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特開2023-102692熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、および熱伝導シートの製造装置
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  • 特開-熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、および熱伝導シートの製造装置 図1
  • 特開-熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、および熱伝導シートの製造装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102692
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、および熱伝導シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230718BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20230718BHJP
   B26D 3/28 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
H01L23/36 D
B26D1/02 Z
B26D3/28 610T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003354
(22)【出願日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】松下 みずき
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴弘
【テーマコード(参考)】
3C027
5F136
【Fターム(参考)】
3C027EE06
5F136BC07
5F136FA23
5F136FA52
5F136FA53
5F136FA54
5F136FA63
5F136FA75
5F136FA88
5F136GA12
5F136GA17
(57)【要約】
【課題】欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シート、ならびに、当該熱伝導シートを製造し得る、熱伝導シートの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】樹脂および熱伝導性充填材を含む熱伝導シートであって、複数の条片が並列接合してなり、前記熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、前記熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を前記熱伝導シートの表面に照射しながら前記熱伝導シートの表面を前記撮像装置で撮像して得られる前記熱伝導シートの表面の画像を画像処理して得られた、256階調の輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下である、熱伝導シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂および熱伝導性充填材を含む熱伝導シートであって、
複数の条片が並列接合してなり、
前記熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、前記熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を前記熱伝導シートの表面に照射しながら、前記熱伝導シートの表面を前記撮像装置で撮像して得られる前記熱伝導シートの表面の画像を画像処理して得られた、256階調の輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下である、熱伝導シート。
【請求項2】
前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、
前記熱伝導シートに占める前記粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
樹脂および熱伝導性充填材を含む組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る工程と、
前記プレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、前記プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程と、
前記積層体をスライス機構でスライスして熱伝導シートを得る工程とを含み、
前記スライス機構が、
スライド面を有する支持台と、刃先が前記スライド面から突出するように配置された切断刃とを備え、
前記スライド面の動摩擦係数は0.95以下であり、
前記スライスは、前記積層体の積層方向に沿う面を前記スライド面に接触させた状態で、前記積層体を前記スライド面に押圧しながら前記積層体および前記スライド面の少なくとも一方をスライドさせて、前記積層体を前記切断刃と接触させることにより行われる、請求項1または2に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項4】
前記熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、前記熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を前記熱伝導シートの表面に照射しながら、前記熱伝導シートの表面を前記撮像装置で撮像する工程と、
得られた前記熱伝導シートの表面の画像を用いて異物を検出する工程とを更に含む、請求項3に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項5】
前記スライド面の表面粗さが1.3μm以下である、請求項3または4に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項6】
前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、
前記積層体に占める前記粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上である、請求項3~5のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項7】
前記積層体は、前記スライド面との当接面のタックが0.50MPa以下である、請求項3~6のいずれか一項に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項8】
スライド面を有する支持台と、刃先が前記スライド面から突出するように配置された切断刃とを備えるスライス機構を備え、
前記スライド面の動摩擦係数は0.95以下である、熱伝導シートの製造装置。
【請求項9】
前記スライド面の表面粗さが1.3μm以下である、請求項8に記載の熱伝導シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、および熱伝導シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
【0003】
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、通常、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)などの放熱部材を介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させて、放熱体から熱を逃がしている。
【0004】
ここで、優れた熱伝導性を発揮し得る熱伝導シートの製造方法としては、樹脂および熱伝導性充填材を含むプレ熱伝導シートの積層体よりなる樹脂ブロックを切断刃やカンナなどの切断具を用いて積層方向にスライスして熱伝導シートを得る方法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、スライド面を有する支持台と、スライド面から突出するように配置された切断刃とを備えるスライス機構を用いて熱伝導シートを製造する方法が記載されている。具体的には、特許文献1では、プレ熱伝導シートよりなる積層体(樹脂ブロック)をスライド面に押圧しながらスライドさせ、それにより、積層体を切断刃と接触させてスライスして、熱伝導シートを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-5594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術の熱伝導シートの製造方法では、得られる熱伝導シートに色むらが発生することがあった。そして、熱伝導シートに色むらが発生すると、熱伝導シートの検査工程において、熱伝導シートに異物等の製品特性上の欠陥がないにもかかわらず欠陥が存在すると判断されるという誤検出(以下、単に「欠陥の誤検出」ともいう)が増加する問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シート、ならびに、当該熱伝導シートを製造し得る、熱伝導シートの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、スライド面との擦れにより、得られる熱伝導シートに色むらが発生していること、および、プレ熱伝導シートよりなる積層体を支持台のスライド面に押圧しながらスライドさせて切断刃でスライスするに際して、スライド面の動摩擦係数を所定値以下にすれば、得られる熱伝導シートにおいて色むらの発生が抑制され、欠陥の誤検出が抑制され得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、樹脂および熱伝導性充填材を含む熱伝導シートであって、複数の条片が並列接合してなり、前記熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、前記熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を前記熱伝導シートの表面に照射しながら、前記熱伝導シートの表面を前記撮像装置で撮像して得られる前記熱伝導シートの表面の画像を画像処理して得られた、256階調の輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下であることを特徴とする。このように、輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下である熱伝導シートは色むらが抑制されているため、欠陥の誤検出が抑制される。
なお、本発明において、「輝度のヒストグラムの半値全幅」は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
本発明の熱伝導シートは、前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、前記熱伝導シートに占める前記粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上であることが好ましい。このように、熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、熱伝導シートに占める粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上である熱伝導シートは、色むらの発生が一層抑制されて欠陥の誤検出が一層抑制され、かつ、熱伝導性に優れる。
なお、本発明において、熱伝導シートに占める粒子状炭素材料の含有割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述したいずれかの熱伝導シートを製造する方法であり、樹脂および熱伝導性充填材を含む組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る工程と、前記プレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、前記プレ熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程と、前記積層体をスライス機構でスライスして熱伝導シートを得る工程とを含み、前記スライス機構が、スライド面を有する支持台と、刃先が前記スライド面から突出するように配置された切断刃とを備え、前記スライド面の動摩擦係数は0.95以下であり、前記スライスは、前記積層体の積層方向に沿う面を前記スライド面に接触させた状態で、前記積層体を前記スライド面に押圧しながら前記積層体および前記スライド面の少なくとも一方をスライドさせて、前記積層体を前記切断刃と接触させることにより行われることを特徴とする。このように、動摩擦係数が0.95以下であるスライド面上で積層体をスライスすれば、色むらの発生が抑制され、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シートを得ることができる。
なお、本発明において、スライド面の動摩擦係数は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0013】
本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、前記熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を前記熱伝導シートの表面に照射しながら、前記熱伝導シートの表面を前記撮像装置で撮像する工程と、得られた前記熱伝導シートの表面の画像を用いて異物を検出する工程と、を更に含むことが好ましい。このように、熱伝導シートの製造方法が、得られた熱伝導シートの表面を撮像する工程と、得られた前記熱伝導シートの異物を検出する工程とを更に含めば、欠陥のない熱伝導シートを効率よく得ることができる。
【0014】
本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記スライド面の表面粗さが1.3μm以下であることが好ましい。このように、スライド面の表面粗さが1.3μm以下であれば、スライド面の動摩擦係数を充分低下させ、得られる熱伝導シートの色むらの発生を一層抑制して、欠陥の誤検出が一層抑制された熱伝導シートを得ることができる。
なお、本発明において、スライド面の表面粗さは、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、前記積層体に占める前記粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上であることが好ましい。積層体に占める粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上であれば、色むらの発生が一層抑制されて欠陥の誤検出が一層抑制され、かつ、熱導電性に優れる熱伝導シートを得ることができる。
なお、本発明において、積層体に占める粒子状炭素材料の含有割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0016】
本発明の熱伝導シートの製造方法では、前記積層体は、前記スライド面との当接面のタックが0.50MPa以下であることが好ましい。積層体の、スライド面との当接面のタックが0.50MPa以下であれば、得られる熱伝導シートにおいて色むらの発生を一層抑制して、欠陥の誤検出を一層抑制することができる。
なお、本発明において、積層体の、スライド面との当接面のタックは実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造装置は、熱伝導シートを製造するものであり、スライド面を有する支持台と、刃先が前記スライド面から突出するように配置された切断刃とを備えるスライス機構を備え、前記スライド面の動摩擦係数が0.95以下であることを特徴とする。このように、動摩擦係数が0.95以下であるスライド面を有する支持台を有するスライス機構を備える熱伝導シートの製造装置は、色むらの発生が抑制され、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シートを製造することができる。
【0018】
本発明の熱伝導シートの製造装置は、前記スライド面の表面粗さが1.3μm以下であることが好ましい。このように、スライド面の表面粗さが1.3μm以下であれば、スライド面の動摩擦係数を充分低下させ、得られる熱伝導シートの色むらの発生を一層抑制して、欠陥の誤検出が一層抑制された熱伝導シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シート、ならびに、当該熱伝導シートを製造し得る、熱伝導シートの製造方法および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)~(c)は、本発明に従う熱伝導シートの製造方法の一例を用いて本発明の熱伝導シートを製造する過程を示す説明図(側面図)である。
図2】スライス角度aで、積層体である樹脂ブロックをスライスする様子を示す平面図であり、(a)はスライス角度aが0°である場合を示し、(b)はスライス角度aが15°である場合を示し、(c)はスライス角度aが45°である場合を示し、(d)はスライス角度aが75°である場合を示し、(e)はスライス角度aが90°である場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の熱伝導シートは、電子部品等の発熱体と、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体との間に挟み込んで使用されるものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法および製造装置を用いて製造することができる。
【0022】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂と熱伝導性充填材とを含み、任意に添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、複数の条片が並列接合してなる。そして、本発明の熱伝導シートは、熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を熱伝導シートの表面に照射しながら熱伝導シートの表面を撮像装置で撮像して得られる熱伝導シートの表面の画像を画像処理して得られた、256階調の輝度のヒストグラムの半値全幅(以下、単に「輝度のヒストグラムの半値全幅」ともいう)が70以下であることを特徴とする。輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下である熱伝導シートは、色むらの発生が抑制されているため、熱伝導シートの検査工程において欠陥の誤検出が抑制される。そのため、本発明の熱伝導シートを用いれば、例えば、熱伝導シートや、熱伝導シートを備える電子機器を効率良く生産することができる。
【0023】
<樹脂>
樹脂は、熱伝導シートのマトリックスを構成し、熱伝導シート中で熱伝導性充填材などの成分を結着する結着材としても機能する。樹脂としては、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂との少なくとも一方を用いることができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
【0024】
常温常圧下で液体の樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
【0025】
また、常温常圧下で固体の樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
【0026】
中でも、樹脂としては、常温常圧下で液体のフッ素樹脂と、常温常圧下で固体のフッ素樹脂とを用いることが好ましい。なお、上述した樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<熱伝導性充填材>
熱伝導性充填材は、熱伝導シートの熱伝導性確保に寄与し得る成分である。熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子および粒子状炭素材料(例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック等)などの粒子状材料、並びに、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などの繊維状材料が挙げられる。中でも、熱伝導性充填材としては、窒化ホウ素粒子、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張性黒鉛および膨張化黒鉛等の鱗片状粒子材料;並びに、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)などの繊維状炭素ナノ材料;からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、鱗片状粒子材料を用いることがより好ましく、鱗片状黒鉛および膨張化黒鉛等の異方性黒鉛を用いることが更に好ましく、膨張化黒鉛を用いることが特に好ましい。これらの熱伝導性充填材を用いれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
なお、熱伝導性充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
なお、熱伝導性充填材として使用し得る粒子状炭素材料などの粒子状材料の体積平均粒子径は、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
【0029】
熱伝導性充填材の含有量は、特に限定されることなく、例えば、上述した樹脂100質量部当たり、5質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることが更に好ましく、90質量部以上とすることが特に好ましく、150質量部以下とすることが好ましく、120質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの色むらの発生を一層抑制して欠陥の誤検出を一層抑制することができ、かつ、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、熱伝導シートを成形する際の成形性を確保することができる。
【0030】
また、熱伝導シートが熱導電性充填材として粒子状炭素材料を含む場合、熱伝導シートに占める粒子状炭素材料の含有割合は、30体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、45体積%以上であることが更に好ましく、また、75体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましく、55体積%以下であることが更に好ましい。粒子状炭素材料の含有割合が30体積%以上であれば、熱伝導シートの色むらの発生を一層抑制して欠陥の誤検出を一層抑制することができ、かつ、熱伝導シートの熱伝導性を向上させることができる。一方、粒子状炭素材料の含有割合が75体積%以下であれば、熱伝導シートを成形する際の成形性を確保することができる。
【0031】
<添加剤>
熱伝導シートに任意に含有させ得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、難燃剤、可塑剤、靭性改良剤、吸湿剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤、イオントラップ剤などが挙げられる。
【0032】
<熱伝導シートの性状>
[輝度のヒストグラムの半値全幅]
本発明の熱伝導シートは、輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下であることを必要とする。本発明の熱伝導シートは、両面について得られた輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下であることが好ましいが、一方の面について得られた輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下であってもよい。
輝度のヒストグラムの半値全幅の値が小さいほど、熱伝導シートに色むらが少ないことを意味する。そして、輝度のヒストグラムの半値全幅が70以下であれば、熱伝導シートの色むらが充分抑制されているため、欠陥の誤検出が抑制されると推察される。
欠陥の誤検出を一層抑制させる観点からは、輝度のヒストグラムの半値全幅は、60以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましい。
【0033】
[厚み方向の熱伝導率]
本発明の熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であることが好ましく、20W/m・K以上であることがより好ましく、25W/m・K以上であることが更に好ましく、30W/m・K以上であることが特に好ましい。厚み方向の熱伝導率が上記下限値以上であれば、発熱体から放熱体へと良好に熱を伝えることができる。
熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λは、厚み方向の熱拡散率をα(m/s)、定圧比熱をCp(J/g・K)、および比重をρ(g/m)として、式:λ=α×Cp×ρを用いて求めることができる。
【0034】
[形状]
本発明の熱伝導シートは、平面視における面積が3600mm以上であることが好ましく、10000mm以上であることがより好ましい。平面視面積が上記下限値以上であれば、生産性を高めることができる。
【0035】
また、熱伝導シートは、平均厚みが200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。平均厚みが上記上限値以下であれば、熱伝導シートの実装時のデバイス内における配置の自由度を高めることができる。また、平均厚みが上記下限値以上であれば、熱伝導シートの強度を十分に確保することができる。
【0036】
本発明の熱伝導シートは、後述する本発明の熱伝導シートの製造方法および製造装置を用いて製造することができる。
なお、上述したとおり、ヒストグラムの半値全幅の値が70以下である本発明の熱伝導シートは欠陥の誤検出を抑制することができる。そのため、積層体よりなる樹脂ブロックをスライスして熱伝導シートを製造する熱伝導シートの製造方法において、得られた熱伝導シートについてヒストグラムの半値全幅の値(熱伝導シート1枚についての値)を測定し、ヒストグラムの半値全幅の値が70以下の熱伝導シートのみについて異物の検査を行えば、欠陥の誤検出を抑制して良好に検査を行うことができる。
【0037】
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した本発明の熱伝導シートを製造する際に好適に用いることができる。
【0038】
本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂および熱伝導性充填材を含む組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る工程(プレ熱伝導シート成形工程)と;プレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、プレ熱伝導シートを折畳または捲回して積層体を得る工程(積層体形成工程)と;積層体をスライス機構でスライスして熱伝導シートを得る工程(スライス工程)とを含み、任意で、熱伝導シートの検査工程などのその他の工程を更に含み得る。以下、各工程について説明する。
【0039】
<プレ熱伝導シート成形工程>
プレ熱伝導シート成形工程では、樹脂と熱伝導性充填材とを含み、任意にその他の成分を含む樹脂組成物を加圧してシート状に成形し、プレ熱伝導シートを得る。
【0040】
[組成物]
組成物は、樹脂と、熱伝導性充填材と、任意の添加剤とを混合して調製することができる。なお、樹脂、熱伝導性充填材および添加剤としては、上述した本発明の熱伝導シートに含まれるものと同様のものを用いることができ、その好適な属性等についても、上述した本発明の熱伝導シートに含まれるものと同様である。
上述した成分の混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ミキサー等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、有機溶剤等の溶媒の存在下で行ってもよい。そして、混合時間は、例えば5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
【0041】
[組成物の成形]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧(一次加圧)してシート状に成形することができる。
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
【0042】
[プレ熱伝導シート]
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。
なお、樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートでは、熱伝導性充填材がシートの面内方向に配向するため、後述するように得られたプレ熱伝導シートを積層、折畳または捲回してなる積層体をスライスすれば、熱伝導性に異方性を有する熱伝導シートを得ることができる。具体的には、熱伝導性充填材を含む樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートでは、熱伝導性充填材が面内方向に配向し、面内方向の熱伝導性が向上する。したがって、当該プレ熱伝導シートの積層体を積層体の積層方向、或いは、積層体の積層方向および積層体を構成するシートの双方に直交する方向にスライスすれば、厚さ方向の熱伝導性に優れる熱伝導シートを得ることができる。
【0043】
<積層体形成工程>
積層体形成工程では、熱伝導シートの材料となる積層体を得る。積層体は、上述したプレ熱伝導シート成形工程を経て得られたプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、あるいは、プレ熱伝導シートを折畳または捲回して得ることができる。
【0044】
プレ熱伝導シートを積層してなる積層体では、通常、プレ熱伝導シートの表面同士の接着力は、プレ熱伝導シートを積層する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する場合には、プレ熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態またはプレ熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層体工程を行ってもよいし、プレ熱伝導シートを積層させた積層体を積層方向に更に熱プレス(二次加圧)してもよい。
【0045】
[積層体]
積層体は、樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する。なお、積層体は、上述したプレ熱伝導シートを積層等してなるため、積層体に含まれる樹脂、熱伝導性充填材および添加剤は、上述した本発明の熱伝導シートに含まれるものと同様である。また、これらの樹脂、熱伝導性充填材および添加剤の好適な属性等についても、上述した本発明の熱伝導シートに含まれるものと同様である。
【0046】
熱伝導性充填材として粒子状炭素材料を用いる場合、積層体に占める粒子状炭素材料の割合は、積層体全体を100体積%として、30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、また、60体積%以下であることが好ましく、50体積%以下であることがより好ましい。粒子状炭素材料の含有割合が上記下限値以上であれば、熱伝導性に十分に優れる熱伝導シートを得ることができる。また、粒子状炭素材料の含有割合が上記下限値以上であれば、得られる熱伝導シートにおける色むらの発生を一層抑制し、欠陥の誤検出を一層抑制することができる。また、粒子状炭素材料の含有割合が上記上限値以下であれば、得られる熱伝導シートを成形する際の成形性を確保することができる。
【0047】
また、積層体は、後述するスライド面との当接面のタックが0.50MPa以下であることが好ましく、0.10MPa以下であることがより好ましく、また、0.02MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることがより好ましい。スライド面との当接面のタックが0.50MPa以下であれば、得られる熱伝導シートにおいて色むらの発生を一層抑制して、誤検出を一層抑制することができる。また、スライド面との当接面のタックが0.02MPa以上であれば、放熱部材へ組み込んだ際に良好に部材と接着することができる。
【0048】
積層体の形状は、特に限定されることなく、スライスした際に所望の形状の熱伝導シートが得られる形状とすることができる。具体的には、例えば、矩形状の熱伝導シートを製造する場合には、積層体の形状は、直方体であることが好ましい。
そして、積層体の構造は、例えば図1(a)~(c)に示す樹脂ブロック10のような、プレ熱伝導シート11を厚み方向に複数枚積層してなる構造、あるいは、プレ熱伝導シート11を折畳または捲回してなる構造である。
【0049】
<スライス工程>
スライス工程では、スライス機構を用いて上述した積層体をスライスして、熱伝導シートを得る。ここで、本発明の熱伝導シートの製造方法で用いるスライス機構は、スライド面を有する支持台と、刃先が前記スライド面から突出するよう配置された切断刃とを備える。本発明の熱伝導シートの製造方法では、積層体を、その側面(積層方向に沿う面)を支持台のスライド面と接触させた状態で、積層体をスライド面に押圧しながら積層体およびスライド面(支持台)の少なくとも一方をスライド(移動)させて切断刃と接触させることにより、積層体のスライスが行われる。そして、本発明の熱伝導シートの製造方法で用いるスライス機構は、支持台のスライド面の動摩擦係数が0.95以下であることを必要とする。
【0050】
上述したように積層体のスライスを行うに際して、スライド面の動摩擦係数が0.95以下であれば、得られる熱伝導シートにおける色むらの発生を抑制することができる。したがって、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シートを得ることができる。
【0051】
[スライス機構]
スライス機構は、少なくとも、スライド面を有する支持台と、支持台のスライド面から刃先が突出した切断刃とを備える。
【0052】
[支持台]
支持台は、積層体が載置およびスライドされるスライド面を有する。支持台の材質は、特に限定されないが、強度等の観点からは、ステンレス鋼を用いることが好ましい。
【0053】
‐スライド面‐
スライド面の動摩擦係数は、上述したとおり、0.95以下であることを必要とする。得られる熱伝導シートにおける色むらの発生を一層抑制して、欠陥の誤検出を一層抑制させる観点からは、スライド面の動摩擦係数は、0.93以下であることが好ましく、0.82以下であることがより好ましく、0.80以下であることが更に好ましい。
【0054】
スライド面の動摩擦係数は、特に限定されず、例えば、支持台の積層体がスライドされる側の面を表面処理することにより、0.95以下に制御することができる。表面処理は、スライド面の動摩擦係数を0.95以下にすることができる限り特に限定されず、例えば、滑り特性に優れる材料を支持台の積層体がスライドされる側の面に付与することにより行うことができる。また、表面処理は、積層体がスライドされる側の面を表面改質処理、表面平滑処理、粗面化処理することにより行うこともできる。表面処理は、これらの手段の2つ以上を組み合わせて行ってもよい。中でも、表面処理は、0.95以下の動摩擦係数を有する樹脂よりなるフィルム(シート)を、支持台の積層体がスライドされる側の面上に設けることにより行うことが好ましい。この場合、支持台のスライド表面は樹脂フィルムで構成される。
【0055】
このような樹脂フィルムに用いる樹脂としては、スライド面の動摩擦係数を0.95以下とすることが可能な、滑り特性に優れる樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などのフッ素樹脂;および、シリコン樹脂を用いることができる。これらの樹脂は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、得られる熱伝導シートにおける色むらの発生を一層抑制して、欠陥の誤検出を一層抑制させる観点からは、樹脂フィルムに用いる樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)またはシリコン樹脂が好ましく、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)がより好ましい。
【0056】
上記樹脂フィルムを設ける方法は、特に限定されず、例えば、接着剤等を用いて、樹脂フィルムを、支持台の積層体がスライドされる側の面に貼り付けてもよいし、一方の面に粘着層を備える樹脂フィルムの粘着層側の面を、積層体がスライドされる側の面に貼り付けてもよい。
【0057】
樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、また、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。樹脂フィルムの厚さが上記下限値以上であれば、樹脂フィルムの取り扱い性に優れる。また、樹脂フィルムの厚さが上記上限値以下であれば、熱伝導シートの厚み精度への影響が最小限となる。
【0058】
また、支持台のスライド面の表面粗さは、1.3μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、また、0.1μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。スライド面の表面粗さが上記上限値以下であれば、スライド面の動摩擦係数を充分低下させ、得られる熱伝導シートの表面における色むらの発生を一層抑制して、欠陥の誤検出を一層抑制させることができる。また、スライド面の表面粗さが上記下限値以上であれば、動摩擦係数が高くなることを抑制することができる。
【0059】
支持台のスライド面の表面粗さは、特に限定されないが、例えば、支持台の積層体がスライドされる側の面を粗面加工したり、鏡面加工することにより制御することができる。粗面加工としては、例えば、サンドブラスト加工、レーザ加工、ショットピーニング加工等の公知の粗面加工法を用いることができる。また、鏡面加工としては、例えば、メッキ加工や研磨などの公知の鏡面加工法が挙げられる。
【0060】
[切断刃]
切断刃は、通常、逃げ面、すくい面、および逃げ面とすくい面との交差角部よりなる刃先を有する。そして、切断刃は、支持台のスライド面から刃先が突出するように、支持台に取り付けられている。なお、本発明において、切断刃の「逃げ面」とは、その一部をスライスにより切り出された積層体が進行する側の面を意味し、切断刃の「すくい面」とは、スライスにより積層体から切り出された部分が進行する側の面を意味する。
【0061】
また、スライス機構は、切断刃のすくい面に対向配置されたガイド部材を備えることが好ましい。スライス機構がガイド部材を備えれば、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートがカールするのを抑制することができる。
【0062】
スライス機構の一例は、図1(a)~(c)に示すように、スライド面21を有する支持台20と、すくい面31と、逃げ面32と、すくい面31および逃げ面32の交差角部よりなる刃先とを有する切断刃30と、切断刃30のすくい面31に対向配置されたガイド部材40とを備えるカンナである。ここで、図示例においては、支持台20の、樹脂ブロック10がスライドされる側の面には樹脂フィルム22が形成されている。すなわち、スライド面21は樹脂フィルム22で構成されている。また、図示例においては、スライス機構は、更に、切断刃30のすくい面31に接して配置された補助ガイド部材50を備えている。また、図示例においては、切断刃30およびガイド部材40は、それぞれ支持台20に固定されている。そして、図1(b),(c)に示すように、スライス時に樹脂ブロック10から切り出された部分60は、補助ガイド部材50が設けられたすくい面31と、ガイド部材40のすくい面31側の表面41との間隙70を通過する。
【0063】
[スライス]
積層体のスライスは、上述したとおり、積層体の側面(積層方向に沿う面)を支持台のスライド面と接触させた状態で行われる。ここで、上述したスライス機構を用いて積層体をスライスするに際し、積層体をスライド面に押圧する際の圧力は、0.05MPa以上であることが好ましく、0.10MPa以上であることがより好ましく、0.20MPa以上であることが特に好ましく、0.50MPa以下であることが好ましく、0.40MPa以下であることがより好ましい。圧力が上記下限値以上であれば、積層体をスライスして得られる熱伝導シートの厚み精度を確保することができ、一方、圧力が上記上限値以下であれば、積層体が潰れるのを抑制することができる。なお、積層体は、積層方向に直交する方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましい。
【0064】
また、上述したとおり、スライスは、積層体およびスライド面(支持台)の少なくとも一方をスライドさせて積層体を切断刃と接触させることにより行うことができる。中でも、スライスは、積層体をスライドさせて切断刃と接触させることにより行うことが好ましい。
【0065】
また、積層体の積層方向と切断刃の延在方向とのなすスライス角度aは、図2に示すように、0°以上90°以下の範囲内とすることができる。なお、図2においては、Aが積層体の積層方向であり、Bが切断刃の延在方向である。
そして、スライス時に切断刃と直接接触し得る部分が潰れたり、積層間が剥離して崩れたりすることを抑制する観点、および、スライスして得られる熱伝導シートに均一な厚みを付与し(シート全体のうねりを低減させ)、厚み精度を向上させる観点からは、スライス角度aは、0°超であることが好ましく、1°以上であることがより好ましく、5°以上であることが更に好ましく、30°以上であることが一層好ましく、40°以上であることが特に好ましく、90°未満であることが好ましく、89°以下であることがより好ましく、85°以下であることが更に好ましく、60°以下であることが一層好ましく、50°以下であることが特に好ましい。そして、スライス角度aは45°であることが最も好ましい。
【0066】
なお、スライス角度は、固定した切断刃に対して積層体を進入させる(切り込ませる)角度を変更することで制御してもよく、固定した積層体に対して切断刃を進入させる(切り込ませる)角度を変更することで制御してもよく、切断刃および積層体を互いに近付ける進入させる(切り込ませる)相対角度を変更することで制御してもよい。
【0067】
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は、-20℃以上30℃以下とすることが好ましい。
【0068】
なお、積層体を、プレ熱伝導シートの積層方向、あるいは、プレ熱伝導シートの積層方向および積層体を構成するプレ熱伝導シートの双方に直交する方向にスライスして得た熱伝導シートは、積層体を構成していたプレ熱伝導シートのスライス片(樹脂と熱伝導性充填材とを含む条片)が、直接的にまたは任意の層(例えば、接着層)などを介して間接的に並列接合されてなる構成を有している。換言すれば、当該熱伝導シートは、樹脂および熱伝導性充填材を含み、積層体を構成していたプレ熱伝導シートの厚みと略等しい寸法の幅を有する条片が、条片の幅方向が熱伝導シートの厚み方向と直交する姿勢で、条片の幅方向に、任意の層を介して並列接合されてなる構成を有している。
【0069】
<熱伝導シートの検査工程>
熱伝導シートの検査工程では、スライス工程を経て得られた熱伝導シートについて、熱伝導シートの良否を判断する。すなわち、本発明の熱伝導シートの製造方法は、例えば、熱伝導シートの検査工程として、熱伝導シートの表面に対する撮像装置の撮像角度と、熱伝導シートの表面に対する光の照射角度との差が40°となる角度で光を熱伝導シートの表面に照射しながら、熱伝導シートの表面を撮像装置で撮像する工程(撮像工程)と、得られた熱伝導シートの表面の画像を用いて異物を検出する工程(検出工程)とを含み得る。以下、各工程について説明する。
【0070】
[撮像工程]
撮像工程では、まず、検査ステージ上に、得られた熱伝導シートを設置する。次に、熱伝導シートの表面の垂線に対し40°(熱伝導シートの表面に対し50°)の照射角度から光源を用いて光を照射する。そして、光を照射しながら、熱伝導シートの真上(すなわち、熱伝導シートの表面に対し90°の撮像角度)に設置した撮像装置と光源とを熱伝導シートの表面に対して平行に走査しながら、熱伝導シートの表面を撮像装置で撮影して、熱伝導シートの表面の画像を得る。
なお、撮像工程に使用され得る光源、撮像装置などは特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
【0071】
[検出工程]
検出工程では、撮像工程で得られた熱伝導シートの表面の画像を用いて熱伝導シートの異物(欠陥)を検出する。異物の検出は、特に限定されないが、画像処理ソフトウェア等を用いて、得られた画像を平滑化処理およびエッジ検出などの画像処理に供することにより行うことができる。
なお、検出工程に使用され得る画像処理ソフトウェア等は特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
【0072】
(熱伝導シートの製造装置)
本発明の熱伝導シートの製造装置は、少なくとも、スライド面を有する支持台と、刃先が前記スライド面から突出するように配置された切断刃とを備えるスライス機構を備える。そして、スライド面の動摩擦係数が0.95以下であることを必要とする。このように、本発明の熱伝導シートの製造装置は、スライド面の動摩擦係数が0.95以下であるスライス機構を備えているため、色むらの発生が抑制され、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シートを得ることができる。
【0073】
本発明の熱伝導シートの製造装置が備えるスライス機構としては、<熱伝導シートの製造方法>の項で説明したスライス機構を用いることができる。また、支持台のスライド面の好ましい属性(表面粗さ等)も<熱伝導シートの製造方法>の項で説明したものと同様とすることができる。
【0074】
本発明の熱伝導シートの製造装置は、通常、上記スライス機構に加えて、上述した積層体(樹脂ブロック)をスライド面上に支持する支持部材と、支持部材に支持された積層体を切断刃に対してスライドさせるスライド機構とを備える。支持部材およびスライド機構の構成としては、特に限定されず、例えば、特開2015-015360号公報等に記載された公知のものを用いることができる。
そして、本発明の熱伝導シートの製造装置では、支持部材により積層体を支持台のスライド面上に接触させる。そして、スライド機構により、支持部材に支持された積層体を、スライド面に押圧しながらスライドさせて切断刃に対してスライドさせる。これにより、積層体が切断刃によりスライスされて、熱伝導シートが製造される。
【実施例0075】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における各種の測定および評価については、以下の方法に従って行なった。
【0076】
<粒子状炭素材料の含有割合>
熱伝導シートおよび積層体中の粒子状炭素材料の含有割合には、体積分率での理論値を用いた。具体的には、熱伝導シートおよび積層体中のそれぞれに含まれている樹脂および粒子状炭素材料の各成分について、密度(g/cm)と配合量(g)とから体積(cm)を算出し、熱伝導シートおよび積層体それぞれにおける粒子状炭素材料の含有割合を体積分率(体積%)で求めた。
<タック(プローブタック試験)>
積層体のタックの測定は、プローブタック試験機(レスカ社製、製品名「TAC1000」)を使用して、積層体の材料であるプレ熱伝導シートを対象にして行った。
まず、プレ熱伝導シートの略中心箇所に対して、温度:23℃、圧力:0.10MPaの条件で、直径10mmの平らなプローブを10秒間押し付けた。そして、プレ熱伝導シートに押しつけたプローブを引き離す際に要する力(剥離強度、単位は「MPa」)を測定した。引き離す際に要する力が大きいほど、積層体の粘着性が大きいことを示す。
<スライド面の動摩擦係数>
JIS K 7125に準じ、スライド面の動摩擦係数を以下のようにして測定した。まず、底面がフェルト製のすべり片(重さ:200g)を、支持台のスライド面(実施例1,3~6では、寸法約80mm×200mmのFEP樹脂フィルム、実施例2では寸法約80mm×200mmのシリコン樹脂フィルム、比較例ではステンレス鋼)の上に、フェルト面がスライド面に接触するようにセットした(すべり片とスライド面との接触面積:40cm)。そして、23℃にて、100mm/分の速度ですべり片を水平方向に引っ張った時の動摩擦力を、引張試験機(島津製作所、オートグラフAGS-1kNX)を用いて測定し、下記式を用いて動摩擦係数を算出した。
動摩擦係数[-]=動摩擦力[N]/1.96[N]
<表面粗さRa>
スライド面の表面粗さRaは、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「ワンショット3D測定マイクロスコープ」)を用いて測定した。測定は40倍の倍率で行い、観察範囲は5.7mm×7.6mmとした。
<異物の数(熱伝導シートの検査)>
検査ステージ(200mm×200mmの透明アクリル板)の上に、得られた熱伝導シート(150mm×150mm×0.1mm)を設置し、熱伝導シートの表面の垂線に対し40°(熱伝導シートの表面に対し50°)の照射角度から白色LEDバー照明(型番「LDL2-275X」CCS社製;色温度7,800K;消費電力27W)を用いて光を照射した。そして、光を照射しながら、熱伝導シートの真上(すなわち、熱伝導シートの表面に対し90°の撮像角度)に設置した8KのモノクロCMOSラインカメラ(Basler社製;型番「raL8192-12gm」;8192pix×1pix)と白色LEDバー照明とを熱伝導シートの表面に対し平行に走査しながら、熱伝導シートの表面をカメラで撮影して、熱伝導シートの表面のデジタル画像を得た。その後、このデジタル画像に対して画像処理部(オリジナルソフトウェア)にて平滑化処理とエッジ検出などの画像処理等を行うことで異物を検出し、異物数を測定した。
<半値全幅>
上述の検査で得られた熱伝導シートのデジタル画像を画像処理ソフトウェア(製品名「Image J」)に入力することによって、熱伝導シート表面の画像の輝度のヒストグラムを得た。ここで、「輝度」とは、256階調換算輝度で表わされ、撮像された画像を光強度に応じた256段階の階調で正規化としたときの値を指す。
次いで、熱伝導シートの表面の画像の輝度をx、輝度のヒストグラムを関数f(x)として表し、f(x)の最大値をfmax=f(xmax)とし、f(x)=xmax/2を満たすxのうち最小のxをx、最大のxをxとして、輝度のヒストグラムの半値全幅を下記式(1)により算出した。
輝度のヒストグラムの半値全幅=x-x・・・式(1)
そして、積層体を連続してスライスして得た連続100枚のシートについてヒストグラムの半値全幅を算出し、その算術平均値を輝度のヒストグラムの半値全幅とした。
<欠陥の誤検出率>
上述の検査によって得られた異物の個数と、目視で数えた異物の個数との整合性を確認した。具体的には、目視で確認できた異物、および検査により検出された異物の位置情報等から、異物が「存在しない」にもかかわらず異物が「存在する」と検査により誤判断された異物数を算出し、以下の式を用いて欠陥の誤検出率を算出した。
欠陥の誤検出率[%]=(誤判断された異物の数/検査により検出された異物の総数)×100
【0077】
(実施例1)
<組成物の調製>
樹脂としての常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、製品名「ダイエルG-101」)70部および常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、製品名「ダイニオンFC2211」)30部、ならびに、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、製品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部を、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、製品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物を、離形処理を施した厚み100μmのPETフィルム(基材フィルム)と、基材フィルムとは異なる離形処理を施した厚み75μmのPETフィルム(カバーフィルム)のそれぞれを一対の圧延ロール表面にそれぞれ這わせた(密着させた)加熱ロール式ラミネート装置(ヒラノ技研工業株式会社製)に250g/分の供給速度で供給し、圧延ロールの間隙を通過させることで、厚み800μmのプレ熱伝導シートを得た。圧延の条件は、以下のとおりとした。
間隙幅:650μm
ロール温度:100℃
ロール線圧:0.35t(トン)/cm
ロール速度:1m/分
得られたプレ熱伝導シートについて、スライド面との当接面のタックを測定したところ、0.06MPaであった。
<積層体の形成>
得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に188枚積層した。そして、温度23℃、圧力2MPaで90分間、積層方向にプレスすることにより、高さ約150mmの四角柱状の積層体(樹脂ブロック)を得た。
【0078】
<熱伝導シートの形成>
ステンレス鋼製の支持台と切断刃とを備える木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を準備した。支持台の積層体がスライドされる側の面に、厚さ0.1mmの樹脂フィルム(フロンケミカル社製、NR5008シリーズ、FEP樹脂層と粘着層とからなるフィルム)を、粘着層を介して貼り付けてスライド面を形成した。次いで、上述の積層体を、側面(積層方向に沿う面)がスライド面(FEP製樹脂フィルム)と接するように支持台上に載置した。そして、積層体を0.3MPaの圧力でスライド面に押圧しながらスライドさせて、積層方向に対して0°の角度で(換言すれば、積層されたプレ熱伝導シートの主面の法線方向に)切断刃に接触させることにより積層体をスライスし、縦150mm×横150mm×平均厚み0.10mmの熱伝導シートを得た。なお、積層体の積層方向と切断刃の延在方向とのなすスライス角度aは、45°とした。得られた熱伝導シートは、プレ熱伝導シートのスライス片(条片)が並列接合した構成を有していた。そして、得られる熱伝導シートについて、各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、スライド面の動摩擦係数は0.80であり、表面粗さRaは0.4μmであった。
【0079】
(実施例2)
支持台の積層体がスライドされる側の面に、厚さ0.1mmの樹脂フィルム(アズワン株式会社製「超透明シリコーンゴムフィルム」)を、シリコーンゴム用両面テープ(日東電工株式会社製、「シリコーンゴム接着用両面接着テープN5302A」)を介して貼りつけて動摩擦係数が0.93であるスライド面を形成した以外は、実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
組成物の調製において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の量を85部、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂の量を15部、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛の量を70部に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、積層体(プレ熱伝導シート)のスライド面との当接面のタックは0.12MPaであった。
【0081】
(実施例4)
組成物の調製において、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の量を100部、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂の量を0部、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛の量を70部に変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、積層体(プレ熱伝導シート)のスライド面との当接面のタックは0.23MPaであった。
【0082】
(実施例5)
支持台の積層体がスライドされる側の面を、サンドペーパーを用いて粗面加工することにより、スライド面の表面粗さRaを1.5μmに調整し、スライド面の動摩擦係数を0.95とした以外は、実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例6)
支持台の積層体がスライドされる側の面を、バフ研磨により鏡面加工することにより、スライド面の表面粗さRaを0.1μmに調整し、スライド面の動摩擦係数を0.82とした以外は、実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
支持台の積層体がスライドされる側の面に樹脂フィルムを貼らず、積層体をステンレス鋼製のスライド面に押圧しながらスライドさせてスライスした以外は、実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、積層体から切り出した一枚目の熱伝導シートの半値全幅の値は71であった。
【0085】
(比較例2)
木工用スライサーに代えて、実施例1の積層体を下記の手順でスライスして熱伝導シートを得た。
まず、積層体を積層方向が地面(積層体の載置面)に対して水平方向となるように置き、スライスに必要な長さを積層体の積層方向に直交する方向の一端側に残して、設置した積層体の上面の全体を金属板で押え、上から0.1MPaの圧力をかけて、積層体を固定した。なお、積層体の側面、背面の固定は行わなかった。このとき、積層体の温度は25℃であった。
次いで、サーボプレス機(放電精密加工研究所製)のプレス部分に、切断刃を取り付け、積層方向が水平方向となるように置いた積層体を、スライス速度100mm/秒、スライス幅100μmの条件で鉛直方向(積層体の積層方向に直交する方向)にスライスして、縦150mm×横150mm×厚み(平均厚み)0.10mmの熱伝導シートを得た。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。得られた熱伝導シートには、切断刃のスライス面が擦れたことに起因して、スジが発生していた。また、輝度のヒストグラムの半値全幅は73であった。
【0086】
(比較例3)
支持台の積層体がスライドされる側の面に樹脂フィルムを貼らず、積層体をステンレス鋼製のスライド面に押圧しながらスライドさせてスライスした以外は、実施例3と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例3と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例4)
支持台の積層体がスライドされる側の面に樹脂フィルムを貼らず、積層体をステンレス鋼製のスライド面に押圧しながらスライドさせてスライスした以外は、実施例4と同様にして熱伝導シートを製造した。そして、実施例4と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
表1中、FEPは「テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体」を表す。
【0089】
表1の結果から、スライド面の動摩擦係数が0.95以下である支持台を備えるスライス機構を用いて積層体をスライスすれば、得られる熱伝導シートの色むらの発生が抑制され、欠陥の誤検出が抑制されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、欠陥の誤検出が抑制された熱伝導シート、ならびに、当該熱伝導シートを製造し得る、熱伝導シートの製造方法および製造装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 樹脂ブロック(積層体)
11 プレ熱伝導シート
20 支持台
21 スライド面
22 樹脂フィルム
30 切断刃
31 すくい面
32 逃げ面
40 ガイド部材
41 表面
50 補助ガイド部材
60 部分
70 間隙
a スライス角度
A 樹脂ブロック(積層体)の積層方向
B 切断刃の延在方向
図1
図2