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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010187
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114146
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】正路 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA18
2H033BA10
2H033BA11
2H033BA27
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA02
2H033CA27
2H033CA43
(57)【要約】
【課題】温度制御の精度を向上させると共に、安全性及び信頼性を向上させる。
【解決手段】加熱装置20は、第1回転体21と、第1回転体21の外周面に接触して記録媒体を通過させるニップ部を形成する第2回転体22と、第1回転体21を加熱する加熱源23と、最小記録媒体通過領域W1の幅方向内側において第1回転体21の温度を検知する第1温度検知部材31と、最小記録媒体通過領域W1の幅方向外側において加熱源23の温度を検知する第2温度検知部材32と、最小記録媒体通過領域W1の幅方向外側であって、最大記録媒体通過領域W2の幅方向内側において第2回転体22の温度を検知する第3温度検知部材33を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
前記第1回転体の外周面に接触して記録媒体を通過させるニップ部を形成する第2回転体と、
前記第1回転体を加熱する加熱源と、
最小記録媒体通過領域の幅方向内側において前記第1回転体の温度を検知する第1温度検知部材と、
最小記録媒体通過領域の幅方向外側において前記加熱源の温度を検知する第2温度検知部材と、
最小記録媒体通過領域の幅方向外側において前記第2回転体の温度を検知する第3温度検知部材を備え、
前記第2温度検知部材と前記第3温度検知部材の少なくとも一方は、最大記録媒体通過領域の幅方向外側において温度を検知することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第2温度検知部材は、最大記録媒体通過領域の幅方向外側において前記加熱源の温度を検知し、
前記第3温度検知部材は、最小記録媒体通過領域の幅方向外側であって、最大記録媒体通過領域の幅方向内側において前記第2回転体の温度を検知する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第2温度検知部材は、最小記録媒体通過領域の幅方向外側であって、最大記録媒体通過領域の幅方向内側において前記加熱源の温度を検知し、
前記第3温度検知部材は、最大記録媒体通過領域の幅方向外側において前記第2回転体の温度を検知する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第2温度検知部材及び前記第3温度検知部材は、最小記録媒体通過領域を挟んで互いに幅方向の反対側において温度を検知する請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1温度検知部材は、前記第1回転体の内側に配置される請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1回転体は、前記加熱源が内側に配置された無端状の定着ベルトであり、
前記第2回転体は、前記定着ベルトを介して前記加熱源に加圧される加圧部材である請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、無端状ベルト又はローラなどの一対の回転体によって用紙を挟みながら加熱し、用紙上の画像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
一般的に、定着装置においては、回転体を加熱する加熱源の温度を制御し、用紙を適切な温度で加熱するため、サーミスタなどの温度検知部材が設けられている。例えば、下記特許文献1(特許第5924867号公報)に記載の定着装置においては、温度検知部材(温度検知素子)によって加熱源(ヒータ)の温度を検知し、検知された温度に基づいて加熱源への電力供給を制御することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像の定着性は、用紙を挟む一対の回転体のうち、特に用紙の画像形成面に接触する定着回転体の温度に左右される。このため、良好な定着性を維持するには、定着回転体の温度を直接的に維持管理することが好ましい。
【0005】
これに対して、上記特許文献1に記載の定着装置においては、温度検知部材によって加熱源の温度を検知し、検知された加熱源の温度に基づいて温度制御を行っている。このように、加熱源の温度に基づいて定着回転体の温度を間接的に制御することも可能である。しかしながら、加熱源の温度と定着回転体の温度の関係は常に一様であるとは限らない。実際は、加熱源の温度が同じであっても、定着回転体に接触するもう一方の回転体の蓄熱状態などの影響により定着回転体の温度は変動する。また、回転体の蓄熱状態によって定着に必要な熱量も異なる。このため、加熱源の温度のみに基づいて温度制御を行う場合は、温度制御の精度が低下する懸念がある。
【0006】
また、特許文献1には、複数の温度検知部材が設けられている例が挙げられているが、これらの温度検知部材はいずれも通紙領域内に配置されている。このため、特許文献1に記載の定着装置の場合、複数枚の用紙が連続通紙された際に非通紙領域における温度が過剰に上昇したとしても、その温度上昇を検知しにくく、過剰な温度上昇により定着回転体などが損傷する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1回転体と、前記第1回転体の外周面に接触して記録媒体を通過させるニップ部を形成する第2回転体と、前記第1回転体を加熱する加熱源と、最小記録媒体通過領域の幅方向内側において前記第1回転体の温度を検知する第1温度検知部材と、最小記録媒体通過領域の幅方向外側において前記加熱源の温度を検知する第2温度検知部材と、最小記録媒体通過領域の幅方向外側において前記第2回転体の温度を検知する第3温度検知部材を備え、前記第2温度検知部材と前記第3温度検知部材の少なくとも一方は、最大記録媒体通過領域の幅方向外側において温度を検知する加熱装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度制御の精度が向上すると共に、安全性及び信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本実施形態に係るヒータの平面図である。
図4】前記ヒータの分解斜視図である。
図5】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
図7】温度センサと通紙領域との位置関係を示す図である。
図8】制御装置のブロック図である。
図9】用紙が誤セットされた状態で搬送された場合の温度センサと通紙領域との位置関係を示す図である。
図10】用紙が誤セットされた状態で搬送された場合の温度センサと通紙領域との位置関係を示す図である。
図11】ヒータの発熱領域を示す図である。
図12】ヒータの発熱領域の他の例を示す図である。
図13】ヒータ温度センサと加圧温度センサが同じ側に配置された例を示す図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
図16】本発明の第4実施形態に係る定着装置の構成を示す図である。
図17】本発明を適用可能な他の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部200と、記録媒体に画像を定着させる定着部300と、記録媒体を画像形成部200へ供給する記録媒体供給部400と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部500を備えている。
【0013】
画像形成部200には、作像ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkと、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが備える感光体2に静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体に画像を転写する転写装置8が設けられている。
【0014】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電部材3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング部材5を備えている。
【0015】
転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各感光体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0016】
定着部300においては、定着装置20が設けられている。定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、加圧部材としての加圧ローラ22などを備えている。定着ベルト21と加圧ローラ22は互いに圧接し、定着ベルト21と加圧ローラ22との間にニップ部(定着ニップ)が形成されている。
【0017】
記録媒体供給部400には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0018】
記録媒体排出部500には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0019】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0020】
画像形成装置100において印刷動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0021】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、感光体2の表面を均一な高電位に帯電させる。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成装置100においては、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去される。
【0022】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。その後、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、定着ベルト21と加圧ローラ22によって用紙P上のトナー画像が加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部500へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。これにより、一連の印刷動作が終了する。
【0023】
続いて、図2に基づき、本実施形態に係る定着装置20の構成について説明する。
【0024】
図2に示されように、定着装置20は、定着ベルト21及び加圧ローラ22のほか、加熱源としてのヒータ23と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ24と、支持部材としてのステー25を備えている。
【0025】
定着ベルト21は、用紙Pに未定着トナーT(トナー画像)を定着させる定着部材として機能する回転体(第1回転体)である。また、定着ベルト21は、その両端の内側に挿入される一対のベルト保持部材によって、いわゆるフリーベルト方式で(少なくとも非回転時においては張力が付与されない状態で)保持される。例えば、定着ベルト21は、外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)を主成分とする筒状の基材を有する無端状のベルトから成る。基材の材料は、ポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂、あるいは、ニッケル又はSUSなどの金属材料であってもよい。基材の材料として金属材料を用いた場合は、基材の内周面にポリイミド又はPTFEなどから成る摺動層を設けてもよい。
【0026】
また、定着ベルト21の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFA又はPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成されている。また、基材と離型層の間に、厚さ50~500μmのゴム等から成る弾性層を設けてもよい。
【0027】
加圧ローラ22は、定着ベルト21に対向して配置される回転体(第2回転体)である。また、加圧ローラ22は、定着ベルト21に加圧されてニップ部Nを形成する加圧部材でもある。具体的に、加圧ローラ22は、鉄などの金属製の芯金と、芯金の外周面に設けられた弾性層と、弾性層の外周面に設けられた離型層を有するローラから成る。弾性層は、例えば厚みが3.5mmのシリコーンゴムで形成され、離型層は、例えば厚みが40μm程度のフッ素樹脂層によって形成されている。
【0028】
加圧ローラ22は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト21側へ押圧され、定着ベルト21の外周面に圧接されている。これにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(接触箇所)に、ニップ部Nが形成されている。
【0029】
定着ベルト21の内側には、ヒータ23、ヒータホルダ24及びステー25が配設されている。
【0030】
ヒータ23は、定着ベルト21の長手方向(用紙搬送方向に交差する用紙幅方向)に渡って長手状に伸びる板状のヒータであり、定着ベルト21の内周面に接触するように配置されている。このため、ヒータ23が発熱すると、定着ベルト21がその内側から加熱される。また、ヒータ23の出力が、後述の温度センサによって検知された定着ベルト21の温度などに基づいて制御されることにより、定着ベルト21の温度が所定の温度となるように維持される。この状態で、図2に示されるように、未定着トナーTを担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)に進入すると、定着ベルト21と加圧ローラ22によって未定着トナーTが加圧及び加熱され、用紙Pにトナー画像が定着される。
【0031】
ヒータホルダ24は、ヒータ23を保持する部材である。ヒータホルダ24は、ヒータ23の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料によって構成されることが好ましい。特に、ヒータホルダ24が、LCP又はPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂によって構成される場合は、ヒータホルダ24の耐熱性を確保しつつ、ヒータ23からヒータホルダ24への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト21を加熱できる。
【0032】
ステー25は、ヒータホルダ24を支持する部材である。ステー25によってヒータホルダ24のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ24が加圧ローラ22の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。また、ステー25は、その剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0033】
図3は、本実施形態に係るヒータの平面図、図4は、当該ヒータの分解斜視図である。
【0034】
図3及び図4に示されように、ヒータ23は、定着ベルト21の長手方向又は加圧ローラ22の回転軸方向である図3中の矢印X方向へ伸びる板状の基材50を有している。基材50の上には、第1絶縁層51と、導体層52と、第2絶縁層53が積層されている。
【0035】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)、鉄、又はアルミニウムなどの金属材料によって形成される。また、基材50の材料は、金属材料に限らず、セラミック、又はガラスなどであってもよい。基材50がセラミックなどの絶縁材料によって形成される場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略できる。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、ヒータの低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウム又は銅は、熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスは、アルミニウム又は銅と比べて基材50を安価に製造できる。
【0036】
導体層52には、抵抗発熱体60と、電極部61と、給電線(導電部)62が含まれる。抵抗発熱体60は、基材50の長手方向(矢印X方向)に伸び、長手方向と交差する方向に2つ並んで配置されている。また、各抵抗発熱体60は、基材50の長手方向の一端側(図3における左端側)に設けられた2つの電極部61に対し、複数の給電線62を介して接続されている。具体的に、図3において、各抵抗発熱体60の一端(左端)は、給電線62を介して異なる電極部61に電気的に接続され、各抵抗発熱体60の他端(右端)は、別の給電線62を介して互いに電気的に接続されている。
【0037】
抵抗発熱体60は、例えば、銀パラジウム(AgPd)及びガラス粉末などを調合したペーストを基材50上にスクリーン印刷し、その後、当該基材50を焼成することによって形成される。抵抗発熱体60の材料としては、前述の材料以外に、銀合金(AgPt)又は酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料が用いることができる。
【0038】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体60よりも小さい抵抗値の導体によって形成される。具体的に、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)又は銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0039】
第2絶縁層53は、各抵抗発熱体60の全体及び各給電線62の少なくとも一部を覆っており、ヒータ表面の絶縁性を確保している。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続される部分であるため、第2絶縁層53によって覆われておらず露出している。
【0040】
第1絶縁層51及び第2絶縁層53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料によって形成される。具体的に、各絶縁層51,53の材料としては、セラミック又はポリイミドなどが用いられる。また、第1絶縁層51及び第2絶縁層53が設けられる基材50の面とは反対側の面に、別途絶縁層(第3絶縁層)が設けられていてもよい。
【0041】
本実施形態においては、抵抗発熱体60が、基材50のニップ部N側に配置されているため(図2参照)、抵抗発熱体60の熱が基材50を介さずに定着ベルト21に伝わり、定着ベルト21を効率良く加熱できる。また、抵抗発熱体60が、基材50のニップ部N側とは反対側に配置されてもよい。ただし、その場合は、抵抗発熱体60の熱が基材50を介して定着ベルト21に伝わるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料により形成されることが好ましい。
【0042】
図5は、ヒータ23に給電部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0043】
図5に示されるように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、複数のコンタクト端子72を有している。各コンタクト端子72は、板バネなどの導電性を有する弾性部材である。各コンタクト端子72は、ハウジング71に設けられている。また、各コンタクト端子72には、それぞれ給電用のハーネス73が接続されている。
【0044】
コネクタ70は、ヒータ23及びヒータホルダ24を一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、ヒータ23及びヒータホルダ24は、コネクタ70によって保持される。また、コネクタ70がヒータ23に取り付けられた状態において、各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)すると、各コンタクト端子72と各電極部61が電気的に接続される。これにより、画像形成装置本体に設けられた電源から各抵抗発熱体60へ給電可能な状態となり、コネクタ70を介して電源から各抵抗発熱体60へ電力が供給されると、各抵抗発熱体60が発熱する。
【0045】
ここで、図6に示されるように、本実施形態に係る定着装置20は、3つの温度センサ31,32,33を備えている。具体的に、3つの温度センサ31,32,33は、定着ベルト21の温度を検知する第1温度検知部材としての定着温度センサ31と、ヒータ23の温度を検知する第2温度検知部材としてのヒータ温度センサ32と、加圧ローラ22の温度を検知する第3温度検知部材としての加圧温度センサ33である。各温度センサ31,32,33としては、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、又はNCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。なお、図6は、図2における上下方向を左右方向として示している。
【0046】
定着温度センサ31は、定着ベルト21の内側に配置されている。本実施形態においては、定着温度センサ31として、定着ベルト21の内周面に接触して温度を検知する接触式の温度センサが用いられている。なお、接触式の温度センサに代えて非接触式の温度センサを用いることも可能である。その場合、定着温度センサ31は、定着ベルト21近傍の雰囲気温度を定着ベルト21の温度として検知する。また、定着温度センサ31は、定着ベルト21の外側に配置されてもよい。その場合、定着温度センサは、定着ベルト21の外周面に接触してもよいが、定着ベルト21の外周面に対して非接触に対向して配置される方が、定着温度センサ31との接触による定着ベルト21の摩耗が生じないので、定着性への影響を回避できる。また、定着温度センサ31が定着ベルト21の内側に配置されている場合は、定着ベルト21の外周面の摩耗を回避できることに加え、定着装置20の小型化も図れるため、より好ましい。
【0047】
ヒータ温度センサ32は、ヒータ23のニップ部N側とは反対側の面に接触するように配置されている。また、ヒータ温度センサ32は、ヒータ23近傍の雰囲気温度を検知する非接触式の温度センサであってもよい。
【0048】
加圧温度センサ33は、加圧ローラ22の外周面に接触するように配置されている。他の温度センサと同様に、加圧温度センサ33も、加圧ローラ22近傍の雰囲気温度を検知する非接触式の温度センサであってもよい。
【0049】
図7は、各温度センサ31,32,33と通紙領域との位置関係を示す図である。
【0050】
図7に示されるように、本実施形態においては、定着温度センサ31が、最小幅の用紙P1が通過する最小通紙領域(最小記録媒体通過領域)W1の幅方向内側に配置されている。これに対して、加圧温度センサ33は、最小通紙領域W1の幅方向外側で、かつ、最大幅の用紙P2が通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)W2の幅方向内側に配置され、ヒータ温度センサ32は、最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されている。
【0051】
ここで、通紙領域の「幅方向内側」とは、通紙領域に対してその幅方向(図7における矢印X方向)に直交する方向に存在する空間を意味する。これに対して、通紙領域の「幅方向外側」とは、通紙領域に対してその幅方向に直交する方向に存在する空間の外側の空間を意味する。また、通紙領域の「幅方向」とは、用紙が搬送される方向に対して交差又は直交する方向であって、定着ベルト21の長手方向、あるいは、加圧ローラ22の回転軸方向と同じ方向を意味する。また、温度センサが通紙領域の幅方向内側に配置される場合とは、温度センサの温度検知部(温度検知素子)の半分以上が通紙領域の幅方向内側に配置される場合をいい、温度検知センサが通紙領域の幅方向外側に配置される場合とは、温度検知センサの温度検知部(温度検知素子)の半分以上が通紙領域の幅方向外側に配置される場合をいう。
【0052】
図8は、ヒータ23の制御を行う制御装置40のブロック図である。
【0053】
図8に示されるように、本実施形態においては、各温度センサ31,32,33によって検知された温度に基づいてヒータ23を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40は、例えば、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有するマイクロコンピュータである。制御装置40は、定着装置に設けられていてもよいし、画像形成装置本体に設けられていてもよい。
【0054】
具体的に、制御装置40は、目標温度制御部41と、非通紙領域温度上昇判定部42と、用紙誤セット判定部43を有している。
【0055】
目標温度制御部41は、定着ベルト21の温度が目標の定着温度に維持されるように、主に定着温度センサ31の検知温度に基づいてヒータ23の発熱量を制御する。このように、定着ベルト21の温度に基づいてヒータ23の発熱量が制御されることにより、画像の定着性に大きく影響する定着ベルト21の温度を所定の定着温度に維持しやすくなり、画像品質が向上する。また、定着ベルト21に対する定着温度センサ31の位置は、必ずしも図6に示される位置でなくてもよいが、定着ベルト21の回転方向の領域をニップNの中央を基準に上流側の領域A1と下流側の領域A2に二等分した場合(図6参照)、定着温度センサ31は、ニップ部Nの中央よりも回転方向の上流側の領域A1に配置されることが好ましい。
【0056】
また、目標温度制御部41は、定着温度センサ31の検知温度に加え、加圧温度センサ33の検知温度に基づいてもヒータ23の発熱量を制御する。これは、同じ画像を印刷する場合であっても、加圧ローラ22の蓄熱状態によって定着ベルト21の最適な定着温度が異なるからである。本実施形態においては、加圧温度センサ33が、最小通紙領域W1よりも幅方向外側であって最大通紙領域W2よりも幅方向内側の加圧ローラ22の温度を検知する。このとき、検知された加圧ローラ22の温度が相対的に低い場合は、目標温度制御部41によって定着ベルト21の目標温度が高く設定される。反対に、検知された加圧ローラ22の温度が相対的に高い場合は、目標温度制御部41によって定着ベルト21の目標温度が低く設定される。これにより、加圧ローラ22の蓄熱状態が変化しても、用紙に一定量の熱量を付与でき、良好な画像品質を安定して得られるようになる。また、ヒータ23を必要以上に発熱させるのを防止でき、消費エネルギーの低減も図れる。
【0057】
非通紙領域温度上昇判定部42は、用紙が通過しない非通紙領域(記録媒体の非通過領域)において加圧ローラ22又はヒータ23の温度が過剰に上昇した場合に、ヒータ23の発熱量を低下させたり、ヒータ23の発熱を停止させたりする。例えば、図7に示される最大幅の用紙P2が複数枚連続して通紙された場合に、用紙P2によって熱が奪われにくい非通紙領域の温度が上昇すると、最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されるヒータ温度センサ32の検知温度も上昇する。これに伴って、ヒータ温度センサ32の検知温度があらかじめ設定された温度(上限値)を超えると、ヒータ温度センサ32の検知温度に基づいて非通紙領域温度上昇判定部42がヒータ23の発熱量を低下させる、あるいは、発熱を停止させる。また、紙間を広げたり、用紙搬送速度を遅くしたりして、一分間当たりの印刷枚数(CPM:Copies Per Minute)を少なくすることにより、非通紙領域における温度上昇を抑制してもよい。
【0058】
上記のように、最大幅の用紙P2が複数枚連続通紙される場合のほか、最大幅よりも小さい幅の用紙が通紙される場合も同様に、ヒータ温度センサ32の検知温度に基づいて非通紙領域温度上昇判定部42が非通紙領域における過剰な温度上昇の有無を判定可能である。また、通紙される用紙の幅サイズによっては、加圧温度センサ33が配置されている位置が非通紙領域となる場合もある。その場合は、加圧温度センサ33の検知温度に基づいて非通紙領域温度上昇判定部42が非通紙領域における過剰な温度上昇の有無を判定してもよい。
【0059】
用紙誤セット判定部43は、ヒータ温度センサ32及び加圧温度センサ33の少なくとも一方の検知温度に基づいて、セットされた用紙のサイズ誤り又はセット位置ずれの有無を判定する。
【0060】
例えば、図9に示されるように、本来、最大幅の用紙P2がセットされるべきところ、誤って最大幅よりも小さい幅の用紙P3がセットされ、そのまま小さい幅の用紙P3が通紙された場合は、最大幅の用紙P2が通紙される場合と比べて、通紙領域に対する温度センサの相対的位置が異なる。図9に示される例の場合、小さい幅の用紙P3の通紙領域W3とヒータ温度センサ32との間隔D3が、最大幅の用紙P2の通紙領域W2とヒータ温度センサ32との間隔D2に比べて大きくなる。このように、通紙領域とヒータ温度センサ32との間隔が大きくなると、ヒータ温度センサ32の位置においては通紙による熱の消費がより一層されにくくなるため、ヒータ温度センサ32によって検知される温度が通常よりも高くなる傾向にある。従って、このとき検知されるヒータ温度センサ32の検知温度に基づいて、用紙誤セット判定部43が用紙誤セットの有無を判定できる。
【0061】
また、図10に示されるように、最大幅よりも小さい幅の用紙P3が右側に寄って搬送された場合は、最大幅の用紙P2が通紙される場合と比べて、左側に配置された加圧温度センサ33の位置が非通紙領域となる。このため、加圧温度センサ33によって検知される温度が通常よりも高くなる傾向にある。従って、この場合は、加圧温度センサ33によって検知される温度に基づいて、用紙誤セット判定部43が用紙誤セットの有無を判定することができる。
【0062】
上記のように、用紙誤セット判定部43がヒータ温度センサ32又は加圧温度センサ33の検知温度に基づいて用紙誤セットが生じていると判定した場合は、その旨を画面表示又は音などにより使用者に通知したり、給紙を含む画像形成装置の動作を停止したりしてもよい。また、用紙誤セット判定部43によって用紙の誤セットが生じていると判定された結果、非通紙領域における温度が過剰に上昇する虞がある場合は、単位時間当たりの通紙枚数を少なくしたり、ヒータ23への通電を遮断したりしてもよい。
【0063】
上記図9及び図10に示される例においては、最大幅よりも小さい幅の用紙が誤セットされた場合について説明したが、反対に、大きい幅の用紙が誤セットされた場合も同じようにして誤セットの有無を判定可能である。すなわち、他のサイズの用紙が誤セットされた場合も、通紙領域に対する少なくとも一方の温度センサの相対的位置が本来の位置とは異なるため、温度センサによって検知される温度が通常の温度とは異なる。従って、このとき検知された温度に基づいて誤セットの有無を判定可能である。また、誤ったサイズの用紙をセットした場合に限らず、用紙を誤った位置にセットした結果、用紙が本来搬送される位置から幅方向にずれて搬送された場合も、同じようにして誤セット(セット位置ずれ)の有無を判定可能である。
【0064】
以上のように、本実施形態においては、定着装置20が備える複数の温度センサのうち、1つの温度センサを定着温度センサ31としているため、この定着温度センサ31によって定着ベルト21の温度を精度良く検知できる。そして、検知された定着ベルト21の温度に基づいてヒータ23の発熱量を制御することにより、定着ベルト21の温度を所定の目標温度(定着温度)に的確に維持できる。すなわち、本実施形態においては、ヒータ23などの定着ベルト21以外の温度に基づいて定着ベルト21の温度を間接的に制御するのではなく、定着ベルト21の温度に基づいて定着ベルト21の温度を直接的に制御するので、定着ベルト21の温度制御精度が向上する。また、図7に示されるように、定着温度センサ31は、最小通紙領域W1の幅方向内側に配置されているため、非通紙領域における温度上昇の影響をほとんど受けずに通紙領域内(最小通紙領域W1内)における定着ベルト21の温度を的確に検知することが可能である。
【0065】
また、本実施形態においては、加圧ローラ22の温度を検知する加圧温度センサ33が設けられているため、検知された加圧ローラ22の温度情報を定着ベルト21の温度制御に利用できる。これにより、加圧ローラ22の蓄熱状態に応じて必要な熱量を定着ベルト21へ供給できるので、定着ベルト21の温度制御精度がより一層向上すると共に、省エネ性も向上する。
【0066】
また、本実施形態においては、ヒータ23の温度を検知するヒータ温度センサ32が設けられているため、万が一、故障などによりヒータ23が過剰に温度上昇した場合であっても、その温度上昇をヒータ温度センサ32が応答性良く検知できる。これにより、ヒータ23への通電を瞬時に遮断するなどの対応が可能であるので、安全性が向上する。また、ヒータ温度センサ32は、最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されているため、最大幅の用紙P2が複数枚連続通紙された際に非通紙領域において温度上昇が生じても、ヒータ温度センサ32によって非通紙領域におけるヒータ23の温度上昇を検知できる。これにより、ヒータ温度センサ32によって温度上昇が検知された場合は、ヒータ23の発熱量を低下させるなどにより温度上昇を抑制でき、過剰な温度上昇に伴う定着ベルトの損傷を回避できるため、信頼性が向上する。
【0067】
ここで、ヒータ23が有する抵抗発熱体が、最大通紙領域W2よりも幅方向外側の領域まで配置されている場合、特に抵抗発熱体が配置される非通紙領域において高温となりやすい。例えば、図11に示される例のように、抵抗発熱体60が最大通紙領域W2の幅方向外側まで伸びている場合、最大通紙領域W2の幅方向外側の非通紙領域の中でも、特に抵抗発熱体60が配置される発熱領域Hにおいて温度が上昇しやすい。このため、ヒータ温度センサ32は、最大通紙領域W2の幅方向外側であって、抵抗発熱体60が配置される発熱領域Hの幅方向内側に配置されることが好ましい。なお、ヒータ23の「発熱領域」とは、図11に示される例のように、抵抗発熱体60が基材50の長手方向(矢印X方向)に連続して配置される場合は、長手方向における抵抗発熱体60の一端E1から他端E2までの領域Hを意味する。また、図12に示される例のように、抵抗発熱体60が基材50の長手方向(矢印X方向)に渡って複数配列されている場合は、両端の抵抗発熱体60の互いに離れた一端E1から他端E2までの領域Hを、「発熱領域」とする。また、本明細書において、ヒータ温度センサ32が発熱領域Hの幅方向内側に配置されるとは、ヒータ温度センサ32の温度検知部(温度検知素子)の半分以上が発熱領域Hの幅方向内側に配置される場合を意味する。
【0068】
また、本実施形態においては、図7に示されるように、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33が、最小通紙領域W1を挟んで互いに幅方向の反対側に配置されているため、ヒータ温度センサ32及び加圧温度センサ33の少なくとも一方の検知温度に基づいて、用紙の誤セットを判定することが可能である。
【0069】
ここで、本実施形態とは異なり、図13に示されるように、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33が、最小通紙領域W1に対して幅方向の同じ側に配置される場合は、用紙の誤セットがあったとしても、誤セットを判定できない場合がある。例えば、最大幅の用紙P2が通紙されるべきところ、誤って最大幅よりも小さい幅の用紙P3が図13に示されるように通紙された場合、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33が同じ側に配置されていると、通紙領域W3の左端に対するヒータ温度センサ32及び加圧温度センサ33の相対的位置が、最大幅の用紙P2が通紙される場合と同じになる。この場合、各温度センサ32,33の検知温度は、通常検知される温度とほぼ同じとなるため、各温度センサ32,33の検知温度では誤セットの有無を判定できない。これに対して、本実施形態のように、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33が互いに幅方向の反対側に配置される場合は、上述のように、通紙領域に対する少なくとも一方の温度センサの相対的位置が異なるため、誤セットの有無を判定できる。
【0070】
なお、本発明は、図13に示されるような例を排除するものではない。すなわち、誤セット判定の機能が必要でない場合は、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33を幅方向の同じ側に配置してもよい。そのような場合であっても、定着温度センサ31が最小通紙領域W1の幅方向内側に配置され、加圧温度センサ33が最小通紙領域W1の幅方向外側であって、最大通紙領域W2の幅方向内側に配置され、ヒータ温度センサ32が最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されていることにより、上述の温度制御精度の向上、安全性及び信頼性の向上を図れる。
【0071】
図14は、上記実施形態(第1実施形態)とは異なる本発明の他の実施形態(第2実施形態)を示す図である。
【0072】
図14に示される第2実施形態においては、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33の配置が上記実施形態(図7)とは異なっている。具体的に、本実施形態においては、ヒータ温度センサ32が、最小通紙領域W1の幅方向外側で、かつ、最大通紙領域W2の幅方向内側に配置され、加圧温度センサ33が、最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されている。すなわち、本実施形態においては、通紙領域に対するヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33のそれぞれの位置関係が、上記実施形態とは反対となっている。なお、定着温度センサ31は、上記実施形態と同じように、最小通紙領域W1の幅方向内側に配置されている。
【0073】
このように、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33の位置関係が反対となった本実施形態においても、上記実施形態と同じように、温度制御精度の向上、安全性及び信頼性の向上を図れる。
【0074】
すなわち、上記実施形態と同様に、定着温度センサ31によって定着ベルト21の温度を検知すると共に、加圧温度センサ33の検知温度に基づいて加圧ローラ22の蓄熱状態を把握できるため、定着ベルト21の温度制御精度が向上すると共に、省エネ性も向上する。
【0075】
また、加圧温度センサ33が、最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されているため、最大幅の用紙P2が複数枚連続通紙された際に非通紙領域における温度上昇が生じても、その温度上昇を検知でき、温度上昇に伴う定着ベルト21の損傷を防止できるので、信頼性が向上する。特に、本実施形態においては、非通紙領域の温度を検知する温度センサを、ヒータ23及び定着ベルト21に比べて相対的に温度が低い加圧ローラ22の温度を検知する加圧温度センサ33としているため、耐熱性が低い温度センサを用いることができ、低コスト化を図れる。
【0076】
また、本実施形態においては、上記実施形態と同じように、ヒータ温度センサ32によってヒータ23の温度上昇を応答性良く検知できるため、異常によりヒータ23が温度上昇した場合でも、その後の対応を迅速に行うことができ、安全性が向上する。
【0077】
また、本実施形態においては、ヒータ温度センサ32及び加圧温度センサ33が、最小通紙領域W1を挟んで互いに幅方向の反対側に配置されているため、これら温度センサ32,33の少なくとも一方の検知温度に基づいて用紙の誤セットを判定できる。
【0078】
図15は、本発明の第3実施形態を示す図である。
【0079】
図15に示される実施形態においては、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33の両方が最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されている点において、上記各実施形態とは異なっている。それ以外の部分は、上記各実施形態と同じである。
【0080】
このように、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33の両方が最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されていてもよい。この場合も、基本的に上記実施形態と同じ作用及び効果が得られる。すなわち、定着温度センサ31の検知温度と加圧温度センサ33の検知温度に基づいてヒータ23の発熱量を制御することにより、定着ベルト21の温度制御精度を向上させることができる。また、ヒータ温度センサ32によってヒータ23の異常発熱を検知できるため、安全性が向上する。さらに、ヒータ温度センサ32と加圧温度センサ33が最大通紙領域W2の幅方向外側に配置されているため、最大幅の用紙P2が複数枚連続通紙された場合であっても、そのときの非通紙領域における温度上昇をいずれか一方の温度センサの検知温度に基づいて把握することができる。また、ヒータ温度センサ32及び加圧温度センサ33が、最小通紙領域W1を挟んで互いに幅方向の反対側に配置されているため、これら温度センサ32,33の少なくとも一方の検知温度に基づいて用紙の誤セットを判定できる。
【0081】
図16は、本発明の第4実施形態を示す図である。
【0082】
図16に示される第4実施形態においては、ヒータホルダ24に対するヒータ23の長手方向(図の矢印X方向)における位置決めを行う位置決め部80が設けられている。位置決め部80は、例えば、ヒータ23に設けられた凹部と、この凹部に対して係合可能なヒータホルダ24の凸部などにより構成される。
【0083】
図16に示されるように、位置決め部80が、ヒータ23の長手方向中央Mよりも一端側に配置されていることにより、位置決め部80が設けられた一端側においては、ヒータホルダ24に対するヒータ23の長手方向の位置決めが確実に行われる。一方、位置決め部80が設けられていない反対側の端部においては、温度上昇に伴ってヒータ23が熱膨張すると、ヒータ23の長手方向における位置が変化する。従って、仮に、温度センサがヒータ23の位置ずれが生じやすい端側に配置されていると、ヒータ23が熱膨張した際に、ヒータ23と温度センサとの相対的な位置ずれが生じ、温度センサの検知温度にばらつきが発生する。また、ヒータ23の中央側よりも端部側ほど、ヒータ23と温度センサとの長手方向の位置ずれが生じた場合の検知温度のばらつきは大きくなる。
【0084】
そのため、本実施形態のように、ヒータ温度センサ32は、ヒータ23の長手方向中央Mよりも位置決め部80側に配置されることが好ましい。これにより、ヒータ23が熱膨張しても、ヒータ温度センサ32が熱膨張による相対的位置ずれの影響を受けにくくなり、ヒータ温度センサ32の検知精度の低下を抑制できる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態の定着装置に適用される場合に限らない。本発明係る定着装置は、例えば図17に示されような、定着回転体としての定着ローラ26と、加圧回転体としての加圧ローラ27と、加熱源としてのハロゲンヒータ28を備える構成であってもよい。
【0086】
また、本発明は、図7に示されるような、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向中央を基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式の画像形成装置に搭載された定着装置に適用される場合に限らない。本発明に係る定着装置は、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0087】
また、本発明は、加熱装置の一例である定着装置に適用される場合に限らない。例えば、本発明は、インクジェット式の画像形成装置において、用紙に吐出されたインクなどの液体を乾燥させるために用紙を加熱する乾燥装置(加熱装置)に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
20 定着装置(加熱装置)
21 定着ベルト(第1回転体、定着部材)
22 加圧ローラ(第2回転体、加圧部材)
23 ヒータ(加熱源)
31 定着温度センサ(第1温度検知部材)
32 ヒータ温度センサ(第2温度検知部材)
33 加圧温度センサ(第3温度検知部材)
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
W1 最小通紙領域(最小記録媒体通過領域)
W2 最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特許第5924867号公報
図1
図2
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図5
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図17