(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102678
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】電波ホログラム通信装置及び電波ホログラム通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/026 20170101AFI20230718BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
H04B7/026
H04L27/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003333
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100169797
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭宜
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩司
(57)【要約】
【課題】多数の基地局を同期させ位相やタイミングを適切に制御することにより、複数の基地局と複数の端末が安定に無線通信できる電波ホログラム通信装置及び電波ホログラム通信方法を提供する。
【解決手段】電波ホログラム通信装置は、複数の基地局から送信される搬送波の位相を同期する基地局間同期部と、基地局と端末とを同期する基地局端末間同期部と、端末から送信される基準波を複数の基地局が受信した受信時刻、振幅及び位相を計測する計測部と、計測部によって計測された受信時刻、振幅及び位相の情報に特定の時間遅延を与える時間調整部と、時間調整部からの出力波形に基づいて、出力波形を特定の波形に変換する波形変換部と、波形変換部からの出力波形に従った信号を送信する送信部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局から送信される搬送波の位相を同期する基地局間同期部と、
前記基地局と端末とを同期する基地局端末間同期部と、
前記端末から送信される基準波を複数の前記基地局が受信した受信時刻、振幅及び位相を計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記受信時刻、前記振幅及び前記位相の情報に特定の時間遅延を与える時間調整部と、
前記時間調整部からの出力波形に基づいて、前記出力波形を特定の波形に変換する波形変換部と、
前記波形変換部からの出力波形に従った信号を送信する送信部と
を備える電波ホログラム通信装置。
【請求項2】
前記波形変換部は、第1の端末から送信される前記基準波を受信する複数の前記基地局のうち、前記第1の端末が最遠となる前記基地局における前記基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第1の逆波形とし、
前記送信部は、前記第1の端末と複数の前記基地局との複数経路による並列冗長通信を実行する請求項1記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項3】
前記波形変換部は、
第2の端末から送信される前記基準波を受信する複数の前記基地局のうち、前記第2の端末が最遠となる前記基地局における前記基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第2の逆波形とし、
前記第1の逆波形と前記第2の逆波形とを対応付けすることによって、前記第1の端末からの信号を前記第2の端末に伝送する場合、前記第1の逆波形を前記第2の逆波形に変換する請求項2記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項4】
前記時間調整部は、複数の前記基地局と、特定の前記端末との距離が異なることによる到達時間差を利用し、信号が時間遅れを伴いながら前記特定の端末の位置において重なり合い、畳込み符号化された信号が形成されるように、複数の前記基地局からの信号の送信タイミングを調整する請求項1に記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項5】
前記時間調整部は、畳込み符号化で生じる冗長ビット分を変調の多値に割り当てたトレリス符号化変調に必要な時間遅れを調整する請求項4に記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項6】
前記時間調整部は、前記端末から前記基地局に送信する上り方向のデータが少なく、前記基地局から複数の端末に同じデータを送信する場合、前記基地局から前記端末までの距離の違いによる到達時間差が、信号の時間変化に対して十分小さくなるように信号の時間周期を長くする請求項1に記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項7】
前記送信部は、キャリア及びサブキャリアの少なくとも何れかの周波数を多重化した信号を送信する請求項1記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項8】
前記送信部は、2つの直交直線偏波によって多重化した信号を送信する請求項1記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項9】
前記送信部は、左右回転円偏波によって多重化した信号を送信する請求項1記載の電波ホログラム通信装置。
【請求項10】
複数の基地局から送信される搬送波の位相を同期するステップと、
前記基地局と端末とを同期するステップと、
前記端末から送信される基準波を複数の前記基地局が受信した受信時刻、振幅及び位相を計測するステップと、
計測された前記受信時刻、前記振幅及び前記位相の情報に特定の時間遅延を与えるステップと、
前記時間遅延が与えられた出力波形に基づいて、前記出力波形を特定の波形に変換するステップと、
変換されて前記出力波形に従った信号を送信するステップと
を含む電波ホログラム通信方法。
【請求項11】
前記波形を変換するステップでは、第1の端末から送信される前記基準波を受信する複数の前記基地局のうち、前記第1の端末が最遠となる前記基地局における前記基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第1の逆波形とし、
前記送信するステップでは、前記第1の端末と複数の前記基地局との複数経路による並列冗長通信を実行する請求項10に記載の電波ホログラム通信方法。
【請求項12】
前記波形を変換するステップでは、
第2の端末から送信される前記基準波を受信する複数の前記基地局のうち、前記第2の端末が最遠となる前記基地局における前記基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第2の逆波形とし、
前記第1の逆波形と前記第2の逆波形とを対応付けすることによって、前記第1の端末からの信号を前記第2の端末に伝送する場合、前記第1の逆波形を前記第2の逆波形に変換する請求項11に記載の電波ホログラム通信方法。
【請求項13】
前記時間遅延を与えるステップでは、複数の前記基地局と、特定の前記端末との距離が異なることによる到達時間差を利用し、信号が時間遅れを伴いながら前記特定の端末の位置において重なり合い、畳込み符号化された信号が形成されるように、複数の前記基地局からの信号の送信タイミングを調整する請求項10に記載の電波ホログラム通信方法。
【請求項14】
前記時間遅延を与えるステップでは、畳込み符号化で生じる冗長ビット分を変調の多値に割り当てたトレリス符号化変調に必要な時間遅れを調整する請求項13に記載の電波ホログラム通信方法。
【請求項15】
前記時間遅延を与えるステップでは、前記端末から前記基地局に送信する上り方向のデータが少なく、前記基地局から複数の端末に同じデータを送信する場合、前記基地局から前記端末までの距離の違いによる到達時間差が、信号の時間変化に対して十分小さくなるように信号の時間周期を長くする請求項10に記載の電波ホログラム通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局と複数の端末が電波ホログラム通信装置及び電波ホログラム通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などのモバイル通信のサービスエリアとは、基地局と端末を接続する無線チャネルを設定できる領域である。これまで面的なサービスエリアの設計は、電波の到達しない場所をなるべく作らないことを基本としており、また複数の基地局からの電波で生じる干渉による影響を受けにくくしている。これらにより、端末(User Equipment, UEと呼ばれてもよい)と基地局との無線チャネルによる通信を可能にしている(非特許文献1,2)
第1世代と第2世代モバイル通信方式において、複数のキャリア周波数を利用することから、キャリア周波数の繰り返しを考慮したサービスエリア設計がなされている(非特許文献1,2)。
【0003】
第3世代モバイル通信方式では第1世代と第2世代モバイル通信方式に比較してキャリア周波数が少ないことから、隣接するサービスエリアからの干渉を軽減する技術が利用されている。また、第4世代モバイル通信方式において、直交周波数分割多元接続(OFDMA)が利用されることから、隣接サービスエリアでも同一のキャリア周波数を利用できる技術が導入されている。
【0004】
このようにモバイル通信のサービスエリア設計は、技術的な工夫を積み重ねているが、もともとの設計指針、すなわち、電波の到達しない場所をなるべく作らず、また複数の基地局からの電波で生じる干渉による影響を受け難くするという設計指針から大きく変わるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】桑原守二監修、「自動車電話」、電子情報通信学会編、1985年
【非特許文献2】奥村善久、進士昌明監修、「移動通信の基礎」、電子情報通信学会編、1986年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線通信において、通信速度を向上させるためには、広い帯域幅がとれるキャリア周波数の高周波化による方法が考えられる。一般にキャリア周波数の高周波化は、水蒸気や雨雪の吸収・散乱による長距離伝搬の困難性を顕在化させる。また、波長が短くなることにより、日常生活環境にある様々な構造体の裏側まで電波が回り込んで到達できるような回折が困難になり、電波の到達範囲が至る場所で制限される。その結果、いわゆる不感地をなくすためにアンテナを各所に増設することが避けられない。
【0007】
このような環境により、コストの高騰やシステムの複雑化などネガティブな側面が目立ってくる。多数のアンテナを使うことが必然となり、意図しない干渉による悪影響が大きな問題となる。通信速度の向上の要請により、例えばMassive MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)のように多数のアンテナを使用する方法が実用化されている。しかし、このような方法は、比較的狭い空間領域にアンテナが整列配置されており、ビームフォーミングを行い、Massive MIMO用の多数のアンテナをあたかも一つの高指向性のアンテナとして使用するものであった。
【0008】
従来のモバイル通信は、複数の基地局のカバー領域(セル)が重ならないように、しかも最密充填するように六角形のセルで構成することを理想としてきた。セル境界では、隣接する基地局からの電波の干渉によって通信が阻害されやすい。また、どの基地局からの電波も届かないか、届いても電界の弱い空白地帯があると、著しく利便性を損なう。よって、そのサービスエリア設計においては、セル境界を適切に設計する必要があった。しかし電波の強度をある境界を超えた途端に急激に減衰させることは本質的にできない。
【0009】
従来のモバイル通信は、基地局間の距離が非常に離れており、その結果端末から見込んだ基地局の角度は水平に近い小さな角度であった。その間の電波の伝搬空間には自然や人工の構造物が多く、回折による多重経路の干渉が発生していた。しかし、今後は使用するキャリア周波数の高周波数化により、基地局が多く必要になるため基地局間の距離が短くなり、端末から基地局を見込む角度も上向きに大きな角度になる。また、ドローンやバルーンによる上空から電波を供給することも可能になる。このような電波設備環境の変化により、直接波を受けやすくなるが、複数の基地局から電波を受信できることから意図しない干渉が増大する懸念がある。
【0010】
そこで、以下の開示は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、多数の基地局を同期させ位相やタイミングを適切に制御することにより、複数の基地局と複数の端末が安定に無線通信できる電波ホログラム通信装置及び電波ホログラム通信方法を提供することを目的とする。
【0011】
これまでの干渉を除去する考え方ではなく、端末の場所で意図的に干渉させて高い電界強度を形成するような概念であり、干渉をむしろ積極的に活用して、通信エリア内の電界の空間分布を制御する発想である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、複数の基地局(基地局100)から送信される搬送波の位相を同期する基地局間同期部(基地局間同期部110)と、前記基地局と端末とを同期する基地局端末間同期部(基地局端末間同期部120)と、前記端末から送信される基準波を複数の前記基地局が受信した受信時刻、振幅及び位相を計測する計測部(計測部130)と、前記計測部によって計測された前記受信時刻、前記振幅及び前記位相の情報に特定の時間遅延を与える時間調整部(時間調整部150)と、前記時間調整部からの出力波形に基づいて、前記出力波形を特定の波形に変換する波形変換部(波形変換部160)と、前記波形変換部からの出力波形に従った信号を送信する送信部(送信部170)とを備える電波ホログラム通信装置である。
【0013】
このような電波ホログラム通信装置は、基地局間同期部により、複数の基地局の搬送波の位相を同期させ、さらに基地局端末間同期部により基地局と端末を同期させる。これらの相互の同期により、端末を含めた通信システム全体が位相やタイミングが揃ったコヒーレントな動作をすることができるようになる。
【0014】
そして、端末から基準波を送信し、複数の基地局がそれを受信して、計測部は、受信した時刻と振幅と位相を計測する。時刻を計測することにより、幾何学的な距離だけではなく、途中の媒体による電磁気的な影響を含めた電気的距離の補正が可能になる。振幅と位相は、信号そのものの情報であるが、複数の端末からの信号と重なり合うホログラムになった場合には、端末の位置の情報も含んでおり、位置情報も計測できるといった効果がある。
【0015】
次に、情報記録部が、受信時刻、振幅及び位相の情報を保存することによって、光速で飛び去る情報を停止させることに相当し、その後の信号処理を可能とする効果がある。
【0016】
次に、時間調整部が、それらの記録された情報に所望の時間遅延を与えることによって、基地局から端末に電波を送り返す際に、距離の差または伝播媒体の状態によりコヒーレンスが失われる悪影響を補正する効果がある。
【0017】
波形変換部は、時間調整部の出力波形を所望の波形に変換する機能を有し、特に特定の端末間をホログラム干渉により接続する切替器の働きもする。
【0018】
送信部は、基地局から端末に電波を送信し、双方向の通信を可能とする。適切な位相及びタイミングによって複数の基地局から送信された電波は、媒体中を伝搬し端末の存在する場所でちょうど位相及びタイミングが一致し、高い電界強度が得られる。これにより、電波ホログラム通信装置は、電界強度分布を三次元空間で所望の分布に制御することが可能となる。
【0019】
本開示の一態様では、前記波形変換部は、第1の端末から送信される前記基準波を受信する複数の前記基地局のうち、前記第1の端末が最遠となる前記基地局における前記基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第1の逆波形とし、前記送信部は、前記第1の端末と複数の前記基地局との複数経路による並列冗長通信を実行してもよい。
【0020】
このような電波ホログラム通信装置は、端末から基準波を出射し、複数の基地局においては、その受信した基準波を最遠の端末からの電波の到来が完了するまでの時間範囲で波形を記録し、記録した波形の時間(サンプリングクロック)の順番を逆転させる。
【0021】
距離が近い場合は電波が早く到来し、遠くの場合は遅く到来する。この時間的なズレを無くして位相も合わせるには、遅く到来した波形は早く、早く到来した波形は遅く送り返すことによって、元の端末位置には同一タイミング及び同一位相において電波が重なり合う。
【0022】
また、電波の伝播経路で幾何学的最短距離以外の要素による時間遅れ、例えば、誘電率の違い、回折、反射などが発生した場合でも、電波の伝搬速度に対して、そのような影響の時間変化は十分に低速であり、電波の往路と復路では時間発展が対称的となる。そのため、時間反転した逆波形を使えばそのような悪影響はキャンセルすることができる。
【0023】
さらにホログラムによる並列の経路が多数あり、冗長性があるため、一部の経路に問題があっても、別の経路で補完される。これらの効果により、距離が近い基地局からの信号が順次到来して、波形の立ち上がりに過渡状態が発生することなく、短時間で波形が立ち上がり安定で高速な通信が実現できる。
【0024】
注目する特定の端末の位置では、重ね合わせによって電界強度が増大し、一方で注目する端末以外においては、位相がランダムに変化して重ね合わせによる平均化により電界強度が減少することにより、混信に強く、物理レイヤーでの秘話性も向上する効果がある。
【0025】
本開示の一態様では、前記波形変換部は、第2の端末から送信される前記基準波を受信する複数の前記基地局のうち、前記第2の端末が最遠となる前記基地局における前記基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第2の逆波形とし、前記第1の逆波形と前記第2の逆波形とを対応付けすることによって、前記第1の端末からの信号を前記第2の端末に伝送する場合、前記第1の逆波形を前記第2の逆波形に変換してもよい。
【0026】
このような電波ホログラム通信装置は、第1の端末で行った操作と同様のことを第2の端末においても実施する。これにより、第1の端末と第2の端末との両方の逆波形がわかる。第1の端末と第2の端末との間で通信を行う場合には、第1の端末からの基準波を受信したときの波形(または逆波形でも等価)を受け取った場合に、第2の端末からの基準波を受信したときの波形(または逆波形でも等価)に変換すればよい。なぜならば第2の端末からの逆波形を送信すれば、第2の端末の場所で建設的干渉(強め合う干渉)が自然と起きるからである。
【0027】
なお、ここでは端末を第2の端末としたが、第2の端末は一つに限定されるものではなく、線形加算が成り立つので、複数の第2の端末があっても、それぞれの逆波形を重ね合わせた波形を送信すれば、同時に複数の第2の端末に電波を分配することが可能となる。すなわち、電波ホログラム通信装置は、端末と端末との切り替えスイッチであり、複数端末へも同時に配信することができる分配器としての機能も併せ持つ。
【0028】
本開示の一態様では、前記時間調整部は、複数の前記基地局と、特定の前記端末との距離が異なることによる到達時間差を利用し、信号が時間遅れを伴いながら前記特定の端末の位置において重なり合い、畳込み符号化された信号が形成されるように、複数の前記基地局からの信号の送信タイミングを調整してもよい。
【0029】
このような電波ホログラム通信装置は、複数の基地局と特定の端末との間の距離が異なることによる到達時間差を利用して、畳込み符号化に必要な時間シフトを実現する。畳み込み符号化は、同じ信号系列ではあるが、時間を少しずつずらして、現在の信号と過去の信号を重ね合わせることにより冗長性を付加するものである。変調されて情報を含んだ電波は、ターゲットとなる特定の端末の位置で重なり合い畳み込み符号化が完成する。基地局からの電波の出射タイミングを適切に調整して出射すれば、特定の端末に到着した瞬間に逐次畳符号化が実現される。他の端末の位置では、位相が合わないので、畳符号化は実行できない。これにより、物理レイヤーでの高速な誤り訂正符号と秘話化が実行される効果がある。
【0030】
本開示の一態様では、前記時間調整部は、畳込み符号化で生じる冗長ビット分を変調の多値に割り当てたトレリス符号化変調に必要な時間遅れを調整してもよい。
【0031】
このような電波ホログラム通信装置は、複数の基地局と特定の端末間の距離が異なることによる到達時間差を利用して、トレリス符号化変調の畳み込み符号化を実現する。トレリス符号化変調は、畳込み符号化で生じる冗長ビット分を変調の多値に割り当てる。これにより、多値変調におけるハミング距離とユークリッド距離の変換を実時間で実行することが可能となり、ビット誤り率と符号化効率を向上する効果がある。
【0032】
本開示の一態様では、前記時間調整部は、前記端末から前記基地局に送信する上り方向のデータが少なく、前記基地局から複数の端末に同じデータを送信する場合、前記基地局から前記端末までの距離の違いによる到達時間差が、信号の時間変化に対して十分小さくなるように信号の時間周期を長くしてよい。
【0033】
このような電波ホログラム通信装置は、端末から基地局へ送る上り方向のデータが少なく、基地局から複数の端末に同じデータを送るブロードキャストを行う場合は、時間反転をしなくても機能する。基地局から端末までの距離の違いによる到達時間差が、信号の時間変化に対して十分小さくなるように信号の時間周期を長くすれば、任意の電界の空間分布の制御性を保ったまま、より多くの端末に同時に情報を送ることができる。
【0034】
本開示の一態様では、前記送信部は、キャリア及びサブキャリアの少なくとも何れかの周波数を多重化した信号を送信してよい。
【0035】
このような電波ホログラム通信装置は、周波数の異なるキャリアやサブキャリアを使用して多重化することにより、より多くの端末との通信を可能とし、大容量の通信を可能とする効果がある。
【0036】
本開示の一態様では、前記送信部は、2つの直交直線偏波によって多重化した信号を送信してよい。
このような電波ホログラム通信装置は、直交直線偏波が相互に非干渉であることを利用して、通信路容量の増大と、S/N比やS/C比の改善を可能とする効果がある。
【0037】
本開示の一態様では、前記送信部は、左右回転円偏波によって多重化した信号を送信してよい。
【0038】
このような電波ホログラム通信装置は、左右の回転方向が異なる円偏波が相互に非干渉であることを利用して、通信路容量の増大と、S/N比やS/C比の改善を可能とする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、基地局の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、基地局と端末の接続構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、時間反転ホログラフィーにおける基地局と端末の関係の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、時間反転ホログラフィーにおける波形変換部の機能を説明する図である。
【
図5】
図5は、時間反転ホログラフィーの時間遷移を説明する図である。
【
図6】
図6は、時間反転ホログラフィーの時間調整部の回路構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、数値シミュレーションのための端末位置分布の入力画像を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7の分布を得るために基地局のある平面におけるホログラムの分布を示す図である。
【
図9】
図9は、基地局からホログラムに従って制御された電波を放射した時に、干渉により端末のある平面に再生される電界強度の分布を示す図である。
【
図10】
図10は、基地局から同時に電波を放射した時に端末のある平面に再生される電界強度の分布の10周期に渡る時間遷移を示す図である。
【
図11】
図11は、端末のある平面に再生される電界強度の分布のPSNRの時間発展を示す図である。
【
図12】
図12は、端末のある平面に再生される電界強度の分布のSNRの時間発展を示す図である。
【
図13】
図13は、波長を中心波長から±10%シフトした時の再生像の変化を示す図である。
【
図14】
図14は、基地局の数を4分の1に削減した場合に、端末のある平面に再生される電界強度の分布との比較を示す図である。
【
図15】
図15は、等距離領域からの時間遅れを利用した畳み込み符号化を示す図である。
【
図16】
図16は、等距離領域からの時間遅れを利用したトレリス符号化変調を示す図である。
【
図17】
図17は、基地局100及び端末200のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0041】
(1)基地局の構成
図1は、基地局100の機能ブロックの構成例を示す。
図1に示すように、基地局100は、基地局間同期部110、基地局端末間同期部120、計測部130、情報記録部140、時間調整部150、波形変換部160及び送信部170を備える。
【0042】
基地局間同期部110は、複数の基地局から送信される搬送波の位相を同期する。具体的には、基地局間同期部110は、複数の基地局間で搬送波の位相を同期する機能がある。例えば、光ファイバーを介して高速かつ低ジッターのマスタークロックが配信され、各基地局は、PLL (Phase Locked Loop)により発振器とクロックを同期すればよい。或いは、各基地局は、高精度な原子時計を備えてもよく、より低い頻度で同期調整してもよい。
【0043】
基地局端末間同期部120は、基地局100と端末200(
図1において不図示、
図2参照、以下説明では、適宜符号の表記を省略する)とを同期する。具体的には、基地局端末間同期部120は、基地局100と端末200を無線通信により同期させる。無線信号の中に同期信号を一定の頻度で組み込み、同期を再確認するようにする。各基地局間は同期しているので、端末は一つの基地局と同期すれば十分である。
【0044】
計測部130は、端末200(複数の端末のうちの何れかでよい)から送信される基準波を複数の基地局100が受信した受信時刻、振幅及び位相を計測する。具体的には、計測部130は、アンテナ(不図示)を介して受信した信号の受信時刻、振幅及び位相を計測する。信号波形を計測するためには、増幅器、帯域通過フィルター、サンプラー、アナログ・デジタル変換器の内部要素が使われる。受信時刻は、マスタークロックによって同期し、離散時間化されたものであり、基準開始時刻からカウンターで計数することによって実現できる。
【0045】
情報記録部140は、アナログ・デジタル(A/D)変換器及びカウンターから出力された信号をメモリーに保存することにより実現できる。
【0046】
時間調整部150は、計測部130によって計測された信号の受信時刻、振幅及び位相の情報に特定の時間遅延を与える。具体的には、時間調整部150は、所望の時間遅れ量を指示するコンピューターと、Dフリップフロップの遅延回路とにより、複雑な遅れ量の計算と実時間高速追従性を実現できる。
【0047】
時間調整部150は、複数の基地局と、特定の端末との距離が異なることによる到達時間差を利用し、信号が時間遅れを伴いながら特定の端末の位置において重なり合い、畳込み符号化された信号が形成されるように、複数の基地局からの信号の送信タイミングを調整できる。
【0048】
この場合、時間調整部150は、畳込み符号化で生じる冗長ビット分を変調の多値に割り当てたトレリス符号化変調に必要な時間遅れを調整してもよい。
また、時間調整部150は、端末200から基地局100に送信する上り方向のデータが少なく、基地局100から複数の端末200に同じデータを送信する場合、基地局100から端末200までの距離の違いによる到達時間差が、信号の時間変化に対して十分小さくなるように信号の時間周期を長くしてもよい。
【0049】
波形変換部160は、時間調整部150からの出力波形に基づいて、当該出力波形を特定の波形に変換する。具体的には、波形変換部160は、基地局100が、特定の端末200と別の端末200とを接続し、信号をリレー(中継)するためにも用いられる。
【0050】
端末毎に位置や基地局間に存在する空間伝送経路の電波環境が異なるため、同じ基準波形を送受信しても波形が異なる。端末の位置または電波環境の変化は、電波の伝搬時間に対して十分に低速であるので、基地局が波形同士の対応付けをして、すぐに送信すれば目的の端末に自動的に到達する。厳密に言えば、他の端末にも届くが、位相が合わないために波形が破壊され、信号にならない。一方、目的の端末に対しては、位相が建設的に重なり合い電界強度が強くなるため通信することができる。
【0051】
波形変換部160は、波形のパターンマッチングの評価がしきい値を超えたら、対応する波形を出力することにより実現できる。電波ホログラム(以下、ホログラムと適宜省略する)の高い冗長性により、一部の基地局での波形変換が不調であったとしても、他の基地局での波形変換がうまく動作すれば、全体としては機能するというロバスト性がある。
【0052】
また、波形変換部160は、特定の端末200(第1の端末)から送信される基準波を受信する複数の基地局のうち、当該端末200が最遠となる基地局における基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第1の逆波形を生成できる。
【0053】
さらに、波形変換部160は、特定の端末200(第1の端末とは別の第2の端末)から送信される基準波を受信する複数の基地局のうち、当該端末200(第2の端末)が最遠となる基地局における基準波の到来が完了するまでの時間範囲に亘って波形の時間を反転した第2の逆波形を生成できる。波形変換部160は、第1の逆波形と第2の逆波形とを対応付けすることによって、第1の端末からの信号を第2の端末に伝送する場合、第1の逆波形を第2の逆波形に変換してよい。
【0054】
送信部170は、波形変換部160からの出力波形に従った信号を送信する。具体的には、送信部170は、特定の端末200に集中して電波を送信するような狭指向性ではなく、エリア全体に電波が行き届くような広い指向性または無指向性のアンテナと、パワーアンプから構成されてよい。
【0055】
送信部170は、波形変換部160からの出力波形に従った信号を送信する際、特定の端末200(第1の端末)と複数の基地局との複数経路による並列冗長通信を実行してよい。
【0056】
また、送信部170は、キャリア及びサブキャリアの少なくとも何れかの周波数を多重化した信号を送信できる。
【0057】
さらに、送信部170は、2つの直交直線偏波によって多重化した信号、或いは送信部170は、左右回転円偏波によって多重化した信号を送信できる。
【0058】
上述したような構成を有する基地局が多数用意されることによって、電波ホログラム通信装置が構成される。
【0059】
(2)基地局と端末との接続構成
図2は、基地局100と端末200との接続構成の一例を示す図である。各基地局は、光ファイバーによる高速回線によりクロックが同期される。
【0060】
図2ではループ型で接続されているが、スター型でもよい。同期する範囲は一度に全域にする必要はなく、例えば、工場、学校、スタジアムなどの小規模単位から、住居地域などの中規模単位、そして市区町村などの自治体単位の大規模単位まで、階層化して用途に応じて適応処理すればよい。
【0061】
図2では、端末が3つ示されているが、それぞれ近傍の基地局と同期を確立してよい。ここで、端末200の一つ(一番上側)に注目すると、多数の基地局100から放射された信号電波(適宜、信号または電波と省略する)は、振幅と位相とが当該端末の位置で建設的干渉になるように制御されているため、伝搬後の電界強度は当該端末の位置で自動的に強くなる。
【0062】
(3)時間反転ホログラフィーにおける基地局と端末の関係
図3は、時間反転ホログラフィーにおける基地局と端末の関係の一例を示す。
図3上側では、端末から基準波を各基地局に送信する場合について説明している。基地局までの距離に応じて振幅が減少し、位相も回転し、その情報が各基地局で計測・保存される。
【0063】
ここで、伝搬途中に電波を擾乱させる構造体や媒体の誘電率変化などがあった場合(図中では直方体で表示)、当該エリアを通過した電波の振幅と位相とは、自由空間とは異なるものになる。自由空間であれば、距離で位相が確定するので事前に計算することが可能であるが、実際の環境下では予期できない擾乱が起こりうる。
【0064】
電波の伝搬時間に対して、擾乱の原因となる事象の時間変化は十分に低速であり、時間反転しても電磁波が擾乱される特性は維持される。基地局において受信波形の時間を反転させた電波を他の基地局と同期しながら再放射すれば、擾乱が逆再生されて、最初に電波を放射した端末の位置で元の波形が再現される(
図3下側)。波形は時間反転するが、情報は元通りに復元できるため、擾乱の悪影響に打ち勝って通信を実現することができる。さらに、ホログラムの冗長性が加わるため、擾乱に極めて強い通信が可能になる。
【0065】
図4は、時間反転ホログラフィーにおける波形変換部の機能を説明した図である。ここで、A, B, C, E, F, Gは端末であり、BとFとの相互通信をする場合について考える。
【0066】
Dは、基地局内に設けた波形変換部である。煩雑になるので
図4には示されていないが、基地局は他にも多く存在し、各基地局が端末に電波を放射しているものとする。
【0067】
H, Iは、伝播経路中の擾乱要因である。Bと基地局と間の通信は、
図3において説明したとおり、時間反転により擾乱に打ち勝って相互通信が可能である。Fと基地局と間も同様である。Dは、BとFとから届いた擾乱が含まれた波形同士を交換する働きをする。すなわち、Dの左側の波形を受け取ったら、Dの右側の波形に変換して、直ちに全域へ再放射すれば、自動的にFの位置で元の基準波形が再現される。注目する端末以外の端末であるA, C, E, Gの端末では、電波ホログラムの位相が合わないので、ホワイトノイズになり、チャネル選択機能も併せ持つこととなる。
【0068】
図5は、時間反転ホログラフィーの時間遷移を説明する図である。横軸は時間経過を示し、左右非対称な六角形は、信号の振幅を示している。
【0069】
図5の上側は、端末と基地局間の距離が最短の場合を示しており、電波は早く到着する。
図5の下側は、端末と基地局間の距離が、それよりも遠く、伝播経路中に遠回りになる経路、または誘電率が大きく伝搬スピードを低下させる様々な擾乱があった場合の伝搬の場合を示しており、基地局への到着までには時間を要する。
【0070】
到着時刻は、経路によってバラバラとなり、位相シフトした波形が重なり、波形ひずみを生じる。すべての経路からの電波が到着するまで待っている間、波形は記録し続けられる。そして、ある時点を境に時間を対称的に反転させた時間反転波形を生成し、基地局のアンテナから再放射すると、擾乱により分散された波形は、時間を遡るように元の波形と同等の情報を持った時間反転波形に再整形される。
【0071】
ここで、時間反転ホログラフィーについて、数学モデルを説明する。
【0072】
【0073】
【数2】
である。[ ]で囲まれた部分は自己相関の演算であり、演算子*は畳み込み演算を意味する。
マルチパス、散乱、媒体の周波数分散などがなく、周波数帯域幅が無限大である理想的な場合、自己相関はデルタ関数になり、端末から送信した基準信号と同じ信号が戻ってくることになる。
【0074】
図6は、時間反転ホログラフィーに係る時間調整部の回路構成の一例を示す。各基地局のアンテナを介して受信した信号は、サーキュレータを通り、A/D変換され、受信用のメモリー内に蓄えられる。
【0075】
次にゲート付きの遅延回路を通り、遅れ時間の調整が行われる。送信用のメモリーに書き込む際には、最後に記録されたデータが最初にD/Aから読み出されるようにメモリアドレスの置き換えが行われ、データ系列は時間反転される。
【0076】
D/Aは、時間反転されたデータを読み込み、アナログ値に変換しサーキュレータに入力する。サーキュレータからは時間反転された信号が出力され、受信した時と同じアンテナから電波が放射される。多数の基地局のアンテナh0(t)~hN(t)から、同様の処理が行われた電波が放射され、最初に電波を放射した端末の位置で電波の位相が合い建設的干渉が起きる。
【0077】
(4)シミュレーション
次に、数値シミュレーションによって、上述した動作について検証する。
図7は、数値シミュレーションのための端末位置分布の入力画像である。
【0078】
端末がある平面で、アルファベットの"R"の文字の形に電界強度を分布させるとする。"R"の形状を選んだ理由は、直線、直角、斜め線、円などの多様な要素が含まれており、且つ対称性がなく汎用的に特性を調べられるからである。全体のピクセル数(端末数)は128×128であり、端末間のサンプリング間隔は0.1mである。
【0079】
図8は、
図7の分布を得るために基地局のある平面におけるホログラムの分布を示す。
図8の左側は、端末平面と基地局平面の距離が200m、
図8の右側は、当該距離が500mある場合である。なお、基地局平面には、基地局が256×256個等間隔で並べられている。各基地局間の間隔は0.1mであり、搬送波の周波数を30GHz(波長0.01m)とした。
【0080】
図9は、このホログラムに従って基地局が電波を放射した時に、端末面で生じる電界強度分布を示す。具体的には、
図9(b)は距離(z、以下省略)が200mの時であり、
図8左側のホログラムから再生された像に対応し、
図9(c)は距離が500mの時であり、
図8右側のホログラムに対応する。なお、
図9(a)、(d)は、それぞれ距離を100m、1000mで設計したホログラムから再生した像を示す。
【0081】
図9(a)~(d)に示すように、距離が近い程、鮮明な再生像が得られている。なお、"R"の形状で結像している部分でも電界が強い点と弱い点がランダムに現れている。これはスペックルと呼ばれるものであり、ホログラム特有の現象であり、三角関数で振動する搬送波が周期関数であるために、位相が偶然合う場所(合わない場所)が現れるからである。
【0082】
特に少ない有限の基地局数の場合、この影響が大きくなる。この問題は、搬送波の周波数を短時間で掃引するチャーピングをすれば、スペックルも移動するので、時間平均では均一化することができる。或いは、各基地局から発せられる電波の初期位相のセットを複数用意して高速に切り替えることによっても時間平均で均一化することができる。
【0083】
シミュレーションでは、最初にホログラムを生成する時の各端末からの基準電波の初期位相をすべて同一にするのではなく、ランダム化しており、特異な波面(例えば平面波)が発生しないようにしている。
【0084】
図10は、基地局から同時に電波を放射した時に端末のある平面に再生される電界強度の分布の10周期に渡る時間遷移を示す。
図9では、十分に時間が経過した後の再生像を示したが、各端末と各基地局の距離は、場所に応じて異なるので、電波は近いところから順次到着する。
【0085】
そのため、端末平面に所望の電場分布が形成されるまでには、有限の時間が必要となる。
図10は、その過渡状態をシミュレーションした状態を示す。搬送波の位相をπ/4毎に区切って、10周期分をシミュレーションした。
【0086】
最初は近い距離にある基地局からしか電波が到来しないので、コントラストが低いが、時間が経過するとともに到来する電波が増えてきて、より明瞭で電界強度も強くなる。ホログラムの冗長性により、すべての電波が到来しなくても、かなり早い段階から電界分布が形成されている。このことは、近傍にある基地局だけを用い、採用する基地局数を減少しても機能することを示唆している。ホログラムを使用しても過渡状態の終わりまで待つ必要はなく、高速に通信が可能である。
【0087】
そのため、ベースバンド信号がキャリア周波数よりも十分に遅くすれば、この過渡現象が問題にならず、例えば、広告などで一斉に限定された領域内にいる不特定多数の端末に同じ情報をブロードキャストすることができる。この場合でも、電界の空間分布の制御ができるため、端末密度の低い領域、または電波が届いてほしくない領域には、信号が届かないように制御することが可能となる。
【0088】
図11は、端末のある平面に再生される電界強度の分布のPSNR(Peak Signal-to-Noise Ratio)の時間発展を示す。端末面で再生された電界強度分布が、ターゲット画像(原画像)と比較してどの程度一致しているかを評価する指標としてPSNRを採用した。PSNRの定義式を以下に示す。
【0089】
【0090】
PSNRは、画像評価で一般的に使われる指標であり、デジベル(dB)によって表される。PSNRは、その値が大きい程、比較対象の画像との差が少ないことを意味する。ここで、Nx, Nyは、それぞれx方向及びy方向の画素数であり、端末面のサンプリング画素数(128画素)に対応する。
【0091】
Eojiは、端末面においてx方向のインデックスi、y方向のインデックスjの座標位置における電界強度である。ERjiは目標とする電界分布の座標点(j, i)での電界強度である。分子の255は、8ビット分解能の画像の濃度の最大値である。端末面での電界強度の分布画像は、最小値を0、最大値を255になるように規格化した。ただし、計算中は実数(8 byte精度)で扱い、8 bit(Unsigned Char)で量子化はしていない。すなわち量子化誤差は無い状態での評価である。
【0092】
基準としたターゲット画像(原画像)は、
図7に示したアルファベットの"R"であり、文字の部分は白色で表現され画素値は255、それ以外の黒色の部分は画素値が0である。この画像になるように、ホログラムを設計し、そのホログラムから再生を行う。はじめに、この画像をunsigned char(1 byte)で読み込み、その後の計算の過程ではdouble(8 byte)の精度で計算した。
【0093】
図11のグラフを見ると7.5サイクル以降は、ほぼPSNRは飽和しており、それ以上待つ必要は無いことがわかる。
【0094】
PSNRは、2つの画像を、同一位置の画素位置で相互に比較する方法である。人の目で見た時のような空間平均化された画像が良好であっても、再生像の位置がズレた場合や、ノイズが混入した場合は、その値は大幅に低下する性質がある。
【0095】
そこで、もう一つの評価方法としてSNR(Signal to Noise Ratio)を以下のとおり定義して評価に使用した。再生像について、原画像のRの文字がある座標点群でマスキングして、マスク内の領域と、マスク外の領域との平均画素濃度の比率をSNRとして評価した。平均画素濃度とは、領域内(例えば、マスキング内)の画素値の総和を、その領域内の画素数で除算した値である。SNRの評価式を式以下に示す。
【0096】
【0097】
ここで、E_Rはターゲットイメージであるアルファベットの"R"が書かれているピクセル位置(マスク内)での電界である。E_R ̄はその相補であり、"R"が書かれていないそれ以外のピクセル位置(マスク外)での電界である。N_Rは"R"が書かれているピクセル数であり、今回は1662である。その相補のN_R ̄は、14722である。N_R+N_R=128^2である。
【0098】
図12は、端末のある平面に再生される電界強度の分布のSNRの時間発展を示す。これによると5サイクルでSNRはほぼ飽和することがわかる。これも基地局数を決める指標になる。
【0099】
図13は、波長を中心波長λ = 0.01mから±10%シフトした時の再生像の変化を示す。FSK(Frequency Shift Keying)で変調深さ10%に対応する。
【0100】
具体的には、
図13(a)は、λ = 0.009m, -10% シフト、
図13(b)は、λ = 0.01m, 設計波長、
図13(c)は、λ = 0.011m, +10% シフトである。最短点に到達してから4サイクル~5サイクルの期間であり、各フレームの時間間隔は、T/8 = 1.47 psである。
【0101】
図13に示すように、10%も波長をシフトしても、不鮮明ながらもRの文字の分布が現れている。PSK(Phase Shift Keying)では、周波数スペクトルの広がりは小さいため、変調をかけた電波でも電界分布形成は問題なくできることがわかる。
【0102】
また、スペックルの輝点の位置も波長をシフトすると変わっているため、周波数チャープするとスペックルの問題を解決可能であることがわかる。また、実際に変調を加えた電波ではスペクトルが逐次変化するので、自然にスペックルは動くので平均化される。
【0103】
図14は、基地局の数を4分の1に削減した場合に、端末のある平面に再生される電界強度の分布との比較を示す。
図14(a)は、すべての基地局を使用した場合であり、
図14(b)は、フレームの左下4分の1の面積の基地局だけ使用した時の端末面での電界分布である。
【0104】
使用した4分の1に遠い部分の電界強度が弱くなっているものの、Rの文字全体が再生されていることが確認できる。PSNRは、
図14(a)では11.35 dB、
図14(b)では10.87 dBであった。ホログラムでは、各基地局と各端末は密結合であり、一つ一つが全体と結合している。ホログラムの一部しか使わない場合は、不確かさが増大するが、ホログラムは一部であっても全体の情報を持っている。そのため冗長性が高く、一部の通信が不良になっても、他の部分が補完してくれる。
【0105】
なお、時間反転法は一つの基地局と一つの端末の一対一通信から有効であるが、ホログラムによる複数経路の重ね合わせと組み合わせることにより、より一層フォールトレランスの高い通信環境を実現することができる。この特徴は、キャリア周波数の高周波化による電磁波伝搬の物理的困難性を克服するために有効な方法となる。
【0106】
(5)時間遅れを利用した畳み込み符号化
図15は、等距離領域からの時間遅れを利用した畳み込み符号化の説明図である。ホログラムのデータがある基地局面に円(あるいは楕円)で示した有限の幅を持った線状の領域は、注目する端末からの距離が等しい領域である。この円の線の部分にある基地局から電波を放射すると、同じタイミングで注目する端末に到着する。
【0107】
図15では、一例として3本の円が示されているが、1番内側の円に対して2番目の円では距離が一波長分(λ)遠いため、到達は1周期分遅くなる。3番目の一番外側の円では2波長分(2λ)遠いため、2周期分遅くなる。
【0108】
そこで、3番目の基地局群から先に電波を放射し、2番目の基地局群は1周期後に電波を放射し、さらに1番内側円の基地局群からは2周期後に電波を照射すれば、注目する端末には同時に電波が到着し、重ね合わされる。これは、時間をずらしながらデータを加算しているので畳込み演算が行われていると同等と解釈できる。
【0109】
畳み込み演算は、自局のデータの現在と過去を関連付けさせることにより、確率が高い遷移と低い遷移を分離し、ノイズが混入した信号から信号を抽出しやすくする方法である。円の次数毎にエンコードした信号を放射すれば、端末側では時系列信号をソフトウェアまたはハードウェアにより復号することにより、誤り訂正も同時に実行することができる。
【0110】
また、同心円の線の領域は、全体に対して広い面積ではないが、それでも部分領域ホログラムを構成しているので空間選択性がある。これにより、特定の端末のみに信号を送ることができる。
【0111】
(6)時間遅れを利用したトレリス符号化変調
図16は、等距離領域からの時間遅れを利用したトレリス符号化変調の説明図である。具体的には、多値信号を信号空間によって表現したものであり、8PSKの場合を示している。
【0112】
図15では簡単のために1周期単位で畳み込み演算を行ったが、例えば、位相がπ/8単位で細かく分割しても畳み込み演算が可能である。これにより、信号空間でのユークリッド距離が拡大し、誤り訂正を信号に組み込むことが可能になる。図中では3ビットの内、下位2ビットをイタリック体で表現したが、位相差が小さく誤りやすい下位2ビットについて、等距離部分ホログラムを利用した畳み込み演算を適用するとよい。
【0113】
(7)実施形態の作用・効果
以上説明したように、本実施形態に係る電波ホログラム通信装置及び電波ホログラム通信方法によれば、ホログラムの冗長性により不安定な電波環境下でも安定に通信を確立でき、端末が存在する部分にだけ電波が届くように瞬時に放射パターンを変更できる。
【0114】
一方、他の端末にはノイズとなって有意な信号が届かず物理レイヤーでのセキュリティー効果があり、時間反転ホログラムにより擾乱があっても波形を再形成できる。また、時間差を使った畳み込み演算を電波の伝搬中に光速で自動的に演算できるため、無線通信の高周波化における信頼性、制御性及び効率化に大きく貢献する。
【0115】
また、上述した本実施形態に係る電波ホログラム通信装置及び電波ホログラム通信方法によれば、地理的に隣接する複数の基地局から発射される電波を意図的に干渉させてサービスエリア設計を行う。意図的な干渉は電波によるホログラフ技術により制御され、これまでに実現できなかった任意形状のサービスエリアを提供できる。さらに、任意の形状のサービスエリアを構成できるため、干渉制御の必要なサービス提供が可能になる。また、ユーザーへのトラフック割り当てを選択的に行うことができる。
【0116】
(8)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0117】
例えば、上述した実施形態では、基地局100は、情報記録部140を含んでいたが、情報記録部140は必ずしも備えられてなくてもよい。つまり、基地局100は、計測部130によって計測された受信信号の受信時刻、振幅及び位相の情報は、情報記録部140ではなく、通信システム内で一時的及び/または仮想的に保持されてもよい。
【0118】
また、当該受信時刻、振幅及び位相の情報すべてに対して時間遅延が与えられなくてもよく、何れか1つまたは2つに対してのみ時間遅延が与えられてもよい。
【0119】
また、上述した実施形態の説明に用いたブロック構成図(
図1)は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現方法は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に(例えば、有線、無線などを用いて)接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、上記1つの装置または上記複数の装置にソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0120】
機能には、判断、決定、判定、計算、算出、処理、導出、調査、探索、確認、受信、送信、出力、アクセス、解決、選択、選定、確立、比較、想定、期待、見做し、報知(broadcasting)、通知(notifying)、通信(communicating)、転送(forwarding)、構成(configuring)、再構成(reconfiguring)、割り当て(allocating、mapping)、割り振り(assigning)などがあるが、これらに限られない。例えば、送信を機能させる機能ブロック(構成部)は、送信部(transmitting unit)や送信機(transmitter)と呼称される。何れも、上述したとおり、実現方法は特に限定されない。
【0121】
さらに、上述した基地局100及び端末200(電波ホログラム通信装置を含む、以下、当該装置)は、本開示の無線通信方法の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。
図17は、基地局100及び端末200のハードウェア構成の一例を示す図である。
図17に示すように、当該装置は、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006及びバス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0122】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。当該装置のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つまたは複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0123】
当該装置の各機能ブロック(
図1参照)は、当該コンピュータ装置の何れかのハードウェア要素、または当該ハードウェア要素の組み合わせによって実現される。
【0124】
また、当該装置における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御したり、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0125】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU)によって構成されてもよい。
【0126】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1003及び通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態において説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。さらに、上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001によって実行されてもよいし、2つ以上のプロセッサ1001により同時または逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。
【0127】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、Read Only Memory(ROM)、Erasable Programmable ROM(EPROM)、Electrically Erasable Programmable ROM(EEPROM)、Random Access Memory(RAM)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施形態に係る方法を実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0128】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、Compact Disc ROM(CD-ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記録媒体は、例えば、メモリ1002及びストレージ1003の少なくとも一方を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0129】
通信装置1004は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0130】
通信装置1004は、例えば周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)及び時分割複信(Time Division Duplex:TDD)の少なくとも一方を実現するために、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルター、周波数シンセサイザなどを含んで構成されてもよい。
【0131】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0132】
また、プロセッサ1001及びメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0133】
さらに、当該装置は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor: DSP)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Programmable Logic Device(PLD)、Field Programmable Gate Array(FPGA)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部またはすべてが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0134】
本開示において説明した各態様/実施形態は、Long Term Evolution(LTE)、LTE-Advanced(LTE-A)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4th generation mobile communication system(4G)、5th generation mobile communication system(5G)、Future Radio Access(FRA)、New Radio(NR)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、Ultra Mobile Broadband(UMB)、IEEE 802.11(Wi-Fi(登録商標))、IEEE 802.16(WiMAX(登録商標))、IEEE 802.20、Ultra-WideBand(UWB)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及びこれらに基づいて拡張された次世代システムの少なくとも一つに適用されてもよい。また、複数のシステムが組み合わされて(例えば、LTE及びLTE-Aの少なくとも一方と5Gとの組み合わせなど)適用されてもよい。
【0135】
本開示において説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本開示において説明した方法については、例示的な順序を用いて様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0136】
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0137】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0138】
また、ソフトウェア、命令、情報などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、有線技術(同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者回線(Digital Subscriber Line:DSL)など)及び無線技術(赤外線、マイクロ波など)の少なくとも一方を使用してウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び無線技術の少なくとも一方は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0139】
本開示において説明した情報、信号などは、様々な異なる技術の何れかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、またはこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0140】
なお、本開示において説明した用語及び本開示の理解に必要な用語については、同一のまたは類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。例えば、チャネル及びシンボルの少なくとも一方は信号(シグナリング)であってもよい。また、信号はメッセージであってもよい。また、コンポーネントキャリア(Component Carrier:CC)は、キャリア周波数、セル、周波数キャリアなどと呼ばれてもよい。
【0141】
本開示において使用する「システム」及び「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0142】
また、本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。例えば、無線リソースはインデックスによって指示されるものであってもよい。
【0143】
本開示においては、「基地局(Base Station:BS)」、「無線基地局」、「固定局(fixed station)」、「NodeB」、「eNodeB(eNB)」、「gNodeB(gNB)」、「アクセスポイント(access point)」、「送信ポイント(transmission point)」、「受信ポイント(reception point)、「送受信ポイント(transmission/reception point)」、「セル」、「セクタ」、「セルグループ」、「キャリア」、「コンポーネントキャリア」などの用語は、互換的に使用され得る。基地局は、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセルなどの用語で呼ばれる場合もある。
【0144】
基地局は、1つまたは複数(例えば、3つ)のセル(セクタとも呼ばれる)を収容することができる。基地局が複数のセルを収容する場合、基地局のカバレッジエリア全体は複数のより小さいエリアに区分でき、各々のより小さいエリアは、基地局サブシステム(例えば、屋内用の小型基地局(Remote Radio Head:RRH)によって通信サービスを提供することもできる。
【0145】
「セル」または「セクタ」という用語は、このカバレッジにおいて通信サービスを行う基地局、及び基地局サブシステムの少なくとも一方のカバレッジエリアの一部または全体を指す。
【0146】
本開示においては、「移動局(Mobile Station:MS)」、「ユーザー端末(user terminal)」、「ユーザー装置(User Equipment:UE)」、「端末」などの用語は、互換的に使用され得る。
【0147】
移動局は、当業者によって、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0148】
基地局及び移動局の少なくとも一方は、送信装置、受信装置、通信装置などと呼ばれてもよい。なお、基地局及び移動局の少なくとも一方は、移動体に搭載されたデバイス、移動体自体などであってもよい。当該移動体は、乗り物(例えば、車、飛行機など)であってもよいし、無人で動く移動体(例えば、ドローン、自動運転車など)であってもよいし、ロボット(有人型または無人型)であってもよい。なお、基地局及び移動局の少なくとも一方は、必ずしも通信動作時に移動しない装置も含む。例えば、基地局及び移動局の少なくとも一方は、センサなどのInternet of Things(IoT)機器であってもよい。
【0149】
また、本開示における基地局は、移動局(ユーザ端末、以下同)として読み替えてもよい。例えば、基地局及び移動局間の通信を、複数の移動局間の通信(例えば、Device-to-Device(D2D)、Vehicle-to-Everything(V2X)などと呼ばれてもよい)に置き換えた構成について、本開示の各態様/実施形態を適用してもよい。この場合、基地局が有する機能を移動局が有する構成としてもよい。また、「上り」及び「下り」などの文言は、端末間通信に対応する文言(例えば、「サイド(side)」)で読み替えられてもよい。例えば、上りチャネル、下りチャネルなどは、サイドチャネル(またはサイドリンク)で読み替えられてもよい。
【0150】
同様に、本開示における移動局は、基地局として読み替えてもよい。この場合、移動局が有する機能を基地局が有する構成としてもよい。
【0151】
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、またはこれらのあらゆる変形は、2またはそれ以上の要素間の直接的または間接的なあらゆる接続または結合を意味し、互いに「接続」または「結合」された2つの要素間に1またはそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合または接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、「接続」は「アクセス」で読み替えられてもよい。本開示で使用する場合、2つの要素は、1またはそれ以上の電線、ケーブル及びプリント電気接続の少なくとも一つを用いて、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域及び光(可視及び不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどを用いて、互いに「接続」または「結合」されると考えることができる。
【0152】
参照信号は、Reference Signal(RS)と略称することもでき、適用される標準によってパイロット(Pilot)と呼ばれてもよい。
【0153】
本開示において使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0154】
上記の各装置の構成における「手段」を、「部」、「回路」、「デバイス」等に置き換えてもよい。
【0155】
本開示において使用する「第1」、「第2」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量または順序を全般的に限定しない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本開示において使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、または何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0156】
本開示において、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及びそれらの変形が使用されている場合、これらの用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本開示において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0157】
本開示において、例えば、英語でのa, an及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、本開示は、これらの冠詞の後に続く名詞が複数形であることを含んでもよい。
【0158】
本開示で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up、search、inquiry)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。また、「判断(決定)」は、「想定する(assuming)」、「期待する(expecting)」、「みなす(considering)」などで読み替えられてもよい。
【0159】
本開示において、「AとBが異なるまたはいう用語は、「AとBが互いに異なる」ことを意味してもよい。なお、当該用語は、「AとBがそれぞれCと異なる」ことを意味してもよい。「離れる」、「結合される」などの用語も、「異なる」と同様に解釈されてもよい。
【0160】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0161】
100 基地局
110 基地局間同期部
120 基地局端末間同期部
130 計測部
140 情報記録部
150 時間調整部
160 波形変換部
170 送信部
200 端末
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 ストレージ
1004 通信装置
1005 入力装置
1006 出力装置
1007 バス