(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102932
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】姿勢調整装置及び姿勢調整システム
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20230719BHJP
B63C 11/49 20060101ALI20230719BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G03B17/56 A
B63C11/49
H04N5/222 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003693
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】菊地 敦史
(72)【発明者】
【氏名】小関 和宏
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA02
2H105DD07
2H105EE07
5C122EA42
5C122GD01
5C122GD12
5C122GE01
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】姿勢調整対象物の姿勢を調整できないことによる不具合を抑制することを課題とする。
【解決手段】プラス浮力が生じる第一部分10と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分20とを備える姿勢調整対象物1に取り付けられて、流体中における該姿勢調整対象物の姿勢を調整する姿勢調整装置30であって、前記第一部分のプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つ錘部31を有し、前記姿勢調整対象物に取り付けられることで、流体中における該姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部のマイナス浮力によって当該取り付け前よりも低くなる所定箇所に、前記錘部が配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラス浮力が生じる第一部分と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分とを備える姿勢調整対象物に取り付けられて、流体中における該姿勢調整対象物の姿勢を調整する姿勢調整装置であって、
前記第一部分のプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つ錘部を有し、
前記姿勢調整対象物に取り付けられることで、流体中における該姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部のマイナス浮力によって当該取り付け前よりも低くなる所定箇所に、前記錘部が配置されることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の姿勢調整装置において、
前記姿勢調整対象物の被装着位置に着脱可能に装着される装着部を有することを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の姿勢調整装置において、
前記装着部は、前記被装着位置から前記所定箇所までの延びる延出部を備え、
前記延出部は、前記錘部よりも低い密度であることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載の姿勢調整装置において、
前記錘部は金属製であり、前記延出部は樹脂製であることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の姿勢調整装置において、
前記装着部は、前記姿勢調整対象物の前記被装着位置とは異なる別の被装着位置にも着脱可能に装着され、
前記姿勢調整対象物の前記別の被装着位置に前記装着部が装着されたとき、前記錘部のマイナス浮力により前記第二部分に生じるマイナス浮力が増大する別の所定箇所に、前記錘部が配置されることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の姿勢調整装置において、
前記錘部は、体積を変化させることで浮力が変化する体積変化部を備え、
前記体積変化部は、流体中における前記姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に、前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部の浮力によって高くなる第一体積と、該相対的な高さ位置が該錘部の浮力によって低くなる第二体積との間で、体積変化可能に構成されていることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の姿勢調整装置において、
前記姿勢調整対象物の前記第一部分は、被収容物を内部に収容した状態のハウジング部を含むことを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項8】
請求項7に記載の姿勢調整装置において、
前記被収容物は撮像装置であることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項9】
請求項8に記載の姿勢調整装置において、
前記所定箇所は、前記撮像装置のレンズ近傍であることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の姿勢調整装置において、
前記所定箇所は、前記撮像装置の撮像領域外であることを特徴とする姿勢調整装置。
【請求項11】
浮力調整対象物に装着されて、流体中における該浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整装置と、
前記浮力調整対象物に前記浮力調整装置が装着されてなる姿勢調整対象物の流体中における姿勢を調整する姿勢調整装置とを含む姿勢調整システムであって、
前記姿勢調整装置として、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の姿勢調整装置を用いることを特徴とする姿勢調整システム。
【請求項12】
請求項11に記載の姿勢調整システムにおいて、
前記錘部は、流体中における前記姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に、前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部のマイナス浮力によって高くなる第一箇所と、該相対的な高さ位置が該錘部のマイナス浮力によって低くなる第二箇所との間で、配置変更可能に構成されていることを特徴とする姿勢調整システム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の姿勢調整システムにおいて、
前記浮力調整対象物を構成し、かつ、被収容物を内部に収容するハウジング部を含むことを特徴とする姿勢調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢調整装置及び姿勢調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラス浮力が生じる第一部分と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分とを備える姿勢調整対象物に取り付けられて、流体中における該姿勢調整対象物の姿勢を調整する姿勢調整装置が知られている。「プラス浮力」とは、当該流体中において当該部分に作用する重力と浮力の合力が上向き(当該部分が浮く方向)となる浮力をいい、「マイナス浮力」とは、当該流体中において当該部分に作用する重力と浮力の合力が下向き(当該部分が沈む方向)となる浮力をいう。また、「中性浮力」とは、当該流体中において当該部分に作用する重力と浮力の合力がゼロとなる浮力をいう。
【0003】
特許文献1には、カメラを収納する液密のカメラ収納具をエアータンクの側面上部に取り付けるための取付部材を備えたカメラ固定具が開示されている。このカメラ固定具は、エアータンクの側面中央付近を覆う容積可変部材(浮力調整装置)と、この容積可変部材に取り込まれる空気の量を調節する空気量調整部材とを備えている。
【0004】
エアータンクを海中で運搬する場合、エアータンクのバルブを開き、空気量調整部材を介して容積可変部材の内部に空気を給気して、容積可変部材の容積を増加させることにより、容積可変部材の浮力を増大させる。これにより、エアータンクの重量と容積可変部材の浮力とが釣り合ったところで中性浮力となり、ダイバーは本来重いエアータンクを軽々と運搬可能になる。一方、海底に到着して水中撮影を行う際には、空気量調整部材を開き、容積可変部材内の空気を抜いて容積可変部材の容積を減少させて浮力を減らす。これにより、カメラ固定具が装着されたエアータンクは、その重量により海底に着地するとともに、その浮力バランス(上部(第一部分)の密度が低く、下部(第二部分)の密度が高い。)によって、海底に直立する。このとき、エアータンクの下部に錘を取り付けることにより、エアータンクの直立姿勢が安定に保たれる。そして、カメラ固定具の取付部材にカメラ収納具を固定することにより、エアータンクを三脚の代用として使用可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来は、プラス浮力が生じる第一部分と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分とを備える姿勢調整対象物の姿勢を調整できず、姿勢調整対象物の利便性を損なうなどの不具合が生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、プラス浮力が生じる第一部分と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分とを備える姿勢調整対象物に取り付けられて、流体中における該姿勢調整対象物の姿勢を調整する姿勢調整装置であって、前記第一部分のプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つ錘部を有し、前記姿勢調整対象物に取り付けられることで、流体中における該姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部のマイナス浮力によって当該取り付け前よりも低くなる所定箇所に、前記錘部が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、姿勢調整対象物の姿勢を調整できないことによる不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態におけるハウジング部に浮力調整装置が装着されてなる水中ハウジングを模式的に示す正面図。
【
図2】(a)及び(b)は、同ハウジング部から取り外された状態の同浮力調整装置を模式的に示す正面図。
【
図3】同ハウジング部に収容されるカメラを模式的に示す正面図。
【
図4】同浮力調整装置の体積変化部の体積を減少させて水中ハウジングを水底(海底)まで沈めた状態を示す説明図。
【
図5】同姿勢調整装置を同水中ハウジングに装着した状態を模式的に示す正面図。
【
図6】同姿勢調整装置を取り付けて同水中ハウジングの姿勢を変更した状態を模式的に示す正面図。
【
図7】同姿勢調整装置を同水中ハウジングの別の箇所に取り付けた状態を模式的に示す正面図。
【
図8】(a)は、変形例1の姿勢調整装置が取り付けられた水中ハウジングを模式的に示す正面図。(b)は、同姿勢調整装置により水中ハウジングの姿勢が変更された状態を模式的に示す正面図。
【
図9】(a)は、変形例1の他の例に係る姿勢調整装置が取り付けられた水中ハウジングを模式的に示す正面図。(b)は、同姿勢調整装置により水中ハウジングの姿勢が変更された状態を模式的に示す正面図。
【
図10】変形例2の姿勢調整装置が取り付けられた水中ハウジングを模式的に示す正面図。
【
図11】(a)~(c)は、錘部の体積変化部の体積を変化させて、同姿勢調整装置を取り付けた同水中ハウジングの姿勢を変更した状態を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、姿勢調整装置を含む姿勢調整システムに適用した一実施形態について説明する。
本実施形態の姿勢調整システムは、姿勢調整対象物の流体中における姿勢を調整する姿勢調整装置を含むものである。本実施形態における姿勢調整対象物は、浮力調整対象物と、流体中における浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整装置とから構成される。
【0010】
なお、姿勢調整対象物は、これに限らず、例えば浮力調整装置を備えていない物であってもよい。また、本実施形態の姿勢調整システムは、姿勢調整装置のほか、姿勢調整対象物を構成する浮力調整対象物の少なくとも一部と浮力調整装置とを含むが、姿勢調整装置を含んでいれば、姿勢調整対象物を構成する浮力調整対象物や浮力調整装置を含まずともよい。
【0011】
以下の説明では、被収容物である撮像装置としてのカメラを内部に収容するハウジング部を浮力調整対象物とし、ハウジング部内のカメラを流体である水の中で使用する例について説明する。なお、ハウジング部内に収容される被収容物は、撮像装置以外の電子機器、電子機器以外の物品など、どのような物体であってもよいが、当該流体中でそのまま(ハウジングに収容されない状態で)使用することに不向きな物体である。また、流体は、水である場合に限らず、海水などの他の液体、あるいは、気体などであってもよい。
【0012】
図1は、本実施形態におけるハウジング部10に浮力調整装置20が装着されてなる水中ハウジング1を模式的に示す正面図である。
図2(a)及び(b)は、ハウジング部10から取り外された状態の浮力調整装置20を模式的に示す正面図である。
図3は、ハウジング部10に収容されるカメラ100を模式的に示す正面図である。
【0013】
本実施形態の姿勢調整対象物である水中ハウジング1は、被収容物であるカメラ100を内部に収容するハウジング部10と、カメラ100を内部に収容したハウジング部10の水中における浮力を調整する浮力調整装置20とを備えている。
【0014】
ハウジング部10は、内部のカメラ100がハウジング部10の外部を撮像可能なように光透過性部材で構成されている。例えば、ハウジング部10は、透明なプラスチック製のものである。ハウジング部10には、カメラ100を保持するための保持部が内部に設けられている。保持部にカメラ100を保持することで、カメラ100はハウジング部10の内部に保持される。
【0015】
浮力調整装置20は、カメラ100を内部に収容したハウジング部10を浮力調整対象物とし、水中における浮力調整対象物の浮力を調整する手段として機能する。本実施形態の浮力調整装置20は、体積を変化させることでアルキメデスの原理により浮力が変化する体積変化部21を有する。この体積変化部21は、第一構造部21Aと、この第一構造部21Aに対して図中矢印Aに沿って進退可能な第二構造部21Bとから構成された密閉構造物である。すなわち、本実施形態の体積変化部21は、第一構造部21Aに対して第二構造部21Bが進退することにより、密閉状態のまま体積を変化させることができる。
【0016】
また、浮力調整装置20は、体積変化部21をハウジング部10に接続するための接続部22を備えている。この接続部22は、体積変化部21をハウジング部10に対して着脱自在に接続することができる。
【0017】
図3に示すように、カメラ100は、長尺な略直方形状をなし、正面と裏面のそれぞれの上部に、超広角レンズを備える撮像部101が配置された360度カメラである。また、このカメラ100には、正面の中央に操作ボタン102が配置され、撮影開始や撮影終了などのユーザー操作を操作ボタン102が受け付ける。このカメラ100は、正面と裏面に設けられる2つの撮像部101によりそれぞれ約半天球状の画像を撮像することで、上下左右の全空間の画像(360度画像)を取得することができる。
【0018】
本実施形態の水中ハウジング1におけるハウジング部10は、
図1に示すように、
図3に示す構成のカメラ100に対応する長尺な形状をなしている。具体的には、ハウジング部10は、ハウジング部10に対してカメラ100を出し入れするための出入り口としてハウジング部本体12の下面が開口している。そして、この出入口を開閉するための蓋部材13を閉じ、蓋部材13を閉じた状態でロックすることにより、ハウジング部10が密閉状態に維持される。これにより、ハウジング部10を水中に入れても、ハウジング部10内に水が入り込むことがなく、カメラ100が水に濡れることが防止される。
【0019】
また、ハウジング部本体12の下面の出入り口からカメラ100をハウジング部10内に挿入し、蓋部材13を閉じてロック部材によりロックすると、カメラ100がハウジング部10の内壁部に当接し、正規の位置に位置決め固定される。
【0020】
また、ハウジング部10の蓋部材13には、浮力調整装置20の接続部22に設けられる雲台22aの接続ネジ22bをネジ止めするためのネジ穴が設けられている。このネジ穴に接続部22の接続ネジ22bをネジ止めすることで、
図1に示すように、ハウジング部10の下端に浮力調整装置20を連結することができる。また、ハウジング部10には、例えば蓋部材13に、ユーザーから離れてしまわないようにするストラップを取り付ける取付部を設けるのが好ましい。
【0021】
また、ハウジング部10は、内部のカメラ100でハウジング部10の外部を撮像できるように、少なくともカメラ100の撮像領域に対応する部分が透明なプラスチック製で形成されている。本実施形態のハウジング部10は、ハウジング部本体12及び蓋部材13が透明である。また、ハウジング部本体12は、カメラ100の撮像部101によって撮像される撮像画像への悪影響(画像歪みなど)を抑制するため、2つの撮像部101を覆う部分12aの形状が略球形となるように構成されている。
【0022】
本実施形態のハウジング部10に収容されるカメラ100は、それ単体では水中で沈むものであるが、このカメラ100をハウジング部10に収容することで、カメラ100を含むハウジング部10の全体(浮力調整対象物)は水中で浮くものとなる。水中で常に浮いてしまうようなハウジング部10を水中で運搬したり操作したりするのは、ユーザーにとって非常に面倒である。そのため、本実施形態では、ハウジング部10に浮力調整装置20を連結することで、カメラ100を含むハウジング部10と浮力調整装置20との全体で浮力と重力のバランスが取れる中性浮力又はマイナス浮力が得られるようにしている。
【0023】
もちろん、ハウジング部10の重量や体積を調整することで、浮力調整装置20を利用せずに、カメラ100を含むハウジング部10の全体が中性浮力を得られるようにすることも可能である。しかしながら、本実施形態において、カメラ100は比較的軽量であり、かつ、2つの撮像部101を覆う部分12aが略球形となるようにハウジング部本体12が部分的に突出した形状をなしていることから、浮力を抑えることが難しい。このような場合には、浮力調整装置20を利用するのがよい。
【0024】
本実施形態の浮力調整装置20は、上述したとおり、体積を変化させることで浮力が変化する第一構造部21A及び第二構造部21Bからなる体積変化部21を有する。第一構造部21Aは、例えば中空円筒状の長尺な部材である。このように第一構造部21Aを長尺な部材とすることで、ユーザーから離れた位置からカメラ100での撮像が可能となる。なお、第一構造部21Aは、このような中空円筒状の部材に限らず、中実の部材や、断面が非円形(矩形状など)の部材であってもよい。
【0025】
第二構造部21Bも、中空円筒状の長尺な部材である。なお、第二構造部21Bも、このような中空円筒状の部材に限らず、中実の部材や、断面が非円形(矩形状など)の部材であってもよい。第一構造部21Aの下端部分の外周面にはネジ山が形成されており、第二構造部21Bの上端部分の内周面には、このネジ山に噛み合うネジ溝が形成されている。これにより、ユーザーが第二構造部21Bを回して、このネジ構造を締めたり緩めたりすることで、第二構造部21Bが第一構造部21Aに対して図中矢印Aに沿って進退することができる。
【0026】
その結果、第一構造部21A及び第二構造部21Bからなる体積変化部21の全体の体積を変化させることができる。例えば、ユーザーが第二構造部21Bを回して、
図2(a)に示すようにネジ構造を締めた状態から、
図2(b)に示すようにネジ構造を緩めた状態にする。すると、長さLだけ体積変化部21の長さが伸び、体積変化部21はΔVで示す破線で囲んだ分だけ体積を増やすことができる。逆に、ユーザーが第二構造部21Bを逆に回して、
図2(b)に示すようにネジ構造を緩めた状態から、
図2(a)に示すようにネジ構造を締めた状態にする。すると、長さLだけ体積変化部21の長さを縮めることができ、体積変化部21はΔVで示す破線で囲んだ分だけ体積を減らすことができる。本実施形態において、第一構造部21A及び第二構造部21Bは、体積変化部21の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部として機能する。
【0027】
なお、ここでは、体積変化部21の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部が、ネジ構造により構成されている例であるが、これに限られない。例えば、操作受付部は、第二構造部21Bが第一構造部21Aに対して図中矢印Aに沿って摺動するようなピストン構造により構成されていてもよい。
【0028】
また、本実施形態の操作受付部は、体積変化部21の体積を変化させるための動力がユーザーの操作力によってなされる構成であるが、これに限られない。例えば、操作受付部は、モータやソレノイド等のアクチュエータ(駆動手段)を設けて、その駆動力を体積変化部21の体積を変化させるための動力としたものであってもよい。この場合、アクチュエータを制御する制御部は、操作ボタンや操作レバーなどの操作受付部が受け付けたユーザー操作に応じて、アクチュエータのオンオフ動作や動作量あるいは動作方向などの制御を行う。これにより、ユーザーは、軽い操作力で、自らの意思に沿って体積変化部21の体積を変化させることができる。
【0029】
また、第一構造部21Aに対して第二構造部21Bが進退しても密閉状態を維持できるように、第一構造部21Aと第二構造部21Bとの間にはシール部材が配置されている。このシール部材には、例えば樹脂製のOリングなどを用いることができる。
【0030】
また、本実施形態の第二構造部21Bの下部には、重り25が配置されている。上述したようにカメラ100を含むハウジング部10の全体が水中で浮くものであり、また、浮力調整装置20も中空構造の密閉構造物であるため比較的軽量である。そのため、カメラ100を含むハウジング部10と浮力調整装置20との全体で中性浮力を得られるように、重り25を設けている。
【0031】
水中ハウジング1をユーザーが水中で手放した状態で水中ハウジング1内のカメラ100により撮像する際、水中ハウジング1の姿勢を安定させることは重要な課題である。本実施形態において、水中ハウジング1は、上述したとおり、ハウジング部10が水中で浮くのに対し、浮力調整装置20は重り25によって水中で沈むように構成されている。そのため、ユーザーが手放した状態における水中ハウジング1の水中姿勢は、第一部分であるハウジング部10が上部、第二部分である浮力調整装置20が下部となる姿勢(長尺な部材である浮力調整装置20の長手方向(以下、単位「長手方向」という。)が上下方向に向く姿勢)で安定しやすい。
【0032】
ただし、流れ(うねり)がある水中では、水中ハウジング1が長手方向中心軸(浮力調整装置20の長手方向中心軸)の回りを回転し、当該中心軸回りにおける回転方向が安定しないことがある。このように回転方向が安定せずに回転が生じてしまうと、カメラ100で適切な画像を撮像することが困難となる。
【0033】
そこで、流れ(うねり)のある水中でも水中ハウジング1が回転せずに姿勢を安定させるため、本実施形態では、姿勢安定化部材として、例えば羽部材26を水中ハウジング1に設置している。この羽部材26は、例えば、浮力調整装置20の第一構造部21Aから横方向(長手方向に対して直交する方向)へ突出した板状の部材であって、その板面が長手方向に略平行となるように設置されている。このような羽部材26を設置することで、羽部材26の板面が水中の流れ方向に平行となる姿勢で水中ハウジング1が安定しやすくなり、流れ(うねり)のある水中でも水中ハウジング1が回転せずに姿勢が安定しやすい。
【0034】
上述した羽部材26は、浮力調整装置20の第一構造部21Aに対して着脱自在であるのが好ましいが、第一構造部21Aと一体構成であってもよい。また、羽部材26は、第一構造部21Aに対して回転やスライドなどの相対移動によって、浮力調整装置20に収容可能な構成にしてもよい。また、羽部材26の設置箇所は、浮力調整装置20の第一構造部21Aでなくてもよく、例えば第二構造部21Bやハウジング部10であってもよい。また、姿勢安定化部材は、水中ハウジング1の姿勢(ハウジング部10の姿勢)を安定させることのできるものであれば、羽部材に限られない。
【0035】
なお、流れ(うねり)がある水中では、水中ハウジング1が重心位置付近(例えば重り25の付近)を中心にハウジング部10が揺れるような動き(揺動)をして、水中ハウジング1の姿勢が安定しないこともある。このような場合も、例えば、姿勢安定化部材として、羽部材26を水中ハウジング1に設置するのが効果的である。ただし、この場合の羽部材の板面が水平方向に略平行となるように設置される。
【0036】
本実施形態において、第一部分であるハウジング部10に加わるプラス浮力F0は、主に、ハウジング部10の重量、ハウジング部10の体積、ハウジング部10に収容されるカメラ100の重量によって決定される。一方、第二部分である浮力調整装置20に加わるマイナス浮力F1は、主に、浮力調整装置20の重量M、浮力調整装置20の体積(体積変化部21の体積)、浮力調整装置20に収容される重り25の重量Mcによって決定される。そして、浮力調整装置20に加わる浮力は、上述のとおり、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の長さLを変化させ、体積変化部21の体積を変化させることで、体積変化分ΔVに応じた分ΔFだけ変化させることができる。
【0037】
したがって、水中ハウジング1に中性浮力を得たい場合、F0+(F1+ΔF)=M+McとなるΔFが得られるように、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の体積変化分ΔVを調整すればよい。また、水中ハウジング1を浮かせたい場合、F0+(F1+ΔF)>M+McとなるΔFが得られるように、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の体積変化分ΔVを調整すればよい。また、水中ハウジング1を沈ませたい場合、F0+(F1+ΔF)<M+McとなるΔFが得られるように、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の体積変化分ΔVを調整すればよい。
【0038】
なお、本実施形態では、重り25を浮力調整装置20における第二構造部21Bに配置しているが、これに限らず、第一構造部21Aに配置してもよいし、あるいは、ハウジング部10に配置してもよい。重り25の配置については、種々の目的に応じて適宜決定される。例えば、カメラ100を含む水中ハウジング1の全体の重心位置が、水中ハウジング1の取り扱いを容易にするような位置になるように決定してもよい。
【0039】
本実施形態では、カメラ100が収容されるハウジング部10とは反対側の端部に位置する第二構造部21Bに重り25を配置している。これにより、カメラ100を含む水中ハウジング1の全体の重心位置を、水中ハウジング1の中央付近(第一構造部21Aの中間位置付近)にすることができ、例えば地上での水中ハウジング1の取り扱いが容易になる。
【0040】
また、本実施形態のように、第一構造部21Aに対して進退可能な第二構造部21Bに重り25を配置することで、第二構造部21Bを進退させて体積変化部21の体積を変更させる際に、水中ハウジング1の全体の重心位置の移動量が大きくなる。よって、第一構造部21Aに対して第二構造部21Bを進退させることにより、水中ハウジング1の全体の重心位置を調整する機能が発揮される。これにより、水中において、水中ハウジング1に浮力や重力の作用する位置バランスを調整でき、水中ハウジング1の取り扱いを容易にする調整が可能となる。
【0041】
ユーザーは、例えば水中(海中)でカメラ100により360度画像を撮像する場合、カメラ100をハウジング部10内に収容した水中ハウジング1を持って水中に潜る。このとき、ハウジング部10の部分だけの場合(浮力調整装置20が接続されていない場合)には、浮力が大きすぎて、水中に潜る際や水中での撮影の際の取り扱いが不便で、また、これを把持しているユーザーの水中での動きも制限される。
【0042】
本実施形態のように、ハウジング部10に浮力調整装置20が接続された水中ハウジング1であれば、水中ハウジング全体で中性浮力が得られる。中性浮力が得られることで、例えば、水中ハウジング1をユーザーが手放しても、水中ハウジング1がユーザーの手元から急に離れていくようなことがなくなり、またユーザーの手元付近に浮遊させて留めておくことも可能である。その結果、ユーザーは、水中でずっと水中ハウジング1を把持し続ける必要がなくなり、また、ストラップなどで水中ハウジング1をユーザーに連結しておく必要もなくすことが可能である。よって、水中での取り扱いが容易になり、また、これを把持しているユーザーの水中での動きも制限されにくい。
【0043】
また、本実施形態においては、ユーザーが第二構造部21Bを回す操作を行って第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させることで、体積変化部21の体積を変化させ、カメラ100を含むハウジング部10の浮力を変化させることができる。このように、カメラ100を含むハウジング部10の浮力をユーザー操作に基づいて行うことができることで、ユーザーは、自らの意思に沿って浮力の調整を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、中性浮力が得られている状態から、ユーザーが第二構造部21Bを回して体積変化部21の体積を増加させると、浮力が増して、水中ハウジング1が浮くようにすることができる。これにより、例えば、ユーザーは、水中ハウジング1を手放すことで水中ハウジング1だけを浮上させ、ユーザーから離れた上方の水中画像を撮像することができる。
【0045】
逆に、本実施形態では、中性浮力が得られている状態から、ユーザーが第二構造部21Bを回して体積変化部21の体積を減少させると、浮力が減って、水中ハウジング1が沈むようにすることができる。これにより、例えば、ユーザーは、水中ハウジング1を手放すことで水中ハウジング1だけを沈降させ、ユーザーから離れた下方の水中画像を撮像することができる。
【0046】
図4は、浮力調整装置20の体積変化部21の体積を減少させて水中ハウジング1を水底(海底)まで沈めた状態を示す説明図である。
本実施形態の水中ハウジング1は、浮力調整装置20を使用して浮力を調整することにより、浮力調整対象であるハウジング部10を海底Sに沈めることが可能となる。これにより、例えば、ハウジング部10内のカメラ100のセルフタイマー機能や動画機能を使うなどして、海底S付近にいる魚やサンゴ等をカメラ100で撮影することができる。
【0047】
ここで、水中ハウジング1は、上述したようにプラス浮力の生じる第一部分であるハウジング部10と、中性浮力又はマイナス浮力を生じることが可能な第二部分である浮力調整装置20とを備える。このような水中ハウジング1は、
図4に示すように、ハウジング部10と浮力調整装置20との間の浮力差により、ハウジング部10が浮力調整装置20の上方に位置する姿勢となる。水中ハウジング1のプラス浮力を超えるマイナス浮力を生じさせる重り25は、水中ハウジング1の姿勢を維持したまま水中ハウジング1の浮力の調整に用いられるものである。すなわち、重り25は、水中ハウジング1の姿勢(ハウジング部10が浮力調整装置20の上方に位置する姿勢)を変えるものではない。
【0048】
水中ハウジング1の姿勢を
図4の姿勢から変えることができないと、例えば、水中ハウジング1は、水中ハウジング1内のカメラ100が
図4の高さ位置よりも低い位置となる姿勢をとることができない。そのため、カメラ100は、
図4の高さ位置よりも海底Sに近い高さ位置から撮像することができず、もっと海底Sに近い位置からの撮像を望むユーザーの要望に応えることができないなど、ユーザーの利便性を損なうという問題が生じる。
【0049】
なお、この問題は、水中ハウジング1を海底Sに着地させて使用する場合に限らず、例えば、水中ハウジング1を水中(海中)に浮遊させて使用する場合でも生じ得る。すなわち、ユーザーの使用方法によっては、水中ハウジング1の姿勢を、ハウジング部10が浮力調整装置20の上方に位置するという姿勢から、浮力調整装置20に対するハウジング部10の相対的な高さ位置が変わる姿勢に変更したいという要望もある。よって、このような要望に応えられない場合、ユーザーの利便性を損なうおそれがある。
【0050】
図5は、本実施形態における姿勢調整装置30を、姿勢調整対象物である水中ハウジング1に装着した状態を模式的に示す正面図である。
本実施形態の姿勢調整装置30は、ハウジング部10のプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つ錘部31と、水中ハウジング1の被装着位置である被スナップフィット部27に着脱可能に装着される装着部32とを備えている。被スナップフィット部27は、水中ハウジング1の接続部22に設けられ、姿勢調整装置30の装着部32の下部に形成されたスナップフィット部32aを嵌め込むための孔形状を有する。スナップフィット部32aが被スナップフィット部27にスナップフィットにより固定されることで、姿勢調整装置30が水中ハウジング1に装着される。また、スナップフィットを解除することで、姿勢調整装置30を水中ハウジング1から取り外すことができる。
【0051】
なお、姿勢調整装置30を水中ハウジング1に取り付ける方法は、スナップフィットを利用したものに限られず、例えば、ネジ止めによって着脱自在に取り付けるものなど、着脱自在な他の方法であってもよい。着脱自在であれば、ユーザーの使用状況に応じ、姿勢調整装置30を使用しない時には水中ハウジング1から取り外して
図1に示す状態で使用でき、軽量化や小型化を図って利便性を向上させるということが可能である。
【0052】
図6は、本実施形態における姿勢調整装置30を取り付けて、水中ハウジング1の姿勢を変更した状態を模式的に示す正面図である。
姿勢調整装置30の錘部31は、水中ハウジング1のハウジング部10が持つプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つように、体積と重量が設計されている。姿勢調整装置30が水中ハウジング1に装着され、錘部31が
図5に示す所定箇所に配置されると、水中ハウジング1の姿勢は、浮力調整装置20に対するハウジング部10の相対的な高さ位置が錘部31のマイナス浮力によって装着前の姿勢時よりも低くなる。本実施形態では、
図6に示すように、所定箇所に配置された錘部31が海底に着地するようになる位置まで、水中ハウジング1の姿勢が変化する。
【0053】
その結果、水中ハウジング1は、姿勢調整装置30と浮力調整装置20の両方が海底に着地し、水中ハウジング1を寝かせた状態(長手方向が略水平方向を向く姿勢)で、水中ハウジング1の姿勢が保持される。これにより、水中ハウジング1内のカメラ100が
図4の高さ位置よりも低い位置となり、
図4に示す状態よりも海底Sに近い高さ位置からカメラ100で撮像することが可能となる。その結果、例えば、水中ハウジング1内のカメラ100で海底付近の魚やサンゴ等を、より近い位置から撮像することが可能となる。
【0054】
姿勢調整装置30の錘部31は、水中ハウジング1の第一部分であるハウジング部10の近傍に配置するのが好ましい。ただし、本実施形態のように、姿勢調整装置30が装着される水中ハウジング1の被装着位置である被スナップフィット部27と、錘部31を配置したい所定箇所との距離が離れている場合も多く想定される。このような場合でも、錘部31を所定箇所に配置できるように、本実施形態の装着部32は、姿勢調整装置30が水中ハウジング1に装着された状態において、水中ハウジング1の被スナップフィット部27から所定箇所までの延びる延出部32bを備えている。このような延出部32bを備えることで、錘部31を配置したい所定箇所と水中ハウジング1の被装着位置との相対位置の制限が緩和され、所定箇所や被装着位置の配置の自由度を高めることができる。
【0055】
なお、本実施形態において、延出部32bを更に長くして、ハウジング部10から長手方向へ離れた位置に錘部31が配置される構成とすれば、水中ハウジング1の傾き(長手方向と鉛直方向とのなす角度)が大きくなる。この場合、ハウジング部10内のカメラ100をより海底に近づけることはできる。ただし、延出部32bが長くなるほど、姿勢調整装置30が装着された状態の水中ハウジング1又は姿勢調整装置30それ自体を、水中で持ち運ぶのが困難となり、例えば、延出部32bを何かにぶつけて破損するなどの問題が生じやすくなる。
【0056】
一方で、延出部32bを逆に短くすると、錘部31の配置が第二部分である浮力調整装置20側に近づくことになり、ハウジング部10のプラス浮力に抗してハウジング部10を沈降させるには、錘部31の重量を増大させる必要が生じる。この場合、重量が大きくなるので持ち運びが困難となる。また、持ち運びの困難さを改善するために、錘部31の小型化をしようとすると、錘部31を小さくて重い材料で形成する必要があり、その材料が限定されてコスト高になる。
【0057】
そのため、本実施形態においては、姿勢調整装置30の錘部31は、水中ハウジング1のハウジング部10の近傍に配置するのが好ましい。ただし、本実施形態では、ハウジング部10内にカメラ100が収容されているため、錘部31をハウジング部10の近傍に配置すると、錘部31がハウジング部10内のカメラ100のレンズ近傍に配置されることになる。この場合、姿勢調整装置30が水中ハウジング1のカメラ100の撮影画像に写り込むおそれがある。
【0058】
そのため、姿勢調整装置30が水中ハウジング1のカメラ100の撮像領域外に配置されるようにすることが好ましい。カメラ100が通常のカメラであれば、カメラの側面側に配置することで姿勢調整装置30を撮像領域外に配置することができる。本実施形態のようにカメラ100が360度カメラである場合でも、一般には撮影されない領域が存在し、その領域の画像は周囲の画像を元に画像処理されて生成される。よって、360度カメラである場合でも、撮像領域外に姿勢調整装置30を配置することが可能である。この領域の場所や大きさはカメラの種類によって異なるので、カメラによって姿勢調整装置30の位置や大きさを設計すればよい。
【0059】
また、本実施形態における姿勢調整装置30は、延出部32bの先端に錘部31を備えた構成となっている。錘部31と延出部32bとは一体で形成されたものでもよいが、それぞれ別の部材で形成した方が好ましい。例えば、錘部31として、より小型で重量を重くする(密度の高いものとする)ために金属の切削部品を用いる場合、延出部32bも錘部31と一体形成品とすると、製造コストが増大する。このような場合には、延出部32bについては、錘部31よりも低い密度の材料で形成する、例えば樹脂成型品とすることで、高額な金属部品を少なくして、低コスト化を実現できる。
【0060】
また、錘部31と延出部32bとを別部材で構成する場合には、延出部32bに対して錘部31を着脱自在に構成してもよい。延出部32bに対する錘部31の装着方法は、ネジ固定式、マグネット固定式など、水中での取り外しが容易な方法であるのが好ましい。また、姿勢調整装置30を使用しない場合の水中での持ち運びも、錘部31だけを外してフック等に引っ掛けて持ち運んだ方が、錘部31と延出部32bを含む姿勢調整装置30の全体を持ち運ぶよりも楽になる。
【0061】
なお、延出部32bを含む装着部32が水中ハウジング1の部材となる場合、水中ハウジング1及び装着部32が姿勢調整対象物となり、錘部31が姿勢調整装置30としてもよい。
【0062】
また、例えば、
図7に示すように、浮力調整装置20の下部に別の被装着位置としてのネジ穴を設け、取り外したネジ固定式の錘部31のネジ部(装着部)を、浮力調整装置20のネジ穴に付け替える可能に構成してもよい。このように、水中ハウジング1に対する錘部31の配置を変更可能な構成とすることで、ユーザーの利便性を更に向上させることが可能である。錘部31が配置される浮力調整装置20の下部は、錘部31のマイナス浮力により浮力調整装置20に生じるマイナス浮力が増大する別の所定箇所である。そのため、浮力調整装置20だけで浮力を調整する場合よりも、例えば海底での姿勢安定性が向上する。
【0063】
〔変形例1〕
次に、本実施形態における姿勢調整装置30の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
本変形例1は、姿勢調整装置30の装着部32が着脱自在に装着される水中ハウジング1上の被装着位置を、第二部分である浮力調整装置20の接続部22ではなく、第一部分であるハウジング部10とした例である。
【0064】
図8(a)は、本変形例1の姿勢調整装置30が取り付けられた水中ハウジング1を模式的に示す正面図である。
図8(b)は、本変形例1の姿勢調整装置30により水中ハウジング1の姿勢が変更された状態を模式的に示す正面図である。
【0065】
本変形例1では、水中ハウジング1のハウジング部10に被装着位置としての被スナップフィット部27が設けられ、姿勢調整装置30の装着部32のスナップフィット部32aがこれに装着される構成となっている。なお、姿勢調整装置30を水中ハウジング1のハウジング部10に取り付ける方法は、スナップフィットを利用したものに限られない点は、上述した実施形態と同様である。
【0066】
本変形例1においても、姿勢調整装置30の錘部31が上述した実施形態と同じ所定箇所に配置されるので、
図8(b)に示すように、錘部31が海底に着地するようになる位置まで、水中ハウジング1の姿勢を変化させることができる。その結果、上述した実施形態と同様、例えば、水中ハウジング1内のカメラ100で海底付近の魚やサンゴ等を、より近い位置から撮像することが可能となる。
【0067】
なお、本変形例1では、水中ハウジング1のハウジング部10の被スナップフィット部27に、姿勢調整装置30の装着部32のスナップフィット部32aを着脱可能に装着する構成を例に挙げたが、これに限られない。例えば、
図9(a)に示すように、水中ハウジング1のハウジング部10に設けた被装着位置であるネジ穴28に、姿勢調整装置30の装着部である錘部31のネジ部31aを着脱可能にネジ固定する構成としてもよい。この場合、姿勢調整装置30の構成からスナップフィット部32aや延出部32bを排除して、より簡易な構成の姿勢調整装置30を実現することができる。
【0068】
この場合も、
図9(b)に示すように、錘部31が海底に着地するようになる位置まで、水中ハウジング1の姿勢を変化させることができる。その結果、上述した実施形態と同様、例えば、水中ハウジング1内のカメラ100で海底付近の魚やサンゴ等を、より近い位置から撮像することが可能となる。
【0069】
〔変形例2〕
次に、本実施形態における姿勢調整装置30の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
本変形例2は、姿勢調整装置30の錘部33が、体積を変化させることで浮力が変化する体積変化部を備えている例である。
【0070】
図10は、本変形例2の姿勢調整装置30が取り付けられた水中ハウジング1を模式的に示す正面図である。
本変形例2における姿勢調整装置30の錘部33は、体積を変化させることで浮力が変化する第一構造部33A及び第二構造部33Bからなる体積変化部を有する。この体積変化部の基本構成は、上述した実施形態における浮力調整装置20の体積変化部21と同様である。
【0071】
すなわち、第一構造部33Aは、その一端が姿勢調整装置30の延出部32bの先端に取り付けられている。第一構造部33Aの他端側の外周面にはネジ山が形成されており、第二構造部33Bの一端側の内周面にはこのネジ山に噛み合うネジ溝が形成されている。これにより、ユーザーが第二構造部33Bを回して、このネジ構造を締めたり緩めたりすることで、第二構造部33Bが第一構造部33Aに対して図中矢印Bに沿って進退することができる。その結果、第一構造部33A及び第二構造部33Bからなる錘部33の体積変化部全体の体積を変化させることができる。
【0072】
例えば、ユーザーが第二構造部33Bを回して、
図11(a)に示すように、ネジ構造を緩め、錘部33の体積変化部の体積を増大させた状態(第一体積)にして、水中ハウジング1を水底(海底)まで沈めたとする。この場合、錘部33は、プラス浮力を持つ状態になるので、水中ハウジング1の姿勢は、ハウジング部10のプラス浮力と浮力調整装置20のマイナス浮力との浮力バランスと相まって、長手方向が上下方向に向く姿勢で安定する。
【0073】
逆に、ユーザーが第二構造部33Bを逆に回して、
図11(c)に示すようにネジ構造を締め、錘部33の体積変化部の体積を減少させた状態(第二体積)にして、水中ハウジング1を水底(海底)まで沈めたとする。この場合、錘部33は、マイナス浮力を持つ状態になり、浮力調整装置20に対するハウジング部10の相対的な高さ位置が
図11(a)の状態時よりも、錘部33のマイナス浮力によって低くなる。その結果、水中ハウジング1の姿勢は、姿勢調整装置30と浮力調整装置20の両方が海底に着地し、水中ハウジング1を寝かせた状態(長手方向が略水平方向を向く姿勢)で保持される。
【0074】
また、本実施形態では、ユーザーが第二構造部33Bを回して、
図11(a)の状態と
図11(c)の状態との間になるようにして、錘部33の体積変化部の体積を
図11(b)の状態(第二体積)にして、水中ハウジング1を水底(海底)まで沈めたとする。この場合、錘部33は、ハウジング部10のプラス浮力と同等のマイナス浮力を持つ状態になる。その結果、浮力調整装置20に対するハウジング部10の相対的な高さ位置が、
図11(b)に示すように、
図11(a)の状態時よりも低く、かつ、
図11(c)の状態時よりも高い位置となるように、水中ハウジング1の姿勢を保持することができる。
【0075】
本変形例2のような体積変化部を備える錘部33を用いることで、錘部33の浮力調整を細かく変更することができ、
図11(a)~(c)に示すように、水中ハウジング1の姿勢を細かく調整することが可能となる。
【0076】
本変形例2のような体積変化部を備える錘部33を用いることで、姿勢調整装置30を水中ハウジング1に取り付けたままの状態で、水中ハウジング1の姿勢を調整することができる。したがって、姿勢調整装置30を水中ハウジング1に取り付ける方法としては、着脱自在な方法に限らず、姿勢調整装置30を水中ハウジング1に着脱不能な状態(接着、一体形成など)で取り付ける方法であってもよい。
【0077】
なお、錘部33の浮力を変更する構成として、本変形例2では体積変化部を用いているが、これに限らず、例えば、エアーの出し入れを利用した構成のものなど、他の構成で体積変化、浮力調整をするものであってもよい。
【0078】
また、姿勢調整装置30を水中ハウジング1に取り付けたままの状態で、水中ハウジング1の姿勢を調整する方法としては、体積変化部のように錘部33の浮力を変更する構成に限られない。例えば、錘部31を延出部32bに沿って移動可能に構成し、延出部32bの長手方向に錘部31の位置を変化させることのできる構成を採用しても、水中ハウジング1の姿勢を調整することが可能である。
【0079】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、プラス浮力が生じる第一部分(例えばハウジング部10)と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分(例えば浮力調整装置20)とを備える姿勢調整対象物(例えば水中ハウジング1)に取り付けられて、流体中(例えば水中)における該姿勢調整対象物の姿勢を調整する姿勢調整装置30であって、前記第一部分のプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つ錘部31,33を有し、前記姿勢調整対象物に取り付けられることで、流体中における該姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部のマイナス浮力によって当該取り付け前よりも低くなる所定箇所に、前記錘部が配置されることを特徴とするものである。
プラス浮力が生じる第一部分と中性浮力又はマイナス浮力が生じる第二部分とを備える姿勢調整対象物の流体中における姿勢は、第一部分と第二部分との間の浮力差により、第一部分が第二部分の上方に位置する姿勢となる。第一部分のプラス浮力を超えるマイナス浮力を持つ従来の錘部は、当該姿勢調整対象物の姿勢を維持したまま当該姿勢調整対象物の浮力の調整に用いられ、当該姿勢調整対象物に取り付けられる。そのため、当該姿勢調整対象物は、第二部分に対する第一部分の相対的な高さ位置が変わらず、錘部のマイナス浮力によって当該姿勢調整対象物の姿勢を変更することはできない。
本態様によれば、当該姿勢調整装置が姿勢調整対象物に取り付けられたとき、当該姿勢調整装置の錘部のマイナス浮力によって、第二部分に対する第一部分の相対的な高さ位置が取り付け前のときよりも低くなる所定箇所に、当該錘部が配置される。したがって、本態様に係る姿勢調整装置は、姿勢調整対象物に取り付けられることにより、姿勢調整対象物の姿勢を第二部分に対する第一部分の相対的な高さ位置が低くなる姿勢に調整することができる。よって、姿勢調整対象物の姿勢を調整できないことによる不具合(姿勢調整対象物の利便性を損なうなど)を抑制することができる。
【0080】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記姿勢調整対象物の被装着位置(例えば、被スナップフィット部27、ネジ穴28)に着脱可能に装着される装着部32,31aを有することを特徴とするものである。
これによれば、ユーザーの使用状況に応じ、姿勢調整装置を使用しない時には姿勢調整対象物から姿勢調整装置を取り外すことができ、ユーザーの利便性を向上させるということが可能である。
【0081】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記装着部は、前記被装着位置から前記所定箇所までの延びる延出部32bを備え、前記延出部は、前記錘部31よりも低い密度であることを特徴とするものである。
本態様によれば、錘部については密度の高い材料を用いて小型化を図りつつも、延出部については錘部よりも密度の低い安価な材料で形成することができる。よって、装着部全体を錘部と同様の高密度の材料で構成する場合よりも、製造コストを安価に抑えることが可能である。
【0082】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記錘部は金属製であり、前記延出部は樹脂製であることを特徴とするものである。
これによれば、錘部については密度の高い金属製とすることで小型化を図りつつ、延出部については安価で加工コストの安い樹脂製とすることで、製造コストを安価に抑えることができる。
【0083】
[第5態様]
第5態様は、第2乃至第4態様のいずれかにおいて、前記装着部は、前記姿勢調整対象物の前記被装着位置とは異なる別の被装着位置(例えば、浮力調整装置20の下部に設けたネジ穴)にも着脱可能に装着され、前記姿勢調整対象物の前記別の被装着位置に前記装着部が装着されたとき、前記錘部のマイナス浮力により前記第二部分に生じるマイナス浮力が増大する別の所定箇所に、前記錘部が配置されることを特徴とするものである。
これによれば、姿勢調整装置を使用しないとき(第二部分に対する第一部分の相対的な高さ位置が錘部のマイナス浮力によって低くしないとき)に、姿勢調整対象物から姿勢調整装置を取り外す。取り外した姿勢調整装置を姿勢調整対象物とは別個に保管するのはユーザーの利便性を損なうおそれがある。
本態様によれば、姿勢調整対象物の被装着位置から取り外した姿勢調整装置を姿勢調整対象物の別の被装着位置に装着しておくことができる。よって、取り外した姿勢調整装置を姿勢調整対象物とは別個に保管する場合よりもユーザーの利便性を向上させることが可能である。
しかも、本態様では、取り外した姿勢調整装置が姿勢調整対象物の別の被装着位置に装着されると、錘部のマイナス浮力により第二部分に生じるマイナス浮力が増大する。したがって、取り外した姿勢調整装置を姿勢調整対象物の別の被装着位置に装着しても、姿勢調整装置を姿勢調整対象物から単に取り外した状態における姿勢調整対象物の姿勢の安定性が増すことになる。
【0084】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記錘部33は、体積を変化させることで浮力が変化する体積変化部を備え、前記体積変化部は、流体中における前記姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に、前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部の浮力によって高くなる第一体積と、該相対的な高さ位置が該錘部の浮力によって低くなる第二体積との間で、体積変化可能に構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、錘部の配置を変更させることなく、錘部33の浮力を調整して、姿勢調整対象物の姿勢を調整することが可能である。したがって、姿勢調整装置を姿勢調整対象物に取り付けたままの状態で、姿勢調整対象物の姿勢を調整することができる。そのため、例えば、姿勢調整装置は姿勢調整対象物に着脱不能な状態で取り付けられるものであってもよい。
【0085】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記姿勢調整対象物の前記第一部分は、被収容物を内部に収容した状態のハウジング部10を含むことを特徴とするものである。
本態様によれば、被収容物を内部に収容したハウジング部を含む姿勢調整対象物の姿勢を調整することができる。よって、流体中において当該ハウジング部を備えた姿勢調整対象物のユーザーによる取り扱いが容易になり、当該姿勢調整対象物の姿勢調整に関するユーザーの利便性が向上する。
【0086】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記被収容物は撮像装置であることを特徴とするものである。
これによれば、流体中の画像を撮像装置によって撮像する際の取り扱いや利便性が向上する。
【0087】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記所定箇所は、前記撮像装置のレンズ近傍であることを特徴とするものである。
これによれば、取り扱い性が良好な姿勢調整装置を実現しやすい。
【0088】
[第10態様]
第10態様は、第8又は第9態様において、前記所定箇所は、前記撮像装置の撮像領域外であることを特徴とするものである。
これによれば、撮像画像への姿勢調整装置の写り込みを抑制することができる。
【0089】
[第11態様]
第11態様は、浮力調整対象物(例えばハウジング部10)に装着されて、流体中における該浮力調整対象物態様の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整装置20と、前記浮力調整対象物に前記浮力調整装置が装着されてなる姿勢調整対象物(例えば水中ハウジング1)の流体中における姿勢を調整する姿勢調整装置30とを含む姿勢調整システムであって、前記姿勢調整装置として、第1乃至第10態様のいずれかの姿勢調整装置を用いることを特徴とするものである。
これによれば、姿勢調整対象物の姿勢を第二部分に対する第一部分の相対的な高さ位置が低くなる姿勢に調整することができる姿勢調整システムを実現できる。
【0090】
[第12態様]
第12態様は、第11態様において、前記錘部は、流体中における前記姿勢調整対象物の浮遊時又は着地時に、前記第二部分に対する前記第一部分の相対的な高さ位置が前記錘部のマイナス浮力によって高くなる第一箇所と、該相対的な高さ位置が該錘部のマイナス浮力によって低くなる第二箇所との間で、配置変更可能に構成されていることを特徴とするものである。
これによれば、錘部の配置を変更することで、姿勢調整対象物の姿勢を調整することが可能である。
【0091】
[第13態様]
第13態様は、第11又は第12態様において、前記浮力調整対象物を構成し、かつ、被収容物を内部に収容するハウジング部10を含むことを特徴とするものである。
これによれば、ハウジング部10を含む姿勢調整システムにおいて、姿勢調整対象物の姿勢を第二部分に対する第一部分の相対的な高さ位置が低くなる姿勢に調整することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 :水中ハウジング
10 :ハウジング部
20 :浮力調整装置
21 :体積変化部
21A :第一構造部
21B :第二構造部
22 :接続部
22a :雲台
22b :接続ネジ
25 :重り
26 :羽部材
27 :被スナップフィット部
28 :ネジ穴
30 :姿勢調整装置
31 :錘部
31a :ネジ部
32 :装着部
32a :スナップフィット部
32b :延出部
33 :錘部
33A :第一構造部
33B :第二構造部
100 :カメラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】