(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010231
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置の製造システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20230113BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230113BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230113BHJP
H01L 21/3213 20060101ALI20230113BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20230113BHJP
H10B 63/00 20230101ALI20230113BHJP
H10N 70/00 20230101ALI20230113BHJP
H10N 99/00 20230101ALI20230113BHJP
【FI】
H01L21/312 A
H01L21/31 B
H01L21/302 105A
H01L21/88 C
H01L21/324 G
H01L27/105 448
H01L45/00 Z
H01L49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114217
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【テーマコード(参考)】
5F004
5F033
5F045
5F058
5F083
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB26
5F004BB28
5F004BC03
5F004BC05
5F004BD04
5F004DA25
5F004DB03
5F004DB25
5F004EB01
5F004FA01
5F033HH33
5F033JJ11
5F033JJ33
5F033KK33
5F033MM05
5F033QQ27
5F033QQ48
5F033QQ74
5F033RR04
5F033RR22
5F033SS13
5F033TT04
5F033TT08
5F033XX15
5F033XX21
5F045AA06
5F045AB39
5F045AC07
5F045AD13
5F045DP03
5F045DP28
5F045DQ17
5F045EB08
5F045EE02
5F045EF05
5F045EK07
5F045EM04
5F058AA10
5F058AC10
5F058AD01
5F058AF01
5F058AF04
5F083FZ10
5F083GA27
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA58
5F083JA60
5F083NA08
5F083PR07
5F083PR40
(57)【要約】
【課題】犠牲膜の除去における残渣を低減する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、形成工程と、処理工程と、除去工程とを含む。形成工程では、基板の表面にアミンおよびイソシアネートを供給することにより、基板の特定の領域に設けられる犠牲膜であって、尿素結合を有する重合体により構成される犠牲膜が基板に形成される。処理工程では、犠牲膜が形成された基板に対して予め定められた処理が行われる。除去工程では、基板を加熱して重合体を解重合させることにより、犠牲膜が除去される。イソシアネートが有するイソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、2級または3級の非芳香族炭素である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にアミンおよびイソシアネートを供給することにより、前記基板の特定の領域に設けられる犠牲膜であって、尿素結合を有する重合体により構成される犠牲膜を前記基板に形成する形成工程と、
前記犠牲膜が形成された前記基板に対して予め定められた処理を行う処理工程と、
前記基板を加熱して前記重合体を解重合させることにより、前記犠牲膜を除去する除去工程と
を含み、
前記イソシアネートが有するイソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、2級または3級の非芳香族炭素である半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記イソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、鎖式構造または環状構造の炭化水素化合物を構成する炭素である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記アミンは、2級アミンである請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記除去工程において、前記基板は、400℃~500℃の範囲内の温度に加熱される請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記イソシアネートは、構造異性体を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記アミンは、構造異性体を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記アミンは、2つの2級アミン官能基を有する2官能性アミンである請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記イソシアネートは、2つのイソシアネート基を有する2官能性イソシアネートである請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板の表面にアミンおよびイソシアネートを供給することにより、前記基板の特定の領域をに設けられる犠牲膜であって、尿素結合を有する重合体により構成される犠牲膜を前記基板に形成する成膜装置と、
前記犠牲膜が形成された前記基板に対して予め定められた処理を行う処理装置と、
前記予め定められた処理が行われた基板を加熱して前記重合体を解重合させることにより、前記犠牲膜を除去する熱処理装置と
を備え、
前記イソシアネートが有するイソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、2級または3級の非芳香族炭素である半導体装置の製造システム。
【請求項10】
前記イソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、鎖式構造または環状構造の炭化水素化合物を構成する炭素である請求項9に記載の半導体装置の製造システム。
【請求項11】
前記アミンは、2級アミンである請求項9または10に記載の半導体装置の製造システム。
【請求項12】
前記熱処理装置は、前記基板を400℃~500℃の範囲内の温度に加熱する請求項9から11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造システム。
【請求項13】
前記イソシアネートは、構造異性体を含む請求項9から12のいずれか一項に記載の半導体装置の製造システム。
【請求項14】
前記アミンは、構造異性体を含む請求項9から13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造システム。
【請求項15】
前記アミンは、2つの2級アミン官能基を有する2官能性アミンである請求項9から14のいずれか一項に記載の半導体装置の製造システム。
【請求項16】
前記イソシアネートは、2つのイソシアネート基を有する2官能性イソシアネートである請求項9から15のいずれか一項に記載の半導体装置の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、半導体装置の製造方法および半導体装置の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、尿素結合を有する重合体により構成される保護膜を、特定の処理から保護すべき層の表面に積層し、特定の処理が行われた後に、基板を加熱することにより保護膜を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、犠牲膜の除去における残渣を低減することができる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、半導体装置の製造方法であって、形成工程と、処理工程と、除去工程とを含む。形成工程では、基板の表面にアミンおよびイソシアネートを供給することにより、基板の特定の領域に設けられる犠牲膜であって、尿素結合を有する重合体により構成される犠牲膜が基板に形成される。処理工程では、犠牲膜が形成された基板に対して予め定められた処理が行われる。除去工程では、基板を加熱して重合体を解重合させることにより、犠牲膜が除去される。イソシアネートが有するイソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、2級または3級の非芳香族炭素である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、犠牲膜の除去における残渣を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、半導体装置の製造過程の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における重合体の形成過程の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、半導体装置の製造過程の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、半導体装置の製造過程の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態における製造システムの一例を示すシステム構成図である。
【
図7】
図7は、保護膜を形成するための第2の成膜装置の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、保護膜を形成するための塗布装置の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、エッチング装置の一例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、保護膜の材料となるイソシアネートおよびアミンの組み合わせの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、保護膜の材料となるイソシアネートおよびアミンの組み合わせの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、重合体の質量変化の変曲点の温度および残渣率の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、温度に対する重合体の質量変化の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、1級アミンを用いた場合の重合体の形成過程の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、2級アミンの構造の他の例を示す図である。
【
図18】
図18は、イソシアネートの自己重合の過程の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、イソシアネートの自己重合の実験結果の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、イソシアネートの基本骨格の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、イソシアネートの構造の他の例を示す図である。
【
図22】
図22は、構造異性体を含む場合と構造異性体を含まない場合のイソシアネートとアミンの組み合わせの一例を示す図である。
【
図23】
図23は、温度に対する重合体の質量変化の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、1級アミンおよび2級アミンの一例を示す図である。
【
図25】
図25は、3級の非芳香族炭素に結合している窒素原子を含むイソシアネート基を有するイソシアネートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示される半導体装置の製造方法および半導体装置の製造システムの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される半導体装置の製造方法および半導体装置の製造システムが限定されるものではない。
【0009】
ところで、尿素結合を有する重合体により構成された犠牲膜が形成された基板を、重合体が解重合を起こす温度まで加熱すると、重合体の犠牲膜が解重合する。そして、重合体の犠牲膜がモノマーに分解されて基板上から除去される。重合と解重合とは、可逆的平衡反応であり、温度が高くなるに従い、解重合が支配的になる。そのため、基板が十分に高い温度まで加熱されれば、重合体がモノマーに解重合し、残渣を抑制することができる。
【0010】
しかし、半導体装置の製造過程では、熱に弱い材料が用いられる場合がある。そのため、犠牲膜を除去する場合であっても、基板をあまり高い温度まで加熱することが難しい場合がある。これにより、重合体が十分に除去されず、基板上に残渣が発生する場合がある。
【0011】
そこで、本開示は、犠牲膜の除去における残渣を低減することができる技術を提供する。
【0012】
(第1の実施形態)
[半導体装置の製造方法]
図1は、本開示の一実施形態における半導体装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1では、半導体装置の一例として、メモリ素子の製造方法が例示されている。メモリ素子としては、例えばReRAM、PcRAM、MRAM等が挙げられる。以下では、
図2~
図5を参照しながら、
図1に例示された半導体装置の製造方法を説明する。
【0013】
図1に例示された処理の概略を説明すると、メモリ素子を製造するための基板Wに、メモリ素子の導電路となる金属を埋め込むためのコンタクトホールが形成される。このコンタクトホールが形成される位置に、尿素結合を含む重合体で形成された保護膜を形成しておくことにより、保護膜の下層に形成された電極膜が、当該コンタクトホールを形成する際に起こり得るオーバーエッチングによるダメージから保護される。この保護膜は犠牲膜であり、コンタクトホールの形成後は導電路となる金属が埋め込まれる前に除去される。なお、
図1に例示された処理では、初めに、例えば
図2(a)に示されように、絶縁膜11で囲まれた電極12が設けられた基板Wが準備される。
【0014】
まず、例えば
図2(b)に示されるように、基板W上にメモリ素子膜13が形成される(S10)。メモリ素子膜13は、例えばReRAM(抵抗変化型メモリ)に用いられる金属酸化膜が挙げられる。そして、例えば
図2(c)に示されるように、メモリ素子膜13の上に電極膜14が形成される(S11)。電極膜14は、例えば窒化チタンおよびタングステンの積層膜である。
【0015】
次に、例えば
図2(d)に示されるように、電極膜14の上に保護膜15が形成される(S12)。ステップS12は、形成工程の一例である。保護膜15は、電極膜14等の基板Wの特定の領域をエッチング等の予め定められた処理から保護する。本実施形態において、保護膜15は、例えば
図3に示されるように、イソシアネートと2級アミンとを用いた共重合により生成されたポリ尿素膜である。
図3中のR
1、R
2、およびXは、例えばアルキル基またはシクロアルキル基であり、nは2以上の整数である。本実施形態において、保護膜15は、基板Wの温度が例えば80℃に設定された状態で形成される。なお、基板Wに形成された保護膜15は、基板Wに対する予め定められた処理が行われた後、基板Wが250℃以上の温度(例えば400℃)に加熱されることにより、保護膜15がイソシアネートと2級アミンとに解重合する。これにより、基板Wから保護膜15が除去される。
【0016】
次に、例えば
図4(e)に示されるように、保護膜15の上にマスク膜16が形成される(S13)。マスク膜16としては、例えばボロン含有シリコン膜を用いることができる。ボロン含有シリコン膜は、例えばシラン系のガスとドープ用のガスであるB
2H
6ガスとを用いて成膜される。そして、基板Wがエッチングされる(S14)。ステップS14では、マスク膜16の上にレジストパターンが形成され、レジストパターンに沿ってマスク膜16がエッチングされる。そして、レジストパターンに沿ってエッチングされたマスク膜16をハードマスクとして、保護膜15、電極膜14、およびメモリ素子膜13がエッチングされる。これにより、例えば
図4(f)に示されるパターンが基板W上に形成される。
【0017】
次に、例えば
図4(g)に示されるように、マスク膜16、保護膜15、電極膜14、およびメモリ素子膜13を含む積層体の表面を覆うように封止膜17が形成される(S15)。封止膜17は、例えばポリイミド等であり、保護膜15の耐熱性を高めるために設けられる。
【0018】
次に、例えば
図4(h)に示されるように、封止膜17の上にシリコン酸化膜18が形成される(S16)。シリコン酸化膜18は、素子同士を電気的に分離するための素子分離膜として用いられる。シリコン酸化膜18は、例えば真空雰囲気において300℃のプロセス温度でCVD(Chemical Vapor Deposition)により成膜される。
【0019】
次に、基板Wがエッチングされ、例えば
図5(i)に示されるように、コンタクトホール19が形成される(S17)。ステップS17は、処理工程の一例である。ステップS17では、シリコン酸化膜18の上に、開口を有するマスクが形成され、マスクを介して、保護膜15が露出するまで基板Wがエッチングされる。これにより、マスクの開口に対応する位置にコンタクトホール19が形成される。
【0020】
次に、基板Wが加熱されることにより、保護膜15が解重合し、例えば
図5(j)に示されるように、保護膜15が除去される(S18)。ステップS18は、除去工程の一例である。そして、例えば
図5(k)に示されるように、コンタクトホール19内に導電路21が形成される(S19)。ステップS19では、例えば銅等の金属がコンタクトホール19内に埋め込まれ、CMP(Chemical Mechanical Polishing)により余分な金属が除去されることにより、導電路1が形成される。そして、本フローチャートに示された半導体装置の製造方法が終了する。
【0021】
[製造システム10]
図1に例示された製造方法は、例えば
図6に示される製造システム10によって実現される。
図6は、本開示の一実施形態における製造システム10の一例を示すシステム構成図である。製造システム10は、第1の成膜装置2、第2の成膜装置4、エッチング装置5、および熱処理装置6を備える。製造システム10は、マルチチャンバータイプの真空処理システムである。製造システム10は、成膜装置200、第2の成膜装置4、エッチング装置5、および熱処理装置6を用いて、半導体装置を製造する。
【0022】
第1の成膜装置2は、基板W上に予め定められた膜を形成する。第1の成膜装置2は、
図1に例示された製造方法において、例えばステップS10、S11、S13、S15、S16、およびS19の処理を実行する。第2の成膜装置4は、基板W上に、尿素結合を含む重合体の保護膜15を形成する。第2の成膜装置4は、
図1に例示された製造方法において、例えばステップS12の処理を実行する。エッチング装置5は、基板Wに対してエッチングを行う。エッチング装置5は、
図1に例示された製造方法において、例えばステップS14およびS17の処理を実行する。エッチング装置5は、処理装置の一例である。熱処理装置6は、基板Wを加熱することにより保護膜15を除去する処理を行う。熱処理装置6は、
図1に例示された製造方法において、例えばステップS18の処理を実行する。
【0023】
第1の成膜装置2、第2の成膜装置4、エッチング装置5、および熱処理装置6は、平面形状が七角形をなす真空搬送室101の4つの側壁にそれぞれゲートバルブGを介して接続されている。真空搬送室101の他の3つの側壁には、3つのロードロック室102がゲートバルブG1を介して接続されている。3つのロードロック室102のそれぞれは、ゲートバルブG2を介して大気搬送室103に接続されている。
【0024】
真空搬送室101内は、真空ポンプにより排気されて予め定められた真空度に保たれている。真空搬送室101内には、ロボットアーム等の搬送装置106が設けられている。搬送装置106は、第1の成膜装置2、第2の成膜装置4、エッチング装置5、熱処理装置6、およびそれぞれのロードロック室102の間で基板Wを搬送する。搬送装置106は、独立に移動可能な2つのアーム107aおよび107bを有する。
【0025】
大気搬送室103の側面には、基板Wを収容するキャリア(FOUP(Front-Opening Unified Pod)等)Cを取り付けるための複数のポート105が設けられている。また、大気搬送室103の側壁には、基板Wのアライメントを行うためのアライメント室104が設けられている。大気搬送室103内には清浄空気のダウンフローが形成される。
【0026】
大気搬送室103内には、ロボットアーム等の搬送装置108が設けられている。搬送装置108は、それぞれのキャリアC、それぞれのロードロック室102、およびアライメント室104の間で基板Wを搬送する。
【0027】
制御装置100は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件を含むレシピ等が格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、製造システム10の各部を制御する。
【0028】
[第2の成膜装置4の構成]
図7は、保護膜15を形成するための第2の成膜装置4の一例を示す概略図である。第2の成膜装置4は、真空雰囲気を区画する真空容器40を有する。真空容器40内には、基板Wが載せられるステージ44が設けられている。ステージ44には、基板Wの温度を予め定められた温度にするための温調機構が設けられている。真空容器40の上部には、シャワーヘッド43が設けられている。また、真空容器40の下部には、真空容器40内のガスを排気して真空容器40内を予め定められた圧力に制御する排気機構45が設けられている。
【0029】
原料供給源41aには、原料モノマーであるイソシアネートの液体が収容されている。原料供給源42aには、原料モノマーであるアミンの液体が収容されている。気化器41bは、原料供給源41aに収容されたイソシアネートの液体を気化させ、配管41cを介してシャワーヘッド43に供給する。気化器42bは、原料供給源42aに収容されたアミンの液体を気化させ、配管42cを介してシャワーヘッド43に供給する。シャワーヘッド43に供給されたイソシアネートおよびアミンの蒸気は、シャワー状に真空容器40内に供給される。なお、シャワーヘッド43には、下面に多数の吐出孔が形成されており、イソシアネートの蒸気と、アミンの蒸気とは、別々の吐出孔から真空容器40内に吐出される。真空容器40内に供給されたイソシアネートの蒸気とアミンの蒸気は、基板Wの上で重合し、尿素結合を有する保護膜15を形成する。
【0030】
なお、保護膜15は、例えば
図8に示されるような塗布装置3によって基板W上に形成されてもよい。
図8は、保護膜15を形成するための塗布装置3の一例を示す概略図である。塗布装置3は、バキュームチャック31、カップモジュール32、ガイド部材33、および排出空間34を有する。バキュームチャック31は、基板Wを吸着保持して回転機構30により回転する。ガイド部材33は、下方に伸びる外周壁および内周壁が筒状に形成された構造である。排出空間34は、全周に亘って排気、排液を行うことができるように外カップ35と外周壁との間に形成されている。排出空間34の下方側は気液分離できる構造になっている。バキュームチャック31の下方には、例えば発光ダイオードからなる加熱部39が配置されており、加熱部39により基板Wが予め定められた温度まで加熱される。
【0031】
原料供給源38aには、原料モノマーであるイソシアネートの液体が収容されている。原料供給源38bには、原料モノマーであるアミンの液体が収容されている。ノズル38は、原料供給源38aに収容されたイソシアネートの液体と、原料供給源38bに収容されたアミンの液体とを混合して基板Wの中央に供給する。そして、バキュームチャック31に保持された基板Wが回転機構30によって回転することにより、基板W上に供給された混合液が基板Wの上面全体に広がり、基板Wの上面に保護膜15が形成される。
【0032】
[エッチング装置5の構成]
図9は、エッチング装置5の一例を示す概略図である。
図9に例示されたエッチング装置5は、容量結合プラズマを用いてエッチングを行うことができる。エッチング装置5は、導電性の材料により形成された処理容器51を有する。処理容器51は、接地されている。処理容器51には、排気機構52が接続されており、排気機構52によって処理容器51内のガスが排気され、処理容器51内が予め定められた圧力に制御される。
【0033】
処理容器51内には、基板Wが載せられるステージ53が設けられている。ステージ53内には、基板Wを加熱するためのヒータ50が設けられている。また、ステージ53は、処理容器51の底部に電気的に接続されており、アノード電極として機能する。ステージ53の上方には、ステージ53の上面と対向するように、シャワーヘッド54が設けられている。シャワーヘッド54は、絶縁部材54Aを介して処理容器51の上部に支持されている。シャワーヘッド54には、プラズマ発生用の高周波電力を供給する電力源55が接続されている。シャワーヘッド54は、ステージ53に対してカソード電極として機能する。
【0034】
ガス供給源56Aは、エッチングガスを供給する。ガス供給源57Aは、N2ガス等の不活性ガスを給する。流量制御器56Bは、ガス供給源56Aから供給されるエッチングガスの流量を調整してシャワーヘッド54の拡散空間58内に供給する。流量制御器57Bは、ガス供給源57Aから供給される不活性ガスの流量を調整してシャワーヘッド54の拡散空間58内に供給する。拡散空間58内に供給されたガスは、拡散空間58内を拡散し、拡散空間58の下面に形成された複数の吐出口59から処理容器51内にシャワー状に供給される。
【0035】
エッチング装置5は、制御部500を有する。制御部500は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件を含むレシピ等が格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、エッチング装置5の各部を制御する。具体的には、プロセッサは、電力源55のオンおよびオフ、排気機構52の排気量、流量制御器56Bおよび57Bによるガスの流量、ヒータ50への供給電力等を制御する。
【0036】
例えば、シリコン酸化膜18が形成された基板W(
図4(h)参照)がエッチング装置5の処理容器51内に搬入されてステージ53に載せられる。なお、
図4(h)では図示が省略されているが、シリコン酸化膜18上にはコンタクトホール19に対応する領域に開口が形成されたマスクが設けられている。そして、処理容器51内が排気機構52によって排気され、処理容器51内が予め定められた圧力になると、コンタクトホール19を形成するためのエッチングガスがシャワーヘッド54から吐出され、電力源55からシャワーヘッド54に高周波電力が供給される。これにより、シャワーヘッド54とステージ53との間に電界が形成され、エッチングガスがプラズマ化される。そして、プラズマに含まれるイオンおよび活性種により、シリコン酸化膜18がエッチングされてコンタクトホール19が形成され、保護膜15が基板Wの表面に露出する。そして、プラズマを用いたアッシング等によりマスクが除去され、基板Wの表面が例えば
図5(i)に示された状態になる。そして、エッチングガスの供給および高周波電力の供給が停止され、処理容器51内に不活性ガスが供給され、基板Wが処理容器51から搬出される。
【0037】
[熱処理装置6の構成]
図10は、熱処理装置6の一例を示す概略図である。熱処理装置6は、長手方向が垂直方向に向けられた略円筒状の真空容器である容器61を備える。容器61は、内管62と、当該内管62を覆うと共に内管62と一定の間隔を有するように形成された有天井の外管63とから構成された二重管構造を有する。内管62および外管63は、例えば石英等の耐熱材料により形成されている。
【0038】
外管63の下方には、筒状に形成されたステンレス鋼からなるマニホールド64が配置されている。マニホールド64は、外管63の下端と気密に接続されている。また、内管62は、マニホールド64の内壁から突出している。内管62は、マニホールド64と一体に形成された支持リング65に支持されている。
【0039】
マニホールド64の下方には蓋体66が配置されている。蓋体66は、図示しないボートエレベータにより上昇位置と下降位置との間で昇降自在に構成されている。
図10では、上昇位置に位置する状態の蓋体66が例示されており、この上昇位置において蓋体66は、マニホールド64の下方側の容器61の開口部67を閉鎖し、容器61内を気密に維持する。蓋体66の上部にはステージ68が設けられている。ステージ68の上には、基板保持具であるボート7が載せられている。ステージ68と蓋体66都の間には、断熱材79が設けられている。また、蓋体66には、回転機構69が設けられている。回転機構69は、基板Wの熱処理中にステージ68を鉛直周りに回転させる。
【0040】
容器61の周囲には、容器61を取り囲むように断熱体71が設けられている。断熱体71の内壁面には、例えば、加熱部である抵抗発熱体からなるヒータ72が設けられている。ヒータ72によって、容器61内を加熱することができる。また、マニホールド64における支持リング65の下方側には、ノズル73が設けられている。ノズル73は、流量制御器601を介して、N2ガス等の不活性ガスを供給するガス供給源600に接続されており、内管62内に不活性ガスを供給することができる。また、マニホールド64には、支持リング65の上方における側面に容器61内を排気する排気管74の一端が接続され、排気管74の他端は排気機構602に接続されている。
【0041】
ボート7は、互いに対向する天板75および底板76を備える。天板75および底板76は、水平に形成され、上下に垂直に伸びる3つの支柱77(
図10では2本のみ例示されている)の一端および他端に夫々水平に接続されている。各支柱77には、上下方向に基板Wの裏面を支持する図示しない支持部が多数設けられており、この支持部に支持されることで多数の基板Wが上下方向に間隔をおいて棚状に保持される。
【0042】
熱処理装置6は、制御部603を有する。制御部603は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件を含むレシピ等が格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、熱処理装置6の各部を制御する。具体的には、プロセッサは、排気機構602による排気量、排気機構602によって容器61へ供給される不活性ガスの流量、ヒータ72への供給電力等を制御する。
【0043】
[実施例]
図11および
図12は、保護膜15の材料となるイソシアネートおよびアミンの組み合わせの一例を示す図である。比較例は、ベンゼン環を有するイソシアネートと、シクロヘキサン環を有する1級アミンの組み合わせである。実施例1は、シクロヘキサン環を有するイソシアネートと、シクロヘキサン環を有する1級アミンの組み合わせである。実施例2および3は、鎖式構造のイソシアネートと、シクロヘキサン環を有する1級アミンの組み合わせである。実施例4および5は、鎖式構造のイソシアネートと、鎖式構造の1級アミンの組み合わせである。実施例6~8は、鎖式構造のイソシアネートと、鎖式構造の2級アミンの組み合わせである。
【0044】
[実験結果]
図13は、重合体の質量変化の変曲点の温度および残渣率の一例を示す図である。イソシアネートおよびアミンの重合体は、温度上昇に伴って重合反応よりも解重合反応が促進され、重合体の質量が減少する。温度上昇に伴って、重合体の質量が急激に減少する温度が、重合体の質量変化の変曲点である。
【0045】
例えば
図13に示されるように、実施例1~8では、比較例よりも重合体の質量変化の変曲点の温度が高い。即ち、実施例1~8の重合体は、比較例よりも温度安定性に優れていると言える。従って、温度安定性の観点では、実施例1~8の組み合わせによって形成された重合体が好ましい。
【0046】
また、重合体の残渣率については、例えば
図13に示されるように、550℃においては、いずれの実施例についても、重合体の残渣率は95%以上となっている。一方、450℃においては、比較例および実施例6~8の残渣率が95%以上となっている。保護膜15の除去においては、基板Wに設けられた配線材料等の熱に弱い他の構造物への影響を抑制するために、より低い温度で保護膜15が除去されることが好ましい。保護膜15の除去において、基板Wは、例えば400~500℃の範囲内の温度に加熱されることが好ましい。また、実施例6~8の残渣率は、比較例の残渣率よりも低くなっている。そのため、
図13の結果からは、温度安定性および残渣率の観点から、実施例6~8の組み合わせによって形成された重合体が好ましい。即ち、アミンとしては、2級アミンが好ましい。
【0047】
図14は、温度に対する重合体の質量変化の一例を示す図である。例えば
図14に示されるように、実施例7では、400℃付近で重合体の質量変化が95%以上となっており、ほぼ除去されている。一方、実施例1および3では、400℃付近において、実施例7よりも質量変化が少なく、残渣が多くなっている。そのため、より低い温度での重合体の除去という点では、実施例1および3の組み合わせによって形成された重合体よりも実施例7の組み合わせによって形成された重合体が好ましい。
【0048】
ここで、イソシアネートとアミンによって形成された重合体は、加熱されることにより、イソシアネートとアミンに解重合する。しかし、イソシアネートと1級アミンの組み合わせでは、例えば
図15に示されるように、重合体が加熱される過程で、脱水反応が起こり、カルボジイミドを含む他の重合体が生成される場合がある。このような重合体は、加熱しても解重合されないため、加熱しても除去されず、炭化物となる。従って、イソシアネートと1級アミンの組み合わせは、イソシアネートと2級アミンの組み合わせに比べて残渣が多くなると考えられる。従って、残渣の抑制の観点からは、イソシアネートと2級アミンの組み合わせが好ましい。
【0049】
このような2級アミンの基本骨格としては、例えば
図16(a)に示されるような1官能性アミン、および、例えば
図16(b)に示されるような2官能性アミンが挙げられる。
図16(a)および(b)に示されたRおよびXは、例えばアルキル基またはシクロアルキル基である。また、2級アミンとしては、例えば
図17(a)および(b)に示されるような化合物も考えられる。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、イソシアネートと2級アミンの組み合わせで尿素結合を有する重合体の保護膜15が形成される。ところで、イソシアネートは、例えば
図18に示されるように、150℃程度の温度で自己重合を起こす場合がある。自己重合を起こしたイソシアネートの重合体は、加熱しても元のイソシアネートには戻らず残渣となる。そのため、加熱により保護膜15を除去する際の残渣を低減するという点では、自己重合しにくい構造のイソシアネートを用いて保護膜15を形成することが好ましい。本実施形態では、自己重合しにくい構造のイソシアネートを用いて保護膜15が形成される。
【0051】
[実験結果]
図19は、イソシアネートの自己重合の実験結果の一例を示す図である。実験では、イソシアネートの液体を1カ月間150℃に維持し、変色の有無により、自己重合が起こったか否かを判定した。実施例9では、ベンゼン環にイソシアネート基が結合している構造のイソシアネートが用いられた。実施例10では、ベンゼン環に炭素を介してイソシアネート基が結合している構造のイソシアネートが用いられた。実施例11では、シクロヘキサン環に炭素を介してイソシアネート基が結合している構造のイソシアネートが用いられた。実施例12では、鎖式構造のイソシアネートが用いられた。実施例13では、シクロヘキサン環にイソシアネート基が結合している構造のイソシアネートが用いられた。
【0052】
図19に示されるように、実施例9および10のイソシアネートでは、変色が見られ、自己重合が起こっていた。実施例12のイソシアネートでは、僅かに変色が見られ、僅かに自己重合が起こっていた。一方、実施例11および13のイソシアネートでは、変色は見られず、自己重合はほぼ起こっていないと考えられる。即ち、実施例11~13のイソシアネートを用いることにより、実施例9または10のイソシアネートを用いる場合に比べて、残渣を低減することができる。
【0053】
実施例11~13のイソシアネートは、構造上、例えば
図20に示されるような共通点がある。
図20は、イソシアネートの基本骨格の一例を示す図である。
図20において、R
1~R
3の中の2つは炭素化合物であり、残りの1つは炭素化合物または水素原子である。即ち、
図20に例示されたイソシアネートの基本骨格では、イソシアネート基に含まれる窒素原子が、2級または3級の非芳香族炭素に結合している。非芳香族炭素とは、例えば、鎖式構造または環状構造の炭化水素化合物を構成する炭素である。このような構造のイソシアネートを用いることにより、加熱により保護膜15を除去する際の残渣をより低減することができる。
【0054】
なお、
図20では、1つのイソシアネート基を有する1官能性のイソシアネートが例示されているが、イソシアネートは2つのイソシアネート基を有する2官能性のイソシアネートであっても、残渣の低減効果が得られる。
図20に例示された基本骨格を有する2官能性のイソシアネートとしては、例えば
図21(a)~(c)に例示されるような構造も考えられる。
【0055】
[構造異性体]
図22は、構造異性体を含む場合と構造異性体を含まない場合のイソシアネートとアミンの組み合わせの一例を示す図である。実施例14では、イソシアネートおよびアミンのそれぞれにおいて、cis体およびtrans体の構造異性体が含まれている。実施例15では、イソシアネートについては構造異性体のうちtrans体のみが含まれており、アミンについては、cis体およびtrans体の構造異性体が含まれている。実施例16では、イソシアネートおよびアミンのそれぞれにおいて、構造異性体のうちtrans体のみが含まれている。
【0056】
図23は、温度に対する重合体の質量変化の一例を示す図である。例えば
図23に示されるように、400℃付近では、イソシアネートおよびアミンの双方に構造異性体が含まれる実施例14が、イソシアネートおよびアミンの少なくともいずれか一方に構造異性体を含まない実施例15および16よりも質量変化が大きい。従って、400℃付近では、実施例14は、実施例15および16よりも残渣が少ない。また、実施例15と実施例16とを比較すると、400℃付近では、アミンに構造異性体が含まれる実施例15が、イソシアネートおよびアミンの両方に構造異性体を含まない実施例16よりも質量変化が大きい。従って、400℃付近では、実施例15は、実施例16よりも残渣が少ない。
【0057】
ここで、構造異性体、特にtrans体は結晶性が高くなることが知られている。そのため、trans体のみを有するモノマーのみで形成されたポリマーは、結晶性が高いと考えられる。ポリマーの結晶性が高くなると、結晶構造を崩すためのより大きい熱エネルギーが必要になるため、結果としてポリマーの分解温度が上がってしまうと考えられる。そのため、構造異性体を含むモノマーを用いて形成されたポリマーの方がより低温で除去することが可能となる。即ち、低温での除去性能の観点では、実施例16よりも実施例14および実施例15の方が好ましく、実施例15よりも実施例14の方が好ましい。従って、イソシアネートには、構造異性体が含まれることが好ましい。また、アミンには、構造異性体が含まれることが好ましい。
【0058】
例えば、アミンおよびイソシアネートの好ましい構造の一例を挙げるとすれば、例えば
図24および
図25に示されるような構造が好ましい。
図24は、1級アミンおよび2級アミンの一例を示す図である。
図25は、3級の非芳香族炭素に結合している窒素原子を含むイソシアネート基を有するイソシアネートの一例を示す図である。
図24に例示されたいずれかの構造のアミンと、
図25に例示されたいずれかの構造のイソシアネートとの組み合わせを用いて、ポリ尿素膜の保護膜15が形成される。なお、
図24に例示されるアミン、および、
図25に例示されるイソシアネートは、いずれも、構造異性体が含まれるモノマーであることを想定している。
【0059】
以上、実施形態について説明した。上記したように、上記した実施形態における半導体装置の製造方法は、形成工程と、処理工程と、除去工程とを含む。形成工程では、基板Wの表面にアミンおよびイソシアネートを供給することにより、基板Wの特定の領域に設けられる保護膜15であって、尿素結合を有する重合体により構成される保護膜15が基板Wに形成される。処理工程では、保護膜15が形成された基板Wに対してエッチング等の予め定められた処理が行われる。除去工程では、基板Wを加熱して重合体を解重合させることにより、保護膜15が除去される。イソシアネートが有するイソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、2級または3級の非芳香族炭素である。これにより、加熱により保護膜15を除去する際の残渣を低減することができる。
【0060】
また、上記した実施形態において、イソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、鎖式構造または環状構造の炭化水素化合物を構成する炭素である。また、アミンは、2級アミンである。これにより、加熱により保護膜15を除去する際の残渣を低減することができる。
【0061】
また、上記した実施形態において、除去工程では、基板Wは、400℃~500℃の範囲内の温度に加熱される。これにより、保護膜15の除去において、基板Wに設けられた配線材料等の熱に弱い他の構造物への影響を低減することができる。
【0062】
また、上記した実施形態において、イソシアネートは、構造異性体を含まないことが好ましい。これにより、加熱により保護膜15を除去する際の残渣をより低減することができる。
【0063】
また、上記した実施形態において、アミンは、2つの2級アミン官能基を有する2官能性アミンであってもよい。このようなアミンを用いても、加熱により保護膜15を除去する際の残渣を低減することができる。
【0064】
また、上記した実施形態において、イソシアネートは、2つのイソシアネート基を有する2官能性イソシアネートであってもよい。このようなアミンを用いても、加熱により保護膜15を除去する際の残渣を低減することができる。
【0065】
また、上記した実施形態における半導体装置の製造システム10は、第2の成膜装置4と、エッチング装置5と、熱処理装置6とを備える。第2の成膜装置4は、基板Wの表面にアミンおよびイソシアネートを供給することにより、基板Wの特定の領域に設けられる保護膜15であって、尿素結合を有する重合体により構成される保護膜15を基板Wに形成する。エッチング装置5は、保護膜15が形成された基板Wに対してエッチング等の予め定められた処理を行う。熱処理装置6は、予め定められた処理が行われた基板Wを加熱して重合体を解重合させることにより、保護膜15を除去する。イソシアネートが有するイソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素は、2級または3級の非芳香族炭素である。これにより、加熱により保護膜15を除去する際の残渣を低減することができる。
【0066】
また、上記した実施形態において、熱処理装置6は、基板Wを400℃~500℃の範囲内の温度に加熱する。これにより、保護膜15の除去において、基板Wに設けられた配線材料等の熱に弱い他の構造物への影響を低減することができる。
【0067】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0068】
例えば、上記した第1の実施形態と第2の実施形態とは、組み合わせることが可能である。具体的には、イソシアネート基に含まれる窒素原子に結合している炭素が2級または3級の非芳香族炭素であるイソシアネートと、2級アミンとを用いて、保護膜15が形成されてもよい。これにより、加熱により保護膜15を除去する際の残渣をさらに低減することができる。
【0069】
また、上記した実施形態では、メモリ素子の製造過程において、尿素結合を有する重合体の保護膜15がエッチングのストッパとして用いられた。しかし開示の技術はこれに限られない。尿素結合を有する重合体が犠牲膜として用いられる用途であれば、保護膜15は、エアギャップの作成にも用いることができる。例えば、基板Wに設けられた凹部に保護膜15が埋め込まれ、凹部内の保護膜15の上に封止膜が積層される。そして、基板Wが加熱されることにより、保護膜15が解重合し、モノマーとなって封止膜を介して凹部から除去される。これにより、封止膜と凹部との間にエアギャップが形成される。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
W 基板
10 製造システム
11 絶縁膜
12 電極
13 メモリ素子膜
14 電極膜
15 保護膜
16 マスク膜
17 封止膜
18 シリコン酸化膜
19 コンタクトホール
21 導電路
2 第1の成膜装置
3 塗布装置
4 第2の成膜装置
5 エッチング装置
6 熱処理装置