(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023100811
(43)【公開日】2023-07-19
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/62 20230101AFI20230711BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230711BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20230711BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H04N23/62
H04N23/60 500
H04N23/63
G06T5/00 710
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075671
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2018114500の分割
【原出願日】2018-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 佐和子
(57)【要約】
【課題】3以上の空間周波数帯域ごとに輪郭強調処理やノイズ低減処理に関する補正情報の各々を独立して設定可能にすること。
【解決手段】画像処理装置は、第1空間周波数帯域の輪郭成分、前記第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含み、かつ、前記第1空間周波数帯域と一部重複する第2空間周波数帯域の輪郭成分、および前記第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含み、かつ、前記第2空間周波数帯域と一部重複する第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を独立に設定可能であり、表示する画像の表示倍率に基づいて、前記各補正情報を設定する設定部と、前記設定部によって設定された各補正情報に基づいて、画像データを補正する補正部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間周波数帯域の輪郭成分、前記第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含み、かつ、前記第1空間周波数帯域と一部重複する第2空間周波数帯域の輪郭成分、および前記第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含み、かつ、前記第2空間周波数帯域と一部重複する第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を独立に設定可能であり、表示する画像の表示倍率に基づいて、前記各補正情報を設定する設定部と、
前記設定部によって設定された各補正情報に基づいて、画像データを補正する補正部と、
を有する画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データに含まれる高周波成分および低周波成分により、輪郭強調やノイズ低減をおこなう撮像装置が開示されている(たとえば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本願において開示される発明の一側面となる画像処理装置は、第1空間周波数帯域の輪郭成分、前記第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含む第2空間周波数帯域の輪郭成分、および前記第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含む第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を独立に設定可能な設定部と、前記設定部によって設定された各補正情報に基づいて、画像データを補正する補正部と、を有する。
【0005】
本願において開示される発明の一側面となる情報処理装置は、送信先を選択する選択部と、第1空間周波数帯域の輪郭成分、前記第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含む第2空間周波数帯域の輪郭成分、および前記第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含む第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を、前記選択部によって選択された送信先に基づいて、独立に設定する設定部と、前記設定部によって設定された各補正情報と、前記各補正情報を用いる補正対象の画像データとを、前記送信先に送信する送信部と、を有する。
【0006】
本願において開示される発明の一側面となる撮像装置は、被写体を撮像する撮像部と、第1空間周波数帯域の輪郭成分、前記第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含む第2空間周波数帯域の輪郭成分、および前記第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含む第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を独立に設定可能な設定部と、前記設定部によって設定された各補正情報に基づいて、前記撮像部から出力される画像データを補正する補正部と、を有する。
【0007】
本願において開示される発明の一側面となる画像処理プログラムは、第1空間周波数帯域の輪郭成分、前記第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含む第2空間周波数帯域の輪郭成分、および前記第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含む第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を独立に設定する設定処理と、前記設定処理によって設定された各補正情報に基づいて、画像データを補正する補正処理と、をプロセッサに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、画像の輪郭強調例を示すグラフである。
【
図2】
図2は、画像の各輪郭強調の設定情報の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、画像の輪郭強調設定の設定画面例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、表示倍率ごとのクイック輪郭強調例1を示す説明図である。
【
図5】
図5は、表示倍率ごとのクイック輪郭強調例2を示す説明図である。
【
図6】
図6は、表示倍率ごとのクイック輪郭強調例3を示す説明図である。
【
図7】
図7は、撮像装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施例1にかかる撮像装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施例1にかかる輪郭強調処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例2にかかる輪郭強調処理手順例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、撮像装置と送信先とが通信可能に接続された通信システムの一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施例3にかかる撮像装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、送信先選択画面の一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施例3にかかる輪郭強調処理手順例1を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施例3にかかる輪郭強調処理手順例2を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施例4にかかる撮像装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図18】
図18は、実施例4にかかる情報処理手順例1を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、実施例4にかかる情報処理手順例2を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、分割領域の輪郭強調例を示す説明図である。
【
図21】
図21は、実施例5にかかる撮像装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図22】
図22は、実施例5にかかる輪郭強調処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0009】
<画像の輪郭強調例>
図1は、画像の輪郭強調例を示すグラフである。グラフ101~104は、画像の輪郭成分の強調度と空間周波数との関係を示す。グラフ101~104の縦軸111が輪郭成分の強調度を示し、横軸112が空間周波数を示す。第1グラフ101は、空間周波数の高周波数帯域における輪郭成分を強調(第1輪郭強調)するためのグラフである。第1輪郭強調は、いわゆる一般的な輪郭強調処理であり、50%以上、特に100%程度の表示倍率などで好適な解像感が得られる。なお、輪郭強調とは、輪郭成分を強調する処理のほか、輪郭成分を弱める処理も含む。
【0010】
第2グラフ102は、空間周波数の中周波数帯域における輪郭成分を強調(第2輪郭強調)するためのグラフである。第2輪郭強調は、特に25~50%程度の表示倍率などで好適な解像感が得られる。第3グラフ103は、空間周波数の低周波数帯域における輪郭成分を強調(第3輪郭強調)するためのグラフである。第3輪郭強調は、いわゆる一般的な明瞭度調整処理であり、特に25%以下の表示倍率などで好適な解像感が得られる。第4グラフ104は、空間周波数の低周波数帯域~高周波数帯域における輪郭成分、すなわち、画像のコントラストを調整するためのグラフである。
【0011】
ユーザは、第1グラフ101~第3グラフ103で示すような、各空間周波数帯域の強調度をそれぞれ独立して縦軸111の方向に調整することができる。たとえば、ユーザが、第1グラフ101~第3グラフ103の縦軸111の方向の値を調整することにより、画像の輪郭成分を強調したり、弱めたりすることができる。
【0012】
なお、
図1では、高周波数帯域、中周波数帯域、および低周波数帯域の3つの空間周波数帯域で輪郭強調の設定を可能にする例を挙げたが、4つ以上の空間周波数帯域で輪郭強調の設定を可能にしてもよい。また、各空間周波数帯域は一部が重複していてもよい。
【0013】
図2は、画像の各輪郭強調の設定情報の一例を示す説明図である。
図2では、
図1に示した第1グラフ101~第3グラフ103の各々の調整を一括しておこなうクイック輪郭強調の例を示す。設定情報200は、後述する記憶デバイス702に記憶される。設定情報200では、画像データの輪郭強調処理を調整する補正情報として、変更可能な設定値が規定される。
【0014】
クイック輪郭強調の設定値は、たとえば、-2から+2の範囲で設定可能である。また、第1輪郭強調~第3輪郭強調の各設定値は、クイック輪郭強調の設定値に応じて変動する。第1輪郭強調~第3輪郭強調の各設定値は、
図1の縦軸111に対応しており、設定値が高いほど第1グラフ101~第3グラフ103の縦軸111の値が高くなり、画像の各周波数帯域の輪郭成分が強調される。
【0015】
また、第1輪郭強調~第3輪郭強調の各設定値は、負の値にも設定可能である。たとえば、第1輪郭強調の設定値を負の値に設定することにより、画像の輪郭成分を弱めて、ソフトに仕上げることができる。また、第2輪郭強調および第3輪郭強調の設定値を負の値に設定することにより、画像のコントラストを下げてソフトに仕上げることができる。
【0016】
クイック輪郭強調のそれぞれの3つの値は、画像のどの表示倍率でも解像感が変わらないような設定値が決められている。そのため、どの表示倍率でも好適な解像感を得ることができる。たとえば、ユーザが、クイック輪郭強調の設定値を「+2」に設定すると、高周波数帯域は「5」、中周波数帯域は「4.5」、低周波数帯域は「3」に設定される。このように、3つの空間周波数帯域の輪郭成分をそれぞれ適切に強調するため、画像内の幅広い空間周波数をもった被写体の輪郭成分を強調できる。画像がどの表示倍率であっても、画像内の被写体の輪郭成分が強調された、換言すれば、輪郭成分が際立って明瞭に見える画像(いわゆる、くっきりとした画像)に補正される。
【0017】
また、ユーザが、クイック輪郭強調の設定値を「-2」に設定すると、高周波数帯域は「-0.5」、中周波数帯域は「-1」、低周波数帯域は「-1」に設定される。これにより、画像がどの表示倍率であっても、画像内の被写体の輪郭成分が弱められた、換言すれば、被写体がやわらかに見える画像に補正される。このように、3つの空間周波数帯域の輪郭成分をそれぞれ適切に強調するため、画像内の幅広い空間周波数をもった被写体の輪郭成分を強調できる。
【0018】
また、ユーザが、クイック輪郭強調の設定値を「0」に設定すると、高周波数帯域は「3」、中周波数帯域は「2」、低周波数帯域は「1」に設定される。これにより、画像がどの表示倍率であっても、画像内の被写体の輪郭成分が標準的な画像に補正される。このように、3つの空間周波数帯域の輪郭成分をそれぞれ適切に強調するため、画像内の幅広い空間周波数をもった被写体の輪郭成分を強調できる。
【0019】
このように、ユーザがクイック輪郭強調の設定値を調整するだけで、高周波数帯域、中周波数帯域および低周波数帯域の設定値が連動して設定される。したがって、画像の表示倍率に依存することなく、ユーザの好みに応じた解像感が得られる画像に補正することができる。
【0020】
図3は、画像の輪郭強調設定の設定画面例を示す説明図である。
図3は、一例として、デジタルカメラなどの撮像装置の背面モニタに表示された設定画面300を示すが、パーソナルコンピュータやタブレット、スマートフォンのディスプレイに設定画面300を表示させてもよい。なお、設定画面300では、操作ボタンやダイヤルなどの操作デバイスでカーソルやスライダが移動してもよく、タッチパネルによりユーザの指で設定画面300内のボタンが選択されたり、スライダが移動してもよい。
【0021】
設定画面300は、選択領域301と、調整領域302と、を有する。選択領域301は、クイック輪郭強調選択ボタン310と、第1輪郭強調選択ボタン311と、第2輪郭強調選択ボタン312と、第3輪郭強調選択ボタン313と、を有する。クイック輪郭強調選択ボタン310は、クイック輪郭強調を選択するために表示されるボタンである。第1輪郭強調選択ボタン311~第3輪郭強調選択ボタン313は、第1輪郭強調~第3輪郭強調を選択するために表示されるボタンである。これら各選択ボタン310~313は、操作デバイス708(
図7を参照)やユーザの指で選択される。
図3では、クイック輪郭強調選択ボタン310が選択された状態を示す。
【0022】
調整領域302は、各選択ボタン310~313に対応するバー320~323と、各バー上を移動して設定値を指定するスライダ330~333と、を有する。バー320~323の範囲は、対応する選択ボタン310~313の各輪郭強調における強調度を指定する指定範囲となる。スライダ330~333が示すバー320~323の位置は、
図1の縦軸111に対応しており、設定値が高いほど第1グラフ101~第3グラフ103の縦軸111の値が高くなり、画像の輪郭成分が強調される。
【0023】
各スライダをタッチ指定して、左右に動かす操作をすることでそれぞれ移動させることができる。また、各スライダ330~333は、対応する選択ボタン310~313が押下された場合に、操作デバイス708やユーザの指でバー320~323に沿って移動可能としてもよい。たとえば、第1輪郭強調選択ボタン311が押下された場合、スライダ331のみが操作デバイス708やユーザの指でバー320~323に沿って移動可能であり、他のスライダ330,332,333を移動することはできない。
【0024】
また、クイック輪郭強調選択ボタン310が押下された場合、クイック輪郭強調では、高周波数帯域、中周波数帯域、および低周波数帯域の第1グラフ101~第3グラフ103を一括調整可能であるため、
図2に示したクイック輪郭強調の設定値に連動して、スライダ330~333が移動する。
【0025】
図3では、スライダ330が、操作デバイス708やユーザの指による移動で設定値として「1」を指し示す場合、スライダ331が「4」、スライダ332が「3.5」、スライダ333が「2」を指し示すように移動する(
図2を参照)。これにより、クイック輪郭強調の設定により、高周波数帯域、中周波数帯域、および低周波数帯域の各輪郭成分の強調度を一括設定することができる。したがって、輪郭強調設定における利便性の向上を図ることができる。
【0026】
また、クイック輪郭強調選択ボタン310とバー320との間には、自動設定ボタン340が表示される。自動設定ボタン340は、クイック輪郭強調選択ボタン310が押下された場合に操作デバイス708やユーザの指で押下可能である。自動設定ボタン340が押下されると、撮像装置は、画像中の輝度、ポートレート(顔検出)、被写体間距離などのシーン認識によって検出される撮影シーンに適合するクイック輪郭強調の設定値を設定し、当該設定値に対応する高周波数帯域、中周波数帯域、および低周波数帯域の各設定値も設定する(
図2を参照)。
【0027】
たとえば、
図2に示したように、自動設定ボタン340が押下されると、クイック輪郭強調の設定値は、画像がバストアップポートレートである場合は「-1」、画像がスナップ写真である場合は「0」、画像が風景である場合は「+1」である。このような自動設定は、たとえば、画像の特徴または撮影シーンと、クイック輪郭強調の設定値とを対応付けたテーブル(不図示)を参照することにより実現可能である。また、このようなクイック輪郭強調の設定値は、たとえば、同じ撮影シーンであってもシャッタースピード(露光時間)やレンズのF値に応じて変更可能としてもよい。
【0028】
<表示倍率ごとの輪郭強調例>
ここで、画像の表示倍率ごとの輪郭強調例を示す。
【0029】
図4~
図6は、表示倍率ごとのクイック輪郭強調例1~3を示す説明図である。
図4は、クイック輪郭強調の設定値を「+2」とした例であり、
図5は、クイック輪郭強調の設定値を「0」とした例であり、
図6は、クイック輪郭強調の設定値を「-2」とした例である。また、
図4~
図6において、(A)は等倍(100%)の表示倍率、(B)は50%の表示倍率、(C)は20%の表示倍率である。
【0030】
このように、クイック輪郭強調の設定値を調整することにより、表示倍率に依存することなく輪郭成分を強調したり、弱めたりすることができ、
図4~
図6の各々において、表示倍率が異なっていても、(A)~(C)で同じような解像感が得られる。したがって、ユーザは、第1輪郭強調~第3輪郭強調の設定値を個別に調整する必要がないため、第1輪郭強調~第3輪郭強調の設定値を試行錯誤することなく、容易に輪郭強調設定をおこなうことができる。
【0031】
<撮像装置のハードウェア構成例>
図7は、撮像装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。撮像装置700は、静止画または動画撮影可能な装置であり、具体的には、たとえば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、ゲーム機である。
図7では、撮像装置の一例としてデジタルカメラを例に挙げて説明する。
【0032】
撮像装置700は、プロセッサ701と、記憶デバイス702と、駆動部703と、光学系704と、撮像素子705と、AFE(Analog Front End)706と、LSI(Large Scale Integration)707と、操作デバイス708と、センサ709と、表示デバイス710と、通信IF(Interface)711と、バス712と、を有する。プロセッサ701、記憶デバイス702、駆動部703、LSI707、操作デバイス708、センサ709、表示デバイス710、および通信IF711は、バス712に接続される。
【0033】
プロセッサ701は、撮像装置700を制御する。記憶デバイス702は、プロセッサ701の作業エリアとなる。また、記憶デバイス702は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス702としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。記憶デバイス702は、撮像装置700に複数実装されてもよく、そのうちの少なくとも1つは、撮像装置700に対し着脱自在でもよい。
【0034】
駆動部703は、光学系704を駆動制御する。駆動部703は、駆動回路703aと駆動源703bとを有する。駆動回路703aは、プロセッサ701からの指示により駆動源703bを制御する。駆動源703bは、たとえば、モータであり、駆動回路703aの制御により、光学系704内のズーミングレンズ741bおよびフォーカシングレンズ741cを光軸方向に移動させたり、絞り742を開閉制御する。
【0035】
光学系704は、光軸方向に配列された複数のレンズ(レンズ741a、ズーミングレンズ741b、およびフォーカシングレンズ741c)と、絞り742と、を含む。光学系704は、被写体光を集光し、撮像素子705に出射する。
【0036】
撮像素子705は、光学系704からの被写体光を受光して電気信号に変換する。撮像素子705は、たとえば、XYアドレス方式の固体撮像素子(たとえば、CMOS(Complementary Metal‐Oxide Semiconductor))であってもよく、順次走査方式の固体撮像素子(たとえば、CCD(Charge Coupled Device))であってもよい。
【0037】
撮像素子705の受光面には、複数の受光素子(画素)がマトリクス状に配列されている。そして、撮像素子705の画素には、それぞれが異なる色成分の光を透過させる複数種類のカラーフィルタが所定の色配列(たとえば、ベイヤ配列)に従って配置される。そのため、撮像素子705の各画素は、カラーフィルタでの色分解によって各色成分に対応するアナログの電気信号を出力する。
【0038】
AFE706は、撮像素子705からのアナログの電気信号に対して信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。AFE706は、電気信号のゲイン調整、アナログ信号処理(相関二重サンプリング、黒レベル補正など)、A/D変換処理、デジタル信号処理(欠陥画素補正など)を順次実行してRAW画像データを生成し、LSIに出力する。上述した駆動部703、光学系704、撮像素子705、およびAFE706は、撮像部720を構成する。
【0039】
LSI707は、AFE706からのRAW画像データについて、色補間、ホワイトバランス調整、輪郭強調、ガンマ補正、階調変換などの画像処理や符号化処理、復号処理、圧縮伸張処理など、特定の処理を実行する集積回路である。LSI707は、具体的には、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)によって実現してもよい。
【0040】
操作デバイス708は、コマンドやデータを入力する。操作デバイス708としては、たとえば、レリーズボタンを含む各種ボタン、スイッチ、ダイヤル、タッチパネルがある。センサは、情報を検出するデバイスであり、たとえば、AF(Automatic Focus)センサ、AE(Automatic Exposure)センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、温度センサなどがある。表示デバイス710は、画像データや設定画面300を表示する。表示デバイス710には、撮像装置700の背面にある背面モニタと、電子ビューファインダと、がある。通信IF711は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0041】
<撮像装置の機能的構成例>
図8は、実施例1にかかる撮像装置700の機能的構成例を示すブロック図である。撮像装置700は、撮像部720と、画像処理装置800と、により構成される。画像処理装置800は、記憶部801と、取得部802と、生成部803と、設定部804と、補正部805と、表示部806と、を有する。
【0042】
取得部802、生成部803、設定部804、および補正部805は、具体的には、たとえば、
図7に示した記憶デバイス702に記憶されたプログラムをプロセッサに実行させることにより、またはLSI707により実現される。記憶部801は、
図7に示した記憶デバイス702により実現される。表示部806は、
図7に示した表示デバイス710およびLSI707により実現される。
【0043】
取得部802は、撮像部720または生成部803からの画像データを取得して、記憶部801に格納する。撮像部720から取得される画像データは、たとえば、RAW画像データである。生成部803から取得される画像データは、たとえば、LSI707によって色補間、ホワイトバランス調整、輪郭強調、ガンマ補正、階調変換などのように画像処理された画像データでもよく、また、たとえば、JPEG形式に圧縮された画像データでもよい。また、画像データは、静止画または動画撮影により生成された画像データでもよい。また、画像データは、撮像部720から連続的に(逐次)出力されたデータに基づいて生成された表示用の画像、いわゆるスルー画像用のデータとして得られた画像データでもよい。
【0044】
生成部803は、取得部802によって撮像部720から取得されたRAW画像データについて、色補間、ホワイトバランス調整、輪郭強調、ガンマ補正、階調変換などのような画像処理を実行し画像データを生成する。また、RAW画像データまたは画像処理された画像データについて、JPEG形式に圧縮して画像データを生成する。生成部803は、生成した画像データを取得部802に返す。
【0045】
設定部804は、第1空間周波数帯域の輪郭成分、第2空間周波数帯域の輪郭成分、および第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々についての各補正情報を独立に設定可能にする。ここで、第1空間周波数帯域は、たとえば、上述した高周波数帯域である。第2空間周波数帯域は、第1空間周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含む空間周波数帯域である。
【0046】
具体的には、たとえば、第2空間周波数帯域は、高周波数帯域内の第1空間周波数よりも低い第2空間周波数を含む中周波数帯域である。第3空間周波数帯域は、第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含む空間周波数帯域である。具体的には、たとえば、第3空間周波数帯域は、第2空間周波数よりも低い第3空間周波数を含む低周波数帯域である。
【0047】
補正情報とは、第1空間周波数帯域の輪郭成分、第2空間周波数帯域の輪郭成分、および第3空間周波数帯域の輪郭成分の各々の補正に必要な情報である。具体的には、たとえば、補正情報は、
図1に示した高周波数帯域、中周波数帯域および低周波数帯域の輪郭成分に対する強調度(縦軸111の値)であり、より具体的には、当該強調度に対応する第1輪郭強調、第2輪郭強調、および第3輪郭強調の設定値である。
【0048】
設定部804は、たとえば、
図3で説明した操作により、第1輪郭強調、第2輪郭強調、および第3輪郭強調の設定値を独立して、すなわち、個別に設定可能である。また、設定部804は、クイック輪郭強調の選択により、クイック輪郭強調のスライダでバーの設定値を指し示すことにより、第1輪郭強調、第2輪郭強調、および第3輪郭強調の設定値を一括設定することもできる。これにより、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0049】
補正部805は、設定部804によって設定された各補正情報に基づいて、画像データを補正する。具体的には、たとえば、補正部805は、設定部804によって設定された第1輪郭強調、第2輪郭強調、および第3輪郭強調の設定値により、輪郭強調処理を実行する。
【0050】
なお、クイック輪郭強調、第1輪郭強調、第2輪郭強調、および第3輪郭強調の設定値は、画像データごとに保持してもよい。たとえば、ある画像データについて各スライダ330~333がそれぞれ、「1」、「4」、「3.5」、「2」を指し示した場合に、他の画像データや他の処理に切り替えた場合、設定部804は、当該ある画像データに関連付けて、当該設定値「1」、「4」、「3.5」、「2」を保持しておく。そして、再度、この画像データが呼び出された場合、設定部804は、保持した設定値「1」、「4」、「3.5」、「2」を読み出して設定してもよい。これにより、前回の設定値を再現することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0051】
また、補正部805は、第1輪郭強調では、たとえば、第1輪郭強調の設定値で先鋭化フィルタ内の値を調整し、調整した先鋭化フィルタを用いて画像データを補正する。また、補正部805は、第2輪郭強調では、たとえば、第2輪郭強調の設定値で中周波数帯域の範囲を調整し、調整した中周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いて画像データを補正する。
【0052】
また、補正部805は、第3輪郭強調では、たとえば、第3輪郭強調の設定値で低周波数帯域の範囲を調整し、調整した低周波数帯域を通過させるローパスフィルタを用いて画像データを補正する。ここでは、先鋭化フィルタやバンドパスフィルタ、ローパスフィルタを用いて説明したが、各空間周波数帯域に適用可能なフィルタであれば、他のフィルタでもよい。
【0053】
なお、補正部805は、設定部804によって設定された設定値を、撮影後の画像データに対して適用してもよく、また、撮影前の画像データ、すなわち、スルー画像用のデータに対しても適用してもよい。この場合、クイック輪郭強調によって設定された第1輪郭強調~第3輪郭強調の設定値の組み合わせについては、ズームインやズームアウトによって変化する表示倍率に依存しないため、ユーザは、ズーム操作ごとに第1輪郭強調~第3輪郭強調の各設定値を変える必要はない。
【0054】
表示部806は、設定部804によって設定可能な設定画面300(
図2)を表示デバイス710に表示する。また、表示部806は、補正部805による補正後の画像データに基づいて、表示デバイス710に当該画像データの画像を表示する。これにより、
図4~
図6に示した画像が表示される。
【0055】
<輪郭強調処理手順例>
図9は、実施例1にかかる輪郭強調処理手順例を示すフローチャートである。撮像装置700は、取得部802により、撮像部720または生成部803から画像データを取得すると(ステップS901)、記憶部801に格納する(ステップS902)。画像処理装置800は、
図3の設定画面300からクイック輪郭強調選択ボタン310が選択され、スライダ330の位置でクイック輪郭強調の設定値を設定すると(ステップS911)、設定部804により、クイック輪郭強調の設定値に対応する第1輪郭強調~第3輪郭強調の設定値の組み合わせを特定する(ステップS912)。
【0056】
そして、画像処理装置800は、記憶部801から画像データを読み出して、補正部805により、画像データに対しクイック輪郭強調に基づく補正を実行する(ステップS913)。このあと、画像処理装置800は、表示部806により、補正後の画像データの画像を表示デバイス710に表示する(ステップS914)。これにより、一連の輪郭強調処理が終了する。
【0057】
このように、実施例1によれば、高周波数帯域と低周波数帯域との間の中周波数帯域についての第2輪郭強調を、高周波数帯域に対応する第1輪郭強調および低周波数帯域に対応する第3輪郭強調とは独立して設定することができる。クイック輪郭強調によって設定されたそれぞれの3つの値は、画像のどの表示倍率でも解像感が変わらないような設定値が決められている。そのため、どの表示倍率でも好適な解像感が得られる。したがって、3つの空間周波数帯域の輪郭成分をそれぞれ適切に強調するため、画像内の幅広い空間周波数をもった被写体の輪郭成分を強調できる。画像がどの表示倍率であっても、画像内の被写体の輪郭成分が強調された、換言すれば、輪郭成分が際立って明瞭に見える画像(いわゆる、くっきりとした画像)に補正することができる。
【0058】
また、クイック輪郭強調の設定により、第1輪郭強調~第3輪郭強調を一括して設定することができるため、撮影についての知識が少ないユーザでも、画像の解像感を変更する補正を素早くおこなうことができ、利便性の向上を図ることができる。
実施例2について説明する。実施例1では、第1輪郭強調~第3輪郭強調の各設定値を設定する例について説明したが、実施例2では、表示倍率に依存して輪郭強調の設定値を設定可能にする例について説明する。
第1輪郭強調~第3輪郭強調はそれぞれ、好適な解像感が得られやすい表示倍率を有するため、実施例2では、撮像装置700は、画像の表示倍率が検出された時点で、当該検出された表示倍率に最適な輪郭強調を選択して、当該選択された輪郭強調の設定値を設定可能にする。これにより、ユーザは、どの輪郭強調を適用するかという試行錯誤をすることなく、選択された輪郭強調についてスライダを移動させることで、好適な解像感を得ることが可能となる。
つぎに、画像処理装置800は、ステップS1013の選択輪郭強調のスライダの位置で、選択輪郭強調の設定値を設定すると(ステップS1014)、補正部805により、画像データに対し選択輪郭強調に基づく補正を実行する(ステップS1015)。このあと、画像処理装置800は、表示部806により、補正後の画像データの画像を表示デバイス710に表示する(ステップS1016)。これにより、一連の輪郭強調処理が終了する。
このように、実施例2によれば、ユーザは、どの輪郭強調を適用するかという試行錯誤をすることなく、選択された輪郭強調についてスライダ331~333を移動させることで、好適な解像感を得ることができる。
なお、実施例2では、表示倍率に基づいて、第1輪郭強調~第3輪郭強調のうちいずれか1つの設定値を設定可能とする例について説明したが、表示倍率が2つの輪郭強調のいずれにおいても好適な解像感が得られる表示倍率である場合には、当該2つの輪郭強調の設定値を設定可能としてもよい。たとえば、表示倍率が50%である場合には、撮像装置700は、第1輪郭強調および第2輪郭強調の設定値を設定可能とし、表示倍率が25%である場合には、撮像装置700は、第2輪郭強調および第3輪郭強調の設定値を設定可能としてもよい。
これにより、ユーザは、どの輪郭強調を適用するかという試行錯誤をすることなく輪郭強調の設定自由度を高くすることにより、選択された輪郭強調についてスライダ331~333を移動させることで、好適な解像感を得ることができる。