(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023101248
(43)【公開日】2023-07-20
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 7/00 20060101AFI20230712BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20230712BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20230712BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20230712BHJP
G03G 15/22 20060101ALI20230712BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G03G7/00 B
G03G9/09
G03G7/00 M
G03G15/16 101
G03G15/01 J
G03G15/22 109
B41M5/52 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001755
(22)【出願日】2022-01-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】澤田 豊志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一己
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 克宣
【テーマコード(参考)】
2H078
2H111
2H200
2H300
2H500
【Fターム(参考)】
2H078AA20
2H078BB12
2H078DD39
2H078DD45
2H078DD51
2H078FF59
2H111CA03
2H111CA24
2H111CA30
2H200FA16
2H200GA07
2H200GA09
2H200JA07
2H200MA02
2H200MA20
2H200MC08
2H200MC18
2H300ED01
2H300EF01
2H300EJ49
2H300EK03
2H300GG45
2H300MM06
2H300MM17
2H300NN01
2H300NN04
2H500AA06
2H500AA13
2H500AA14
2H500CA29
2H500CB05
2H500EA14A
2H500FA09
2H500FA11
2H500FA15
2H500FA20
(57)【要約】
【課題】布媒体にもトナー画像を定着させることができ、耐洗濯性を良好にでき、濃色生地に対しても十分な彩度が得られる画像形成方法を提供する。
【解決手段】受像基材に撥水成分を含む撥水層を形成する撥水層形成工程と、転写媒体にトナー画像を形成するトナー画像形成工程と、前記撥水層が形成された前記受像基材の面に前記トナー画像を熱転写する熱転写工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受像基材に撥水成分を含む撥水層を形成する撥水層形成工程と、
転写媒体にトナー画像を形成するトナー画像形成工程と、
前記撥水層が形成された前記受像基材の面に前記トナー画像を熱転写する熱転写工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記熱転写工程は、前記撥水層が形成された前記受像基材の面と、前記トナー画像が形成された前記転写媒体の面とが対向するように前記受像基材と前記転写媒体とを重ね、加熱及び加圧を行い、前記転写媒体を剥離させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記トナー画像形成工程は、前記転写媒体にトナーの層を転写した後、熱定着を行い、前記転写媒体にトナー画像を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記撥水成分は、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記受像基材は、繊維からなることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記受像基材は、ポリエステル繊維及び綿繊維から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記トナー画像形成工程は、白トナーの層を前記転写媒体上の最上層に形成し、
前記熱転写工程は、前記受像基材上に前記トナー画像を熱転写する際に、前記白トナーの層が前記受像基材上のトナー画像において最下層となるように熱転写を行うことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記トナー画像形成工程は、カラートナーの層と、該カラートナーの層上に白トナーの層を形成し、
前記白トナーの1/2流出温度UT1/2は、前記カラートナーの1/2流出温度CT1/2よりも高いことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成方法として、静電潜像を現像剤により現像して可視画像を形成する電子写真方式が知られている。電子写真方式では、光導電性物質を含む静電潜像担持体(感光体ともいう)上に静電潜像を形成し、トナーを含む現像剤で静電潜像を現像してトナー画像を形成する。次いで、紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱及び加圧により定着して定着画像を形成する。電子写真方式によりフルカラー画像を形成するには、プロセスカラーとも称するシアン、マゼンタ、イエロートナー、ブラックトナーを組み合わせたトナーセットを用いることが一般的である。
【0003】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置が広く普及するに従い、その印刷物の用途も多種多様に広がってきている。特にオーダーメイドデザインの一般消費財分野などでは、紙媒体への印刷を目的とした従来の電子写真用トナーでは印刷できない(定着できない)材料への電子写真法による印刷へのニーズが高まっている。具体的には、スポーツチームのユニホームやシューズ、バッグ等の布生地媒体への印刷ニーズが高まっている。
【0004】
特許文献1では、画像転写シートにフルカラートナー画像を形成し、再帰反射性を有する基材にフルカラートナー画像を転写することが開示されている。再帰反射性を有する基材の起草を構成する材料としては、例えば、織物、編物、不織布などが挙げられている。また、特許文献1では、画像転写シートにシリコーン樹脂等を塗布して高離型性にすることが開示されている。この他にも、画像転写シートに熱可塑性樹脂層を形成し、この熱可塑性樹脂とともにフルカラートナー画像を基材に転写することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
布生地媒体への印刷画像には、凹凸の多い布繊維に定着可能でかつ洗濯などで剥がれない強固な接着性を有すること、さらに、さまざまな色を有する布に対しても画像の色味を損なわないことが必要になる。特に濃色の布地に印刷するにあたっては、濃色生地の色を隠ぺいし、画像の色味を損なわないことが求められる。こうした課題をクリアした理想的な状態を作るためには、画像の層構成、媒体の種類、画像手段などの選択が非常に重要となる。しかし、従来技術においては、実用的であり、更には作製方法が複雑にならずにこうした課題をクリアする布への画像の画像形成手段はいまだ達成されておらず、実用に耐える品質のものは提供されていない。
【0006】
そこで本発明は、布媒体にもトナー画像を定着させることができ、耐洗濯性を良好にでき、濃色生地に対しても十分な彩度が得られる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成方法は、受像基材に撥水成分を含む撥水層を形成する撥水層形成工程と、転写媒体にトナー画像を形成するトナー画像形成工程と、前記撥水層が形成された前記受像基材の面に前記トナー画像を熱転写する熱転写工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布媒体にもトナー画像を定着させることができ、耐洗濯性を良好にでき、濃色生地に対しても十分な彩度が得られる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】フローテスター測定におけるストローク変位を示す図である。
【
図2】本発明に係る画像形成方法の一例を説明するための概略図である。
【
図3】本発明に係る画像形成方法の他の例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、受像基材に撥水成分を含む撥水層を形成する撥水層形成工程と、転写媒体にトナー画像を形成するトナー画像形成工程と、前記撥水層が形成された前記受像基材の面に前記トナー画像を熱転写する熱転写工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明では、撥水成分を含む撥水層が形成された受像基材に対して、転写媒体に形成されたトナー画像を熱転写するため、布媒体にもトナー画像を定着させることができる。また、例えば繊維を含む受像基材であっても繊維に浸透しないため、にじみを防止でき、高精細な画像形成が可能になる。本発明の画像形成方法では、トナー画像が繊維に浸透することを防ぐことができるため、例えばインクジェット方式により布媒体に対して画像を形成する場合に比べて画像のにじみを抑えることができる。
【0013】
トナーを布等の受像基材に定着させる場合、布の表面には繊維による凹凸があり、トナーが濡れ広がりにくくなる。従来技術では、布上にトナーを濡れ広がらせることができておらず、生地を覆うことができていない領域が発生しており、画像の隠蔽力が不十分であり、布上に高精細なトナー画像を形成することができていなかった。また、従来技術では、布上にトナーを濡れ広がらせることができていないため、堅牢性を有する画像にならず、例えば洗濯すると、トナー画像が容易に剥がれてしまっていた。
【0014】
一方、本発明では布等の受像基材にトナー画像を形成できるとともに、良好な耐洗濯性が得られる。また、本発明では、布上にトナーを濡れ広がらせることができるため、トナーが生地を覆うことができていない領域を抑制でき、生地の隠蔽性を向上でき、濃色生地に対しても十分な彩度を得ることができる。
【0015】
<撥水層形成工程>
撥水層形成工程では、受像基材に撥水成分を含む撥水層を形成する。
撥水層の形成方法としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、撥水成分を塗布する方法が挙げられる。また、撥水層を形成する領域は、適宜変更可能であり、受像基材の全面であってもよいし、一部であってもよい。
【0016】
受像基材としては、適宜選択することができ、例えば、綿、ポリエステル、絹などの人工及び天然の繊維からなるいわゆる布生地全般を用いることができる。本発明における受像基材は、綿、ポリエステル、絹などの人工及び天然の繊維からなる、いわゆる布生地全般が含まれる。
【0017】
受像基材としては、繊維からなることが好ましく、ポリエステル繊維、綿繊維から選ばれることが好ましい。これらの繊維である場合、トナーとの親和性、熱定着時にかかる熱に対する耐熱性が高いという利点がある。
【0018】
撥水成分としては、適宜選択することができ、例えば布に塗布可能な撥水剤等を用いることができる。撥水成分としては、例えば、シリコーン樹脂を主成分として含有する撥水剤、フッ素樹脂を主成分として含有する撥水剤いずれのものも用いることができる。一般的には「衣装用防水スプレー」、「靴用防水スプレー」などとして市販されている防水スプレーを入手し用いることができる。
【0019】
撥水成分としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が好ましく用いられる。この場合、繊維への親和性を高め、熱溶融したトナーが繊維上で濡れ広がることを促進させることができる。
【0020】
発明者らは、布に対してトナー画像を形成する試行を繰り返し行い、トナー画像の観察結果から、撥水成分を布などの受像基材に塗布することで、受像基材に均一なトナー濡れ性が付与されることを見出した。撥水成分を塗布することで、同じトナー付着量でもトナー付着むら、画像欠陥の発生が顕著に減少することがわかった。また、撥水成分を塗布することで、受像基材として布を用いた場合に、繊維の露出が顕著に減少し、トナーによる受像基材表面の隠蔽度合が高くなることがわかった。
【0021】
撥水成分の塗布量は、適宜選択することができ、例えば撥水剤の効果が発揮される量でよい。また、撥水成分の塗布方法としては、適宜選択することができ、例えば、10cm程度の距離から10秒程度、受像基材の表面にまんべんなくスプレー噴霧する方法が挙げられる。
【0022】
<トナー画像形成工程>
トナー画像形成工程は、転写媒体にトナー画像を形成する。トナー画像の形成方法としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、転写媒体にトナーの層を転写した後、熱定着を行い、転写媒体にトナー画像を形成する方法が挙げられる。トナーの層は単層であってもよいし、複数の層であってもよい。なお、トナー画像形成工程で用いられるトナーの詳細は後述する。
【0023】
本発明では、転写媒体にトナー画像を形成する際に、下引き層を形成してもよい。下引き層により、受像基材の生地色を隠蔽することができ、受像基材に形成された画像の彩度を向上させることができる。また、受像基材に撥水層を形成し、かつ、下引き層を形成することにより、耐洗濯性を向上させることができる。下引き層用のトナーとしては、適宜選択することができ、例えば白トナーを用いることができる。なお、下引き層を隠蔽層などと称してもよい。
【0024】
本発明では、例えば白トナーの層を転写媒体上の最上層に形成することが好ましい。この場合、熱転写工程では、受像基材上にトナー画像を熱転写する際に、白トナーの層が受像基材上のトナー画像において最下層となるように熱転写を行うことが好ましい。このようにすることで、受像基材において、カラートナーの画像の下に白トナーの画像が形成され、白トナーの画像が下引き層として機能できる。下引き層を設けることで、隠蔽性が向上し、更に高精細な画像が得られる。
【0025】
白トナーによる生地色の隠蔽性は、トナー付着量とトナーの濡れ広がり性の影響を受ける。本発明では、受像基材に撥水層を形成しているため、白トナー等のトナー層を形成した場合に、隠蔽性が向上し、更に高精細な画像が得られる。これは、トナーが受像基材上にまんべんなく、よく濡れて広がることによるものと考えられる。このようなことから、本発明ではトナー付着量を上げることなく、画像の画質向上(彩度向上)を図ることができる。
【0026】
トナー画像形成工程を行う装置としては、適宜選択することができ、公知の画像形成装置(印刷装置、記録装置、複写機などと称されてもよい)を用いることができる。例えば、静電潜像担持体、露光手段、帯電手段、現像手段、転写手段、定着手段等を備える装置が挙げられる。例えば、リコー社製のRICOH Pro C7200S等を用いることができる。トナー画像形成工程を行う装置では、例えば、いずれかの色ステーションに下引き層用トナー及び現像剤をセットできるよう改良してもよい。
【0027】
転写媒体としては、適宜選択することができ、例えば、トナー画像形成工程及び熱転写工程に適応できる適度な定着性と離型性とを有する表面処理が行われた転写紙、剥離紙などを用いることができる。例えば、パイオテック社製のWOWライト8.0、WOWiシート7A、WOWmシート7、ユーロポート社製のCLAPp-MULTなどを用いることができる。
【0028】
<熱転写工程>
熱転写工程は、撥水層が形成された受像基材の面にトナー画像を熱転写する。
熱転写工程としては、適宜選択することができる。例えば、撥水層が形成された受像基材の面と、トナー画像が形成された転写媒体の面とが対向するように受像基材と転写媒体とを重ね、加熱及び加圧を行い、転写媒体を剥離させる方法が挙げられる。
【0029】
熱転写工程では、例えば、熱プレス定着機を用いて熱転写を行う。
熱プレス定着機としては、適宜選択することができ、例えば、トナーの受像基材への定着に必要な温度及び圧力を与えることができるものであればよい。例えば、パイオテック社製のModel HTP234PS1、Model 728、Model 201、ユーロポート社製のヘラクレス PH-4634、ヘラクレスワイド PH-5040、ガイア PGA-5040、ゼウス PZ-130110Dなどを用いることができる。また、熱プレス機の代わりにアイロンを用いてもよい。
【0030】
熱転写工程における熱転写温度PTとしては、適宜選択することができる。
例えば、下引き層用のトナーを用いる場合、PTが下記式(1)を満たすことが好ましい。この場合、例えば下引き層用のトナーが受像基材の内部にまで浸み込み過ぎることなく表面にとどまり、良好な隠蔽性と接着性を示すことができる。
UTfb<PT≦UT1/2 ・・・ 式(1)
【0031】
上記式(1)において、UTfbは下引き層を形成するトナーの流出開始温度を表す。また、UT1/2は下引き層を形成するトナーの1/2流出温度を表す。なお、「U」とあるのは、下引き層であることを示すために便宜的に付したものであり、Underといった意味合いで用いている。
【0032】
流出開始温度及び1/2流出温度の測定は、例えば以下のようにして行う。
フローテスター(島津製作所製CFT-500D)を用い、1.0gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1.0mm、長さ1.0mmのノズルから押出す。これにより、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量(ストローク)についてのプロットを得る。プロットの一例を
図1に示す。このプロットから
図1に示すような二点をそれぞれ流出開始温度T
fb、1/2流出温度T
1/2とする。なお、
図1に示す例は、下引き層用のトナーについて測定した場合の例であり、流出開始温度T
fbをUT
fbで示しており、1/2流出温度T
1/2をUT
1/2で示している。
【0033】
図1について更に詳細に説明する。得られたプロットでは、プランジャー降下量(ストローク)の変化量がゼロで安定した領域から増加に転ずる変曲点を流出開始温度T
fbとしている。図に示す例の場合、ストロークの変化量が約65℃~約105℃の間でゼロとなっており、約105℃近辺からストロークが増加に転じている。そのため、この例では、流出開始温度T
fbは約105℃であるといえる。また、得られたプロットでは、試料の半量が流出した温度を1/2流出温度としている。図に示す例の場合、1/2流出温度T
1/2は約145℃であるといえる。
【0034】
熱転写工程では、例えば受像基材と転写媒体とを重ね、加熱及び加圧を行う。この際の加熱及び加圧の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。例えば、受像基材の熱伝導性、厚み、表面粗さ等を考慮し、圧力は100g/cm2~800g/cm2であることが好ましく、時間は5秒~60秒であることが好ましい。
【0035】
<画像形成の一例>
ここで、本発明の一例について、
図2を用いて説明する。
図2(A)では、転写媒体10にカラートナー層12を形成する。次いで、転写媒体10に対して熱定着を行い、カラートナー層12を転写媒体10に定着させる。
図2(B)では、受像基材20に撥水成分を塗布し、撥水層22を形成する。
図2(B)を行う順番は、適宜変更することができ、
図2(A)の後でもよいし、
図2(A)の前でもよい。
図2(C)では、撥水層22が形成された受像基材20の面と、トナー画像が形成された転写媒体10の面とが対向するように受像基材20と転写媒体10とを重ね、加熱及び加圧を行う。次いで、転写媒体10を剥離させる
この結果、
図2(D)に示すように、受像基材20上にトナー画像を形成することができる。
【0036】
本発明では、トナー画像は複数の層にしてもよく、例えば、カラートナーによる画像と下引き層用トナーによる画像を形成してもよい。下引き層用のトナーとしては、例えば白トナー等を用いることができる。
【0037】
本発明の他の例について、
図3を用いて説明する。
図3に示す例は、白トナー層(下引き層)を形成する場合の例である。下引き層を形成することにより、受像基材の隠蔽性が向上し、受像基材上の画像の彩度を向上させることができる。
図3(A)では、転写媒体10にカラートナー層12を形成する。
図3(B)では、カラートナー層12の上に、白トナー層14を形成する。
次いで、転写媒体10に対して熱定着を行い、カラートナー層12及び白トナー層14を転写媒体10に定着させる。
図3(C)では、受像基材20に撥水成分を塗布し、撥水層22を形成する。
図3(C)を行う順番は、適宜変更することができ、
図3(A)や
図3(B)の後でもよいし、
図3(A)や
図3(B)の前でもよい。
図3(D)では、撥水層22が形成された受像基材20の面と、トナー画像が形成された転写媒体10の面とが対向するように受像基材20と転写媒体10とを重ね、加熱及び加圧を行う。次いで、転写媒体10を剥離させる
この結果、
図3(E)に示すように、受像基材20上にトナー画像を形成することができる。
【0038】
<トナー>
トナー画像形成工程で用いられるトナーとしては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。トナー画像形成工程では、転写媒体にトナーの層を転写し、転写媒体にトナーの層を定着させることで転写媒体にトナー画像を形成することができる。トナーの層としては、適宜選択することができ、例えば、カラートナーによる層と、カラートナーによる層上の下引き層とを設けることが挙げられる。
【0039】
トナー画像形成工程で用いられるカラートナーとしては、特に制限されるものではなく、例えば、電子写真プリンターで印刷に用いられるプロセスカラートナーを用いることができる。また、1色を用いてもよいし、複数色を用いてもよい。カラートナーをプロセスカラートナーなどと称することがある。
【0040】
下引き層に用いられるトナーとしては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。下引き層に用いられるトナーを下引き層用トナーなどと称することがある。なお、下引き層と称する理由は、転写媒体に対しては下引き層が最上層に形成されることが想定され、転写媒体上のトナー画像が受像基材に熱転写される際に、下引き層がカラートナーによる層よりも下になることが想定されることによる。
【0041】
下引き層用トナーとしては、カラートナーと同様の材料を使用したものを用いることができる。下引き層用トナーの色についても何色にしてもよいが、顔料等の着色剤を加えない無色透明トナーが好ましく、もしくは着色剤として白色顔料を用いた白トナーが好ましい。特に白トナーを用いることが好ましく、白トナーを用いることにより、受像基材が黒や紺などの濃色である場合、受像基材の色味を隠蔽することができ、カラートナーの色味が損なわれることを防止できる。
【0042】
下引き層用トナーの1/2流出温度は、カラートナーの1/2流出温度よりも高いことが好ましい。この場合、下引き層用トナーがカラートナーと良好に接着し、かつ下引き層用トナーとカラートナーとが混色することを防止できる。
【0043】
次に、トナーを構成する材料について述べる。以下の説明は、特に断りのない限り、下引き層用トナーとカラートナーに共通する説明である。
【0044】
<<結着樹脂>>
トナーに用いられる結着樹脂(定着用樹脂などと称してもよい)は、従来公知の樹脂を使用することができる。例えば、スチレン、ポリ-α-スチルスチレン、スチレン-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂などが挙げられる。また、これら樹脂の製造方法も特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合いずれも使用できる。
【0045】
本発明においては結着樹脂(定着用樹脂)としてポリエステル樹脂を含有することが好ましく、特にポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。ポリエステル樹脂は一般的に他の樹脂に比べ、耐熱保存性を維持したまま低温定着が可能であるため、本発明には適した結着樹脂である。
【0046】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られる。使用されるアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1、4-ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン、およびビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
【0047】
また、カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0048】
<<離型剤>>
トナーに用いられる離型剤としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。また1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
離型剤としては、例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、及びこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物などの脂肪族炭化水素、牛脂、魚油などの動物油、やし油、大豆油、菜種油、米ぬかワックス、カルナウバワックスなどの植物油、モンタンワックスなど高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸、脂肪酸アマイド、脂肪酸ビスアマイド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛などの金属石鹸、脂肪酸エステル、ポリフッ化ビニリデンなどが使用できる。
【0050】
<<着色剤>>
トナーに用いられる着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される着色剤を適宜選択して使用することができる。
【0051】
ブラックトナーとしては、例えば、カーボンブラック単独もしくはカーボンブラックを主成分として銅フタロシアニンなどを混合し、色相及び明度を調整したものが好ましい。
【0052】
シアントナーとしては、例えば、ピグメントブルー15:3である銅フタロシアニン、もしくは着色剤にアルミフタロシアニンを混合したものが好ましい。
【0053】
マゼンタトナーとしては、例えば、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド81、ピグメントレッド122、ピグメントレッド269を単独、もしくは混合したもの等を用いることができる。
【0054】
イエロートナーとしては、例えば、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185を単独もしくは混合したもの等を用いることができる。彩度、保存性の観点から、ピグメントイエロー185単独、もしくはピグメントイエロー185とピグメントイエロー74を混合したものが好ましい。
【0055】
白トナーに用いられる白色顔料としては、適宜選択でき、例えば、二酸化チタンにケイ素、ジルコニア、アルミニウム、ポリオールなどの表面処理を施したもの等を用いることができる。
【0056】
グリーントナーとしては、例えば、ピグメントグリーン7等を用いることができるが、安全面に留意する必要がある。
【0057】
ブルートナーとしては、例えば、ピグメントブルー15:1やピグメントバイオレット23等が挙げられる。
【0058】
<<帯電制御剤>>
トナーには帯電制御剤(CCA)を含有させてもよい。
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類等が挙げられる。制限されるものではないが、例えばサリチル酸ジルコニウムが好ましく用いられる。これらを単独で或いは2種類以上を組み合せて用いることができる。
【0059】
<<外添剤>>
トナーに外添剤を用いてもよく、外添剤としては例えば無機微粒子を用いることができる。外添用の無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、けい砂、クレー、雲母、けい灰石、珪藻土、酸化クロム、酸化セリウム、べんがら、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられる。特にシリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましい。
【0060】
また、無機微粒子は疎水化処理剤により表面処理されたものを使用しても良い。疎水化処理剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤などが好ましい表面処理剤として挙げられる。また、シリコーンオイルを疎水化処理剤として用いても十分な効果が得られる。
【0061】
<現像剤>
トナー画像形成工程では、トナーを現像剤として用いる一成分現像方式、トナーをキャリアと混合して二成分現像剤として用いる二成分現像方式のいずれも用いることができる。
【0062】
二成分現像剤方式を用いる場合、磁性キャリアに用いる磁性体微粒子としては、例えばマグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子等を使用できる。その形状は粒状、球状、針状のいずれであってもよい。特に高磁化を要する場合は鉄等の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトを用いることが好ましい。
【0063】
強磁性微粒子の種類及び含有量を選択することにより所望の磁化を有する樹脂キャリアを使用することもできる。この時のキャリアの磁気特性としては、例えば1,000エルステッドにおける磁化の強さが30~150emu/gであることが好ましい。
【0064】
本発明に用いられるキャリアは、例えば、磁性体微粒子と絶縁性バインダー樹脂との溶融混練物をスプレードライヤーで噴霧して製造してもよい。この他にも、磁性体微粒子の存在下、水性媒体中でモノマーないしプレポリマーを反応、硬化させ、縮合型バインダー中に磁性体微粒子が分散されたキャリアを製造してもよい。また、磁性キャリアの表面に正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を固着させたり、樹脂をコーティングしたりして帯電性を制御してもよい。
【0065】
磁性体微粒子表面のコート材(樹脂)としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。また、正または負帯電性の微粒子または導電性微粒子を含んでコーティングすることができる。この場合に用いる樹脂としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0066】
<トナーの製造方法>
本発明に用いられるトナーの製造方法としては、特に制限されず、適宜選択することができる。以下、一例を説明する。
まず、結着樹脂、着色剤、離径剤、更に必要に応じて帯電制御剤を組合せてヘンシェルミキサー、スーパーミキサーの如き混合機により十分混合する。次いで、加熱ロール、ニーダ、エクストルーダーの如き熱溶融混練機を用いて溶融混練して素材類を十分に混合せしめた後、冷却固化後、微粉砕及び分級を行ってトナーを得る。
【0067】
この時の粉砕方法としては、例えば、高速気流中にトナーを包含させ、衝突板にトナーを衝突させそのエネルギーで粉砕するジェットミル方式が挙げられる。この他にも、トナー粒子同士を気流中で衝突させる粒子間衝突方式が挙げられる。更にこの他にも、高速に回転したローターと狭いギャップ間にトナーを供給し粉砕する機械式粉砕法等が使用できる。
【0068】
また、トナーの製造方法は上記に限られない。トナー材料を有機溶媒相に溶解または分散させた油相を、水系媒体相中に分散させ、樹脂の反応を行った後、脱溶剤し、濾過と洗浄、乾燥することにより、トナーの母体粒子を製造する溶解懸濁法も可能である。
【0069】
(トナー収容ユニット)
トナー画像形成工程では、トナー収容ユニットを用いてもよい。本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジ等があげられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段の中から選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。トナー収容ユニットを用いることで、良好な画像形成を行うことができる。
【実施例0070】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、以下の記載中の「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0071】
(トナーの作製)
<白トナー1の製造例>
[トナー原材料]
・ポリエステル樹脂RN-290(花王社製) 94.7重量部
・カルナウバワックスWA-05(セラリカ野田社製) 5.3重量部
・サリチル酸ジルコニウム(CCA)TN-105(保土谷化学社製) 0.5重量部
・酸化チタン白顔料PF-739(石原産業社製) 60重量部
【0072】
上記のトナー原材料を、へンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、一軸混練機(Buss製、コニーダ混練機)で100~130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物を室温まで冷却後、ロートプレックスにて200~300μmに粗粉砕した。次いで、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製、100AFG)を用いて所定の個数平均粒径分布となるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した。その後、気流分級機(株式会社マツボー製、EJ-LABO)で、所定の個数平均粒径分布となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100部に対し、添加剤(HDK-2000、クラリアント株式会社製)3.0部をヘンシェルミキサーで撹拌混合し、[白トナー1]を作成した。
【0073】
<カラートナー1の製造例>
[トナー原材料]
・ポリエステル樹脂RN-290(花王社製) 94.7重量部
・カルナウバワックスWA-05(セラリカ野田社製) 5.3重量部
・サリチル酸ジルコニウム(CCA)TN-105(保土谷化学社製) 0.1重量部
・銅フタロシアニンシアン顔料FG-7351(東洋インキ社製) 10重量部
【0074】
上記のトナー原材料に変更した以外は、[白トナー1]と同様にして[カラートナー1]を製造した。
【0075】
<カラートナー2の製造例>
[トナー原材料]
・ポリエステル樹脂RN-290(花王社製) 94.7重量部
・カルナウバワックスWA-05(セラリカ野田社製) 5.3重量部
・サリチル酸ジルコニウム(CCA)TN-105(保土谷化学社製) 0.5重量部
・銅フタロシアニンシアン顔料FG-7351(東洋インキ社製) 10重量部
【0076】
上記のトナー原材料に変更した以外は、[白トナー1]と同様にして[カラートナー2]を製造した。
【0077】
(二成分現像剤の製造例)
<キャリアの作製>
・シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコ-ン) 100重量部
・トルエン 100重量部
・γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 5重量部
・カーボンブラック 10重量部
【0078】
上記混合物をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。このコート層形成液を、芯材として重量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.20μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布・乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて、180℃/2時間焼成し、[キャリアA]を得た。
【0079】
<二成分現像剤の作製>
作製した[白トナー1]、[カラートナー1]、[カラートナー2]と、[キャリアA]とを用い、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)により48rpmで5分間均一混合し帯電させ、それぞれ二成分現像剤を作製した。なお、トナーとキャリアの混合比率は、評価機の初期現像剤のトナー濃度(7質量%)に合わせて混合した。
【0080】
(測定)
作製したトナーについて、以下のようにして流出開始温度及び1/2流出温度を測定した。
フローテスター(島津製作所製CFT-500D)を用い、1.0gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1.0mm、長さ1.0mmのノズルから押出した。これにより、
図1に示すような、温度に対するフローテスターのプランジャー降下量(ストローク)についてのプロットを得た。このプロットから、白トナーとカラートナーの流出開始温度T
fb、1/2流出温度T
1/2を求めた。
測定結果を表1に示す。なお、表1中、それぞれ以下を表す。
UT
1/2:白トナー(下引き層用トナー)の1/2流出温度
UT
fb:白トナー(下引き層用トナー)の流出開始温度
CT
1/2:カラートナーの1/2流出温度
CT
fb:カラートナーの流出開始温度
【0081】
(評価)
得られた現像剤を用いて画像形成を行い、評価を行った。評価結果を表2に示す。評価方法、条件は下記の通りである。
【0082】
<評価画像の作製>
<<実施例1>>
[カラートナー1]を用いた現像剤をRICOH Pro C7200S(リコー社製)のシアンステーションにセットした。トナー付着量が0.40mg/cm2になるようプロセスコントローラーで現像・転写条件を調整し、転写紙(パイオテック社製WOWライト8.0)上にシアン未定着ベタ画像を出力した。
[白トナー1]を用いた現像剤をRICOH Pro C7200S(リコー社製)の5ステーション目にセットした。トナー付着量が1.0mg/cm2になるようプロセスコントローラーで現像・転写条件を調整し、前記転写紙紙上のシアン未定着ベタ画像上に重ねて、下引き層となる未定着ベタ画像を出力した。
次いで、転写紙を熱定着させて、転写紙にトナー画像を形成した。
次いで、転写紙上のトナー画像を、受像基材であるポリエステル100%の布生地(黒色のTシャツ)に重ね、熱プレス機(パイオテック社製Model HTP234PS1)にセットした。熱定着温度PTを140℃とし、20秒間、圧力600g/cm2で熱と圧力をかけた後、転写紙を剥がし、トナー画像をTシャツ上に熱定着させた。
ここではあらかじめ、黒色のポリエステル100%の布生地(Tシャツ)に対してシリコーン樹脂成分とフッ素樹脂系成分を含有するコニシ社製「ボンド防水スプレー長時間」を、Tシャツから10cm離れた位置からまんべんなく10秒スプレー塗布し乾燥させている。
このようにして実施例1の評価画像を作製した。
【0083】
<<実施例2>>
実施例1において、[カラートナー1]を[カラートナー2]に変更した以外は、実施例1と同様にして評価画像を作製した。
【0084】
<<比較例1>>
実施例1において、受像基材に対して撥水成分の付与を行わなかった以外は、実施例1と同様にして評価画像を作製した。すなわち、比較例1では、黒色のポリエステル100%の布生地(Tシャツ)に対して「ボンド防水スプレー長時間」の塗布を行わなかった。
【0085】
<<実施例3>>
実施例1において、受像基材として、「黒色のポリエステル100%の布生地」を「黒色の綿生地」に変更した以外は、実施例1と同様にして評価画像を作製した。
【0086】
<<実施例4>>
実施例2において、受像基材として、「黒色のポリエステル100%の布生地」を「黒色の綿生地」に変更した以外は、実施例2と同様にして評価画像を作製した。
【0087】
<<比較例2>>
比較例1において、受像基材として、「黒色のポリエステル100%の布生地」を「黒色の綿生地」に変更した以外は、比較例1と同様にして評価画像を作製した。
【0088】
<<実施例5>>
実施例1において、受像基材として、「黒色のポリエステル100%の布生地」を「白色のポリエステル100%の布生地」に変更した以外は、実施例1と同様にして評価画像を作製した。
【0089】
<<実施例6>>
実施例5において、白トナーを用いなかった以外は、実施例5と同様にして評価画像を作製した。
【0090】
<<比較例3>>
実施例6において、受像基材に対して撥水成分の付与を行わなかった以外は、実施例6と同様にして評価画像を作製した。
【0091】
<画像色味評価>
得られた評価画像の彩度について、目視により下記の基準で評価を行った。
[評価基準]
◎:画像の色味が鮮やか
〇:画像の色味が鮮やかだが、イエローの画像部分のみ△ランクの箇所が見られる
△:画像にやや黒みがかった個所(黒色Tシャツ使用の場合のみ)や、やや画像の色味の薄い箇所が認められる(黒色Tシャツと白色Tシャツに共通)
×:画像に黒みがかった個所(黒色Tシャツ使用の場合のみ)や、生地の繊維の凹凸による画像の色味の薄い箇所がはっきり認められる(黒色Tシャツと白色Tシャツに共通)
【0092】
<耐洗濯性評価>
得られた評価画像について、JIS0844:2011の試験方法で洗濯堅牢性試験を行い、下記の基準で評価を行った。
[評価基準]
◎:JIS0844変退色用グレースケールランク5
○:JIS0844変退色用グレースケールランク4
△:JIS0844変退色用グレースケールランク3
×:JIS0844変退色用グレースケールランク2~1
【0093】
処方及び評価結果を表1、表2に示す。
評価結果からわかるように、本発明によれば、布に対してもトナー画像を形成することができ、耐洗濯性が良好で彩度が良好な画像を形成することができる。
また、実施例1、3が実施例2、4よりも優れた結果になっているのは、白トナーの1/2流出温度UT1/2がカラートナーの1/2流出温度CT1/2よりも高いためである。
【0094】
【0095】