(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103087
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】水中レーダー装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/42 20060101AFI20230719BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G01S13/42
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003939
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD10
5J070AF05
5J070AG07
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】水中に存在する対象物を高い精度で探知することができる水中レーダー装置を提供する。
【解決手段】水中レーダー装置1は、送信信号を生成する送信機3と、送信信号からビーム状の電波を生成し、前記電波を発する指向性水中アンテナ5と、電波の向きを変える指向装置7と、指向性水中アンテナ5で受けた、水中の対象物11からの反射波を解析して対象物11までの距離および対象物11の方向を算定する受信機10を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の対象物を探知するための水中レーダー装置であって、
送信信号を生成する送信機と、
前記送信信号からビーム状の電波を生成し、前記電波を発する指向性水中アンテナと、
前記電波の向きを変える指向装置と、
前記指向性水中アンテナで受けた、水中の対象物からの反射波を解析して前記対象物までの距離および前記対象物の方向を算定する受信機を備えている、水中レーダー装置。
【請求項2】
前記送信機は、50~1000MHzの帯域内の周波数を持つビーム状の電波を前記指向性水中アンテナに生成させる前記送信信号を生成するように構成されている、請求項1に記載の水中レーダー装置。
【請求項3】
前記指向装置は、前記指向性水中アンテナの向きを変化させるように構成された機械式指向装置である、請求項1または2に記載の水中レーダー装置。
【請求項4】
前記指向性水中アンテナおよび前記指向装置は、少なくともフェイズドアレーアンテナから構成されている、請求項1または2に記載の水中レーダー装置。
【請求項5】
前記指向性水中アンテナは、水中に没している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水中レーダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の対象物を検出する水中レーダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中の対象物を検出する装置として、音波を用いるソナーが標準的に用いられている。ソナーは、水中に向けて音波を発射し、水中に存在する対象物からの反射波を捉えることで、対象物を探知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水中騒音が顕著な環境や、気泡を多く含み、音波の伝播時に音波の反射や減衰が著しく発生する場合には、ソナーの探知精度が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、水中に存在する対象物を高い精度で探知することができる水中レーダー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、水中の対象物を探知するための水中レーダー装置であって、送信信号を生成する送信機と、前記送信信号からビーム状の電波を生成し、前記電波を発する指向性水中アンテナと、前記電波の向きを変える指向装置と、前記指向性水中アンテナで受けた、水中の対象物からの反射波を解析して前記対象物までの距離および前記対象物の方向を算定する受信機を備えている、水中レーダー装置が提供される。
【0007】
一態様では、前記送信機は、50~1000MHzの帯域内の周波数を持つビーム状の電波を前記指向性水中アンテナに生成させる前記送信信号を生成するように構成されている。
一態様では、前記指向装置は、前記指向性水中アンテナの向きを変化させるように構成された機械式指向装置である。
一態様では、前記指向性水中アンテナおよび前記指向装置は、少なくともフェイズドアレーアンテナから構成されている。
一態様では、前記指向性水中アンテナは、水中に没している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水中の対象物の探知に、音波に代えて電波が使用される。電波は、音波に比べて水中環境に影響されにくい。したがって、水中レーダー装置は、水中に存在する対象物を高い精度で探知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】水中レーダー装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】水中レーダー装置の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、水中の対象物を探知する水中レーダー装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、水中レーダー装置1は、送信信号を生成する送信機3と、送信信号からビーム状の電波を生成し、電波を発する指向性水中アンテナ5と、電波の向きを変える指向装置7と、指向性水中アンテナ5で受けた、水中の対象物11からの反射波を解析する受信機10を備えている。
【0011】
本実施形態では、水中レーダー装置1は、船舶15上に設置されている。一実施形態では、水中レーダー装置1は、水中ロボット、水中ドローン、水中撮像装置などの水中装置に設置されてもよい。いずれの場合でも、指向性水中アンテナ5は、水中に没している。
【0012】
送信機3は、50~1000MHzの帯域内の周波数を持つビーム状の電波を指向性水中アンテナ5に生成させる送信信号を生成するように構成されている。したがって、指向性水中アンテナ5は、50~1000MHzの帯域内の周波数を持つビーム状の電波を水中に発する。送信信号は、指向性水中アンテナ5に電波を発生させるための電気信号である。一実施形態では、送信機3は、発振器、増幅器などを備えている。すなわち、発振器により搬送波を生成し、増幅器により搬送波を増幅させて、送信信号を生成する。
【0013】
電波は、水中で減衰しにくい50~1000MHzの帯域内の周波数を持つ電波である。特に、50~500MHzの帯域内の周波数を持つ電波は、水中で減衰しにくいという利点がある。したがって、ビーム状の電波は、水中の長い距離を伝播することができる。一実施形態では、送信機3は、50~500MHzの帯域内の周波数を持つビーム状の電波を指向性水中アンテナ5に生成させる送信信号を生成するように構成されてもよい。
【0014】
本実施形態では、指向装置7は、指向性水中アンテナ5の向きを変化させるように構成されたレーダー機械式指向装置である。指向装置7は、指向性水中アンテナ5を多方向に向けるように構成された多軸アクチュエータを含む。多軸アクチュエータ自体の構成は公知であるので、その詳細な説明を省略する。指向性水中アンテナ5は、パラボラアンテナまたはコーナリフレクターアンテナなどの指向性の高いアンテナである。
【0015】
受信機10は、水中の対象物11からの反射波を指向性水中アンテナ5で受け、反射波を解析して対象物11までの距離および対象物11の方向を算定するように構成されている。対象物11までの距離は、電波を指向性水中アンテナ5から発した時点と、対象物11からの反射波を受けた時点との時間差から算出することができる。また、対象物11の方向は、指向性水中アンテナ5から発せられたビーム状の電波の方向から特定することができる。
【0016】
上述のように構成された水中レーダー装置1の動作は次の通りである。指向装置7が指向性水中アンテナ5の向きを変えながら(例えば、指向装置7が指向性水中アンテナ5を回転させながら)、送信機3は送信信号を指向性水中アンテナ5に送信する。指向性水中アンテナ5は、送信信号からビーム状の電波(すなわち指向性の鋭い電波)を生成し、電波を水中に放出する。電波の進行方向に対象物11が存在すると、電波の少なくとも一部は水中の対象物11で反射する。反射波は指向性水中アンテナ5によって受信され、受信機10に送られる。受信機10は、反射波を解析して対象物11までの距離および対象物11の方向を算定する。
【0017】
このように、本実施形態によれば、水中の対象物11の探知に、音波に代えて電波が使用される。電波は、音波に比べて水中環境に影響されにくい。したがって、水中レーダー装置は、水中に存在する対象物11を高い精度で探知することができる。
【0018】
図2は、水中レーダー装置1の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0019】
本実施形態では、指向性水中アンテナおよび指向装置は、少なくともフェイズドアレーアンテナ17から構成されている。フェイズドアレーアンテナ17は、機械式指向装置がなくとも、電波の方向を変えることが可能に構成されている。一実施形態では、フェイズドアレーアンテナの向きを変える機械式指向装置をさらに設けてもよい。
【0020】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 水中レーダー装置
3 送信機
5 指向性水中アンテナ
7 指向装置
10 受信機
11 対象物
15 船舶
17 フェイズドアレーアンテナ