(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103022
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ガスセンサーデバイス及びガス濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
G01N27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003840
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】崔 弼圭
(72)【発明者】
【氏名】増田 佳丈
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA10
2G046AA13
2G046AA24
2G046BA08
2G046BA09
2G046BB02
2G046BB04
2G046BC03
2G046BC05
2G046BH03
2G046EB01
2G046FB02
2G046FE02
2G046FE03
2G046FE10
2G046FE11
2G046FE15
2G046FE22
2G046FE25
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE35
2G046FE39
2G046FE44
(57)【要約】
【課題】50℃以下で高感度・高選択性を有するガスセンサーデバイス及び被検知ガスの濃度測定方法を提供する。
【解決手段】本発明のガスセンサーデバイスは、電気的絶縁性を有する基板と、該基板の表面に形成された一対の電極と、該電極に接続された、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層15とを有するガスセンサー素子10、及び、ガスセンサー素子10のガス感応層15に光を放射する光源20を備える。酸化スズ板状結晶の最大長さと厚さとの比(アスペクト比)の平均値は、好ましくは2.5~100である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的絶縁性を有する基板と、該基板の表面に形成された一対の電極と、該電極に接続された、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層とを有するガスセンサー素子、
及び、
前記ガスセンサー素子の前記ガス感応層に光を放射する光源
を備えることを特徴とするガスセンサーデバイス。
【請求項2】
前記光が紫外線である請求項1に記載のガスセンサーデバイス。
【請求項3】
前記酸化スズ板状結晶の最大長さと厚さとの比(アスペクト比)の平均値が2.5~100である請求項1又は2に記載のガスセンサーデバイス。
【請求項4】
前記酸化スズ板状結晶の主な露出面が(101)結晶面である請求項1から3のいずれか一項に記載のガスセンサーデバイス。
【請求項5】
電気的絶縁性を有する基板と、該基板の表面に形成された一対の電極と、該電極に接続された、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層とを有するガスセンサー素子の該ガス感応層に、光を照射しながら、被検知ガスを接触させ、該被検知ガスの濃度を測定することを特徴とするガス濃度測定方法。
【請求項6】
前記酸化スズ板状結晶の最大長さと厚さとの比(アスペクト比)の平均値が2.5~100である請求項5に記載のガス濃度測定方法。
【請求項7】
前記酸化スズ板状結晶の主な露出面が(101)結晶面である請求項5又は6に記載のガス濃度測定方法。
【請求項8】
前記光が紫外線である請求項5から7のいずれか一項に記載のガス濃度測定方法。
【請求項9】
前記被検知ガスが二酸化窒素である請求項5から8のいずれか一項に記載のガス濃度測定方法。
【請求項10】
前記紫外線の波長が310~400nmである請求項8又は9に記載のガス濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスの濃度測定に用いるガスセンサーデバイス及びガス濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検知ガスに感応する金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、γ-Fe2O3等)を用いたセンサー素子を備えるガスセンサーデバイスは、産業的に広く利用されており、未来産業においても需要が極めて高いと予想される。このようなガスセンサーデバイスは、金属酸化物からなるセンサー素子の表面を反応部位として用いるものであるが、金属酸化物の表面反応制御は、デバイスの特性に大きく影響を及ぼすため、表面反応を制御する技術が強く要求されている。
【0003】
特許文献1には、2つの金属電極を備える基板上に構造体が形成されてなり、該構造体は、ナノ粒子の集合体の表面に、酸化スズのナノ結晶(シート状結晶)が存在し、該ナノ粒子の集合体は、酸化スズのナノ粒子及び貴金属のナノ粒子を含むことを特徴とするセンサーが開示されている。また、本発明者らは、特許文献2において、くし型電極付きガラス基板の表面にシート状の酸化スズの集合体を形成させて、得られた複合体を、水素及びメタンに対するガスセンサーとして評価した。しかしながら、特許文献1及び2のガスセンサーは、駆動温度の制御を通じて表面反応を制御することから、250℃以上の高い温度で検知特性を示す。即ち、常温では十分な感応性が得られなかった。
【0004】
非特許文献1には、酸化スズ薄膜からなるセンサー素子に光(可視光~UV-A領域)を照射して、二酸化窒素に対してセンサー応答を得る技術が開示されているが、その感度は僅かである。
【0005】
非特許文献2には、室温において、単結晶SnO2ナノワイヤーからなるセンサー、単結晶ZnOナノワイヤーからなるセンサー、又は、単結晶SnO2からなるコア部と、単結晶ZnOからなるシェル部とを備えるナノワイヤーからなるセンサーに紫外線(波長:365nm)を照射して二酸化窒素の感応性を確認したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-17760号公報
【特許文献2】特開2021-53804号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.Anothainartら、Sensors and Actuators、 B 93(2003) 580-584
【非特許文献2】Sunghoon Parkら、ACS Appl. Mater. Interfaces、 2013, 5, 4285-4292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被検知ガスの中には可燃性を有するものがあるため、例えば、水素、アセトン、イソプレン、トルエン又はエタノールを検知又は濃度測定する場合の安全性の観点から、少なくとも150℃までの温度で、十分な感応性を有するガスセンサーデバイス及びガス濃度測定方法が求められている。被検知ガスの種類によるが、生体の皮膚近くでガスセンサーデバイスを用いる場合の温度の上限は、通常、体温より少々高い温度である。本発明は、50℃以下で高感度・高選択性を有するガスセンサーデバイス及び被検知ガスの濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕電気的絶縁性を有する基板と、該基板の表面に形成された一対の電極と、該電極に接続された、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層とを有するガスセンサー素子、及び、上記ガスセンサー素子の上記ガス感応層に光を放射する光源を備えることを特徴とするガスセンサーデバイス。
〔2〕上記光が紫外線である上記〔1〕に記載のガスセンサーデバイス。
〔3〕上記酸化スズ板状結晶の最大長さと厚さとの比(アスペクト比)の平均値が2.5~100である上記〔1〕又は〔2〕に記載のガスセンサーデバイス。
〔4〕上記酸化スズ板状結晶の主な露出面が(101)結晶面である上記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のガスセンサーデバイス。
〔5〕電気的絶縁性を有する基板と、該基板の表面に形成された一対の電極と、該電極に接続された、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層とを有するガスセンサー素子の該ガス感応層に、光を照射しながら、被検知ガスを接触させ、該被検知ガスの濃度を測定することを特徴とするガス濃度測定方法。
〔6〕上記酸化スズ板状結晶の最大長さと厚さとの比(アスペクト比)の平均値が2.5~100である上記〔6〕に記載のガス濃度測定方法。
〔7〕上記酸化スズ板状結晶の主な露出面が(101)結晶面である上記〔5〕から〔7〕のいずれか一項に記載のガス濃度測定方法。
〔8〕上記光が紫外線である上記〔7〕に記載のガス濃度測定方法。
〔9〕上記被検知ガスが二酸化窒素である上記〔5〕から〔8〕のいずれか一項に記載のガス濃度測定方法。
〔10〕上記紫外線の波長が310~400nmである上記〔8〕又は〔9〕に記載のガス濃度測定方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスセンサーデバイスによれば、ガスセンサー素子のガス感応層を構成する酸化スズ板状結晶が、光の波長や強度により表面活性度を制御することができるので、従来、必要としていた高温とすることなく、50℃以下で、被検知ガスの濃度を効率よく測定することができる。
本発明のガス濃度測定方法によれば、ガスセンサー素子のガス感応層に被検知ガスを接触させて、光を照射すると、従来、必要としていた高温とすることなく、50℃以下で、被検知ガスを効率よくガス感応層の酸化スズ板状結晶に吸着させることができるので、経済的に、被検知ガスの濃度を容易に得ることができる。このとき、例えば、一対の電極間の電気的物性値(抵抗値、導電率等)の変化量を利用することができる。また、照射する光が紫外線であり、被検知ガスが二酸化窒素である場合には、より効率よくガス濃度を測定することができる。
また、本発明の他の態様によれば、光の波長や強度により被検知ガスに対して異なる応答値が得られる。得られた応答値データを用いてデータ分析を行い、被検知ガスの種類を識別できる。また、本発明の他の態様によれば、常温付近で被検知ガスの測定又は同定が可能であるので、皮膚や素材の近くでも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のガスセンサーデバイスの1例を示す概略図である。
【
図2】実施例1~4で作製したガスセンサーデバイスを示す概略断面図である。
【
図3】実施例1~4で作製したガスセンサーデバイスの外観を示す概略斜視図である。
【
図4】本発明のガスセンサーデバイスの他例を示す概略図である。
【
図5】本発明のガスセンサーデバイスの他例を示す概略図である。
【
図6】本発明のガスセンサーデバイスに係るガスセンサー素子の1例を示す概略断面図である。
【
図7】本発明のガスセンサーデバイスに係るガス感応層を構成する酸化スズ板状結晶の好ましい含有形態を示す概略断面図である。
【
図8】酸化スズ板状結晶の断面の透過電子顕微鏡(TEM)像である。
【
図9】ガス感応層を構成する酸化スズ板状結晶のアスペクト比を得るための概略説明図である。
【
図10】本発明のガスセンサーデバイスの製造に用いる、ガス感応層形成前の電極付き基板の1例を示す概略図である。
【
図11】本発明のガスセンサーデバイスの製造に用いる、ガス感応層形成前の電極付き基板の他例を示す概略図である。
【
図12】実施例1で得られたガスセンサーデバイス(センサーα1及びα2)を構成するガス感応層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図13】実施例2で得られたガスセンサーデバイス(センサーβ1及びβ2)を構成するガス感応層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図14】実施例3で得られたガスセンサーデバイス(センサーγ1及びγ2)を構成するガス感応層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図15】実施例4で得られたガスセンサーデバイス(センサーδ1及びδ2)を構成するガス感応層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図16】実施例1~4で得られたガスセンサーデバイスによる、20ppmの二酸化窒素ガスに対する抵抗値変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のガスセンサーデバイスは、例えば、
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5に示すように、ガスセンサー素子10と、光源20とを備える。ガスセンサー素子10は、例えば、
図6に示すように、電気的絶縁性を有する基板11と、該基板11の表面に形成された一対の電極12,12とからなる電極付き基板14、並びに、上記の電極12,12どうしを接続する、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層15を有する。
【0014】
本発明のガスセンサーデバイスを用いて、被検知ガスの測定を行う場合、被検知ガスを、ガスセンサー素子10のガス感応層15、即ち、酸化スズ板状結晶の集合体に接触させた状態で、光を照射する。被検知ガスが、酸化スズ板状結晶に吸着すると、被検知ガスの接触前の状態に比べて、電極12,12どうしの間の抵抗値、導電率等の電気物性が変化することから、その変化量を利用して被検知ガスの濃度を得ることができる。
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5に示していないが、本発明のガスセンサーデバイスは、例えば、抵抗値を指標とする場合、電極12,12を介してガス感応層15に電圧を印加させ、ガス感応層15を流れる電流と、上記電圧とから、電極12,12の間の抵抗値を測定する抵抗測定器又は電位差計を、更に備えることができる。
【0015】
本発明のガスセンサーデバイスにおいて、ガスセンサー素子10を構成するガス感応層15は、複数の酸化スズ板状結晶が集合体となって構成されている。
図7は、ガス感応層15における酸化スズ板状結晶13の好ましい含有形態を示す概略図である。即ち、各酸化スズ板状結晶13は、基板11(又は電極12)に対して、垂直方向に配向していることが好ましい。本発明に係るガス感応層15は、この態様に限定されず、複数の酸化スズ板状結晶13がランダムに混在する態様、又は、複数の酸化スズ板状結晶13が基板11の表面から、順次、積み上げられた態様であってもよい。
【0016】
酸化スズ板状結晶の結晶構造、形状及びサイズは、特に限定されない。酸化スズ板状結晶の結晶構造は、好ましくはルチル型である。
【0017】
本発明において、酸化スズ板状結晶13は、
図7に示されるように、主な露出面が(101)結晶面であることが好ましい。このような結晶であることにより、被検知ガスを効率よく酸化スズ板状結晶13に吸着させることができる。尚、(101)結晶面であることは、以下により確認することができる。
(a)透過電子顕微鏡(TEM)を用いて得られた酸化スズ板状結晶の画像(
図8参照)から、酸化スズの(101)結晶面と一致する格子縞の間隔を測定する。
(b)他方、X線回折測定により得られた回折像を用いて結晶子サイズを算出し、結晶子サイズの酸化スズ板状結晶の合成時間依存性の有無を調べる。
(c)[101]方位への結晶子サイズの依存性が低い場合、[101]方向にほとんど結晶成長していないことになり、主な露出面が(101)結晶面であると判断できる。
【0018】
酸化スズ板状結晶の形状は、平面及び曲面のいずれでもよく、これらの組み合わせであってもよい。
酸化スズ板状結晶の長さ及び厚さは、特に限定されない。酸化スズ板状結晶の厚さは、好ましくは2~50nm、より好ましくは3~10nmである。また、
図9をもとにして算出される、最大長さLと厚さTとの比(L/T:アスペクト比)の平均値は、ガス感応性の観点から、好ましくは2.5~100、より好ましくは3.5~85、更に好ましくは7~70、特に好ましくは10~50である。ガス感応層15は、アスペクト比が2.5未満の酸化スズ板状結晶を含んでもよいが、露出している酸化スズ板状結晶の大部分(例えば、露出面50%以上)は、アスペクト比が2.5を超える酸化スズ板状結晶であることが好ましい。
【0019】
ガス感応層15の厚さ(基板11表面からの厚さ、又は、電極12表面からの厚さ)は、特に限定されない。基板11表面からみたガス感応層15の厚さは、好ましくは5~1000nm、より好ましくは20~200nmである。尚、ガス感応層15の厚さは、その全表面に渡って、均一及び不均一のいずれでもよい。
【0020】
上記のように、ガスセンサー素子10は、
図6に示すように、基板11と、該基板11の表面に形成された一対の電極12,12と、該電極12,12どうしを接続するガス感応層15とを備える。
図6は、一対の電極12,12の全体がガス感応層15により被覆されたことを示すが、本発明は、これに限定されず、各電極12,12の表面の一部を露出するようにして、ガス感応層が形成されていてもよい。
【0021】
ガスセンサー素子10を構成する基板11の構成材料、構造、形状及びサイズは、特に限定されない。基板11の構成材料は、無機材料及び有機材料のいずれでもよい。これらのうち、無機材料が好ましく、金属、セラミックス(酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物等)等とすることができる。
【0022】
電極12,12の構成材料及び膜厚は、特に限定されない。電極12の構成材料は、通常、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)等である。
基板11上において、電極12,12は、通常、パターン化されており、その形状は、例えば、
図10又は
図11に示すくし型とすることができるが、これに限定されない。
【0023】
ガスセンサー素子10は、例えば、表面に一対の電極を有する基板(電極付き基板)を、酸化スズ板状結晶用前駆体を含有する原料液体に浸漬させて、電極を有する側の基板表面において、酸化スズ板状結晶が一対の電極を接続するように酸化スズ板状結晶を生成させる方法により得られたものとすることができる。
この製造方法において、原料液体は、好ましくは、スズイオンを含む水溶液である。スズイオンを含む水溶液は、SnF4(フッ化スズ)、SnCl4(四塩化スズ)、SnCl2(二塩化スズ)、SnCl2・2H2O(塩化スズ二水和物)、SnCl4・5H2O(塩化スズ五水和物)、SnBr2(臭化スズ)、SnI2(ヨウ化スズ)、SnI4(ヨウ化スズ)、酢酸スズ、シュウ酸スズ、ステアリン酸スズ、硫酸スズ、酒石酸スズ、テトラフルオロホウ酸スズ、トリフルオロメタンスルホン酸スズ等を、水に溶解して得られたものとすることができる。特に好ましい原料液体は、フッ化スズの水溶液であり、上記好ましいアスペクト比の酸化スズ板状結晶の集合体が基板又は電極の表面に効率よく形成されることから、フッ化スズ水溶液の濃度は、好ましくは20~600mM、より好ましくは50~400mM、更に好ましくは100~300mMである。
電極付き基板を浸漬する際の原料液体の温度は、特に限定されないが、好ましくは20℃~99℃、より好ましくは40℃~95℃、更に好ましくは70℃~92℃である。また、浸漬時間は、電極付き基板のサイズ等により、適宜、選択されるが、酸化スズ板状結晶を含むガス感応層の厚さを確保するために、通常、30分間以上である。
【0024】
本発明のガスセンサーデバイスは、光を、ガスセンサー素子10のガス感応層15に放射する光源20を備える。光の種類は、特に限定されず、紫外線、可視光線等とすることができるが、紫外線が好ましい。紫外線を放射する光源20は、UV-A領域(波長310~400nm)の紫外線を発する光源、UV-B領域(波長280~310nm)の紫外線を放射する光源、及び、UV-C領域(波長100~280nm)の紫外線を発する光源のいずれでもよい。これらのうち、UV-A領域(波長310~400nm)の紫外線を発する光源が好ましい。
上記光源20としては、具体的には、発光ダイオード(LED)、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、紫外レーザー等を用いることができる。また、光ファイバーを併用してもよい。
また、本発明のガスセンサーデバイスが備える光源20の数は、用途により、適宜、選択され、1台でも複数台でもよい。複数台の場合、互いに異なる波長の紫外線を放射する光源どうしであってもよい。
【0025】
図1は、本発明のガスセンサーデバイスを示す概略図であり、光源20は、ガスセンサー素子10のガス感応層15に光を放射可能である限りにおいて、ガスセンサー素子10のガス感応層15との距離が限定されない任意の位置に配置されたものとすることができる。
【0026】
図2(
図3)、
図4及び
図5は、本発明のガスセンサーデバイスの具体例である。
図2は、
図3に示すように、ガスセンサー素子10のガス感応層15を、上面中央に開口部41を備える蓋40で保護するガスセンサーデバイス1Aであり、被検知ガスを開口部41から導入してガスセンサー素子10のガス感応層15に接触状態としたところへ、同様に蓋40で保護された光源20から光を照射する装置である。尚、
図2及び
図3は、蓋40を備え、且つ、開口部41の数を1つとしているが、本発明のガスセンサーデバイスは、これに限定されない。蓋を備える場合には、側面であってもよい。また、開口部は、通気性を確保できるものであれば、メッシュを配設してもよい。
図4は、光源20を蓋40の外側に配置して、光源20からの光を、開口部41を通ってガス感応層15に照射するガスセンサーデバイス1Bである。
図5は、蓋40の外側に配置された光源20からの光を、光ファイバー22を用いてガス感応層15に照射するガスセンサーデバイス1Cである。
【0027】
次に、本発明のガス濃度測定方法は、電気的絶縁性を有する基板と、該基板の表面に形成された一対の電極と、該電極に接続された、酸化スズ板状結晶の集合体を含むガス感応層とを有するガスセンサー素子の該ガス感応層に、光を照射しながら、被検知ガスを接触させ、該被検知ガスの濃度を測定する方法である。本発明のガス濃度測定方法は、ガスセンサー素子のガス感応層に光を照射することができるものであれば、どのような装置を用いてもよいが、
図2(
図3)、
図4又は
図5の構成を有し、紫外線を放射する光源を用いたガスセンサーデバイスが好ましく用いられる。また、ガス感応層を構成する酸化スズ板状結晶の好ましい性質は、上記の通りである。
【0028】
図2、
図4又は
図5のガスセンサーデバイスを用いる場合、例えば、被検知ガスの非存在下、ガスセンサー素子のガス感応層に光(好ましくは波長400nm以下の紫外線)を照射しながら、一対の電極の間の電気抵抗値(以下、「抵抗値R1」という)を測定し、その後、被検知ガスをガス感応層に接触させて、ガス感応層に光を照射しながら、同様にして、電気抵抗値(以下、「抵抗値R2」という)を測定し、上記の抵抗値R1及びR2の間の変化量と、予め、濃度既知の被検知ガスを用いて作製された検量線とから、被検知ガスの濃度を算出することができる。尚、被検知ガスをガス感応層に接触させる場合、空気との混合ガス、合成空気との混合ガス、不活性ガス及び酸素との混合ガス等を接触させることが好ましい。
【0029】
本発明のガス濃度測定方法において、上記ガスセンサーデバイスを用いる場合、ガスセンサー素子のガス感応層に被検知ガスを接触させ、ガス感応層に光を照射すると、従来、必要としていた高温とすることなく、50℃以下で、被検知ガスを効率よくガス感応層の酸化スズ板状結晶に吸着させることができるので、経済的に且つ容易に、被検知ガスの濃度を得ることができる。また、以下の作用効果を得ることができる。
(1)センサー応答値(以下、単に「応答値」という)の二酸化窒素ガス濃度依存性値を、好ましくは0.2~100、より好ましくは1.5~55とすることができる。
(2)100~400nmの範囲の波長の光を照射した場合、応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値が、水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール又はアンモニアのそれに対して、好ましくは10~100000倍、より好ましくは30~80000倍高くなる。
(3)310~400nmの範囲の波長の光を照射した場合、応答値のアンモニアガス濃度依存性値を、好ましくは0.001~1、より好ましくは0.1~0.5とすることができる。
(4)310~400nmの範囲の波長の光を照射した場合、応答値のアンモニアガス濃度依存性値が、水素、アセトン、イソプレン、トルエン又はエタノールのそれに対して、好ましくは10~10000倍、より好ましくは100~2500倍高くなる。
(5)100~280nmの範囲の波長の光を照射した場合、応答値のエタノールガス濃度依存性値を、好ましくは0.001~0.1、より好ましくは0.1~0.05とすることができる。
(6)100~280nmの範囲の波長の光を照射した場合、応答値のエタノールガス濃度依存性値が、水素、アセトン、イソプレン、トルエン又はアンモニアのそれに対して、好ましくは1.5~500倍、より好ましくは5~250倍高くなる。
【0030】
上記の各ガスに係るガス濃度依存性値は、x軸を応答値、y軸をガス濃度としてプロットし、得られた近似直線の式F(x)=ax+bにおいて切片のbをノイズ値としたときの係数aである。
【実施例0031】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を具体的に説明する。但し、実施例は単に例示するのみであり、本発明は、実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
以下に記載のように、表面に一対の白金電極(
図10のパターン形状を変形させたものであって、幅150μmごとの間隔でくし形にパターン形成されたもの)を有するアルミナ基板(サイズ:3.3mm×3.3mm×0.32mm、以下、「電極付きアルミナ基板」という)の白金電極表面に、ルチル型の酸化スズ板状結晶(以下、「ナノシート型酸化スズ」という)の集合体からなる膜(ガス感応層)を形成させて、ガスセンサー素子を作製した。そして、このガスセンサー素子におけるガス感応層の上方に、紫外線を放射するLED素子を備える光源を配置して、ガスセンサーデバイスを得た(
図2及び
図3参照)。その後、水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール、二酸化窒素又はアンモニアを被検知ガスとし、この被検知ガスと空気との混合ガスに対するセンサー特性評価を行った。
【0033】
実施例1(平均アスペクト比が10.87のナノシート型酸化スズを含むガスセンサーデバイスの製造及び評価)
90℃の蒸留水にふっ化スズ(SnF
2)(森田化学工業株式会社製)を溶解して280mMのふっ化スズ水溶液を得た。次いで、電極付きアルミナ基板をこのフッ化スズ水溶液に浸漬し、90℃で6時間保持することにより、一対の白金電極を含む全面に、ナノシート型酸化スズの集合体からなる膜(以下、「ガス感応層α」ともいう)を形成させ、ガスセンサー素子を得た。白金電極上におけるガス感応層αの厚さに相当するナノシート型酸化スズのサイズLは、約150nmであった。その後、得られたガスセンサー素子の裏面側を、金属半導体パッケージ30の上に載せて、白金線溶接した。次いで、ガスセンサー素子10のガス感応層15の上方に、紫外線光源20を配置し、更に、上面中央に開口部41を備える金属半導体パッケージ蓋40を付けてガスセンサーデバイス1Aを作製した(
図2及び
図3参照)。
図12は、電極付きアルミナ基板の白金電極上に製膜されたガス感応層αの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。この
図12におけるいくつかのナノシート型酸化スズを画像解析して算出したアスペクト比は3.65~17.75であり、平均は10.87であった。
【0034】
〔A〕センサーα1の作製
紫外線光源として、波長360nmの光を発光するLED素子(OSA OPTO社製)を、ガス感応層から約1.5mm離れた上方に配設し、ガスセンサーデバイス(以下、「センサーα1」という)を得た。
【0035】
〔B〕センサーα2の作製
紫外線光源として、波長275nmの光を発光するLED素子(Seoul Viosys社製)を、ガス感応層から約1.5mm離れた上方に配設し、ガスセンサーデバイス(以下、「センサーα2」という)を得た。
【0036】
〔C〕ガスセンサーデバイスのセンサー特性評価
次に、得られたガスセンサーα1及びα2を用いて、被検知ガスとしての水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール、二酸化窒素又はアンモニアと、空気との混合ガス(被検知ガスを所定の濃度とした混合ガス)に対するセンサー特性評価を行った。測定温度は25℃であり、以下、「常温」という。具体的には、空気のみの雰囲気下、ガス感応層に紫外線(波長:360nm又は275nm)を照射し、1800秒間経過後、一対の電極の間の電気抵抗値を測定(電気抵抗値:Ra)し、次いで、被検知ガスの濃度が既知である混合ガスをガス感応層に接触させ、この状態でガス感応層に紫外線(波長:360nm又は275nm)を照射し、照射開始から1200秒間経過するまで、一対の電極の間の電気抵抗値を測定(電気抵抗値:Rg)した。各電気抵抗値は、多チャンネルデジタルマルチメータ(ケースレー社製;型番2700及びサムス社製;型番PWON-GS-4改)により測定した。
【0037】
ガスセンサーの評価項目は以下の通りであり、評価結果を表1及び表2に示した。
(1)応答値
混合ガス接触後、電気抵抗値が上昇してRa<Rgとなった場合はRg/Raを算出してこれを応答値とし、また、混合ガス接触後、電気抵抗値が低下してRa>Rgとなった場合はRa/Rgを算出してこれを応答値とした。
(2)ノイズ
Ra/(Ra-Raの標準偏差)を算出した。
(3)シグナル値
上記で得られた応答値及びノイズから、差(応答値-ノイズ)を算出した。
(4)90%応答時間
Raを0%、Rgを100%として、混合ガス流通後、Rgの90%に到達するまでの時間を計測した。
(5)90%回復時間
Rgを0%、Raを100%として、混合ガスに接触させた後、空気に切り替えて、Raの90%に到達するまでの時間を計測した。
【0038】
〔D〕センサーα1のセンサー特性について
センサーα1は、1ppm二酸化窒素に対してシグナル値が5.76(シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が0.08(シグナル値0.03以上0.30未満)であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びエタノールに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0039】
1ppm二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:6.73、二酸化窒素/アセトン:6.54、二酸化窒素/イソプレン:6.50、二酸化窒素/トルエン:6.69、二酸化窒素/エタノール:6.75、二酸化窒素/アンモニア:6.14であり、応答値比2.00以上10.00未満であった。
【0040】
1ppmアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、アンモニア/水素:1.10、アンモニア/アセトン:1.06、アンモニア/イソプレン:1.06、アンモニア/トルエン:1.09、アンモニア/エタノール:1.10であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0041】
センサーα1は、5ppm二酸化窒素に対してシグナル値が32.71(シグナル値10.00以上100.00未満)であり、高い感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が0.56(シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びエタノールに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0042】
5ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:33.41、二酸化窒素/アセトン:33.55、二酸化窒素/イソプレン:32.98、二酸化窒素/トルエン:33.07、二酸化窒素/エタノール:32.70、二酸化窒素/アンモニア:21.22であり、応答値比10以上であった。
【0043】
5ppmアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、アンモニア/水素:1.57、アンモニア/アセトン:1.53、アンモニア/イソプレン:1.55、アンモニア/トルエン:1.56、アンモニア/エタノール:1.54であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0044】
センサーα1は、20ppm二酸化窒素に対してシグナル値が168.57(シグナル値100.00以上)であり、極めて高い感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が3.43(シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びエタノールに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0045】
20ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:166.31、二酸化窒素/アセトン:168.69、二酸化窒素/イソプレン:161.01、二酸化窒素/トルエン:169.78、二酸化窒素/エタノール:165.71、二酸化窒素/アンモニア:38.07であり、応答値比10以上であった。
【0046】
20ppmアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも大きかった。即ち、アンモニア/水素:4.37、アンモニア/アセトン:4.43、アンモニア/イソプレン:4.23、アンモニア/トルエン:4.46、アンモニア/エタノール:4.35であり、応答値比応答値比2.00以上10.00未満であった。
【0047】
〔E〕センサーα2のセンサー特性について
センサーα2は、1ppm二酸化窒素に対してシグナル値が0.53(シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。また、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール及びアンモニアに対してシグナル値が0.03以上10.00未満であり、僅かに感応性を示した。
【0048】
1ppm二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:1.42、二酸化窒素/アセトン:1.39、二酸化窒素/イソプレン:1.40、二酸化窒素/トルエン:1.40、二酸化窒素/エタノール:1.39、二酸化窒素/アンモニア:1.40であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0049】
センサーα2は、5ppm二酸化窒素に対してシグナル値が4.48(シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。また、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエンエタノール及びアンモニアに対してシグナル値が0.03以上10.00未満であり、僅かに感応性を示した。
【0050】
5ppm二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:5.19、二酸化窒素/アセトン:4.89、二酸化窒素/イソプレン:5.09、二酸化窒素/トルエン:5.10、二酸化窒素/エタノール:4.66、二酸化窒素/アンモニア:4.68であり、応答値比2.00以上10.00未満であった。
【0051】
センサーα2は、20ppm二酸化窒素に対してシグナル値が168.57(シグナル値10.00以上100.00未満)であり、高い感応性を示した。また、同濃度のエタノール及びアンモニアに対してシグナル値が、それぞれ、0.52及び0.30(いずれも、シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。更に、同濃度の水素、アセトン、イソプレン及びトルエンに対してシグナル値が0.03以上0.30未満であり、僅かに感応性を示した。
【0052】
20ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:166.31、二酸化窒素/アセトン:168.69、二酸化窒素/イソプレン:161.01、二酸化窒素/トルエン:169.78、二酸化窒素/エタノール:165.71、二酸化窒素/アンモニア:38.07であり、応答値比10以上であった。
【0053】
20ppmエタノールに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素及びアンモニアを除いた他のガスに対するそれよりも大きかった。即ち、エタノール/水素:1.44、エタノール/アセトン:1.29、エタノール/イソプレン:1.38、エタノール/トルエン:1.45であり、応答値比2.00以上10.00未満であった。
【0054】
20ppmアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素及びエタノールを除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、アンモニア/水素:4.37、アンモニア/アセトン:4.43、アンモニア/イソプレン:4.23、アンモニア/トルエン:4.46であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0055】
実施例2(平均アスペクト比が11.79のナノシート型酸化スズを含むガスセンサーデバイスの製造及び評価)
90℃の蒸留水にふっ化スズ(SnF
2)(森田化学工業株式会社製)を溶解して140mMのふっ化スズ水溶液を得た。次いで、電極付きアルミナ基板をこのフッ化スズ水溶液に浸漬し、90℃で6時間保持することにより、一対の白金電極を含む全面に、ナノシート型酸化スズの集合体からなる膜(以下、「ガス感応層β」ともいう)を形成させ、ガスセンサー素子を得た。白金電極上におけるガス感応層βの厚さに相当するナノシート型酸化スズのサイズLは、約100nmであった。その後、得られたガスセンサー素子の裏面側を、金属半導体パッケージ30の上に載せて、白金線溶接した。次いで、ガスセンサー素子10のガス感応層15の上方に、紫外線光源20を配置し、更に、上面中央に開口部41を備える金属半導体パッケージ蓋40を付けてガスセンサーデバイス1Aを作製した(
図2及び
図3参照)。
図13は、電極付きアルミナ基板の白金電極上に製膜されたガス感応層βの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。この
図13におけるいくつかのナノシート型酸化スズを画像解析して算出したアスペクト比は4.73~21.75であり、平均は11.79であった。
【0056】
〔A〕センサーβ1の作製
紫外線光源として、波長360nmの光を発光するLED素子(OSA OPTO社製)を、ガス感応層から約1.5mm離れた上方に配設し、ガスセンサーデバイス(以下、「センサーβ1」という)を得た。
【0057】
〔B〕センサーβ2の作製
紫外線光源として、波長275nmの光を発光するLED素子(Seoul Viosys社製)を、ガス感応層から約1.5mm離れた上方に配設し、ガスセンサーデバイス(以下、「センサーβ2」という)を得た。
【0058】
〔C〕のセンサー特性評価
実施例1と同様にして、常温で、センサーβ1及びセンサーβ2のセンサー特性評価を行った。評価結果を表1及び表2に示した。
【0059】
〔D〕センサーβ1のセンサー特性について
センサーβ1は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が12.68(シグナル値:10.00以上100.00未満)であり、高い感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が0.12(シグナル値:0.03以上0.30未満)であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びエタノールに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0060】
1ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:13.52、二酸化窒素/アセトン:13.52、二酸化窒素/イソプレン:13.52、二酸化窒素/トルエン:13.57、二酸化窒素/エタノール:13.60、二酸化窒素/アンモニア:12.14であり、応答値比10.00以上であった。
【0061】
1ppmのアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、アンモニア/水素:1.11、アンモニア/アセトン:1.11、アンモニア/イソプレン:1.11、アンモニア/トルエン:1.12、アンモニア/エタノール:1.12であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0062】
センサーβ1は、5ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が70.99(シグナル値:10.00以上100.00未満)であり、高い感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が2.58(シグナル値:0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びエタノールに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0063】
5ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:71.30、二酸化窒素/アセトン:70.65、二酸化窒素/イソプレン:71.37、二酸化窒素/トルエン:71.96、二酸化窒素/エタノール:72.00、二酸化窒素/アンモニア:34.92であり、応答値比10.00以上であった。
【0064】
5ppmのアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、アンモニア/水素:2.04、アンモニア/アセトン:2.02、アンモニア/イソプレン:2.04、アンモニア/トルエン:2.06、アンモニア/エタノール:2.06であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0065】
センサーβ1は、20ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が306.67(シグナル値:100.00以上)であり、極めて高い感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が9.24(シグナル値0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。更に、同濃度のエタノールに対してシグナル値が0.01(シグナル値0.03以上0.30未満)であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びエタノールに対してシグナル値が0.03未満であり、感応性を示さなかった。
【0066】
20ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:303.30、二酸化窒素/アセトン:286.91、二酸化窒素/イソプレン:306.87、二酸化窒素/トルエン:303.54、二酸化窒素/エタノール:303.44、二酸化窒素/アンモニア:34.92であり、応答値比10以上であった。
【0067】
20ppmのアンモニアに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素及びアセトンを除いた他のガスに対するそれよりも格段大きかった。即ち、アンモニア/水素:10.12、アンモニア/イソプレン:10.22、アンモニア/トルエン:10.11、アンモニア/エタノール:10.10であり、応答値比10以上であった。また、この20ppmのアンモニアに対する応答値は9.55であり、応答値比2.00以上10.00未満であり、同濃度のアセトンに対するそれよりも大きかった。
【0068】
20ppmのアセトンに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素及びアンモニアを除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、アセトン/水素:1.06、アセトン/イソプレン:1.07、アセトン/トルエン:1.06、アセトン、エタノール:1.06であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0069】
〔E〕センサーβ2のセンサー特性について
センサーβ2は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が0.78(シグナル値:0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。また、同濃度のエタノールに対してシグナル値が0.04(シグナル値:0.03以上0.30未満)であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びアンモニアに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0070】
1ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:1.78、二酸化窒素/アセトン:1.78、二酸化窒素/イソプレン:1.78、二酸化窒素/トルエン:1.76、二酸化窒素/エタノール:1.72、二酸化窒素/アンモニア:1.75であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0071】
1ppmのエタノールに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、エタノール/水素:1.03、エタノール/アセトン:1.04、エタノール/イソプレン:1.04、エタノール/トルエン:1.04、エタノール/アンモニア:1.02であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0072】
センサーβ2は、5ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が2.58(シグナル値:0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。また、同濃度のエタノールに対してシグナル値が0.14(シグナル値0.03以上0.30未満)であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン、トルエン及びアンモニアに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0073】
5ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:3.57、二酸化窒素/アセトン:3.58、二酸化窒素/イソプレン:3.57、二酸化窒素/トルエン:3.50、二酸化窒素/エタノール:3.14、二酸化窒素/アンモニア:3.50であり、応答値比2.00以上10.00未満であった。
【0074】
5ppmのエタノールに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、エタノール/水素:1.14、エタノール/アセトン:1.14、エタノール/イソプレン:1.13、エタノール/トルエン:1.11、エタノール/アンモニア:1.11であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0075】
センサーβ2は、20ppmの二酸化窒素及び20ppmのエタノールに対してシグナル値が、それぞれ、6.29及び0.37(いずれも、シグナル値:0.30以上10.00未満)であり、感応性を示した。また、同濃度のトルエンに対してシグナル値が0.07(シグナル値:0.03以上0.30未満)であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、アセトン、イソプレン及びアンモニアに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0076】
20ppmの二酸化窒素に対する応答値は、測定した同濃度の他のガスに対するそれよりも大きかった。即ち、二酸化窒素/水素:7.28、二酸化窒素/アセトン:7.28、二酸化窒素/イソプレン:7.24、二酸化窒素/トルエン:6.83、二酸化窒素/エタノール:5.31、二酸化窒素/アンモニア:7.28であり、応答値比2.00以上10.00未満であった。
【0077】
20ppmのエタノールに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素を除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、エタノール/水素:1.37、エタノール/アセトン:1.37、エタノール/イソプレン:1.36、エタノール/トルエン:1.29、エタノール/アンモニア:1.37であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0078】
20ppmのトルエンに対する応答値は、測定した同濃度の二酸化窒素及びエタノールを除いた他のガスに対するそれよりも僅かに大きかった。即ち、トルエン/水素:1.06、トルエン/アセトン:1.06、トルエン/イソプレン:1.06、トルエン/アンモニア:1.06であり、応答値比1.01以上2.00未満であった。
【0079】
【0080】
【0081】
実施例3(平均アスペクト比が12.39のナノシート型酸化スズを含むガスセンサーデバイスの製造及び評価)
90℃の蒸留水にふっ化スズ(SnF
2)(森田化学工業株式会社製)を溶解して28mMのふっ化スズ水溶液を得た。次いで、電極付きアルミナ基板をこのフッ化スズ水溶液に浸漬し、90℃で6時間保持することにより、一対の白金電極を含む全面に、ナノシート型酸化スズの集合体からなる膜(以下、「ガス感応層γ」という)を形成させ、ガスセンサー素子を得た。白金電極上におけるガス感応層γの厚さに相当するナノシート型酸化スズのサイズLは、約80nmであった。その後、得られたガスセンサー素子の裏面側を、金属半導体パッケージ30の上に載せて、白金線溶接した。次いで、ガスセンサー素子10のガス感応層15の上方に、紫外線光源20を配置し、更に、上面中央に開口部41を備える金属半導体パッケージ蓋40を付けてガスセンサーデバイス1Aを作製した(
図2及び
図3参照)。
図14は、電極付きアルミナ基板の白金電極上に製膜されたガス感応層γの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。この
図14におけるいくつかのナノシート型酸化スズを画像解析して算出したアスペクト比は、5.35~34.15であり、平均は12.39であった。
【0082】
〔A〕センサーγ1の作製
紫外線光源として、波長360nmの光を発光するLED素子(OSA OPTO社製)を、ガス感応層から約1.5mm離れた上方に配設し、ガスセンサーデバイス(以下、「センサーγ1」という)を得た。
【0083】
〔B〕センサーγ2の作製
紫外線光源として、波長275nmの光を発光するLED素子(Seoul Viosys社製)を、ガス感応層から約1.5mm離れた上方に配設し、ガスセンサーデバイス(以下、「センサーγ2」という)を得た。
【0084】
〔C〕のセンサー特性評価
実施例1と同様にして、常温で、センサーγ1及びセンサーγ2のセンサー特性評価を行った。評価結果を表3及び表4に示す。
【0085】
〔D〕二酸化窒素に対するセンサー特性
センサーγ1は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が49.57(シグナル値:10.00以上100.00未満)であり、高い感応性を示した。5ppmの二酸化窒素及び20ppmの二酸化窒素に対しても、シグナル値が、それぞれ、305.59及び1003.31(いずれも、シグナル値:100.00以上)であり、極めて高い感応性を示した。
【0086】
センサーγ2は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が3.39(シグナル値:0.03以上10.00未満)であり、感応性を示した。5ppmの二酸化窒素及び20ppmの二酸化窒素に対しても、シグナル値が、それぞれ、14.69及び36.74(いずれも、シグナル値:10.00以上100.00未満)であり、高い感応性を示した。
【0087】
【0088】
〔E〕センサーα1、α2、β1、β2、γ1及びγ2のガス濃度依存性
以上の結果から、各センサーの被検知ガスに対する応答値(以下、「センサー応答値」という)のガス濃度依存性値を算出し、表5及び表6に示した。
【0089】
(I)二酸化窒素
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は0.3277~50.807であった。また、この平均値は13.045であり、10以上であったため、極めて強いガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9989であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0090】
照射する光の波長で比較すると、波長360nmの光を照射した場合には、センサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は8.3117~50.807であった。また、この平均値は24.793であり、10以上であったため、極めて強いガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9989であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
一方、波長275nmの光を照射した場合には、センサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は0.3277~1.9053であった。また、この平均値は1.2997であり、1以上であった。また、決定係数(R2)は0.9993であり、0.9以上であるため、強いガス濃度依存性を有すると共に高い線形関係を有すると解釈される。
【0091】
ガス感応層の厚さで比較すると、光をガス感応層αに照射した場合には、センサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は1.6601~8.3117であり、平均値は4.9859であった。また、決定係数(R2)は0.9971であった。ガス感応層βの場合には、センサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は0.3277~15.2600であり、平均値は7.7940であった。また、決定係数(R2)は0.9999であった。ガス感応層γの場合には、センサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は1.9053~50.807であり、平均値は26.356であった。また、決定係数(R2)は0.9959であった。これらから、ガス感応層α及びβに光照射した場合、二酸化窒素に対して強いガス濃度依存性を有すると共に高い線形関係を示し、ガス感応層γに光照射した場合には、極めて強いガス濃度依存性を有すると共に高い線形関係を有すると解釈される。
【0092】
(II)アンモニア
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値のアンモニアガス濃度依存性値は0.0004~0.4468であった。また、この平均値は0.1578であり、0.1以上であり、ガス濃度依存性を示した。更に、決定係数(R2)は0.9914であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0093】
照射する光の波長で比較すると、波長360nmの光を照射した場合には、センサー応答値のアンモニアガス濃度依存性値は0.1681~0.4468であった。また、この平均値は0.3074であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を示した。更に、決定係数(R2)は0.9906であり、0.9以上であるため、線形関係を有すると解釈される。
一方、波長275nmの光を照射した場合には、センサー応答値のアンモニアガス濃度依存性値は0.0004~0.016であった。また、この平均値は0.0082であり、0.9以上であったため、僅かなガス濃度依存性を示した。また、決定係数(R2)は0.9578であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0094】
ガス感応層の厚さで比較すると、光をガス感応層αに照射した場合には、センサー応答値のアンモニアガス濃度依存性値は0.016~0.1681であり、平均値は0.2227であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を示した。更に、決定係数(R2)は0.9886であり、0.9以上であるため、高い線形関係を示した。ガス感応層βの場合には、センサー応答値のアンモニアガス濃度依存性値は0.0004~0.4468で、平均値は0.0929であり、0.01以上0.1未満であったため、僅かなガス濃度依存性を示した。更に、決定係数(R2)は0.9968であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0095】
(III)エタノール
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値のエタノールガス濃度依存性値は-0.0012~0.0264であった。また、この平均値は0.0114であり、0.01以上0.1未満であったため、僅かなガス濃度依存性を示した。更に、決定係数(R2)は0.9989であり、高い線形関係を有すると解釈される。
【0096】
照射する光の波長で比較すると、波長360nmの光を照射した場合には、センサー応答値のエタノールガス濃度依存性値は-0.0012~0.0007であった。また、この平均値は-0.0001であり、ガス濃度依存性を示さなかった。また、決定係数(R2)は0.6639であり、0.5以上0.75未満であったため、僅かな線形関係を有すると解釈される。
一方、波長275nmの光を照射した場合には、センサー応答値のエタノールガス濃度依存性値は0.0193~0.0264であり、平均値は0.0229であり0.01以上0.1未満であるため、僅かなガス濃度依存性を示した。また、決定係数(R2)は0.9997であり、高い線形関係を有すると解釈される。
【0097】
ガス感応層の厚さで比較すると、光をガス感応層αに照射した場合には、センサー応答値のエタノールガス濃度依存性値は-0.0012~0.0264であり、平均値は0.0128であった。更に、決定係数(R2)は0.9999であった。また、ガス感応層βの場合には、センサー応答値のエタノールガス濃度依存性値は0.0007~0.0193であり、平均値は0.01であった。更に、決定係数(R2)は0.9945であった。これらから、ガス感応層α及びβに光照射した場合、いずれもエタノールに対して僅かなガス濃度依存性と共に高い線形関係を有すると解釈される。
【0098】
(IV)トルエン
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値のトルエンガス濃度依存性値は-0.0025~0.0029であった。また、この平均値は0.0011であり、ガス濃度依存性を示さなかった。更に、決定係数(R2)は0.1047であり、0.5未満であるため、線形関係を示さなかった。
【0099】
(V)イソプレン
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値のイソプレンガス濃度依存性値は0.0002~0.0056であった。また、この平均値は0.0018であり、ガス濃度依存性を示さなかった。更に、決定係数(R2)は0.3203であり、0.5未満であるため、線形関係を示さなかった。
【0100】
(VI)アセトン
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値のアセトンガス濃度依存性値は-0.0021~0.0096であった。また、この平均値は0.0029であり、ガス濃度依存性を示さなかった。一方、決定係数(R2)は0.9991であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0101】
(VII)水素
ガス感応層に光を照射した場合、センサー応答値の水素ガス濃度依存性値は-0.0008~0.0031であった。また、この平均値は0.0008であり、ガス濃度依存性を示さなかった。更に、決定係数(R2)は0.1159であり、0.5未満であるため、線形関係を示さなかった。
【0102】
【0103】
【0104】
表1から、本発明のセンサーは、二酸化窒素に対して高感度であり、応答値は、測定した他のガス(水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール、アンモニア)に対するそれよりも大きかった。即ち、二酸化窒素に対して高選択性である。特にガス濃度が高くなるほどその効果は顕著である。
【0105】
本発明において、360nmの波長の光を放射するセンサーを用いる場合には、アンモニアに対して特に感応性を示し、その応答値は、測定した二酸化窒素を除いた他のガス(水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール)に対するそれよりも大きかった。即ち、アンモニアに対して選択性を示す。特にガス濃度が高くなるほどその効果は顕著である。
【0106】
本発明において、275nmの波長の光を放射するセンサーを用いる場合には、エタノールに対して特に感応性を示し、その応答値は、測定した二酸化窒素を除いた他のガス(水素、アセトン、イソプレン、トルエン、アンモニア)に対するそれよりも大きかった。即ち、エタノールに対して選択性を示す。特にガス濃度が高くなるほどその効果は顕著である。
【0107】
比較例1
〔A〕センサーα3の作製
実施例1のガスセンサーデバイス(センサーα1)における光源を排除したガスセンサーデバイスを、「センサーα3」とした。
【0108】
〔B〕センサーα4の作製
実施例1のガスセンサーデバイス(センサーα1)における光源を排除したガスセンサーデバイスであって、更に、アルミナ基板における白金電極が配されていない裏面側に白金ヒーターを具備するガスセンサー素子を備えるガスセンサーデバイスを、「センサーα4」とした。
【0109】
〔C〕センサーα3及びα4のセンサー特性評価
実施例1と同様にして、センサーα3は、常温で、センサーα4は、白金ヒーターの駆動により300℃で、それぞれ、センサー特性評価を行った。評価結果を表7及び表8に示した。
【0110】
〔D〕センサーα3のセンサー特性について
センサーα3は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が0.10であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、測定した同濃度の他のガスに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0111】
センサーα3は、5ppm及び20ppmの二酸化窒素に対して感応性を示した。しかしながら、測定した同濃度の他のガスに対してほとんど感応性を示さなかった。
【0112】
〔E〕センサーα4のセンサー特性について
センサーα4は、測定したいずれのガスに対してもシグナル値が0.30以上であり、感応性を示した。
【0113】
比較例2
〔A〕センサーβ3の作製
上述の実施例2のガスセンサーデバイス(センサーβ1)における光源を排除したガスセンサーデバイスを、「センサーβ3」とした。
【0114】
〔B〕センサーβ4の作製
実施例2のガスセンサーデバイス(センサーβ1)における光源を排除したガスセンサーデバイスであって、更に、アルミナ基板における白金電極が配されていない裏面側に白金ヒーターを具備するガスセンサー素子を備えるガスセンサーデバイスを、「センサーβ4」とした。
【0115】
〔C〕センサーβ3及びβ4のセンサー特性評価
実施例1と同様にして、センサーβ3は、常温で、センサーβ4は、白金ヒーターの駆動により300℃で、それぞれ、センサー特性評価を行った。評価結果を表7及び表8に示した。
【0116】
〔D〕センサーβ3のセンサー特性について
センサーβ3は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が0.06であり、僅かに感応性を示した。しかしながら、測定した同濃度の他のガスに対してシグナル値が0.03未満であり、ほとんど感応性を示さなかった。
【0117】
センサーβ3は、5ppm及び20ppmの二酸化窒素に対して感応性を示した。しかしながら、測定した同濃度のガスに対してほとんど感応性を示さなかった。
【0118】
〔E〕センサーβ4のセンサー特性について
センサーβ4は、測定した1ppmのいずれのガスに対してもシグナル値が0.30以上であり、感応性を示した。
【0119】
センサーβ4は、5ppmの、水素、アセトン、イソプレン、トルエン、エタノール及び二酸化窒素に対していずれもシグナル値が0.30以上であり、感応性を示した。しかしながら、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が0.30未満であり、僅かに感応性を示した。
【0120】
センサーβ4は、20ppmのアセトン、イソプレン及び二酸化窒素に対していずれもシグナル値が10.00以上であり、高い感応性を示した。しかしながら、同濃度の水素、トルエン及びエタノールに対していずれもシグナル値が0.30以上であり、感応性を示した。また、同濃度のアンモニアに対してシグナル値が0.03以上であり、僅かに感応性を示した。
【0121】
【0122】
【0123】
比較例3
〔A〕センサーγ3の作製
実施例1のガスセンサーデバイス(センサーα1)における光源を排除したガスセンサーデバイスを、「センサーγ3」とした。
【0124】
〔B〕センサーγ4の作製
実施例1のガスセンサーデバイス(センサーα1)における光源を排除したガスセンサーデバイスであって、更に、アルミナ基板における白金電極が配されていない裏面側に白金ヒーターを具備するガスセンサー素子を備えるガスセンサーデバイスを、「センサーγ4」とした。
【0125】
〔C〕センサーγ3及びγ4のセンサー特性評価
実施例1と同様にして、二酸化窒素に対するセンサー特性評価を、センサーγ3は、常温で、センサーγ4は、白金ヒーターの駆動により300℃で、それぞれ、行った。評価結果を表9及び表10に示した。
【0126】
〔D〕センサーγ3及びγ4のセンサー特性について
センサーγ3は、1ppmの二酸化窒素に対してシグナル値が0.30未満であり、僅かに感応性を示した。また、5ppm及び20ppmの二酸化窒素に対して感応性を示した。
【0127】
センサーγ4は、1ppm5ppmの二酸化窒素に対して感応性を示した。特に、20ppmの二酸化窒素に対して高い感応性を示した。
【0128】
【0129】
【0130】
〔E〕センサーα3、α4、β3、β4、γ3及びγ4の濃度依存性
以上の結果を用いて、センサーα1等の場合と同様にして、センサー応答値のガス濃度依存性値を算出した。その値を、表11及び表12に示した。
【0131】
(I)二酸化窒素
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値の二酸化窒素ガス濃度依存性値は0.0841~0.1944であった。また、この平均値は0.1506であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9996であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。一方、300℃における二酸化窒素ガス濃度依存性値は0.4262~2.0737であった。また、この平均値は1.0813であり、1以上であったため、強いガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9999であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0132】
(II)アンモニア
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値のアンモニアガス濃度依存性値は-0.0003~0.0001であった。また、この平均値は0.0008であり、0.01未満であったため、ガス濃度依存性を示さなかった。また、決定係数(R2)は0.9578であり、0.9以上であるため高い線形関係を有すると解釈される。一方、300℃におけるアンモニアガス濃度依存性値は0.0105~0.0312であった。また、この平均値は0.3075であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9906であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0133】
(III)エタノール
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値のエタノールガス濃度依存性値は-0.0011~-0.0001であった。また、この平均値は-0.0006であり、0.01未満であったため、ガス濃度依存性を示さなかった。また、決定係数(R2)は0.0059であり、0.5未満であったため、線形関係を示さなかった。一方、300℃におけるエタノールガス濃度依存性値は0.1192~0.1219であった。また、この平均値は0.1206であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.6511であり、0.5以上であるため、僅かな線形関係を有すると解釈される。
【0134】
(IV)トルエン
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値のトルエンガス濃度依存性値は-0.001~-0.0003であった。また、この平均値は-0.0007であり、0.01未満であったため、ガス濃度依存性を示さなかった。また、決定係数(R2)は0.0024であり、0.5未満であったため、線形関係を示さなかった。一方、300℃におけるトルエンガス濃度依存性値は0.3644~0.0522であった。また、この平均値は0.2083であり、0.5以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.6708であり、0.5以上であるため、僅かな線形関係を有すると解釈される。
【0135】
(V)イソプレン
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値のイソプレンガス濃度依存性値は-0.0009~0.0001であった。また、この平均値は-0.0004であり、0.01未満であったため、ガス濃度依存性を示さなかった。また、決定係数(R2)は0.0728であり、0.5未満であったため、線形関係を示さなかった。一方、300℃におけるイソプレンガス濃度依存性値は0.1004~0.5633であった。また、この平均値は0.3319であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9042であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0136】
(VI)アセトン
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値のアセトンガス濃度依存性値は-0.001~0.0004であった。また、この平均値は-0.0003であり、0.01未満であったため、ガス濃度依存性を示さなかった。尚、決定係数(R2)は0.9139であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。一方、300℃におけるアセトンガス濃度依存性値は0.1574~0.5489であった。また、この平均値は0.4032であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.9881であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。
【0137】
(VII)水素
ガス感応層の常温におけるセンサー応答値の水素ガス濃度依存性値は-0.0011~-0.0001であった。また、この平均値は-0.0006であり、0.01未満であったため、ガス濃度依存性を示さなかった。尚、決定係数(R2)は0.9491であり、0.9以上であるため、高い線形関係を有すると解釈される。一方、300℃における水素ガス濃度依存性値は0.1306~0.0.2828であった。また、この平均値は0.2067であり、0.1以上であったため、ガス濃度依存性を有すると解釈される。更に、決定係数(R2)は0.8149であり、0.75以上であるため、線形関係を有すると解釈される。
【0138】
【0139】
【0140】
表1及び表7から、以下のことが分かる。
紫外線を照射するセンサーα1(実施例)の場合、常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、二酸化窒素:614.78)。また、センサーα3による1ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーα1による同濃度のアンモニアに対するそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、アンモニア:8.46)。
【0141】
紫外線を照射するセンサーα1(実施例)の場合、常温における5ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより格段大きかった(シグナル値比1000以上、二酸化窒素:6102.66)。また、センサーα3による5ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーα1による同濃度のアンモニアに対するそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、アンモニア:105・23)。
【0142】
紫外線を照射するセンサーα1(実施例)の場合、常温における20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより格段大きかった(シグナル値比1000以上、二酸化窒素:34018.32)。また、センサーα3による20ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーα1による同濃度のアンモニアに対するそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、アンモニア:692.01)。
【0143】
紫外線を照射するセンサーα2(実施例)の場合、常温における1ppmのいずれのガスに対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれらより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、水素:8.67、アセトン:10.88、イソプレン:9.67、トルエン:9.59、エタノール:10.98、二酸化窒素:56.96、アンモニア:10.74)。
【0144】
紫外線を照射するセンサーα2(実施例)の場合、常温における5ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、二酸化窒素:836.25)。また、センサーα3による5ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーα2による同濃度の他のガスに対するそれらより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、水素:9.25、アセトン:21.09、イソプレン:12.70、トルエン:12.39、エタノール:32.05、アンモニア:31.24)。
【0145】
紫外線を照射するセンサーα2(実施例)の場合、常温における20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより格段大きかった(シグナル値比1000以上、二酸化窒素:6904.02)。また、センサーα3による20ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーα2による同濃度のエタノールに対するそれらより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、エタノール:104.45)。更に、センサーα3による20ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーα2による同濃度のエタノール以外の他のガスに対するそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、水素:9.99、アセトン:34.43、イソプレン:19.70、トルエン:8.29、アンモニア:60.55)。
【0146】
次に、紫外線を照射するセンサーβ1(実施例)の場合、常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより格段大きかった(シグナル値比1000以上、二酸化窒素:15121.24)。また、センサーβ3による1ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーβ1による同濃度のアンモニアに対するそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、アンモニア:145.54)。
【0147】
紫外線を照射するセンサーβ1(実施例)の場合、常温における5ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより格段大きかった(シグナル値比1000以上、二酸化窒素:6745.56)。また、センサーβ3による5ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーβ1による同濃度のアンモニアに対するそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、アンモニア:100.42)。
【0148】
紫外線を照射するセンサーβ1(実施例)の場合、常温における20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより格段大きかった(シグナル値比1000以上、二酸化窒素:14150.07)。また、センサーβ3による20ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーβ1による同濃度のアンモニアに対するそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、アンモニア:426.38)。
【0149】
紫外線を照射するセンサーβ2(実施例)の常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、二酸化窒素:929.94)。また、センサーβ3による1ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーβ2による同濃度のエタノールに対するそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、エタノール:44.02)。
【0150】
紫外線を照射するセンサーβ2(実施例)の常温における5ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、二酸化窒素:245.30)。また、センサーβ3による5ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーβ2による同濃度のエタノールに対するそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、エタノール:13.27)。
【0151】
紫外線を照射するセンサーβ2(実施例)の常温における20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、二酸化窒素:290.45)。また、センサーβ3による20ppmの二酸化窒素のシグナル値は、センサーβ2による同濃度のエタノールに対するそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、エタノール:17.27)。
【0152】
表3及び表9から、以下のことが分かる。
紫外線を照射するセンサーγ1(実施例)の常温における1ppm、5ppm及び20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーγ3(比較例)の常温におけるそれらより大きかった(シグナル値比100以上1000未満、1ppm二酸化窒素:186.53、5ppm二酸化窒素:275.39、20ppm二酸化窒素:260.68)。
【0153】
また、紫外線を照射するセンサーγ2(実施例)の常温における1ppm、5ppm及び20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、紫外線を照射しないセンサーγ3(比較例)の常温におけるそれられより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、1ppm二酸化窒素:11.53、5ppm二酸化窒素:13.24、20ppm二酸化窒素:9.55)。
【0154】
これらの結果から、以下のことが分かる。
(1)実施例(室温)のセンサーの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、比較例(室温)のセンサーのそれよりも大きかった。更に、応答値のガス濃度依存性値は、比較例(室温)のセンサーのそれよりも大きかった。即ち、光照射によって、常温における二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値を増大することができた。
(2)360nmの光を照射した実施例(室温)のセンサーのアンモニアに対するシグナル値の絶対値は360nmの光を照射した比較例(室温)のセンサーのそれよりも大きかった。更に、応答値のガス濃度依存性値は比較例(室温)のセンサーのそれよりも大きかった。即ち、360nmの光を照射することにより、常温におけるアンモニアに対するシグナル値の絶対値を増大することができた。
(3)275nmの光を照射した実施例(室温)のセンサーのエタノールに対するシグナル値の絶対値は275nmの光を照射した比較例(室温)のセンサーのそれよりも大きかった。更に、応答値のガス濃度依存性値は比較例(室温)のセンサーのそれよりも大きかった。即ち、275nmの光を照射することにより、常温におけるエタノールに対するシグナル値の絶対値を増大することができた。
【0155】
また、センサーα1、α2、α3、β1、β2、β3、γ1、γ2及びγ3において、20ppmの二酸化窒素に対する抵抗値変化を示すグラフである
図15から、以下のことが分かる。
センサーα1(実施例)の常温における90%応答時間は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより短縮された(25%以上50%、1-α1/α3:40%)。
【0156】
センサーα1(実施例)の常温における90%回復時間は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-α1/α3:75%)。
【0157】
センサーα2(実施例)の常温における90%応答時間は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより僅かに短縮された(1%以上25%未満、1-α2/α3:24%)。
【0158】
センサーα2(実施例)の常温における90%回復時間は、紫外線を照射しないセンサーα3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-α2/α3:62%)。
【0159】
センサーβ1(実施例)の常温における90%応答時間は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-β1/β3:62%)。
【0160】
センサーβ1(実施例)の常温における90%回復時間は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-β1/β3:80%)。
【0161】
センサーβ2(実施例)の常温における90%応答時間は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより短縮された(25%以上50%未満、1-β2/β3:47%)。
【0162】
センサーβ2(実施例)の常温における90%回復時間は、紫外線を照射しないセンサーβ3(比較例)の常温におけるそれより短縮された(25%以上50%未満、1-β2/β3:37%)。
【0163】
センサーγ1(実施例)の常温における90%応答時間は、紫外線を照射しないセンサーγ3(比較例)の常温におけるそれより短大きく短縮された(50%以上、1-γ2/γ3:72%)。
【0164】
センサーγ1(実施例)の常温における90%回復時間は、紫外線を照射しないセンサーγ3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-γ1/γ3:94%)。
【0165】
センサーγ2(実施例)の常温における90%応答時間は、紫外線を照射しないセンサーγ3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-γ2/γ3:90%)。
【0166】
センサーγ2(実施例)の常温における90%回復時間は、紫外線を照射しないセンサーγ3(比較例)の常温におけるそれより大きく短縮された(50%以上、1-γ2/γ3:87%)。
【0167】
以上のことから、実施例(室温)のセンサーの二酸化窒素に対する90%応答時間及び90%回復時間は、比較例(室温)のセンサーのそれよりも小さかった。即ち、光照射によって、常温における二酸化窒素に対する90%応答時間及び90%回復時間を短縮できた。
【0168】
次に、センサーα1、α2、β1、β2、γ1及びγ2を、従来、公知のセンサーα4、β4又はγ4と比較して得られた知見を示す。
センサーα1(実施例)の常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーα4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:16.93)。
【0169】
センサーα1(実施例)の常温における5ppmの二酸化窒素及びアンモニアに対するシグナル値の絶対値は、センサーα4(比較例)の300℃におけるそれらより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:26.48、アンモニア:1.14)。
【0170】
センサーα1(実施例)の常温における20ppmの二酸化窒素及びアンモニアに対するシグナル値の絶対値は、センサーα4(比較例)の300℃におけるそれらより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:19.26、アンモニア:6.66)。
【0171】
センサーα2(実施例)の常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーα4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:1.57)。
【0172】
センサーα2(実施例)の常温における5ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーα4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:3.63)。
【0173】
センサーα2(実施例)の常温における20ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーα4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:3.91)。
【0174】
センサーβ1(実施例)の常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーβ4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:25.32)。
【0175】
センサーβ1(実施例)の常温における5ppmの二酸化窒素及びアンモニアに対するシグナル値の絶対値は、センサーβ4(比較例)の300℃におけるそれらより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:12.53、アンモニア:5.23)。
【0176】
センサーβ1(実施例)の常温における20ppmの二酸化窒素及びアンモニアに対するシグナル値の絶対値は、センサーβ4(比較例)の300℃におけるそれらより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:7.18、アンモニア:60.92)。
【0177】
センサーβ2(実施例)の常温における1ppmの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーβ4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、二酸化窒素:1.56)。
【0178】
センサーγ1(実施例)の常温における二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーγ4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、1ppm二酸化窒素:37.53、5ppm二酸化窒素:33.94、20ppm二酸化窒素:74.18)。
【0179】
センサーγ2(実施例)の常温における二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、センサーγ4(比較例)の300℃におけるそれより僅かに大きかった(シグナル値比1.01以上100未満、1ppm二酸化窒素:2.57、5ppm二酸化窒素:1.63、20ppm二酸化窒素:2.72)。
【0180】
以上のことから、実施例(室温)のセンサーの二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値は、比較例(300℃)のセンサーのそれよりも大きい。更に、応答値のガス濃度依存性値は、比較例(300℃)のセンサーのそれよりも大きい。即ち、加熱せずに光照射するのみとした実施例は、300℃に加熱した比較例と比べて、二酸化窒素に対するシグナル値の絶対値の増大効果は同程度かそれ以上になる。
【0181】
これらの実施例は、常温において、上記の非特許文献1におけるものより高いセンサー応答値を示した。即ち、非特許文献1のセンサー材料のセンサー応答値は、100ppmの二酸化窒素に対して2を超えないのに対して、上記実施例では、より低い濃度の20ppmの二酸化窒素に対して、センサーα1が169.59、センサーα2が35.22、センサーβ1が307.67、センサーβ2が7.29、センサーγ1が1004.32、センサーγ2が37.74のセンサー応答値を示した(表13参照)。
【0182】
【0183】
実施例4(平均アスペクト比が7.88のナノシート型酸化スズを含むガスセンサーデバイスの製造及び評価)
90℃の蒸留水にふっ化スズ(SnF
2)(森田化学工業株式会社製)を溶解して28mMのふっ化スズ水溶液を得た。次いで、電極付きアルミナ基板をこのフッ化スズ水溶液に浸漬し、90℃で24時間保持することにより、一対の白金電極を含む全面に、ナノシート型酸化スズの集合体からなる膜(以下、「ガス感応層δ」という)を形成させ、ガスセンサー素子を得た。白金電極上におけるガス感応層δの厚さに相当するナノシート型酸化スズのサイズLは、約100nmであった。その後、得られたガスセンサー素子の裏面側を、金属半導体パッケージ30の上に載せて、白金線溶接した。次いで、ガスセンサー素子10のガス感応層15の上方に、紫外線光源20を配置し、更に、上面中央に開口部41を備える金属半導体パッケージ蓋40を付けてガスセンサーデバイス1Aを作製した(
図2及び
図3参照)。
図16は、電極付きアルミナ基板の白金電極上に製膜されたガス感応層δの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。この
図16におけるいくつかのナノシート型酸化スズを画像解析して算出したアスペクト比は、5.04~11.52であり、平均は7.88であった。