(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023102975
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】表面処理フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230719BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230719BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20230719BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230719BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/00 A
B32B7/022
C08J7/04 Z CES
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003765
(22)【出願日】2022-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知大
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 彰二
【テーマコード(参考)】
2H149
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB16
2H149AB26
2H149BA02
2H149FA05Z
2H149FA66
2H149FB01
2H149FB05
2H149FD34
2H149FD46
2H149FD47
4F006AA12
4F006AA31
4F006AB43
4F006AB55
4F006AB64
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4F006EA03
4F100AK02A
4F100AK25B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
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4F100JN10C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】厚みの小さい基材層を有しながらも破断が抑制された表面処理フィルムを提供する。
【解決手段】表面処理フィルムは、厚みが20μm未満である基材層と、基材層表面に設けられた塗工層と、温度23℃、相対湿度55%における引裂き強度が0.5N以上である第1端部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが20μm未満である基材層と、
前記基材層表面に設けられた塗工層と、
温度23℃、相対湿度55%における引裂き強度が0.5N以上である第1端部と、を有する、表面処理フィルム。
【請求項2】
前記第1端部は、前記基材層表面に前記塗工層が設けられていない未塗工領域を含み、
前記未塗工領域における前記基材層の端から前記塗工層の端までの距離は、0.6mm以上である、請求項1に記載の表面処理フィルム。
【請求項3】
前記第1端部は、前記表面処理フィルムの平面視において対向する一対の辺に沿って設けられている、請求項1又は2に記載の表面処理フィルム。
【請求項4】
温度23℃、相対湿度55%において、前記表面処理フィルムの前記塗工層に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、前記基材層上に90個以上の前記クロスハッチが残る、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理フィルム。
【請求項5】
前記基材層は、環状オレフィン樹脂フィルムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理フィルム。
【請求項6】
前記塗工層は、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層である、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理フィルム。
【請求項7】
前記表面処理フィルムは、長尺体であり、
前記第1端部は、前記表面処理フィルムの幅方向両端部に設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理フィルムと、直線偏光層とを有する偏光板。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光板の製造方法であって、
前記表面処理フィルムと、前記表面処理フィルムの前記基材層側に剥離可能に積層されたプロテクトフィルムとを有する積層体を準備する工程と、
前記積層体から前記プロテクトフィルムを剥離して得られた前記表面処理フィルムを搬送する工程と、
前記搬送する工程で得られた前記表面処理フィルムと、前記直線偏光層とを積層する工程と、を含む、偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理フィルムに関し、さらに表面処理フィルムを備えた偏光板及び偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置に用いられる光学フィルムとして、樹脂フィルム等の基材層の表面に、樹脂組成物を塗工することによって位相差層又はハードコート層等の塗布膜が設けられた表面処理フィルムが知られている(例えば、特許文献1及び2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-54939号公報
【特許文献2】特開2011-59154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、表示装置に用いられる光学フィルムの厚みを小さくすることが求められている。これに伴い、表面処理フィルムに含まれる基材層の厚みも小さくすることが求められている。厚みの小さい基材層に塗布膜を形成した表面処理フィルムは、搬送時に端部が破断することがあった。
【0005】
本発明は、厚みの小さい基材層を有しながらも破断が抑制された表面処理フィルム、それを備えた偏光板、及び偏光板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の表面処理フィルム、偏光板、及び偏光板の製造方法を提供する。
〔1〕 厚みが20μm未満である基材層と、
前記基材層表面に設けられた塗工層と、
温度23℃、相対湿度55%における引裂き強度が0.5N以上である第1端部と、を有する、表面処理フィルム。
〔2〕 前記第1端部は、前記基材層表面に前記塗工層が設けられていない未塗工領域を含み、
前記未塗工領域における前記基材層の端から前記塗工層の端までの距離は、0.6mm以上である、〔1〕に記載の表面処理フィルム。
〔3〕 前記第1端部は、前記表面処理フィルムの平面視において対向する一対の辺に沿って設けられている、〔1〕又は〔2〕に記載の表面処理フィルム。
〔4〕 温度23℃、相対湿度55%において、前記表面処理フィルムの前記塗工層に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、前記基材層上に90個以上の前記クロスハッチが残る、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の表面処理フィルム。
〔5〕 前記基材層は、環状オレフィン樹脂フィルムである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の表面処理フィルム。
〔6〕 前記塗工層は、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の表面処理フィルム。
〔7〕 前記表面処理フィルムは、長尺体であり、
前記第1端部は、前記表面処理フィルムの幅方向両端部に設けられている、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の表面処理フィルム。
〔8〕 〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の表面処理フィルムと、直線偏光層とを有する偏光板。
〔9〕 〔8〕に記載の偏光板の製造方法であって、
前記表面処理フィルムと、前記表面処理フィルムの前記基材層側に剥離可能に積層されたプロテクトフィルムとを有する積層体を準備する工程と、
前記積層体から前記プロテクトフィルムを剥離して得られた前記表面処理フィルムを搬送する工程と、
前記搬送する工程で得られた前記表面処理フィルムと、前記直線偏光層とを積層する工程と、を含む、偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、厚みの小さい基材層を有しながらも破断が抑制された表面処理フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表面処理フィルムを模式的に示す平面図である。
【
図3】引裂き強度の測定に用いるサンプル片を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0010】
(表面処理フィルム)
図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理フィルムを模式的に示す平面図である。
図2は、
図1のX-X’断面図である。
【0011】
表面処理フィルム1は、
図1及び
図2に示すように、厚みが20μm未満である基材層11と、基材層11表面に設けられた塗工層12と、温度23℃、相対湿度55%における引裂き強度が0.5N以上である第1端部10と、を有する。
【0012】
表面処理フィルム1では、基材層11と塗工層12とは直接接している。表面処理フィルム1は、基材層11の表面に塗工層12が形成されている塗工領域22と、基材層11の表面に塗工層12が形成されていない未塗工領域21とを有するものであってもよく、塗工領域22を有し、未塗工領域21を有さないものであってもよい。
【0013】
第1端部10は、表面処理フィルム1を引裂くときの引裂き開始位置である端を含み、表面処理フィルム1の平面視において当該端が位置する辺15の少なくとも一部に沿って設けられている領域である。第1端部10は、
図1に示すように辺15の全体に沿って設けられている領域であってもよい。
【0014】
第1端部10は、表面処理フィルム1の平面視における辺のうちの少なくとも一つの辺の一部又は全体に沿って設けられていればよく、2以上の辺の一部又は全体に沿って設けられていてもよい。第1端部10は、表面処理フィルム1の平面視において対向する一対の辺15,15に沿って設けられていることが好ましい。
図1及び
図2に示すように、表面処理フィルム1が長尺体である場合、第1端部10は、表面処理フィルム1の幅方向Wの両端部に設けられていることが好ましい。
【0015】
第1端部10の温度23℃、相対湿度55%における引裂き強度は、0.5N以上であり、0.8N以上であることが好ましく、1.0N以上であってもよく、1.2N以上であってもよく、1.5N以上であってもよく、1.8N以上であってもよく、通常、5.0N以下であり、4.5N以下であってもよく、4.0N以下であってもよい。
【0016】
第1端部10の引裂き強度は、表面処理フィルム1の端を引裂き開始位置として、当該端から当該端が位置する辺15に交差する方向に表面処理フィルム1を引裂いたときの引裂き強度であり、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
図1に示すように、辺15が直線状である場合には、引裂き方向は辺15に直交する方向である。引裂き方向は、引裂いたときに裂け目が進行する方向と言い換えられてもよい。
【0017】
表面処理フィルム1において上記の引裂き強度を有する第1端部10を形成する方法は特に限定されない。例えば、基材層11表面に塗工層12が設けられていない未塗工領域21を含むように第1端部10を形成する、第1端部10が形成される基材層11の端部全体にわたって当該端部の厚みを、当該端部以外の基材層11の厚みよりも大きくする、基材層11の劣化を引き起こしにくい溶剤を含む塗工材料を用いて第1端部10に塗工層12を形成する、第1端部10に靱性の大きい塗工層12を形成する等の方法が挙げられる。
【0018】
第1端部10が未塗工領域21を含む場合、第1端部10は塗工領域22を含んでいてもよく、塗工領域22を含んでいなくてもよい。第1端部10が未塗工領域21を含む場合、第1端部10における基材層11の端から塗工層12の端までの距離Lは、0.6mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であってもよく、1.0mm以上であってもよく、1.5mm以上であってもよい。距離Lの上限値は特に限定されないが、例えば50mm以下であってもよく、40mm以下であってもよい。距離Lは、表面処理フィルム1から採取したサンプルの第1端部10の延在方向の中央の位置と、この中央の位置から延在方向に沿って両方向(左右方向)に1cmの位置との合計3点の位置における、基材層11の端から塗工層12の端までの間の最短距離の平均値をいい、後述する実施例に記載の方法によって決定することができる。表面処理フィルム1が長尺体である場合のサンプルは、長尺体の長さ方向の両端から採取し、採取した2つのサンプルのそれぞれについて上記した手順で決定した最短距離の平均値を、さらに平均して得られた値を距離Lとする。表面処理フィルム1が枚葉体である場合は、任意の位置において採取する。
【0019】
距離Lが上記の範囲内であることにより、第1端部10の引裂き強度を上記した範囲に調整しやすくなる。表面処理フィルム1が長尺体である場合等には、表面処理フィルム1をロール状に巻き取ったロール体の状態で保管及び輸送等がなされる。ロール体では、表面処理フィルム1の塗工領域22の厚みと未塗工領域21の厚みとの差、及び、表面処理フィルム1の保管時に発生する収縮及び膨張等の挙動の差等に起因して、ロール体の端面が波打つことがある。端面が波打ったロール体から繰り出された表面処理フィルム1にも変形が生じることがある。表面処理フィルム1において、距離Lが上記の範囲内であることにより、良好な巻き姿のロール体を形成することができ、当該ロール体から繰り出された表面処理フィルム1に変形が生じることを抑制することもできる。
【0020】
表面処理フィルム1が第1端部10を有することにより、例えば後述する偏光板の製造にあたり表面処理フィルム1を搬送する際に、第1端部10が辺15に交差する方向に裂けるといった第1端部10の破断を抑制することができる。これに対し、上記した引裂き強度が0.5N未満である端部を有する表面処理フィルムでは、搬送時等において当該端部が破断しやすい。これは、基材層11の厚みが20μm未満である場合のように基材層11の厚みの小さい表面処理フィルム1では、衝撃を基材層11によって緩和しにくく、基材層11上の硬い塗工層12が損傷を受けやすいことにより、塗工領域22が脆くなっているためと推測される。脆くなった領域は、外力を受けたり変形したりすると破断しやすいと考えられる。表面処理フィルム1は搬送時等に、端部に外力を受けたり変形が生じたりしやすいため、上記した引裂き強度が0.5N以上である第1端部10を有する表面処理フィルム1では、第1端部10の破断を抑制することができると推測される。
【0021】
表面処理フィルム1は、塗工層12に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、基材層11上に90個以上のクロスハッチが残るものであることが好ましく、95個以上残るものであることがより好ましく、100個残るものであることがさらに好ましい。このような表面処理フィルム1は、基材層11と塗工層12との密着性に優れていると考えられる。密着性に優れた表面処理フィルム1では、外力を受けたり変形したりした端部に上記した破断が生じやすいと考えられる。そのため、基材層11と塗工層12との密着性に優れた表面処理フィルム1に対して上記した第1端部10を設けることにより、表面処理フィルム1の第1端部10の破断を効果的に抑制することができる。クロスハッチ試験は、温度23℃、相対湿度55%において、表面処理フィルム1の塗工層12面に1mm角のクロスハッチを100個刻み、このクロスハッチに貼付した粘着テープを引き剥がすことによって行う試験であり、後述する実施例に記載の方法によって行うことができる。
【0022】
表面処理フィルム1は、枚葉体であってもよく、連続的に搬送され得る長尺体であってもよい。本明細書において、長尺体とは、例えば30m以上15000m以下の長さを有する表面処理フィルムをいう。表面処理フィルム1が長尺体である場合、第1端部10は、
図1に示すように幅方向Wの両端部に設けられていることが好ましい。
【0023】
表面処理フィルム1は、ハードコート特性、防眩特性、反射防止特性、帯電防止特性、及び防汚特性等のうちの少なくとも1つ以上の機能を有することができる。これらの特性は、塗工層12によって付与することができる。表面処理フィルム1は、後述する直線偏光層等の被着体の表面に貼合することにより、被着体に上記特性等を付与することができる。表面処理フィルム1は、基材層11側が被着体に貼合されることが好ましい。
【0024】
(基材層)
基材層11は、被着体表面を被覆し、塗工層12を支持するために用いられる。基材層11は、樹脂フィルムであることが好ましく、透明樹脂フィルムであることが好ましい。透明樹脂フィルムは、例えば光学フィルムの分野において公知の樹脂を用いて製膜されたフィルム等を用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィンフィルム;ノルボルネン系ポリマー等で構成された環状オレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルで構成されたポリエステルフィルム;ポリ(メタ)アクリル酸エステル等で構成された(メタ)アクリル樹脂フィルム;トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂フィルム;ポリカーボネートフィルム;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミドフィルム;ポリイミドフィルム等が挙げられる。透明樹脂フィルムは、環状オレフィン樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、及び(メタ)アクリル樹脂フィルムのうちの1種以上であることが好ましく、環状オレフィン樹脂フィルムであることがより好ましい。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのうちの少なくとも一方を表す。「(メタ)アクリレート」等についても同様である。
【0025】
基材層11の厚みは、20μm未満であり、18μm以下であってもよく、15μm以下であってもよく、13μm以下であってもよく、通常1μm以上であり、5μm以上であってもよい。
【0026】
(塗工層)
塗工層12は、表面処理フィルム1に、ハードコート特性、防眩特性、反射防止特性、帯電防止特性、及び防汚特性等のうちの少なくとも1種以上の特定の機能を付与するための層であることができる。塗工層12としては、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、及び防汚層等が挙げられる。
【0027】
塗工層12は、塗工層12を形成するための塗工材料を基材層11に塗工することによって形成することができる。塗工材料の塗工方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができるが、ダイコーティング又はグラビアコーティングであることが好ましい。塗工精度の観点からは、グラビアコーティングがより好ましい。
【0028】
表面処理フィルム1の未塗工領域21及び塗工領域22は、例えば、塗工領域22の幅に合わせて凹凸加工を行ったグラビアロールを用いて塗工を行う方法;未塗工領域21を形成する部分のグラビアロール表面に、フィルムを貼る又はツメを設ける等により、グラビアロールと基材層11とが非接触となるようにして塗工を行う方法等によって形成することができる。塗工領域22の幅は、上記のようにグラビアロールの表面の状態を調整することによって調整することができる。未塗工領域21の幅は、塗工領域22を形成するために用いる塗工材料の粘度によって調整することができる。表面処理フィルム1を製造する際には、未塗工領域21の幅のばらつきが0.5mm以内となるように、塗工材料の粘度を調整することが好ましい。
【0029】
塗工材料の粘度は、温度25℃において、例えば1mPa・s以上150mPa・s以下であり、好ましくは3mPa・s以上100mPa・s以下であり、より好ましくは5mPa・s以上50mPa・s以下である。粘度が小さくなりすぎると塗布ムラが顕著となるおそれがあり、粘度が大きくなりすぎると膜厚の調整が困難となるおそれがある。粘度が1mPa・s以上150mPa・s以下である場合、塗布膜厚の調節が行い易い傾向にある。粘度は、Brookfield型粘度計(B型粘度計、ブルックフィールド社製)により測定される値であることができる。
【0030】
塗工材料としては、硬化性化合物を含む組成物;硬化性化合物以外の樹脂を含む組成物等が挙げられる。塗工材料は、塗工層12が有する機能及び/又は塗工層12を好適に形成するために、上記した硬化性化合物及び樹脂以外に、有機微粒子又は無機微粒子等のフィラー、帯電防止剤、防汚剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、粘度調整剤、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0031】
硬化性化合物を含む組成物に含まれる硬化性化合物としては、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂;熱硬化型樹脂;(メタ)アクリロイル基及びビニル基等の重合性基を有する単量体;重合性基を有するオリゴマー等が挙げられる。硬化性化合物以外の樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0032】
塗工層12は、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層であることが好ましく、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層であることがより好ましい。紫外線硬化型樹脂を含む組成物は、(メタ)アクリレート単量体及び/又は(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル系樹脂組成物であることが好ましい。(メタ)アクリレート単量体及び/又は(メタ)アクリル樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン化(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、及び必要に応じて水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーを含む硬化性混合物等が挙げられる。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンのジ-又はトリ-(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ-又はテトラ-(メタ)アクリレート、分子内に水酸基を少なくとも1個有する(メタ)アクリレートとジイソシアネートとの反応生成物である多官能ウレタン化(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソシアネートを用いて製造される。具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとポリオールから、分子内に水酸基を少なくとも1個有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを調製し、これをジイソシアネートと反応させることにより、多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを製造することができる。このようにして製造される多官能ウレタン化(メタ)アクリレートは、上記した紫外線硬化型樹脂としての機能を有する。その製造にあたっては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、ポリオール及びジイソシアネートも同様に、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを形成する際に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸の鎖状又は環状アルキルエステルを用いることができ、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを形成する際に用いられるポリオールは、分子内に水酸基を少なくとも2個有する化合物であり、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸のネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等が挙げられる。
【0037】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを形成する際に用いられるジイソシアネートは、分子内に2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物であり、芳香族、脂肪族又は脂環式の各種ジイソシアネートを用いることができ、その具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのうち芳香環を有するジイソシアネートの核水添物等が挙げられる。
【0038】
水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーは、1つの構成単位中に水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものであり、その具体例としては、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマーや、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとともに、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマー等が挙げられる。
【0039】
硬化性化合物を含む組成物は、硬化性化合物に加えて、重合開始剤を含むことができる。重合開始剤としては、光重合開始剤及びラジカル重合開始剤等が挙げられ、公知の重合開始剤を用いることができる。
【0040】
塗工層12がハードコート層である場合、塗工層12は基材層11の表面硬度を向上する機能を有し、表面の耐擦傷性を向上することができる。ハードコート層は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(表面処理フィルムをガラス板の上に置いて測定する)で8B又はそれより硬い値を示すことが好ましく、5B又はそれよりも硬くてもよい。塗工層12は、ハードコート層であることが好ましい。
【0041】
塗工層12が防眩層である場合、塗工層12は視認性の向上、外光の映り込みの抑制、モアレ(干渉縞)の低減等の機能を有することができる。防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有することができる。微細な凹凸形状は、防眩層にフィラーを添加する、表面に微細なエンボスを付与する等によって形成することができる。
【0042】
塗工層12が反射防止層である場合、塗工層12は外光の反射を抑制する機能を有することができる。反射防止層は、基材層11の屈折率よりも小さい屈折率を有する層であることができ、例えば微粒子を含んでいてもよい。
【0043】
塗工層12が帯電防止層である場合、塗工層12は静電気の発生等を抑制する機能を有することができる。帯電防止層は、帯電防止剤(導電性物質)を含むことができる。
【0044】
塗工層12が防汚層である場合、塗工層12は、表面処理フィルム1に撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性等の機能を付与することができる。防汚層は、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物等のフッ素含有有機化合物等の防汚剤を含むことができる。
【0045】
塗工層12の厚みは、例えば、1nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、50nm以上であってもよく、500nm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、また、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0046】
(偏光板)
本実施形態の偏光板は、表面処理フィルム1と直線偏光層とを有する。偏光板は、直線偏光層の片面又は両面に表面処理フィルム1を有することができる。直線偏光層の両面に表面処理フィルム1を有する場合、2つの表面処理フィルム1は同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。表面処理フィルム1は、基材層11側が直線偏光層に対向していることが好ましい。
【0047】
偏光板は、表面処理フィルム1と直線偏光層とを貼合するための貼合層を有していてもよい。貼合層は、粘着剤層又は接着剤層である。偏光板が貼合層を有する場合、表面処理フィルム1の基材層11側に設けられることが好ましい。
【0048】
偏光板が直線偏光層の片面に表面処理フィルム1を有する場合、直線偏光層の他方の面には、表面処理フィルム1以外の他の層を有していてもよい。他の層としては、保護層、位相差層、粘着剤層等が挙げられる。直線偏光層と他の層とは、直接接するように積層されていてもよく、他の層が保護層又は位相差層である場合は、貼合層を介して積層されていてもよい。
【0049】
(偏光板の製造方法)
本実施形態の偏光板の製造方法は、
表面処理フィルム1と、表面処理フィルム1の基材層11側に剥離可能に積層されたプロテクトフィルムとを有する積層体を準備する工程と、
積層体からプロテクトフィルムを剥離して得られた表面処理フィルム1を搬送する工程と、
搬送する工程で得られた表面処理フィルム1と、直線偏光層とを積層する工程と、を含むことができる。
【0050】
準備する工程では、例えば、基材層11の片面にプロテクトフィルムを貼合した後、基材層11の表面(プロテクトフィルムを貼合した側とは反対側の面)に、塗工層12を形成して積層体を得ることができる。塗工層12は、基材層11のプロテクトフィルム側とは反対側に、塗工材料を塗工することによって形成することができる。塗工材料を塗工する方法としては、公知の方法を挙げることができ、例えば、グラビア塗工、バー塗工、スプレー塗工、スピン塗工、ディップ塗工、ダイ塗工、及びインクジェット塗工等のうちの1以上の方法によって行うことができる。基材層11に塗工材料を塗工した後、塗工材料の種類に応じて、乾燥、及び/又は、塗工材料に含まれる硬化性化合物の硬化等の処理を行ってもよい。
【0051】
搬送する工程では、例えば積層体を搬送しながら、積層体からプロテクトフィルムを剥離して、表面処理フィルム1とプロテクトフィルムとを分離し、これらをそれぞれ搬送することができる。積層体、表面処理フィルム1、及びプロテクトフィルムの搬送は、公知の搬送方法を採用でき、例えば搬送ロール及び/又は搬送ベルト等を用いて搬送することができる。搬送ロールで搬送する際の張力は、搬送するフィルムが蛇行せずに搬送されるように調整されることができる。搬送ロールで搬送する際の張力は、搬送するフィルムが破断しないように調整されることができる。
【0052】
積層する工程では、例えば表面処理フィルム1のプロテクトフィルムを剥離して露出した側(基材層11側)と、直線偏光層とを、貼合層等を介して積層することができる。
【0053】
表面処理フィルム1は、第1端部10の引裂き強度が上記した範囲にある。そのため、搬送する工程で搬送される表面処理フィルム1において、外力を受けたり変形したりしやすい第1端部10が破断することを抑制することができる。これにより、歩留まりを向上して偏光板を製造することができる。
【0054】
(直線偏光層)
直線偏光層は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する。直線偏光層は、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ということがある。)であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布して形成した液晶性の直線偏光層を含むフィルムであってもよい。吸収異方性及び液晶性を有する化合物は、吸収異方性を有する色素と液晶性を有する化合物との混合物であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する色素であってもよい。
【0055】
PVA系フィルムである直線偏光層は、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等のPVA系フィルムに、ヨウ素による染色処理、及び延伸処理が施されたもの等が挙げられる。必要に応じて、染色処理によりヨウ素が吸着配向したPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行ってもよい。各工程には公知の方法を採用できる。
【0056】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」ということがある。)は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0057】
PVA系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用可能である。PVA系樹脂の平均重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000程度である。PVA系樹脂のケン化度及び平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が1000未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超ではフィルム加工性に劣ることがある。
【0058】
PVA系フィルムである直線偏光層の製造方法は、基材フィルムを用意し、基材フィルム上にPVA系樹脂等の樹脂の溶液を塗布し、溶媒を除去する乾燥等を行って基材フィルム上に樹脂層を形成する工程を含むものであってもよい。なお、基材フィルムの樹脂層が形成される面には、予めプライマー層を形成することができる。基材フィルムとしては、後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムを使用できる。プライマー層の材料としては、直線偏光層に用いられる親水性樹脂を架橋した樹脂等を挙げることができる。
【0059】
次いで、必要に応じて樹脂層の水分等の溶媒量を調整し、その後、基材フィルム及び樹脂層を一軸延伸し、続いて、樹脂層をヨウ素で染色してヨウ素を樹脂層に吸着配向させる。次に、必要に応じてヨウ素が吸着配向した樹脂層をホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行う。これにより、ヨウ素が吸着配向された樹脂層、すなわち、直線偏光層となるPVA系フィルムが製造される。各工程には公知の方法を採用できる。
【0060】
基材フィルムを用いる製造方法で作製した直線偏光層は、保護層を積層した後に基材フィルムを剥離することで得ることができる。
【0061】
PVA系フィルムである直線偏光層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、また、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。
【0062】
液晶性の直線偏光層を含むフィルムは、液晶性及び吸収異方性を有する色素を含む組成物、又は、吸収異方性を有する色素と重合性液晶とを含む組成物を基材フィルムに塗布して得られる直線偏光層が挙げられる。液晶性の直線偏光層は、重合性液晶化合物の硬化物であることができ、配向層を含んでいてもよい。液晶性の直線偏光層を含むフィルムは、液晶性の直線偏光層であってもよく、液晶性の直線偏光層と基材フィルムとの積層構造を有していてもよい。基材フィルムとしては、例えば後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムが挙げられる。液晶性の直線偏光層を含むフィルムとしては、例えば特開2013-33249号公報等に記載の偏光層が挙げられる。
【0063】
上記のようにして形成した基材フィルムと直線偏光層との合計厚みは小さい方が好ましいが、小さすぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0064】
(他の層)
他の層としての保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムである保護フィルム;耐溶剤性、透明性、機械的強度、熱安定性、遮蔽性、及び等方性等に優れる組成物から形成されたオーバーコート層等が挙げられる。保護フィルムは、貼合層を介して直線偏光層に積層されることが好ましく、オーバーコート層は、直線偏光層に直接接するように積層されることが好ましい。
【0065】
保護フィルムを形成するための熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。保護フィルムの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0066】
オーバーコート層は、例えば、直線偏光層上にオーバーコート層を形成するための材料(組成物)を塗布することによって形成することができる。オーバーコート層を構成する材料としては、例えば、光硬化性樹脂や水溶性ポリマー等が挙げられ、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂等を用いることができる。オーバーコート層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であることができる。
【0067】
他の層としての位相差層は、延伸フィルムであってもよく、重合性液晶化合物の硬化物層を含むものであってもよい。位相差層を構成する延伸フィルム及び硬化物層としては、公知のものを用いることができる。
【0068】
他の層としての粘着剤層は、粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層である。粘着剤組成物又は粘着剤組成物の反応生成物は、それ自体を表示装置の表示素子等の被着体に張り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。また、後述する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、活性エネルギー線を照射することにより、架橋度や接着力を調整することができる。
【0069】
粘着剤組成物としては、公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ポリビニルエーテル等のベースポリマーを含有する粘着剤組成物を用いることができる。また、粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、又は、熱硬化型粘着剤組成物等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(リワーク性)、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤組成物の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0070】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、上記した粘着剤組成物に、多官能性アクリレート等の紫外線硬化性化合物を配合し、これを塗布して形成した層に紫外線を照射して硬化させることにより、より硬い粘着剤層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する。
【0071】
粘着剤組成物及び活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0072】
(貼合層)
貼合層は、粘着剤層又は接着剤層である。粘着剤層は、上記したものが挙げられる。接着剤層は、接着剤組成物中の硬化性成分を硬化させることによって形成することができる。接着剤層を形成するための接着剤組成物としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0073】
水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解、又は分散させた接着剤が挙げられる。水系接着剤を用いた場合の乾燥方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて乾燥する方法が採用できる。
【0074】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含む無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることにより、層間の密着性を向上させることができる。
【0075】
(プロテクトフィルム)
プロテクトフィルムは、表面処理フィルム1の基材層11側に剥離可能に積層され、表面処理フィルムの表面を被覆保護するために用いられる。プロテクトフィルムは、樹脂フィルムと粘着剤層とを積層した多層構造を有していてもよく、単層構造の自己粘着性フィルムであってもよい。
【0076】
樹脂フィルムは、例えば、光学フィルムの分野において公知の樹脂を用いて製膜されたフィルム等を用いることができる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマー等の環状オレフィン樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
【0077】
プロテクトフィルムが自己粘着性フィルムである場合、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等を製膜したフィルムが挙げられる。
【実施例0078】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0079】
〔実施例1~10、比較例1及び2、参考例1~3〕
基材層として、表1に示す厚みを有する環状オレフィン樹脂フィルム(以下、「COPフィルム」ということがある。)を準備した。COPフィルムの片面に、対向する一対の辺(幅方向の両端)に沿って未塗工領域が形成されるように、紫外線硬化型樹脂を含むアクリル系樹脂組成物をグラビア塗工して塗膜を形成した。後述する方法で測定したアクリル系樹脂組成物の粘度は、20mPa・sであった。塗膜を乾燥した後に紫外線照射を行い、基材層表面にハードコート層としての塗工層を形成して表面処理フィルムを得た。
【0080】
表面処理フィルムから採取したサンプルのCOPフィルム側をガラス板に貼合し、COPフィルムの端部(塗工層が形成されていない端部)の延在方向の中央の位置と、この中央の位置から左右方向(延在方向に沿う両方向)に1cmの位置との合計3点の位置において、COPフィルムの端部から塗工層までの間の最短距離を決定し、これを平均して、表面処理フィルムのCOPフィルムの端から塗工層の端までの間の距離Lを決定した。最短距離は、デュアルモード3D共焦点・干渉システムPLμ2300(有限会社センソファージャパン製)を用いて、サンプルのCOPフィルムの端部から塗工層に向けて移動しながら厚みプロットを取得することにより決定した(レンズ:20倍(EPI 20x))。決定した距離L1の値を表1に示す。
【0081】
表面処理フィルムの、未塗工領域が形成された端部(参考例1及び3については、基材層)について、後述する手順で引裂き強度を測定した。参考例1及び3以外で得た表面処理フィルムについて、後述する手順でクロスハッチ試験を行った。結果を表1に示す。
【0082】
また、基材層として長尺体の基材層を用いたこと以外は、上記した手順で塗工層を形成して長尺体の表面処理フィルムを得た。参考例1及び3では、塗工層を形成していない長尺体の基材層を用いた。長尺体の表面処理フィルム(参考例1及び3については、長尺体の基材層)を、蛇行等の搬送の不具合が生じないように搬送ロールによって搬送したときの破断の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0083】
[引裂き強度の測定]
図3は、引裂き強度の測定に用いるサンプル片を模式的に示す平面図である。表面処理フィルムの未塗工領域が形成された端部において、表面処理フィルムの端、未塗工領域21、及び塗工領域22を含み、上記表面処理フィルムの端が位置する辺の延在する方向に50mm、当該辺に直交する方向に70mmの大きさとなるように、矩形状のサンプル片31を切り出した(
図3)。サンプル片31の辺のうちの表面処理フィルムの上記辺を構成していた辺33、未塗工領域21、及び塗工領域22を跨ぐように、サンプル片31の一方の面に2つのリードテープ(パイオランクロス養生用テープ緑、50mm×25mm、Y-09-GR、ダイヤテックス製)35,35を取り付けた(以下、リードテープを取付けた辺33を「取付け辺33」ということがある。)。各リードテープ35は、長さ50mm×幅20mmとし、サンプル片31の取付け辺33の中心において2つのリードテープ35,35の間に1mmの隙間が形成され、リードテープ35の幅方向が取付け辺33に平行となり、一方の端から10mmの長さの範囲がサンプル片31上に配置されるように、サンプル片31に取付けた。サンプル片31の他方の面にも、サンプル片31の一方の面に取付けたリードテープ35,35に重なるように、2つのリードテープを取付けた。これにより、サンプル片31の取付け辺33には、
図3に示すように、サンプル片31の平面視において2つのリードテープ(サンプル片31の両面に取付けられたリードテープ)が重なったリードテープ群が2組、1mmの間隔(隙間)をあけて取付けられた状態となった。
【0084】
サンプル片31に取付けたリードテープ35の長さ方向の端部のうちの、サンプル片31に取付けた側とは反対側の端部をオートグラフ(「AGS-50NX」、島津製作所製)の上下チャックにそれぞれ固定した。その後、2組のリードテープ群のうちの一方の組を、サンプル片31の平面を基準として一方側に、2組のリードテープ群のうちの他方の組を、サンプル片31の平面を基準として他方側になるように、サンプル片31の平面を基準にして互いに反対の方向(サンプル片31の平面を基準にして上下方向)に速度300mm/minで引っ張る180°引っ張り試験を行い、サンプル片31の取付け辺33を含む端部が裂けたときに現れるピークの値(力の大きさ)を測定した。測定は、温度23℃、相対湿度55%の条件下で行った。この測定を5回行い、測定された力の大きさの平均値を引裂き強度とした。
【0085】
[引裂き試験(官能評価)]
上記引裂き強度の測定で説明した手順で、矩形状のサンプル片を準備した。温度23℃、相対湿度55%の条件下で、サンプル片の辺のうちの表面処理フィルムの端(未塗工領域が形成された端)が位置する辺から、当該辺に直交する方向にサンプル片を手で引裂いたときの裂けやすさを評価した。裂けやすさの評価は、厚み13μmの基材層(参考例1)を上記の手順で引裂いたときの裂けやすさを裂けにくい(次の「B」)と評価し、これを基準にして次のように評価した。
A:Bよりも裂けにくい。
B:裂けにくい。
C:Bよりも裂けやすい。
【0086】
[粘度の測定]
アクリル系樹脂組成物の粘度は、温度25℃において、Brookfield型粘度計(B型粘度計、ブルックフィールド社製)により測定した。
【0087】
[クロスハッチ試験]
表面処理フィルムの塗工層面に、塗工層が貫通するように、1mm角のクロスハッチを100個(10×10個)刻んだ。このクロスハッチに、幅24mmの粘着テープ(セロハン粘着テープCT405AP-24、ニチバン製)を貼付した後、粘着テープをクロスハッチ面に対して45°の方向に引き剥がした。粘着テープの引き剥がし後に、基材層上に残っているクロスハッチの数を数えた。クロスハッチ試験は、温度23℃、相対湿度55%の条件下で行った。
【0088】
1 表面処理フィルム、10 第1端部、11 基材層、12 塗工層、15 辺、21 未塗工領域、22 塗工領域、31 サンプル片、33 辺(取付け辺)、35 リードテープ。
温度23℃、相対湿度55%において、前記表面処理フィルムの前記塗工層に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、前記基材層上に90個以上の前記クロスハッチが残る、請求項1又は2に記載の表面処理フィルム。
温度23℃、相対湿度55%において、前記表面処理フィルムの前記塗工層に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、前記基材層上に90個以上の前記クロスハッチが残る、請求項1又は2に記載の表面処理フィルム。