(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103162
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230719BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230719BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230719BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230719BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230719BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230719BHJP
B32B 3/04 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
B32B3/30
B32B9/00 Z
B32B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160202
(22)【出願日】2022-10-04
(62)【分割の表示】P 2022003766の分割
【原出願日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知大
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 彰二
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
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(57)【要約】
【課題】樹脂フィルムを剥離した場合にも、表面処理フィルムの破断を抑制することができる積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、表面処理フィルムと液晶フィルムとが積層されている。表面処理フィルムは、基材層と、基材層表面に設けられた塗工層と、基材層表面に塗工層が設けられていない第1端部とを有する。液晶フィルムは、樹脂フィルムと液晶層とを有し、かつ、液晶層側が表面処理フィルムに対向している。樹脂フィルムは、表面粗さSaが0.03μm以上0.60μm以下の凹凸領域を有する第2端部を有する、積層体の断面において、第1端部と第2端部とが対向し、かつ、第1端部側の塗工層の端部の第1位置が、第2端部の凹凸領域の内側の端部の第2位置と同じか第2位置よりも内側にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理フィルムと液晶フィルムとが積層された積層体であって、
前記表面処理フィルムは、基材層と、前記基材層表面に設けられた塗工層と、前記基材層表面に前記塗工層が設けられていない第1端部と、を有し、
前記液晶フィルムは、樹脂フィルムと液晶層とを有し、かつ、前記液晶層側が前記表面処理フィルムに対向しており、
前記樹脂フィルムは、表面粗さSaが0.03μm以上0.60μm以下の凹凸領域を有する第2端部を有し、
前記積層体の断面において、前記第1端部と前記第2端部とが対向し、かつ、前記第1端部側の前記塗工層の端部の第1位置が、前記第2端部の前記凹凸領域の内側の端部の第2位置と同じか前記第2位置よりも内側にある、積層体。
【請求項2】
前記液晶層は、前記凹凸領域の少なくとも一部を覆っている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記表面処理フィルムの前記基材層表面に前記塗工層が設けられた塗工領域の、温度23℃、相対湿度55%における突刺し強度は、1.00N以下であり、
前記基材層の温度23℃、相対湿度55%における突刺し強度は、3.00N以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
温度23℃、相対湿度55%において前記表面処理フィルムを前記第1端部から引裂いたときの引裂き強度は、0.5N以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1位置と前記第2位置との距離L1は、1mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1端部及び前記第2端部は、前記積層体の平面視において対向する一対の辺に沿って設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記凹凸領域は、ナーリング部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材層の厚みは、20μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材層は、環状オレフィン樹脂フィルムである、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記塗工層は、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層である、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記樹脂フィルムは、セルロース樹脂フィルムである、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
温度23℃、相対湿度55%において、前記表面処理フィルムの前記塗工層に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、前記基材層上に90個以上の前記クロスハッチが残る、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項13】
前記積層体は、長尺体であり、
前記第1端部及び前記第2端部は、前記積層体の幅方向の両端部に設けられている、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
さらに、前記表面処理フィルムと前記液晶フィルムとの間に直線偏光層を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
直線偏光層と、前記直線偏光層の片面に積層された表面処理フィルムと、を有する偏光板の製造方法であって、
請求項14に記載の積層体から前記樹脂フィルムを剥離する工程を含む、偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関し、さらに積層体を用いた偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置に用いられる光学フィルムとして、樹脂フィルム等の基材層の表面に、樹脂組成物を塗工することによって位相差層又はハードコート層等の塗布膜が設けられた表面処理フィルムが知られている(例えば、特許文献1及び2等)。
【0003】
光学フィルムに用いられる樹脂フィルムの端部に、ナーリングと呼ばれる微小な凹凸を付与し、樹脂フィルムのハンドリング性を向上することが知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-54939号公報
【特許文献2】特開2011-59154号公報
【特許文献3】特開2014-218016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面処理フィルムと液晶層とを積層した光学フィルムの製造する際に、端部にナーリングが付与された樹脂フィルム上に液晶層が形成された液晶フィルムの液晶層側と表面処理フィルムとを積層し、この積層体から樹脂フィルムを剥離して光学フィルムを得ることがある。積層体では、樹脂フィルムのナーリングが形成された領域に表面処理フィルムが接して付着した状態となることがある。この付着した状態を有する積層体から樹脂フィルムを剥離すると、表面処理フィルムが破断することがあった。
【0006】
本発明は、端部に凹凸領域を有する樹脂フィルムを剥離した場合にも、表面処理フィルムの破断を抑制することができる積層体、及び、これを用いた偏光板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕 表面処理フィルムと液晶フィルムとが積層された積層体であって、
前記表面処理フィルムは、基材層と、前記基材層表面に設けられた塗工層と、前記基材層表面に前記塗工層が設けられていない第1端部と、を有し、
前記液晶フィルムは、樹脂フィルムと液晶層とを有し、かつ、前記液晶層側が前記表面処理フィルムに対向しており、
前記樹脂フィルムは、表面粗さSaが0.03μm以上0.60μm以下の凹凸領域を有する第2端部を有し、
前記積層体の断面において、前記第1端部と前記第2端部とが対向し、かつ、前記第1端部側の前記塗工層の端部の第1位置が、前記第2端部の前記凹凸領域の内側の端部の第2位置と同じか前記第2位置よりも内側にある、積層体。
〔2〕 前記液晶層は、前記凹凸領域の少なくとも一部を覆っている、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 前記表面処理フィルムの前記基材層表面に前記塗工層が設けられた塗工領域の、温度23℃、相対湿度55%における突刺し強度は、1.00N以下であり、
前記基材層の温度23℃、相対湿度55%における突刺し強度は、3.00N以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 温度23℃、相対湿度55%において前記表面処理フィルムを前記第1端部から引裂いたときの引裂き強度は、0.5N以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層体。
〔5〕 前記第1位置と前記第2位置との距離L1は、1mm以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層体。
〔6〕 前記第1端部及び前記第2端部は、前記積層体の平面視において対向する一対の辺に沿って設けられている、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層体。
〔7〕 前記凹凸領域は、ナーリング部である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層体。
〔8〕 前記基材層の厚みは、20μm以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の積層体。
〔9〕 前記基材層は、環状オレフィン樹脂フィルムである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層体。
〔10〕 前記塗工層は、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層体。
〔11〕 前記樹脂フィルムは、セルロース樹脂フィルムである、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の積層体。
〔12〕 温度23℃、相対湿度55%において、前記表面処理フィルムの前記塗工層に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、前記基材層上に90個以上の前記クロスハッチが残る、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の積層体。
〔13〕 前記積層体は、長尺体であり、
前記第1端部及び前記第2端部は、前記積層体の幅方向の両端部に設けられている、〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔14〕 さらに、前記表面処理フィルムと前記液晶フィルムとの間に直線偏光層を有する、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の積層体。
〔15〕 直線偏光層と、前記直線偏光層の片面に積層された表面処理フィルムと、を有する偏光板の製造方法であって、
前記〔14〕に記載の積層体から前記樹脂フィルムを剥離する工程を含む、偏光板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体によれば、端部に凹凸領域を有する樹脂フィルムを剥離した場合にも、表面処理フィルムの破断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明のさらに他の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
【
図4】引裂き強度の測定に用いるサンプル片を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。各図面において、先に説明した部材と同じ部材については同じ符号を付してその説明を省略する。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0011】
[実施形態1]
(積層体)
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。積層体1は、
図1に示すように、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20(液晶フィルム)とが積層されている。
【0012】
表面処理フィルム10は、基材層11と、基材層11表面に設けられた塗工層12と、基材層11表面に塗工層12が設けられていない第1端部16とを有する。表面処理フィルム10の基材層11表面に塗工層12が設けられた領域は塗工領域17である。
【0013】
第1端部16は、表面処理フィルム10の平面視における辺のうちの少なくとも一つの辺の一部又は全体に沿って設けられていればよく、2以上の辺の一部又は全体に沿って設けられていてもよい。第1端部16は、表面処理フィルム10の平面視において対向する一対の辺に沿って設けられていることが好ましい。
図1に示す積層体1では、第1端部16は、積層体1の幅方向Wの両端部に設けられていることが好ましい。第1端部16の幅は、通常5mm以上であり、10mm以上であってもよく、また、例えば100mm以下であってもよく、80mm以下であってもよく、50mm以下であってもよく、40mm以下であってもよい。第1端部16の幅は、基材層11の端部から塗工層12の端部までの最短距離であり、後述する実施例に記載の方法によって決定することができる。
【0014】
第1液晶フィルム20は、第1樹脂フィルム21(樹脂フィルム)と第1液晶層22(液晶層)とを有する。第1液晶フィルム20は、第1樹脂フィルム21と第1液晶層22とが直接接していてもよいが、第1樹脂フィルム21と第1液晶層22との間に第1配向層を有していてもよい。第1液晶フィルム20が第1配向層を有する場合、第1樹脂フィルム21と第1液晶層22とは第1配向層に直接接していることができる。第1液晶フィルム20は、第1樹脂フィルム21と第1液晶層22との間又は第1配向層と第1液晶層22との間で、第1樹脂フィルム21と第1液晶層22とが分離可能になっている。第1樹脂フィルム21は、表面粗さSaが0.03μm以上0.60μm以下の凹凸領域25を有する第2端部26を有する。
【0015】
第2端部26が有する凹凸領域25は、第2端部26の全体に形成されていてもよく、第2端部26の一部に形成されていてもよい。凹凸領域25は、第2端部26が有する辺に沿って形成されていることが好ましい。凹凸領域25は、少なくとも表面処理フィルム10に対向する側の表面に形成されることができる。
【0016】
凹凸領域25は、例えばナーリング部であることができる。ナーリング部は、第1樹脂フィルム21をロール状に巻き取ったときの巻きずれ、変形、第1樹脂フィルム21のブロッキング等を抑制するために設けられた微小な凹凸(ナーリング)が形成された領域である。第2端部26は、第1液晶フィルム20の平面視における辺のうちの一部又は全体に沿って設けられていればよく、2以上の辺の一部又は全体に沿って設けられていてもよい。第2端部26は、表面処理フィルム10の平面視において対向する一対の辺に沿って設けられていることが好ましい。
図1に示す積層体1では、積層体1の幅方向Wの両端部に設けられていることが好ましい。
【0017】
凹凸領域25の表面粗さSaは、0.03μm以上であるが、0.05μm以上であってもよく、0.10μm以上であってもよく、0.20μm以上であってもよく、また、0.60μm以下であるが、0.50μm以下であってもよく、0.40μm以下であってもよい。凹凸領域25の表面粗さSaを測定したときに表面粗さSaとともに取得できるピーク値(表面粗さピーク値)は、0.30μm以上であってもよく、1.00μm以上であってもよく、3.00μm以上であってもよく、また、15.00μm以下であってもよく、10.00μm以下であってもよく、8.00μm以下であってもよい。表面粗さSa及びピーク値は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。表面粗さSaは、「算術平均高さ」であり、表面粗さピーク値(Spともいう)は、「最大山高さ」である。
【0018】
第1液晶フィルム20では通常、その断面において第1液晶層22の端部が第1樹脂フィルム21の端部よりも内側にあるが、第1液晶層22が第1樹脂フィルム21の表面全体を覆っていてもよい。当該内側とは、第1液晶フィルム20の平面における中央側である。第1液晶層22は、第1樹脂フィルム21の凹凸領域25の少なくとも一部を覆っていてもよく、凹凸領域25の全体を覆っていてもよく、凹凸領域25を覆っていなくてもよい。
【0019】
積層体1において、第1液晶フィルム20は、
図1に示すように第1液晶層22側が表面処理フィルム10に対向している。表面処理フィルム10は、
図1に示すように基材層11側が第1液晶フィルム20に対向していてもよく、塗工層12側が第1液晶フィルム20に対向していてもよい。表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20とは、
図1に示すように、例えば第1貼合層41を介して積層することができる。表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20との間には、直線偏光層、第2液晶層、第1貼合層以外の貼合層等が設けられていてもよい。これらの層を有する積層体については後述の実施形態で説明する。
【0020】
積層体1における表面処理フィルム10と第1樹脂フィルム21とは、積層体1の断面において第1端部16と第2端部26とが対向し、かつ、第1端部16側の塗工層12の端部の第1位置13が第2端部26の凹凸領域25の内側の端部の第2位置23と同じか又は第2位置23よりも内側にある(
図1)。当該内側とは表面処理フィルム10の平面における中央側であり、凹凸領域の内側とは、第1液晶フィルム20の平面における中央側である。凹凸領域25の内側の端部は、積層体1の断面において、凹部又は凸部の形成が開始されている位置のうちの最も内側の位置をいう。そのため、積層体1の断面において、塗工層12と凹凸領域25とは、第1位置13及び第2位置23を除いて積層体1の積層方向に重なっていない。
【0021】
第1端部16と第2端部26とは、積層体1の断面において、第1端部16の全体と第2端部26の全体とが対向していてもよく、第1端部16の全体に第2端部26の一部が対向していてもよく、第1端部16の一部に第2端部26の全体が対向していてもよく、第1端部16の一部に第2端部26の一部が対向していてもよい。
【0022】
第1端部16と第2端部26とは、積層体1の断面において第1端部16と第2端部26の凹凸領域25との間に、第1液晶層22及び第1貼合層41等の他の層を介在して対向していてもよく、他の層を介在せずに対向していてもよい。第1液晶フィルム20の第1液晶層22が凹凸領域25の少なくとも一部を覆っている場合、第1端部16と第2端部26の凹凸領域25との間には第1液晶層22が存在することができる(
図1)。
【0023】
積層体1は、第1樹脂フィルム21を剥離して、液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置に適用される。積層体1の端部では、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20に含まれる第1樹脂フィルム21の凹凸領域25とが直接又は第1液晶層22等の他の層を介して接して付着した状態となることがある。この状態の積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離すると、第1樹脂フィルム21の剥離に伴って第1樹脂フィルム21に付着した表面処理フィルム10の端部も引っ張られる。このとき、表面処理フィルムの当該端部にも塗工層12が形成されていると、当該端部の後述する突刺し強度が低下して脆くなっている傾向にあるため、第1樹脂フィルムの剥離によって表面処理フィルムが破断することがある。
【0024】
一方、本実施形態の積層体1では、表面処理フィルム10における第1端部16側の塗工層12の第1位置13が、第1液晶フィルム20における第2端部26の凹凸領域25の第2位置23と同じか第2位置23よりも内側にある。そのため、積層体1の端部において、第1液晶フィルム20と表面処理フィルム10とが接して付着した場合であっても、第1液晶フィルム20の凹凸領域25に付着するのは、塗工層12が形成されていない第1端部16とすることができる。第1端部16は、塗工層12が形成された領域に比較すると突刺し強度が大きい。これにより、表面処理フィルム10の第1端部16と第1液晶フィルム20の第2端部26とが付着した状態にある積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離した場合であっても、表面処理フィルム10が破断することを抑制することができる。
【0025】
上記のように、積層体1では、第1端部16側の塗工層12の第1位置13は、第2端部26の凹凸領域25の第2位置23と同じか第2位置23よりも内側であればよい。そのため、積層体1の断面における第1位置13と第2位置23との距離L1(積層体の面方向に沿う距離)は、0mm以上であればよいが、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、また、例えば50mm以下とすることができ、30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。表面処理フィルム10の破断を十分に抑制するという観点から距離L1は大きい方が好ましいが、距離L1が大きくなりすぎると、積層体1から得られる表示装置に適用するために用いられる製品部分が少なくなって歩留まりが低下する傾向にある。
【0026】
積層体1において、表面処理フィルム10の第1液晶フィルム20側の表面から、第1液晶フィルム20が有する第1樹脂フィルム21の表面処理フィルム10側の表面(凹凸領域25以外の表面)までの距離L2は、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよく、また、通常1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。距離L2が上記の範囲である積層体1は、積層体1の端部において、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20とが付着しやすい傾向にある。そのため、上記したように第1位置13を第2位置23と同じか第2位置23よりも内側とすることにより、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離する場合に表面処理フィルム10が破断することを効果的に抑制することができる。
【0027】
表面処理フィルム10の塗工領域17の温度23℃、相対湿度55%における突刺し強度は、1.00N以下であってもよく、0.90N以下であってもよく、0.80N以下であってもよく、また0.30N以上であってもよく、0.40N以上であってもよい。表面処理フィルム10の温度23℃、相対湿度55%における基材層11の突刺し強度は、3.00N以上であってよく、3.30N以上であってもよく、4.00N以上であってもよく、また10.00N以下であってもよい。基材層11の突刺し強度は、表面処理フィルム10における第1端部16の突刺し強度と考えることができる。上記の突刺し強度は、後述する実施例に記載のようにニードルを装着したハンディ圧縮試験機を用いて行うことができる。
【0028】
塗工領域17及び基材層11の突刺し強度が上記の範囲内であることにより、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離する際に、表面処理フィルム10が破断することをより一層抑制しやすくなる。表面処理フィルム10の塗工領域17及び基材層11の突刺し強度は、例えば塗工層12の厚み、基材層11の厚み、基材の密度、基材層11を構成する樹脂の種類、及び当該樹脂の結晶化度等によって調整することができる。
【0029】
温度23℃、相対湿度55%において、表面処理フィルム10を第1端部16から引裂いたときの引裂き強度は、0.5N以上であることが好ましく、0.8N以上であってもよく、1.0N以上であってもよく、1.2N以上であってもよく、1.5N以上であってもよく、1.8N以上であってもよく、通常5.0N以下であり、4.5N以下であってもよく、4.0N以下であってもよい。
【0030】
表面処理フィルム10の上記引裂き強度は、第1端部16が位置する表面処理フィルム10の端を引裂き開始位置として、当該端から表面処理フィルム10を引裂いたときの引裂き強度であり、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。上記第1端部16に含まれる表面処理フィルム10の辺が直線状である場合には、引裂き方向は当該辺に直交する方向である。引裂き方向は、引裂いたときに裂け目が進行する方向と言い換えられてもよい。
【0031】
表面処理フィルム10の上記引裂き強度が上記の範囲内であることにより、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離する際に、表面処理フィルム10が破断することをより一層抑制しやすくなる。表面処理フィルム10の上記引裂き強度は、例えば、基材層11の厚み及び第1端部16の幅(基材層11表面に塗工層12が設けられていない領域の幅)等によって調整することができる。
【0032】
表面処理フィルム10の第1端部16の幅は、1mm以上であることが好ましく、5mm以上であってもよく、7mm以上であってもよく、10mm以上であってもよく、また、例えば50mm以下であってもよく、40mm以下であってもよい。第1端部16の幅を上記の範囲内とすることにより、表面処理フィルム10を上記した引裂き強度に調整しやすくなる。第1端部16の幅は、表面処理フィルム10から採取したサンプルの第1端部16の延在方向の中央の位置と、この中央の位置から延在方向に沿って両方向(左右方向)に1cmの位置との合計3点の位置における、基材層11の端から塗工層12の端までの間の最短距離の平均値をいい、後述する実施例に記載の方法によって決定することができる。表面処理フィルム10が長尺体である場合のサンプルは、長尺体の長さ方向の両端から採取し、採取した2つのサンプルのそれぞれについて上記した手順で決定した最短距離の平均値をさらに平均し、これにより得られた値を第1端部16の幅とする。表面処理フィルム10が枚葉体である場合は、任意の位置において採取する。
【0033】
表面処理フィルム10は、塗工層12に100個のクロスハッチを形成して行うクロスハッチ試験により、基材層11上に塗工層12の90個以上のクロスハッチが残るものであることが好ましく、95個以上残るものであることがより好ましく、100個残るものであることがさらに好ましい。このような表面処理フィルム10は、基材層11と塗工層12との密着性に優れていると考えられる。密着性に優れた表面処理フィルム10は塗工層12が形成されている領域が脆くなる傾向にあるため、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離すると表面処理フィルム10が破断しやすいと考えられる。そのため、基材層11と塗工層12との密着性に優れた表面処理フィルム10を含む積層体1において、上記したように第1位置13を第2位置23と同じか第2位置23よりも内側とすることにより、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離する場合に表面処理フィルム10が破断することを効果的に抑制することができる。クロスハッチ試験は、温度23℃、相対湿度55%において、表面処理フィルム10の塗工層12面に1mm角のクロスハッチを100個刻み、このクロスハッチに貼付した粘着テープを引き剥がすことによって行う試験であり、後述する実施例に記載の方法によって行うことができる。
【0034】
表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20とが第1貼合層41を介して積層している場合、積層体1の端部における第1貼合層41の端部の位置は、積層体1の断面において、第1液晶フィルム20の第1液晶層22の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましく、表面処理フィルム10の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。
【0035】
第1液晶フィルム20が第1配向層を有する場合、積層体1の端部における第1配向層の端部の位置は、積層体1の断面において、第1樹脂フィルム21の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましく、第1液晶層22の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましく、第1配向層の端部の側面を覆うように第1液晶層22が設けられていてもよい。
【0036】
積層体1は、枚葉体であってもよく、連続的に搬送され得る長尺体であってもよい。本明細書において、長尺体とは、例えば30m以上15000m以下の長さを有する積層体をいう。積層体1が長尺体である場合、第1端部16及び第2端部26は、積層体1の幅方向Wの両端部に設けられていることが好ましい。
【0037】
積層体1は、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20とを、例えば第1貼合層41を介して積層することによって製造することができる。表面処理フィルム10は、基材層11に、塗工層12を形成するための塗工材料を塗工することによって得ることができる。第1液晶フィルム20は、第1樹脂フィルム21又は第1樹脂フィルム21に形成された第1配向層に、第1液晶層22を形成するための組成物を塗工することによって得ることができる。
【0038】
第1液晶層22が位相差層である場合、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離したものを位相差板に用いることができる。第1液晶層22が直線偏光層である場合、積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離したものを直線偏光板に用いることができる。
【0039】
積層体1から第1樹脂フィルム21を剥離したとき、積層体1から、第1樹脂フィルム21又は第1樹脂フィルム21及び第1配向層が分離してもよい。あるいは、積層体1から、第1樹脂フィルム(及び第1配向層)とともに、第1液晶層22のうちの第1貼合層41に貼合されていない領域が第1樹脂フィルム21に付着した状態で分離してもよい。また、積層体1の上記した第1端部16と第2端部26とが対向している領域では、表面処理フィルム10に第1液晶層22の一部が付着した状態となってもよい。
【0040】
[実施形態2]
図2は、本発明の他の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。本実施形態の積層体2は、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20との間に、第1貼合層41以外の他の層を有している点において、先の実施形態で説明した積層体1と異なっているため、以下ではこの点について説明する。この点以外については、積層体2は、先の実施形態の積層体1で説明したようにすることができる。
【0041】
積層体2は、
図2に示すように、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20との間に、表面処理フィルム10側から順に、第2貼合層42、直線偏光層30、及び第3貼合層43が積層されている。積層体2は、直線偏光層30の第1液晶フィルム20側に保護層を有していてもよい。積層体2において、表面処理フィルム10の第1液晶フィルム20側の表面から、第1液晶フィルム20が有する第1樹脂フィルム21の表面処理フィルム10側の表面(凹凸領域25以外の表面)までの距離L2は、先の実施形態で説明した範囲であることが好ましい。
【0042】
積層体2の端部における第2貼合層42の端部の位置は、積層体2の断面において、表面処理フィルム10の端部と同じ位置か当該位置よりも内側であることが好ましく、直線偏光層30の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。積層体2の端部における第3貼合層43の端部の位置は、直線偏光層30の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましく、第1液晶層22の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。積層体2の端部において、直線偏光層30の端部は、第1液晶層22の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。
【0043】
積層体2は、例えば、表面処理フィルム10と直線偏光層30とを第2貼合層42を介して積層して直線偏光板を得、直線偏光板と第1液晶フィルム20とを第3貼合層43を介して積層して製造することができる。
【0044】
第1液晶層22は位相差層であってもよく、例えば、第1液晶層22がλ/4位相差層である場合、積層体2から第1樹脂フィルム21を剥離したものを円偏光板(偏光板)に用いることができる。第1液晶層22は、逆波長分散性のλ/4位相差層であってもよい。
【0045】
円偏光板の製造方法では、積層体2を準備し、この積層体2から第1樹脂フィルム21を剥離する工程を含むことができる。積層体2を用いることにより、第1樹脂フィルム21を剥離したときに、表面処理フィルム10が破断することを抑制することができる。
【0046】
[実施形態3]
図3は、本発明のさらに他の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。本実施形態の積層体3は、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20との間に介在する層構造が、先の実施形態で説明した積層体1,2と異なっているため、以下ではこの点について説明する。この点以外については、積層体3は、先の実施形態の積層体1,2で説明したようにすることができる。
【0047】
積層体3は、
図3に示すように、表面処理フィルム10と第1液晶フィルム20との間に、表面処理フィルム10側から順に、第2貼合層42、直線偏光層30、第4貼合層44、第2液晶層32、及び第5貼合層45が積層されている。積層体3は、第2液晶層32の表面処理フィルム10側又は第1液晶フィルム20側に、第2液晶層32に直接接するように第2配向層を有していてもよい。積層体3は、直線偏光層30の第1液晶フィルム20側に保護層を有していてもよい。積層体3において、表面処理フィルム10の第1液晶フィルム20側の表面から、第1液晶フィルム20が有する第1樹脂フィルム21の表面処理フィルム10側の表面(凹凸領域25以外の表面)までの距離L2は、先の実施形態で説明した範囲であることが好ましい。
【0048】
積層体3の端部における第4貼合層44の端部の位置は、積層体3の断面において、直線偏光層30の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましく、第2液晶層32の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。積層体3の端部における第5貼合層45の端部の位置は、第2液晶層32の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましく、第1液晶層22の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。積層体3の端部において、直線偏光層30の端部は、第1液晶層22の端部と同じ位置か当該端部よりも内側であることが好ましい。
【0049】
積層体3は、例えば、表面処理フィルム10と直線偏光層30とを第2貼合層42を介して積層して直線偏光板を得、直線偏光板に、第2液晶層32及び第1液晶フィルム20を積層することによって得ることができる。直線偏光板と、第2液晶層32及び第1液晶フィルム20を積層する方法としては、[a]直線偏光板に、第2液晶層32と第1液晶フィルム20とを積層した液晶層積層体を、第4貼合層44を介して積層する方法、及び、[b]直線偏光板に、第2液晶層32を積層した後に、第1液晶フィルム20を積層する方法が挙げられる。
【0050】
上記[a]で用いる液晶層積層体は、例えば次のようにして製造することができる。まず、第2樹脂フィルム又は第2樹脂フィルムに形成された第2配向層に、第2液晶層32を形成するための組成物を塗工することによって第2液晶フィルムを得る。次に、第2液晶フィルムの第2液晶層32側と、第1液晶フィルム20の第1液晶層22側とを、第5貼合層45を介して積層し、第2樹脂フィルムを剥離する。第2樹脂フィルムとしては、第2配向層及び/又は第2液晶層32を支持することができ、第2液晶層32から分離可能なものであれば特に限定されない。第2樹脂フィルムは、例えば第1樹脂フィルム21で説明した構造を有するものを用いることができる。
【0051】
上記[b]の方法は、例えば次のようにすることができる。まず、直線偏光板の直線偏光層30側と、上記した第2液晶フィルムの第2液晶層32側とを、第4貼合層44を介して積層した後、第2樹脂フィルムを剥離する。続いて、第2樹脂フィルムを剥離して露出した面に、第5貼合層45を介して第1液晶フィルム20の第1液晶層22側を積層する。
【0052】
第1液晶層22及び第2液晶層32は、いずれも位相差層であることができる。この場合、第1液晶層22と第2液晶層32との組み合わせとしては、[i]λ/2位相差層及びλ/4位相差層、又は、[ii]λ/4位相差層及びポジティブC位相差層が挙げられる。λ/4位相差層は、逆波長分散性を有していてもよい。第1液晶層22及び第2液晶層32が上記[i]又は[ii]である場合、積層体3から第1樹脂フィルム21を剥離したものを円偏光板(偏光板)として用いることができる。
【0053】
円偏光板の製造方法では、積層体3を準備し、この積層体3から第1樹脂フィルム21を剥離する工程を含むことができる。積層体3を用いることにより、第1樹脂フィルム21を剥離したときに、表面処理フィルム10が破断することを抑制することができる。
【0054】
以下、上記で説明した積層体を構成する層等について、より詳細に説明する。
(基材層)
表面処理フィルム10に含まれる基材層11は、被着体表面を被覆し、塗工層12を支持するために用いられる。基材層11は、樹脂フィルムであることが好ましく、透明樹脂フィルムであることが好ましい。透明樹脂フィルムは、例えば光学フィルムの分野において公知の樹脂を用いて製膜されたフィルム等を用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィンフィルム;ノルボルネン系ポリマー等で構成された環状オレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルで構成されたポリエステルフィルム;ポリ(メタ)アクリル酸エステル等で構成された(メタ)アクリル樹脂フィルム;トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂フィルム;ポリカーボネートフィルム;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミドフィルム;ポリイミドフィルム等が挙げられる。透明樹脂フィルムは、環状オレフィン樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、及び(メタ)アクリル樹脂フィルムのうちの1種以上であることが好ましく、環状オレフィン樹脂フィルムであることがより好ましい。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのうちの少なくとも一方を表す。「(メタ)アクリレート」等についても同様である。
【0055】
基材層11の厚みは、20μm以下であることが好ましく、20μm未満であってもよく、18μm以下であってもよく、15μm以下であってもよく、13μm以下であってもよく、通常1μm以上であり、5μm以上であってもよい。
【0056】
(塗工層)
表面処理フィルム10に含まれる塗工層12は、表面処理フィルム10に、ハードコート特性、防眩特性、反射防止特性、帯電防止特性、及び防汚特性等のうちの少なくとも1種以上の特定の機能を付与するための層であることができる。塗工層12としては、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、及び防汚層等が挙げられる。
【0057】
塗工層12は、塗工層12を形成するための塗工材料を基材層11に塗工することによって形成することができる。塗工材料としては、硬化性化合物を含む組成物;硬化性化合物以外の樹脂を含む組成物等が挙げられる。塗工材料は、塗工層12が有する機能及び/又は塗工層12を好適に形成するために、上記した硬化性化合物及び樹脂以外に、有機微粒子又は無機微粒子等のフィラー、帯電防止剤、防汚剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、粘度調整剤、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0058】
硬化性化合物を含む組成物に含まれる硬化性化合物としては、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂;熱硬化型樹脂;(メタ)アクリロイル基及びビニル基等の重合性基を有する単量体;重合性基を有するオリゴマー等が挙げられる。硬化性化合物以外の樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0059】
塗工層12は、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層であることが好ましく、紫外線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物層であることがより好ましい。紫外線硬化型樹脂を含む組成物は、(メタ)アクリレート単量体及び/又は(メタ)アクリル樹脂を含むアクリル系樹脂組成物であることが好ましい。(メタ)アクリレート単量体及び/又は(メタ)アクリル樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン化(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、及び必要に応じて水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーを含む硬化性混合物等が挙げられる。
【0060】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンのジ-又はトリ-(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ-又はテトラ-(メタ)アクリレート、分子内に水酸基を少なくとも1個有する(メタ)アクリレートとジイソシアネートとの反応生成物である多官能ウレタン化(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、ポリオール、並びにジイソシアネートを用いて製造される。具体的には、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとポリオールから、分子内に水酸基を少なくとも1個有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを調製し、これをジイソシアネートと反応させることにより、多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを製造することができる。このようにして製造される多官能ウレタン化(メタ)アクリレートは、上記した紫外線硬化型樹脂としての機能を有する。その製造にあたっては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、ポリオール及びジイソシアネートも同様に、それぞれ1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを形成する際に用いられる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸の鎖状又は環状アルキルエステルを用いることができ、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを形成する際に用いられるポリオールは、分子内に水酸基を少なくとも2個有する化合物であり、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸のネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等が挙げられる。
【0064】
多官能ウレタン化(メタ)アクリレートを形成する際に用いられるジイソシアネートは、分子内に2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物であり、芳香族、脂肪族又は脂環式の各種ジイソシアネートを用いることができ、その具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのうち芳香環を有するジイソシアネートの核水添物等が挙げられる。
【0065】
水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーは、1つの構成単位中に水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものであり、その具体例としては、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマーや、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとともに、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを構成単位として含むポリマー等が挙げられる。
【0066】
硬化性化合物を含む組成物は、硬化性化合物に加えて、重合開始剤を含むことができる。重合開始剤としては、光重合開始剤及びラジカル重合開始剤等が挙げられ、公知の重合開始剤を用いることができる。
【0067】
塗工層12がハードコート層である場合、塗工層12は基材層11の表面硬度を向上する機能を有し、表面の耐擦傷性を向上することができる。ハードコート層は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(表面処理フィルムをガラス板の上に置いて測定する)で8B又はそれより硬い値を示すことが好ましく、5B又はそれよりも硬くてもよい。塗工層12は、ハードコート層であることが好ましい。
【0068】
塗工層12が防眩層である場合、塗工層12は視認性の向上、外光の映り込みの抑制、モアレ(干渉縞)の低減等の機能を有することができる。防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有することができる。微細な凹凸形状は、防眩層にフィラーを添加する、表面に微細なエンボスを付与する等によって形成することができる。
【0069】
塗工層12が反射防止層である場合、塗工層12は外光の反射を抑制する機能を有することができる。反射防止層は、基材層11の屈折率よりも小さい屈折率を有する層であることができ、例えば微粒子を含んでいてもよい。
【0070】
塗工層12が帯電防止層である場合、塗工層12は静電気の発生等を抑制する機能を有することができる。帯電防止層は、帯電防止剤(導電性物質)を含むことができる。
【0071】
塗工層12が防汚層である場合、塗工層12は、表面処理フィルム10に撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性等の機能を付与することができる。防汚層は、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物等のフッ素含有有機化合物等の防汚剤を含むことができる。
【0072】
塗工層12の厚みは、例えば、1nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、50nm以上であってもよく、500nm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、また、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0073】
(第1液晶層、第2液晶層)
第1液晶フィルム20に含まれる第1液晶層22、及び、第2液晶フィルムに含まれる第2液晶層32(以下、両者をまとめて「液晶層」ということがある。)は、液晶化合物が配向した層であり、重合性液晶化合物の硬化物層であることが好ましい。
【0074】
液晶層が重合性液晶化合物の硬化物層である場合、重合性液晶化合物としては、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。
【0075】
重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物を重合することによって形成される硬化物層は、重合性液晶化合物を適した方向に配向させた状態で硬化することにより位相差を発現する。棒状の重合性液晶化合物が、積層体の平面方向に対して水平配向又は垂直配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶化合物が配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の円盤面に対して直交する方向に存在する。棒状の重合性液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報(請求項1等)に記載のものを好適に用いることができる。円盤状の重合性液晶化合物としては、特開2007-108732号公報(段落[0020]~[0067]等)、特開2010-244038号公報(段落[0013]~[0108]等)に記載のものを好適に用いることができる。
【0076】
重合性液晶化合物が有する重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物の硬化物層を形成するために重合性液晶化合物を2種類以上を併用する場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有することが好ましい。
【0077】
上記硬化物層は、重合性液晶化合物と溶剤、必要に応じて各種添加剤を含む液晶層形成用の組成物を、後述する配向層上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を固化(硬化)させることによって、重合性液晶化合物の硬化物層を形成することができる。あるいは、第1樹脂フィルム又は第2樹脂フィルム上に上記組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を第1樹脂フィルム又は第2樹脂フィルムとともに延伸することによって硬化物層を形成してもよい。上記組成物は、上記した重合性液晶化合物及び溶剤の他に、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。重合性液晶化合物、溶剤、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等は、公知のものを適宜用いることができる。
【0078】
液晶層は、位相差層であってもよく、直線偏光層であってもよい。液晶層が直線偏光層である場合、液晶層形成用の組成物は、二色性色素を含んでいてもよく、液晶性を有する二色性色素を含んでいてもよい。
【0079】
(第1配向層、第2配向層)
第1液晶フィルム20に含まれる第1配向層、及び、第2液晶フィルムに含まれる第2配向層(以下、両者をまとめて「配向層」ということがある。)は、重合性液晶化合物等の液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。配向層は、液晶化合物の分子軸を積層体の平面方向に対して垂直配向した垂直配向層であってもよく、液晶化合物の分子軸を第1液晶フィルム及び第2液晶フィルムの平面方向に対して水平配向した水平配向層であってもよく、液晶化合物の分子軸を第1液晶フィルム及び第2液晶フィルムの平面方向に対して傾斜配向させる傾斜配向層であってもよい。
【0080】
配向層としては、重合性液晶化合物等の液晶化合物を含む液晶層形成用組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、溶媒の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有するものが好ましい。配向層としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。
【0081】
(第1樹脂フィルム、第2樹脂フィルム)
第1液晶フィルム20に含まれる第1樹脂フィルム21、及び、第2液晶フィルムに含まれる第2樹脂フィルム(以下、両者をまとめて「樹脂フィルム」ということがある。)は、樹脂材料で形成されたフィルムを用いることができ、例えば後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムを挙げることができる。これらの中でも、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から1~300μm以下であることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、30~120μmであることがさらに好ましい。
【0082】
樹脂フィルムは、凹凸領域を有することができる。凹凸領域の凹部及び凸部の断面形状は特に限定されず、台形、円錐台形、角柱台形、円柱、角柱、円錐、角錐、及び不定形等から選ばれる1種以上とすることができる。凹凸領域は、凹凸領域が形成されていないフィルムに、エンボス加工又はレーザー加工等を行うことによって形成することができる。
【0083】
(直線偏光板)
直線偏光板は、表面処理フィルム10と直線偏光層30とを有し、さらに表面処理フィルム10と直線偏光層30とを貼合するための第2貼合層42を有していてもよい。直線偏光板は、さらに、直線偏光層30の表面処理フィルム10側とは反対側に保護層を有していてもよい。直線偏光層30と保護層とは、直接接するように積層されていてもよく、貼合層を介して積層されていてもよい。
【0084】
(直線偏光層)
直線偏光層は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する。直線偏光層は、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ということがある。)であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布して形成した液晶性の直線偏光層を含むフィルムであってもよい。吸収異方性及び液晶性を有する化合物は、吸収異方性を有する色素と液晶性を有する化合物との混合物であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する色素であってもよい。
【0085】
PVA系フィルムである直線偏光層は、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等のPVA系フィルムに、ヨウ素による染色処理、及び延伸処理が施されたもの等が挙げられる。必要に応じて、染色処理によりヨウ素が吸着配向したPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行ってもよい。各工程には公知の方法を採用できる。
【0086】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」ということがある。)は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0087】
PVA系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用可能である。PVA系樹脂の平均重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000程度である。PVA系樹脂のケン化度及び平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が1000未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超ではフィルム加工性に劣ることがある。
【0088】
PVA系フィルムである直線偏光層の製造方法は、基材フィルムを用意し、基材フィルム上にPVA系樹脂等の樹脂の溶液を塗布し、溶媒を除去する乾燥等を行って基材フィルム上に樹脂層を形成する工程を含むものであってもよい。なお、基材フィルムの樹脂層が形成される面には、予めプライマー層を形成することができる。基材フィルムとしては、後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムを使用できる。プライマー層の材料としては、直線偏光層に用いられる親水性樹脂を架橋した樹脂等を挙げることができる。
【0089】
次いで、必要に応じて樹脂層の水分等の溶媒量を調整し、その後、基材フィルム及び樹脂層を一軸延伸し、続いて、樹脂層をヨウ素で染色してヨウ素を樹脂層に吸着配向させる。次に、必要に応じてヨウ素が吸着配向した樹脂層をホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行う。これにより、ヨウ素が吸着配向された樹脂層、すなわち、直線偏光層となるPVA系フィルムが製造される。各工程には公知の方法を採用できる。
【0090】
基材フィルムを用いる製造方法で作製した直線偏光層は、保護層を積層した後に基材フィルムを剥離することで得ることができる。
【0091】
PVA系フィルムである直線偏光層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、また、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。
【0092】
液晶性の直線偏光層を含むフィルムは、液晶性及び吸収異方性を有する色素を含む組成物、又は、吸収異方性を有する色素と重合性液晶とを含む組成物を基材フィルムに塗布して得られる直線偏光層が挙げられる。液晶性の直線偏光層は、重合性液晶化合物の硬化物であることができ、配向層を含んでいてもよい。液晶性の直線偏光層を含むフィルムは、液晶性の直線偏光層であってもよく、液晶性の直線偏光層と基材フィルムとの積層構造を有していてもよい。基材フィルムとしては、例えば後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムが挙げられる。液晶性の直線偏光層を含むフィルムとしては、例えば特開2013-33249号公報等に記載の偏光層が挙げられる。
【0093】
上記のようにして形成した基材フィルムと直線偏光層との合計厚みは小さい方が好ましいが、小さすぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0094】
(保護層)
保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムである保護フィルム;耐溶剤性、透明性、機械的強度、熱安定性、遮蔽性、及び等方性等に優れる組成物から形成されたオーバーコート層等が挙げられる。保護フィルムは、貼合層を介して直線偏光層に積層されることが好ましく、オーバーコート層は、直線偏光層に直接接するように積層されることが好ましい。
【0095】
保護フィルムを形成するための熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。保護フィルムの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0096】
オーバーコート層は、例えば、直線偏光層上にオーバーコート層を形成するための材料(組成物)を塗布することによって形成することができる。オーバーコート層を構成する材料としては、例えば、光硬化性樹脂や水溶性ポリマー等が挙げられ、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂等を用いることができる。オーバーコート層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であることができる。
【0097】
(第1貼合層、第2貼合層、第3貼合層、第4貼合層、第5貼合層、貼合層)
第1貼合層~第5貼合層及び貼合層(以下、これらをまとめて「貼合層」ということがある。)は、粘着剤層又は接着剤層である。
【0098】
粘着剤層は、粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層である。粘着剤組成物又は粘着剤組成物の反応生成物は、それ自体を被着体に張り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。また、後述する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、活性エネルギー線を照射することにより、架橋度や接着力を調整することができる。
【0099】
粘着剤組成物としては、公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ポリビニルエーテル等のベースポリマーを含有する粘着剤組成物を用いることができる。また、粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、又は、熱硬化型粘着剤組成物等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(リワーク性)、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤組成物の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0100】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、上記した粘着剤組成物に、多官能性アクリレート等の紫外線硬化性化合物を配合し、これを塗布して形成した層に紫外線を照射して硬化させることにより、より硬い粘着剤層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する。
【0101】
粘着剤組成物及び活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0102】
接着剤層は、接着剤組成物中の硬化性成分を硬化させることによって形成することができる。接着剤層を形成するための接着剤組成物としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0103】
水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解、又は分散させた接着剤が挙げられる。水系接着剤を用いた場合の乾燥方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて乾燥する方法が採用できる。
【0104】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含む無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることにより、層間の密着性を向上させることができる。
【実施例0105】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0106】
〔実施例1及び2、比較例1〕
(表面処理フィルムの準備)
基材層として、厚み13μmの環状オレフィン樹脂フィルム(以下、「COPフィルム」ということがある。)を準備した。COPフィルムの片面に、対向する一対の辺(幅方向の両端)に沿って第1端部が形成されるように、紫外線硬化型樹脂を含むアクリル系樹脂組成物をグラビア塗工して塗膜を形成した。塗膜を乾燥した後に紫外線照射を行い、基材層表面にハードコート層としての塗工層を形成して表面処理フィルムを得た。
【0107】
表面処理フィルムから採取したサンプルのCOPフィルム側をガラス板に貼合し、COPフィルムの端部(塗工層が形成されていない端部)の延在方向の中央の位置と、この中央の位置から左右方向(延在方向に沿う両方向)に1cmの位置との合計3点の位置において、COPフィルムの端部から塗工層までの間の最短距離を決定し、これを平均して、表面処理フィルムのCOPフィルムの端から塗工層の端までの間の距離である第1端部の幅を決定した。最短距離は、デュアルモード3D共焦点・干渉システムPLμ2300(有限会社センソファージャパン製)を用いて、サンプルのCOPフィルムの端部から塗工層に向けて移動しながら厚みプロットを取得することにより決定した(レンズ:20倍(EPI 20x))。決定した第1端部の幅の値を表1に示す。
【0108】
表面処理フィルムの塗工層が形成された領域について、後述する手順で、突刺し強度及び引裂き強度を測定し、クロスハッチ試験を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(積層体の作製)
上記で得た表面処理フィルムの基材層側と、ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素が吸着配向した直線偏光層とを、接着剤層を介して積層し、直線偏光板を得た。
【0110】
第1樹脂フィルムとして、幅方向の両端部に凹凸領域を有するトリアセチルセルロースフィルム(以下、「第1TACフィルム」ということがある。)を用い、この第1TACフィルムの片面に、第1配向層、及び、重合性液晶化合物の硬化物層である第1液晶層がこの順に積層された第1液晶フィルムを準備した。第1液晶層は、凹凸領域の一部を覆っていた。後述する手順で、第1液晶フィルムに用いた第1TACフィルムの凹凸領域の表面粗さSaを測定した。結果を表1に示す。
【0111】
第2樹脂フィルムとして、トリアセチルセルロースフィルム(以下、「第2TACフィルム」ということがある。)を用い、この第2TACフィルムの片面に、第2配向層、及び、重合性液晶化合物の硬化物層である第2液晶層がこの順に積層された第2液晶フィルムを準備した。
【0112】
第1液晶フィルムの第1液晶層側と、第2液晶フィルムの第2液晶層側とを、接着剤層を介して積層して、第2TACフィルム付き液晶層積層体を得た。第2TACフィルム付き液晶層積層体の層構造は、第1TACフィルム/第1配向層/第1液晶層/接着剤層/第2液晶層/第2配向層/第2TACフィルムであった。
【0113】
第2TACフィルム付き液晶層積層体から第2TACフィルムを剥離して露出した面に、紫外線硬化型接着剤の接着剤層を介して、上記で得た直線偏光板の直線偏光層側を貼合し、積層体を得た。表面処理フィルムの第1液晶フィルム側の表面から、第1液晶フィルムが有する第1TACフィルムの表面処理フィルム側の表面までの距離L2は、約15μmであった。
【0114】
実施例1及び2において、積層体は、その断面において、表面処理フィルムの塗工層の端部の位置(第1位置)が、第1TACフィルムの凹凸領域の内側の端部の位置(第2位置)よりも、表1に示す距離L1の長さ分だけ内側となるように作製した。そのため、実施例1及び2の積層体では、その断面において第1位置が第2位置よりも内側であった。
【0115】
比較例1では、表面処理フィルムの塗工層の端部の位置(第1位置)が、第1TACフィルムの凹凸領域の内側の端部の位置(第2位置)よりも5mm外側となるように作製した。そのため、比較例1の積層体では、その断面において、第1位置が凹凸領域上にあった。
【0116】
積層体から第1TACフィルムを剥離する剥離試験を行い、表面処理フィルムの破断の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0117】
〔参考例1〕
表面処理フィルムに代えて塗工層を形成していない基材層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。積層体から第1TACフィルムを剥離する剥離試験を行い、表面処理フィルムの破断の有無を確認した。結果を表1に示す。また、基材層について、後述する手順で突刺し強度及び引裂き強度を測定した。この突刺し強度は、実施例1及び2並びに比較例1で用いた基材層の第1端部における突刺し強度と考えることができる。結果を表1に示す。
【0118】
[突刺し強度の測定]
突刺し強度の測定は、先端径(球状の直径)が1mmであり、先端の曲率半径が0.5Rのニードルを装着したハンディ圧縮試験機(KES-G5、カトーテック株式会社製)を用いて行った。この試験機の中央に円形の穴(直径11mm)があいた2つの治具を用いて、表面処理フィルム又は基材層を挟んで固定した。表面処理フィルムについては塗工層が形成された領域を、塗工層が上になるように治具に挟んだ。次いで、試験機のニードルが治具の穴を通るように、治具に固定された表面処理フィルムに対してニードルを垂直に降下させ、表面処理フィルムが破れたときの強度を突刺し強度として測定した。測定は、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、突刺し速度0.33cm/秒とし、ニードルの加圧子のロードセルを1kgf(9.8N)、SENS:1(上限荷重が100gf(0.98N))として行った。
【0119】
[引裂き強度の測定]
図4は、引裂き強度の測定に用いるサンプル片を模式的に示す平面図である。表面処理フィルムの第1端部16において、表面処理フィルムの第1端部16、及び第1端部16に隣接する塗工領域17を含み、上記表面処理フィルムの第1端部16が位置する辺の延在する方向に50mm、当該辺に直交する方向に70mmの大きさとなるように、矩形状のサンプル片81を切り出した(
図4)。サンプル片81の辺のうちの表面処理フィルムの第1端部16が位置する辺を構成していた辺83、第1端部16、及び塗工領域17を跨ぐように、サンプル片81の一方の面に2つのリードテープ(パイオランクロス養生用テープ緑、50mm×25mm、Y-09-GR、ダイヤテックス製)85,85を取り付けた(以下、リードテープを取付けた辺83を「取付け辺83」ということがある。)。各リードテープ85は、長さ50mm×幅20mmとし、サンプル片81の取付け辺83の中心において2つのリードテープ85,85の間に1mmの隙間が形成され、リードテープ85の幅方向が取付け辺83に平行となり、一方の端から10mmの長さの範囲がサンプル片81上に配置されるように、サンプル片81に取付けた。サンプル片31の他方の面にも、サンプル片81の一方の面に取付けたリードテープ85,85に重なるように、2つのリードテープを取付けた。これにより、サンプル片81の取付け辺83には、
図4に示すように、サンプル片81の平面視において2つのリードテープ(サンプル片81の両面に取付けられたリードテープ)が重なったリードテープ群が2組、1mmの間隔(隙間)をあけて取付けられた状態となった。
【0120】
サンプル片81に取付けたリードテープ85の長さ方向の端部のうちの、サンプル片81に取付けた側とは反対側の端部をオートグラフ(「AGS-50NX」、島津製作所製)の上下チャックにそれぞれ固定した。その後、2組のリードテープ群のうちの一方の組を、サンプル片81の平面を基準として一方側に、2組のリードテープ群のうちの他方の組を、サンプル片81の平面を基準として他方側になるように、サンプル片81の平面を基準にして互いに反対の方向(サンプル片81の平面を基準にして上下方向)に速度300mm/minで引っ張る180°引っ張り試験を行い、サンプル片81の第1端部16が裂けたときに現れるピークの値(力の大きさ)を測定した。測定は、温度23℃、相対湿度55%の条件下で行った。この測定を5回行い、測定された力の大きさの平均値を引裂き強度とした。
【0121】
[クロスハッチ試験]
表面処理フィルムの塗工層面に、塗工層が貫通するように、1mm角のクロスハッチを100個(10×10個)刻んだ。このクロスハッチに、幅24mmの粘着テープ(セロハン粘着テープCT405AP-24、ニチバン製)を貼付した後、粘着テープをクロスハッチ面に対して45°の方向に引き剥がした。粘着テープの引き剥がし後に、基材層上に残っているクロスハッチの数を数えた。クロスハッチ試験は、温度23℃、相対湿度55%の条件下で行った。
【0122】
[表面粗さSaの測定]
第1液晶フィルムに用いた第1樹脂フィルムの端部の表面粗さSaを、白色干渉計VertScan(登録商標)(製造元:株式会社菱化システム、販売元:株式会社日立ハイテクサイエンス、2.5倍レンズを使用)を用いて測定した。第1樹脂フィルムの端部から第1液晶フィルムの平面における中央側に向けて、視野4×10のスティッチング測定(Total観察面積17171.306μm×5237.490μm)を行い、表面粗さSaを測定した。この測定とともに、上記白色干渉計による測定によって得られるピーク値Sp(表面粗さピーク値Sp)も取得した。表面粗さSaは、「算術平均高さ」であり、表面粗さピーク値Spは、「最大山高さ」である。
【0123】
1,2,3 積層体、10 表面処理フィルム、11 基材層、12 塗工層、13 第1位置、16 第1端部、17 塗工領域、20 第1液晶フィルム(液晶フィルム)、21 第1樹脂フィルム(樹脂フィルム)、22 第1液晶層(液晶層)、23 第2位置、25 凹凸領域、26 第2端部、30 偏光層、32 第2液晶層、41 第1貼合層、42 第2貼合層、43 第3貼合層、44 第4貼合層、45 第5貼合層、81 サンプル片、83 辺(取付け辺)、85 リードテープ。