(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103373
(43)【公開日】2023-07-26
(54)【発明の名称】撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/533 20230101AFI20230719BHJP
H04N 25/706 20230101ALI20230719BHJP
H04N 25/583 20230101ALI20230719BHJP
H04N 25/79 20230101ALI20230719BHJP
【FI】
H04N25/533
H04N25/706
H04N25/583
H04N25/79
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080583
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2021186944の分割
【原出願日】2013-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2012082312
(32)【優先日】2012-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2012128092
(32)【優先日】2012-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱井 史郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の光電変換部の露光時間を制御する撮像素子および撮像装置を提供する。
【解決手段】分割された領域毎の電荷蓄積制御方法であって、撮像装置の演算部は、ユーザから撮影準備指示を受けると、測光部の出力からシャッタ速度T0を決定する。さらに、シャドウ領域、中間領域およびハイライト領域に分割して、それぞれの輝度情報から電荷蓄積回数を決定する。電荷蓄積回数は、1回あたりの電荷蓄積により画素が飽和しないように決定され、決定されたシャッタ速度T0と電荷蓄積時間を一致させる。中間領域の電荷蓄積回数を2回とする。すなわち、1回の電荷蓄積時間をT0/2として、シャッタ速度T0の間に2回の電荷蓄積を繰り返させる。また、ハイライト領域613の電荷蓄積回数を4回とする。すなわち、1回の電荷蓄積時間をT0/4として、シャッタ速度T0の間に4回の電荷蓄積を繰り返させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を電荷に変換する第1光電変換部と、光を電荷に変換する第2光電変換部と、光を電荷に変換する第3光電変換部とが配置される第1半導体基板と、
前記第1半導体基板に電気的に接続される半導体基板であって、前記第1光電変換部で変換された電荷により生成される第1信号に基づいて、前記第2光電変換部で変換された電荷を蓄積する蓄積時間と、前記第3光電変換部で変換された電荷を蓄積する蓄積時間とが異なる蓄積時間になるように制御する駆動部が配置される第2半導体基板と
を備え、
前記第2光電変換部と前記第3光電変換部とは、前記第1半導体基板において行方向に沿って配置される撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記第1信号をデジタル信号に変換する第1変換部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷により生成される第2信号をデジタル信号に変換する第2変換部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷により生成される第3信号をデジタル信号に変換する第3変換部と
を備える撮像素子。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像素子において、
前記第1変換部、前記第2変換部および前記第3変換部は、前記第2半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の撮像素子において、
前記駆動部は、前記第1変換部でデジタル信号に変換された前記第1信号に基づいて、前記第2光電変換部で変換された電荷を蓄積する蓄積時間と、前記第3光電変換部で変換された電荷を蓄積する蓄積時間とが異なる蓄積時間になるように制御する撮像素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷を転送するための第1転送部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷を転送するための第2転送部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷を転送するための第3転送部と
を備え、
前記駆動部は、前記第1信号に基づいて、前記第2転送部により前記第2光電変換部の電荷を転送するタイミングと、前記第3転送部により前記第3光電変換部の電荷を転送するタイミングとを制御する撮像素子。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像素子において、
前記第1転送部、前記第2転送部および前記第3転送部は、前記第1半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷を排出するための第1リセット部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷を排出するための第2リセット部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷を排出するための第3リセット部と
を備え、
前記駆動部は、前記第1信号に基づいて、前記第2リセット部により前記第2光電変換部の電荷を排出するタイミングと、前記第3リセット部により前記第3光電変換部の電荷を排出するタイミングとを制御する撮像素子。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像素子において、
前記第1リセット部、前記第2リセット部および前記第3リセット部は、前記第1半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷を排出するための第1リセット部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷を排出するための第2リセット部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷を排出するための第3リセット部と
を備え、
前記駆動部は、前記第1信号に基づいて、前記第2リセット部により前記第2光電変換部の電荷を排出するタイミングと、前記第3リセット部により前記第3光電変換部の電荷を排出するタイミングとを制御する撮像素子。
【請求項10】
請求項9に記載の撮像素子において、
前記第1リセット部、前記第2リセット部および前記第3リセット部は、前記第1半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項11】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記第1信号と、前記第2光電変換部で変換された電荷により生成される第2信号とをデジタル信号に変換する第1変換部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷により生成される第3信号をデジタル信号に変換する第2変換部と
を備える撮像素子。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像素子において、
前記第1変換部と前記第2変換部とは、前記第2半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の撮像素子において、
前記駆動部は、前記第1変換部でデジタル信号に変換された前記第1信号に基づいて、前記第2光電変換部で変換された電荷を蓄積する蓄積時間と、前記第3光電変換部で変換された電荷を蓄積する蓄積時間とが異なる蓄積時間になるように制御する撮像素子。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷を転送するための第1転送部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷を転送するための第2転送部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷を転送するための第3転送部と
を備え、
前記駆動部は、前記第1信号に基づいて、前記第2転送部により前記第2光電変換部の電荷を転送するタイミングと、前記第3転送部により前記第3光電変換部の電荷を転送するタイミングとを制御する撮像素子。
【請求項15】
請求項14に記載の撮像素子において、
前記第1転送部、前記第2転送部および前記第3転送部は、前記第1半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷を排出するための第1リセット部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷を排出するための第2リセット部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷を排出するための第3リセット部と
を備え、
前記駆動部は、前記第1信号に基づいて、前記第2リセット部により前記第2光電変換部の電荷を排出するタイミングと、前記第3リセット部により前記第3光電変換部の電荷を排出するタイミングとを制御する撮像素子。
【請求項17】
請求項16に記載の撮像素子において、
前記第1リセット部、前記第2リセット部および前記第3リセット部は、前記第1半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項18】
請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部で変換された電荷を排出するための第1リセット部と、
前記第2光電変換部で変換された電荷を排出するための第2リセット部と、
前記第3光電変換部で変換された電荷を排出するための第3リセット部と
を備え、
前記駆動部は、前記第1信号に基づいて、前記第2リセット部により前記第2光電変換部の電荷を排出するタイミングと、前記第3リセット部により前記第3光電変換部の電荷を排出するタイミングとを制御する撮像素子。
【請求項19】
請求項18に記載の撮像素子において、
前記第1リセット部、前記第2リセット部および前記第3リセット部は、前記第1半導体基板に配置される撮像素子。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1光電変換部、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部は、前記第1半導体基板において前記行方向に沿って配置される撮像素子。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1半導体基板は、光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記第2半導体基板は、前記第1半導体基板の前記第2面に対向する第3面を有する撮像素子。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子に接続される制御部と
を備える撮像装置。
【請求項23】
請求項22に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記撮像素子から出力された前記第1信号を用いて被写体の輝度情報を取得する撮像装置。
【請求項24】
請求項23に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記輝度情報に基づいて、前記撮像素子の前記駆動部の動作を制御する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフォトダイオードに接続される回路を制御信号により制御して、画素信号の読み出しを行う撮像素子が知られている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2006-49361号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様における電子機器は、光を電荷に変換する複数の光電変換部を有する撮像素子と、複数の光電変換部のうち第1光電変換部の電荷を第1光電変換部から転送するタイミングと、複数の光電変換部のうち、第1光電変換部から行方向側に配置される第2光電変換部の電荷を第2光電変換部から転送するタイミングと、が異なるタイミングになるように制御する制御部と、を備える。
【0004】
本発明の第2の態様における電子機器は、光を電荷に変換する複数の光電変換部を有する撮像素子と、複数の光電変換部のうち第1光電変換部の電荷を第1光電変換部から排出するタイミングと、複数の光電変換部のうち、第1光電変換部から行方向側に配置される第2光電変換部の電荷を第2光電変換部から排出するタイミングと、が異なるタイミングになるように制御する制御部と、を備える。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る裏面照射型のMOS型撮像素子の断面図である。
【
図2】撮像チップの画素配列と単位グループを説明する図である。
【
図3】撮像チップの単位グループに対応する回路図である。
【
図4】撮像素子の機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】分割された領域ごとの電荷蓄積制御を説明する図である。
【
図8】積算回数とダイナミックレンジの関係を示す図である。
【
図10】信号処理チップの一例としての具体的構成を示すブロック図である。
【
図11】撮像チップから信号処理チップへ伝送される画素信号の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る裏面照射型の撮像素子100の断面図である。撮像素子100は、入射光に対応した画素信号を出力する撮像チップ113と、画素信号を処理する信号処理チップ111と、画素信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有するバンプ109により互いに電気的に接続される。
【0009】
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面左方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。以降のいくつかの図においては、
図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
【0010】
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。PD層106は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、二次元的に配された複数のPD(フォトダイオード)104、および、PD104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。
【0011】
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、PD104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102の配列については後述する。カラーフィルタ102、PD104およびトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
【0012】
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応するPD104へ向けて入射光を集光する。
【0013】
配線層108は、PD層106からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子および能動素子が設けられてもよい。
【0014】
配線層108の表面には複数のバンプ109が配される。当該複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされて、撮像チップ113と信号処理チップ111とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0015】
同様に、信号処理チップ111およびメモリチップ112の互いに対向する面には、複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされて、信号処理チップ111とメモリチップ112とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0016】
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用しても良い。また、バンプ109は、例えば後述する一つの画素グループに対して一つ程度設ければ良い。したがって、バンプ109の大きさは、PD104のピッチよりも大きくても良い。また、画素が配列された画素領域以外の周辺領域において、画素領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けても良い。
【0017】
信号処理チップ111は、表裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられることが好ましい。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域、メモリチップ112にも設けられて良い。
【0018】
図2は、撮像チップ113の画素配列と単位グループ131を説明する図である。特に、撮像チップ113を裏面側から観察した様子を示す。画素領域には2000万個以上もの画素がマトリックス状に配列されている。本実施形態においては、隣接する4画素×4画素の16画素が一つのグループを形成する。図の格子線は、隣接する画素がグループ化されて単位グループ131を形成する概念を示す。
【0019】
画素領域の部分拡大図に示すように、単位グループ131は、緑色画素Gb、Gr、青色画素Bおよび赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列を、上下左右に4つ内包する。緑色画素は、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有する画素であり、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。同様に、青色画素は、カラーフィルタ102として青色フィルタを有する画素であって青色波長帯の光を受光し、赤色画素は、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有する画素であって赤色波長帯の光を受光する。
【0020】
図3は、撮像チップ113の単位グループ131に対応する回路図である。図において、代表的に点線で囲む矩形が、1画素に対応する回路を表す。なお、以下に説明する各トランジスタの少なくとも一部は、
図1のトランジスタ105に対応する。
【0021】
上述のように、単位グループ131は、16画素から形成される。それぞれの画素に対応する16個のPD104は、それぞれ転送トランジスタ302に接続され、各転送トランジスタ302の各ゲートには、転送パルスが供給されるTX配線307に接続される。本実施形態において、TX配線307は、16個の転送トランジスタ302に対して共通接続される。
【0022】
各転送トランジスタ302のドレインは、対応する各リセットトランジスタ303のソースに接続されると共に、転送トランジスタ302のドレインとリセットトランジスタ303のソース間のいわゆるフローティングディフュージョンFDが増幅トランジスタ304のゲートに接続される。リセットトランジスタ303のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続され、そのゲートはリセットパルスが供給されるリセット配線306に接続される。本実施形態において、リセット配線306は、16個のリセットトランジスタ303に対して共通接続される。
【0023】
各々の増幅トランジスタ304のドレインは電源電圧が供給されるVdd配線310に接続される。また、各々の増幅トランジスタ304のソースは、対応する各々の選択トランジスタ305のドレインに接続される。選択トランジスタの各ゲートには、選択パルスが供給されるデコーダ配線308に接続される。本実施形態において、デコーダ配線308は、16個の選択トランジスタ305に対してそれぞれ独立に設けられる。そして、各々の選択トランジスタ305のソースは、共通の出力配線309に接続される。負荷電流源311は、出力配線309に電流を供給する。すなわち、選択トランジスタ305に対する出力配線309は、ソースフォロアにより形成される。なお、負荷電流源311は、撮像チップ113側に設けても良いし、信号処理チップ111側に設けても良い。
【0024】
ここで、電荷の蓄積開始から蓄積終了後の画素出力までの流れを説明する。リセット配線306を通じてリセットパルスがリセットトランジスタ303に印加され、同時にTX配線307を通じて転送パルスが転送トランジスタ302に印加されると、PD104およびフローティングディフュージョンFDの電位はリセットされる。
【0025】
PD104は、転送パルスの印加が解除されると、受光する入射光を電荷に変換して蓄積する。その後、リセットパルスが印加されていない状態で再び転送パルスが印加されると、蓄積された電荷はフローティングディフュージョンFDへ転送され、フローティングディフュージョンFDの電位は、リセット電位から電荷蓄積後の信号電位になる。そして、デコーダ配線308を通じて選択パルスが選択トランジスタ305に印加されると、フローティングディフュージョンFDの信号電位の変動が、増幅トランジスタ304および選択トランジスタ305を介して出力配線309に伝わる。これにより、リセット電位と信号電位とに対応する画素信号は、単位画素から出力配線309に出力される。
【0026】
図示するように、本実施形態においては、単位グループ131を形成する16画素に対して、リセット配線306とTX配線307が共通である。すなわち、リセットパルスと転送パルスはそれぞれ、16画素全てに対して同時に印加される。したがって、単位グループ131を形成する全ての画素は、同一のタイミングで電荷蓄積を開始し、同一のタイミングで電荷蓄積を終了する。ただし、蓄積された電荷に対応する画素信号は、それぞれの選択トランジスタ305が選択パルスによって順次印加されて、選択的に出力配線309に出力される。
【0027】
このように単位グループ131を基準として回路を構成することにより、単位グループ131ごとに電荷蓄積時間を制御することができる。換言すると、隣接する単位グループ131同士で、異なった電荷蓄積時間による画素信号をそれぞれ出力させることができる。更に言えば、一方の単位グループ131に1回の電荷蓄積を行わせている間に、他方の単位グループ131に何回もの電荷蓄積を繰り返させてその都度画素信号を出力させることもできる。具体的な出力制御については後述する。
【0028】
図4は、撮像素子100の機能的構成を示すブロック図である。アナログのマルチプレクサ411は、単位グループ131を形成する16個のPD104を順番に選択して、それぞれの画素信号を出力配線309へ出力させる。マルチプレクサ411は、PD104と共に、撮像チップ113に形成される。
【0029】
マルチプレクサ411を介して出力された画素信号は、信号処理チップ111に形成された、相関二重サンプリング(CDS)・アナログ/デジタル(A/D)変換を行う信号処理回路412により、CDSおよびA/D変換が行われる。A/D変換された画素信号は、デマルチプレクサ413に引き渡され、それぞれの画素に対応する画素メモリ414に格納される。画素メモリ414のそれぞれは、後述する最大積算回数に対応する画素信号を格納できる容量を有する。デマルチプレクサ413および画素メモリ414は、メモリチップ112に形成される。
【0030】
A/D変換は、入力されるアナログ画素信号を、12bitのデジタル画素信号に変換する。同時に、信号処理回路412は、後述する積算数に対応する3bitの指数桁を繋ぎ合わせて、全体として15bitのデジタル画素信号をデマルチプレクサ413に引き渡す。したがって、画素メモリ414には、1回の電荷蓄積に対応して15bitのデジタル画素信号が格納される。
【0031】
演算回路415は、画素メモリ414に格納された画素信号を処理して後段の画像処理部に引き渡す。演算回路415は、信号処理チップ111に設けられても良いし、メモリチップ112に設けられても良い。なお、図では1グループ分の接続を示すが、実際にはこれらがグループごとに存在して、並列で動作する。ただし、演算回路415はグループごとに存在しなくても良く、例えば、一つの演算回路415がそれぞれのグループに対応する画素メモリ414の値を順に参照しながらシーケンシャルに処理しても良い。
【0032】
図5は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。撮像装置500は、撮影光学系としての撮影レンズ520を備え、撮影レンズ520は、光軸OAに沿って入射する被写体光束を撮像素子100へ導く。撮影レンズ520は、撮像装置500に対して着脱できる交換式レンズであっても構わない。撮像装置500は、撮像素子100、システム制御部501、駆動部502、測光部503、ワークメモリ504、記録部505、および表示部506を主に備える。
【0033】
撮影レンズ520は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。なお、
図1では瞳近傍に配置された仮想的な1枚のレンズで代表して表している。駆動部502は、システム制御部501からの指示に従って撮像素子100のタイミング制御、領域制御等の電荷蓄積制御を実行する制御回路である。この意味において駆動部502は、撮像素子100に対して電荷蓄積を実行させて画素信号を出力させる撮像素子制御部の機能を担うと言える。駆動部502は、撮像素子100と組み合わされて撮像ユニットを形成する。駆動部502を形成する制御回路は、チップ化されて、撮像素子100に積層されても良い。
【0034】
撮像素子100は、画素信号をシステム制御部501の画像処理部511へ引き渡す。画像処理部511は、ワークメモリ504をワークスペースとして種々の画像処理を施し、画像データを生成する。例えば、JPEGファイル形式の画像データを生成する場合は、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に圧縮処理を実行する。生成された画像データは、記録部505に記録されるとともに、表示信号に変換されて予め設定された時間の間、表示部506に表示される。
【0035】
測光部503は、画像データを生成する一連の撮影シーケンスに先立ち、シーンの輝度分布を検出する。測光部503は、例えば100万画素程度のAEセンサを含む。システム制御部501の演算部512は、測光部503の出力を受けてシーンの領域ごとの輝度を算出する。演算部512は、算出した輝度分布に従ってシャッタ速度、絞り値、ISO感度を決定する。本実施形態において演算部512は、更に、決定したシャッタ速度に到達するまでの間に、撮像チップ113のどの画素グループ領域に何回の電荷蓄積を繰り返させるかを決定する。なお、演算部512は、撮像装置500を動作させるための各種演算も実行する。
【0036】
図6は、シーンの例と領域分割を説明する図である。
図6(a)は、撮像チップ113の画素領域が捉えるシーンを示す。具体的には、屋内環境に含まれるシャドウ被写体601および中間被写体602と、窓枠604の内側に観察される屋外環境のハイライト被写体603とが同時に写り込むシーンである。このような、ハイライト部からシャドウ部までの明暗差が大きなシーンを撮影する場合、従来の撮像素子であれば、ハイライト部を基準として電荷蓄積を実行するとシャドウ部で黒潰れが生じ、シャドウ部を基準として電荷蓄積を実行するとハイライト部で白飛びが生じた。すなわち、ハイライト部もシャドウ部も一律に一度の電荷蓄積により画像信号を出力させるには、明暗差の大きなシーンに対してフォトダイオードのダイナミックレンジが不足していると言える。そこで、本実施形態においては、シーンをハイライト部、シャドウ部といった部分領域に分割して、それぞれの領域に対応するフォトダイオードの電荷蓄積回数を互いに異ならせることにより、ダイナミックレンジの実質的な拡大を図る。
【0037】
図6(b)は、撮像チップ113の画素領域における領域分割を示す。演算部512は、測光部503が捉えた
図6(a)のシーンを解析して、輝度を基準に画素領域を分割する。例えば、システム制御部501は、測光部503に露光時間を変更しつつ複数回のシーン取得を実行させ、演算部512は、その白飛び領域、黒潰れ領域の分布の変化を参照して画素領域の分割ラインを決定する。
図6(b)の例においては、演算部512は、シャドウ領域611、中間領域612、およびハイライト領域613の3領域に分割している。
【0038】
分割ラインは、単位グループ131の境界に沿って定義される。すなわち、分割された各領域は、整数個のグループをそれぞれ含む。そして、同一の領域に包含される各グループの画素は、演算部512によって決定されたシャッタ速度に対応する期間内において、同一回数の電荷蓄積および画素信号出力を行う。属する領域が異なれば、異なる回数の電荷蓄積および画素信号出力を行う。
【0039】
図7は、
図6の例による分割された領域ごとの電荷蓄積制御を説明する図である。演算部512は、ユーザから撮影準備指示を受けると、測光部503の出力からシャッタ速度T
0を決定する。さらに、上述のようにシャドウ領域611、中間領域612およびハイライト領域613に分割して、それぞれの輝度情報から電荷蓄積回数を決定する。電荷蓄積回数は、1回あたりの電荷蓄積により画素が飽和しないように決定される。例えば、1回の電荷蓄積動作において蓄積可能な8割から9割の電荷が蓄積されることを基準として、電荷蓄積回数が決定される。
【0040】
ここでは、シャドウ領域611を1回とする。すなわち、決定されたシャッタ速度T0と電荷蓄積時間を一致させる。また、中間領域612の電荷蓄積回数を2回とする。すなわち、1回の電荷蓄積時間をT0/2として、シャッタ速度T0の間に2回の電荷蓄積を繰り返させる。また、ハイライト領域613の電荷蓄積回数を4回とする。すなわち、1回の電荷蓄積時間をT0/4として、シャッタ速度T0の間に4回の電荷蓄積を繰り返させる。
【0041】
ユーザから撮影指示を時刻t=0で受けると、駆動部502は、いずれの領域に属するグループの画素に対しても、リセットパルスと転送パルスを印加する。この印加をトリガーとして、いずれの画素も電荷蓄積を開始する。
【0042】
時刻t=T0/4となったら、駆動部502は、ハイライト領域613に属するグループの画素に対して転送パルスを印加する。そして、各グループ内の画素に対して順次選択パルスを印加して、それぞれの画素信号を出力配線309に出力させる。グループ内の全ての画素の画素信号を出力させたら、駆動部502は、ハイライト領域613に属するグループの画素に対して再びリセットパルスと転送パルスを印加して、2回目の電荷蓄積を開始させる。
【0043】
なお、画素信号の選択出力には時間を要するので、1回目の電荷蓄積の終了と2回目の電荷蓄積の開始の間には時間差が生じる。この時間差が実質的に無視し得るのであれば、上述のように、シャッタ速度T0に対して電荷蓄積回数で割った時間を1回の電荷蓄積時間とすれば良い。一方、無視し得ないのであれば、その時間を考慮して、シャッタ速度T0を調整したり、1回の電荷蓄積時間をシャッタ速度T0に対して電荷蓄積回数で割った時間よりも短くしたりすれば良い。
【0044】
時刻t=T0/2となったら、駆動部502は、中間領域612とハイライト領域613に属するグループの画素に対して転送パルスを印加する。そして、各グループ内の画素に対して順次選択パルスを印加して、それぞれの画素信号を出力配線309に出力させる。グループ内の全ての画素の画素信号を出力させたら、駆動部502は、中間領域612とハイライト領域613に属するグループの画素に対して再びリセットパルスと転送パルスを印加して、中間領域612に対しては2回目の、ハイライト領域613に対しては3回目の電荷蓄積を開始させる。
【0045】
時刻t=3T0/4となったら、駆動部502は、ハイライト領域613に属するグループの画素に対して転送パルスを印加する。そして、各グループ内の画素に対して順次選択パルスを印加して、それぞれの画素信号を出力配線309に出力させる。グループ内の全ての画素の画素信号を出力させたら、駆動部502は、ハイライト領域613に属するグループの画素に対して再びリセットパルスと転送パルスを印加して、4回目の電荷蓄積を開始させる。
【0046】
時刻t=T0となったら、駆動部502は、全領域の画素に対して転送パルスを印加する。そして、各グループ内の画素に対して順次選択パルスを印加して、それぞれの画素信号を出力配線309に出力させる。以上の制御により、シャドウ領域611に対応する画素メモリ414にはそれぞれ1回分の画素信号が格納され、中間領域612に対応する画素メモリ414にはそれぞれ2回分の画素信号が格納され、ハイライト領域613に対応する画素メモリ414にはそれぞれ4回分の画素信号が格納される。
【0047】
これらの画素信号は、順次画像処理部511へ転送される。画像処理部511は、この画素信号から高ダイナミックレンジの画像データを生成する。具体的な処理については後述する。
【0048】
図8は、積算回数とダイナミックレンジの関係を示す図である。繰り返し実行された電荷蓄積に対応する複数回分の画素信号は、画像処理部511により積算処理されて、高ダイナミックレンジの画像データの一部を形成する。
【0049】
積算回数が1回、すなわち電荷蓄積を1回行った領域のダイナミックレンジを基準とした場合、積算回数が2回、すなわち電荷蓄積を2回行って出力信号を積算した領域のダイナミックレンジの拡大分は1段分となる。同様に、積算回数を4回にすれば2段分となり、128回にすれば7段分となる。すなわち、n段分のダイナミックレンジ拡大を図るには、2n回の出力信号を積算すれば良い。
【0050】
ここで、画像処理部511がいずれの分割領域が何回の電荷蓄積を行ったかを識別するために、積算回数を示す3bitの指数桁が画像信号に付与されている。図示するように、指数桁は、積算数1回に対して000、2回に対して001、…128回に対して111のように順に割り当てられる。
【0051】
画像処理部511は、演算回路415から受け取った各画素信号の指数桁を参照して、参照した結果が2回以上の積算数である場合には、画素信号の積算処理を実行する。例えば、積算回数が2回の場合(1段)は、2個の画素信号に対して、電荷蓄積に対応する12bitの画素信号のうち上位11bit同士を加算して、12bitの1つの画素信号を生成する。同様に、積算回数が128回(7段)の場合は、128個の画素信号に対して、電荷蓄積に対応する12bitの画素信号のうち上位5bit同士を加算して、12bitの1つの画素信号を生成する。すなわち、積算回数に対応する段数を12から引いた上位bitを互いに足し合わせて、12bitの1つの画素信号を生成する。なお、加算の対象とならない下位bitは除去される。
【0052】
このように処理することにより、階調を与える輝度範囲を積算回数に合わせて高輝度側にシフトさせることができる。すなわち、高輝度側の限られた範囲に対して12bitが割り当てられることになる。したがって、従来白飛びしていた画像領域に対して階調を与えることができる。
【0053】
ただし、他の分割領域については異なる輝度範囲に対して12bitを割り当てているので、単純に領域ごとに繋ぎ合わせる合成により画像データを生成することができない。そこで、画像処理部511は、得られた階調をできる限り維持しつつ全領域を12bitの画像データとするために、最大輝度画素と最低輝度画素を基準として、再量子化処理を行う。具体的には、階調がより滑らかに維持されるように、ガンマ変換を施して量子化を実行する。このように処理することにより、高ダイナミックレンジの画像データを得ることができる。
【0054】
なお、積算回数は、上記のように3bitの指数桁が画素信号に付与されている場合に限らず、画素信号とは別の付随情報として記述されていても良い。また、画素信号から指数桁を省き、代わりに画素メモリ414に格納されている画素信号の数をカウントすることにより、加算処理時に積算回数を取得しても良い。
【0055】
また、上記の画像処理においては、全領域を12bitの画像データに収める再量子化処理を実行したが、画素信号のbit数に対し、上限の積算回数に合わせて出力bit数を増やしても良い。例えば、上限の積算回数を16回(4段)と定めれば、12bitの画素信号に対して、全領域を16bitの画像データとすれば良い。このように処理すれば、桁落ちさせずに画像データを生成することができる。
【0056】
次に、一連の撮影動作処理について説明する。
図9は、撮影動作の処理を示すフロー図である。フローは、撮像装置500の電源がONにされて開始される。
【0057】
システム制御部501は、ステップS101で、撮影準備指示であるスイッチSW1の押し下げがなされるまで待機する。スイッチSW1の押し下げを検知したらステップS102へ進む。
【0058】
ステップS102では、システム制御部501は、測光処理を実行する。具体的には、測光部503の出力を得て、演算部512がシーンの輝度分布を算出する。そして、ステップS103へ進み、上述のように、シャッタ速度、領域分割、積算回数等を決定する。
【0059】
撮影準備動作が完了したら、ステップS104へ進み、撮影指示であるスイッチSW2の押し下げがなされるまで待機する。このとき、経過時間が予め定められた時間Twを超えたら(ステップS105のYES)、ステップS101へ戻る。Twを超える前に(ステップS105のNO)スイッチSW2の押し下げを検知したら、ステップS106へ進む。
【0060】
ステップS106では、システム制御部501の指示を受けた駆動部502が、
図7を用いて説明した電荷蓄積処理、信号読み出し処理を実行する。そして、全ての信号読み出しが完了したらステップS107へ進み、
図8を用いて説明した画像処理を実行し、生成された画像データを記録部に記録する記録処理を実行する。
【0061】
記録処理が完了したらステップS108へ進み、撮像装置500の電源がOFFにされたか否かを判断する。電源がOFFにされなければステップS101へ戻り、OFFにされたら一連の撮影動作処理を終了する。
【0062】
次に、信号処理チップ111の具体的な構成の一例について説明する。
図10は、信号処理チップ111の一例としての具体的構成を示すブロック図である。上述の
図4を用いた説明においては、デマルチプレクサ413および画素メモリ414がメモリチップ112に形成された一例を示したが、ここでは、信号処理チップ111に形成された例を説明する。
【0063】
信号処理チップ111は、駆動部502の機能を担う。信号処理チップ111は、分担化された制御機能としてのセンサ制御部441、ブロック制御部442、同期制御部443、信号制御部444と、これらの各制御部を統括制御する駆動制御部420とを含む。駆動制御部420は、システム制御部501からの指示を、各制御部が実行可能な制御信号に変換してそれぞれに引き渡す。
【0064】
センサ制御部441は、撮像チップ113へ送出する、各画素の電荷蓄積、電荷読み出しに関わる制御パルスの送出制御を担う。具体的には、センサ制御部441は、対象画素に対してリセットパルスと転送パルスを送出することにより、電荷蓄積の開始と終了を制御し、読み出し画素に対して選択パルスを送出することにより、画素信号を出力配線309へ出力させる。
【0065】
ブロック制御部442は、撮像チップ113へ送出する、制御対象となる単位グループ131を特定する特定パルスの送出を実行する。
図6等を用いて説明したように、分割された領域には、互いに隣接する複数の単位グループ131が包含され得る。これら同一の領域に属する単位グループ131は、ひとつのブロックを形成する。同一のブロックに含まれる画素は、同一のタイミングで電荷蓄積を開始し、同一のタイミングで電荷蓄積を終了する。そこで、ブロック制御部442は、駆動制御部420からの指定に基づいて対象となる単位グループ131に特定パルスを送出することにより、単位グループ131をブロック化する役割を担う。各画素がTX配線307およびリセット配線306を介して受ける転送パルスおよびリセットパルスは、センサ制御部441が送出する各パルスとブロック制御部442が送出する特定パルスの論理積となる。このように、各領域を互いに独立したブロックとして制御することにより、
図7を用いて説明した電荷蓄積制御を実現する。駆動制御部からのブロック化指定については、後に詳述する。
【0066】
同期制御部443は、同期信号を撮像チップ113へ送出する。各パルスは、同期信号に同期して撮像チップ113においてアクティブとなる。例えば、同期信号を調整することにより、同一の単位グループ131に属する画素の特定画素のみを制御対象とするランダム制御、間引き制御等を実現する。
【0067】
信号制御部444は、主にA/D変換器412bに対するタイミング制御を担う。出力配線309を介して出力された画素信号は、CDS回路412aおよびマルチプレクサ411を経てA/D変換器412bに入力される。A/D変換器412bは、信号制御部444によって制御されて、入力された画素信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された画素信号は、デマルチプレクサ413に引き渡され、そしてそれぞれの画素に対応する画素メモリ414にデジタルデータの画素値として格納される。
【0068】
信号処理チップ111は、いずれの単位グループ131を組み合わせてブロックを形成するかについてのブロック区分情報と、形成されたそれぞれのブロックが何回の電荷蓄積を繰り返すかについての蓄積回数情報とを格納する、蓄積制御メモリとしてのタイミングメモリ430を有する。タイミングメモリ430は、例えばフラッシュRAMによって構成される。
【0069】
上述のように、いずれの単位グループを組み合わせてブロックを形成するかについては、一連の撮影シーケンスに先立って実行されるシーンの輝度分布検出の検出結果に基づいて、システム制御部501により決定される。決定されたブロックは、例えば第1ブロック、第2ブロック…のように区分され、それぞれのブロックがいずれの単位グループ131を包含するかにより規定される。駆動制御部420は、このブロック区分情報をシステム制御部501から受け取り、タイミングメモリ430へ格納する。
【0070】
また、システム制御部501は、輝度分布の検出結果に基づいて、各ブロックが何回の電荷蓄積を繰り返すかを決定する。駆動制御部420は、この蓄積回数情報をシステム制御部501から受け取り、対応するブロック区分情報と対でタイミングメモリ430へ格納する。このようにタイミングメモリ430へブロック区分情報と蓄積回数情報を格納することにより、駆動制御部420は、一連の電荷蓄積制御を、タイミングメモリ430を逐次参照して独立して実行し得る。すなわち、駆動制御部420は、1枚の画像取得制御において撮影指示の信号をシステム制御部501から一旦受け取ると、その後は各画素の制御についてその都度システム制御部501から指示を受けること無く、蓄積制御を完了させることができる。
【0071】
駆動制御部420は、撮影準備指示に同期して実行される測光結果(輝度分布の検出結果)に基づいて更新されるブロック区分情報と蓄積回数情報をシステム制御部501から受け取って、タイミングメモリ430の記憶内容を適宜更新する。例えば、駆動制御部420は、撮影準備指示または撮影指示に同期して、タイミングメモリ430を更新する。このように構成することにより、より高速な電荷蓄積制御を実現すると共に、駆動制御部420が電荷蓄積制御を実行している間に、システム制御部501は他の処理を並行して実行し得る。
【0072】
駆動制御部420は、撮像チップ113に対する電荷蓄積制御を実行するに留まらず、読み出し制御の実行においてもタイミングメモリ430を参照する。例えば、駆動制御部420は、各ブロックの蓄積回数情報を参照して、デマルチプレクサ413から出力される画素信号を画素メモリ414の対応アドレスに格納する。
【0073】
駆動制御部420は、システム制御部501からの引渡要求に従って、対象画素信号を画素メモリ414から読み出し、画像処理部511へ引き渡す。画素メモリ414は、上述の通り、各画素に対して最大積算回数に対応する画素信号を格納できるメモリ空間を有し、実行された蓄積回数に対応するそれぞれの画素信号を画素値として格納する。例えば、あるブロックにおいて4回の電荷蓄積が繰り返された場合には、当該ブロックに含まれる画素は4回分の画素信号を出力するので、画素メモリ414上の各画素のメモリ空間には、4つの画素値が格納される。駆動制御部420は、特定画素の画素信号を要求する引渡要求をシステム制御部501から受けた場合には、画素メモリ414上の当該特定画素のアドレスを指定して、格納されている全ての画素信号を読み出し、画像処理部511へ引き渡す。例えば4つの画素値が格納されている場合には、その4つの画素値全てを順次引き渡し、1つの画素値のみが格納されている場合には、その画素値を引き渡す。
【0074】
駆動制御部420は、画素メモリ414に格納された画素信号を、演算回路415に読み出して、演算回路415に上述の積算処理を実行させることができる。積算処理された画素信号は、画素メモリ414の対象画素アドレスに格納される。対象画素アドレスは、積算処理前のアドレス空間に隣接して設けても良いし、積算処理前の画素信号に対して上書きするように同一アドレスとしても良い。また、積算処理後の各画素の画素値を纏めて格納する専用空間を設けても良い。駆動制御部420は、特定画素の画素信号を要求する引渡要求をシステム制御部501から受けた場合には、その引渡要求の態様によっては、積算処理後の画素信号を画像処理部511へ引き渡すことができる。もちろん、積算処理前後の画素信号を共に引き渡すこともできる。
【0075】
画素メモリ414には、引渡要求に従って画素信号を伝送するデータ転送インタフェースが設けられている。データ転送インタフェースは、画像処理部511と繋がるデータ転送ラインと接続されている。データ転送ラインは例えばバスラインのうちのデータバスによって構成される。この場合、システム制御部501から駆動制御部420への引渡要求は、アドレスバスを利用したアドレス指定によって実行される。
【0076】
データ転送インタフェースによる画素信号の伝送は、アドレス指定方式に限らず、さまざまな方式を採用しうる。例えば、データ転送を行うときに、各回路の同期に用いられるクロック信号の立ち上がり・立ち下がりの両方を利用して処理を行うダブルデータレート方式を採用し得る。また、アドレス指定などの手順を一部省略することによってデータを一気に転送し、高速化を図るバースト転送方式を採用し得る。また、制御部、メモリ部、入出力部を並列に接続している回線を用いたバス方式、直列にデータを1ビットずつ転送するシリアル方式などを組み合わせて採用することもできる。
【0077】
このように構成することにより、画像処理部511は、必要な画素信号に限って受け取ることができるので、特に低解像度の画像を形成する場合などにおいて、高速に画像処理を完了させることができる。また、演算回路415に積算処理を実行させる場合には、画像処理部511が積算処理を実行しなくて良いので、機能分担と並行処理により、画像処理の高速化を図ることができる。
【0078】
図11は、撮像チップ113から信号処理チップ111へ伝送される画素信号の流れを説明する説明図である。この例では、単位グループ131が、1行32画素、一列64画素の2048画素により構成されている。
【0079】
図3による構成においては、1つの単位グループ131は、1つの出力配線309を有したが、本図の例においては、隣接する2列の画素が1つの出力配線309を共有するように、1つの単位グループ131が16本の出力配線を有する。それぞれの出力配線309は、撮像チップ113と信号処理チップ111の接合部近傍において2本の出力配線309a、309bに分岐する。
【0080】
信号処理チップ111側では、分岐した出力配線309a、309bに対応して、それぞれ2本の入力配線409a、409bが設けられている。したがって、接合部においては、出力配線309aと入力配線409aを接合するためのバンプ109aと、出力配線309bと入力配線409bを接合するためのバンプ109bとが設けられている。このように接続部を冗長に構成することにより、接合不良による画素欠陥を引き起こす可能性を低減することができる。この意味において、分岐は2本に限らず、複数であれば良い。また、出力配線と入力配線の電気的な接続はバンプ結合に限らず、接続不良を引き起こす可能性のある電気的接続を採用する場合には、接続部をこのように冗長に構成することが好ましい。
【0081】
入力配線409a、409bは、CDS回路412aへ入力される前に、それぞれスイッチ461a、461bが介在している。スイッチ461a、461bは、互いに連動するスイッチ461として、駆動制御部420に制御される。具体的には、駆動制御部420は、通常は、スイッチ461aをONとして入力配線409aの画素信号の伝送を有効としておき、スイッチ461bをOFFとして入力配線409bの伝送を無効とする。一方、駆動制御部420は、バンプ109aに接続不良が生じていると判断した場合には、スイッチ461aをOFFに切り替えて入力配線409aの伝送を無効とし、スイッチ461bをONに切り替えて入力配線409bの伝送を有効とする。このように、いずれかの配線を接続状態とし、いずれかの配線を非接続状態とするスイッチ461の連動動作により、正常な画素信号のみがCDS回路412aへ入力されることが期待できる。
【0082】
バンプ109の接続不良判断は、駆動制御部420が担うこともできるし、システム制御部501が担うこともできる。接続不良判断は、入力配線409を通過した画素信号の出力結果に基づいて判断される。具体的には、例えば、システム制御部501は、両側に隣接する出力配線309から出力されたそれぞれの画素信号と比較して、予め定められた閾値以上の差があると判断した場合に、接続不良が生じていると判断する。列方向に異常値が連続するか否かを判断基準に加えても良い。この場合、駆動制御部420は、システム制御部501の判断結果を受けて、対応する入力配線409のスイッチ461を切り替える。なお、接続不良判断は、撮影動作に合わせて逐次行わなくても良く、一旦判断したら、駆動制御部420は、その判断結果をタイミングメモリ430に記憶しておくことができる。この場合、駆動制御部420は、画素信号の読み出し時において、タイミングメモリ430を参照しつつスイッチ461を制御する。
【0083】
以上の実施形態においては、測光部503が独立したAEセンサを含む構成として説明した。しかし、測光処理は、ユーザから撮影指示を受けて行う本撮影処理に先立って、撮像素子100から出力されるプレ画像を用いて行うこともできる。また、測光用の画素を、例えば単位グループ131に一つ設けても良い。例えば、
図2の画素配列において、単位グループ131の左端かつ上端の画素のカラーフィルタを透明フィルタあるいは無フィルタとすることにより、当該画素を測光用画素として利用することができる。このような画素は、広波長帯域の可視光を受光することができるので、シーンの輝度分布を検出する場合に好適である。また、測光用画素を単位グループから独立させて、測光用画素を寄せ集めて単位グループ化しても良い。このように構成すれば、駆動部502は、測光用画素に対して電荷蓄積を独立して制御することができる。
【0084】
以上の実施形態においては、決定されたシャッタ速度T
0とシャドウ領域の1回の電荷蓄積時間とを一致させる例を説明したが、例えば、決定されたシャッタ速度T
0の間にシャドウ領域に対しても2回の電荷蓄積を繰り返すように制御しても良い。この場合、
図7の例によれば、同じく2回の電荷蓄積を繰り返す中間領域からの画素信号に対しては、階調を与える輝度範囲を積算回数に合わせて高輝度側にシフトしたが、シャドウ領域からの画素信号に対しては、このような処理を行わない。すなわち、シャドウ領域における1回の電荷蓄積(電荷蓄積時間はT
0/2)による画素信号の値は小さく、2回分を加算しても12bitの範囲から飽和することがないので、シフト処理を行わなくて良い。
【0085】
このように、シャドウ領域に対する電荷蓄積回数も複数回に設定して、出力される画素信号を加算処理すれば、暗部におけるランダムノイズを相殺する効果を期待できる。この場合、ダイナミックレンジの拡大を目的として複数回の電荷蓄積を実行する他の領域の画素信号の処理とは異なり、シフト処理を行わず、単純に加算処理を行えば良い。なお、このような処理は、上述の実施形態と同様に、信号処理チップ111に設けられた演算回路415が行っても良いし、画像処理部511が行っても良い。
【0086】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0087】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0088】
100 撮像素子、101 マイクロレンズ、102 カラーフィルタ、103 パッシベーション膜、104 PD、105 トランジスタ、106 PD層、107 配線、108 配線層、109 バンプ、110 TSV、111 信号処理チップ、112 メモリチップ、113 撮像チップ、131 単位グループ、302 転送トランジスタ、303 リセットトランジスタ、304 増幅トランジスタ、305 選択トランジスタ、306 リセット配線、307 TX配線、308 デコーダ配線、309 出力配線、310 Vdd配線、311 負荷電流源、409 入力配線、411 マルチプレクサ、412 信号処理回路、413 デマルチプレクサ、414 画素メモリ、415 演算回路、420 駆動制御部、430 タイミングメモリ、441 センサ制御部、442 ブロック制御部、443 同期制御部、444 信号制御部、461 スイッチ、500 撮像装置、501 システム制御部、502 駆動部、503 測光部、504 ワークメモリ、505 記録部、506 表示部、511 画像処理部、512 演算部、601 シャドウ被写体、602 中間被写体、603 ハイライト被写体、604 窓枠、611 シャドウ領域、612 中間領域、613 ハイライト領域