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特開2023-103125炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103125
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/42 20060101AFI20230719BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20230719BHJP
   C22B 5/12 20060101ALI20230719BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F27B7/42
F27D21/00 Z
C22B5/12
C22B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004001
(22)【出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 優子
【テーマコード(参考)】
4K001
4K056
4K061
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA16
4K001DA05
4K001GA07
4K001GA19
4K001HA01
4K001HA09
4K056AA12
4K056BA06
4K056BB01
4K056CA07
4K056FA11
4K061AA08
4K061BA04
4K061DA03
4K061GA06
(57)【要約】
【課題】反応炉内の反応を高精度に計算できる炉内反応の計算装置を提供する。
【解決手段】炉内反応の計算装置は、原料鉱石を燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う装置であって、燃焼ガスを含むガス領域のうち、ガス領域影響因子に応じて分配された第1ガス領域を流れる第1気相の物量を修正し、修正第1気相を求める第1気相の物量修正部と、第2ガス領域を流れる第2気相の物量を修正し、修正第2気相を求める第2気相の物量修正部と、第2ガス領域からベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算部と、修正第1気相と、第1ガス領域に存在する第1物質との平衡反応を計算する第1ガス領域平衡反応計算部と、修正第2気相と、第2ガス領域に存在する第2物質との平衡反応を計算する第2ガス領域平衡反応計算部と、ベッド層と流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、
前記燃焼ガスを含むガス領域のうち、前記原料鉱石を含むベッド層から生じる生成ガスを含むガス領域影響因子に応じて分配された2つのガス領域のうちの一方の第1ガス領域を流れる第1気相の物量を修正し、修正第1気相を求める第1気相の物量修正部と、
前記2つのガス領域のうちの、他方の第2ガス領域を流れる第2気相の物量を修正し、修正第2気相を求める第2気相の物量修正部と、
前記第2ガス領域から前記ベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算部と、
前記修正第1気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質のうち、前記第1ガス領域に存在する第1物質との平衡反応を計算する第1ガス領域平衡反応計算部と、
前記修正第2気相と、前記物質のうち、前記第2ガス領域に存在する第2物質との平衡反応を計算する第2ガス領域平衡反応計算部と、
前記ベッド層と前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算部と、
を備える炉内反応の計算装置。
【請求項2】
前記第1気相の前記第1物質との平衡状態に寄与する第1ガス反応量を計算して、前記第1気相の平衡反応に寄与する第1ガス反応分を求める第1ガス反応量計算部と、
前記第1物質の前記第1気相との平衡状態に寄与する第1物質反応量を計算して、前記第1物質の平衡反応に寄与する第1物質反応分を求める第1物質反応量計算部と、
を備える請求項1に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項3】
前記第1ガス反応量計算部で生じる前記第1ガス反応分以外の第1ガス未反応分と、前記第1ガス領域平衡反応計算部で前記第1ガス反応分と前記第1物質反応量計算部で生じる前記第1物質反応分とが反応することで生じる第1ガス生成分とを混合した第1混合気相の流量を少なくとも計算する第1混合気相計算部と、
前記第1物質未反応分と、前記第1ガス領域平衡反応計算部で前記第1ガス反応分と前記第1物質反応分が反応することで生じる第1物質生成分とを混合した第1混合物質の流量を少なくとも計算する第1混合物質計算部と、
を備える請求項2に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項4】
前記第2気相の前記第2物質との平衡状態に寄与する第2ガス反応量を計算して、前記第2気相の平衡反応に寄与する第2ガス反応分を求める第2ガス反応量計算部と、
前記第2物質の前記第2気相との平衡状態に寄与する第2物質反応量を計算して、前記第2物質の平衡反応に寄与する第2物質反応分を求める第2物質反応量計算部と、
を備える請求項1~3の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項5】
前記第2ガス反応量計算部で生じる前記第2ガス反応分以外の第2ガス未反応分と、前記第2ガス領域平衡反応計算部で前記第2ガス反応分と前記第2物質反応量計算部で生じる前記第2物質反応分とが反応することで生じる第2ガス生成分とを混合した第2混合気相の流量を少なくとも計算する第2混合気相計算部と、
前記第2物質未反応分と、前記第2ガス領域平衡反応計算部で前記第2ガス反応分と前記第2物質反応分が反応することで生じる第2物質生成分とを混合した第2混合物質の流量を少なくとも計算する第2混合物質計算部と、
を備える請求項4に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項6】
前記第1ガス領域平衡反応計算部において前記第1物質の平衡反応後に生じる第1物質生成分と、前記第1物質の未反応分とを含む第1混合物質に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第4物質の前記第2ガス領域への移動量と、前記第2ガス領域平衡反応計算部において前記第2物質の平衡反応後に生じる第2物質生成分と、前記第2物質の未反応分とを含む第2混合物質に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第3物質の前記第1混合物質への移動量とを考慮して、前記第1混合物質の物量を修正する第1混合物質物量修正部を備える請求項1~5の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項7】
前記流入ガスを第1流入ガスと第2流入ガスに分配する流入ガス分配部を備え、
前記ベッド層平衡反応計算部は、
前記ベッド層のうち、前記ベッド層内に含まれる固体成分及び液体成分の偏析及び濃度に応じて分配された2種類の分配ベッド層のうちの一方の第1ベッド層と、前記第1流入ガスとの平衡反応を計算する第1ベッド層平衡反応計算部と、
2種類の前記分配ベッド層のうちの他方の第2ベッド層と、前記第2流入ガスとの平衡反応を計算する第2ベッド層平衡反応計算部と、
を有する請求項1~6の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項8】
前記第1ベッド層の前記第1流入ガスとの平衡状態に寄与する第1ベッド層反応量を計算して、前記第1ベッド層の平衡反応に寄与する第1ベッド層反応分を求める第1ベッド層反応量計算部と、
前記第1流入ガスの前記第1ベッド層との平衡状態に寄与するガス反応量を計算して、前記第1流入ガスの平衡反応に寄与する第1流入ガス反応分を求める第1流入ガス反応量計算部と、
を備える請求項7に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項9】
前記第1ベッド層反応量計算部で生じる前記第1ベッド層反応分以外の第1ベッド層未反応分と、前記第1ベッド層平衡反応計算部で前記第1ベッド層反応分と前記第1流入ガス反応分とが反応することで生じる第1ベッド層生成分とを混合した第1混合ベッド層の流量を少なくとも計算する第1混合ベッド層計算部と、
前記第1流入ガス反応量計算部で生じる前記第1流入ガス反応分以外の第1流入ガス未反応分と、前記第1ベッド層平衡反応計算部で前記第1ベッド層反応分と前記第1流入ガス反応分が反応することで生じる第1流入ガス生成分とを混合した第1混合流入ガスの流量を少なくとも計算する第1混合流入ガス算出部と、
を備える請求項8に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項10】
前記第2ベッド層の前記第2流入ガスとの平衡状態に寄与する第2ベッド層反応量を計算して、前記第2ベッド層の平衡反応に寄与する第2ベッド層反応分を求める第2ベッド層反応量計算部と、
前記第2流入ガスの前記第2ベッド層との平衡状態に寄与するガス反応量を計算して、前記第2流入ガスの平衡反応に寄与する第2流入ガス反応分を求める第2流入ガス反応量計算部と、
を備える請求項7~9の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項11】
前記第2ベッド層反応量計算部で生じる前記第2ベッド層反応分以外の第2ベッド層未反応分と、前記第2ベッド層平衡反応計算部で前記第2ベッド層反応分と前記第2流入ガス反応分とが反応することで生じる第2ベッド層生成分とを混合した第2混合ベッド層の流量を少なくとも計算する第2混合ベッド層計算部と、
前記第2流入ガス反応量計算部で生じる前記第2流入ガス反応分以外の第2流入ガス未反応分と、前記第2ベッド層平衡反応計算部で前記第2ベッド層反応分と前記第2流入ガス反応分が反応することで生じる第2流入ガス生成分とを混合した第2混合流入ガスの流量を少なくとも計算する第2混合流入ガス算出部と、
を備える請求項10に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項12】
前記第1ベッド層内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第7物質の前記第2ガス領域への移動量と、前記第2ガス領域平衡反応計算部において前記第2物質の平衡反応後に生じる第2物質生成分と、前記第2物質の未反応分とを含む第2混合物質に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第8物質の前記第1ベッド層への移動量を考慮して、前記第1ベッド層の物量を修正する第1ベッド層予備物量修正部を備える請求項7~11の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項13】
前記第2ベッド層内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第9物質の前記第2ガス領域への移動量を考慮して、前記第2ベッド層の物量を修正する第2ベッド層予備物量修正部を備える請求項7~12の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項14】
前記第1ベッド層平衡反応計算部で前記第1ベッド層の平衡反応に寄与する第1ベッド層反応分と前記第1流入ガスとが反応することで生じる第1流入ガス生成分と、前記第2ベッド層平衡反応計算部で前記第2ベッド層の平衡反応に寄与する第2ベッド層反応分と前記第2流入ガスとが反応することで生じる第2流入ガス生成分とを混合する流入ガス合算部を備える請求項7~13の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項15】
前記流入ガス合算部で前記第1流入ガス生成分と前記第2流入ガス生成分が混合することで生じた混合流入ガスと、前記第2ガス領域平衡反応計算部で前記第2気相と前記第2物質とが反応することで生じる第2ガス生成分とを混合するガス量合算部を備える請求項14に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項16】
前記第2ガス領域平衡反応計算部において前記第2物質の平衡反応後に生じる第2物質生成分と、前記第2物質の未反応分とを含む第2混合物質に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第8物質の前記ベッド層への移動量と、前記ベッド層内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第7物質の前記第2混合物質への移動量と、前記第2ベッド層内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第9物質の前記第2ガス領域への移動量とを考慮して、前記第2混合物質の物量を修正し、第2修正混合物質を算出する第2混合物質1次物量修正部を備える請求項7~15の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項17】
前記第2混合物質1次物量修正部で生じた前記第2修正混合物質に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第3物質の前記第1ガス領域への移動量と、前記第1ガス領域平衡反応計算部において前記第1物質の平衡反応後に生じる第1物質生成分と、前記第1物質の未反応分とを含む第1混合物質に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第4物質の前記第2修正混合物質への移動量とを考慮して、前記第2修正混合物質の物量を修正する第2混合物質2次物量修正部を備える請求項16に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項18】
前記ガス領域を、前記ガス領域影響因子に応じて予め2種類の前記ガス領域に分配するガス領域分配部を備える請求項1~17の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項19】
前記第1物質を、前記第1物質内に含まれるガス領域影響因子に応じて予め2種類の前記第1物質に分配する第1物質分配部を備える請求項1~18の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項20】
前記原料鉱石の移動の途中に投入された、添加気相及び添加ベッド層の少なくとも一方を含む燃焼用材料を前記添加気相と前記添加ベッド層とに質量流量で分配する分配部を備え、
前記第1ガス領域平衡反応計算部は、前記第1気相と前記添加気相とを含む第1混合気相と前記第1物質との平衡反応を計算し、
前記第2ガス領域平衡反応計算部は、前記第1気相と前記添加気相とを含む第2混合気相と前記第2物質との平衡反応を計算し、
前記ベッド層平衡反応計算部は、前記ベッド層と前記添加ベッド層とを含む第1混合ベッド層と前記流入ガスとの平衡反応を計算する請求項1~19の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項21】
前記反応炉内をその長軸方向に沿って複数の領域に分割すると仮定した時、
前記複数の領域に、前記原料鉱石の流れ又は前記燃焼ガスの流れに沿って繰り返し行い、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し行う請求項1~20の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
【請求項22】
反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算方法であって、
前記燃焼ガスを含むガス領域のうち、前記原料鉱石を含むベッド層から生じる生成ガスを含むガス領域影響因子に応じて分配された2つのガス領域のうちの一方の第1ガス領域を流れる第1気相の物量を修正し、修正第1気相を求める第1気相の物量修正工程と、
前記2つのガス領域のうちの、他方の第2ガス領域を流れる第2気相の物量を修正し、修正第2気相を求める第2気相の物量修正工程と、
前記第2ガス領域から前記ベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算工程と、
前記修正第1気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質のうち、前記第1ガス領域に存在する第1物質との平衡反応を計算する第1ガス領域平衡反応計算工程と、
前記修正第2気相と、前記物質のうち、前記第2ガス領域に存在する第2物質との平衡反応を計算する第2ガス領域平衡反応計算工程と、
前記ベッド層と前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算工程と、
を含む炉内反応の計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化鉱石の一種であるリモナイト鉱石やサプロライト鉱石等のラテライト鉱石(ニッケル酸化鉱石)の製錬方法として、ロータリーキルンや移動炉床炉等を使用して、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルを製造する乾式製錬方法が知られている。
【0003】
ロータリーキルンによる乾式製錬方法では、原料鉱石をロータリードライヤーにて乾燥させ、付着水分を例えば15%~25%とした後、付着水が低減された乾燥鉱石をロータリーキルンの装入端から投入する。その後、ロータリーキルンの装入端から供給する石炭の燃焼熱や、ロータリーキルンの排出端に設けられた微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナーにより、乾燥鉱石を加熱して、乾燥鉱石を乾燥させると共に焼成を行う。
【0004】
このようなロータリーキルンによる乾式製錬方法として、例えば、装入端より供給する石炭の燃焼熱やバーナーで微粉炭や重油等が燃焼して生じる燃焼熱の他に、ロータリーキルンの途中から投入した石炭の燃焼によって生じる燃焼熱を乾燥鉱石の乾燥及び部分還元に必要な熱を与える方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、ロータリーキルンの途中に設けたスクープフィーダから石炭をロータリーキルン内に投入して、ロータリーキルンの装入端から装入したニッケル酸化鉱の乾燥鉱石を、バーナーで化石燃料の燃焼により生じる燃焼熱で焼成すると共に部分的な還元処理を施すロータリーキルンの操業方法が開示されている。このロータリーキルンの操業方法では、スクープフィーダから投入された石炭は熱分解することで揮発分と固定炭素になり、揮発分は炉内の燃焼ガスと共に装入端より排出され、固定炭素は、乾燥鉱石が乾燥・還元処理されて産出された焼鉱と共に排出端から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5967616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載のロータリーキルンの操業方法のような周知の操業方法では、ロータリーキルン内を1種類のガス相として扱っており、ベッド層の影響を受けて複数の異なる種類のガス相が形成されることについて検討されていない。ロータリーキルン内に供給されるガス相は、原料鉱石から生じる生成ガスが混入するため、ベッド層の影響の受けやすい層と、ベッド層の影響の受け難い層等、ガス成分が異なる2種以上の層が生じる。そのため、ロータリーキルン等の反応炉内の原料鉱石等の挙動をシミュレーションする際、原料鉱石から生じる生成ガス等に起因してガス相内にガス成分が異なる2種以上の相が生じることを考慮して、炉内反応を正確に計算する必要がある。
【0008】
本発明の一態様は、反応炉内の反応を高精度に計算できる炉内反応の計算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る炉内反応の計算装置の一態様は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、
前記燃焼ガスを含むガス領域のうち、前記原料鉱石を含むベッド層から生じる生成ガスを含むガス領域影響因子に応じて分配された2つのガス領域のうちの一方の第1ガス領域を流れる第1気相の物量を修正し、修正第1気相を求める第1気相の物量修正部と、
前記2つのガス領域のうちの、他方の第2ガス領域を流れる第2気相の物量を修正し、修正第2気相を求める第2気相の物量修正部と、
前記第2ガス領域から前記ベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算部と、
前記修正第1気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質のうち、前記第1ガス領域に存在する第1物質との平衡反応を計算する第1ガス領域平衡反応計算部と、
前記修正第2気相と、前記物質のうち、前記第2ガス領域に存在する第2物質との平衡反応を計算する第2ガス領域平衡反応計算部と、
前記ベッド層と前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算部と、
を備える。
【0010】
本発明に係る炉内反応の計算方法の一態様は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算方法であって、
前記燃焼ガスを含むガス領域のうち、前記原料鉱石を含むベッド層から生じる生成ガスを含むガス領域影響因子に応じて分配された2つのガス領域のうちの一方の第1ガス領域を流れる第1気相の物量を修正し、修正第1気相を求める第1気相の物量修正工程と、
前記2つのガス領域のうちの、他方の第2ガス領域を流れる第2気相の物量を修正し、修正第2気相を求める第2気相の物量修正工程と、
前記第2ガス領域から前記ベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算工程と、
前記修正第1気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質のうち、前記第1ガス領域に存在する第1物質との平衡反応を計算する第1ガス領域平衡反応計算工程と、
前記修正第2気相と、前記物質のうち、前記第2ガス領域に存在する第2物質との平衡反応を計算する第2ガス領域平衡反応計算工程と、
前記ベッド層と前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る炉内反応の計算装置の一態様は、反応炉内の反応を高精度に計算できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。
図2】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置の機能を示すブロック図である。
図3】ロータリーキルン内のベッド層の偏析の状態を示す説明図である。
図4】ロータリーキルン内の長軸方向におけるベッド層の偏析の状態を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算方法を説明するフローチャートである。
図6図5の第1ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS22)の動作を示すフローチャートである。
図7図5の第2ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS23)の動作を示すフローチャートである。
図8図5の第1ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS24)の動作を示すフローチャートである。
図9図5の第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS25)の動作を示すフローチャートである。
図10】炉内反応の計算装置のハードウェア構成図である。
図11】ロータリーキルン内の燃焼ガスと原料鉱石との流れを示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る炉内反応の計算方法をロータリーキルンの全体に適用する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0014】
本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置について説明するに当たり、本実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの構成について説明する。
【0015】
<ロータリーキルン>
図1は、本実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。図1に示すように、ロータリーキルン1は、回転自在で略円筒形状のキルン本体11と、キルン本体11の途中に設けられる燃焼用材料供給管12とを有する。
【0016】
キルン本体11は、円筒形状の中空構造物からなる窯であり、キルン本体11は、厚さ15~30mmの炭素鋼からなる。キルン本体11は、その内周側の壁面に、耐熱性を高めるための耐火物を備えることが好ましい。
【0017】
キルン本体11の大きさとしては、例えば、内径が4.5m~5.5m、長軸方向の長さ(全長)が100m~110mの大きさのものを用いることが好ましい。
【0018】
キルン本体11は、その一端側(図1中の左側)の開口端部11aが、ロータリーキルン装入端(以下、単に「装入端」ともいう。)14Aに挿入して閉じられると共に、他端側(図1中の右側)の開口端部11bが、ロータリーキルン排出端(以下、「排出端」ともいう。)14Bに挿入して閉じられている。キルン本体11は、装入端14Aから排出端14Bに向かってわずかに傾斜した状態で配設されており、軸回りに回転自在に支持されている。
【0019】
装入端14Aには、原料鉱石をキルン本体11内に導入する原料供給管15が貫設されている。排出端14Bには、開口端部11bを貫通してキルン本体11内に導入されるバーナー16が設けられる。
【0020】
原料鉱石は、ニッケル酸化鉱石(酸化ニッケル鉱石)等を用いることができる。原料鉱石は、例えば、ニッケル酸化鉱石等をドライヤー(ロータリードライヤー)により予備乾燥して、付着水分の一部を除去した乾燥鉱石等を用いることができる。乾燥鉱石中の水分量としては、15質量%~25質量%程度である。
【0021】
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルの製錬においては、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。ガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱石での換算で、Ni品位が2.1質量%~2.5質量%、Fe品位が11質量%~23質量%、MgO品位が20質量%~28質量%、SiO2品位が29質量%~39質量%、CaO品位が0.5質量%未満であり、灼熱減量が10質量%~15質量%である。
【0022】
バーナー16は、微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナー等を用いることができる。バーナー16は、微粉炭又は微粉炭及び重油等を含む燃料を燃焼して、ロータリーキルン1内に燃焼熱を発生させる。
【0023】
燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面の途中に設けられ、キルン本体11内に燃焼用材料を供給できる。燃焼用材料は、揮発分等の主に気相に入る物質及び固定炭素等の主にベッド層に入る固体物質の少なくとも一方を含み、例えば、石炭等の炭材を用いることができる。
【0024】
揮発分は、炭化水素化合物、硫黄及びハロゲン等の揮発物質等である。
【0025】
固定炭素は、石炭から水分・揮発分が抜けた後の、熱分解後残渣であるチャー粒子(主に固定炭素及び灰分)のうち、灰分を除いた主に炭素から構成される燃焼分である。
【0026】
なお、図1では、燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面に1つだけ設けられているが、キルン本体11の外周面に、キルン本体11の軸方向又は軸回りに沿って複数設けてもよい。
【0027】
燃焼用材料は、単一品種の炭材ではなく、複数の異なる品種の炭材等を混合して用いることが多く、さらに投入する炭材の粒子径の大きさも分布を持つことが多い。なお、粒子径とは、有効径による体積平均粒径をいい、粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法又は分級法等によって測定される。レーザ回折・散乱法を用いる場合、レーザ回折・散乱法により測定した体積基準の粒度分布において小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒子径(D50)を平均粒子径として用いることができる。
【0028】
原料鉱石は、装入端14Aに設けた原料供給管15からキルン本体11内に装入され、燃焼用材料は燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される。排出端14B側からは、排出端14Bに設置したバーナー16により微粉炭や重油等を燃焼させることにより発生した高温の燃焼ガスが、排出端14B側から装入端14A側に向けて、即ち原料鉱石の流れと反対の方向に吹き込まれる。
【0029】
キルン本体11内では、原料鉱石は、装入端14Aから装入され、キルン本体11が所定の速度で回転することで、装入端14Aから原料供給管15を通してキルン本体11内に装入された原料鉱石を一端側である開口端部11a側から他端側である排出端14Bに向かって搬送する。このとき、原料鉱石は、キルン本体11内を移動しながら、排出端14Bから装入端14A側に向かって流れる燃焼ガスと向流接触し、バーナー16で微粉炭や重油等の燃料を燃焼させることにより発生させた高温の燃焼ガスの燃焼熱及び火炎によって加熱される。また、燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される燃焼用材料が、キルン本体11内の燃焼ガスにより燃焼する。原料鉱石は、燃焼用材料供給管12から投入された燃焼用材料の燃焼により生じさせた燃焼熱によっても加熱される。そのため、原料鉱石は、キルン本体11の回転に連れてキルン本体11の装入端14Aから排出端14Bに向けて移動しながら、バーナー16で燃料が燃焼することで生じた燃焼ガスの燃焼熱及び火炎と、燃焼用材料が燃焼することで生じた燃焼熱とにより加熱され、徐々に温度を上げて行く。
【0030】
キルン本体11内では、原料鉱石と燃焼ガスとの間で、原料鉱石や燃焼用材料に含まれる水分の蒸発、燃焼用材料に含まれる揮発分の揮発、凝集と、バーナー燃料及び燃焼用材料に含まれる灰分の飛散、落下等により、物質の移動が生じる。ロータリーキルン1の途中から供給される燃焼用材料が熱分解することで生じる水分や揮発分は装入端14A側に燃焼ガスと共に移動し、チャー粒子は排出端14Bに原料鉱石と共に移動する。
【0031】
キルン本体11内の原料鉱石が排出端14Bに到達するまでに、原料鉱石は、その原料鉱石中に含まれる水分がほぼ完全に除去されて焼成すると共に部分還元されて、焼鉱となる。焼鉱は、排出端14Bから排出される。
【0032】
焼鉱は、例えば、温度800~900℃、粒子径が10mm~100mm程度の大きさからなる。
【0033】
排出端14Bの排出口には、粒子径10mm~100mm程度の焼鉱と、ロータリーキルン1内に発生した焼結塊(粒子径100mm~500mm程度)とを分離するためのロストル(篩分装置)17が設けられている。ロストル17は、例えば、目開き100mm程度の鉄製の格子で構成されている。排出端14Bから排出された焼鉱は、ロストル17を通過した後、焼鉱排出用シュート18を通って、次工程に搬送される。
【0034】
<炉内反応の計算装置>
次に、本実施形態に係る炉内反応の計算装置について説明する。図2は、本実施形態に係る炉内反応の計算装置の機能を示すブロック図である。なお、図2では、炉内反応の計算装置が、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の、燃焼用材料供給管12から燃焼用材料が供給される領域Aにおける単位操作モデルであるとして説明する。また、図2では、領域Aから見て燃焼ガスが吹き込まれる側の隣接領域を領域(A+1)とし、原料鉱石が装入される側の隣接領域を領域(A-1)とする。
【0035】
以下の説明において、ガス領域は、ロータリーキルン1内のガス及びダストを含む気相が流れる領域を意味し、ベッド層は、原料鉱石が移動する領域を意味する。
【0036】
ガス領域は、ロータリーキルン1内の気相が流れる領域であり、ベッド層から生じる生成ガス等を含むガス領域影響因子に応じて区分した各領域で所定の物量割合となるように、第1ガス領域と第2ガス領域に分配される。
ガス領域影響因子とは、原料供給管15、燃焼用材料供給管12等の燃料供給設備位置、バーナー16等のガス供給設備位置、ベッド層で生じた生成ガス、ダスト、炉内ガス濃度等をいう。
第1ガス領域は、ガス領域影響因子の影響が少ないガス領域をいう。
第2ガス領域は、ガス領域影響因子の影響が大きいガス領域をいう。
【0037】
ロータリーキルン1内に供給される気相は、気相G1として記載する。
「気相G1」とは、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する燃焼ガスである。燃焼ガスは、揮発分、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等の平衡反応に寄与するガスを含み、後述する第1ガス領域平衡反応計算部214-1及び第2ガス領域平衡反応計算部214-2において、反応に寄与しない不活性な物質(例えば、窒素等)等を含んでもよい。
【0038】
領域A内に存在する気相は、第1気相G11、添加分含有第1気相G12、修正第1気相G13、第1混合気相G14、第2気相G21、修正第2気相G22A、調整第2気相G22B、第2混合気相G23又は第2合算気相G24として記載する。領域A内の各気相は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1気相G11」とは、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する気相G1のうち、第1ガス領域内を流れる気相をいう。第1気相G11は、気相G1と同様、後述する第1ガス領域平衡反応計算部214-1において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「添加分含有第1気相G12」とは、燃焼用材料から分配された添加気相と第1気相とが合算された気相である。
「第1拡散ガスG121」は、第1ガス領域に存在する添加分含有第1気相G12に含まれる気相のうち、対流や拡散によって第2ガス領域へ移動するガスである。
「第2拡散ガスG122」は、第2ガス領域に存在する第2気相G21に含まれる気相のうち、対流や拡散によって第1ガス領域へ移動するガスである。
「修正第1気相G13」とは、添加分含有第1気相G12内に含まれるガスの第2ガス領域への移動量と、第2ガス領域に存在する第2気相G21に含まれるガスの添加分含有第1気相G12への移動量を考慮して、添加分含有第1気相G12の物量を修正した第1気相である。
「第1混合気相G14」とは、後述する第1混合気相計算部216-1で生じる第1気相である。
「第2気相G21」とは、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する気相G1のうち、第2ガス領域内を通過する気相をいう。第2気相G21は、気相G1と同様、後述する第2ガス領域平衡反応計算部214-2において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「修正第2気相G22A」とは、第1ガス領域に存在する添加分含有第1気相G12内に含まれる前記第2物質の第2気相G21への移動量と、第2気相G21に含まれる前記第3物質の添加分含有第1気相G12への移動量を考慮して、添加分含有第1気相G12の物量を修正した第2気相である。
「調整第2気相G22B」とは、後述するガス混合量計算部204において修正第2気相G22Aからベッド層に移動した流入ガスの流量を除去した第2気相である。
「第2混合気相G23」とは、後述する第2混合気相計算部216-2で生じる第2気相である。
「第2合算気相G24」とは、後述するガス量合算部222で生じる気相である。
【0039】
ロータリーキルン1内に供給されるベッド層は、ベッド層S1として記載する。
「ベッド層S1」とは、キルン本体11内の装入端14Aから供給される原料鉱石である。原料鉱石は、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マグネシウム等の鉱石中化合物、固定炭素等を含む固体物質と、液体物質を含み、後述する第1ベッド層平衡反応計算部215-1及び第2ベッド層平衡反応計算部215-2において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
【0040】
領域A内に存在するベッド層は、第1ベッド層S11、添加分含有第1ベッド層S12、予備修正第1ベッド層S13A、修正第1ベッド層S13B、第1混合ベッド層S14、第2ベッド層S21、予備修正第2ベッド層S21A、修正第2ベッド層S21B又は第2混合ベッド層S22として記載する。領域A内の各ベッド層は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1ベッド層S11」とは、一方の隣接領域(領域(A-1))から領域Aに流入するベッド層S1のうち、ベッド層表面のガス領域との接触が良好な部分に存在するベッド層をいう。第1ベッド層S11は、ベッド層S1と同様、後述する第1ベッド層平衡反応計算部215-1において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「添加分含有第1ベッド層S12」とは、燃焼用材料から分配された添加ベッド層と第1ベッド層S11とが合算されたベッド層である。
「予備修正第1ベッド層S13A」とは、添加分含有第1ベッド層S12内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第7物質のガス領域への移動量と、ガス領域に存在する、後述する第2混合物質1次物量修正部223で第2混合物質M22に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第8物質の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を考慮して、添加分含有第1ベッド層S12の物量を修正した第1ベッド層である。
「修正第1ベッド層S13B」とは、予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第6物質の予備修正第2ベッド層S21Aへの移動量と、予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第5物質の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を考慮して、予備修正第1ベッド層S13Aの物量を修正した第1ベッド層である。
「第1混合ベッド層S14」とは、後述する第1混合ベッド層計算部218-1で生じるベッド層である。
「第2ベッド層S21」とは、一方の隣接する領域(領域A-1)から領域Aに流入するベッド層S1のうち、第1ベッド層S11以外のベッド層であり、ベッド層S1のうち、ベッド層内部のガス領域の影響を受け難い部分に存在するベッド層をいう。第2ベッド層S21は、ベッド層S1と同様、後述する第2ベッド層平衡反応計算部215-2において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「予備修正第2ベッド層S21A」とは、第2ベッド層S21に含まれる、固体成分又は液体成分の少なくとも一方を含む第9物質のガス領域への移動量を除して第2ベッド層S21の物量を修正したものである。
「修正第2ベッド層S21B」とは、予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる第6物質の予備修正第2ベッド層S21Aへの移動量と、予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる第5物質の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を考慮して、予備修正第2ベッド層S21Aの物量を修正した第2ベッド層である。
「第2混合ベッド層S22」とは、後述する第2混合ベッド層計算部218-2で生じるベッド層である。
【0041】
また、領域A内のガス領域からベッド層に流入するガスは、流入ガスG221、第1流入ガスG221-1、第2流入ガスG221-2、第1混合流入ガスG222A、第2混合流入ガスG222B又は混合流入ガスG223として記載する。以下の説明において、領域A内の各流入ガスは、それぞれ、以下の通り定義する。
「流入ガスG221」は、領域A内のガス領域からベッド層に流入するガスである。
「第1流入ガスG221-1」は、ベッド層に流入した流入ガスG221のうち、第1ベッド層S11に流入する流入ガスである。
「第2流入ガスG221-2」は、ベッド層に流入した流入ガスG221のうち、第2ベッド層S21に流入する流入ガスである。
「第1混合流入ガスG222A」は、第1ベッド層未反応分と、第1ベッド層平衡反応計算部215-1で生じた第1流入ガス生成分とを混合したガスである。
「第2混合流入ガスG222B」は、修正第2ベッド層未反応分と、第2ベッド層平衡反応計算部215-2で生じる第2流入ガス生成分とを混合したガスである。
「混合流入ガスG223」は、第1混合流入ガスG222Aと第2混合流入ガスG222Bとを合算したガスである。
【0042】
ロータリーキルン1内に供給される物質は、物質M1として記載する。
「物質M1」とは、ガス領域に存在する、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものである。
【0043】
領域A内に存在する物質は、第1物質M11、第2物質M21、第3物質M3、第4物質M4、第5物質M5、第6物質M6、第7物質M7、第8物質M8、第9物質M9、第1混合物質M12、第1修正混合物質M13、第2混合物質M22、第2修正混合物質M23又は第2修正混合物質M24として記載する。以下の説明において、領域A内の各物質は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1物質M11」は、ガス領域に流入した物質M1のうち、第1ガス領域に流入する物質である。
「第2物質M21」は、ガス領域に流入した物質M1のうち、第2ガス領域に流入する物質である。
「第3物質M3」は、第2ガス領域に存在する第2修正混合物質M23に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む物質である。
「第4物質M4」は、第1ガス領域に存在する第1混合物質M12に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む物質である。
「第5物質M5」は、第2ベッド層に存在する第2混合ベッド層S21Aに含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものである。
「第6物質M6」は、第1ベッド層に存在する予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものである。
「第7物質M7」は、第1ベッド層に存在する添加分含有第1ベッド層S12に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものである。
「第8物質M8」は、第2ガス領域に存在する第2混合物質M22に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む物質である。
「第9物質M9」は、第2ベッド層に存在する第2ベッド層S21に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含むものである。
「第1混合物質M12」は、後述する第1混合物質計算部217-1で生じる第1物質M1の混合物である。
「第1修正混合物質M13」は、後述する第1混合物質物量修正部220で生じる第1物質M1の混合物である。
「第2混合物質M22」は、後述する第2混合物質計算部217-2において、第2物質未反応分Mr21と第2物質生成分MP21とを混合した第2混合物質M21である。
「第2修正混合物質M23」は、後述する第2混合物質1次物量修正部223において、第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の移動量を除して、第1ベッド層から移動する第7物質M7と第2ベッド層から移動する第9物質M9の移動量を第2混合物質M22に加えて、第2混合物質M22の物量を修正したものである。
「第2修正混合物質M24」は、後述する第2混合物質2次物量修正部224において、第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の移動量を第2修正混合物質M23に加えると共に、第2修正混合物質M23から第1ガス領域に移動する第3物質M3を除して、第2修正混合物質M23の物量を修正したものである。
【0044】
また、領域A内で算出される、反応分、未反応分及び生成分は、第1ガス反応分GR1、第1ガス未反応分Gr1、第1ガス生成分GP1、第2ガス反応分GR2、第2ガス未反応分Gr2、第2ガス生成分GP2、第1物質反応分MR11、第1物質未反応分Mr11、第1物質生成分MP11、第2物質反応分MR21、第2物質未反応分Mr21、第2物質生成分MP21、第1流入ガス反応分GR221、第1流入ガス未反応分Gr221、第1流入ガス生成分GP221、第2流入ガス反応分GR222、第2流入ガス未反応分Gr222、第2流入ガス生成分GP222、第1ベッド層反応分SR1、第1ベッド層未反応分Sr1、第1ベッド層生成分SP1、第2ベッド層反応分SR2、第2ベッド層未反応分Sr2又は第2ベッド層生成分SP2と記載する。これらは、図2に示す炉内反応の計算装置を構成する各部の何れかで算出される。
【0045】
図2に示す炉内反応の計算装置の構成について説明する。図2に示すように、炉内反応の計算装置20は、燃焼用材料の分配部(分配部)201、第1気相の物量修正部202、第2気相の物量修正部203、ガス混合量計算部204、第1ベッド層予備物量修正部205、第1ベッド層物量修正部206、第2ベッド層予備物量修正部207、第2ベッド層物量修正部208、流入ガス分配部209、第1ガス反応量計算部210-1、第1物質反応量計算部211-1、第2ガス反応量計算部210-2、第2物質反応量計算部211-2、第1ベッド層反応量計算部212-1、第2ベッド層反応量計算部212-2、第1流入ガス反応量計算部213-1、第2流入ガス反応量計算部213-2、第1ガス領域平衡反応計算部214-1、第2ガス領域平衡反応計算部214-2、ベッド層平衡反応計算部215、第1混合気相計算部216-1、第2混合気相計算部216-2、第1混合物質計算部217-1、第2混合物質計算部217-2、第1混合ベッド層計算部218-1、第2混合ベッド層計算部218-2、第1混合流入ガス算出部219-1、第2混合流入ガス算出部219-2、第1混合物質物量修正部220、流入ガス合算部221、ガス量合算部222、第2混合物質1次物量修正部223及び第2混合物質2次物量修正部224を備える。
【0046】
本実施形態では、ベッド層平衡反応計算部215は、2つのベッド層(第1ベッド層平衡反応計算部215-1、第2ベッド層平衡反応計算部215-2)で構成されている。
【0047】
また、炉内反応の計算装置20は、ガス相G1を、ベッド層から生じる生成ガスを含むガス領域影響因子に応じて、予め2種類の分配ガス相(第1ガス相G11、第2ガス相G21)に分配するガス領域分配部231を備えることができる。本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、ガス領域分配部231で生じる第1ガス相G11を第1気相の物量修正部202に供給し、ガス領域分配部231で生じる第2ガス相G21を第2気相の物量修正部203に供給する。
【0048】
炉内反応の計算装置20は、第1物質M1を、予め2種類の第1物質(第1物質M11、第2物質M21)に分配する第1物質分配部232を備えることができる。本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、第1物質分配部232で生じる第1物質M11を第1物質反応量計算部211-1に供給し、第1物質分配部232で生じる第2物質M21を第2物質反応量計算部211-2に供給する。
【0049】
炉内反応の計算装置20は、ベッド層S1を、ベッド層S1内に含まれる固体物質及び液体物質の反応速度起因条件に応じて、予め2種類の分配ベッド層(第1ベッド層S11、第2ベッド層S21)に分配するベッド層分配部233を備えることができる。本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、ベッド層分配部233で生じる第1ベッド層S11を第1ベッド層予備物量修正部205に供給し、ベッド層分配部233で生じる第2ベッド層S21を第2ベッド層予備物量修正部207に供給する。
【0050】
ロータリーキルン1では、原料の熱分解や反応によって、ベッド層から、水蒸気、ガス等の反応後ガス(生成ガス)が生じる。例えば、ニッケル酸化鉱の乾燥鉱石を焼成すると共に部分的な還元処理を施すロータリーキルンにおいては、乾燥鉱石に残存する付着水や結晶水の脱水によるベッド層からの水蒸気、又はロータリーキルン途中から投入した石炭の燃焼や鉱石の部分還元によるCO、CO2ガス等が発生する。これらの反応後ガスはベッド層からガス領域に放出されると、対流や拡散によってガス領域全体に拡散するが、ガス領域での濃度が均一になるには炉内ガスの滞留時間がある程度必要であり、通常、ロータリーキルン1内のガス領域では、ベッド層近傍と、それ以外の領域で、ガス濃度に分布が生じていることが考えられる。
【0051】
例えば、図3に示すように、ベッド層には、ガスの影響を受け難い第1ベッド層S11と、ガス領域との接触が良好な第2ベッド層S21とが生じ易く、図4に示すように、ロータリーキルン1の長手方向に沿って、第1ベッド層S11及び第2ベッド層S21が形成される。また、ガス領域も、ベッド層で生じた反応後ガス及びダスト等が飛散して、ガス領域には、生成ガス、ダスト等をそれほど含まない第1ガス相G11と、生成ガス、ダスト等を多く含む第2ガス相G21とが生じ易く、図4に示すように、ロータリーキルン1の長手方向に沿って、第1ガス相G11及び第2ガス相G21が形成されている。そのため、ガス領域の反応は、ガス相に含まれる、生成ガス、ダスト等の影響を受け易い。
【0052】
また、ベッド層の反応は、ガス組成の影響を大きく受ける。例えば、Fe-C-O系の場合及びCOガス分圧が小さい場合等では、反応生成物はFe34となるが、CO分圧が高まるにつれて、生成物はFeOやM-Feへと変化する。そのため、ロータリーキルン1の炉内反応をシミュレーションして、ロータリーキルン1内での原料の反応挙動を精度よく把握するためには、ベッド層の平衡反応計算に用いるガス濃度(ガス分圧)を、より詳細に表現する必要がある。
【0053】
ロータリーキルンのシミュレーション方法としては、大別すると、鉱石層で発生したガスは瞬時にガス領域全体に広がると仮定して、かつ長さ方向で同一位置のガス領域でのガス成分を単一濃度で取り扱う方法と、ガス相の計算を三次元熱流体計算で行って連成計算する方法とがある。前者の方法では、ベッド層近傍のガス領域での、ベッド層からの生成ガス濃度の高いガス雰囲気を表現できない。後者の方法では、膨大な計算リソースと時間が必要となる。
【0054】
炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内において、ガス領域を2つのガス領域(第1ガス領域、第2ガス領域)に分けて、第1ガス領域を流れる第1ガス相G11と、第2ガス領域を流れる第2ガス相G21との、それぞれのベッド層における平衡反応計算を行う。即ち、炉内反応の計算装置20は、ギブズエネルギー最小化法に基づく炉内反応のシミュレーションを行うに当たり、ロータリーキルン1内でガス領域内に含まれるベッド層からの反応後ガス、ダスト等を考慮する。そして、炉内反応の計算装置20は、ガス相G1のうち、反応後ガス、ダスト等を殆ど含まない第1ガス相G11と、生成ガス、ダスト等を多く含む第2ガス相G21とで、それぞれ独立に平衡反応に必要な反応量を計算する。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1ガス相G11及び第2ガス相G21内に含まれる、反応後ガス、ダスト等の影響を考慮して、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応を高精度に計算できる。炉内反応の計算装置20は、ベッド層近傍のガス領域での、ベッド層からの生成ガス濃度の高いガス雰囲気を表現可能で膨大な計算リソースを必要としないため、炉内反応の計算装置20は、大きな負担をかけることなく、炉内反応を高精度に解析できる。
【0055】
また、炉内反応の計算装置20は、ベッド層と、ベッド層内に混入した流入ガスとの平衡反応計算をギブズエネルギー最小化法に基づいて行う。これにより、ロータリーキルン1内のベッド層における平衡反応を計算できる。
【0056】
よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内のガス相がガス相内に含まれる、ベッド層からの生成ガス、ダスト等に応じて2種類の異なる反応挙動を示すことを考慮することで、ロータリーキルン1内で生じる反応を高精度に解析でき、反応の計算精度を高めることができる。したがって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の反応をより高精度に計算できる。
【0057】
図2に示すように、炉内反応の計算装置20は、領域Aのガス領域に流入する第1気相G11及び第2ガス相G21と、領域Aのベッド層に流入する第1ベッド層S11及び第2ベッド層S21との、物量、温度、圧力等を入力する。炉内反応の計算装置20は、これらの入力値を用いて、分割した各領域A内での物質移動及び反応計算を実施する。
【0058】
第1気相G11及び第2ガス相G21は、キルン本体11内の排出端14Bから供給された気相G1が排出端14Bを含む領域Nで分配され、領域Aに移動した時の物量等に応じて決定される。
【0059】
第1ベッド層S11及び第2ベッド層S21は、キルン本体11内の装入端14Aから供給されたベッド層S1が装入端14Aを含む領域1で分配され、領域Aに移動した時の物量等に応じて決定される。
【0060】
炉内反応の計算装置20は、領域A内での物質移動及び反応計算を行うに当たり、ガス領域内を流れる第2ガス相G21のうち、ベッド層へ混入するガス(流入ガスG221)の量を定義する。このガス混入量の定義方法としては、例えば、ガス総量のうちベッド層に混入する量の割合を、固定値で与える方法等がある。
【0061】
また、炉内反応の計算装置20は、ベッド層内を移動する固体物質又は液体物質の、飛散又は揮発に伴うガス領域への物質移動量と、ガス領域内を移動する固体物質又は液体物質の、落下(沈降)又は凝集に伴うベッド層への物質移動量を定義する。この物質移動量の定義方法としては、例えば、固体物質又は液体物質の、比重、粒径等から算出される沈降速度等を基に、計算物質毎に定義する方法等がある。
【0062】
反応後に生成する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質は、それぞれのベッド層(第1ベッド層、第2ベッド層)において未反応分と合算して、隣接する次の領域のそれぞれのベッド層の入力値とする。また、それぞれのベッド層で生じる反応後ガスは、未反応ガスと合算して、さらにそれぞれのベッド層と第2ガス領域の反応後ガスと合算して、隣接するガス領域の入力値とする。
【0063】
図2に示すように、分配部201は、燃焼用材料240の種類や成分等を予め設定しておくことにより、燃焼用材料240を、燃焼用材料240に含まれる気相とベッド層とに質量流量で分配する。
【0064】
分配された気相及びベッド層は、添加気相AG11及び添加ベッド層AS11として領域A内に供給される。
【0065】
一方の隣接領域(領域(A+1))から炉内の領域Aの第1ガス領域に流入する燃焼ガスである第1気相G11と、分配部201で分配された燃焼用材料の添加気相AG11とを含む添加分含有第1気相G12が第1ガス領域内を流れる。
【0066】
第1気相の物量修正部202は、第1ガス領域を流れる添加分含有第1気相G12の物量を修正し、修正第1気相G13を計算して求める。
【0067】
第2気相の物量修正部203は、第2ガス領域を流れる第2気相G21の物量を修正し、修正第2気相G22Aを計算して算出する。
【0068】
ガス混合量計算部204は、第2ガス領域中の修正第2気相G22Aからベッド層へ移動する流入ガスG221の質量流量を計算する。
【0069】
ガス混合量計算部204は、修正第2気相G22Aから流入ガスG221を減じた気相を調整第2気相G22Bとして算出する。
【0070】
第1ベッド層予備物量修正部205は、第1ベッド層S11と添加ベッド層AS11とを混合した添加分含有第1ベッド層S12の物量を修正して予備修正第1ベッド層S13Aを算出する。
【0071】
添加分含有第1ベッド層S12の物量は、添加分含有第1ベッド層S12内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第7物質M7のガス領域に存在する第2混合物質M22への移動量と、第2混合物質M22に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を考慮して修正される。
【0072】
第1ベッド層物量修正部206は、予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第6物質M6の第2ベッド層S21への移動量と、第2ベッド層S21に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を考慮して、予備修正第1ベッド層S13Aの物量を修正し、修正第1ベッド層S13Bを算出する。
【0073】
本実施形態では、第1ベッド層物量修正部206は、第6物質M6の第2ベッド層S21への移動量を除して、第2ベッド層S21に含まれる第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を加えることで、予備修正第1ベッド層S13Aの物量を修正して、修正第1ベッド層S13Bを算出する。
【0074】
第2ベッド層予備物量修正部207は、第2ベッド層S21内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第9物質M9のガス領域に存在する第2混合物質M22への移動量を考慮して、第2ベッド層S21の物量を修正し、予備修正第2ベッド層S21Aを算出する。
【0075】
第2ベッド層物量修正部208は、予備修正第21ベッド層S13Aに含まれる第6物質M6の第2ベッド層S21への移動量と、予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量とを考慮して、予備修正第2ベッド層S21Aの物量を修正し、修正第2ベッド層S21Bを算出する。
【0076】
本実施形態では、第2ベッド層物量修正部208は、予備修正第21ベッド層S13Aに含まれる第6物質M6の第2ベッド層S21への移動量を加え、予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を除することで、第2ベッド層S21の物量を修正し、修正第2ベッド層S21Bを算出する。
【0077】
流入ガス分配部209は、ガス混合量計算部204で算出された流入ガスG221の種類や成分等を予め設定しておくことにより、流入ガスG221を、第1流入ガスG221-1と第2流入ガスG221-2とに質量流量で分配する機能を有する。
【0078】
第1ガス反応量計算部210-1は、修正第1気相G13の第1物質M11との平衡状態に寄与する第1ガス反応量を計算する。即ち、第1ガス反応量計算部210-1は、領域Aにおける、第1ガス領域に存在する修正第1気相G13の滞留時間において、修正第1気相G13が第1物質M11と平衡反応すると見込まれる第1ガス反応量を計算する。領域Aにおける修正第1気相G13の滞留時間での反応量は、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算する。
【0079】
第1ガス反応量計算部210-1は、領域A内の滞留時間にて反応する第1ガス反応量を、反応速度式を用いて算出できる。
【0080】
第1ガス反応量計算部210-1は、第1ガス反応量から、修正第1気相G13のうちの第1物質M11との平衡状態に寄与する第1ガス反応分GR1として求める。
【0081】
なお、本明細書において、反応分とは、領域A内の修正第1気相G13、又はガス領域中に存在する第1物質M11が通過する滞留時間において、修正第1気相G13、又は第1物質M11との接触により、反応に寄与する流量をいう。以下、他の反応分も、気相、固相及び物質の何れかが、気相、固相及び物質の何れかとの接触により、反応に寄与する流量の意味を表わす。
【0082】
即ち、第1ガス反応分GR1は、修正第1気相G13のうちの、第1ガス領域に存在する第1物質M11との平衡反応に寄与する反応分である。第1物質反応分MR11は、第1ガス領域中に存在する第1物質M11のうちの、修正第1気相G13との平衡状態に寄与する反応分である。
【0083】
第1ガス反応量計算部210-1は、修正第1気相G13と、第1物質M11中に存在する固体物質又は液体物質との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の修正第1気相G13の滞留時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。そして、第1ガス反応量計算部210-1は、ガス反応量に相当する第1ガス反応分GR1と、残りの未反応の質量流量に相当する第1ガス未反応分Gr1とに分割する。
【0084】
ロータリーキルン1では、修正第1気相G13と、第1ガス領域中に存在する第1物質M11の流れが並流となっている。修正第1気相G13は流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、修正第1気相G13と第1ガス領域中に存在する第1物質M11とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第1ガス反応量計算部210-1は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の修正第1気相G13の一部のみが第1ガス領域中に存在する第1物質M11と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第1ガス反応量に応じて、修正第1気相G13を、ガス反応分GR1と、ガス反応分GR1以外のガス未反応分Gr1とに分割する。
【0085】
第2ガス反応量計算部210-2は、修正第2気相G22Aから流入ガスG221を減じた調整第2気相G22Bの第2物質M21との平衡状態に寄与する第2ガス反応量を計算する。即ち、第2ガス反応量計算部210-2は、領域Aにおける、第1ガス領域に存在する調整第2気相G22Bの滞留時間において、調整第2気相G22Bが第2物質M21と平衡反応すると見込まれる第2ガス反応量を計算する。領域Aにおける調整第2気相G22Bの滞留時間での反応量は、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算する。
【0086】
第2ガス反応量計算部210-2は、領域A内の滞留時間にて反応する第2ガス反応量を、反応速度式を用いて算出できる。
【0087】
第2ガス反応量計算部210-2は、第2ガス反応量から、調整第2気相G22Bのうちの第2物質M21との平衡状態に寄与する第2ガス反応分GR2として求める。
【0088】
即ち、第1ガス反応分GR2は、調整第2気相G22Bのうちの、第2ガス領域に存在する第2物質M21との平衡反応に寄与する反応分である。第2物質反応分MR21は、第2ガス領域中に存在する第2物質M21のうちの、調整第2気相G22Bとの平衡状態に寄与する反応分である。
【0089】
第2ガス反応量計算部210-2は、調整第2気相G22Bと、第2物質M21中に存在する固体物質又は液体物質との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の調整第2気相G22Bの滞留時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。そして、第2ガス反応量計算部210-2は、ガス反応量に相当する第2ガス反応分GR2と、残りの未反応の質量流量に相当する第2ガス未反応分Gr2とに分割する。
【0090】
ロータリーキルン1では、調整第2気相G22Bと、第2ガス領域中に存在する第2物質M21の流れが、並流となっており、調整第2気相G22Bは流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、調整第2気相G22Bと第2ガス領域中に存在する第2物質M21とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第2ガス反応量計算部210-2は、領域Aの調整第2気相G22Bの一部のみが第2ガス領域中に存在する第2物質M21と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第2ガス反応量に応じて、調整第2気相G22Bを、第2ガス反応分GR2と、第2ガス反応分GR2以外の第2ガス未反応分Gr2とに分割する。
【0091】
第1物質反応量計算部211-1は、第1物質M11の、修正第1気相G13との平衡状態に寄与する第1物質反応量を計算する。即ち、第1物質反応量計算部211-1は、領域Aにおける、ガス領域に存在する第1物質M11の滞留時間において、第1物質M11が修正第1気相G13と平衡反応すると見込まれる反応量を第1物質反応量として計算する。第1物質反応量は、反応速度式から算出できる。第1物質反応量計算部211-1は、第1物質反応量から、第1物質M11のうち、修正第1気相G13との平衡状態に寄与する第1物質反応分MR11を求める。
【0092】
第1物質反応量計算部211-1は、第1ガス反応量計算部210-1と同様、修正第1気相G13と、第1ガス領域中に存在する第1物質M11との平衡状態に達する量を、反応速度式を用いて計算できる。
【0093】
第1物質反応量計算部211-1は、第1ガス反応量計算部210-1と同様、修正第1気相G13と、第1ガス領域中に存在する第1物質M11との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の第1物質M11の滞留時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。そして、第1物質反応量計算部211-1は、第1物質反応量に相当する第1物質反応分MR11と、残りの未反応の質量流量に相当する第1物質未反応分Mr11とに分割する。
【0094】
ロータリーキルン1では、上述の通り、修正第1気相G13と第1物質M11の流れが並流となっており、修正第1気相G13は流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、修正第1気相G13と第1物質M11とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第1物質反応量計算部211-1は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の第1物質M11の一部のみが修正第1気相G13と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第1物質反応量に応じて、第1物質M11を、第1物質反応分MR11と、第1物質反応分MR11以外の第1物質未反応分Mr11とに分割する。
【0095】
第2物質反応量計算部211-2は、第2物質M21の、調整第2気相G22Bとの平衡状態に寄与する第2物質反応量を計算する。即ち、第2物質反応量計算部211-2は、領域Aにおける、第2ガス領域に存在する第2物質M21の滞留時間において、第2物質M21が調整第2気相G22Bと平衡反応すると見込まれる反応量を第2物質反応量として計算する。第2物質反応量は、反応速度式から算出できる。第2物質反応量計算部211-2は、第2物質反応量から、第2物質M21のうち、調整第2気相G22Bとの平衡状態に寄与する第2物質反応分MR21を求める。
【0096】
第2物質反応量計算部211-2は、第1ガス反応量計算部210-1と同様、調整第2気相G22Bと、第2ガス領域中に存在する第2物質M21との平衡状態に達する量を、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の第2物質M21の滞留時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。そして、第2物質反応量計算部211-2は、第2物質反応量に相当する第2物質反応分MR21と、残りの未反応の質量流量に相当する第2物質未反応分Mr21とに分割する。
【0097】
ロータリーキルン1では、上述の通り、調整第2気相G22Bと第2物質M21の流れが並流となっており、調整第2気相G22Bは流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、調整第2気相G22Bと第2物質M21とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第2物質反応量計算部211-2は、領域Aの調整第2気相G22Bの一部のみが第2物質M21と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第2物質反応量に応じて、第2物質M21を、第2物質反応分MR21と、第2物質反応分MR21以外の第2物質未反応分Mr21とに分割する。
【0098】
第1ベッド層反応量計算部212-1は、修正第1ベッド層S13Bの第1流入ガスG221-1との平衡状態に寄与する第1ベッド層反応量を反応速度式を用いて計算する。即ち、第1ベッド層反応量計算部212-1は、領域Aにおける修正第1ベッド層S13Bの移動時間において、修正第1ベッド層S13Bが第1流入ガスG221-1と平衡反応すると見込まれる第1ベッド層反応量を、第1反応速度式を用いて計算する。
【0099】
第1ベッド層反応量計算部212-1は、第1反応速度式に、例えば、領域Aにおける修正第1ベッド層S13Bに含まれる、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータ、領域A内の滞留時間等を用いることで、第1ベッド層反応量を計算できる。そして、第1ベッド層反応量計算部212-1は、第1ベッド層反応量から、修正第1ベッド層S13Bのうちの、第1流入ガスG221-1との平衡反応に寄与する第1ベッド層反応分SR1を算出する。
【0100】
即ち、第1ベッド層反応分SR1は、修正第1ベッド層S13Bのうちの第1流入ガスG221-1との平衡反応に寄与する反応分である。
【0101】
第1ベッド層反応量計算部212-1は、第1ベッド層反応量の計算に、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の修正第1ベッド層S13Bの移動時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。第1ベッド層反応量計算部212-1は、アレニウス型の反応速度式で修正第1ベッド層S13Bの滞留時間により修正第1ベッド層S13Bと第1流入ガスG221-1とが平衡状態に達していると見積もった分量だけについて、第1流入ガスG221-1との平衡反応に寄与する修正第1ベッド層S13Bの第1ベッド層反応量を計算する。そして、第1ベッド層反応量計算部212-1は、第1ベッド層反応量に相当する第1ベッド層反応分SR1と、残りの未反応の質量流量に相当する第1ベッド層未反応分Sr1とに分割する。
【0102】
ロータリーキルン1では、修正第1ベッド層S13Bと第1流入ガスG221-1の流れが向流となっている。第1流入ガスG221-1は流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、修正第1ベッド層S13Bと第1流入ガスG221-1とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第1ベッド層反応量計算部212-1は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の修正第1ベッド層S13Bの一部のみが第1流入ガスG221-1と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第1ベッド層反応量に応じて、修正第1ベッド層S13Bを、第1ベッド層反応分SR1と、第1ベッド層反応分以外の第1ベッド層未反応分Sr1とに分割する。
【0103】
第2ベッド層反応量計算部212-2は、修正第2ベッド層S21Bの第2流入ガスG221-2との平衡状態に寄与するベッド反応量を反応速度式を用いて計算する。即ち、第2ベッド層反応量計算部212-2は、領域Aにおける修正第2ベッド層S21Bの移動時間において、修正第2ベッド層S21Bが第2流入ガスG221-2と平衡反応すると見込まれる第2ベッド層反応量を計算する。
【0104】
第2ベッド層反応量計算部212-2は、得られた第2ベッド層反応量から、修正第2ベッド層S21Bのうちの、第2流入ガスG221-2との平衡状態に寄与する第2ベッド層反応分SR2を算出する。
【0105】
第2ベッド層反応量計算部212-2は、修正第2ベッド層S21Bと、第2流入ガスG221-2との平衡状態に達する反応量の計算に、第1ベッド層反応量計算部212-1と同様、例えば、アレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の予備修正第2ベッド層S21Aの移動時間から算出できるモデル等を採用して求めることができる。第2ベッド層反応量計算部212-2は、アレニウス型の反応速度式で修正第2ベッド層S21Bの滞留時間により修正第2ベッド層S21Bと第2流入ガスG221-2とが平衡状態に達していると見積もった分量だけについて、第2流入ガスG2211-2との反応に寄与する修正第2ベッド層S21Bの第2ベッド層反応量を計算する。そして、第2ベッド層反応量計算部212-2は、第2ベッド層反応量に相当する第2ベッド層反応分SR2と、残りの未反応の質量流量に相当する第2ベッド層未反応分Sr2とに分割する。
【0106】
第2ベッド層反応分SR2は、修正第2ベッド層S21Bのうちの第2流入ガスG221-2との平衡反応に寄与する反応分である。
【0107】
ロータリーキルン1では、修正第2ベッド層S21Bと第2流入ガスG221-2の流れが、向流となっている。第2流入ガスG221-2は流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、修正第2ベッド層S21Bと第2流入ガスG221-2とは平衡状態に達していない。本実施形態では、第2ベッド層反応量計算部212-2は、領域Aの修正第2ベッド層S21Bの一部のみが第2流入ガスG221-2と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第2ベッド層反応量に応じて、修正第2ベッド層S21Bを、第2ベッド層反応分SR2と、それ以外の第2ベッド層未反応分Sr2とに分割する。
【0108】
第1流入ガス反応量計算部213-1は、第1流入ガスG221-1の、修正第1ベッド層S13Bとの平衡状態に寄与する第1流入ガス反応量を計算する。即ち、第1流入ガス反応量計算部213-1は、領域Aにおける、ベッド層に存在する第1流入ガスG221-1の滞留時間において、第1流入ガスG221-1が修正第1ベッド層S13Bと平衡反応すると見込まれる第1流入ガス反応量を計算する。領域Aにおける第1流入ガスG221-1の滞留時間での第1流入反応量は、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算でき、例えば、反応速度式を用いて算出できる。そして、第1流入ガス反応量計算部213-1は、第1流入ガス反応量から、第1流入ガスG221-1のうちの、修正第1ベッド層S13Bとの平衡反応に寄与する第1流入ガス反応分GR221を算出する。
【0109】
即ち、第1流入ガス反応分GR221は、第1流入ガスG221-1のうちの第1修正ベッド層S13Bの平衡状態に寄与する第1流入ガスG221-1の反応分である。
【0110】
第1流入ガス反応量計算部213-1は、第1流入ガスG221-1が修正第1ベッド層S13Bと平衡状態に達する反応量を、例えば、第1ベッド層反応量計算部212-1で用いられるモデルと同様のモデルを用いて算出できる。
【0111】
そして、第1流入ガス反応量計算部213-1は、第1流入ガス反応量に相当する第1流入ガス反応分GR221と、残りの第1流入ガス反応分GR221以外の未反応の質量流量に相当する第1流入ガス未反応分Gr221とに分割する。
【0112】
ロータリーキルン1では、上述の通り、第1流入ガスG221-1と修正第1ベッド層S13Bとの流れが向流となっており、第1流入ガスG221-1は流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、第1流入ガスG221-1と修正第1ベッド層S13Bとは平衡状態に達していない。本実施形態では、第1流入ガス反応量計算部213-1は、ロータリーキルン1内の領域Aの第1流入ガスG221-1の一部のみが修正第1ベッド層S13Bと平衡状態に達するとみなして、それに対応するガス反応量に応じて、第1流入ガスG221-1を、第1流入ガス反応分GR221と、それ以外の第1流入ガス未反応分Gr221とに分割する。
【0113】
第2流入ガス反応量計算部213-2は、第2流入ガスG221-2の、修正第2ベッド層S21Bとの平衡状態に寄与する第2流入ガス反応量を計算する。即ち、第2流入ガス反応量計算部213-2は、領域Aにおける、ベッド層に存在する第2流入ガスG221-2の滞留時間において、第2流入ガスG221-2が修正第2ベッド層S21Bと平衡反応すると見込まれる第2流入ガス反応量を計算する。領域Aにおける第2流入ガスG221-2の滞留時間での第2流入反応量は、個々の物質毎に設定した反応速度パラメータと、領域A内の滞留時間を用いて計算でき、例えば、反応速度式から算出できる。そして、第2流入ガス反応量計算部213-2は、第2流入ガスG221-2のうちの修正第2ベッド層S21Bとの平衡反応に寄与する第2流入ガス反応分GR222を算出する。
【0114】
即ち、第2流入ガス反応分GR222は、第2流入ガスG221-2のうちの第2修正ベッド層S21Bの平衡状態に寄与する第2流入ガスG221-2の反応分である。
【0115】
第2流入ガス反応量計算部213-2は、第2流入ガスG221-2が修正第2ベッド層S21Bと平衡状態に達する反応量を、例えば、第2ベッド層反応量計算部212-2で用いられるモデルと同様のモデルを用いて算出できる。
【0116】
第2流入ガス反応量計算部213-2は、第2流入ガス反応量に相当する第2流入ガス反応分GR222と、残りの第2流入ガス反応分以外の未反応の質量流量に相当する第2流入ガス未反応分Gr222とに分割する。
【0117】
ロータリーキルン1では、上述の通り、第2流入ガスG221-2と修正第2ベッド層S21Bとの流れが向流となっており、第2流入ガスG221-2は流速が大きく領域Aでの滞留時間が短く、第2流入ガスG221-2と修正第2ベッド層S21Bとは平衡状態に達していない。本実施形態では、第2流入ガス反応量計算部213-2は、ロータリーキルン1内の領域Aの修正第2ベッド層S21Bの一部のみが第2流入ガスG221-2と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第2流入ガス反応量に応じて、第2流入ガスG221-2を、第2流入ガス反応分GR222と、それ以外の第2流入ガス未反応分Gr222とに分割する。
【0118】
第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、領域A内の第1ガス領域を流れる修正第1気相G13と、第1ガス領域に存在する第1物質M11との平衡反応を計算する。即ち、第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、修正第1気相G13のうちの第1ガス領域に存在する第1物質M11との平衡反応に寄与するガス反応分GR1と、第1物質M11のうちの第1ガス反応分GR1との平衡反応に寄与する第1物質反応分MR11を用いて、第1ガス領域の平衡反応計算を行い、第1ガス反応物GR1及び第1物質反応物MR11の組成、量等、第1ガス反応物GR1及び第1物質反応物MR11とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する。
【0119】
第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。即ち、第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応計算を行うことができる。第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成、量及び相等を計算して出力する。
【0120】
第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが反応することで生じる生成ガスと、第1ガス反応分GR1の未使用分とを、第1ガス生成分GP1として計算する。
【0121】
また、第1ガス領域平衡反応計算部214-1は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが反応することで生じる生成物質と、第1物質反応分MR11の未使用分とを、第1物質生成分MP11として計算する。
【0122】
即ち、第1ガス生成分GP1は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが反応することで生じる気相と、第1ガス反応分GR1の未使用分とを合算した気相である。第1物質生成分MP11は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが反応することで生じる生成物質と、第1物質反応分MR11の未使用分とを合算したものである。
【0123】
第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、領域A内の第2ガス領域を流れる第2気相G22Bと、第2ガス領域に存在する第2物質M21との平衡反応を計算する。即ち、第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、第2気相G22Bのうちの第2ガス領域に存在する第2物質M21との平衡反応に寄与するガス反応分GR2と、第2物質M21のうちの第2ガス反応分GR2との平衡反応に寄与する第2物質反応分MR21を用いて、第2ガス領域の平衡反応計算を行い、第2ガス反応物GR2及び第1物質反応物MR21の組成、量等、第2ガス反応物GR2及び第2物質反応物MR21とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する。
【0124】
第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。即ち、第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応計算を行うことができる。第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成、量及び相等を計算して出力する。
【0125】
第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが反応することで生じる生成ガスと、第2ガス反応分GR2の未使用分とを、第2ガス生成分GP2として計算する。
【0126】
また、第2ガス領域平衡反応計算部214-2は、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが反応することで生じる生成物質と、第2物質反応分MR21の未使用分とを、第2物質生成分MP21として計算する。
【0127】
即ち、第2ガス生成分GP2は、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが反応することで生じる気相と、第2ガス反応分GR2の未使用分とを合算した気相である。第1物質生成分MP21は、ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが反応することで生じる生成物質と、第2物質反応分MR21の未使用分とを合算したものである。
【0128】
ベッド層平衡反応計算部215は、領域A内のベッド層と流入ガスG221との平衡反応を計算する。
【0129】
ベッド層平衡反応計算部215は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1及び第2ベッド層平衡反応計算部215-2を有する。
【0130】
第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、領域A内のベッド層を移動する修正第1ベッド層S13Bと、修正第1ベッド層S13Bに存在する第1流入ガスG221-1との平衡反応を計算する。即ち、第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、修正第1ベッド層S13Bのうちの第1流入ガスG221-1との平衡反応に寄与する第1ベッド層反応分SR1と、第1流入ガスG221-1のうちの修正第1ベッド層S13Bとの平衡状態に寄与する第1流入ガス反応分GR221を用いて、第1ベッド層の平衡反応計算を行う。これにより、第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、第1ベッド層反応物SR1と第1流入ガス反応物GR221とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する。
【0131】
第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。即ち、第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、ガス領域平衡反応計算部213と同様、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応計算を行うことができる。第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成、量及び相等を計算して出力する。
【0132】
第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが反応することで生じる生成物質と、第1ベッド層反応分SR1の未使用分とを、第1ベッド層生成分SP1として計算する。また、第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが反応することで生じる生成ガスと、第1流入ガス反応分GR221の未使用分とを、第1流入ガス生成分GP221として計算する。
【0133】
即ち、第1ベッド層生成分SP1は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが反応することで生じる生成物質と、第1ベッド層反応分SR1の未使用分とを合算したものである。第1流入ガス生成分GP221は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが反応することで生じる生成ガスと、第1流入ガス反応分GR221の未使用分とを合算したものである。
【0134】
第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、領域A内のベッド層を移動する修正第2ベッド層S21Bと、ベッド層に存在する第2流入ガスG221-2との平衡反応を計算する。即ち、第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、修正第2ベッド層S21Bのうちの第2流入ガスG221-2との平衡反応に寄与する第2ベッド層反応分SR2と、第2流入ガスG221-2のうちの修正第2ベッド層S21Bとの平衡状態に寄与する第2流入ガス反応分GR222を用いて、修正第2ベッド層S21Bの平衡反応計算を行う。これにより、第2ベッド層反応物SR2及び第2流入ガス反応分GR222の組成、量等、第2ベッド層反応物SR2及び第2流入ガス反応分GR222とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する。
【0135】
第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。即ち、第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1と同様、ギブズエネルギー最小化法に基づく平衡反応計算を行うことができる。第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成、量及び相等を計算して出力する。
【0136】
第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが反応することで生じる生成物質と、第2ベッド層反応分SR2の未使用分とを、第2ベッド層生成分SP2として計算する。また、第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが反応することで生じる生成ガスと、第2流入ガス反応分GR222の未使用分とを、第2流入ガス生成分GP222として計算する。
【0137】
即ち、第2ベッド層生成分SP2とは、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが反応することで生じる生成物質と、第2ベッド層反応分SR2の未使用分とを合算したものである。また、第2流入ガス生成分GP222は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが反応することで生じる生成ガスと、第1流入ガス反応分GR222の未使用分とを合算したものである。
【0138】
第1混合気相計算部216-1は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1ガス反応量計算部210-1で分割された第1ガス未反応分Gr1と、第1ガス領域平衡反応計算部214-1で生じた第1ガス生成分GP1とを混合した混合気相である第1混合気相G14の流量や組成データ等を計算する。
【0139】
第2混合気相計算部216-2は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2ガス反応量計算部210-2で分割された第2ガス未反応分Gr2と、第2ガス領域平衡反応計算部214-2で生じた第2ガス生成分GP2とを混合した混合気相である第2混合気相G23の流量や組成データ等を計算する。
【0140】
第1混合物質計算部217-1は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1物質反応量計算部211-1で分割された第1物質未反応分Mr11と、第1ガス領域平衡反応計算部214-1で生じた第1物質生成分MP11とを混合した第1混合物質M12の流量や組成データ等を計算する。
【0141】
第2混合物質計算部217-2は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2物質反応量計算部211-2で分割された第2物質未反応分Mr21と、第2ガス領域平衡反応計算部214-2で生じた第2物質生成分MP21とを混合した第2混合物質M22の流量や組成データ等を計算する。
【0142】
第1混合ベッド層計算部218-1は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1ベッド層反応量計算部212-1で分割された第1ベッド層未反応分Sr1と、第1ベッド層平衡反応計算部215-1で生じた第1ベッド層生成分SP1とを混合した第1混合ベッド層S14の流量や組成データ等を計算する。
【0143】
第2混合ベッド層計算部218-2は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2ベッド層反応量計算部212-2で分割された第2ベッド層未反応分Sr2と、第2ベッド層平衡反応計算部215-2で生じた第2ベッド層生成分SP2とを混合した第2混合ベッド層S22の流量や組成データ等を計算する。
【0144】
第1混合流入ガス算出部219-1は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1流入ガス反応量計算部213-1で分割された第1流入ガス未反応分Gr221と、第1ベッド層平衡反応計算部215-1で生じた第1流入ガス生成分GP221とを混合した第1混合流入ガスG222Aの流量や組成データ等を計算する。
【0145】
第2混合流入ガス算出部219-2は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2流入ガス反応量計算部213-2で分割された第2流入ガス未反応分Gr222と、第2ベッド層平衡反応計算部215-2で生じる第2流入ガス生成分GP222とを混合した第2混合流入ガスG222Bの流量や組成データ等を計算する。
【0146】
第1混合物質物量修正部220は、第2混合物質M23内に含まれる第3物質M3の第1ガス領域に存在する第1混合物質M12への移動量と、第1のガス領域に存在する第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2混合物質M23への移動量を考慮して、第1混合物質M12の物量を修正し、第1修正混合物質M13を算出する。
【0147】
第1混合物質物量修正部220は、第2混合物質M23内に含まれる第3物質M3の第1ガス領域に存在する第1混合物質M12への移動量を加えると共に、第1のガス領域に存在する第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2混合物質M23への移動量を除することで、第1混合物質M12の物量は修正される。
【0148】
流入ガス合算部221は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1混合流入ガス算出部219-1で生じた第1混合流入ガスG222Aと、第2混合流入ガス算出部219-2で生じる第2混合流入ガスG222Bとを合算し、混合流入ガスG223を算出する。
【0149】
ガス量合算部222は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2混合気相計算部216-2で生じた第2混合気相G23と、流入ガス合算部221で生じる混合流入ガスG223とを合算し、第2合算気相G24を算出する。
【0150】
第2混合物質1次物量修正部223は、第1ベッド層予備物量修正部205で生じる添加分含有第1ベッド層S12内に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第7物質M7の第2混合物質M22への移動量と、第2混合物質計算部217-2で生じた第2混合物質M22に含まれる、固体物質又は液体物質の少なくとも一方を含む第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量と、第2ベッド層予備物量修正部207で生じる第2混合ベッド層S21内に含まれる第9物質M9の第2混合物質M22への移動量とを考慮して、第2混合物質M22の物量を修正し、第2修正混合物質M23を算出する。
【0151】
第2混合物質1次物量修正部223は、添加分含有第1ベッド層S12内に含まれる第7物質M7の第2混合物質M22への移動量と、第2混合ベッド層S21内に含まれる第9物質M9の第2混合物質M22への移動量とを加え、第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を除することで、第2混合物質M22の物量は修正される。
【0152】
第2混合物質2次物量修正部224は、第2混合物質1次物量修正部223で生じた第2修正混合物質M23に含まれる第3物質M3の第1ガス領域に存在する第1混合物質M12への移動量と、第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2修正混合物質M23への移動量とを考慮して、第2修正混合物質M23の物量を修正し、第2修正混合物質M24を算出する。
【0153】
第2混合物質2次物量修正部224は、第2修正混合物質M23に含まれる第3物質M3の第1混合物質M12への移動量を除すると共に、第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2修正混合物質M23への移動量を加えることで、第2修正混合物質M23の物量は修正される。
【0154】
なお、本実施形態では、第1ガス領域平衡反応計算部214-1及び第2ガス領域平衡反応計算部214-2の少なくとも一方は、2つ以上を備えてもよい。第1ガス相G11及び第2ガス相G21の少なくとも一方が更に複数のガス相に分離されることで、ロータリーキルン1内のガス領域は3種類以上の複数系統に分けられる。
【0155】
本実施形態では、第1ベッド層平衡反応計算部215-1及び第2ベッド層平衡反応計算部215-2の少なくとも一方は、2つ以上を備えてもよい。第1ベッド層S11及び第1ベッド層S21の少なくとも一方が更に複数のベッド層に分離されることで、ロータリーキルン1内のベッド層は3種類以上の複数系統に分けられる。
【0156】
本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、燃焼用材料240をロータリーキルン1内に投下しない場合には、分配部201を備えなくてもよい。
【0157】
本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層予備物量修正部205、第1ベッド層物量修正部206、第2ベッド層予備物量修正部207及び第2ベッド層物量修正部208の1つ以上を備えなくてもよい。例えば、炉内反応の計算装置20が第1ベッド層予備物量修正部205及び第1ベッド層物量修正部206を備えない場合、第1ベッド層反応量計算部212-1は、修正第1ベッド層S13Bに代えて第1ベッド層S12を用いる。また、炉内反応の計算装置20が第2ベッド層予備物量修正部207及び第2ベッド層物量修正部208を備えない場合、第2ベッド層反応量計算部212-2は、予備修正第2ベッド層S21Aに代えて第2ベッド層S21を用いる。
【0158】
本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、炉内の伝熱を、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルを用いて計算してもよい。
【0159】
<炉内反応の計算方法>
次に、本実施形態に係る炉内反応の計算装置を用いて、本実施形態に係る炉内反応の計算方法について説明する。本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図1に示すような構成を有するロータリーキルン1において、ロータリーキルン1の装入端14A側から供給した原料鉱石を排出端14B側に向かって移動させながら、移動の途中から燃焼用材料240を投入し、原料鉱石を排出端14B側に設けられるバーナー16から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う。
【0160】
図5は、本実施形態に係る炉内反応の計算方法を説明するフローチャートである。図5に示すように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内に燃焼用材料240を投下しているか否かを確認する(確認工程:ステップS11)。
【0161】
ロータリーキルン1内に燃焼用材料240が投下されている場合(ステップS11:Yes)、炉内反応の計算装置20は、気相を想定した揮発分等の物質と、ベッド層を想定した固体物質を入力物質として与え、分配部201を用いて、ロータリーキルン1内に添加される燃焼用材料240を気相とベッド層とに質量流量で分配する(分配工程:ステップS12)。
【0162】
次に、炉内反応の計算装置20は、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する燃焼ガスである第1気相G11と、分配部201で分配された燃焼用材料240の気相である添加気相AG11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1気相G11と添加気相AG11とを混合して、第1気相G11及び添加気相AG11を含む添加分含有第1気相G12を算出する(第1気相と添加気相の気相混合工程:ステップS13)。
【0163】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1気相の物量修正部202を用いて、第1ガス領域を流れる添加分含有第1気相G12の物量を修正し、修正第1気相G13を計算する(第2気相の物量の修正工程:ステップS14)。
【0164】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2気相の物量修正部203を用いて、第2ガス領域を流れる第2気相G21の物量を修正し、修正第2気相G22Aを計算して算出する(第2気相の物量の修正工程:ステップS15)。
【0165】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス混合量計算部204を用いて、第2ガス領域中の修正第2気相G22Aからベッド層へ移動する流入ガスG221の流量を計算する(ガス混合量計算工程:ステップS16)。
【0166】
次に、炉内反応の計算装置20は、他方の隣接領域(領域(A-1))から領域Aに流入するベッド層S1が予め分配された第1ベッド層S11と、分配部201で分配された燃焼用材料のベッド層である添加ベッド層AS11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層S11と添加ベッド層AS11とを混合して、添加分含有第1ベッド層S12を算出する(第1ベッド層と添加ベッド層のベッド層混合工程:ステップS17)。
【0167】
次に、炉内反応の計算装置20は、添加分含有第1ベッド層S12と、添加分含有第1ベッド層S12に含まれる第7物質M7の第2ガス領域中に存在する第2混合物質M22への移動量と、第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量とを入力物質として与える。
【0168】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層予備物量修正部205を用いて、添加分含有第1ベッド層S12に含まれる第7物質M7の第2混合物質M22への移動量を除すると共に、第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を加えることで、添加分含有第1ベッド層S12の物量を修正し、予備修正第1ベッド層S13Aを算出する(第1ベッド層予備物量修正工程:ステップS18)。
【0169】
次に、炉内反応の計算装置20は、予備修正第1ベッド層S13Aと、予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる第6物質M6の第2ベッド層S21Aへの移動量と、第2ベッド層物量修正部208で除される、第2ベッド層S21A中の第5物質M5とを入力物質として与える。
【0170】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層物量修正部206を用いて、予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる第6物質M6の移動量を予備修正第1ベッド層S13Aから除すると共に、第2ベッド層物量修正部208で除される、第2ベッド層S21A中の第5物質M5の移動量を予備修正第1ベッド層S13Aに加える。これにより、炉内反応の計算装置20は、予備修正第1ベッド層S13Aの物量を修正し、修正第1ベッド層S13Bを算出する(予備修正第1ベッド層物量修正工程:ステップS19)。
【0171】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層S21と、第2ベッド層S21内に含まれる第9物質M9の第2ガス領域中に存在する第2混合物質M22への移動量とを入力物質として与える。
【0172】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層予備物量修正部207を用いて、第2ベッド層S21内に含まれる第9物質M9の第2混合物質M22への移動量を除して、第2ベッド層S21の物量を修正し、予備修正第2ベッド層S21Aを算出する。
【0173】
次に、炉内反応の計算装置20は、予備修正第2ベッド層S21Aと、第1ベッド層物量修正部206で除される、予備修正第1ベッド層S13A中の第6物質M6の移動量と、第2ベッド層物量修正部208で除される、予備修正第2ベッド層S21A中の第5物質M5の移動量とを入力物質として与える。
【0174】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層物量修正部208を用いて、予備修正第2ベッド層S21Aから予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる第5物質M5の移動量を除すると共に、第1ベッド層物量修正部206で除される第6物質M6の移動量を予備修正第2ベッド層S21Aに加える。これにより、炉内反応の計算装置20は、予備修正第2ベッド層S21Aの物量を修正し、修正第2ベッド層S21Bを算出する(第2ベッド層物量修正工程:ステップS21)。
【0175】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域平衡反応を行う(第1ガス領域平衡反応の実施工程:ステップS22)。
【0176】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ガス領域平衡反応を行う(第2ガス領域平衡反応の実施工程:ステップS23)。
【0177】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応を行う(第1ベッド層平衡反応の実施工程:ステップS24)。
【0178】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応を行う(第2ベッド層平衡反応の実施工程:ステップS25)。
【0179】
次に、炉内反応の計算装置20は、流入ガス合算部221を用いて、第1ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS24)で生じる第1混合流入ガスG222Aに、第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS25)で生じる第2混合流入ガスG222Bを合算し、混合流入ガスG223を得る(流入ガス合算工程:ステップS26)。
【0180】
次に、炉内反応の計算装置20は、ガス量合算部222を用いて、第2ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS19)で生じる第2混合気相G23に、流入ガス合算工程(ステップS26)で生じる混合流入ガスG223を合算し、第2合算気相G24を得る(ガス量合算工程:ステップS27)。
【0181】
炉内反応の計算装置20は、第2合算気相G24を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域(A-1))に移動させる。
【0182】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1混合物質物量修正部220を用いて、第1ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS19)で生じる第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2ガス領域への移動量を除すると共に、第2混合物質M23内に含まれる第3物質M3の第1混合物質M12への移動量を加えることで、第1混合物質M12の物量を修正し、第1修正混合物質M13を算出する(第1混合物質物量修正工程:ステップS28)。
【0183】
炉内反応の計算装置20は、第1修正混合物質M13を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域(A-1))に移動させる。
【0184】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2混合物質1次物量修正部223を用いて、第1ベッド層の予備物量の修正工程(ステップS16)で生じる添加分含有第1ベッド層S12内に含まれる第7物質M7の第2混合物質M22への移動量と、第2ベッド層予備物量修正部207で生じる第2混合ベッド層S21内に含まれる第9物質M9の第2混合物質M22への移動量とを加えると共に、第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS25)で生じる第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を除する。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2混合物質M22の物量を修正し、第2修正混合物質M23を算出する(第2混合物質1次物量予備修正工程:ステップS29)。
【0185】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2混合物質2次物量修正部224を用いて、第2混合物質物量予備修正工程(ステップS29)で生じた第2修正混合物質M23に含まれる第3物質M3の第1混合物質M12への移動量を除すると共に、第1混合物質物量修正工程(ステップS28)で生じた第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2修正混合物質M23への移動量を加えて、第2修正混合物質M23の物量を修正し、第2修正混合物質M24を算出する(第2混合物質2次物量修正工程:ステップS30)。
【0186】
炉内反応の計算装置20は、第2修正混合物質M24を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域(A-1))に移動させる。
【0187】
次に、第1ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS22)について説明する。図6は、図5の第1ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS22)の動作を示すフローチャートである。図6に示すように、第1ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS22)では、炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応量計算部210-1を用いて、修正第1気相G13の第1物質M11との平衡状態に寄与する第1ガス反応量を計算する(第1ガス反応量計算工程:ステップS221)。
【0188】
即ち、炉内反応の計算装置20は、修正第1気相G13と第1ガス領域中に存在する第1物質M11とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、修正第1気相G13が第1ガス領域中に存在する第1物質M11と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与するガス反応量を計算する。
【0189】
そして、炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応量の計算結果に基づいて、第1ガス反応量に相当する第1ガス反応分GR1と、残りの未反応量に相当する第1ガス未反応分Gr1とに分割する。
【0190】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1物質反応量計算部211-1を用いて、第1ガス領域に存在する第1物質M11のうち、修正第1気相G13との平衡状態に寄与する第1物質反応量を計算する(第1物質反応量計算工程:ステップS222)。
【0191】
即ち、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域に存在する第1物質M11と修正第1気相G13とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第1ガス領域に存在する第1物質M11が修正第1気相G13と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第1物質反応量を計算する。
【0192】
そして、炉内反応の計算装置20は、第1物質反応量の計算結果に基づいて、第1物質反応量に相当する第1反応得物質反応分MR11と、残りの未反応量に相当する第1物質未反応分Mr11とに分割する。
【0193】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応量の計算工程(ステップS221)で得られた第1ガス反応分GR1と、第1物質反応量の計算工程(ステップS222)で得られた第1物質反応分MR11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域平衡反応計算部214-1を用いて、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11との平衡反応を計算し、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(第1ガス領域平衡反応計算工程:ステップS223)。
【0194】
平衡反応の計算には、例えば、ギブズエネルギー最小化法等を用いることができる。
【0195】
炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが反応することで生じる気相と、第1ガス反応分GR1の未使用分とを、第1ガス生成分GP1として計算し、第1ガス反応分GR1と第1物質反応分MR11とが反応することで生じる生成物質と、第1物質反応分MR11の未使用分とを、第1物質生成分MP11として計算する。
【0196】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応量の計算工程(ステップS221)で得られた第1ガス未反応分Gr1と、第1ガス領域平衡反応計算工程(ステップS223)で得られた第1ガス生成分GP1とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1混合気相計算部216-1を用いて、第1ガス未反応分Gr1と第1ガス生成分GP1とを含む第1混合気相G14の流量、組成データ等を計算する(第1混合気相計算工程:ステップS224)。
【0197】
第1ガス反応量の計算工程(ステップS221)で計算した第1ガス反応分GR1は、第1混合気相G13と第1物質M11とが平衡状態に達したと仮定した時の反応量であるため、通常、全て使用される。しかし、気相である第1ガス反応分GR1には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。不活性な物質は、例えば、窒素等である。第1混合気相計算工程(ステップS223)では、反応の量論比以上に存在し、結果として平衡反応後に残る物質や不活性な物質が存在する。第1ガス領域平衡反応計算部214-1で使用されずに残った未使用分は、ガス生成分GP1として計算する。
【0198】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1物質反応量の計算工程(ステップS222)で得られた第1物質未反応分Mr11と、第1ガス領域平衡反応計算工程(ステップS223)で得られた第1物質生成分MP11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1混合物質計算部217-1を用いて、第1物質未反応分Mr11と第1物質生成分MP11とを混合した第1混合物質M12の流量や組成データ等を計算する(第1混合物質計算工程:ステップS225)。
【0199】
次に、第2ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS23)について説明する。図7は、図5の第2ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS23)の動作を示すフローチャートである。図7に示すように、第2ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS23)では、炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応量計算部210-2を用いて、調整第2気相G22Bの第2物質M21との平衡状態に寄与する第2ガス反応量を計算する(第2ガス反応量計算工程:ステップS231)。
【0200】
即ち、炉内反応の計算装置20は、調整第2気相G22Bと第2ガス領域中に存在する第2物質M21とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、調整第2気相G22Bが第2ガス領域中に存在する第2物質M21と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第2ガス反応量を計算する。
【0201】
そして、炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応量の計算結果に基づいて、第2ガス反応量に相当する第2ガス反応分GR2と、残りの未反応量に相当する第2ガス未反応分Gr2とに分割する。
【0202】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2物質反応量計算部211-2を用いて、第2ガス領域に存在する第2物質M21のうち、調整第2気相G22Bとの平衡状態に寄与する第2物質反応量を計算する(第2物質反応量計算工程:ステップS232)。
【0203】
即ち、炉内反応の計算装置20は、第2ガス領域に存在する第2物質M21と調整第2気相G22Bとが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第2ガス領域に存在する第2物質M21が調整第2気相G22Bと反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第2物質反応量を計算する。
【0204】
そして、炉内反応の計算装置20は、第2物質反応量の計算結果に基づいて、第2物質反応量に相当する第2反応得物質反応分MR21と、残りの未反応量に相当する第2物質未反応分Mr21とに分割する。
【0205】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応量の計算工程(ステップS231)で得られた第2ガス反応分GR2と、第2物質反応量の計算工程(ステップS232)で得られた第2物質反応分MR21とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2ガス領域平衡反応計算部214-2を用いて、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21との平衡反応を計算し、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(第2ガス領域平衡反応計算工程:ステップS233)。
【0206】
平衡反応の計算には、例えば、ギブズエネルギー最小化法等を用いることができる。
【0207】
炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが反応することで生じる気相と、第2ガス反応分GR2の未使用分とを、第2ガス生成分GP2として計算し、第2ガス反応分GR2と第2物質反応分MR21とが反応することで生じる生成物質と、第2物質反応分MR21の未使用分とを、第2物質生成分MP21として計算する。
【0208】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応量の計算工程(ステップS231)で得られた第2ガス未反応分Gr2と、第2ガス領域平衡反応計算工程(ステップS233)で得られた第2ガス生成分GP2とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2混合気相計算部216-2を用いて、第2ガス未反応分Gr2と第2ガス生成分GP2とを含む第2混合気相G23の流量、組成データ等を計算する(第2混合気相計算工程:ステップS234)。
【0209】
第2ガス反応量の計算工程(ステップS231)で計算した第2ガス反応分GR2は、第2混合気相G21と第2物質M21とが平衡状態に達したと仮定した時の反応量であるため、通常、全て使用される。しかし、気相である第2ガス反応分GR2には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。不活性な物質は、例えば、窒素等である。第2混合気相計算工程(ステップS233)では、反応の量論比以上に存在し、結果として平衡反応後に残る物質や不活性な物質が存在する。第2ガス領域平衡反応計算部214-2で使用されずに残った未使用分は、ガス生成分GP2として計算する。
【0210】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2物質反応量の計算工程(ステップS232)で得られた第2物質未反応分Mr21と、第2ガス領域平衡反応計算工程(ステップS233)で得られた第2物質生成分MP21とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2混合物質計算部217-2を用いて、第2物質未反応分Mr21と第2物質生成分MP21とを混合した第2混合物質M22の流量や組成データ等を計算する(第2混合物質計算工程:ステップS235)。
【0211】
次に、第1ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS24)について説明する。図8は、図5の第1ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS24)の動作を示すフローチャートである。図8に示すように、第1ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS24)では、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応量計算部212-1を用いて、修正第1ベッド層S13Bのうち、第1流入ガス反応分GR221との平衡状態に寄与する第1ベッド層反応量を計算する(第1ベッド層反応量計算工程:ステップS241)。
【0212】
即ち、炉内反応の計算装置20は、修正第1ベッド層S13Bと第1流入ガスG221-1とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、修正第1ベッド層S13Bが第1流入ガスG221-1と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第1ベッド層反応量を計算する。
【0213】
そして、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応量の計算結果に基づいて、第1ベッド層反応量に相当する第1ベッド層反応分SR1と、残りの未反応量に相当する第1ベッド層未反応分Sr1とに分割する。
【0214】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1流入ガス反応量計算部213-1を用いて、第1流入ガスG221-1のうち、修正第1ベッド層S13Bとの平衡状態に寄与する第1流入ガス反応量を計算する(第1流入ガス反応量計算工程:ステップS242)。
【0215】
即ち、炉内反応の計算装置20は、第1流入ガスG221-1と修正第1ベッド層S13Bとが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第1流入ガスG221-1が修正第1ベッド層S13Bと反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第1流入ガス反応量を計算する。
【0216】
そして、炉内反応の計算装置20は、第1流入ガス反応量の計算結果に基づいて、第1流入ガス反応量に相当する第1流入ガス反応分GR221と、残りの未反応量に相当する第1流入ガス未反応分Gr221とに分割する。
【0217】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応量計算工程(ステップS241)で得られた第1ベッド層反応分SR1と、第1流入ガス反応量の計算工程(ステップS202)で得られた第1流入ガス反応分GR221とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1を用いて、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221との平衡反応を計算し、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(第1ベッド層平衡反応計算工程ステップS203)。
【0218】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが反応することで生じるベッド層と、第1ベッド層反応分SR1の未使用分とを、第1ベッド層生成分SP1として計算する。また、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応分SR1と第1流入ガス反応分GR221とが反応することで生じる第1流入ガス反応分GR221の未使用分を、第1流入ガス生成分GP221として計算する。
【0219】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応量の計算工程(ステップS241)で得られた第1ベッド層未反応分Sr1と、第1ベッド層平衡反応計算工程(ステップS243)で得られた第1ベッド層生成分SP1とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1を用いて、第1ベッド層未反応分Sr1と第1ベッド層生成分SP1とを含む添加分含有第1ベッド層S14の流量、組成データ等を計算する(第1混合ベッド層計算工程:ステップS244)。
【0220】
第1ベッド層反応量の計算工程(ステップS241)で計算した第1ベッド層の第1ベッド層反応分SR1には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。第1混合ベッド層計算工程(ステップS244)では、第1ベッド層反応分SR1のうち、反応の量論比以上に存在し結果として反応で使用されなかった部分及び不活性な部分は、第1ベッド層平衡反応計算工程(ステップS243)で使用されずに残った未使用分として第1ベッド層生成分SP1に含めて計算する。
【0221】
炉内反応の計算装置20は、第1混合ベッド層S14を領域Aよりも排出端14B側の領域(領域(A+1))に移動させる。
【0222】
次に、炉内反応の計算装置20は、第1流入ガス反応量の計算工程(ステップS222)で得られた第1流入ガス未反応分Gr221と、第1ベッド層平衡反応計算工程(ステップS233)で得られた第1流入ガス生成分GP221とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1混合流入ガス算出部219-1を用いて、第1流入ガス未反応分Gr221と第1流入ガス生成分GP221とを含む第1混合流入ガスG222Aの流量、組成データ等を計算する(第1混合流入ガス算出工程:ステップS205)。
【0223】
次に、第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS21)について説明する。図9は、図5の第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS21)の動作を示すフローチャートである。図9に示すように、第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS25)では、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応量計算部212-2を用いて、修正第2ベッド層S21Bのうち、第2流入ガス反応分GR222との平衡状態に寄与する第2ベッド層反応量を計算する(第2ベッド層反応量計算工程:ステップS251)。
【0224】
即ち、炉内反応の計算装置20は、修正第2ベッド層S21Bと第2流入ガスG221-2とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、修正第2ベッド層S21Bが第2流入ガスG221-2と反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第2ベッド層反応量を計算する。
【0225】
そして、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応量の計算結果に基づいて、第2ベッド層反応量に相当する第2ベッド層反応分SR2と、残りの未反応量に相当する第2ベッド層未反応分Sr2とに分割する。
【0226】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2流入ガス反応量計算部213-2を用いて、第2流入ガスG221-2のうち、修正第2ベッド層S21Bとの平衡状態に寄与する第2流入ガス反応量を計算する(第2流入ガス反応量計算工程:ステップS252)。
【0227】
即ち、炉内反応の計算装置20は、第2流入ガスG221-2と修正第2ベッド層S21Bとが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第2流入ガスG221-2が修正第2ベッド層S21Bと反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第2流入ガス反応量を計算する。
【0228】
そして、炉内反応の計算装置20は、第2流入ガス反応量の計算結果に基づいて、第2流入ガス反応量に相当する第2流入ガス反応分GR222と、残りの未反応量に相当する第2流入ガス未反応分Gr222とに分割する。
【0229】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応量計算工程(ステップS251)で得られた第2ベッド層反応分SR2と、第2流入ガス反応量の計算工程(ステップS252)で得られた第2流入ガス反応分GR222とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応計算部215-2を用いて、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222との平衡反応を計算し、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(第2ベッド層平衡反応計算工程:ステップS253)。
【0230】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが反応することで生じるベッド層と、第2ベッド層反応分SR2の未使用分とを、第2ベッド層生成分SP2として計算する。また、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応分SR2と第2流入ガス反応分GR222とが反応することで生じる、第2流入ガス反応分GR222の未使用分を、第2流入ガス生成分GP222として計算する。
【0231】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応量計算工程(ステップS251)で得られた第2ベッド層未反応分Sr2と、第2ベッド層平衡反応計算工程(ステップS253)で得られた第2ベッド層生成分SP2とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応計算部215-2を用いて、第2ベッド層未反応分Sr2と第2ベッド層生成分SP2とを含む第2混合ベッド層S22の流量、組成データ等を計算する(第2混合ベッド層計算工程:ステップS254)。
【0232】
第2ベッド層反応量計算工程(ステップS251)で計算した第2ベッド層の第2ベッド層反応分SR2には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。第2混合ベッド層計算工程(ステップS254)では、第2ベッド層反応分SR2のうち、反応の量論比以上に存在し結果として反応で使用されなかった部分及び不活性な部分が存在する。第2ベッド層平衡反応計算工程(ステップS253)で使用されずに残った未使用分は、第2ベッド層生成分SP2として計算する。
【0233】
炉内反応の計算装置20は、第2混合ベッド層S22を領域Aよりも排出端14B側の領域(領域(A+1))に移動させる。
【0234】
次に、炉内反応の計算装置20は、第2流入ガス反応量計算工程(ステップS252)で得られた第2流入ガス未反応分Gr222と、第2ベッド層平衡反応計算工程(ステップS253)で得られた第2流入ガス生成分GP222とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2混合流入ガス算出部219-2を用いて、第2流入ガス未反応分Gr222と第2流入ガス生成分GP222とを含む第2混合流入ガスG222Bの流量、組成データ等を計算する(第2混合流入ガス算出工程:ステップS255)。
【0235】
なお、本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、適宜、各工程を並行して行ってもよいし、工程の順番を入れ替えてよい。
【0236】
例えば、本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図5に示す、第1ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS22)、第2ガス領域平衡反応の実施工程(ステップS23)、第1ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS24)及び第2ベッド層平衡反応の実施工程(ステップS25)の少なくとも1つ以上の工程を並行して行ってもよい。
【0237】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図5に示す、流入ガス合算工程(ステップS26)と第1混合物質物量修正工程(ステップS28)とを並行して行ってもよいし、流入ガス合算工程(ステップS26)を第1混合物質物量修正工程(ステップS28)の後に行ってもよい。
【0238】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図5に示す、ガス量合算工程(ステップS27)と第1混合物質物量修正工程(ステップS28)とを並行して行ってもよいし、ガス量合算工程(ステップS27)を第1混合物質物量修正工程(ステップS28)の後に行ってもよい。
【0239】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図6に示す、第1ガス反応量計算工程(ステップS221)と第1物質反応量計算工程(ステップS222)とを並行して行ってもよいし、第1ガス反応量計算工程(ステップS221)を第1物質反応量計算工程(ステップS222)の後に行ってもよい。
【0240】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図6に示す、第1混合気相計算工程(ステップS224)と第1混合物質計算工程(ステップS225)とを並行して行ってもよいし、第1混合気相計算工程(ステップS224)を第1混合物質計算工程(ステップS225)の後に行ってもよい。
【0241】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図7に示す、第2ガス反応量計算工程(ステップS231)と第2物質反応量計算工程(ステップS232)とを並行して行ってもよいし、第2ガス反応量計算工程(ステップS231)を第2物質反応量計算工程(ステップS232)の後に行ってもよい。
【0242】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図7に示す、第2混合気相計算工程(ステップS234)と第2混合物質計算工程(ステップS235)とを並行して行ってもよいし、第2混合気相計算工程(ステップS234)を第2混合物質計算工程(ステップS235)の後に行ってもよい。
【0243】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図8に示す、第1ベッド層反応量計算工程(ステップS241)と第1流入ガス反応量計算工程(ステップS242)とを並行して行ってもよいし、第1ベッド層反応量計算工程(ステップS241)を第1流入ガス反応量計算工程(ステップS242)の後に行ってもよい。
【0244】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図8に示す、第1混合ベッド層計算工程(ステップS244)と第1混合流入ガス算出工程(ステップS245)とを並行して行ってもよいし、第1混合ベッド層計算工程(ステップS244)を第1混合流入ガス算出工程(ステップS245)の後に行ってもよい。
【0245】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図9に示す、第2ベッド層反応量計算工程(ステップS251)と第2流入ガス反応量計算工程(ステップS252)とを並行して行ってもよいし、第2ベッド層反応量計算工程(ステップS251)を第2流入ガス反応量計算工程(ステップS252)の後に行ってもよい。
【0246】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図9に示す、第2混合ベッド層計算工程(ステップS254)と第2混合流入ガス算出工程(ステップS255)とを並行して行ってもよいし、第2混合ベッド層計算工程(ステップS254)を第2混合流入ガス算出工程(ステップS255)の後に行ってもよい。
【0247】
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、炉内の熱伝導を、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルで計算してもよい。
【0248】
<炉内反応の計算装置のハードウェア構成>
次に、炉内反応の計算装置のハードウェア構成の一例について説明する。図10は、炉内反応の計算装置のハードウェア構成図である。図10に示すように、炉内反応の計算装置20は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)21と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)22及びROM(Read Only Memory)23と、補助記憶装置24と、入出力インタフェース25と、出力装置である表示装置26等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス27で相互に接続されている。なお、補助記憶装置24及び表示装置26は、外部に設けられていてもよい。
【0249】
CPU21は、炉内反応の計算装置20の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU21は、ROM23または補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラムを実行して、測定収録画面と解析画面の表示動作を制御する。
【0250】
RAM22は、CPU21のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
【0251】
ROM23は、基本入出力プログラム等を記憶する。原料鉱石の反応計算プログラムはROM23に保存されてもよい。
【0252】
補助記憶装置24は、SSD(Solid State Drive)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、例えば、原料鉱石の反応計算プログラムや炉内反応の計算装置20の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納する。
【0253】
入出力インタフェース25は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
【0254】
表示装置26は、モニタディスプレイ等である。表示装置26では、測定収録画面と解析画面が表示され、入出力インタフェース25を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
【0255】
図10に示す炉内反応の計算装置20の各機能は、RAM22やROM23等の主記憶装置又は補助記憶装置24にシミュレーションソフトウェア(炉内反応の計算プログラムを含む)等を読み込ませ、RAM22、ROM23又は補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラム等をCPU21により実行することにより、RAM22等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うと共に、入出力インタフェース25及び表示装置26を動作させることで実現される。
【0256】
炉内反応の計算プログラムは、以下の構成のプログラムを用いることができる。
即ち、炉内反応の計算プログラムは、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算を少なくともコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記燃焼ガスを含むガス領域のうち、前記原料鉱石を含むベッド層から生じる生成ガスを含むガス領域影響因子に応じて分配された2つのガス領域のうちの一方の第1ガス領域を流れる第1気相の物量を修正し、修正第1気相を求める第1気相の物量修正工程と、
前記2つのガス領域のうちの、他方の第2ガス領域を流れる第2気相の物量を修正し、修正第2気相を求める第2気相の物量修正工程と、
前記第2ガス領域から前記ベッド層へ移動する流入ガスの流量を計算するガス混合量計算工程と、
前記修正第1気相と、前記ガス領域に存在する固体物質及び液体物質の少なくとも一方を含む物質のうち、前記第1ガス領域に存在する第1物質との平衡反応を計算する第1ガス領域平衡反応計算工程と、
前記修正第2気相と、前記物質のうち、前記第2ガス領域に存在する第2物質との平衡反応を計算する第2ガス領域平衡反応計算工程と、
前記ベッド層と前記流入ガスとの平衡反応を計算するベッド層平衡反応計算工程と、
を少なくともコンピュータに実行させるプログラムを用いることができる。
【0257】
炉内反応の計算プログラムは、例えば、RAM22やROM23の主記憶装置又は補助記憶装置24等のコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリ等の携帯可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0258】
以上の通り、本実施形態に係る炉内反応の計算装置20は、第1気相の物量修正部202、第2気相の物量修正部203、ガス混合量計算部204、第1ガス領域平衡反応計算部214-1及び第2ガス領域平衡反応計算部214-2を備える。炉内反応の計算装置20は、第1気相の物量修正部202及び第2気相の物量修正部203で添加分含有第1気相G12及び第2気相G21の物量をそれぞれ修正した後、ガス混合量計算部204で、第2ガス領域中の修正第2気相G22Aからベッド層へ移動する流入ガスG221の流量を計算する。そして、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域平衡反応計算部214-1において、修正第1気相G13と第1物質M11との平衡反応を計算すると共に、第2ガス領域平衡反応計算部214-2において、調整第2気相G22Bと第2物質M21との平衡反応を計算する。
【0259】
第1ガス領域に存在する第1気相G11は、ガス領域内でも、ベッド層から発生する反応性ガス、ダスト等を殆ど含まないガス相であり、第2ガス領域に存在する第2気相G21は、ガス領域内でも、反応性ガス、ダスト等を多く含むガス相である。炉内反応の計算装置20は、ベッド層から発生する反応性ガス、ダスト等の影響を受ける割合に応じてガス領域を2つの領域(第1ガス領域、第2ガス領域)に分けて、それぞれの平衡反応計算を行うことで、それぞれのガス領域の特性に応じてより高精度に平衡反応を計算できる。
【0260】
よって、炉内反応の計算装置20は、反応炉内のガス領域を第1ガス領域と第2ガス領域との2系列に分けて、それぞれの領域内を流れる修正第1気相G13と第1物質M11との平衡反応と、調整第2気相G22Bと第2物質M21との平衡反応をギブズエネルギー最小化法に基づいてそれぞれ計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の2種類のガス領域において、ベッド層から生じる反応後ガス、ダスト等の影響も考慮して、ガス領域内で生じる平衡反応を計算できる。また、膨大な計算リソースを要することなく、ベッド層近傍に高濃度に存在するベッド層からの反応後ガス等の影響を計算する際に考慮できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ガス領域における平衡反応を大きな負担をかけることなく、高精度に計算できる。
【0261】
また、炉内反応の計算装置20は、ベッド層平衡反応計算部215において、ベッド層と第2ガス領域からの流入ガスG221との平衡反応を計算することで、ベッド層と第2ガス領域から混入した流入ガスG221との平衡反応を計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ギブズエネルギー最小化法に基づいて、ベッド層と第2ガス領域からの流入ガスG221との平衡反応を計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内のベッド層近傍に高濃度で存在するベッド層反応後ガス(例えば、ベッド層においてベッド層がガス領域から流入したガス又はベッド層と平衡反応した際に生じる反応ガス)等の影響を考慮して、ベッド層において生じる平衡反応を高精度に計算できる。
【0262】
よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内において生じる反応を高精度に計算できる。炉内反応の計算装置20は、計算に要する負担を軽減しつつ、ロータリーキルン1内において生じる炉内反応を実際の炉内に近い状態で計算できるため、より実際の炉内の状態に近い解析を低負荷で行うことができる。
【0263】
炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応量計算部210-1及び第1物質反応量計算部211-1を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1ガス反応量計算部210-1において、修正第1気相G13の平衡反応に寄与する第1ガス反応分GR1を求め、第1物質反応量計算部211-1において、第1物質M11の平衡反応に寄与する第1物質反応分MR11を求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域平衡反応計算部214-1において、反応に必要な修正第1気相G13及び第1物質M11を用いて、修正第1気相G13と第1物質M11との平衡反応計算を確実に行うことができる。
【0264】
炉内反応の計算装置20は、第1混合気相計算部216-1及び第1混合物質計算部217-1を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1混合気相計算部216-1において、第1ガス未反応分Gr1と第1ガス生成分GP1とを混合した第1混合気相G14の流量を少なくとも計算できる。炉内反応の計算装置20は、第1混合物質計算部217-1において、第1物質未反応分Mr11と第1物質生成分MP11とを混合した第1混合物質M12の流量を少なくとも計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1気相G11と第1物質M11の装入端14Aへの移動量をより正確に計算できる。
【0265】
炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応量計算部210-2及び第2物質反応量計算部211-2を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2ガス反応量計算部210-2において、調整第2気相G22Bの平衡反応に寄与する第2ガス反応分GR2を求め、第2物質反応量計算部211-2において、第2物質M21の平衡反応に寄与する第1物質反応分MR21を求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第2ガス領域平衡反応計算部214-2において、反応に必要な調整第2気相G22B及び第2物質M21を用いて、調整第2気相G22Bと第2物質M21との平衡反応計算を確実に行うことができる。
【0266】
炉内反応の計算装置20は、第2混合気相計算部216-2及び第2混合物質計算部217-2を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2混合気相計算部216-2において、ガス未反応分Gr2とガス生成分GP2とを混合した第2混合気相G23の流量を少なくとも計算できる。炉内反応の計算装置20は、第2混合物質計算部217-2において、第2物質未反応分Mr21と第2物質生成分MP21とを混合した第2混合物質M22の流量を少なくとも計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2気相G21と第2物質M21の装入端14Aへの移動量をより正確に計算できる。
【0267】
炉内反応の計算装置20は、第1混合物質物量修正部220を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ガス領域に存在する第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の第2ガス領域への移動量を除すると共に、第2ガス領域中の第2修正混合物質M23に存在する第3物質M3の第1混合物質M12への移動量を加えて、第1修正混合物質M13を計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、領域A内に侵入した第1物質M11の領域(A-1)への移動量を正確に算出できる。
【0268】
炉内反応の計算装置20は、流入ガス分配部209を備え、ベッド層平衡反応計算部215は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1及び第2ベッド層平衡反応計算部215-2を有することができる。炉内反応の計算装置20は、流入ガス分配部209で流入ガスG221を第1流入ガスG221-1と第2流入ガスG221-2に分配する。そして、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1において、修正第1ベッド層S13Bと第1流入ガスG221-1との平衡反応を計算し、第2ベッド層平衡反応計算部215-2において、修正第2ベッド層S21Bと、第2流入ガスG221-2との平衡反応を計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ベッド層内に生じる第1ベッド層及び第2ベッド層と流入ガスG221との平衡反応を計算できるため、ロータリーキルン1内のベッド層と流入ガスG221との平衡反応をより高精度に計算できる。
【0269】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応量計算部212-1及び第1流入ガス反応量計算部213-1を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層反応量計算部212-1において、修正第1ベッド層S13Bから平衡反応に寄与する第1ベッド層反応分SR1を求め、第1流入ガス反応量計算部213-1において第1流入ガスG221-1から平衡反応に寄与する第1流入ガス反応分GR221を求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1において、反応に必要な第1ベッド層反応分SR1及び第1流入ガス反応分GR221を用いて、修正第1ベッド層S13Bと第1流入ガスG221-1との平衡反応計算を確実に行うことができる。
【0270】
炉内反応の計算装置20は、第1混合ベッド層計算部218-1及び第1混合流入ガス算出部219-1を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1混合ベッド層計算部218-1において、第1ベッド層未反応分Sr1と第1ベッド層生成分SP1とを混合した第1混合ベッド層S14の流量を少なくとも計算できる。炉内反応の計算装置20は、第1混合流入ガス算出部219-1において、第1流入ガス未反応分Gr221と第1流入ガス生成分GP221とを混合した第1混合流入ガスG222Aの流量を少なくとも計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1混合ベッド層S14の排出端14Bへの移動量を正確に計算できると共に、第1流入ガスG221-1の移動量を正確に計算できる。
【0271】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応量計算部212-2及び第2流入ガス反応量計算部213-2を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層反応量計算部212-2において、修正第2ベッド層S21Bから平衡反応に寄与する第2ベッド層反応分SR2を計算できる。また、炉内反応の計算装置20は、第2流入ガス反応量計算部213-2において第2流入ガスG221-2から平衡反応に寄与する第2流入ガス反応分GR222を求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応計算部215-2において、反応に必要な第2ベッド層反応分SR2及び第2流入ガス反応分GR222を用いて、修正第2ベッド層S21Bと流入ガスG221-2との平衡反応計算を確実に行うことができる。
【0272】
炉内反応の計算装置20は、第2混合ベッド層計算部218-2及び第2混合流入ガス算出部219-2を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2混合ベッド層計算部218-2において、第2ベッド層未反応分Sr2と第2ベッド層生成分SP2とを混合した第2混合ベッド層S22の流量を少なくとも計算できる。また、炉内反応の計算装置20は、第2混合流入ガス算出部219-2において、第2流入ガス未反応分Gr222と第2流入ガス生成分GP222とを混合した第2混合流入ガスG222Bの流量を少なくとも計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2混合ベッド層S22の排出端14Bへの移動量を正確に計算できると共に、第2流入ガスG221-2の移動量を正確に計算できる。
【0273】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層予備物量修正部205を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層予備物量修正部205において、添加分含有第1ベッド層S12に含まれる第7物質M7の第2ガス領域中の第2混合物質M22への移動量を減ずると共に、第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を加えることで、添加分含有第1ベッド層S12の物量を修正して予備修正第1ベッド層S13Aを算出できる。そのため、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1において使用される第1ベッド層反応分SR1を正確に求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1における第1ベッド層平衡反応計算をより正確に行うことができる。
【0274】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層予備物量修正部207を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層予備物量修正部207において、第2ベッド層S21に含まれる第9物質M9の第2ガス領域中の第2混合物質M22への移動量を減じて、第2ベッド層S21の物量を修正し、予備修正第2ベッド層S21Aを算出できる。よって、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応計算部215-2において平衡反応の計算に用いられる予備修正第2ベッド層S21Aの流量等を的確に求めることができる。したがって、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応計算部215-2における予備修正第2ベッド層S21Aの平衡反応の計算精度をより高めることができる。
【0275】
炉内反応の計算装置20は、流入ガス合算部221を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1混合流入ガスG222Aと第2混合流入ガスG222Bとを合算した混合流入ガスG223を計算できる。そのため、炉内反応の計算装置20は、平衡反応後にベッド層に存在する混合流入ガスG223を第2ガス領域に移動させることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、平衡反応後にベッド層に存在する混合流入ガスG223の第2ガス領域に存在する第2混合気相G23への移動量を計算できる。
【0276】
炉内反応の計算装置20は、ガス量合算部222を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ベッド層で生じた混合流入ガスG223を第2気相G23に混合して第2合算気相G24を求めることができる。そのため、炉内反応の計算装置20は、領域A内のベッド層内から第2ガス領域に移動した混合流入ガスG223を第2気相G23に含めて領域(A-1)に移動させることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、混合流入ガスG223と第2混合気相G23とを含む第2合算気相G24の領域(A-1)への移動量を計算できる。
【0277】
炉内反応の計算装置20は、第2混合物質1次物量修正部223を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2混合物質1次物量修正部223において、第2混合物質計算部217-2で生じた第2混合物質M22に含まれる第8物質M8の添加分含有第1ベッド層S12への移動量を減じ、第1ベッド層予備物量修正部205で生じる添加分含有第1ベッド層S12内に含まれる第7物質M7の第2混合物質M22への移動量と、第2ベッド層予備物量修正部207で生じる第2混合ベッド層S21内に含まれる第9物質M9の第2混合物質M22への移動量とを加えることができる。この結果、炉内反応の計算装置20は、第2混合物質M22の物量を修正し、第2修正混合物質M23を算出できる。よって、炉内反応の計算装置20は、平衡反応後の第2ガス領域中の第2物質M21の装入端14Aへの移動量をより正確に計算できる。
【0278】
炉内反応の計算装置20は、第2混合物質2次物量修正部224を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2混合物質2次物量修正部224において、第2修正混合物質M23に含まれる第3物質M3の第1混合物質M12への移動量を減じると共に、第1混合物質M12に含まれる第4物質M4の移動量を加えることができる。この結果、炉内反応の計算装置20は、第2修正混合物質M23の物量を修正し、第2修正混合物質M24を算出できる。よって、炉内反応の計算装置20は、平衡反応後の第2ガス領域中の第2物質M21の装入端14Aへの移動量をさらに正確に計算できる。
【0279】
炉内反応の計算装置20は、ガス領域分配部231を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の排出端14Bから燃焼ガスが供給された直後にガス領域を、ガス領域内に含まれるガス領域影響因子に応じて予め第1ガス領域及び第2ガス領域に分配できる。炉内反応の計算装置20は、排出端14Bを含む領域Nから領域Aに到達するまでの第1ガス領域を流れる第1気相G11と第2ガス領域を流れる第2気相G21との質量を正確に算出できる。そのため、炉内反応の計算装置20は、領域Aにおいて第1気相G11及び第2気相G21が平衡反応に使用される質量流量をより正確に算出できる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域及び第2ガス領域におけるそれぞれの平衡反応をより正確に計算できる。
【0280】
炉内反応の計算装置20は、第1物質分配部232を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の排出端14Bから燃焼ガスが供給された直後から、ガス領域内に含まれる第1物質を予め第1物質M11及び第2物質M21に分配できる。炉内反応の計算装置20は、排出端14Bを含む領域Nから領域Aに到達するまでのガス領域を流れる第1物質M11及び第2物質M21の質量を正確に算出できる。そのため、炉内反応の計算装置20は、領域Aにおいて第1物質M11及び第2物質M21が平衡反応に使用される質量流量をより正確に算出できる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域及び第2ガス領域におけるそれぞれの平衡反応をより正確に計算できる。
【0281】
炉内反応の計算装置20は、分配部201を備え、分配部201において、原料鉱石の移動の途中に投入された燃焼用材料240に含まれる気相とベッド層とを添加気相AG11と添加ベッド層AS11とに質量流量で分配できる。炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の途中から投入される燃焼用材料240を第1気相G1及び第1ベッド層S1に分配してそれぞれ別々の燃料として扱い、添加気相AG11は第1気相G11を構成する成分とし、添加ベッド層AS11は第1ベッド層S11を構成する成分にできる。炉内反応の計算装置20は、第1気相G11から第1ガス反応分GR1を求めると共に、第1ベッド層S11から第1ベッド層反応分SR1を求めることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1ガス領域平衡反応計算部214-1において、添加分含有第1気相G12から得られる修正第1気相G13と第1物質M11とから平衡反応に必要な反応分に基づいて平衡反応を計算できる。また、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1において、第1流入ガスG221-1と修正第1ベッド層S13Bとから平衡反応に必要な反応分に基づいて平衡反応を計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の途中から投入される燃焼用材料240を考慮して、ロータリーキルン1内の物質の挙動を解析できるため、燃焼用材料240を用いる場合でも、炉内反応の計算を高精度に行うことができる。
【0282】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層物量修正部206を備えることができる。即ち、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層予備物量修正部205で物量が修正された予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる第6物質M6の予備修正第2ベッド層S21Aへの移動量と、予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を考慮して、予備修正第1ベッド層S13Aの物量を修正し、修正第1ベッド層S13Bを算出できる。このとき、第1ベッド層平衡反応計算部215-1は、第1ベッド層S11として修正第1ベッド層S13Bを用いる。
【0283】
炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層物量修正部206において、予備修正第1ベッド層S13Aに存在する第6物質M6の第2ベッド層S21Aへの移動量を除すると共に、第2ベッドS21Aに存在する第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を加えることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1において平衡反応の計算に用いられる修正第1ベッド層S13Bの流量等をより正確に算出できるため、第1ベッド層における修正第1ベッド層S13Bの平衡反応の計算精度をより高めることができる。
【0284】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層物量修正部208を備えることができる。即ち、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層予備物量修正部207で物量が修正された予備修正第2ベッド層S21Aに含まれる第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量と、予備修正第1ベッド層S13Aに含まれる第6物質M6の予備修正第2ベッド層S21Aへの移動量とを考慮して、予備修正第2ベッド層S21Aの物量を修正し、修正第2ベッド層S21Bを算出できる。このとき、第2ベッド層平衡反応計算部215-2は、第2ベッド層S21として修正第2ベッド層S21Bを用いる。
【0285】
炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層物量修正部208において、第2ベッド層S21Aに存在する第5物質M5の予備修正第1ベッド層S13Aへの移動量を除すると共に、予備修正第1ベッド層S13Aに存在する第6物質M6の第2ベッド層S21Aへの移動量を加えることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層平衡反応計算部215-2において平衡反応の計算に用いられる予備修正第2ベッド層S21Aの流量等を的確に求めることができるため、第2ベッド層における修正第2ベッド層S21Bの平衡反応の計算精度をより高めることができる。
【0286】
炉内反応の計算装置20は、上記の第1ベッド層物量修正部206及び第2ベッド層物量修正部208を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算部215-1において平衡反応の計算に用いられる修正第1ベッド層S13Bの流量等をより正確に算出できると共に、第2ベッド層平衡反応計算部215-2において平衡反応の計算に用いられる修正第2ベッド層S21Bの流量等を的確に求めることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層S11における修正第1ベッド層S13Bの平衡反応及び第2ベッド層S21における修正第2ベッド層S21Bの平衡反応のそれぞれの計算精度をより高めることができる。
【0287】
炉内反応の計算装置20は、ベッド層分配部233を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の装入端14Aから供給された直後にベッド層S1を第1ベッド層S11及び第2ベッド層S21に分けることができる。炉内反応の計算装置20は、装入端14Aを含む領域1から領域Aに到達するまでの第1ベッド層S11及び第2ベッド層S21の質量を正確に算出できるため、領域Aにおいて第1ベッド層S11及び第2ベッド層S21が平衡反応に使用される質量流量をより正確に算出できる。よって、炉内反応の計算装置20は、第1ベッド層平衡反応計算及び第2ベッド層平衡反応計算をより正確に算出できる。
【0288】
このように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内のガス領域が複数の異なる反応挙動を示すことを考慮して、炉内で生じる平衡反応計算を高精度に計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の全領域に適用することで、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスを高精度に計算することを可能にできる。
【0289】
炉内反応の計算装置20をロータリーキルン1の全体に適用する場合について説明する。炉内反応の計算装置20は、例えば、図11に示すように、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の1つの領域Aにおける反応プロセスを単位操作モデルと仮定した時、単位操作モデルの組合せによってロータリーキルン1内の反応プロセスをモデル化できる。そして、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の複数の領域に、原料鉱石の流れ又は燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って繰り返し実施する(図11中の矢印参照)。そして、炉内反応の計算装置20は、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し実施する。
【0290】
炉内反応の計算装置20をロータリーキルン1の全体に適用する場合のフローチャートを図12に示す。図12に示すように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化する(モデル化工程:ステップS21)。
【0291】
単位操作モデルには、上記の図2に示す炉内反応の計算装置20が適用される。それぞれの単位操作モデル毎に、単位操作モデルを構成する、ガス混合量計算部204、流入ガス分配部209、第1ガス領域平衡反応計算部214-1、第2ガス領域平衡反応計算部214-2、第1ベッド層平衡反応計算部215-1、第2ベッド層平衡反応計算部215-2等が予め用意される。
【0292】
各単位操作モデルは、原料鉱石や燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って相互に接続される。
【0293】
次に、炉内反応の計算装置20は、ステップS21においてモデル化された単位操作モデルの計算を行う(計算工程:ステップS22)。単位操作モデルには、流れの情報が入力される。
【0294】
流れの情報は、原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度、回転数等のデータである。流れの情報が入力されると、単位操作モデルは所定の計算を行い、その計算値(原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度等)が出力される。これらの計算結果から、図2に示す炉内反応の計算装置20の各構成に用いる値が計算される。炉内反応の計算装置20の各部に用いる値としては、ベッド層S1、第1気相G1等の領域A内の各種気相の流量、第1ベッド層S1等の領域A内の各種ベッド層の流量、第1物質M1の流量等の各種物質の流量、ガス反応分GR1、ガス未反応分Gr1、ガス生成分GP1等の領域A内の各種反応分、未反応分及び生成分の流量等である。
【0295】
本実施形態では、単位操作モデルの計算は、最も装入端14A側に位置する単位操作モデルから行う。
【0296】
次に、炉内反応の計算装置20は、最終の単位操作モデルまで計算したか否か判断する(ステップS23)
【0297】
最終の単位操作モデルまで計算した場合(ステップ23:Yes)は、炉内反応の計算装置20は、単位操作モデルの前回の計算値があるか否か判断する(ステップS24)。
【0298】
前回の計算値がある場合(ステップS24:Yes)には、炉内反応の計算装置20は、計算工程(ステップS22)において計算された計算値と、前回の計算値とを比較する(ステップS25)。
【0299】
次に、炉内反応の計算装置20は、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たすか否か判断する(比較工程:ステップS26)。
【0300】
収束条件としては、例えば、計算値と前回の計算値との差が数℃(例えば、1℃)以下の範囲内である。
【0301】
計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たす場合(ステップS26:Yes)には、炉内反応の計算装置20は、計算を終了する。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体で起こる反応プロセスが解析される。
【0302】
一方、ステップS23において、最終の単位操作モデルまで計算していない場合(ステップS23:No)は、炉内反応の計算装置20は、隣接する他の単位操作モデルである領域(A+1)又は領域(A-1)に位置する単位操作モデルに移行する(ステップS27)。そして、炉内反応の計算装置20は、領域(A+1)又は領域(A-1)に位置する単位操作モデルの計算を行う(ステップS22)。
【0303】
ステップS24において、前回の計算値がない場合(ステップS24:No)、又はステップS26において、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たさない場合(ステップS26:No)には、炉内反応の計算装置20は、先頭の単位操作モデルに移行する(ステップS28)。
【0304】
よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化し、単位操作モデルの接続順序に沿って、単位操作モデルの各々に設定された値に基づいて計算を行う。本実施形態では、それぞれの単位操作モデルの計算をロータリーキルン1の装入端14A側から排出端14B側に向かって順じ行った後、排出端14B側から装入端14A側に向かって行う(図6参照)。そして、一連の操作を、所定の領域Aにおける計算値が所定の収束条件が満たされるまで繰り返す。その結果、ロータリーキルン1内のそれぞれの領域における、燃焼ガスと原料鉱石の流量等の計算結果が導き出される。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体での燃焼ガス及び原料鉱石を構成する各物質の挙動をより正確に解析することが可能となる。
【0305】
このように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスを反応炉内のガス領域が2種類の異なる反応挙動を示すことを少なくとも考慮して反応炉内の反応を高精度に計算できると共に、計算にかかる負担を軽減できる。そのため、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の運転条件(例えば、ロータリーキルン1の大きさや回転数、原料鉱石の種類、供給量)等を変えながら、ロータリーキルン1内の各物質の挙動をより正確に低負荷で解析できる。よって、炉内反応の計算装置20は、原料鉱石の種類及び供給量の変更、ロータリーキルン1の設備改善の事前検討、操業条件等による影響調査等に有効に活用することが可能である。
【0306】
なお、本実施形態では、ロータリーキルン1内に供給される原料は、原料鉱石以外の原料でもよい。
【0307】
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1の途中から投下される燃焼用材料は、揮発分及びベッド層の両方を必ずしも含んでいなくてもよいし、揮発分及びベッド層以外に、灰分等の他の物質を含んでいてもよい。
【0308】
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1以外に、原料鉱石を装入端14A側から排出端14B側に向かって移動させながら加熱する反応炉であればよい。
【0309】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0310】
1 ロータリーキルン
11 キルン本体
16 バーナー
20 炉内反応の計算装置
201 燃焼用材料の分配部(分配部)
202 第1気相の物量修正部
203 第2気相の物量修正部
204 ガス混合量計算部
205 第1ベッド層予備物量修正部
206 第1ベッド層物量修正部
207 第2ベッド層予備物量修正部
208 第2ベッド層物量修正部
209 流入ガス分配部
210-1 第1ガス反応量計算部
210-2 第2ガス反応量計算部
211-1 第1物質反応量計算部
211-2 第2物質反応量計算部
212-1 第1ベッド層反応量計算部
212-2 第2ベッド層反応量計算部
213-1 第1流入ガス反応量計算部
213-2 第2流入ガス反応量計算部
214-1 第1ガス領域平衡反応計算部
214-2 第2ガス領域平衡反応計算部
215-1 第1ベッド層平衡反応計算部
215-2 第2ベッド層平衡反応計算部
216-1 第1混合気相計算部
216-2 第2混合気相計算部
217-1 第1混合物質計算部
217-2 第2混合物質計算部
218-1 第1混合ベッド層計算部
218-2 第2混合ベッド層計算部
219-1 第1混合流入ガス算出部
219-2 第2混合流入ガス算出部
220 第1混合物質物量修正部
221 流入ガス合算部
222 ガス量合算部
223 第2混合物質1次物量修正部
224 第2混合物質2次物量修正部
G1 気相
G11 第1気相
G12 添加分含有第1気相
G121 第1拡散ガス
G122 第2拡散ガス
G13 修正第1気相
G14 第1混合気相
G21 第2気相
G22A 修正第2気相
G22B 調整第2気相
G23 第2混合気相
G24 第2合算気相
G221 流入ガス
G221-1 第1流入ガス
G221-2 第2流入ガス
G222A 第1混合流入ガス
G222B 第2混合流入ガス
G223 混合流入ガス
S1 ベッド層
S11 第1ベッド層
S12 添加分含有第1ベッド層
S13A 予備修正第1ベッド層
S13B 修正第1ベッド層
S14 第1混合ベッド層
S21 第2ベッド層
S21A 修正第2ベッド層
S21B 修正第2ベッド層
S22 第2混合ベッド層
M1 物質
M11 第1物質
M12 第1修正混合物質
M21 第2物質
M3 第3物質
M4 第4物質
M5 第5物質
M6 第6物質
M7 第7物質
M8 第8物質
M9 第9物質
GR1 第1ガス反応分
Gr1 第1ガス未反応分
GP1 第1ガス生成分
GR2 第2ガス反応分
Gr2 第2ガス未反応分
GP2 第2ガス生成分
MR11 第1物質反応分
Mr11 第1物質未反応分
MP11第1物質生成分
MR21 第2物質反応分
Mr21 第2物質未反応分
MP21 第2物質生成分
GR221 第1流入ガス反応分
Gr221 第1流入ガス未反応分
GP221 第1流入ガス生成分
GR222 第2流入ガス反応分
Gr222 第2流入ガス未反応分
GP222 第2流入ガス生成分
SR1 第1ベッド層反応分
Sr1 第1ベッド層未反応分
SP1 第1ベッド層生成分
SR2 第2ベッド層反応分
Sr2 第2ベッド層未反応分
SP2 第2ベッド層生成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12