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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102751
(43)【公開日】2023-07-25
(54)【発明の名称】搬送アーム及び基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230718BHJP
【FI】
H01L21/68 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172728
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2022003019
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 智徳
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA19
5F131BB03
5F131BB23
5F131CA70
5F131DB02
5F131DB22
5F131DB25
5F131DB52
5F131DB72
5F131DB76
5F131DB82
5F131HA09
5F131HA12
5F131HA13
(57)【要約】
【課題】大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームにおいて、基板の離脱性を向上させる。
【解決手段】大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームであって、基板を保持するピックと、前記ピックの表面に設けられた複数の保持パッドと、を有し、前記保持パッドは、真空吸着用の貫通孔が形成され、前記ピックの表面に設けられるベース部と、前記ベース部の表面に環状に設けられ、基板の裏面に接触する環状部と、を有し、前記環状部の一部には、当該環状部の環状方向と交差する方向に凸部が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームであって、
基板を保持するピックと、
前記ピックの表面に設けられた複数の保持パッドと、を有し、
前記保持パッドは、
真空吸着用の貫通孔が形成され、前記ピックの表面に設けられるベース部と、
前記ベース部の表面に環状に設けられ、基板の裏面に接触する環状部と、を有し、
前記環状部の一部には、当該環状部の環状方向と交差する方向に凸部が形成されている、搬送アーム。
【請求項2】
前記環状部は、円環形状を有する、請求項1に記載の搬送アーム。
【請求項3】
前記凸部は、前記環状部の外側又は内側のいずれか一方において少なくとも1つ形成されている、請求項1又は2に記載の搬送アーム。
【請求項4】
前記凸部は、前記環状部の外側に形成されている、請求項3に記載の搬送アーム。
【請求項5】
前記凸部の頂部は、屈曲した鋭角に形成されている、請求項1又は2に記載の搬送アーム。
【請求項6】
前記ベース部は、接着剤を介して前記ピックの表面に固定され、
前記ベース部の裏面において前記凸部に対応する位置には、前記ピックの表面との接着面が形成されている、請求項1又は2に記載の搬送アーム。
【請求項7】
前記ベース部の裏面において前記貫通孔の周囲には、前記ピックの表面との接着面が形成されている、請求項6に記載の搬送アーム。
【請求項8】
大気雰囲気下で基板を搬送する基板搬送装置であって、
基板を真空吸着して搬送する搬送アームを有し、
前記搬送アームは、
基板を保持するピックと、
前記ピックの表面に設けられた複数の保持パッドと、を有し、
前記保持パッドは、
真空吸着用の貫通孔が形成され、前記ピックの表面に設けられるベース部と、
前記ベース部の表面に環状に設けられ、基板の裏面に接触する環状部と、を有し、
前記環状部の一部には、当該環状部の環状方向と交差する方向に凸部が形成されている、基板搬送装置。
【請求項9】
前記保持パッドに接続され、当該保持パッドに対してガスを供給又は吸引するガス流路と、
前記ガス流路に設けられ、前記保持パッド又は前記保持パッドに保持された基板の少なくともいずれかに振動を付与する振動付与部と、を有する、請求項8に記載の基板搬送装置。
【請求項10】
前記ガス流路には、前記ガスの供給又は吸引を切り替えるバルブが設けられ、
前記ガス流路は、前記保持パッドと前記バルブを接続するガス主流路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路にガスを供給するガス供給路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路からガスを吸引するガス吸引路と、を有し、
前記振動付与部は、前記ガス供給路に設けられている、請求項9に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記ガス流路に設けられ、前記振動付与部によって付与された振動を検知する振動検知部を有する、請求項9又は10に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
前記ガス流路には、前記ガスの供給又は吸引を切り替えるバルブが設けられ、
前記ガス流路は、前記保持パッドと前記バルブを接続するガス主流路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路にガスを供給するガス供給路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路からガスを吸引するガス吸引路と、を有し、
前記振動検知部は、前記ガス供給路に設けられている、請求項11に記載の基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送アーム及び基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板を真空吸着して搬送する基板搬送装置が開示されている。基板搬送装置は、フランジ部を含み、基板を保持する複数のパッドと、複数のパッドを着脱可能に固定するハンドと、を備える。フランジ部は、円形に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-103696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームにおいて、基板の離脱性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームであって、基板を保持するピックと、前記ピックの表面に設けられた複数の保持パッドと、を有し、前記保持パッドは、真空吸着用の貫通孔が形成され、前記ピックの表面に設けられるベース部と、前記ベース部の表面に環状に設けられ、基板の裏面に接触する環状部と、を有し、前記環状部の一部には、当該環状部の環状方向と交差する方向に凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームにおいて、基板の離脱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかるウェハ処理装置の構成の概略を示す平面図である。
図2】搬送アームの構成の概略を示す斜視図である。
図3】保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
図4】保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
図5】保持パッドと台座の構成の概略を示す斜視図である。
図6】保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
図7】ピックにおける保持パッドの配置を示す説明図である。
図8A】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8B】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8C】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8D】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8E】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8F】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8G】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8H】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図8I】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図9】保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
図10】保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
図11】保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
図12A】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12B】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12C】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12D】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12E】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12F】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12G】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12H】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図12I】保持パッドの構成の概略を示す平面図である。
図13】ウェハ搬送装置の内部構成を示す説明図である。
図14】従来の保持パッドの構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(基板;以下、「ウェハ」という。)に対して、例えば真空雰囲気下でエッチング処理等のウェハ処理が行われる。このウェハ処理は、処理モジュールを複数備えたウェハ処理装置を用いて行われる。
【0009】
例えばウェハ処理装置は、真空雰囲気下(減圧雰囲気下)の減圧部と大気雰囲気下(常圧雰囲気下)の常圧部が、ロードロックモジュールを介して一体に接続された構成を有している。
減圧部は、共通のトランスファモジュールと、トランスファモジュールの周囲に連結された複数の処理モジュールとを備える。そして、真空雰囲気下のトランスファモジュールから処理モジュールにウェハが搬送され、当該処理モジュールにおいて真空雰囲気下で所望の処理が行われる。
常圧部は、複数のウェハを保管可能なフープを載置するロードポートと、ウェハ搬送装置を備えたローダーモジュールとを備える。そして、大気雰囲気下のローダーモジュールにおいて、フープとロードロックモジュールに対してウェハが搬送される。
ロードロックモジュールは、内部が真空雰囲気と大気雰囲気に切り替え可能に構成され、減圧部と常圧部の間でウェハの受け渡しを行う。
【0010】
ローダーモジュールにおいて、大気雰囲気下でウェハを搬送するウェハ搬送装置は、例えば特許文献1に開示されたように、ハンド(搬送アーム)に設けられた複数のパッドでウェハを真空吸着して搬送する。また、ウェハ搬送装置から他のモジュール等にウェハを受け渡す際には、複数のパッドからの真空引きを停止してウェハを離脱させる。
【0011】
しかしながら、パッドからの真空引きを停止しても、当該パッドからウェハが離脱し難い場合がある。これは、例えばウェハの粘着性に起因するが、従来のパッドはこのような離脱困難な場合は想定されていない。そして、パッドからウェハの離脱が困難な場合、ウェハの受け渡し時にウェハが搬送アームから飛び跳ねたり、或いはウェハを受け渡せずに搬送アームにウェハが残るなどのトラブルが生じ得る。したがって、従来のウェハ搬送装置には改善の余地がある。
【0012】
本開示にかかる技術は、大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームにおいて、基板の離脱性を向上させる。以下、本実施形態にかかる基板搬送装置としてのウェハ搬送装置を備えたウェハ処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<ウェハ処理装置>
先ず、本実施形態にかかるウェハ処理装置について説明する。図1は、ウェハ処理装置1の構成の概略を示す平面図である。本実施形態においては、ウェハ処理装置1が、基板としてのウェハWにCOR処理、PHT処理、及びCST処理を行うための各種処理モジュールを備える場合について説明する。なお、本開示のウェハ処理装置1が備える各種処理モジュールの構成はこれに限られず、任意に選択され得る。
【0014】
図1に示すようにウェハ処理装置1は、常圧部10と減圧部11がロードロックモジュール20a、20bを介して一体に接続された構成を有している。
【0015】
ロードロックモジュール20aは、常圧部10の後述するローダーモジュール30から搬送されたウェハWを、減圧部11の後述するトランスファモジュール60に引き渡すため、ウェハWを一時的に保持する。ロードロックモジュール20aは、内部に複数、例えば2つのストッカ(図示せず)を有しており、これにより内部に2枚のウェハWを同時に保持する。
【0016】
ロードロックモジュール20aは、ゲートバルブ(図示せず)が設けられたゲート(図示せず)を介して、ローダーモジュール30及びトランスファモジュール60に接続されている。このゲートバルブにより、ロードロックモジュール20aと、ローダーモジュール30及びトランスファモジュール60の間との気密性の確保と互いの連通を両立する。
【0017】
ロードロックモジュール20aにはガスを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続され、当該給気部と排気部によって内部が大気雰囲気(常圧雰囲気)と真空雰囲気(減圧雰囲気)に切り替え可能に構成されている。すなわちロードロックモジュール20aは、大気雰囲気の常圧部10と、真空雰囲気の減圧部11との間で、適切にウェハWの受け渡しができるように構成されている。
【0018】
ロードロックモジュール20bはトランスファモジュール60から搬送されたウェハWをローダーモジュール30に引き渡すため、ウェハWを一時的に保持する。ロードロックモジュール20bは、ロードロックモジュール20aと同様の構成を有している。すなわち、ゲートバルブ(図示せず)、ゲート(図示せず)、給気部(図示せず)、及び排気部(図示せず)を有している。
【0019】
なお、ロードロックモジュール20a、20bの数や配置は、本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0020】
常圧部10は、後述するウェハ搬送装置40を備えたローダーモジュール30と、複数のウェハWを保管可能なフープ31を載置するロードポート32と、ウェハWを冷却するCSTモジュール33と、ウェハWの水平方向の向きを調節するアライナモジュール34とを有している。
【0021】
ローダーモジュール30は内部が矩形の筐体からなり、筐体の内部は大気雰囲気に維持されている。ローダーモジュール30の筐体の長辺を構成する一側面には、複数、例えば3つのロードポート32が並設されている。ローダーモジュール30の筐体の長辺を構成する他側面には、ロードロックモジュール20a、20bが並設されている。ローダーモジュール30の筐体の短辺を構成する一側面には、CSTモジュール33が設けられている。ローダーモジュール30の筐体の短辺を構成する他側面には、アライナモジュール34が設けられている。
【0022】
なお、ロードポート32、CSTモジュール33、及びアライナモジュール34の数や配置は本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。また、常圧部10に設けられるモジュールの種類も本実施形態に限定されるものではなく、任意に選択できる。
【0023】
フープ31は複数、例えば1ロット25枚のウェハWを収容する。また、ロードポート32に載置されたフープ31の内部は、例えば、大気や窒素ガスなどで満たされて密閉されている。
【0024】
ローダーモジュール30の内部には、ウェハWを搬送する基板搬送装置としてのウェハ搬送装置40が設けられている。ウェハ搬送装置40は、多関節型のロボットである。ウェハ搬送装置40は、ウェハWを保持して移動する搬送アーム41a、41bと、3つのアーム42~44と、搬送アーム41a、41bを回転可能に支持する回転台45と、回転台45を搭載した回転載置台46とを有している。3つのアーム42~44は関節部(図示せず)によって接続され、これら関節部によってアーム42~44はそれぞれ基端部を中心に旋回自在に構成されている。第1のアーム42の先端部には搬送アーム41a、41bが取り付けられ、基端部は第2のアーム43の先端部に設けられる。搬送アーム41a、41bはそれぞれ、第1のアーム42に設けられた回転部(図示せず)によって、回転自在に構成されている。第2のアーム43の基端部は、第3のアーム44の先端部に設けられる。第3のアーム44の基端部は回転台45に設けられる。アーム42~44と回転台45はそれぞれ、中空の内部構造を有している。アーム42~44の内部と回転第45の内部はそれぞれ、大気雰囲気に維持されている。また、かかる構成を有するウェハ搬送装置40は、ローダーモジュール30の筐体の内部において長手方向に移動可能に構成されている。
【0025】
減圧部11は、2枚のウェハWを同時に搬送するトランスファモジュール60と、ウェハWにCOR処理を行うCORモジュール61と、ウェハWにPHT処理を行うPHTモジュール62とを有している。トランスファモジュール60、CORモジュール61、及びPHTモジュール62の内部は、それぞれ真空雰囲気に維持される。また、CORモジュール61及びPHTモジュール62は、トランスファモジュール60に対して複数、例えば3つずつ設けられている。
【0026】
トランスファモジュール60は内部が矩形の筐体からなり、上述したようにゲートバルブ(図示せず)を介してロードロックモジュール20a、20bに接続されている。トランスファモジュール60は、ロードロックモジュール20aに搬入されたウェハWを一のCORモジュール61、一のPHTモジュール62に順次搬送してCOR処理とPHT処理を施した後、ロードロックモジュール20bを介して常圧部10に搬出する。
【0027】
CORモジュール61の内部には、2枚のウェハWを水平方向に並べて載置する2つのステージ61a、61bが設けられている。CORモジュール61は、ステージ61a、61bにウェハWを並べて載置することにより、2枚のウェハWに対して同時にCOR処理を行う。なお、CORモジュール61には、処理ガスやパージガスなどを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続されている。
【0028】
PHTモジュール62の内部には、2枚のウェハWを水平方向に並べて載置する2つのステージ62a、62bが設けられている。PHTモジュール62は、ステージ62a、62bにウェハWを並べて載置することにより、2枚のウェハWに対して同時にPHT処理を行う。なお、PHTモジュール62には、ガスを供給する給気部(図示せず)とガスを排出する排気部(図示せず)が接続されている。
【0029】
また、CORモジュール61及びPHTモジュール62は、ゲートバルブ(図示せず)が設けられたゲート(図示せず)を介して、トランスファモジュール60に接続されている。このゲートバルブにより、トランスファモジュール60とCORモジュール61及びPHTモジュール62の間の気密性の確保と互いの連通を両立する。
【0030】
なお、トランスファモジュール60に設けられる処理モジュールの数や配置、及び種類は本実施形態に限定されるものではなく、任意に設定できる。
【0031】
トランスファモジュール60の内部には、ウェハWを搬送するウェハ搬送装置70が設けられている。ウェハ搬送装置70は、2枚のウェハWを保持して移動する搬送アーム71a、71bと、搬送アーム71a、71bを回転可能に支持する回転台72と、回転台72を搭載した回転載置台73とを有している。また、トランスファモジュール60の内部には、トランスファモジュール60の長手方向に延伸するガイドレール74が設けられている。回転載置台73はガイドレール74上に設けられ、ウェハ搬送装置70をガイドレール74に沿って移動可能に構成されている。
【0032】
以上のウェハ処理装置1には、制御部80が設けられている。制御部80は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理装置1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部80にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体Hは、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0033】
以上のように構成されたウェハ処理装置1においては、先ず、大気雰囲気下でウェハ搬送装置40によってウェハWは、フープ31からアライナモジュール34に搬送され、水平方向の向きが調節される。次に、ウェハ搬送装置40によってウェハWは、ロードロックモジュール20aに搬送される。
【0034】
次に、真空雰囲気下でウェハ搬送装置70によってウェハWは、CORモジュール61に搬送され、COR処理が行われる。次に、ウェハ搬送装置70によってウェハWは、PHTモジュール62に搬送され、PHT処理が行われる。次に、ウェハ搬送装置70によってウェハWは、ロードロックモジュール20bに搬送される。
【0035】
次に、大気囲気下でウェハ搬送装置40によってウェハWは、CSTモジュール33に搬送され、CST処理が行われる。次に、ウェハ搬送装置40によってウェハWは、フープ31に搬送される。こうして、ウェハ処理装置1における一連のウェハ処理が終了する。
【0036】
<搬送アーム>
次に、ウェハ搬送装置40の搬送アーム41a、41bについて説明する。搬送アーム41a、41bは同じ構成を有し、以下では、搬送アーム41と総称して説明する。搬送アーム41は、ウェハWを真空吸着して搬送する。
【0037】
図2に示すように、搬送アーム41は、ウェハWを保持するピック100と、ピック100の表面に設けられた複数、例えば3つの保持パッド110とを有している。ピック100は、基端部101から2本の先端部102、102に分岐したフォーク形状を有している。3つの保持パッド110はそれぞれ、基端部101、先端部102、102の表面に設けられている。
【0038】
図3及び図4に示すように保持パッド110は、底面に設けられたベース部111と、ベース部111の表面に設けられた環状部112とを有している。ベース部111と環状部112は一体成型されている。
【0039】
環状部112は、円環部112aと凸部112bとを有している。円環部112aと凸部112bは一体成型されている。円環部112aは、例えば平面視において真円の円環形状を有している。凸部112bは、例えば平面視において円環部112aから、当該円環部112aの環状方向と交差する方向に外側に突起している。凸部112bの頂部は、屈曲した鋭角に形成されている。
【0040】
ベース部111は、内側ベース部111aと外側ベース部111bとを有している。内側ベース部111aと外側ベース部111bは一体成型されている。内側ベース部111aは、環状部112の内側において、円環部112aと凸部112bに沿って設けられている。外側ベース部111bは、凸部112bより外側に突起して設けられている。
【0041】
内側ベース部111aには、真空吸着用の貫通孔113が形成されている。貫通孔113には、後述のガス流路130が接続され、更に保持パッド110の内側にガスを供給する後述の給気部131と、保持パッド110の内側のガスを吸引して真空引きする後述の吸引部132とに連通している。
【0042】
図5に示すように保持パッド110は、接着剤を介して、ピック100に固定される。ピック100には、貫通孔113に対応する位置に、ガス流路130が設けられている。ガス流路130は、貫通孔113から延伸し、3つのアーム42~44の内部を挿通する。ガス流路130は、保持パッド110の内側にガスを供給する給気部131と、保持パッド110の内側のガスを吸引して真空引きする吸引部132とに連通している。また、ガス流路130には、給気部131からのガス供給と、吸引部132からのガス吸引(真空引き)を切り替えるバルブ133が設けられている。バルブ133には、例えばソレノイドバルブが用いられる。なお、給気部131、吸引部132及びバルブ133は、3つの保持パッド110に共通に設けられている。
【0043】
ピック100の表面においてガス流路130の周囲には接着面134aが形成されている。また、内側ベース部111aの裏面は、貫通孔113の周囲において、接着面134aに対応する接着面114aを構成する。すなわち、内側ベース部111aの裏面の接着範囲(接着面114a)は、接着面134aの形状で決定される。これら接着面114aと接着面134aは対向配置され、隙間なく接着固定される。このように貫通孔113とガス流路130の周囲を接着面114aと接着面134aで固定することで、ガス漏れを抑制することができる。
【0044】
外側ベース部111bの裏面の凸部112bに対応する位置には接着面114bが形成され、ピック100の表面において凸部112bに対応する位置には接着面134bが形成されている。これら接着面114bと接着面134bは対向配置され、接着固定される。そして、このように接着固定されることで、凸部112bの剛性を高くすることができる。なお、本実施形態では、外側ベース部111bの裏面と接着面114bは同一面を構成するが、例えば図6に示すように、接着面114bは外側ベース部111bの裏面から突出して形成されてもよい。
【0045】
以上のように構成された保持パッド110の効果について、従来の保持パッドと比較して説明する。図14に示すように従来の保持パッド500は、底面に設けられたベース部501と、ベース部501の表面に円環状に設けられた環状部502とを有している。環状部502は、例えば平面視において長円形状を有している。ベース部501には、真空吸着用の貫通孔503が形成されている。
【0046】
保持パッド500でウェハWを保持する際には、ウェハWの裏面に環状部502が接触した状態で、ウェハWの裏面、ベース部501、及び環状部502で形成された吸着空間500sを真空引きする。一方、保持パッド500からウェハWを離脱させる際には、吸着空間500sの真空引きを停止して、更に吸着空間500sにガスを供給した後、搬送先への受け渡しなどでウェハWを上昇(移動)させる。
【0047】
しかしながら、吸着空間500sの真空引きを停止しても、保持パッド500からウェハWが離脱し難い場合がある。すなわち、ウェハWが粘着性を有し、ウェハWと環状部502が粘着するため、保持パッド500からウェハWが離脱し難くなる。
【0048】
これに対して、本実施形態の保持パッド110は離脱の起点となる凸部112bを有している。
【0049】
保持パッド110でウェハWを保持する際には、ウェハWの裏面に環状部112が接触した状態で、ウェハWの裏面と保持パッド110の内側で形成された吸着空間110sを吸引部132によって真空引きする。
【0050】
一方、保持パッド110からウェハWを離脱させる際には、吸着空間110sの真空引きを停止して、更に吸着空間110sに給気部131からガスを供給する。その後、ウェハ受渡し等でウェハWを上昇(移動)させると、凸部112bに応力が集中し、当該凸部112bが離脱起点となる。この点、従来の保持パッド500は、凸部112bのような特異点がないので、環状部502のどこかに応力が集中することはない。そして、凸部112bから円環部112aに向けて順次離脱を伝搬させ、ウェハWが離脱する。したがって、本実施形態の保持パッド110によれば、ウェハWの離脱性を向上させることができる。しかも、凸部112bに対応する外側ベース部111bは、接着面114b、134bを介してピック100に固定されて剛性が高くなっている。このため、凸部112bに応力を更に集中させることができ、当該凸部112bを適切に離脱起点として機能させることができる。したがって、ウェハWの離脱性を更に向上させることができる。
【0051】
なお、搬送アーム41における3つの保持パッド110の向き、すなわち円環部112aに対する凸部112bの向きは任意である。例えば、図7に示すように3つの保持パッド110はそれぞれ、円環部112aに対する凸部112bの向きが、ピック100の中心から放射状に外側に向くように配置されてもよい。保持パッド110の特性として、ウェハWの離脱時にウェハWの位置ズレを発生させるおそれが考えられるが、このように凸部112bが放射状に配置されていると、保持パッド110の単体での特性を相殺できる可能性がある。
【0052】
また、保持パッド110において、円環部112aの平面形状や凸部112bの平面形状、貫通孔113の配置は任意である。
【0053】
例えば、図8A図8Cに示すように円環部112aは平面視において真円形状を有していてもよい。図8Aにおいて貫通孔113は円環部112aの略中心に形成され、図8Bにおいて貫通孔113は円環部112aの凸部112b側に形成される。図8Cにおいて凸部112bは他の凸部112bより大きい。
【0054】
例えば、図8D図8Fに示すように円環部112aは、平面視において円環部112aと凸部112bを結ぶ方向と直交方向に長軸を有する長円形状を有していてもよい。図8Dにおいて貫通孔113は円環部112aの略中心に形成され、図8Eにおいて貫通孔113は凸部112b側に形成されている。図8Fにおいて凸部112bは他の凸部112bより大きい。
【0055】
例えば、図8G図8Iに示すように円環部112aは、平面視において円環部112aと凸部112bを結ぶ方向に長軸を有する長円形状を有していてもよい。図8Gにおいて貫通孔113は円環部112aの略中心に形成されている。図8Hにおいて凸部112bは他の凸部112bより大きく、貫通孔113は円環部112aの中心と凸部112bの間に形成されている。図8Iにおいて円環部112aと凸部112bの接続箇所は角部を形成し、貫通孔113は凸部112b側に形成されている。
【0056】
また例えば、図9に示すように保持パッド110において、外側ベース部111bを省略してもよい。かかる場合、接着面114bは、内側ベース部111aの凸部112b側の先端に形成される。
【0057】
以上の図8A図8I及び図9に示したいずれの保持パッド110を用いた場合でも、上述した効果を享受することができる。すなわち、ウェハWを離脱させる際の応力集中部である凸部112bが離脱の起点として機能させることができ、また接着面114bによって凸部112bの剛性が高くなっているので、ウェハWの離脱性を向上させることができる。しかも、凸部112bに対応する外側ベース部111bは、接着面114b、134bを介してピック100に固定されて剛性が高くなっている。このため、凸部112bに応力を更に集中させることができ、当該凸部112bを適切に離脱起点として機能させることができる。したがって、ウェハWの離脱性を更に向上させることができる。
【0058】
以上の保持パッド110では、平面視において凸部112bは円環部112aから外側に突起していたが、凸部は円環部から内側に突起していてもよい。
【0059】
図10及び図11に示すように保持パッド200は、保持パッド110と同様に、底面に設けられたベース部201と、ベース部201の表面に設けられた環状部202とを有している。ベース部201と環状部202は一体成型されている。
【0060】
環状部202は、円環部202aと凸部202bとを有している。円環部202aと凸部202bは一体成型されている。円環部202aは、例えば平面視において真円の円環形状を有している。凸部202bは、例えば平面視において円環部202aから、当該円環部202aの環状方向と交差する方向に内側に突起している。凸部202bの頂部は、屈曲した鋭角に形成されている。
【0061】
ベース部201には、真空吸着用の貫通孔203が形成されている。貫通孔203には、保持パッド200の内側にガスを供給する給気部131と、保持パッド200の内側のガスを吸引して真空引きする吸引部132とが接続されている。
【0062】
保持パッド200は、接着剤を介して、ピック100に固定される。
【0063】
ベース部201の裏面は、貫通孔203の周囲において、ピック100の接着面に対応する接着面204を構成する。接着面204は、ピック100の接着面に、隙間なく接着固定される。このように貫通孔203とガス流路130の周囲を接着面204で固定することで、ガス漏れを抑制することができる。また、接着面204は、凸部202bに対応する位置に形成されている。このため、凸部202bの剛性を高くすることができる。
【0064】
凸部202bは、上述した凸部112bと同様の作用効果を奏する。すなわち、保持パッド200でウェハWを保持する際には、ウェハWの裏面に環状部202が接触した状態で、ウェハWの裏面と保持パッド200の内側で形成された吸着空間200sを吸引部132によって真空引きする。
【0065】
一方、保持パッド200からウェハWを離脱させる際には、吸着空間200sの真空引きを停止して、更に吸着空間200sに給気部131からガスを供給する。その後、ウェハ受渡し等でウェハWを上昇(移動)させると、凸部202bに応力が集中し、当該凸部202bが離脱起点となる。そして、凸部202bから円環部202aに向けて順次ウェハWが離脱する。したがって、本実施形態の保持パッド200によれば、ウェハWの離脱性を向上させることができる。また、凸部202bに対応する位置のベース部201は、接着面204を介してピック100に固定されて剛性が高くなっているので、凸部202bを適切に離脱起点として機能させることができる。したがって、ウェハWの離脱性を更に向上させることができる。
【0066】
なお、搬送アーム41における3つの保持パッド200の向き、すなわち円環部202aに対する凸部202bの向きは任意である。例えば、3つの保持パッド200はそれぞれ、円環部202aに対する凸部202bの向きが、ピック100の中心から放射状に外側に向くように配置されてもよい。
【0067】
また、保持パッド200において、円環部202aの平面形状や凸部202bの平面形状、貫通孔203の配置は任意である。
【0068】
例えば、図12A図12Cに示すように円環部202aは平面視において真円形状を有していてもよい。図12Aにおいて貫通孔203は円環部202aの略中心に形成されている。図12Bにおいて凸部202bは他の凸部202bより大きく、図12Cにおいて凸部202bは他の凸部202bより更に大きい。
【0069】
例えば、図12D図12Fに示すように円環部202aは、平面視において円環部202aと凸部202bを結ぶ方向と直交方向に長軸を有する長円形状を有していてもよい。図12Dにおいて貫通孔203は円環部202aの略中心に形成されている。図12Eにおいて凸部202bは他の凸部202bより大きく、貫通孔203は凸部202bと反対側に形成されている。図12Fにおいて凸部202bは更に他の凸部202bより大きく、貫通孔203は凸部202bと反対側に形成されている。
【0070】
例えば、図12G図12Iに示すように円環部202aは、平面視において円環部202aと凸部202bを結ぶ方向に長軸を有する長円形状を有していてもよい。図12Gにおいて貫通孔203は円環部202aの略中心に形成されている。図12Hにおいて凸部202bは他の凸部202bより大きく、貫通孔203は凸部202b側に形成されている。図12Iにおいて凸部202bは更に他の凸部202bより大きく、貫通孔203は凸部202bと反対側に形成されている。
【0071】
以上の実施形態の保持パッド110、200において、環状部112、202の円環部112a、202aの形状は、真円形状や長円形状に限定されない。例えば、円環部112a、202aは、楕円形状、卵形状等であってもよい。
【0072】
また、以上の実施形態の保持パッド110、200において、環状部112、202は円環部112a、202aを有していたが、環状部112、202の全体形状は円環形状に限定されない。例えば、環状部112、202は四角形状や五角形状等の多角形状を有していてもよい。かかる場合、環状部112、202は、多角形状部(図示せず)と凸部112b、202bを有する。そして、多角形状部の頂部とは異なる凸部112b、202bによって、上述した効果を享受することができ、すなわちウェハWの離脱性を向上させることができる。
【0073】
また、以上の実施形態の保持パッド110、200の材質は特に限定されない。例えば、PI(ポリイミド)樹脂を用いてもよいし、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂を用いてもよい。但し、本発明者らが鋭意検討したところ、ウェハWの離脱性とウェハWの吸着性(リーク性)を総合的に判断して、PI樹脂を用いるのが好ましいことが分かった。
【0074】
なお、保持パッド110、200の環状部112、202において、凸部112b、202bの材質と、円環部112a、202aの材質は異なっていてもよい。例えば、凸部112b、202bに剛性の高い材質を用いてもよいし、或いは離脱性の高い材質を用いてもよい。
【0075】
次に、他の実施形態にかかるウェハ搬送装置40の構成について説明する。図13は、当該ウェハ搬送装置40の内部構成を示す説明図である。以下の説明において、ウェハ搬送装置40の搬送アーム41aを下側搬送アーム41aといい、搬送アーム41bを上側搬送アーム41bという場合がある。
【0076】
上述したガス流路130は、下側搬送アーム41aに接続される下側ガス流路130aと、上側搬送アーム41bに接続される上側ガス流路130bとを有している。また、上述したバルブ133は、下側ガス流路130aに設けられる下側バルブ133aと、上側ガス流路130bに設けられる上側バルブ133bとを含んでいる。これらバルブ133a、133bには、例えばソレノイドバルブが用いられる。但し、バルブ133a、133bは、後述するようにガスの供給又はガスの吸引を切り替えるものであれば、ソレノイドバルブに限定されない。
【0077】
下側ガス流路130aは、下側ガス主流路300aと、下側ガス供給路301aと、下側ガス吸引路302aとを有している。下側ガス主流路300aは、保持パッド110と下側バルブ133aを接続する流路である。下側ガス供給路301aは、下側バルブ133aに接続され、下側ガス主流路300aにガスを供給する流路である。下側ガス吸引路302aは、下側バルブ133aに接続され、下側ガス主流路300aからガスを吸引する流路である。
【0078】
上側ガス流路130bも下側ガス流路130aと同様の構成を有し、上側ガス主流路300bと、上側ガス供給路301bと、上側ガス吸引路302bとを有している。上側ガス主流路300bは、保持パッド110と上側バルブ133bを接続する流路である。上側ガス供給路301bは、上側バルブ133bに接続され、上側ガス主流路300bにガスを供給する流路である。上側ガス吸引路302bは、上側バルブ133bに接続され、上側ガス主流路300bからガスを吸引する流路である。
【0079】
下側ガス供給路301aと上側ガス供給路301bは、バルブ133a、133bの反対側において合流し、ガス供給路301cを構成する。ガス供給路301cは回転台45の内部の大気雰囲気に開放され、すなわちガス供給路301a~301cの内部は大気雰囲気に維持されている。なお、上述した給気部131は、回転台45の内部(大気雰囲気)に相当する。
【0080】
下側ガス吸引路302aと上側ガス吸引路302bは、バルブ133a、133bの反対側において合流し、ガス吸引路302cを構成する。ガス吸引路302cは、上述した吸引部132に接続されている。
【0081】
下側搬送アーム41aにおいて保持パッド110でウェハWを保持する際には、下側バルブ133aによって下側ガス主流路300aと下側ガス吸引路302aを接続する。吸引部132は常時作動し、ガス吸引路302cと下側ガス吸引路302aは常時真空引きされている。そして、ウェハWの裏面に保持パッド110の環状部112が接触すると、ガス吸引路302c、下側ガス吸引路302a及び下側ガス主流路300aを介して、保持パッド110の吸着空間110sのガスが吸引され、当該吸着空間110sが真空引きされる。こうして保持パッド110でウェハWが保持される。
【0082】
一方、保持パッド110からウェハWを離脱させる際には、下側バルブ133aによって下側ガス主流路300aと下側ガス供給路301aを接続する。下側ガス供給路301aの内部とガス供給路301cの内部は大気雰囲気に維持されており、当該下側ガス供給路301aの内部のガスが下側ガス主流路300aを介して吸着空間110sに供給される。そして、下側ガス主流路300aの内部と吸着空間110sが大気圧に維持される。こうして保持パッド110からウェハWが離脱する。
【0083】
ガス供給路301cには、振動付与部としてのスピーカ310が設けられている。スピーカ310は、音波を発生させる。上述したように保持パッド110からウェハWを離脱させる際には、ガス供給路301c、下側ガス供給路301a及び下側ガス主流路300aを介して吸着空間110sにガスが供給され、これらの内部が大気圧のガスで充填される。この際、スピーカ310から音波を発生させると、音波がガスを介して保持パッド110に伝達される。そうすると、音波によって保持パッド110が振動し、この振動が離脱のきっかけとなるため、ウェハWの離脱性を更に向上させることができる。
【0084】
なお、スピーカ310から発生させる音波の周波数や出力を最適化することにより、保持パッド110を適切に振動させることができる。例えば音波の周波数は、保持パッド110の固有振動数に合致しているのが好ましい。
【0085】
ここで、ウェハWの離脱性を向上させる方策として、保持パッド110に接続されるガス流路130(下側ガス流路130aと上側ガス流路130b)の内部を加圧することが考えられる。しかしながら、かかる場合、ウェハWの離脱直後に保持パッド110からガスが流出することにより、ガス流路130の内部のパーティクルが飛散するおそれがある。したがって、かかるパーティクルの飛散を抑制する観点からも、本実施形態のように音波によって保持パッド110を振動させることは有用である。
【0086】
また、スピーカ310から音波を発生させるタイミングは特に限定されない。例えば、常時スピーカ310から音波を発生させてもよい。かかる場合、保持パッド110でウェハWを保持する際には、下側ガス主流路300aを介して吸着空間110sが真空引きされるので、スピーカ310からの音波は真空雰囲気を伝達せず、保持パッド110に伝達されない。したがって、保持パッド110からウェハWを離脱させる際のみ、音波によって保持パッド110を振動させることができる。換言すれば、下側バルブ133aの切り替えのみで、保持パッド110に音波を適切に伝達させることができる。あるいは、省エネルギーの観点からは、保持パッド110からウェハWを離脱させる際のみ、スピーカ310から音波を発生させてもよい。
【0087】
また、ウェハWを離脱させる際、本実施形態では保持パッド110を振動させたが、保持パッド110に保持されたウェハWを振動させてもよい。かかる場合、例えば音波の周波数は、ウェハWの固有振動数に合致しているのが好ましい。あるいは、音波の振動数や出力を調整して、保持パッド110とウェハWの両方を振動させてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、下側搬送アーム41aにおいて保持パッド110でウェハWを保持する場合と保持パッド110からウェハWを離脱させる場合について説明したが、上側搬送アーム41bにおいてウェハWを保持又は離脱させる場合も同様である。本実施形態では、下側搬送アーム41aと上側搬送アーム41bに共通のガス供給路301cにスピーカ310を設けているので、両方の搬送アーム41a、41bの保持パッド110(又はウェハW)を振動させることができる。
【0089】
このようにスピーカ310は搬送アーム41a、41bに共通に設けられるのが、装置簡略化の観点から好ましいが、スピーカ310の配置はこれに限定されない。例えば下側搬送アーム41aと上側搬送アーム41bのそれぞれに個別にスピーカ310が設けられてもよい。かかる場合、2個のスピーカ310はそれぞれ、例えば下側ガス供給路301aと上側ガス供給路301bに設けられる。
【0090】
また、本実施形態では、振動付与部としてスピーカ310を用いたが、保持パッド110(又はウェハW)を振動させることができれば、これに限定されない。例えば、振動付与部としてスピーカ310以外の音響機器を用いて、音波を発生させてもよい。あるいは、例えば振動付与部として、超音波を発生させる超音波発生装置を用いてもよい。
【0091】
以上の実施形態のガス供給路301cには、スピーカ310に加えて、振動検知部としてのマイク320が設けられていてもよい。マイク320は、スピーカ310から発生した音波が保持パッド110に保持されたウェハWに反射し、当該ウェハWから戻ってくる反響音を検知する。
【0092】
上述したように、例えば下側搬送アーム41aにおいて保持パッド110からウェハWを離脱させる際、下側ガス流路130aの内部と吸着空間110sが大気圧のガスで充填され、スピーカ310から音波を発生させて保持パッド110を振動させる。この際、マイク320がウェハWからの反響音を検知すれば、保持パッド110に対してウェハWが有ると判定され、ウェハWが離脱していないことが確認できる。一方、マイク320が反響音を検知しなければ、保持パッド110にはウェハが無いと判定され、ウェハWが適切に離脱したことが確認できる。このように、マイク320で検知される反響音の有無によって、ウェハWの有無を確認することができる。
【0093】
ここで、保持パッド110におけるウェハWの有無を確認する方策として、下側ガス流路130aの内部の圧力(特に、下側ガス主流路300aの内部の圧力)を用いることが考えられる。例えば内部圧力が大きい場合、保持パッド110に対してウェハWが有ると判定される。一方、内部圧力が小さい場合、保持パッド110にはウェハWが無いと判定される。しかしながら、保持パッド110からウェハWを離脱させる場合にウェハWが無いことを確認するためには、下側ガス流路130aの内部圧力を予め定められた閾値まで下げる必要があるため、時間がかかる。この点、本実施形態によれば、反響音の有無を検知することでウェハWの有無を確認するため、確認のために要する時間を短縮することができる。
【0094】
また、本実施形態では、下側搬送アーム41aにおいて保持パッド110でウェハWを保持する場合と保持パッド110からウェハWを離脱させる場合について説明したが、上側搬送アーム41bにおいてウェハWを保持又は離脱させる場合も同様である。
【0095】
また更に、下側搬送アーム41aにおけるウェハWの有無と上側搬送アーム41bにおけるウェハWの有無を同時に確認することもできる。例えば、マイク320が2枚のウェハWからの反響音を検知する場合には、当該反響音の強度は大きくなる。したがって、反響音の強度によって、2枚のウェハWが有るのか、1枚のウェハWが有るのか、あるいはウェハWが無いのかを確認することができる。また、下側ガス流路130aの長さと上側ガス流路130bの長さは異なる。このため、1枚のウェハWが有る場合、下側搬送アーム41aのウェハWからの反響音と、上側搬送アーム41bのウェハWからの反響音とでは、検知するタイミング異なる。すなわちマイク320は、下側搬送アーム41aのウェハWからの反響音を早く検知する。したがって、1枚のウェハWが有る場合に、反響音の検知タイミングによって、下側搬送アーム41a又は上側搬送アーム41bのいずれにウェハWが有るかを確認することができる。また本実施形態では、下側搬送アーム41aと上側搬送アーム41bに共通のガス供給路301cにマイク320を設けているので、下側搬送アーム41aにおけるウェハWの有無と上側搬送アーム41bにおけるウェハWの有無を同時に確認することができる。
【0096】
このようにマイク320は搬送アーム41a、41bに共通に設けられるのが、装置簡略化の観点から好ましいが、マイク320の配置はこれに限定されない。例えば下側搬送アーム41aと上側搬送アーム41bのそれぞれに個別にマイク320が設けられてもよい。かかる場合、2個のマイク320はそれぞれ、例えば下側ガス供給路301aと上側ガス供給路301bに設けられる。
【0097】
また、スピーカ310とマイク320の組み合わせ配置も、本実施形態に限定されない。1個のスピーカ310と2個のマイクの組み合わせ、2個のスピーカ310と1個のマイクの組み合わせ、2個のスピーカ310と2個のマイクの組み合わせなど、種々の組み合わせが考えられる。
【0098】
また、本実施形態では、振動付与部としてマイク320を用いたが、反響音を検知することができれば、振動付与部はマイクに限定されない。
【0099】
なお、本実施形態の振動検知部としてのマイク320は、ウェハWの有無検知と異なる用途にも用いることができる。例えば、特許第6114060号公報には、搬送アームでウェハを受け取る際、搬送アームの上昇量と、搬送アームとウェハの接触音に基づいてウェハの受渡位置を確認することが開示されている。例えば本実施形態のマイク320は、この搬送アーム41とウェハWの接触音を検知するために用いてもよい。
【0100】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0101】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)大気雰囲気下で基板を真空吸着して搬送する搬送アームであって、
基板を保持するピックと、
前記ピックの表面に設けられた複数の保持パッドと、を有し、
前記保持パッドは、
真空吸着用の貫通孔が形成され、前記ピックの表面に設けられるベース部と、
前記ベース部の表面に環状に設けられ、基板の裏面に接触する環状部と、を有し、
前記環状部の一部には、当該環状部の環状方向と交差する方向に凸部が形成されている、搬送アーム。
(2)前記環状部は、円環形状を有する、前記(1)に記載の搬送アーム。
(3)前記凸部は、前記環状部の外側又は内側のいずれか一方において少なくとも1つ形成されている、前記(1)又は(2)に記載の搬送アーム。
(4)前記凸部は、前記環状部の外側に形成されている、前記(3)に記載の搬送アーム。
(5)前記凸部の頂部は、屈曲した鋭角に形成されている、前記(1)~(4)のいずれかに記載の搬送アーム。
(6)前記ベース部は、接着剤を介して前記ピックの表面に固定され、
前記ベース部の裏面において前記凸部に対応する位置には、前記ピックの表面との接着面が形成されている、前記(1)~(5)のいずれかに記載の搬送アーム。
(7)前記ベース部の裏面において前記貫通孔の周囲には、前記ピックの表面との接着面が形成されている、前記(6)に記載の搬送アーム。
(8)大気雰囲気下で基板を搬送する基板搬送装置であって、
基板を真空吸着して搬送する搬送アームを有し、
前記搬送アームは、
基板を保持するピックと、
前記ピックの表面に設けられた複数の保持パッドと、を有し、
前記保持パッドは、
真空吸着用の貫通孔が形成され、前記ピックの表面に設けられるベース部と、
前記ベース部の表面に環状に設けられ、基板の裏面に接触する環状部と、を有し、
前記環状部の一部には、当該環状部の環状方向と交差する方向に凸部が形成されている、基板搬送装置。
(9)前記保持パッドに接続され、当該保持パッドに対してガスを供給又は吸引するガス流路と、
前記ガス流路に設けられ、前記保持パッド又は前記保持パッドに保持された基板の少なくともいずれかに振動を付与する振動付与部と、を有する、前記(8)に記載の基板搬送装置。
(10)前記ガス流路には、前記ガスの供給又は吸引を切り替えるバルブが設けられ、
前記ガス流路は、前記保持パッドと前記バルブを接続するガス主流路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路にガスを供給するガス供給路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路からガスを吸引するガス吸引路と、を有し、
前記振動付与部は、前記ガス供給路に設けられている、前記(9)に記載の基板搬送装置。
(11)前記ガス流路に設けられ、前記振動付与部によって付与された振動を検知する振動検知部を有する、前記(9)又は(10)に記載の基板搬送装置。
(12)前記ガス流路には、前記ガスの供給又は吸引を切り替えるバルブが設けられ、
前記ガス流路は、前記保持パッドと前記バルブを接続するガス主流路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路にガスを供給するガス供給路と、前記バルブに接続され前記ガス主流路からガスを吸引するガス吸引路と、を有し、
前記振動検知部は、前記ガス供給路に設けられている、前記(11)に記載の基板搬送装置。
【符号の説明】
【0102】
40 ウェハ搬送装置
41(41a、41b) 搬送アーム
100 ピック
110 保持パッド
111 ベース部
112 環状部
113 貫通孔
112b 凸部
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
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図8I
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