(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010347
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ロボットアーム装置の先端部のハンド及びこれを用いた坩堝のハンドリング方法
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F27D3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114425
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】近藤 千果
【テーマコード(参考)】
4K055
【Fターム(参考)】
4K055HA07
4K055HA15
(57)【要約】
【課題】 載置面上に該複数の坩堝を高密度に並べることが可能なロボットアーム装置のハンドを提供する。
【解決手段】 ロボットアーム装置31の先端部に取り付けられる互いに離間する棒状の基部110及び棒状の可動部120からなり、それらの互いに対向する先端当接部同士で坩堝Cを両側から挟持するハンド106であって、可動部120はその略中央部分において、基部110の略中央部分から突出する支持部111によって回動自在に支持されると共に、基部110の先端当接部とは反対側の末端部に設けられた往復動手段112から支持部111の突出方向に出没するロッド113によって可動部120の先端当接部とは反対側の末端部が回動自在に接続される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアーム装置の先端部に取り付けられる互いに離間する棒状の基部及び棒状の可動部からなり、それらの互いに対向する先端当接部同士で容器を両側から挟持するハンドであって、
前記可動部はその略中央部分において、前記基部の略中央部分から突出する支持部によって回動自在に支持されると共に、前記基部の前記先端当接部とは反対側の末端部に設けられた往復動手段から前記支持部の突出方向に出没するロッドによって前記可動部の前記先端当接部とは反対側の末端部が回動自在に接続されるハンド。
【請求項2】
前記可動部は、前記容器を挟持していないときに前記基部に対して略平行に延在するか、あるいは前記容器を挟持したときに前記基部に対して略平行に延在する、請求項1に記載のハンド。
【請求項3】
前記可動部は厚み方向に重ね合せられた複数の板状体で構成され、それらは前記支持部によって支持される部位から前記先端当接部までの長さが全て異なっており、該複数の板状体の各々は前記基部との協働により1個の容器を挟持する、請求項1又は2に記載のハンド。
【請求項4】
前記往複動手段がエアーシリンダーである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハンド。
【請求項5】
1台のロボットアーム装置の先端部に取り付けられた請求項1~4のいずれか1項に記載のハンドを用いた坩堝のハンドリング方法であって、
複数の坩堝を連続的又は断続的に搬送してそれらを順次加熱炉内に装入する搬送手段の載置面上のうち、該加熱炉の装入口の上流側の位置に加熱前の内容物の入った坩堝を1又は複数個ずつ載置する工程と、該加熱炉の退出口の下流側の位置で待機している加熱後の内容物の入った坩堝を1又は複数個ずつ持ち上げて該内容物を排出する工程とを交互に繰り返す、坩堝のハンドリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム装置の先端部に取り付けられるハンド及び該ハンドを用いた坩堝のハンドリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石に含まれる金や銀等の貴金属成分を定量分析する方法として、乾式試金分析法が知られている。乾式試金分析法は、分析対象の鉱石を酸化鉛及び融剤と混合することで調製した試料を坩堝に入れ、これを融解炉に装入して融解することで金や銀等の貴金属を鉛に溶け込ませて他の金属と分離し、得られた貴金属と鉛との合金に対して灰吹き法によって処理することで、貴金属のみを取り出してその質量を測定する定量分析法である。
【0003】
上記の乾式試金分析法では、試料の入った坩堝を融解炉内に装入し、該坩堝内の試料を例えば1200℃の温度条件で所定の時間かけて加熱することにより十分に融解させた後、該坩堝を融解炉から取り出して内部の融解状態の試料を速やかに鋳型に注ぎ込む作業が必要であり、従来は作業者がこれら一連の作業を坩堝バサミを用いて手作業で行っていた。そのため、作業者は高温の環境下で融解炉に近接して作業を行なう必要があり、作業者にとって作業負担が大きく、また安全性を確保するために様々な措置を講ずる必要があった。
【0004】
そこで、作業者の作業負担を軽減すると共に安全上の問題を解消するため、上記のように手作業に頼っていた乾式試金分析の際の坩堝のハンドリングを自動化することが提案されている。例えば特許文献1には、複数の坩堝の載置面を備えた回転可能な円形の台座と、該台座によって連続的に搬送される複数の坩堝を順次装入してその内部の試料を溶解する溶解炉と、融解炉の装入口より上流側の該載置面上に溶解前の試料が入った坩堝を載置したり、融解炉の退出口より下流側の該載置面上に載置されている溶融状態の試料が入った坩堝を持ち上げたりするロボットアーム装置とを備えた試料融解装置が開示されている。この特許文献1のロボットアーム装置の先端部は、開閉自在な爪部材で構成されるチャック手段が設けられており、このチャック手段によって坩堝を把持することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ロボットアーム装置の先端部に設けられている爪部材で構成されるチャック手段は、一般的に1対の棒状の爪部材の末端部同士を回動自在に結合した構造になっているので、該チャック手段で複数個の坩堝を同時に持ち上げるときは、該回動自在な結合部を支点として爪部材を略V字状に大きく広げる必要があった。そのため、このように爪部材を広げたときに他の坩堝に物理的に干渉することのないように、台座の載置面上に坩堝を載置するときは隣接する坩堝同士の間隔を大きくあけておく必要があり、高密度に坩堝を並べることで試料融解装置の処理能力を高めることができなかった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ベルトコンベア等の搬送手段の載置面上に複数の坩堝を並べてそれらを順次融解炉などの加熱炉に装入する際に、該載置面上に該複数の坩堝を高密度に並べることが可能なロボットアーム装置のハンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るロボットアーム装置の先端部に取り付けられるハンドは、ロボットアーム装置の先端部に取り付けられる互いに離間する棒状の基部及び棒状の可動部からなり、それらの互いに対向する先端当接部同士で容器を両側から挟持するハンドであって、前記可動部はその略中央部分において、前記基部の略中央部分から突出する支持部によって回動自在に支持されると共に、前記基部の前記先端当接部とは反対側の末端部に設けられた往復動手段から前記支持部の突出方向に出没するロッドによって前記可動部の前記先端当接部とは反対側の末端部が回動自在に接続されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の坩堝を搬送手段によって加熱炉内に順次装入して加熱する際に、該搬送手段の載置面上に該複数の坩堝を高密度に並べることができるので、該加熱炉の処理能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のハンドを先端部に有するロボットアーム装置の一具体例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態のハンドの平面図である。
【
図3】従来のハンドによって複数の坩堝を挟持したり開放したりする状態を示す平面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態のハンドの斜視図である。
【
図5】
図4のハンドが坩堝を挟持しているときの形態(a)、及び坩堝を開放しているときの形態(b)の一具体例を示す平面図である。
【
図6】
図4のハンドが坩堝を挟持しているときの形態(a)、及び坩堝を開放しているときの形態(b)の他の具体例を示す平面図である。
【
図7】
図4のハンドを先端部に備えたロボットアーム装置を用いて坩堝をハンドハンドリングしている様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るハンドの実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この本発明の実施形態のハンドは、ロボットアーム装置の先端部に取り付けられるいわゆるエンドエフェクターであり、被加熱物が入った複数の略円筒形状の容器を連続的又は断続的に搬送して順次加熱炉内に装入する搬送手段の載置面上のうち、該加熱炉の装入口よりも上流側の位置に坩堝を1又は複数個ずつ載置する機能と、該加熱炉の退出口よりも下流側の位置で待機している該容器を1又は複数個ずつ持ち上げる機能とを兼ね備えている。
【0012】
上記の加熱炉については特に限定はなく、水平な一方向に走行する無限軌道のベルトコンベアによって搬送される複数個の坩堝をトンネル状の加熱炉内に順次通過させて連続的に加熱する加熱炉でもよいし、鉛直方向に延在する中心軸の周りに回転する円型又は環状の基台によって搬送される複数個の坩堝をトンネル状の加熱炉内に順次通過させて連続的に加熱する加熱炉でもよい。また、加熱炉の用途についても特に限定はないが、以下の本発明の実施形態においては、鉱石に含まれる金や銀等の貴金属を乾式試金分析法により定量分析するため、該鉱石を酸化鉛及び融剤と混合して調製した試料が入った複数の坩堝を無限軌道のベルトコンベアによる搬送で炉内に順次装入することで試料を融解する融解炉である場合を例に挙げて説明する。
【0013】
1.融解装置
本発明の実施形態のハンドによってハンドリングされる坩堝の内容物である試料を融解処理する融解装置は、載置面上に載置された複数の坩堝を連続的又は断続的に搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される複数の坩堝がトンネル状の炉内を順次通過する間にそれらの内容物である試料を加熱することで融解する融解炉とから構成される。
【0014】
具体的に説明すると、搬送手段は例えば無限軌道を有するベルトコンベアからなり、融解炉の装入口から入って該融解炉内の炉底部分を一方向に走行した後、反対側の退出口から出るように走行経路が画定されている。これにより、該ベルトコンベアの載置面となるコンベア面上のうち、融解炉の装入口の上流側の装入前坩堝載置位置に後述するロボットアーム装置で順次載置された坩堝は、該ベルトコンベアの連続的又は断続的な走行により融解炉の装入口から装入され、融解炉の内部で加熱されることで該坩堝内の試料の融解が行なわれる。融解炉内で融解された試料の入った坩堝は、該ベルトコンベアの連続的又は断続的な搬送によって融解炉の退出口から出た後、この退出口の下流側の退出後坩堝待機位置まで搬送され、ここで上記のロボットアーム装置によって持ち上げられる。
【0015】
2.ロボットアーム装置
上記のコンベア面上に坩堝を載置したり該コンベア面上から坩堝を持ち上げたりするロボットアーム装置には、例えば
図1の形状を有するマニュピレーターとも称する垂直多関節構造のロボットを用いるのが好ましい。この
図1に示すロボットアーム装置は、一般的に床面にボルト等で固定されるベース部1と、ベース部1の上面部においてA1軸を中心として水平旋回自在に設けられた旋回部2と、旋回部2の上端部においてA2軸を中心として前後に回動自在に連結された縦リンク部(下腕部)3と、縦リンク部3の先端部においてA3軸を中心として上下方向に回動自在に連結された横リンク部(上腕部)4と、横リンク部4の先端部においてA4軸を中心として回動自在に連結されている手首部5とから構成される。この手首部5はその中央部分でA5軸を中心として曲がるようになっており、且つその先端部において後述する本発明の第1の実施形態のハンド6又は第2の実施形態のハンド106が、A6軸を中心として回動自在に取り付けられている。次に、このロボットアーム装置の先端部に取り付けられている本発明の第1の実施形態のハンド6及び第2の実施形態のハンド106について具体的に説明する。
【0016】
3.ハンド
本発明の第1の実施形態のハンド6は、
図2に示すように、互いに離間する棒状の基部10及び棒状の可動部20からなり、それらの互いに対向する先端当接部によって、下方に向かって縮径する略円筒形状の容器からなる坩堝Cを水平方向の両側から挟み込むことによって挟持できるようになっている。具体的に説明すると、基部10の長手方向の略中央部分には、該長手方向に対して垂直な方向に突出する1対の長尺の板状部材からなる支持部11が設けられている。この支持部11を構成する1対の板状部材には、それらの両先端部に架け渡すように丸棒11aが設けられており、この丸棒11aに可動部20の長手方向の略中央部分に設けた貫通孔が挿通している。これにより、可動部20はその略中央部分において支持部11によって回動自在に支持されている。
【0017】
また、基部10は、その長手方向における上記先端当接部とは反対側の末端部に往復動手段12が設けられている。この往復動手段12は、上記の支持部11が突出する方向にロッド13が出没するようになっており、このロッド13の先端部に可動部20の長手方向における上記先端当接部とは反対側の末端部が回動可能に接続されている。
【0018】
上記の往復動手段12の具体的な種類には特に限定はないが、円筒形のシリンダー内に圧縮空気を導入したり排気したりすることでロッドを進出させたり退避させたりするエアーシリンダーが好適に用いられる。なお、ロッド13をシリンダー内に退避させる方法としては、進出方向とは反対方向に付勢するスプリングの力を利用する単動式と、上記のシリンダー内において該ロッドに接続するピストンによって仕切られる両方の空間に交互に圧縮空気を導入する複動式とがある。
【0019】
かかる構造のハンド6を用いて坩堝Cを持ち上げる場合は、基部10の先端当接部と可動部20の先端当接部との間に挟持対象の坩堝Cが位置するようロボットアーム装置を作動させる。この状態で、往復動手段12がエアーシリンダーの場合はそのシリンダー内に圧縮空気を導入してロッド13を進出させる。これにより、可動部20の末端部が基部10の末端部から離間する方向に移動するので、可動部20は基部10の支持部11を支点として一方向に回動し、可動部20の先端当接部が基部10の先端当接部に接近する。
【0020】
その結果、可動部20の先端当接部は、先ず坩堝Cの側壁部に当接した後、該坩堝Cと共に基部10の先端当接部に更に接近する。そして、最終的に坩堝Cの側壁部のうち可動部20の先端当接部が当接している側とは反対側が基部10の先端当接部に当接する。これにより、基部10及び可動部20の互いに対向する先端当接部同士による坩堝Cの挟持が完了する。このようにしてハンド6において坩堝Cを挟持した状態を維持したままロボットアーム装置を作動させることで、これら坩堝Cを所定の場所に移動させることができる。
【0021】
上記の挟持状態の坩堝Cを移動先で載置面上に載置する場合は、上記の挟持するときとは反対の順序で操作をすればよい。すなわち、先ずロボットアーム装置を作動させることでハンド6によって挟持されている坩堝Cを例えばテーブル上に載置し、往復動手段12が単動式のエアーシリンダーの場合はシリンダーから圧縮空気を排気する。これにより、ロッド13がシリンダー内に退避するので、可動部20の末端部が基部10の末端部に接近する方向に移動することで可動部20が基部10の支持部11を支点として上記の坩堝Cを挟持するときとは反対方向に回動し、可動部20の先端当接部が基部10の先端当接部から離間する方向に変位する。
【0022】
その結果、可動部20の先端当接部が坩堝Cの側壁部から離間するので、基部10の先端当接部も坩堝Cの側壁部から離間するようにハンド6を水平方向に僅かに移動させた後、ハンド6を真上に持ち上げるかあるいはハンド6を基部10の長手方向に引き抜くように水平移動させる。これにより、所定の場所への坩堝Cの載置が完了する。上記のように、本発明の第1の実施形態のハンド6は、基部10の末端部に設けられている往復動手段12からロッドを出没させることにより基部10及び可動部20の互いに対向する先端当接部同士を離間する方向に変位させたり逆に接近させたりすることができるので、それらが最も近接するときの離間距離を適宜調節することで坩堝Cを挟持したり開放したりすることが可能になる。
【0023】
また、
図2に示すように、複数の坩堝Cを1列に並べた状態のまま、それらの両側から挟み込むことによって同時に挟持することができるので、極めて効率よく複数個の坩堝Cを取り扱うことができる。特に、後述するように複数個の坩堝Cをベルトコンベアで搬送することでトンネル状の加熱炉に装入する場合に有利となる。すなわち、加熱炉の処理能力を高めるため、該ベルトコンベアの幅方向に載置した複数個の坩堝Cの列は、ベルトコンベアの走行方向に隣接する他の坩堝Cの列とはできるだけ近接させるのが好ましい。
【0024】
しかしながら、この互いに隣接する坩堝Cの列の間には、ハンドを構成する1対の爪部材の片方が入り込むので、このときに爪部材が坩堝Cに物理的に干渉しないように、ある程度間隔をあけておく必要があった。この場合、
図3に示すように、2本の棒状部分がそれらの末端部同士で互いに回動可能に接続された構造の従来のハンド56を用いる場合は、坩堝Cを挟持していないときの形態は、1点鎖線で示すように爪部材が該末端部から最も近い位置で挟持されている坩堝Cに干渉しないようにするために2本の爪部材を大きく開く必要があった。このため、ベルトコンベアの走行方向に隣接する坩堝Cの列の間隔は、この爪部材において坩堝Cを挟持していないときの形態を考慮して大きく確保しておく必要があり、結果的にベルトコンベアの載置面上に複数の坩堝Cを高密度に載置することができなかった。
【0025】
これに対して、上述したように、本発明の第1の実施形態のハンド6は、坩堝Cを挟持しているときの形態及び坩堝Cを開放しているときの形態のいずれにおいても、可動部20が基部10から離間したままの状態を維持できるので、
図3の従来のハンド56を用いる場合に比べて、ベルトコンベアの走行方向に隣接する坩堝Cの列の間隔を大きく確保する必要がない。すなわち、
図2に示すように、基部10と可動部20との長手方向が互いに略平行となる位置関係にあるときに、それらの互いに対向する先端当接部同士で複数の坩堝Cを同時に挟持できるように、これら基部10と可動部20との離間距離、すなわち、支持部11が基部10から突出する長さを適宜調整することで、基部10に対して可動部20を僅かに回動させて可動部20の先端当接部を基部10の先端当接部から離間する方向に移動させるだけで、ハンド6の形態を坩堝Cの挟持時の形態から坩堝Cの非挟持時の形態に変えることができる。
【0026】
このように、本発明の第1の実施形態のハンド6は、
図3に示す従来のハンド56に比べて、坩堝Cを挟持する前後の非挟持時において2本の爪部材を大きく開かなくてもよいので、ベルトコンベアの幅方向に平行にハンド6の長手方向を向けた姿勢のまま該ベルトコンベアの載置面上に複数個ずつ坩堝Cを載置する際、該ベルトコンベアの走行方向に隣接する他の坩堝Cの列との間隔を従来のハンド56を用いる場合に比べて狭くできる。また、本発明の第1の実施形態のハンド6は、従来のハンド56を用いる場合に比べてベルトコンベアの走行方向に関して隣接する坩堝Cの列の間隔が狭く載置されている場合であっても、隣接する他の坩堝Cの列に物理的に干渉することなく挟持することができる。よって、該載置面上の坩堝Cの載置密度を高めることができる。
【0027】
なお、可動部20の先端当接部は、支持部11で支持されている部位との距離ができるだけ短いことが好ましい。その理由は、可動部20の先端当接部は支持部11で支持されている部位を中心として回動するため、上記の距離を短くすることにより回動半径を小さくできるので、該先端当接部の変位をより小さくすることができるからである。また、往複動手段12の仕様によってはロッド13の進出時及び退避時のストロークを小さくすることが困難な場合があり、このような場合であっても、上記のように支持部11で支持される部位と先端当接部との距離を短くすることで対応可能となる場合が多くなる。
【0028】
次に、
図4を参照しながら本発明の第2の実施形態のハンド106について説明する。この
図4に示すハンド106は、基部110については第1の実施形態のハンド10と同様に1本の棒状の部材で構成されるが、可動部120は厚み方向に重ね合わされた複数の略短冊状の板状体120a~cで構成される。これら複数の板状体120a~c(
図4では3枚の板状体から構成される可動部120が例示されている。)は、基部110の略中央部から突出する支持部111で支持されている部位からそれぞれの先端当接部までの長さが全て異なっており、これにより板状体120a~cは、各々、基部110の先端当接部との協働により1個の坩堝Cを挟持するようになっている。
【0029】
更に、基部110は、その長手方向における上記先端当接部とは反対側の末端部に3個の往復動手段112a~cが設けられており、これら往復動手段112a~cから上記の支持部111が突出する方向にそれぞれロッド113a~cが出没するようになっており、これらロッド113a~cの先端部にそれぞれ3枚の板状体120a~cの末端部が回動可能に接続されている。これにより、これら板状体120a~cを各々独立して回動させることができるので、各板状体ごとに、その先端当接部において基部110との協働で1個の坩堝Cを挟持したり開放したりすることが可能になる。
【0030】
このように、本発明の第2の実施形態のハンド106は、複数の板状体120a~cの各々と基部110との協働で1個の坩堝Cを挟持することができるので、坩堝Cの大きさにばらつきがあっても確実に挟持することができる。すなわち、坩堝Cは、加熱と冷却による熱応力が繰り返しかかることによって熱変形にばらつきが生じやすく、また、市販の坩堝Cは許容範囲内の外径公差により外径に元々ばらつきがあるが、上記のように各板状体ごとに基部110との協働で1個の坩堝Cを挟持したり開放したりすることができるので、坩堝Cを確実に挟持できる。よって、坩堝C内の融解状態の試料を排出させるべく、坩堝Cを挟持した状態のまま基部110の長手方向を中心軸としてハンド106を回転させることで坩堝Cを傾転させた場合でも、これらの坩堝Cが脱落するのを防ぐことができる。また、本発明の第2の実施形態のハンド106を用いることで、坩堝Cの側壁面において底面から同じ高さの部分を常に挟持することができるので、坩堝Cを傾転させることで排出される融解状態の試料を、排出先の鋳型に安定的に注ぎ込むことができる。
【0031】
更に、本発明の第2の実施形態のハンド106は、坩堝Cの挟持時や開放時の形態の自由度を高めることができる。すなわち、本発明の第1の実施形態のハンド6の場合は、
図2に示すように複数の坩堝Cを挟持するときは基部10の延在方向と可動部20の延在方向とが互いに平行な形態となるが、本発明の第2の実施形態のハンド106の場合は、複数の坩堝Cを挟持するときの基部110の延在方向と可動部120の延在方向とが互いに略平行な形態となるときが、
図5(a)に示すように複数の坩堝Cを挟持するときでもよいし、
図6(b)に示すように複数の坩堝Cを開放しているときでもよい。
【0032】
4.ハンドを用いた坩堝のハンドリング方法
次に、上記した本発明のハンドを用いた坩堝のハンドリング方法について、ハンドが第2の実施形態の場合を例に挙げて
図7を参照しながら説明する。先ず、ロボットアーム装置31を作動させることで、その先端部に取り付けられているハンド106を用いて図示しないコンテナ内に収容されている坩堝Cから3個の坩堝Cを挟持して持ち上げることで、コンテナから取り出す。
【0033】
次に、上記の3個の坩堝Cを挟持した状態のままロボットアーム装置31を作動させることで、基部110の延在方向がベルトコンベア32の幅方向に対して略平行となる姿勢にしてベルトコンベア32の装入前坩堝載置位置32aに坩堝Cを載置する。その際、融解炉33の処理能力を高めるべくベルトコンベア32の載置面上にできるだけ多くの坩堝Cを載置して載置密度を高めるには、ベルトコンベア32の走行方向に関してすぐ下流側の位置に既に載置されている坩堝Cの列に対して基部110をできるだけ近接させるのが好ましいが、融解処理後にベルトコンベアの載置面上で待機している坩堝Cをハンド106で持ち上げる必要があるので、ベルトコンベアの走行方向に関して隣接する坩堝Cの列の間隔は後述するようにある程度広くする必要がある。
【0034】
すなわち、1点鎖線で示すように、ベルトコンベア32の退出後坩堝待機位置32bにおいてベルトコンベア32の幅方向に並んで待機している3個の坩堝Cをハンド106で持ち上げる際は、ベルトコンベア32の走行方向に関して隣接する坩堝Cの列同士の間にハンド106の可動部120を差し込んで坩堝Cを挟持していない形態から挟持する形態に変化させる必要があるので、その際に上流側の他の坩堝Cに干渉しない程度の間隔をあけておく必要がある。この場合、本発明の第2実施形態のハンド106は、前述したように、基部110に対して可動部120を僅かに回動するだけでよいので、この可動部120が回動するスペース分だけベルトコンベア32の走行方向で隣接する坩堝Cの列の間隔をあけておけばよい。従って、
図3に示す従来のハンドを用いる場合に比べてベルトコンベア32の載置面上における坩堝Cの載置密度を高めることができる。
【0035】
上記のようにして定めたベルトコンベア32の装入前坩堝載置位置32a上の所定の位置にハンド106を降下することで坩堝Cを載置した後、往復動手段112を作動させて挟持状態から開放状態にする。これにより、坩堝Cのベルトコンベア32の載置面上への載置が完了する。このようにしてベルトコンベア32の載置面上において幅方向に1列に並べられた坩堝Cは、コンベアベルト32の連続的又は断続的な走行により融解炉33内に装入され、ここで坩堝Cに入れた試料は所定の温度で加熱されることで融解処理が行なわれる。この融解した試料の入った坩堝Cは、コンベアベルト32の連続的又は断続的な走行によって融解炉33の退出口から退出し、退出後坩堝待機位置32bまで搬送される。
【0036】
この退出後坩堝待機位置32bで待機している坩堝Cを挟持する場合は、ロボットアーム装置31を作動させて、この挟持対象の坩堝Cの列とベルトコンベアの走行方向の上流側に載置されている坩堝Cの列との間の隙間に可動部120を差し込む。このとき、これら坩堝Cの列同士の隙間は前述したように坩堝Cを載置する際に適切な間隔となるように考慮されているので、物理的に干渉することはない。このようにして坩堝Cを挟持した状態でロボットアーム装置31を作動させて持ち上げた後、図示しない鋳型まで移動させ、ここで基部110の長手方向を中心としてハンド106を回動させることで、坩堝C内の融解した試料を鋳型に注ぎ込むことができる。
【0037】
以上、第1及び第2の実施形態に基づいて本発明のハンド及びこれを用いた坩堝のハンドリング方法について説明したが、本発明はこれら第1及び第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形例や代替例を含むことができる。すなわち、本発明の権利範囲は特許請求の範囲及びその均等の範囲に及ぶものである。
【符号の説明】
【0038】
1 ベース部
2 旋回部
3 縦リンク部
4 横リンク部
5 手首部
6、106 ハンド
10、110 基部
11、111 支持部
11a 丸棒
12、112a~112c 往復動手段
13、113a~113c ロッド
20、120a~120c 可動部
31 ロボットアーム装置
32 ベルトコンベア
32a 装入前坩堝載置位置
32b 退出後坩堝待機位置
33 融解炉
A1、A2、A3、A4、A5、A6 回転軸
C 坩堝