにより、ピックオフ/終端コンポーネント320は、ノード223で検出される電圧を制御でき、一方、可変抵抗器326を制御することにより、クロック・リカバリ・システムに伝達される入力信号の部分を制御することができる。
【0057】
可変抵抗器312、322、324及び326の実際の設定は、工場において、図1A及び図1Bの測定装置50又はリモート・ヘッド100の製造中に行っても良い。他の実施形態では、図1A又は図1Bの測定装置50又はリモート・ヘッド100が、ユーザ入力部64を介して可変抵抗器312、322、324及び326のいずれか又は全ての可変抵抗値を調整するための機能を有していても良い。
【0058】
図4から図6は、サンプリング回路の動作によって生じるキックアウト・エネルギーの量を最小限に抑えるために使用できるピックオフ/終端回路の追加コンポーネントを示している。これらに示す実施形態では、抵抗器212、222、224及び226が、固定抵抗器として図示されているが、これら抵抗器のいずれか又は全部を、図3を参照して上述したように、可変抵抗器に置き換えても良い。
【0059】
図4は、ピックオフ/終端回路420を示し、これは、図1A又は図1Bのピックオフ/終端回路120の一例であっても良い。ピックオフ/終端回路420には、ノード223とクロック・リカバリ・システムへ向かう出力信号との間に位置する増幅回路422がある。この増幅回路422は、実装形態の詳細に応じて、抵抗器226の両側のいずれかに配置されても良い。増幅器422の目的は、入力信号の一部がクロック・リカバリ・システム又は測定システム内の他のコンポーネントに送信される前に、サンプリング回路210によって生じるキックアウト・エネルギーの影響を最小限に抑えることである。
【0060】
いくつかの実施形態では、増幅回路422は、負の利得で動作する、即ち、サンプリング中に増幅回路422の入力で受信されるキックアウト・エネルギーのレベルを低下させる。増幅回路は、キックアウト・エネルギーをグラウンドへ、つまり、増幅回路のコンポーネントを介して迂回させることができる。更に、いくつかの実施形態では、増幅回路422の利得の値は、上述したユーザ入力部64を介して、ユーザによって制御可能であっても良い。
【0061】
図5は、ピックオフ/終端回路520を示し、これは、図1A又は図1Bのピックオフ/終端回路120の一例であっても良い。ピックオフ/終端回路520には、ノード223とクロック・リカバリ・システムへ向かう出力信号との間に位置するイコライザ(等化回路)524がある。上述のように、イコライザ524は、実装形態の詳細に応じて、抵抗器226の両側のいずれかに配置されても良い。上述の増幅回路の実施形態と同様に、イコライザ524の目的は、入力信号の一部がクロック・リカバリ・システム又は測定システム内の他のコンポーネントに送信される前に、サンプリング回路210によって生じるキックアウト・エネルギーの影響を最小化することである。
【0062】
イコライザ524は、キックアウト・エネルギーがクロック・リカバリ・システムに到達するのをブロック又は低減するように特に構造化された1つ以上のフィルタを有していても良い。いくつかの実施形態では、イコライザ524は、低周波信号を制限又は低減する一方、高周波信号を増加させるか又は減少させない。
【0063】
図1Bに図示されたクロック・リカバリ・システムがメイン測定装置50内に配置されている実施形態では、イコライザ524は、ピックオフ/終端回路520が配置されているリモート・ヘッド100とメイン測定装置50との間の相互接続部によって生じる影響をディエンベッド(de-embed)するために使用されても良い。例えば、イコライザ524は、図1A及び図1Bを参照して上述した同軸ケーブル92の影響をディエンベッドすることができる。分散(dispersion)、シンボル間干渉(ISI)及び帯域幅制限のような同軸ケーブル92の影響を測定する処理と、これらの影響をディエンドする処理は、ユーザが操作している測定装置50によって実行されても良い機能である。イコライザ524は、イコライザをより完全な特性とするために、図4を参照して上述した1つ以上の増幅回路422と組み合わせるか、又は、1つ以上の増幅回路422を有していても良い。
【0064】
図6は、ピックオフ/終端回路620を示し、これは、図1A又は図1Bのピックオフ/終端回路120の別の例であっても良い。図4及び図5を参照して説明した実施形態と異なり、ピックオフ/終端回路620には、サンプリング・ストローブ信号又はサンプリング・ストローブ信号から導出される信号によって制御されるバルブがある。
【0065】
バルブ622は、ストローブ信号がある間又はストローブ信号を受信してからのある短い時間内において、任意の信号がバルブを通過するのをブロックするように動作する。このような短い遅延により、キックアウト・エネルギーがサンプリング回路210からバルブ622に伝播する時間を与えることができる。このため、バルブ622は、動作している間、バルブ622に供給される任意のエネルギー、具体的には、キックアウト・エネルギーは遮断する。バルブは、エネルギーをグラウンド(接地)に分流(shunt)するか、又は、他の場所に送信することにより、エネルギーを消散できる。
【0066】
上記の実施形態と同様に、バルブ622は、実装形態の詳細に応じて、抵抗器226のいずれかの側に配置されても良い。同様に、バルブ622は、クロック・リカバリの位相検出機能の一部であっても良く、キックアウト・エネルギーがクロック・リカバリの位相ロックを乱すのを防ぐために動作する。
【0067】
図2図6を参照して上述した全ての実施形態は、サンプリング回路210からクロック・リカバリ回路又は測定システム内の他の場所に伝達されるキックアウト・エネルギーの量を最小化するように、任意の組み合わせで組み合わされても良い。例えば、サンプリング回路210と他のコンポーネントとの間のエネルギー分散システムとしては、抵抗性回路網、増幅回路、イコライザ及びサンプリング・ストローブ信号によって制御されるバルブのうちの1つ以上を任意の組み合わせで有していても良い。
【0068】
このように、本発明の実施形態は、サンプリング回路によって生成されるキックアウト・エネルギーの量が、装置のコンポーネントの下流又はリモート・ヘッドに伝播するか、更にはDUTに向かって伝播することを防止又は低減する。実施形態は、リモート・ヘッド内で、サンプラの後にピックオフ・システムを設け、ピックオフからの反射と、この信号のクロック・リカバリ・システム又は測定システム内の他の場所への伝達とを低減することを組み合わせて、この目標を達成する。これらの機能を同時に組み込むことにより、本発明の実施形態による測定システムは、DUTの動作に悪影響を与えることなく、入力信号から波形サンプルを忠実に再現できるシステムを提供する。
【0069】
より詳細には、本開示技術の実施形態は、1つ以上の特徴を含むことによって損傷を制限する。リモート・ヘッドのサンプラの後の信号の経路にピックオフを配置することで、サンプラの前にスプリッタを利用する場合ならば生じるであろう信号忠実度の損失を防ぐことができる。更に、ピックオフをリモート・ヘッドのサンプラの後に配置することで、サンプラの信号対ノイズ比を必然的に低下させた以前のシステムのように、サンプラの前で信号の電力を分割しないので、サンプラに入る信号の損失が防止される。
【0070】
いくつかの実施形態では、接続部、例えば、同軸ケーブルによって、リモート・ヘッドを測定装置から分離することにより、リモート・ヘッド全体をDUTの直ぐ近くに移動させることができるので、DUTとサンプラとの間のケーブルがかなり長いことによるシグナル・インテグリティ(信号品質)の損失を防止する。こうして、この配置によれば、DUTとリモート・ヘッド間の長い相互接続が回避され、そのような長さの相互接続によって引き起こされるシグナル・インテグリティの問題が回避される。
【0071】
上記のいくつかの実施形態で説明したようなピックオフ/終端があることにより、ピックオフとクロック・リカバリの間の経路に増幅回路、イコライザ、バルブなどの非相反回路素子(non-reciprocal component)又はその組み合わせを挿入することにより、ピックオフとその後に続く経路の不整合(ミスマッチ)が原因の反射によるシグナル・インテグリティの損失を制限する。
【0072】
いくつかの実施形態には、ピックオフ/終端内に抵抗性分圧回路があり、これは、サンプラからの信号を更に分圧し、反射を更に制限する。更に、イコライザの存在は、リモート・ヘッドとクロック・リカバリとの間の経路を等化処理することによって、リモート・ヘッドとクロック・リカバリ・システムとの間の相互接続部に起因する又はそれによって引き起こされる信号忠実度の損失を除去できる。更に、実施形態は、ストローブ信号のキックオフの影響がクロック・リカバリの経路に入るのを制限するように、キックオフ時に、ピックオフ/終端からの経路の利得を減少させても良い。
【0073】
また、更に、サンプリング回路とクロック・リカバリの間に配置されたバルブ又はクロック・リカバリの位相検出機能に組み入れたバルブは、サンプリング・ストローブ信号と同時に又は直後の短時間に生成される任意の信号の通過をブロックするように制御できる。この実施形態は、キックアウト・エネルギーが試験測定システムの他の部分に影響を与える能力を更に制限する。
【0074】
その実装形態は、先に図1A及び図1Bに図示したように、部分的又は完全にリモート・ヘッドの内部とすることができるが、いくつかの実施形態では、モノリシック(即ち、非リモートのヘッド)実装形態を利用しても良い。具体的には、図7は、リモート・ヘッドを使用せずに動作する測定装置700を示す。むしろ、上述の全ての主要コンポーネントが、単一の測定装置700に統合される。
【0075】
上述の実施形態と、図7に示す実施形態との相違点は、DUT780が光学的DUTであること、即ち、DUT780によって生成される被試験信号が光信号であることである。このため、測定装置700は、入力ポート102とサンプリング回路110との間に光電(O/E)変換回路703を有する。このような場合、入力信号をサンプリングすることによって生成された任意のキックアウト・エネルギーは、光電変換回路703の存在によってDUT780に反射されるのが阻止される。
【0076】
しかしながら、DUT780からの入力信号は、上述と同様に、サンプリング回路110によってサンプリングされる前に分割されないことに注意されたい。代わりに、入力信号は、測定装置700の他のコンポーネントに供給される前に、サンプリング回路110によってサンプリングされる。言い換えると、測定装置700には、上述のシステムと同様に、やはり、ピックオフ/終端回路120があるが、これは、サンプリング回路110の後に配置される。そして、図7を参照して説明する、この実施形態は、サンプリング回路110からのキックアウト・エネルギーが測定装置700の残りの部分を通って伝播され、動作を妨害することを防止するために、上述したキックアウト・エネルギーを消散する方策のいずれか又は全てを更に有していても良い。
【0077】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0078】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0079】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0080】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0081】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0082】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0083】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【0084】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0085】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0086】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0087】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0088】
50 測定装置
60 メイン・プロセッサ
62 プロセッサ・メモリ
64 ユーザ入力部
66 メイン表示部
68 ユーザ出力部
69 ネットワーク
70 アクイジション・メモリ
80 DUT(被試験デバイス)
82 トリガ処理システム
90 測定ユニット
92 同軸ワイヤ
100 リモート・ヘッド
102 入力ポート
110 サンプリング回路
112 増幅回路
116 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
120 ピックオフ/終端回路
140 クロック・デスキュー・ブロック
150 クロック・リカバリ・システム
208 DUT(被試験デバイス)
210 サンプリング回路
220 ピックオフ/終端コンポーネント
222 抵抗器
223 ノード
224 抵抗器
226 抵抗器
320 ピックオフ/終端コンポーネント
312 可変抵抗器
322 可変抵抗器
324 可変抵抗器
326 可変抵抗器
420 ピックオフ/終端コンポーネント
422 増幅回路
520 ピックオフ/終端コンポーネント
524 イコライザ
620 ピックオフ/終端コンポーネント
622 バルブ
700 DUT(被試験デバイス)
703 光電変換回路
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】