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特開2023-10238電子レンジ加熱調理用粒状食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010238
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱調理用粒状食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/16 20060101AFI20230113BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20230113BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20230113BHJP
   A23L 11/00 20210101ALN20230113BHJP
【FI】
A23J3/16 501
A23J3/00 501
A23L29/219
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114225
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 健矢
(72)【発明者】
【氏名】勝川 雅裕
【テーマコード(参考)】
4B020
4B025
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LB30
4B020LC04
4B020LG01
4B020LK02
4B020LK05
4B020LK07
4B020LP03
4B020LP16
4B020LP30
4B025LD02
4B025LG28
4B025LG32
4B025LG42
4B025LG60
4B025LP01
4B025LP04
4B025LP05
4B025LP06
4B025LP07
4B025LP15
(57)【要約】
【課題】電子レンジで加熱調理することで、見た目、食感や風味が違和感なく主食となる粒状の食品を簡便に得る。
【解決手段】大豆タンパクに加えて、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉を混合し、エクストルーダーなどで加圧加熱して粒状食品を得る。適量の水を入れて1分程度電子レンジで加熱調理すると、挽肉のような食感を出さず適度な硬さの新しい食感の粒状の食品が得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉と、大豆タンパクを含有する電子レンジ加熱調理用の粒状食品。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉と、大豆タンパクを混合し、加圧加熱して米粒状に成型することを特徴とする電子レンジ加熱調理用の粒状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジでの加熱調理に適した粒状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆は食物繊維や植物性タンパク質が豊富で健康に資するとされるが、主食として食する場合、見た目、食感や風味に違和感が生じる。例えば、従来の大豆タンパクのみの加工品では挽肉のような食感となり、主食として食するには不適である。しかし、炊飯米のような柔らかな食感としてしまうと大豆タンパクの特徴が活かせなくなる。
【0003】
特許文献1には、米飯の代替として大豆粉および加工澱粉類を原料として用いて製造された人造米が記載されている。大豆の栄養素を豊富に含み、調理直後だけでなく、喫食時、さらには調理後に長期放置された場合にも劣化が少なく、すぐれた食味や外観を有している。しかし、単体で、或いは精白米や玄米、胚芽米などに混ぜて適当な量の水を加えた後、炊飯などの加圧加熱調理する必要がある。
タンパク原料と加工澱粉を用いた蛋白組織化物としては、特許文献2に、蛋白原料、ヒドロキシプロピル化澱粉及び水を加圧加熱下に押し出して膨化させた蛋白組織化物が記載されている。しかし、この蛋白組織化物は、ハンバーグ等の加工肉製品や惣菜に添加するための蛋白組織化物であり、主食として食するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-153396号公報
【特許文献2】特開2008-011727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電子レンジで加熱調理することで、見た目、食感や風味が違和感なく主食となる粒状の食品を簡便に得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、大豆タンパクに加えて、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉を混合し、エクストルーダーなどで加圧加熱して米粒状に成形した食品は、適量の水を入れて1分程度電子レンジで加熱調理すると、挽肉のような食感を出さずに適度な硬さの新しい食感の粒状食品を得られることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す電子レンジ加熱調理用の粒状食品及びその製造方法である。
(1)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉と、大豆タンパクを含有する電子レンジ加熱調理用の粒状食品。
(2)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉と、大豆タンパクを混合し、加圧加熱して米粒状に成型することを特徴とする電子レンジ加熱調理用の粒状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子レンジ加熱調理用の粒状食品は、適量の水を入れて1分程度電子レンジで加熱調理すれば、見た目、食感や風味が違和感なく主食となる粒状食品を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するには、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉と、大豆タンパクとを混合し、エクストルーダーなどで加圧加熱して米粒状に形成する。
【0010】
本発明で使用する大豆タンパク原料としては、全脂大豆、脱脂大豆、豆乳粉末、濃縮大豆タンパク、分離大豆タンパク、おから等、或いはこれらの1種或いは2種以上の混合物から選ぶことが出来るが、その中でも特に分離大豆タンパクを用いることが好ましい。
【0011】
本発明では、大豆タンパクと共にヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉を使用する。大豆原料のみでは硬い挽肉のような食感になってしまうが、澱粉原料を添加することで、電子レンジによる加熱調理した粒状食品での挽肉のような食感を低減し、白米よりも玄米の炊飯米に近い食感を付与することができる。澱粉原料としては、馬鈴薯、タピオカ、コーン、米、小麦など食品用途として使用される澱粉原料が知られているが、本発明において澱粉の由来としてはタピオカ又は馬鈴薯である必要があり、タピオカ及び馬鈴薯以外の澱粉では、硬さ及び弾力が弱くなってしまうので好ましくない。
また、澱粉の加工処理はヒドロキシプロピル化リン酸架橋又はヒドロキシプロピル化である必要があり、リン酸架橋だけでは、肉様の硬い食感となるため、本発明の粒状食品を電子レンジ加熱調理したときに見た目、食感や風味に違和感があり、主食となる粒状食品とはならない。
【0012】
本発明では、大豆タンパクと澱粉との配合割合は重要である。大豆タンパクと澱粉の重量比が9:1~3:2の範囲で本発明の効果が得られる。
【0013】
また、本発明の粒状食品に含まれる大豆タンパクと澱粉との配合割合は重要である。大豆タンパクは90~60重量%、澱粉は10~40重量%が好ましい。
【0014】
本発明の粒状食品は電子レンジで加熱調理して食する。本発明の粒状食品に対して適量の水を添加して600W電子レンジで1分間加熱することで、見た目、食感や風味が違和感なく主食となる粒状食品を簡便に得ることができる。
【0015】
電子レンジ調理時に水以外に、調味料を加えても良い。調味料の原材料として、醤油、砂糖や果糖ぶどう糖液糖などの糖類、みりんや酒精含有調味料などの酒類調味料、タンパク加水分解物、酵母エキス、昆布エキス、魚介エキス、野菜エキス、畜肉エキスなどのうまみ原料、キサンタンガムなどの増粘剤、唐辛子、胡椒、ターメリックなどの香辛料、食塩などが挙げられる。また、ネギ、ショウガやニンニクなどの具材を加えてもよい。
【0016】
上記の調味料や具材の乾燥物を本発明の粒状食品に付着させるか、混合しておけば、適量を取って、水を加えて電子レンジで加熱調理することで、簡便に味付きで主食となる粒状食品が得られる。
【0017】
以下、実施例を示して本発明の効果をより具体的に説明する。
【実施例0018】
(澱粉原料の検討)
大豆タンパクと共に使用する澱粉原料として、次の澱粉を検討した。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業社製、松谷あさがお)
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉(松谷化学工業社製、松谷ゆり)
リン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業社製、パインベークCC)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉(松谷化学工業社製、ファリネックスVA17)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシーコーン澱粉(松谷化学工業社製、パインエース1)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋コーン澱粉(松谷化学工業社製、ファリネックスLCF)
分離大豆タンパク(不二製油社製、フジプロ748)79kgに対して上記各種加工澱粉を19.5kg、さらに、おから粉末(キッコーマンソイフーズ社製、豆乳おからパウダー)1.0kg、炭酸カルシウム0.5kgを混合し、二軸エクストルーダーにより膨化させた。
【0019】
二軸エクストルーダーは、幸和工業社製 KEI-45-25型を用いた。原料供給量は12.0~17.0kg/h、加水量5.0~9.0kg/h、1×2.7mmの米型のダイを使用し、バレル温度40~140℃、スクリュー回転数は130rpmとした。
【0020】
膨化させた後、送風低温恒温器(ヤマト科学社製、DKN603型)で80℃60分間乾燥させて、長辺約5mm、短辺約3mm、嵩比重200~300g/Lの粒状食品を得た。
【0021】
(官能評価)
上記粒状食品30gに水を35ml加えて600W電子レンジ(YAMAZEN社製、オーブンレンジMOR-1216型)で1分加熱し、試食用のサンプルを得た。市販の玄米(秋田県産あきたこまち玄米)を常法により炊飯器で炊飯して炊飯玄米を調製し、対照とした。3名のパネルによって、硬さ、弾力、口溶けについて評価した。ここで、硬さとは、噛み始めたときに感じる強さとし、弾力とは、噛んだ後に押し戻される強さとした。対照の炊飯玄米と比較し、硬さについては、同等を3、硬い又は柔らかいを2、かなり硬い又はかなり柔らかいを1とした。弾力については、強いを3、同等を2、弱いを1とした。口溶けについては、同等を3、悪い又は良いを2、かなり悪い又はかなり良いを1とした。評価結果を表1に示した。また、総合評価として最も良いものを◎、良いものを〇、やや良いものを△として表1に記載した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示したように、大豆タンパクと共に使用する澱粉の種類によって、粒状食品の特徴が異なることがわかる。
対照の炊飯玄米と比べて、リン酸架橋タピオカ澱粉では、硬さはかなり硬く、口溶けはかなり悪かった。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシーコーン澱粉では、硬さは柔らかく、口溶けはかなり良かった。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋コーン澱粉では、硬さは柔らかく、口溶けはかなり良かった。そのため、目標とする食感にはならなかった。
【0024】
一方、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋馬鈴薯澱粉及びヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のうち少なくとも一つの澱粉を使用することにより、電子レンジによる加熱調理した粒状食品は、炊飯玄米と同等の硬さがあり、炊飯玄米よりも強い弾力があって、炊飯玄米と同等の口溶けとなり、目標とする食感が得られた。
【実施例0025】
(大豆タンパクと加工澱粉の配合比率)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業社製、松谷あさがお)及び分離大豆タンパク(不二製油社製、フジプロ748)を原料として使用して、大豆タンパクと加工澱粉の最適な比率について検討した。試料の調製は実施例1と同様に行った。官能評価は次のように行った。3名のパネルによって、湯溶け、食感(噛み出しの硬さ)、食感(口溶け)について評価した。湯溶けは、電子レンジ加熱調理後の粒状食品の溶解状態を観察した。ここでは容易に溶解しないものを目標の性質として、溶解が観察されないものを〇、若干溶解するものを△とした。食感については、噛み出し硬さと口溶けについて評価を行った。実施例1の炊飯玄米を対象として同等の硬さのものを〇、やや柔らかいものを△、柔らかいものを×とした。口溶けについても同様に炊飯玄米を対象として、同等を〇、若干舌に残るものを△とした。また、総合評価として最も良いものを◎、良いものを〇、普通のものを△、適さないものを×として表2に記載した。
【0026】
【表2】
【0027】
表2に示したように、大豆タンパクと加工澱粉の配合比率は、大豆タンパク80~60重量%に対して、加工澱粉20~40重量%とすればよいことがわかる。