(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101245
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】ボイラ水の水質制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/12 20060101AFI20230712BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230712BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230712BHJP
【FI】
B01D61/12
C02F1/44 D
C02F1/44 J
C02F1/42 B
C02F1/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001750
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 有
(72)【発明者】
【氏名】内田 和義
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA53Z
4D006KA02
4D006KA03
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4D025AA01
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4D025CA01
4D025CA05
4D025CA06
4D025CA10
4D025DA05
(57)【要約】
【課題】原水中の非溶解性シリカに応じて管理される水質制御方法を提供する。
【解決手段】純水を製造する純水製造手段と、純水製造手段からの純水が補給水として補給され、ボイラ水として貯留される給水タンクと、給水タンクからのボイラ水が供給されるボイラとを備えるボイラ用水処理システムにおける水質制御方法において、ボイラ水の総シリカ濃度及び補給水のイオン状シリカ濃度を測定し、ボイラ水の総シリカ濃度から補給水の総シリカ濃度を算出し、補給水のイオン状シリカ濃度の測定値と補給水の総シリカ濃度の算出値とから、補給水の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度との合計値を算出し、該合計値を管理項目として純水製造手段を制御することを特徴とするボイラ水の水質制御方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を製造する純水製造手段と、
該純水製造手段からの純水が補給水として補給され、ボイラ水として貯留される給水タンクと、
該給水タンクからのボイラ水が供給されるボイラと
を備えるボイラ用水処理システムにおける水質制御方法において、
ボイラ水の総シリカ濃度及び補給水のイオン状シリカ濃度を測定し、
ボイラ水の総シリカ濃度から補給水の総シリカ濃度を算出し、
補給水のイオン状シリカ濃度の測定値と補給水の総シリカ濃度の算出値とから、補給水の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度との合計値を算出し、
該合計値を管理項目として純水製造手段を制御することを特徴とするボイラ水の水質制御方法。
【請求項2】
前記純水製造手段は、イオン交換樹脂型純水装置の系列と逆浸透膜型純水装置の系列とがそれぞれ1系列以上、並列に設けられている請求項1のボイラ水の水質制御方法。
【請求項3】
前記各系列の純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度を測定し、
ボイラ水の総シリカ濃度の実測値、及び各純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度と各純水装置の流量比率とから、イオン交換樹脂型純水装置の処理水の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度を算出し、
補給水の懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度と、イオン交換樹脂型純水装置の処理水の懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度の算出値と、各純水装置の流量比率とから、逆浸透膜型純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度の目標値を算出し、この目標値となるように逆浸透膜型純水装置の運転条件を調整する請求項2のボイラ水の水質制御方法。
【請求項4】
前記逆浸透膜型純水装置の処理水の総シリカ濃度を調整するために、該逆浸透膜型純水装置の回収率および給水ポンプ圧を調整することを特徴とする請求項3の水質制御方法。
【請求項5】
補給水のイオン状シリカ濃度の測定データをサーバに蓄積し、ボイラ水のイオン状シリカ濃度に異常数値が発生した際に、その至近数値から現在数値を予想して、イオン交換樹脂補給純水中の懸濁性シリカ濃度、コロイダルシリカ濃度を予想する請求項2~4のいずれかのボイラ水の水質管理方法。
【請求項6】
設定したボイラブロー水量ではボイラ水の総シリカ濃度が基準を維持できない場合に、それを維持するための逆浸透膜型純水装置の採水量を計算し、この採水に関わる動力増加量による損失と、ボイラブロー水量を増加させることでボイラ水中の総シリカ濃度が基準値内に維持した場合の水及び/又は熱の損失を比較して配分比率を設定する請求項2~5のいずれかのボイラ水の水質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ水中のシリカ濃度を所定値以下とするための水質制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカは、ボイラ蒸気圧力に応じた揮発度(蒸気中濃度/ボイラ水濃度:移行率とも言う)を有しているため、ボイラ水中の濃度に応じて蒸気中に移行する。蒸気に移行したシリカが、タービン系で析出してスケール化すると、ボイラシステムの効率が低下する。
【0003】
ボイラ水からのシリカ除去法としては、イオン交換樹脂を用いる方法や、RO(逆浸透)装置を用いる方法がある(特許文献1,2)。
【0004】
水中において溶解してイオン状となっているシリカは、強塩基性陰イオン交換樹脂で除去される。しかし、再生に温苛性ソーダが必要である。また、その他の陰イオンよりも破過が早く、安定して処理することが難しい。
【0005】
シリカは天然水中で重合して懸濁性シリカやコロイダルシリカの形態をとることがある。懸濁性シリカやコロイダルシリカ(以下、「非溶解性シリカ」ということがある。)は、イオン交換樹脂では除去能が低いため、イオン交換樹脂の処理水中に残留することが多い。その場合、ボイラオペレータはシリカ濃度を下げるようにブローを行う(例えば、特許文献3)。イオン交換装置処理水中の非溶解性シリカ濃度を監視できれば、前述のオペレータの対応は容易になるが、非溶解性シリカの濃度を精度よく測定することは容易ではない。
【0006】
非溶解性シリカは、イオン交換樹脂で除去できないが、逆浸透膜では除去ができる。ただし、逆浸透膜型純水装置は、イオン交換樹脂型純水装置よりも高価である。また、回収率によっては排水量が多くなる;電力費が高い;などのデメリットもある。
【0007】
このように、イオン交換樹脂型純水装置は処理水水質の調整が難しい。一方、逆浸透型純水装置は回収率や運転圧を変更することで、処理水水質を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-136648号公報
【特許文献2】特開平10-309574号公報
【特許文献3】特開2009-30817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の通り、ボイラ補給水製造のための純水製造装置としては、一般に処理コストが安価なイオン交換樹脂型純水装置が用いられているが、処理水のコロイダルシリカの濃度が不安定である。イオン交換樹脂型純水装置からの処理水中の総シリカ濃度が高くなると、ボイラ水の総シリカ濃度も高くなる。ボイラ水の総シリカ濃度が規定濃度よりも高くなると、水質調整のためにボイラ水の一部をブロー水として排出する必要があり、熱損失や水の使用量が多くなる。
【0010】
ブロー水を排出せず、イオン交換樹脂処理水のイオン状シリカリークを抑えようとすると、樹脂の再生頻度ないし交換頻度が増え、コストアップとなる。
【0011】
上記特許文献3の通り、逆浸透膜型の純水装置も知られているが、純水装置をイオン交換樹脂型から逆浸透膜型に更新することでコロイダルシリカを完全に除去しようとすると、純水装置のリプレースで多額の費用が掛かるとともに、電力費や水使用量が多くなる。
【0012】
本来は原水中のコロイダルシリカ量に応じて必要な系列数だけイオン交換樹脂型純水装置を逆浸透膜型純水装置(pH調整→脱炭酸→pH調整→逆浸透膜)に更新し、運用すれば良い。しかし、原水水質変動やイオン交換樹脂の状態(経時的な性能低下など)によって、イオン交換樹脂型純水装置と逆浸透膜型純水装置に必要な水質水量が変わること、連続計器でコロイダルシリカを監視するのは困難であることから、最適な運転方法が望まれた。
【0013】
本発明は、原水中の非溶解性シリカに応じて管理される水質制御方法を提供することを課題とする。
【0014】
本発明の一態様は、イオン交換樹脂型純水装置と逆浸透膜型純水装置とを並設したボイラ用水処理装置を用いて原水中の非溶解性シリカに応じて管理される水質制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の水質制御方法は、純水を製造する純水製造手段と、該純水製造手段からの純水が補給水として補給され、ボイラ水として貯留される給水タンクと、該給水タンクからのボイラ水が供給されるボイラとを備えるボイラ用水処理システムにおける水質制御方法において、ボイラ水の総シリカ濃度及び補給水のイオン状シリカ濃度を測定し、ボイラ水の総シリカ濃度から補給水の総シリカ濃度を算出し、補給水のイオン状シリカ濃度の測定値と補給水の総シリカ濃度の算出値とから、補給水の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度との合計値を算出し、該合計値を管理項目として純水製造手段を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様では、前記純水製造手段は、イオン交換樹脂型純水装置の系列と逆浸透膜型純水装置の系列とがそれぞれ1系列以上、並列に設けられている。
【0017】
本発明の一態様では、前記各系列の純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度を測定し、ボイラ水の総シリカ濃度の実測値、及び各純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度と各純水装置の流量比率とから、イオン交換樹脂型純水装置の処理水の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度を算出し、補給水の懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度と、イオン交換樹脂型純水装置の処理水の懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度の算出値と、各純水装置の流量比率とから、逆浸透膜型純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度の目標値を算出し、この目標値となるように逆浸透膜型純水装置の運転条件を調整する。
【0018】
本発明の一態様では、前記逆浸透膜型純水装置の処理水の総シリカ濃度を調整するために、該逆浸透膜型純水装置の回収率および給水ポンプ圧を調整する。
【0019】
なお、加えてボイラ給水のCa、Mg、Na、Cl、SO4が2μg/L未満が確保できるよう、ボイラ給水を脱炭酸後、アニオン樹脂カラムおよびカチオン樹脂カラムに通水した水を定期分析し比抵抗の測定値に基づいてボイラの濃縮倍率を調整することが好ましい。
【0020】
本発明の一態様では、補給水のイオン状シリカ濃度の測定データをサーバに蓄積し、ボイラ水のイオン状シリカ濃度に異常数値が発生した際に、その至近数値から現在数値を予想して、イオン交換樹脂型純水装置の処理水中の懸濁性シリカ濃度、コロイダルシリカ濃度を予想する。
【0021】
なお、このとき、逆浸透膜型純水装置の処理水中の懸濁性シリカ濃度、コロイダルシリカ濃度はゼロとみなす。
【0022】
本発明の一態様では、設定したボイラブロー水量ではボイラ水の総シリカ濃度が基準を維持できない場合に、それを維持するための逆浸透膜型純水装置の採水量を計算し、この採水に関わる動力増加量による損失と、ボイラブロー水量を増加させることでボイラ水中の総シリカ濃度が基準値内に維持した場合の水及び/又は熱の損失を比較して配分比率を設定する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、補給水の総シリカ濃度を一定範囲にすることができ、タービンやボイラ缶内でのシリカ析出を抑制することができる。
【0024】
本発明によると、ボイラ缶内のシリカ析出を抑制することができるので、ボイラブロー水を減らすことができ、熱損失を極力抑えることができる。
【0025】
本発明によると、イオン交換樹脂型純水装置の処理水のイオン状シリカ濃度が低い場合、逆浸透膜型純水装置の処理水総シリカ濃度も同様に低い必要がないため、スケールが析出しない範囲で回収率を上げるか、運転圧を下げるかすることで、トータルコストの抑制することができる。
【0026】
逆浸透膜型純水装置は、処理水の総シリカ濃度が低いことから、本発明によると、イオン交換樹脂型純水装置の再生ないし樹脂交換頻度を減らすことができる。
【0027】
本発明の一態様では、イオン交換樹脂型純水装置の少なくとも1系列を逆浸透膜型純水装置(pH調整→脱炭酸→pH調整→逆浸透膜)に置き換えるなどしたとき、イオン交換樹脂型純水装置と逆浸透膜型純水装置とを並列設置したボイラ水用水処理装置において、逆浸透膜型純水装置の負荷は、イオン交換樹脂型純水装置の不足分のみ補うことにより、水と熱と電力のベストマッチングな処理を行うことができる。
【0028】
例えば、ボイラ水の総シリカ濃度が上昇した場合に、イオン交換樹脂による処理が許容をオーバーしたと判断し、各純水装置の運用調整つまり逆浸透膜型純水装置への流量比を多くすることやボイラブロー水量の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施の形態に係る水質制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、
図1を参照して実施の形態について説明する。なお、本実施形態では、イオン交換樹脂型純水装置11,12が2系統設けられているが、1又は3以上であってもよい。また、逆浸透膜型純水装置系列が1系列設けられているが、2以上であってもよい。逆浸透膜型純水装置を複数系列設けるときは、(pH調整→脱炭酸→pH調整→逆浸透膜)を共通部とし、その下流にて分岐するよう構成することができる。また、逆浸透膜型純水装置系列では、逆浸透膜型純水装置が直列に2段に設置されているが、1段でもよく、3段以上設けられてもよい。
【0031】
この実施の形態では、原水として、市水、工水、井水、回収水等に必要に応じて除濁、除塩素等の前処理を施して得られる水が用いられるが、これに限定されない。
【0032】
原水槽1からの原水は送水ポンプ20により送水され、途中で配管13~15に分岐して逆浸透膜型純水装置系列とイオン交換樹脂型純水装置系列に分配される。このとき調整弁7~9によって流量比率が調整される。
【0033】
逆浸透膜型純水装置系列では配管15においてpH調整剤添加手段3から酸を添加した後、脱炭酸装置2で脱炭酸処理する。この脱炭酸装置2としては脱炭酸塔や膜脱気装置等を採用することができる。
【0034】
この脱炭酸装置2の給水のpH(pH計4で検出される。)は4.0~6.0であることが好ましい。前述の如く、脱炭酸装置2では、低pH条件下で炭酸成分をCO2ガス形態として除去するため、この点においては、給水のpHは低い方が好ましいが、過度にpHを下げるとpH調整剤によるイオン負荷(例えば、H2SO4)が後段のRO装置に負荷されるため、過度にpHを低くすると処理水の比抵抗が低くなり好ましくない。また、原水の炭酸成分及びCa濃度によっては、RO膜へのCaCO3やCaF2のスケール付着の問題もあるため、pH計4で検出されるpHが4.0~6.0特に4.5~5.5とするのが好ましい。
【0035】
脱炭酸装置2の処理水は、配管16においてpH調整剤添加手段5でアルカリを添加し、pH計6で検出されるpHが中性付近(例えば7.0~8.5)となるようにする。この水を、図示しないポンプによって第1逆浸透膜型純水装置21に供給して脱イオン処理する。
【0036】
第1逆浸透膜型純水装置21の透過水を送水ポンプ10で昇圧し、第2逆浸透膜型純水装置22に供給する。なお、以下、第1、第2逆浸透膜型純水装置21,22を第1RO装置、第2RO装置ということがある。
【0037】
なお、上記pH調整剤に用いられる酸としては、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)等が好適であり、アルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)等が好適である。
【0038】
本実施形態では、各pH調整剤添加手段3,5を各々pH計4,6の測定結果に連動させてフィードバック制御することにより、所定のpH値となるようにpH調整剤を添加する。
【0039】
各pH計4,6の測定値と、逆浸透膜型純水装置の処理水の比抵抗を測定する比抵抗計24の測定値が制御装置25に入力される。この制御装置25では、比抵抗値が所定の比抵抗値となっているか監視する。なお、比抵抗の代りに電気伝導度を測定及び監視してもよい。
【0040】
通水諸条件の変動により、最適pHが変動し、比抵抗が低下した場合には、特定のpH調整剤添加箇所においてpH設定値を上下させ、そのpH変動に応じてpH値と比抵抗との関係を調べ、最適の比抵抗が得られるように当該箇所のpH設定を変える信号を出力する。
【0041】
この実施の形態では、2段RO処理のうち、第1RO装置21の濃縮水のうち循環しない排出分は系外へ排出するが、第2RO装置22の濃縮水の排出分は、既に第1RO装置21によるRO処理で純度が高められたものであるため、水回収率の向上のために、原水槽1に返送する(図示は省略)。
【0042】
イオン交換樹脂型純水装置11,12及び第2RO装置22からの処理水が配管17~19によって混合され取出配管23から取り出され、ボイラ補給水としてボイラ水が貯留される給水タンクに送水される。
【0043】
また、この実施の形態では、イオン交換樹脂型純水装置11,12の処理水、第2RO装置22の処理水、及び取出配管23内の処理水のイオン状シリカ濃度及び流量をそれぞれ測定するようにシリカ計S及び流量計FIが設置されており、これらのシリカ計S及び流量計FIの測定データが制御装置25に入力されている。
【0044】
制御装置25は、これらのデータと、ボイラ水の総シリカ濃度データとに基づいて、調整弁7~9及び送水ポンプ20,10を制御し、取出配管23から目的の基準値内の総シリカ濃度の処理水を補給水としてボイラ水の給水タンクに供給する。
【0045】
図1の処理水取出配管23からの処理水は、補給水としてボイラ装置の給水タンクに導入される。ボイラシステムの一例について
図4を参照して説明する。。
【0046】
給水タンク41に対し純水よりなる補給水と、配管53からの凝縮水(復水)とが導入される。
【0047】
この給水タンク41内の水がポンプ42、給水配管44を介してボイラ43へ供給されると共に水処理薬剤もポンプ42の後方で供給される。ただし給水タンク41からポンプ42の間で水処理薬剤を供給することもできる。
【0048】
ボイラ43からブロー配管46が分岐している。
【0049】
ボイラ43からの蒸気は、配管49を介して蒸気需要先たる各種蒸気機器50に供給される。蒸気機器50から排出される少なくとも一部の蒸気は、凝縮器51にて凝縮されて凝縮水となり、配管53を介して給水タンク41へ回収される。なお、蒸気機器50にて蒸気が十分に凝縮するときには、凝縮器51は省略されてもよい。
【0050】
ブロー配管46にはイオン状シリカ濃度を測定するようにシリカ計Sが設置されており、イオン交換樹脂型純水装置11,12及び第2RO装置22からの配管17~19、および取出配管23に設置されたシリカ計Sと同様にシリカ計Sの測定データが制御装置25に送信されている。
【0051】
上述の通り、給水タンク41内の水は、ボイラ給水としてボイラ43に供給される。ボイラ43で発生した蒸気は、タービン等の蒸気機器50を通った後、凝縮器51で凝縮して復水となり、給水タンク41に戻る。ボイラ43からは、一定量のブロー水が放出される。従って、補給水中の総シリカ濃度はボイラ水中のシリカ濃度に大きく影響する。
【0052】
本発明では、逆浸透膜型純水装置21,22の運転条件を調整することにより、目的の基準値内の総シリカ濃度のボイラ水となる様にボイラ43に補給水を送ることができる。
【0053】
本実施の形態において、例えば、イオン交換樹脂型純水装置11,12から十分に総シリカ濃度の低い処理水が得られる場合は、逆浸透膜型純水装置21,22への原水供給量を少なくする。
【0054】
逆にイオン交換樹脂型純水装置11,12からの処理水中の総シリカ濃度が高い場合は、逆浸透膜型純水装置21,22への原水供給量を増加させ、これによりボイラ水の総シリカ濃度を基準値内(上限値以下)とする。
【0055】
本実施の形態では、ボイラに供給する処理水流量(補給水量)と該補給水中の総シリカ濃度の目標値をボイラ水の状況に応じて決定する。すなわち、ボイラ水の総シリカ濃度を基準値内とするのに必要な逆浸透膜型純水装置21,22からの処理水総シリカ濃度および水量を設定する。
【0056】
ボイラ内に持ち込まれた懸濁性シリカ及びコロイダルシリカはイオン状シリカになることから、ボイラ水側にイオン状シリカ濃度の連続測定器を設置して測定することで総シリカ濃度が測定される。
図4のように復水があるときは復水のイオン状シリカ濃度をボイラ水の総シリカ濃度から計算する。その水質データや水量比率、ボイラ圧力等のデータから、補給水中の懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度とイオン状シリカ濃度の合計つまり総シリカ濃度を算出する。
【0057】
ボイラ水の総シリカ濃度(=イオン状シリカ濃度)と補給水のイオン状シリカ濃度をシリカ計などの連続測定器、または手分析で測定して測定データをサーバに蓄積し、ボイラ水の総シリカ濃度とボイラ圧力、ドレン回収率、ブロー率から補給水の総シリカ濃度(イオン状シリカ濃度、懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度の和)を求め、これと補給水中のイオン状シリカ濃度の測定値から、下記式(1),(2)により補給水中の懸濁性シリカ濃度及びコロイダルシリカ濃度を予測値として求める。
【0058】
Ct=X*((b+α(1-b)) ………(1)
Ct=Ds*r+(Ms+Mc)*(1-r) ………(2)
但し Mc:補給水中の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度
X :ボイラ水中のイオン状シリカ濃度(=総シリカ濃度)(実測)
Ds:復水中のイオン状シリカ濃度(=X*α)
Ms:補給水中のイオン状シリカ濃度(実測)
Ct:給水中のイオン状シリカ濃度と懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度の和(=総シリカ濃度)
α :シリカの揮発度(分配比
図2参照)
b :ブロー率(=B/M,0≦b≦1)。ただし、B:ブロー量(t/h)、M:給水量(t/h)
r :復水回収率=蒸気復水の給水への回収量(t/h)/給水量(t/h)
【0059】
前述の通り、この実施の形態では、逆浸透膜型純水装置21,22の運転条件を調整する。例えば、イオン交換樹脂型純水装置(以下、IEと記載することがある。)11,12で十分に総シリカ濃度が低減される場合は逆浸透膜型純水装置21,22の負荷は下げて運転し、一方、ボイラ水のイオン状シリカ濃度(=総シリカ濃度)に異常数値が発生し
た、つまり基準値(上限値)を超えた場合は、イオン交換樹脂型純水装置11,12ではシリカ濃度の低減が不十分と判断し、逆浸透膜型純水装置21,22の負荷を上げて運転することになる。
【0060】
このとき、逆浸透膜型純水装置21,22の処理水の総シリカ濃度および水量をどの程度にすれば、ボイラ水の総シリカ濃度が基準値内に収まるか求める必要がある。
【0061】
本実施の形態では、ボイラ水の総シリカ濃度の実測値と、イオン交換樹脂型純水装置と逆浸透膜型純水装置の各処理水に設置したイオン状シリカ濃度の連続計器データと、各純水装置の流量比率とから、イオン交換樹脂型純水装置の処理水のコロイダルシリカ濃度を算出し、逆浸透膜型純水装置の処理水におけるイオン状シリカ濃度の条件を算出する。なお、併用する逆浸透膜型純水装置からの懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度は0として計算する。
【0062】
・イオン交換純水装置の総シリカ濃度:
T-SiO2IE
=[SiO2濃度(イオン状)(実測)]+SiO2濃度(懸濁・コロイダル)]
・逆浸透膜型純水装置の総シリカ濃度:
T-SiO2RO
=[SiO2濃度(イオン状)(実測)]+[SiO2濃度(懸濁・コロイダル)]
=SiO2濃度(イオン状)(実測)]
・イオン交換純水装置の系列の総流量の、補給水流量に対する比:β
・逆浸透膜型純水装置の系列の総流量の、補給水流量に対する比:1-β
とすると、逆浸透膜型純水装置の処理水の総シリカ濃度の設定値は以下の式で求めることができる。
【0063】
{T-SiO2RO×(1-β)+T-SiO2IE×β}×f(ボイラ圧、ブロー率、ドレン回収率、給水量、復水のイオン状シリカ濃度実測)≦(ボイラ水の総シリカ濃度基準値)
【実施例0064】
図1に示す純水製造システムが下記の通常運転状態で運転されている場合において、処理水質が後述のように悪化したときの逆浸透膜型純水装置の運転条件変更例を説明する。
【0065】
[通常運転状態]
イオン交換純水装置処理水:イオン状シリカ濃度0.02ppm以下、採水量100t/h
逆浸透膜型純水装置処理水:イオン状シリカ濃度0.02ppm以下、採水量30t/h
ボイラ水:総シリカ濃度0.2ppm
【0066】
[水質悪化時]
イオン交換純水装置処理水:イオン状シリカ濃度0.02ppm以下、採水量100t/h
逆浸透膜型純水装置処理水:イオン状シリカ濃度0.02ppm以下、採水量30t/h
ボイラ水:総シリカ濃度0.6ppm
【0067】
<純水製造装置からの補給水の総シリカ濃度の目標値の変更>
ボイラ水の水質の測定データをサーバに取り込み、流量配分と水質とボイラ圧力とボイラブロー水量、給水量、復水回収量とからイオン交換樹脂純水装置の懸濁性シリカ濃度とコロイダルシリカ濃度の合算値を予想して、ボイラ水中の総シリカ濃度の目標値を演算して、これが基準値を満たす最小の逆浸透膜型純水装置への採水量を予想して運用した。
【0068】
[変更後の条件]
イオン交換純水装置処理水:イオン状シリカ濃度0.02ppm以下、採水量30t/h
逆浸透膜型純水装置処理水:イオン状シリカ濃度0.02ppm以下、採水量100t/h
ボイラ水:総シリカ濃度0.2ppm
【0069】
この実施例で用いたRO装置に総シリカ濃度43mg/Lの給水を供給したときの給水圧力とシリカ除去率の関係を
図3に示す。
図3の通り、運転圧によりシリカ除去率が変化する。