(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103539
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】プロセッサシステム、半導体検査システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230720BHJP
G01B 15/04 20060101ALI20230720BHJP
G01B 15/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B15/04 K
G01B15/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004104
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 健二
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真由香
(72)【発明者】
【氏名】生井 仁
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】長友 渉
(72)【発明者】
【氏名】井古田 まさみ
(72)【発明者】
【氏名】木村 麻紀
【テーマコード(参考)】
2F067
4M106
【Fターム(参考)】
2F067AA26
2F067AA31
2F067AA51
2F067AA52
2F067AA53
2F067AA54
2F067BB04
2F067EE10
2F067JJ05
2F067KK04
2F067LL16
2F067RR35
2F067RR41
2F067SS02
2F067TT08
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DJ12
4M106DJ18
4M106DJ20
(57)【要約】
【課題】断面観察を行う前に非破壊で、ウェハ面内あるいはウェハ間でのパターンの断面形状を含む立体形状の変化を定量的に把握することができる技術を提供する。
【解決手段】半導体検査システムのプロセッサシステムは、試料についての電子顕微鏡(SEM)による撮像画像を取得し(S102)、試料面上に定義される基準領域について、基準領域内の複数の箇所の各々の箇所に対応する第1特徴量を撮像画像から計算し(S103A)、複数の箇所での第1特徴量から、第1統計値を計算し(S103B)、基準領域と対応させて試料面上に点または領域として定義される複数の評価領域の各々の評価領域について、評価領域内の1以上の箇所の各々の箇所に対応する第2特徴量を、第1特徴量と同じ種類の特徴量として、撮像画像から計算し(S104A)、第2特徴量を第1統計値によって変換して変換後の第2特徴量を得る(S105)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料である半導体のパターンの断面形状を含む立体形状を評価するプロセッサシステムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリ資源とを備え、
前記プロセッサは、
1以上の試料についての電子顕微鏡による撮像画像を1以上取得し、
前記1以上の試料の面上に定義される基準領域について、前記基準領域内の複数の箇所の各々の箇所に対応する第1特徴量を前記撮像画像から計算し、
前記複数の箇所での第1特徴量から、第1統計値を計算し、
前記基準領域と対応させて前記1以上の試料の面上に定義される複数の評価領域の各々の評価領域について、前記評価領域内の1以上の箇所の各々の箇所に対応する第2特徴量を、前記第1特徴量と同じ種類の特徴量として、前記撮像画像から計算し、
前記第2特徴量を前記第1統計値によって変換して変換後の第2特徴量を得る、
プロセッサシステム。
【請求項2】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、
前記第1統計値として、前記基準領域内のパターンの局所的な形状のばらつきに対する前記第1特徴量の変動量および平均値を計算し、
第2統計値として、前記評価領域内のパターンの局所的な形状のばらつきに対する前記第2特徴量の平均値を計算し、
前記第2特徴量の平均値と前記第1特徴量の平均値との差分を、前記第1特徴量の変動量によって正規化する、
プロセッサシステム。
【請求項3】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記第1特徴量および前記第2特徴量は、前記撮像画像の信号波形に基づいて算出される、線幅、ホワイトバンドピーク、ボトム信号値、トップ信号値、傾き、または、前記撮像画像から演算によって算出される値のうち、少なくとも1つの特徴量である、
プロセッサシステム。
【請求項4】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、前記変換後の第2特徴量を指標として、対象試料面内または対象試料間での前記半導体のパターンの断面形状変化を定量化して評価する、
プロセッサシステム。
【請求項5】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、対象試料の前記評価領域についての前記変換後の第2特徴量を、表示画面に表示させる、
プロセッサシステム。
【請求項6】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、前記変換後の第2特徴量に基づいて、断面観察のための断面観察位置を選定する、
プロセッサシステム。
【請求項7】
請求項6記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、前記断面観察位置に基づいて、断面観察装置に断面観察を行わせて断面形状寸法を計測させる、
プロセッサシステム。
【請求項8】
請求項7記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、試料の同じ領域について、前記第2特徴量と、前記変換後の第2特徴量と、前記断面形状寸法とを関連付けて、前記メモリ資源にデータとして記憶する、
プロセッサシステム。
【請求項9】
請求項8記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、
推定対象試料についての電子顕微鏡による撮像画像を取得し、
前記撮像画像から特徴量を算出し、
算出された前記特徴量から、前記関連付けたデータで示す関係に従って、推定対象試料のパターンの断面形状寸法を推定する、
プロセッサシステム。
【請求項10】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、試料の同じ領域について、前記第2特徴量と、前記変換後の第2特徴量と、前記試料の製造パラメータとを関連付けて、前記メモリ資源にデータとして記憶する、
プロセッサシステム。
【請求項11】
請求項10記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、
調整対象試料についての電子顕微鏡による撮像画像を取得し、
前記撮像画像から特徴量を算出し、
算出された前記特徴量から、前記関連付けたデータで示す関係に従って、調整対象試料面内または調整対象試料間での前記半導体のパターンの断面形状変化の均一性が前よりも高くなるように、前記製造パラメータを調整する、
プロセッサシステム。
【請求項12】
請求項1記載のプロセッサシステムにおいて、
前記プロセッサは、試料の同じ領域について、前記第2特徴量と、前記変換後の第2特徴量と、断面観察の結果の断面形状寸法と、前記試料の製造パラメータとを関連付けて、前記メモリ資源にデータとして記憶する、
プロセッサシステム。
【請求項13】
試料である半導体のパターンの断面形状を含む立体形状を検査する半導体検査システムであって、
電子顕微鏡と、
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリ資源とを備えるプロセッサシステムと、
を備え、
前記プロセッサは、
1以上の試料についての前記電子顕微鏡による撮像画像を1以上取得し、
前記1以上の試料の面上に定義される基準領域について、前記基準領域内の複数の箇所の各々の箇所に対応する第1特徴量を前記撮像画像から計算し、
前記複数の箇所での第1特徴量から、第1統計値を計算し、
前記基準領域と対応させて前記1以上の試料の面上に定義される複数の評価領域の各々の評価領域について、前記評価領域内の1以上の箇所の各々の箇所に対応する第2特徴量を、前記第1特徴量と同じ種類の特徴量として、前記撮像画像から計算し、
前記第2特徴量を前記第1統計値によって変換して変換後の第2特徴量を得る、
半導体検査システム。
【請求項14】
試料である半導体のパターンの断面形状を含む立体形状を評価するプロセッサシステムに処理を実行させるためのプログラムであって、
前記プロセッサシステムのプロセッサに、
1以上の試料についての電子顕微鏡による撮像画像を1以上取得する処理と、
前記1以上の試料の面上に定義される基準領域について、前記基準領域内の複数の箇所の各々の箇所に対応する第1特徴量を前記撮像画像から計算する処理と、
前記複数の箇所での第1特徴量から、第1統計値を計算する処理と、
前記基準領域と対応させて前記1以上の試料の面上に定義される複数の評価領域の各々の評価領域について、前記評価領域内の1以上の箇所の各々の箇所に対応する第2特徴量を、前記第1特徴量と同じ種類の特徴量として、前記撮像画像から計算する処理と、
前記第2特徴量を前記第1統計値によって変換して変換後の第2特徴量を得る処理と、
を実行させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体検査システム等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、半導体などの試料を破断し、断面観察装置を用いて破断面の形状を観察し、断面寸法を計測して、変化を把握する方法が知られている。
【0003】
また、例えば特開2007-129059号公報(特許文献1)には、半導体デバイス製造プロセスモニタ装置等として、被評価パターンの断面形状、プロセス条件、あるいはデバイス特性を、非破壊で計測可能にする旨の技術が記載されている。特許文献1では、パターンのSEM像から、パターンの断面形状を推定するのに有効な画像特徴量を算出する。特許文献1では、その画像特徴量を、予めデータベースに保存しておいたパターンの断面形状等とSEM像から算出した画像特徴量とを関連づける学習データ(推定モデル)に照合する。特許文献1では、これにより、被評価パターンの断面形状、プロセス条件、あるいはデバイス特性が推定される旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体製造プロセスの例として、半導体回路パターンを形成するエッチングプロセスの最適化においては、例えば以下のような制御が行われる。加工対象であるウェハの中心付近をターゲットにパターンの立体形状が所望の形状になるように加工条件が調整される。そののち、ウェハ全体で形状が均一化されるような加工条件の調整が行われる。従来技術例は、立体形状のうちパターンの代表的な幅を、走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope:SEM)のTop-view画像から計測し、この計測値が均一化するように調整を行っている。なお、Top-view画像とは、ウェハの表面(言い換えると上面)を上側から撮像した画像である。詳細には、この画像の撮像方向は、ウェハ表面に対し垂直な方向を基本とするが、垂直に対し斜めの方向(チルト方向など)も可能である。
【0006】
これに対し、半導体回路パターンの微細化が進み、半導体パターンの代表的な線幅だけでなく、立体的な断面形状が、デバイス特性に大きく影響を与えるようになってきている。この断面とは、Top-view画像におけるウェハ表面の面内方向に対し、垂直な方向を基本とした面である。これに伴い、ウェハ面上の半導体パターンの断面形状を含む立体形状の変化の把握が求められてきている。この変化とは、ウェハ面内あるいはウェハ間のパターンの均一性を理想とした場合に、例えばウェハ面内方向あるいはウェハ間での断面形状の変化、違いが生じることである。
【0007】
断面観察装置において断面観察・断面計測を行う場合、試料に収束イオンビーム(Focused ion beam:FIB)加工等の破壊を施して断面が露出した断面観察用のサンプルを作成する必要があるため、コストが高い。そのため、ウェハ面内を網羅的に評価できるほどの多くの箇所での断面観察を行うことは難しい。低コストで効率的に断面形状変化を把握するためには、ウェハ面の必要な断面観察箇所を適切に選定する必要がある。断面観察箇所の決め方によっては、断面形状変化を見逃す恐れがある。また、断面観察箇所の決め方によっては、同じような複数の断面形状箇所を重複して非効率に観察してしまう可能性がある。
【0008】
また、特許文献1の場合では、予め断面形状(例えば寸法)と画像特徴量との関係を学習することで、断面形状を推定・計測している。推定・計測の精度を確保するためには、実際の断面形状のバリエーションを網羅した学習用のデータが必要である。しかし、バリエーションが未知の試料から適切に学習用のデータの断面形状取得箇所を決定することは難しい。
【0009】
本開示の目的は、試料である半導体デバイスの検査、観察、計測、評価などの技術に関して、断面観察を行う前に非破壊で、ウェハ面内あるいはウェハ間でのパターンの断面形状を含む立体形状の変化を定量的に把握することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態のプロセッサシステムは、試料である半導体のパターンの断面形状を含む立体形状を評価するプロセッサシステムであって、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリ資源とを備え、前記プロセッサは、1以上の試料についての電子顕微鏡による撮像画像を1以上取得し、前記1以上の試料の面上に定義される基準領域について、前記基準領域内の複数の箇所の各々の箇所に対応する第1特徴量を前記撮像画像から計算し、前記複数の箇所での第1特徴量から、第1統計値を計算し、前記基準領域と対応させて前記1以上の試料の面上に点または領域として定義される複数の評価領域の各々の評価領域について、前記評価領域内の1以上の箇所の各々の箇所に対応する第2特徴量を、前記第1特徴量と同じ種類の特徴量として、前記撮像画像から計算し、前記第2特徴量を前記第1統計値によって変換して変換後の第2特徴量を得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示のうち代表的な実施の形態によれば、試料である半導体デバイスの検査、観察、計測、評価などの技術に関して、断面観察を行う前に非破壊で、ウェハ面内あるいはウェハ間でのパターンの断面形状を含む立体形状の変化を定量的に把握することができる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1の半導体検査システムを含む、システムの構成例を示す。
【
図2】実施の形態1のプロセッサシステムの構成例を示す。
【
図3】実施の形態1での走査電子顕微鏡(SEM)の構成例を示す。
【
図4】実施の形態1で、半導体パターンに対するTop-viewのSEM画像、断面形状、および信号波形の例を示す説明図である。
【
図5】実施の形態1で、画像特徴量についての説明図である。
【
図6】実施の形態1で、処理フローを示す図である。
【
図7】実施の形態1で、基準領域と評価領域の例を示す説明図である。
【
図8】実施の形態1で、基準領域内の局所的な形状ばらつきによる特徴量の揺らぎを算出する処理についての説明図である。
【
図9】実施の形態1で、画像特徴量のウェハ分布および断面形状指標のウェハ分布の例を示す説明図である。
【
図10】実施の形態1で、画像特徴量や断面形状指標を関連付けたデータ・情報のテーブル例を示す図である。
【
図11】実施の形態2の半導体検査システムでの処理フローを示す図である。
【
図12】実施の形態2で、基準観察領域と断面観察候補領域の例を示す説明図である。
【
図13】実施の形態2で、断面観察候補領域における、局所的な断面形状ばらつきに基づいた断面形状寸法の頻度分布と、パターン数mの場合の標本平均の頻度分布とを示す説明図である。
【
図14】実施の形態2で、パターン数mに関する説明図である。
【
図15】実施の形態2で、断面観察候補領域で算出した断面形状指標のウェハ分布の例を示す説明図である。
【
図16】実施の形態2で、選択された断面観察領域を表すマップ、および断面形状指標を示す説明図である。
【
図17】実施の形態2で、断面観察領域を決定するための補助マップを示す説明図である。
【
図18】実施の形態3の半導体検査システムでの処理フローを示す図である。
【
図19】実施の形態3の変形例のシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。
【0014】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能な装置や回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0015】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えばメモリカード)でもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム、IoTシステム等で構成されてもよい。各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。識別情報、識別子、ID、名、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0016】
<実施の形態1>
図1を用いて、本開示の実施の形態1の半導体検査システム等について説明する。実施の形態1の半導体検査システムは、実施の形態1のプロセッサシステムと電子顕微鏡(特にSEM)とを含んで構成される。実施の形態1のプログラムは、実施の形態1のプロセッサシステムのプロセッサに処理を実行させるためのプログラムである。
【0017】
実施の形態1の半導体検査システム、特にそのうちのプロセッサシステムは、半導体パターンの断面形状を含む立体形状の評価を行う機能を有する。このシステムは、SEMの画像から算出される特徴量(言い換えると画像特徴量)に基づいて、その評価のための指標(言い換えると変換後の特徴量)を計算して出力する機能を有する。実施の形態1では、Top-viewのSEM画像を用いて、半導体ウェハ面上のパターンの断面形状変化を、指標として計算、検知し、ユーザに対し表示する例を説明する。
【0018】
実施の形態1の半導体検査システムは、Top-viewのSEM画像から算出した特徴量に基づいて、ウェハ面内の断面形状の変化を定量的に把握する。画像特徴量の変化は、断面形状の変化により発生するため、この画像特徴量の変化をウェハ面上で評価することで、断面形状の変化の可能性を把握することができる。一方で、断面形状変化には、パターンの線幅の変化や、角の丸まりの変化や、裾引きの変化や、側壁の傾斜角の変化や、高さの変化といった、様々な形状の変化がある。これらの断面形状変化と画像特徴量との関係を一意に定めることは難しい。そのため、画像特徴量から特定の断面形状の寸法(例えば線幅)を計測することは難しい。言い換えると、従来、画像特徴量の変化の大きさが断面形状の変化に与える影響の大きさを把握することは困難である。
【0019】
そこで、実施の形態1の半導体検査システムは、ウェハ面上の画像特徴量の変化量を、半導体パターンの局所的な形状ばらつきによる特徴量の揺らぎを基準として正規化した指標(断面形状指標とも記載)に変換する。正規化の具体例は後述の数式で示される。実施の形態1の半導体検査システムは、SEM画像から、基準となる領域における複数の箇所の画像特徴量(第1特徴量とする)の統計値(第1統計値とする)を算出し、評価対象となる領域における複数の箇所の画像特徴量(第2特徴量とする)を算出する。そして、実施の形態1の半導体検査システムは、評価対象となる領域での第2特徴量を、基準となる領域の第2統計値によって変換することで、変換後の第2特徴量を、断面形状指標として得る。この断面形状指標は、ウェハ面内またはウェハ間でのパターンの均一性に関する、断面形状の変化を定量的に評価する指標として用いることができる。
【0020】
[半導体検査システムを含むシステム]
図1は、実施の形態1の半導体検査システムを含んで構成されるシステムの全体を示す。
図1のシステムは、走査電子顕微鏡(SEM)1と、断面観察装置2と、断面形状推定システム3と、製造パラメータ制御システム4と、半導体デバイス製造装置5と、製造実行システム(MES)6と、クライアント端末7とを有する。これらの構成要素は例えば通信網(例えばLAN)9に接続されており、相互に通信可能である。
図1のシステムにおいて、実施の形態1で主に用いる構成要素は、走査電子顕微鏡(SEM)1である。他の構成要素については、主に後述の実施の形態2以降で用いられる。
【0021】
実施の形態1の半導体検査システムは、主に走査電子顕微鏡(SEM)1によって構成されている。SEM1は、後述(
図3)の本体とプロセッサシステム100とを含んでいる。プロセッサシステム100は、実施の形態1の半導体検査システムの主な機能、すなわち断面形状指標を計算する機能などが実装されたコンピュータシステムである(後述の
図2)。なお、SEM1が外部装置(他の構成要素)との間で適宜に通信などを行ってもよく、例えばSEM1が外部装置から必要なデータ・情報を参照したり、外部装置へ必要なデータ・情報を保存したりしてもよい。
【0022】
実施の形態1の半導体検査システムは、
図1の構成例に限定されない。例えば、半導体検査システムの主な機能を実現するプロセッサシステム100の部分が、SEM1の外部に存在してもよく、
図1のシステムのいずれかの装置に実装されていてもよい。また、例えば、プロセッサシステム100が、SEM1とは独立して、サーバ装置等の態様で、通信網9に接続されて存在してもよい。
【0023】
断面観察装置2は、後述するが、半導体デバイス(特にウェハ)を断面加工して断面形状を観察する機能を有する装置であり、実施の形態1の例ではFIB-SEMを適用する。断面加工は、半導体デバイスの断面の構造が露出して観察可能な状態となるように、半導体デバイスの一部を破壊する加工である。断面観察は、その断面加工によってできた断面の観察である。なお、断面加工は、FIB-SEMに限らずに、他の種類の装置によっても可能である。また、断面観察は、FIB-SEMに限らずに、他の種類の装置、例えば、断面SEMやSTEM(走査透過型電子顕微鏡)等によっても可能である。
【0024】
断面形状推定システム3は、後述するが、半導体デバイス(特にウェハ)の断面形状を推定する機能を有するシステムである。断面形状推定システム3は、例えば特許文献1に記載のシステムも適用できる。断面形状推定システム3は、例えば、学習に基づいて、データベース(DB)3aに、推定のためのデータ・情報、例えば画像特徴量と断面形状寸法との対応関係を表すデータ・情報を格納する。断面形状推定システム3は、DB3aのデータ・情報を用いて、画像特徴量から、半導体デバイスの断面形状寸法を推定する。
【0025】
製造パラメータ制御システム4は、後述するが、半導体デバイス製造装置5(一例としてはエッチング装置)による半導体デバイスの製造(一例としてはエッチングプロセス)に係わるパラメータ(一例としてはエッチングパラメータ)を調整するように制御するシステムである。なお、製造パラメータ制御システム4は、MES6の一部であってもよい。MES6は、半導体デバイス製造装置5を用いた半導体デバイスの製造実行を管理するシステムである。MES6等は、対象の半導体デバイスに係わる設計データや製造実行管理情報などを有している。
【0026】
クライアント端末7は、通信網9を介してSEM1等の各システム(特にそのうちのサーバ機能)にアクセスする機能を有する情報処理端末装置である。クライアント端末7は、一般的なPC等が適用でき、外部入力のための入力装置や表示等のための出力装置を内蔵しているか、それらが外部接続されている。オペレータ等のユーザは、クライアント端末7からSEM1等の各システムを利用してもよい。
【0027】
また、変形例としては、インターネット等の通信網を介して、例えば、プロセッサシステム100等とクライアント端末7が接続されてもよい。また、例えばプロセッサシステム100等の機能がクラウドコンピューティングシステム等で実現されてもよい。
【0028】
また、通信網9には、図示しないプログラム配信サーバが設けられてもよい。プログラム配信サーバは、実施の形態1のプログラム等のデータを、例えばSEM1のプロセッサシステム100に対し配信する。
【0029】
[プロセッサシステム]
図2は、プロセッサシステム100のハードウェアおよびソフトウェアの構成例を示す。プロセッサシステム100は、例えば制御PCなどによって実装される。プロセッサシステム100は、プロセッサ201、メモリ202、通信インタフェース装置203、入出力インタフェース装置204などを備える。それらの構成要素はバスに接続され、相互に通信可能である。
【0030】
プロセッサ201は、CPUあるいはMPUやGPUなどの半導体デバイスによって構成される。プロセッサ201は、ROMやRAM、各種周辺機能などを備える。プロセッサ201は、メモリ202の制御プログラム211に従った処理を実行する。これにより、SEM制御機能221や半導体検査機能222などが実現される。SEM制御機能221は、コントローラとしてSEM1を制御する機能であるが、省略可能である。半導体検査機能222は、実施の形態1の半導体検査システムでの主な機能であり、断面形状指標を計算する機能などを含む。
【0031】
メモリ202には、制御プログラム211、設定情報212、画像データ213、処理データ214、検査結果データ215などが記憶される。制御プログラム211は、半導体検査機能222等を実現する。設定情報212は、半導体検査機能222等のシステム設定情報やユーザ設定情報である。画像データ213は、SEM1から取得される撮像画像のデータである。処理データ214は、半導体検査機能222等での処理過程のデータである。検査結果データ215は、半導体検査機能222等での処理結果として得られた、特徴量や断面形状指標、あるいは評価結果などを含むデータである。
【0032】
通信インタフェース装置203は、SEM1や通信網9等に対する通信インタフェースが実装されている装置である。入出力インタフェース装置204は、入出力インタフェースが実装されている装置であり、入力装置205や出力装置206が外部接続されている。入力装置205は例えばキーボードやマウスが挙げられる。出力装置206は例えばディスプレイやプリンタが挙げられる。なお、プロセッサシステム100に入力装置205や出力装置206が内蔵されていてもよい。オペレータ等であるユーザは、入力装置205の操作や、出力装置206の画面表示を通じて、プロセッサシステム100を利用してもよい。ユーザは、
図1のクライアント端末7から通信網9を通じてプロセッサシステム100にアクセスすることでプロセッサシステム100を利用してもよい。
【0033】
また、プロセッサシステム100に外部記憶装置(例えばメモリカードやディスク)が接続されてもよく、プロセッサシステム100の入出力データを外部記憶装置に格納してもよい。
【0034】
図1のプロセッサシステム100等のシステムとユーザのクライアント端末7との間でのクライアント・サーバ通信で機能を利用する場合、例えば以下のように実現できる。ユーザは、クライアント端末7から例えばSEM1のプロセッサシステム100のサーバ機能にアクセスする。プロセッサシステム100のサーバ機能は、例えばGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)を含むWebページ等のデータをクライアント端末7に送信する。クライアント端末7は、受信したデータに基づいて、ディスプレイにWebページ等を表示する。ユーザは、そのWebページ等を見て、半導体検査に係わる情報を確認し、必要に応じて設定や指示を入力する。クライアント端末7は、ユーザが入力した情報をプロセッサシステム100に送信する。プロセッサシステム100は、ユーザが入力した情報に基づいて、半導体検査に係わる処理を実行し、結果を保存する。プロセッサシステム100は、処理結果等を含むWebページ等のデータをクライアント端末7に送信する。クライアント端末7は、処理結果等を含むWebページをディスプレイに表示する。ユーザは、その処理結果等を確認する。
【0035】
[SEM]
図3は、SEM1の構成例を示す。SEM1は、大別して、本体301と、本体301に対し接続される制御部302とを有する。本体301は、撮像部101や図示しない駆動機構などを有する。制御部302は、プロセッサシステム100等を含む部分である。制御部302は、全体制御部102、信号処理部103、外部入力部104、記憶部105、プロセッサシステム100、表示部107等を備える。プロセッサシステム100は、画像演算部106を含んでいる。なお、プロセッサシステム100に、全体制御部102、信号処理部103、記憶部105などの構成要素が一体で実装されてもよい。
【0036】
撮像部101は、鏡筒(言い換えると筐体)に実装される構成要素として、電子銃108、加速電極110、集束レンズ111、偏向レンズ112、対物レンズ113、ステージ115、検出器117等を備える。電子銃108は、電子ビーム109を出射する。加速電極110は、電子銃108から照射された電子ビーム109を加速する。集束レンズ111は、電子ビーム109を集束する。偏向レンズ112は、電子ビーム109の軌道を偏向させる。対物レンズ113は、電子ビーム109の集束する高さを制御する。
【0037】
ステージ115は、撮像対象の試料300(言い換えると半導体デバイス、ウェハ)を載置する試料台である。ステージ115は、例えば図示のX方向およびY方向に移動可能な機構であり、これにより、撮像の視野が設定できる。
【0038】
検出器117は、電子ビーム109が照射された試料300から発生した2次電子116等の粒子を検出する。
【0039】
全体制御部102は、SEM1のコントローラに相当し、撮像部101の全体および各部を制御する。全体制御部102は、各部に駆動制御などの指示を与える。全体制御部102は、コンピュータシステムまたは専用回路で実装できる。なお、
図2のSEM制御機能221と全体制御部102との少なくとも一方があればよい。SEM制御機能221から全体制御部102を制御してもよい。
【0040】
信号処理部103は、検出器117で検出された信号を、全体制御部102からの指示に従い、アナログ/デジタル変換等に基づいて、画像データに変換し、記憶部105に保存する。信号処理部103は、コンピュータシステムまたは専用回路で実装できる。記憶部105は、例えば不揮発性記憶装置などで実装できる。
【0041】
外部入力部104は、オペレータによる入力操作に基づいて、全体制御部102に対し指示などを入力する部分であり、コンピュータシステムまたは入力デバイスなどで実装できる。表示部107は、全体制御部102に接続され、全体制御部102からの情報をオペレータに対し表示する部分であり、コンピュータシステムまたは入力デバイスなどで実装できる。
【0042】
プロセッサシステム100は、記憶部105から、画像データを取得する。プロセッサシステム100の画像演算部106は、
図2の半導体検査機能222に相当する処理を行う部分である。画像演算部106は、プログラム処理などで実装できる。画像演算部106は、その画像データの画像(すなわちSEM1のTop-view画像)に対し、後述の画像特徴量の算出および変換処理を行うことで、変換後の特徴量として算出された断面形状指標を得る。画像演算部106は、その断面形状指標を、保存し、表示画面(例えば
図2の出力装置206)にGUIとともに表示する。
【0043】
なお、
図3の構成例に限定されない。
図2のSEM制御機能221と
図3の全体制御部102などの機能とが1つに併合されてもよい。
【0044】
[画像特徴量]
次に、
図4等を用いて、画像特徴量について説明する。画像特徴量は、SEM画像上の信号波形を汎用的に定量化する指標(なお後述の断面形状指標とは異なる)である。
図4には、半導体デバイス(特にウェハ)のラインパターンを対象としたSEM画像などの例を示す。
図4の(A)は、二次元のSEM画像401として、Top-view画像の例である。このSEM画像401では、ウェハ面に対応した図示のX-Y面内において、例えばY方向に延在する1つのラインパターン402が含まれている。SEM画像401である画像は、図示の2次元の(X,Y)の座標系において、各位置の画素に画素値(輝度や色)を有する。
【0045】
(B)は、(A)のa-b線の位置での半導体パターンの断面形状の例であり、X-Z断面に相当する。(B)に示す断面形状は、理想的な例を示しており、X-Y面404に対し、ラインパターン402の側壁部405が垂直に平らに形成されており、上面部406が平行に平らに形成されている場合を示す。実際には、断面形状は、特許文献1の
図1にも例示されているように、様々な形状が有り得る。例えば、側壁の傾斜、側壁の湾曲、側壁の上端側の角の丸まり、側壁の下端側の角の丸まり(裾引き)、側壁の上端側の角の突き出しなどがある。
【0046】
(C)は、(A)の画像および(B)の断面形状に対応した、信号波形407の例であり、いわゆるラインプロファイルに相当する。(A)のSEM画像401上で、ラインパターン402に対し垂直な方向(X方向)としてaからbへの方向に切り出した画像信号が、信号波形407である。
【0047】
一般的に、信号波形407のような信号波形の信号量は、計測対象の傾斜角に対して感度が高く変化し、パターンの側壁部(例えば側壁部405)での信号量は、パターンの平坦部(例えば上面部406)の信号量よりも大きくなる。そのため、パターンの側壁部で信号量が絶対的に大きくなり、信号波形407上に、ホワイドバンド(WBとも記載)403と呼ばれる領域が現れる。このように、信号波形407の信号量は、パターンの断面形状に応じて変化する。
【0048】
図5は、画像特徴量の一例を示す。
図5の(A)は、信号波形407の詳細を示し、(B)は、信号波形407の1次微分波形を示す。本例では、画像特徴量として、(A)の信号波形407において、左右のホワイトバンドピーク501,502や、左右のボトム信号量503,504や、トップ信号量505や、ラインプロファイルの幅506(言い換えると線幅)を有する。また、(B)の1次微分波形から算出される画像特徴量として、傾き507,508,509,510を有する。これらの画像特徴量は、信号波形の特徴を定量的に表現する種々の値である。
【0049】
一般的に、信号波形の信号量を示す特徴量(例えばWBピーク501等)は、パターンの高さ方向(それに対応する断面)についての変化を捉え、信号波形での幅を示す特徴量(例えば幅506)は、断面形状の線幅などの幅方向の変化を捉え、信号波形の傾きを示す特徴量(例えば傾き507等)は、パターンの角の丸まりや裾引き、側壁の傾斜角などの変化を捉える、と考えられる。
【0050】
実施の形態1の半導体検査システムは、このような特徴量を1つ以上用いて、特徴量ごとに断面形状指標を算出するものである。
【0051】
[処理フロー(1-1)]
次に、
図6を用いて、実施の形態1の半導体検査システムの主な処理フローを説明する。
図6は、プロセッサシステム100による処理フローである。この処理フローは、SEM1および
図5の画像特徴量(501~510)のうちの1つ以上を用いて、ウェハ面上のパターンの断面形状変化を定量化する処理ステップを含んでいる。本処理フローでは、半導体パターンの局所的な形状ばらつきによる画像特徴量の揺らぎを基準として画像特徴量を正規化することで、断面形状指標に変換する。
【0052】
ステップS101で、プロセッサシステム100は、SEM1の外部入力部104(または
図2の入力装置205や
図1のクライアント端末7。以下同様。)に基づいて、対象のウェハ面上での基準領域および評価領域を設定する。評価領域は、評価対象となる領域であり、基準領域は、評価領域の評価のために基準となる領域である。
【0053】
[基準領域と評価領域]
図7は、基準領域と評価領域の例を示す。
図7の(A)は、ある対象のウェハ701の表面(X-Y面)における、基準領域71と評価領域72の定義・設定の例を示す。(B)は、基準領域71と評価領域72の例を拡大した画像を示す。(C)は、基準領域71の特徴量の分布図の例、および評価領域72の特徴量の分布図の例を示す。
【0054】
図7の(A)に示すように、評価領域72は、ウェハ701面上で大域的な断面形状の変化を評価するための対象となる複数の領域として設定される。(A)では、各評価領域72を、斜線パターンの小さい四角形の領域として図示し、基準領域71をドットパターンの小さい四角形の領域として図示している。評価領域72は、例えばチップ毎に設定される。ウェハ701の表面には、図示しないが一般的にチップ領域が格子状に繰り返し形成されている。そのチップ領域ごとに、評価領域72や基準領域71を設定すればよい。評価領域72や基準領域71は、チップ領域と同じ大きさや形状でなくてもよい。本例では、ウェハ701面において、複数の評価領域72は、X方向およびY方向に一定の間隔の位置ごとに設定されているが、これに限定されない。
【0055】
評価領域72や基準領域71は、1つの領域内で複数の箇所をサンプルとしてとるために、設定されたサイズの2次元の領域として設定される。評価領域72や基準領域71は、その領域内において特徴量を算出可能なように、パターン形状(例えば少なくとも1つのラインパターン)が含まれているサイズの領域とすればよい。なお、変形例として、評価領域72は、2次元の領域に限らず、断面形状指標の計算式によっては、1つの点として設定されてもよい。
【0056】
基準領域71は、各評価領域72の画像特徴量の比較の基準(言い換えると正規化のための基準)として設定される。この観点から、基準領域71は、比較的理想形状に近いパターンが形成されていると想定される領域が選択される。本例では、基準領域71は、ウェハ701の中心に設定されている。これに限らず、基準領域71は、中心以外の任意の位置に設定されてもよい。
【0057】
(A)の例のように、対象の1以上の試料(本例では1つのウェハ701)において、基準領域71と複数の評価領域72とが対応させて定義される。なお、本例では、ウェハ701の中心の基準領域71に対し、ウェハ701の中心の評価領域72が重なっているが、重なっていても指標の計算上問題無い。本例に限らず、基準領域71および評価領域72はユーザが表示画面で任意に設定可能である。
【0058】
(B)の例では、1つの基準領域71として基準領域R1のSEM画像710と、2つの評価領域72として、第1評価領域E1のSEM画像721および第2評価領域E2のSEM画像722とを示している。いずれの画像も、Top-view画像の一部画像である。SEM画像710等のいずれの領域も、
図4と同様なラインパターンが含まれている。SEM画像710等の各領域内には、破線で示すように、ある特徴量(例えば
図5の線幅506)を計算するための複数の箇所をサンプルとしてとることができる。複数の箇所(サンプル)は、本例では、ラインパターンに対して垂直な方向(言い換えると断面観察が可能なX-Z面)に対応した複数の直線である。
【0059】
(B)のSEM画像710,721,722の例に示すように、半導体パターンは、局所的な形状ばらつきを有する。(B)の各領域内のラインパターンは、Y方向の各箇所において線幅がばらついており、一定ではない。このような局所的な形状ばらつきは、半導体の製造の詳細に応じて生じている。
【0060】
(C)では、(B)の各領域のSEM画像から得られる特徴量の例として線幅(
図5での線幅506)についての頻度分布を示している。頻度分布は、言い換えると局所的な領域内の複数のサンプルの統計である。(C)に示すように、例えば、ラインパターンの線幅について、正規分布に近いばらつきを有する。分布730は、基準領域R1のSEM画像710に基づいた線幅の頻度分布である。分布730は、局所的な形状ばらつきを表している。分布731は、第1評価領域E1のSEM画像721に基づいた線幅の頻度分布であり、分布732は、第2評価領域E2のSEM画像722に基づいた線幅の頻度分布である。図示のように、2つの分布731,732には、大域的変化(局所的変化よりも大きい変化)が生じており、これはウェハ701面内での断面形状変化に相当する。
【0061】
実施の形態1では、このようなウェハのパターン形状の局所的な形状ばらつきによる画像特徴量の揺らぎを基準に、ウェハ面内またはウェハ間での画像特徴量の変化を定量化する。そのため、基準領域71の範囲(言い換えると画像サイズ)は、局所的な形状ばらつきが統計的に十分な精度で評価できるように設定される。具体例では、(B)のように、基準領域71の範囲内に少なくとも1つのラインパターンが含まれるように設定される。それとともに、基準領域71の範囲と対応させて、複数の評価領域72の各評価領域72の範囲内にも少なくとも1つのラインパターンが含まれるように設定される。
【0062】
[処理フロー(1-2)]
図6に戻る。ステップS102で、プロセッサシステム100(または全体制御部102)は、SEM1を制御することで、対象のウェハについて、上記基準領域71および評価領域72に対し、Top-viewのSEM画像を撮像する。
【0063】
ステップS103は、2つのステップS103A,S103Bを含んでいる。まずステップS103Aで、プロセッサシステム100は、基準領域71のSEM画像から、特徴量(第1特徴量とも記載)を算出する。この特徴量は、実施の形態1では、予め規定された1つの種類の特徴量である。一例は上述の線幅(
図5の線幅506)である。なお、ここで使用する特徴量は、ユーザが表示画面で指定や設定を可能としてもよい。プロセッサシステム100は、基準領域71内の複数の箇所について、それぞれの箇所の特徴量を算出する。基準領域71の特徴量(第1特徴量)を、特徴量Fsとする。
【0064】
また、ステップS103Bで、プロセッサシステム100は、特徴量Fsから、所定の統計値(第1統計値とも記載)を算出する。基準領域71の統計値(第1統計値)を、統計値Ssとする。
【0065】
[特徴量などの算出]
図8は、特徴量などの算出についての説明図である。
図8の(A)は、領域(基準領域71または評価領域72、例えば基準領域71)のSEM画像の例を示す。本例のSEM画像800は、
図4のSEM画像401や
図7のSEM画像710と同じである。(B)は、その領域内の複数の箇所の信号波形の例を示す。(C)は、その複数の信号波形から算出された複数の特徴量の頻度分布を示す。
【0066】
図8に示すように、プロセッサシステム100は、例えば基準領域71の画像内のラインパターンに対し垂直な方向(断面形状が観察可能なX-Z面)の信号波形を、当該画像内の複数の位置の箇所(サンプル)で算出する。(A)では、基準領域71内の複数(nとする)のサンプルを1~nとして示している。例えば、サンプル1は、図示のc-d線のX-Z断面に相当し、サンプルnは、図示のe-f線のX-Z断面に相当する。複数(n)の箇所の信号波形を、第1信号波形から第n信号波形とする。
【0067】
(B)では、複数(n)の信号波形を信号波形801~80nとして示している。プロセッサシステム100は、各サンプルの信号波形毎に、画像特徴量を算出する(ステップS103A)。(B)では、複数の信号波形に対応した複数の画像特徴量を、特徴量Fs1~Fsnとして示している。
【0068】
プロセッサシステム100は、(C)のように、基準領域71内の複数の箇所で算出した複数の画像特徴量(Fs1~Fsn)についての頻度分布810を得る。プロセッサシステム100は、頻度分布810から、画像特徴量Fsの統計値Ssを算出する(ステップS103B)。統計値Ssとしては、例えば、平均値(μsとする)、標準偏差(σsとする)が挙げられる。このような処理により、基準領域71における局所的な形状ばらつきによる画像特徴量の揺らぎが算出される。標準偏差σsは、基準領域内のパターンの局所的な形状のばらつきに対する第1特徴量の変動量である。
【0069】
[処理フロー(1-3)]
図6に戻る。ステップS104で、プロセッサシステム100は、各評価領域72について、ステップS103の基準領域71の処理と類似の処理を行う。ステップS104は、2つのステップS104A,S104Bを含んでいる。まずステップS104Aで、プロセッサシステム100は、各評価領域72のSEM画像から、領域内のラインパターンに対し垂直な方向(X-Z面)の信号波形を、当該画像内の複数の位置の箇所(サンプル)で算出する。プロセッサシステム100は、各箇所の信号波形毎に、基準領域71で算出した画像特徴量Fsと同じ種類の画像特徴量(第2特徴量とも記載)を算出する。ここで、評価領域72で算出する画像特徴量(第2特徴量)を、特徴量Feとする。
【0070】
プロセッサシステム100は、評価領域72内の複数の画像特徴量Feから、統計値(第2統計値とも記載)を算出する。実施の形態1の一例では、プロセッサシステム100は、統計値(第2統計値)として、例えば平均値(μeとする)を算出する。
【0071】
ステップS105で、プロセッサシステム100は、評価領域72ごとに断面形状指標(Ieとする)を算出する。プロセッサシステム100は、基準領域71で算出した統計値Ssを基準として、評価領域72で算出した画像特徴量Feの平均値μeの変化量を正規化した断面形状指標Ieに変換する。言い換えると、プロセッサシステム100は、評価領域72の画像特徴量Feの統計値(例:μe)を、基準領域71の画像特徴量Fsの統計値Ss(例:μs,σs)によって変換することで、変換後の特徴量として断面形状指標Ieを算出する。
【0072】
この変換は、一例として、下記の式1で表される。式1では、Ieは、μeとμsとの差を、α×σsで除算することで算出される。式1中のαは、基準領域71の局所的な形状ばらつきの大きさを調整するパラメータである。
【0073】
[特徴量および指標の分布]
図9は、
図6の処理フローの結果得られた特徴量および断面形状指標の例を示す。
図9の(A)は、対象ウェハ面内での各評価領域72の特徴量Feの分布を示す。(A)では、あるウェハ面上の各評価領域72で算出された、ある1種類の画像特徴量(ここでは特徴量Aとする)のウェハ分布901と、同じウェハ面上の各評価領域72で算出された、他の1種類の画像特徴量(ここでは特徴量Bとする)のウェハ分布902との例を示す。これらのウェハ分布は、表示画面に表示する場合には、各評価領域72の特徴量Feを、多値の色で表現する。ウェハ分布の右側には、特徴量Feの色のスケールを図示している。なお、
図9では、特徴量Feを、多値の色ではなく、簡略化した模式図として、例えば4値の塗りつぶしパターン領域として図示している。例えば図示のスケールにおいて、ドットパターン領域に近いほど特徴量が負に大きい値であり、黒領域に近いほど特徴量が正に大きい値であることを表している。
【0074】
画像特徴量の変化は、半導体パターンの断面形状の変化を表しているが、その画像特徴量の単位が断面形状寸法と関連付けられていないため、画像特徴量の変化からは断面形状の変化の大きさを評価できない。言い換えると、ある特徴量の変化が具体的にどのような断面形状(例えば線幅、WB、側壁の傾斜、丸まり、裾引きなど)の変化を表しているかは特定できず、画像特徴量のみから断面形状変化に関する定量的な評価はできない。
【0075】
それに対し、実施の形態1の半導体検査システムは、画像特徴量(例えば2つの特徴量A,B)に対し、
図6のような処理に従って、局所的な形状ばらつきによる画像特徴量の揺らぎを基準として画像特徴量の変化量を正規化した指標である断面形状指標Ieを得る。例えば、
図9の(B)では、特徴量Aのウェハ分布901から得られる断面形状指標(指標Aとする)のウェハ分布903と、特徴量Bのウェハ分布902から得られる断面形状指標(指標Bとする)のウェハ分布904とを示している。なお、
図9では、断面形状指標Ieを、特徴量Feと同様に、多値の色ではなく、簡略化した模式図として、例えば4値の塗りつぶしパターン領域として図示している。例えば図示のスケールにおいて、ドットパターン領域に近いほど指標が-1に近い値であり、黒領域に近いほど指標が+2以上の値であることを表している。本例では、指標Ieの値の範囲は、正規化として、-1から+2以上の範囲としているが、これに限定されない。
【0076】
(B)で、断面形状指標Aのウェハ分布903は、言い換えると、局所的な形状ばらつきによる揺らぎに対する画像特徴量Aの変化量を表している。断面形状指標Bのウェハ分布904は、言い換えると、局所的な形状ばらつきによる揺らぎに対する画像特徴量Bの変化量を表している。
【0077】
(B)の2種類の断面形状指標A,Bの結果例を比べてみる。画像特徴量Aの断面形状指標Aのウェハ分布903では、局所的な形状ばらつき以上の変化がウェハ面内で生じていることを示している。本例では、ウェハ面の中心から径方向で外周に向かって、指標Aの変化が表れており、例えば外周付近には黒い領域(指標値が2以上)を有する。このウェハ分布903により、画像特徴量Aに相関のある断面形状寸法の変化が、ウェハ面内で局所的な形状ばらつき以上の変化として生じていることが、定量的に判断できる。
【0078】
一方、画像特徴量Bの断面形状指標Bのウェハ分布904では、局所的な形状ばらつき以下の変化しか生じていないことを示している。本例では、ウェハ面の全体で、指標Bが-1から+1まで程度の領域となっている。このウェハ分布904により、画像特徴量Bに相関のある断面形状寸法の変化が、ウェハ面内で局所的なばらつき以下の変化でしか生じていないことが、定量的に判断できる。
[効果等(1)]
実施の形態1によれば、Top-viewのSEM画像に基づいて取得した画像特徴量および断面形状指標を用いて、断面観察前に非破壊で半導体パターンの断面形状の変化を定量的に評価することが可能となる。例えば、その断面形状指標を表示画面に表示してユーザが見ることで、ウェハ面のうち断面観察用に断面加工するための好適な断面観察箇所を決定することができる。これにより、低コストで効率的な断面観察、検査などが可能となる。
【0079】
図9のように、実施の形態1によれば、画像特徴量から変換して得られた断面形状指標を用いることで、ウェハ面上で局所的な形状ばらつき以上の大域的な断面形状変化が生じているか否かなどを定量的に評価可能となる。実施の形態1によれば、例えばユーザに対し断面形状指標を表示することで、ウェハ面上で局所的な形状ばらつき以上の大域的な断面形状変化が生じているか否かなどを定量的に判断可能となる。実施の形態1によれば、断面形状指標から、断面形状変化が大きい領域を検知可能となる。
【0080】
実施の形態1の半導体検査システムは、こうして得た断面形状指標を含む情報を、例えばプロセッサシステム100(あるいはクライアント端末7など)の表示装置の表示画面にGUIとともに表示してもよい。表示画面の内容は、例えば
図4、
図5、
図7、
図8、
図9と同様でもよい。プロセッサシステム100は、表示画面に、例えば、SEM画像、信号波形、特徴量、統計値や頻度分布、断面形状指標、および
図9のようなウェハ分布を関連付けて表示してもよい。プロセッサシステム100は、表示画面に、ユーザが指定した情報のみを表示してもよい。例えば、ユーザが表示画面で特徴量Aを指定した場合に、プロセッサシステム100は、表示画面に、
図9のような特徴量Aのウェハ分布と指標Aのウェハ分布とを表示してもよい。また、表示画面で例えば指標Aのウェハ分布からユーザが1つの領域を指定した場合に、プロセッサシステム100は、その1つの領域のSEM画像や関連情報を拡大で表示画面内に表示してもよい。また、プロセッサシステム100は、ユーザが表示画面で指標の大きさ(例えば「2以上」等)を指定した場合に、ウェハ分布のうちで指定された指標の大きさに該当する領域のみを表示してもよい。
【0081】
プロセッサシステム100は、
図6のような処理の過程で使用した各種のデータ・情報を関連付けて記憶部(プロセッサシステム100内のメモリ、あるいは外部のDBなど)に記憶する。その各種のデータ・情報は、対象ウェハ、基準領域、評価領域、SEM画像、信号波形、特徴量、統計値や頻度分布、断面形状指標、および
図9のようなウェハ分布などである。
【0082】
図10は、プロセッサシステム100が記憶するデータのテーブル例を示す。このテーブルは、項目として、ウェハ、基準領域、評価領域、SEM画像、信号波形、特徴量、統計値、断面形状指標などを有している。プロセッサシステム100は、
図10のようなデータを表示画面に表示してもよい。
【0083】
実施の形態1での構成例に限定されず、各種の変形例が可能である。例えばSEM1の代わりに、画像が撮像できる他の種類の電子顕微鏡や荷電粒子ビーム装置などを適用してもよい。
【0084】
実施の形態1では、
図8のようにSEM画像から算出される信号波形から画像特徴量を算出する例を示したが、これに限定されない。画像特徴量は、信号波形を算出せずに二次元画像から算出する特徴量を用いてもよい。例えば、SEM画像をフーリエ変換して求められる特徴量などでもよい。
【0085】
実施の形態1では、基準領域71と評価領域72を同一のウェハに設定してウェハ面内での断面形状の均一性や変化を評価する例を説明したが、これに限定されない。異なるウェハ間において基準領域71と評価領域72を設定して、ウェハ間での断面形状の均一性や変化を評価することも同様に可能である。例えば第1ウェハ面内に基準領域71が設定され、第2ウェハ面内に評価領域72が設定される。また、複数のウェハから複数の評価領域が選択されてもよい。これらの場合でも、実施の形態1の処理は同様に適用できる。
【0086】
実施の形態1では、対象の半導体パターンをラインパターンとした例を説明したが、これに限定されない。例えば、ホールなどのパターンでも、実施の形態1の処理を同様に適用できる。例えば、SEM画像内にホールのような楕円形状を含んでいる場合に、そのホールに対し、断面観察可能な方向で複数の箇所(サンプル)をとって特徴量を算出すればよい。
【0087】
実施の形態1では、SEM画像内に1本のラインパターンが含まれる例を示したが、これに限定されない。例えば画像(言い換えると撮像の視野)内に周期パターンのように複数のラインパターン等が含まれている場合でも、実施の形態1の処理を同様に適用できる。例えば領域内の複数のラインパターンの複数の箇所(サンプル)から特徴量を算出すればよい。
【0088】
実施の形態1では、半導体パターンの断面形状変化(例えばZ方向の断面に関する変化)を評価する例を示したが、これに加えて、2次元で撮像されたSEM画像からウェハ面および半導体パターンに平行な方向(例えばX,Y方向)の形状変化も捉えるようにしてもよい。その平行な方向の形状変化については公知技術を適用してもよい。これにより、半導体パターンの3次元の立体形状変化が評価可能である。
【0089】
<実施の形態2>
図11以降を用いて、実施の形態2の半導体検査システムなどについて説明する。実施の形態2等の基本的な構成は、実施の形態1と共通・類似であり、以下では、実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について主に説明する。
【0090】
実施の形態2の半導体検査システムでは、実施の形態1のようにして得た断面形状指標に基づいて、試料における断面形状の観察位置(その観察位置に対応する断面観察領域)を選定する。そして、実施の形態2では、選定した観察位置を、
図1の断面観察装置2によって自動観察する。断面観察装置2は、ウェハの観察位置を断面加工することで断面観察可能な断面を形成し、その断面を撮像して観察する。ユーザは、断面観察装置2を操作して表示画面でその断面を観察する。
【0091】
実施の形態2では、断面形状指標に基づいて、断面形状変化が想定される好適な位置・領域を選択する。これにより、断面形状変化の見逃しや、類似の変化の重複観察を低減できる。従来技術として、ウェハ面の複数の位置・領域を網羅的に順に調べてゆく場合やランダムに調べる場合などに比べて、実施の形態2では、最初から、好適な観察位置から順に断面観察が可能となる。よって、実施の形態2によれば、断面加工する箇所や回数も少なくて済み、効率的な評価・検査が可能となる。
【0092】
[半導体検査システム]
実施の形態2の半導体検査システムの構成は、
図1と同様のシステムを適用できる。実施の形態2では、主に
図1のSEM1(プロセッサシステム100を含む)と断面観察装置2を用いる。実施の形態2での特徴的な処理(すなわち断面観察領域を選定する処理)は主にプロセッサシステム100が行う。また、実施の形態2の半導体検査システムは、ユーザの操作に基づいて断面観察条件を入力する外部入力部を有する。この外部入力部は、
図2の入力装置205や出力装置206、
図3の外部入力部104、あるいは
図1のクライアント端末7等を適用できる。また、実施の形態2の半導体検査システムは、ユーザに対し、選定された断面観察位置・領域を含む情報を出力する出力部を有する。この出力部は、
図2の出力装置207、
図3の表示部107、あるいは
図1のクライアント端末7等を適用できる。実施の形態2の例では、
図2の出力装置207の表示画面に、GUIとともに、選定された断面観察位置・領域を含む情報が表示される。
【0093】
断面観察装置2は、例えばFIB-SEMであり、断面加工と断面観察とが可能な装置である。断面観察装置2は、プロセッサシステム100により選定された断面観察領域を断面観察する。
【0094】
なお、変形例として、断面観察領域を選定する処理を行う機能部分は、
図1のSEM1のプロセッサシステム100以外の装置に実装されていてもよい。断面観察装置2にその機能部分が実装されていてもよい。通信網9上にその機能部分が実装された断面観察位置選定システムが独立で設けられてもよい。
【0095】
[処理フロー(2-1)]
図11は、実施の形態2の半導体検査システム(特にプロセッサシステム100)における、ウェハ面上の断面形状寸法を定量的に評価するための処理フローを示す。この処理フローは、断面形状指標に基づいて断面観察位置・領域を選定するステップや、選定された断面観察領域を断面観察して断面形状寸法を計測するステップ等を含んでいる。
【0096】
ステップS201で、プロセッサシステム100は、外部入力部およびユーザの操作に基づいて、断面観察条件を入力する。断面観察条件は、予め設定されていてもよい。本例では、断面観察条件として、対象ウェハ面上での断面観察候補領域と、領域内での断面観察するパターン数(mとする)と、基準観察領域とが入力される。
【0097】
[断面観察候補領域と基準観察領域]
図12は、断面観察候補領域と基準観察領域の例を示す。
図12の例では、対象ウェハ1200において中心に基準観察領域1201が設定されている。また、対象ウェハ1200面内において、複数の断面観察候補領域1202が設定されている。ユーザは、これらの領域を任意に設定できる。なお、実施の形態2での基準観察領域1201および断面観察候補領域1202は、実施の形態1での基準領域71および評価領域72と対応した類似の概念である。対象ウェハは実施の形態1と同様に1以上の試料である。
【0098】
断面観察候補領域1202は、対象ウェハ1200面上で大域的な断面形状変化を評価するための候補となる領域である。断面観察候補領域1202は、例えばチップ毎に設定される。また、基準観察領域1201は、断面形状指標の分布によらずに、ユーザが必ず取得したい観察箇所として選択される。基準観察領域1201に対し、断面観察候補領域1202が比較される。基準観察領域1201の範囲(言い換えると画像サイズ)は、半導体パターンの局所的な形状ばらつきが網羅されるように設定される。この範囲は具体例では前述と同様に例えば少なくとも1つのラインパターンが含まれる領域として設定される。一般的に、半導体ウェハにおいては、ウェハ中心を基準としてプロセス条件が決められるため、ウェハ中心の箇所は断面観察が行われる。そのため、本例では、ウェハ中心を基準観察領域1201として設定している。
【0099】
[処理フロー(2-2)]
図11に戻る。ステップS202で、プロセッサシステム100は、SEM1を制御することで、対象ウェハの基準観察領域1201および断面観察候補領域1202に対し、Top-viewのSEM画像を撮像する。
【0100】
ステップS203で、プロセッサシステム100は、基準観察領域1201で撮像されたSEM画像から、当該画像内の複数の箇所(サンプル)の信号波形に対応する画像特徴量Fsを算出する(ステップS203A)。プロセッサシステム100は、その画像特徴量Fsに基づいて、統計値Ssとして、例えば平均値μsと標準偏差σsを算出する(ステップS203B)。
【0101】
ステップS204で、プロセッサシステム100は、同様に、観察候補領域1202に対して撮像されたTop-viewのSEM画像から、当該画像内の複数の箇所(サンプル)の信号波形に対応する画像特徴量Feを、基準観察領域1201から算出した画像特徴量Fsと同じ種類の特徴量として算出する(ステップS204A)。プロセッサシステム100は、その画像特徴量Feに基づいて、統計値として、例えば平均値μeを算出する(ステップS204B)。
【0102】
ステップS205で、プロセッサシステム100は、基準観察領域1201で算出した標準偏差σsに対し、ステップS201で入力した条件におけるパターン数mで断面観察することを想定し、パターン数mに応じた標本平均分布の標準偏差σ´sを算出する。
【0103】
このパターン数mに応じた標本平均分布の標準偏差σ´sは、
図13に示すような中心極限定理に従って、下記の式2で算出される。
【0104】
図13で、(A)は、ある断面観察候補領域において発生している局所的な断面形状ばらつきによる断面形状寸法分布1301を示す。横軸は断面形状寸法、縦軸は頻度である。標準偏差σsはその局所的な断面形状ばらつきを表している。(B)は、同じある断面観察候補領域において断面計測のパターン数mの場合の標本平均分布1302を示す。横軸は断面計測結果の標本平均、縦軸は頻度である。
【0105】
図11に戻る。ステップS206で、プロセッサシステム100は、断面観察候補領域1202で算出した特徴量Feを、基準観察領域1201で算出した特徴量Fsから算出した統計値(μs,σ´s)を用いて、断面形状指標Ieに変換する。実施の形態2での一例では、断面形状指標Ieは、下記の式3に従って、変換によって算出される。
【0106】
[パターン数]
図14は、領域内のパターン数mについての補足説明図を示す。
図14の(A)は、
図12の断面観察候補領域1202のSEM画像1400の例である。このSEM画像1400内には、複数(図示の例では4本)のラインパターン1401が含まれている。(B)は、(A)のA-A線に対応した半導体パターンの断面形状のX-Z断面図を示す。(C)は、(A),(B)に対応した信号波形の例を示す。(C)では、信号波形に対し、断面観察候補領域1202内でのパターン数mを例示(本例ではm=4)している。断面観察候補領域1202内でのパターン数mは、実際の断面観察時に考慮するパターンの数を設定するものであり、断面形状指標Ieの計算に反映される。
【0107】
[断面形状指標]
図15は、上記
図11のステップS206までの処理で算出された断面形状指標Ieの例を示す。左側の(A)には、対象ウェハについてある画像特徴量(特徴量Aとする)に基づいた断面形状指標Ie(指標Aとする)のウェハ分布1501を示す。このウェハ分布1501は、局所的な形状ばらつきによる揺らぎに対する特徴量Aの変化量を表している。ウェハ分布1501において、断面観察候補領域1202ごとに指標Aを多値で有する。
図15でもこの指標Aの値を簡略化した模式図として4値で図示している。指標Aの範囲は例えば-1から2以上の範囲である。
【0108】
右側の(B)には、断面形状指標Ie(指標A)の詳細を示す。指標Aの値は、本例では、約-2から約+3までのレンジ内に分布している。この指標Aは、前述の正規化によって、定量的な評価が可能な目盛りとして機能する。
【0109】
図11に戻る。ステップS207で、プロセッサシステム100は、上記算出された断面形状指標Ieに基づいて、断面観察候補領域1202から断面観察領域を選択・決定する。断面観察領域は、実際に断面観察装置2で断面観察する領域である。本ステップS207では、対象ウェハ面上の断面形状変化を見逃し無く、かつ無駄無く、効率的に断面観察装置2で断面観察して評価するための断面観察位置を算出・選定することを目的とする。そのために、実施の形態2では、以下の2つの観点に基づいて、断面形状指標Ieから断面観察領域を算出する。
【0110】
1つ目の観点は以下である。断面形状指標Ieは、断面形状変化を表している。そのため、この変化のレンジをカバーするように、複数の断面観察候補領域1202から断面観察領域を選択することが、第1の条件である。これにより、ウェハ面上で発生している断面形状変化の見逃しを避けることができる。
【0111】
2つ目の観点は以下である。局所的な形状ばらつき以下の断面形状変化(例えば前述の
図9の指標Bのウェハ分布904の例)は、断面観察では違いを評価できない。そのため、断面形状指標Ieに基づいて選択された断面観察領域間で局所的な形状ばらつき以上の変化を持つようにその断面観察領域を選択することが、第2の条件である。これにより、同じような断面形状となっている領域を重複して観察してしまうことを避けることができる。
【0112】
[断面観察領域の選定]
図16は、
図15の断面形状指標Ieに基づいて選択された断面観察領域の例を示す。左側の(A)には、プロセッサシステム100によって選択された断面観察領域を表すマップ1600を示す。断面形状指標Ieから、上記条件を満たすように、マップ1600の面内における本例では4つの断面観察領域(領域C1,C2,C3,C4)が選択されている。マップ1600上の4つの領域C1~C4は、下側に示すウェハ分布での4つの断面観察候補領域(
図15と同じ)と対応している。これらの断面観察領域(領域C1~C4)は、図示のように、断面形状指標Ieのレンジ(例えば約-2から約+3まで)をカバーするように選択されている。
【0113】
右側の(B)には、
図15の右側と同様の断面形状指標Ie(指標A)の目盛りにおいて、選択された断面観察領域に対応する指標値を示している。選択された指標値は、4個の指標値v1,v2,v3,v4である。指標値v1は0、指標値v2は約-1.8、指標値v3は約+1.3、指標値v4は約+2.8である。
【0114】
上記4個の断面観察領域をプロセッサシステム100が自動的に選択する際の詳細な処理例を説明すると以下のようになる。プロセッサは、まず、指標値v1が0である領域C1を選択する。この領域C1は、基準観察領域と同じである。次に、プロセッサは、指標Aのレンジの最小値である指標値v2に対応する領域C2と、最大値である指標値v4に対応する領域C4とを選択する。次に、プロセッサは、領域C1に対し、指標値の差が+1以上となる領域として、指標値v3に対応する領域C3を選択する。なお、指標値の差が1以下であることは、局所的な形状ばらつき以下の変化しかないことを表しており、指標値の差が1以上であることは、局所的な形状ばらつき以上の変化があることを表している。
【0115】
[処理フロー(2-3)]
図11に戻る。ステップS207で、プロセッサシステム100は、
図16の例のように、断面形状指標Ieに基づいて、断面観察候補領域から、条件を満たすような好適な断面観察領域を選択する。プロセッサシステム100は、
図16の左側に示されるような、選択された断面観察領域(例えば領域C1~C4)を表す情報、例えばウェハ面内の位置座標を取得する。プロセッサシステム100は、選択された断面観察領域(例えば領域C1~C4)を表す情報を、
図1の断面観察装置2(FIB-SEM)に入力する。言い換えると、断面観察装置2は、SEM1のプロセッサシステム100から、そのような情報を取得する。
【0116】
ステップS208で、断面観察装置2は、入力された断面観察領域の位置座標において、断面が現われるように断面加工し、加工後の断面観察領域の断面の断面SEM像を取得する。また、この際に、断面観察装置2は、ステップS201で入力されたパターン数mに従って、複数(m)のパターンを含んだ断面SEM像、もしくはパターンごとに分かれた複数(m)の断面SEM像、を取得する。なお、断面SEM像は、
図14の(C)の信号波形と類似の画像となる。
【0117】
ステップS209で、断面観察装置2は、断面SEM像を用いて、断面形状寸法を計測する。
【0118】
断面観察装置2またはプロセッサシステム100は、上記
図11のような処理の過程で得た各種のデータ・情報を関連付けてメモリまたはデータベースなどに保存するとともに、ユーザに対し表示画面(実施の形態1と同様)でGUIとともに表示する。例えば、ユーザは、表示画面で、観察候補領域、基準観察領域、領域内のパターン数m、SEM画像、特徴量、統計値、断面形状指標、選定された断面観察領域、断面SEM像、断面形状寸法などを見て確認できる。表示画面は、
図15や
図16と同様としてもよい。
【0119】
[効果等(2)]
上記のように、実施の形態2によれば、断面形状指標に基づいて好適な断面観察領域を選定するので、断面観察装置2を用いてウェハ面上の断面形状変化を見逃し無く、かつ無駄無く、効率的に断面観察することが可能である。
【0120】
実施の形態2の
図11の処理の変形例として以下としてもよい。プロセッサは、断面観察候補領域において実施の形態1(
図8)と同様に領域内の複数の箇所(サンプル)で算出した信号波形から特徴量Feを算出する。プロセッサは、その特徴量Feの分布から、断面観察候補領域側でも統計値Ssとして平均値μeおよび標準偏差σeを算出し、この統計値Ssを断面形状指標Ieへの変換に用いてもよい。この変形例の場合、プロセッサは、例えば下記の式4のように、基準観察領域と断面観察候補領域との両方の統計値を用いて、断面形状指標Ieを算出する。式4では、Ieは、μeとμsとの差を、σeとσsとの和によって除算することで算出される。
【0121】
式4の断面形状指標Ieは、断面観察候補領域での画像特徴量の頻度分布と、基準観察領域での画像特徴量の頻度分布との統計的な分離度を表している。この指標の場合、断面観察候補領域の局所的な形状ばらつきも考慮されるため、基準観察領域と断面観察候補領域とで大きく形状ばらつきが異なる場合でも当該指標が適用可能である。また、この変形例の式4は、実施の形態1(ステップS104)にも同様に適用可能である。
【0122】
実施の形態2では、
図11の断面観察領域を算出・選択するステップS207において、プロセッサが断面形状指標を用いて自動で断面観察領域を算出・選択する例を説明した。これに限定されず、ユーザに対する入出力を用いて、インタラクティブに、逐次的に、断面観察領域を算出・選択することも可能である。そのような例を以下に示す。
【0123】
[インタラクティブな断面観察]
例えば、プロセッサシステム100は、
図15に示す断面形状指標Ieを用いて、基準観察領域1201に対して局所的な形状ばらつき以上の変化がある断面観察候補領域と、基準観察領域1201に対して局所的な形状ばらつき以下の変化しかない断面観察候補領域とを算出する。すると、例えば
図17のような、断面観察領域を選定するための補助マップ1700が得られる。
【0124】
図17の補助マップ1700では、ウェハに対応した面上に、黒の四角で示す第1種候補領域と、白の四角で示す第2種候補領域と、基準観察領域との例を示している。第1種候補領域は、基準観察領域に対して局所的な形状ばらつき以上の変化がみられる断面観察候補領域である。第2種候補領域は、基準観察領域に対して局所的な形状ばらつき以下の変化しかみられない断面観察候補領域である。すなわち、本例では、複数の断面観察候補領域が、指標の大きさに応じて大まかに2種類の候補領域に分けられている。
【0125】
局所的な形状ばらつき以上の変化がある断面観察候補領域(第1種候補領域)を断面観察領域として断面観察した場合、基準観察領域との違いが評価できる。よって、変形例では、プロセッサシステム100は、このような補助マップ1700を、表示画面にGUIとともに表示する。ユーザは、補助マップ1700を見て、局所的な形状ばらつき以上の変化がある断面観察候補領域領域(第1種候補領域)から、例えば1つの断面観察領域を選択する。
【0126】
次に、プロセッサシステム100は、断面形状指標Ieを用いて、ユーザが選択した断面観察領域と基準観察領域との2つの領域に対して、局所的な形状ばらつき以上の変化がある断面観察候補領域(第1種候補領域)と、局所的な形状ばらつき以下の変化しかない断面観察候補領域(第2種候補領域)とを同様に算出する。そして、プロセッサシステム100は、同様に、それらの領域を含んだ補助マップを表示する。ユーザは、この更新された補助マップを見て、次の断面観察領域を選択することができる。このような処理と作業を順次に繰り返す構成によって、前述の2つの観点を満たすように好適な断面観察領域の選定が可能である。
【0127】
上記変形例は、以下のようにしてもよい。プロセッサシステム10は、順次に1つずつ断面観察領域を選定する。プロセッサシステム100またはユーザは、断面形状指標に基づいて、例えばまず1つの断面観察領域(第1領域とする)を選定する。プロセッサシステム100は、断面観察装置2でその第1領域を断面加工して断面観察させる。ユーザは、その第1領域の断面を観察する。次に、ユーザは、別の領域を断面観察したい場合には、プロセッサシステム100に次の1つの断面観察領域(第2領域とする)を選定させる。なお、その際には、最初の第1領域を基準観察領域として設定することもできる。プロセッサシステム100またはユーザは、その第2領域を選定し、断面観察装置2にその第2領域を断面加工して断面観察させる。ユーザは、第2領域の断面を観察する。同様に、次の断面観察の必要に応じて、順次に断面観察領域が選定される。これにより、試料の一部を破壊する必要がある断面加工を最低限として、断面観察の作業が可能である。
【0128】
実施の形態2では、1つの断面形状指標(例えば指標A)を用いる場合を例に説明した。これに限定されず、複数の特徴量に対応した複数の断面形状指標を用いることも同様に可能である。ウェハ面上で複数の独立な断面形状指標の変化が生じている場合には、各断面形状指標の変化のレンジをカバーするように、断面観察領域を選定すればよい。処理例としては、
図11のフローで、特徴量および指標の種類ごとにステップS203~S206を繰り返して各指標を算出し、ステップS207で、指標毎に断面観察領域を選択すればよい。もしくは、ステップS207で、複数の指標を総合的に考慮して断面観察領域を選択するようにしてもよい。
【0129】
また、他の変形例では、ウェハ面上で独立に変化する複数の断面形状指標が存在する場合に、プロセッサは、それらの指標を比較し、局所的な形状ばらつきに対してウェハ面内の変化がより大きい指標を自動で選択し、その選択した指標に対し断面観察領域を選択するようにしてもよい。複数の指標は、それぞれ正規化されているので、このような比較も可能である。
【0130】
実施の形態2では、
図1のようにSEM1と断面観察装置2であるFIB-SEMとを接続して自動的な断面観察、断面形状寸法計測を行うことができるシステムの例を示した。これに限定されず、FIB-SEMを用いずに、以下のような変形例も可能である。SEM1のプロセッサシステム100が断面観察領域を算出・選定する。その断面観察領域に対し、ユーザが手動で任意の断面加工装置(例えば研磨装置)を用いて断面加工を行う。加工後の断面を対象として、断面SEMやSTEMなどの断面観察装置(断面加工機能を有さないが断面観察機能を有する装置)によって断面観察を行う。これにより、実施の形態2と同様に、半導体パターンの断面形状変化を捉えることが可能である。
【0131】
実施の形態2では、
図11のステップS209で断面観察装置2が断面SEM像に対して断面形状寸法を計測した結果と、断面観察領域を選択するためにSEM1が算出した断面形状指標などとを関連付けることが可能である。SEM1または断面観察装置2などの装置は、それらのデータ・情報を関連付けてデータベースなどに保存し、保存したデータ・情報を任意に利用できる。
【0132】
また、実施の形態2による結果として得られたデータ・情報は、
図1の断面形状推定システム3にも利用可能である。断面形状推定システム3は、SEM1で取得するTop-view画像から算出した画像特徴量を用いて、断面形状寸法を推定する機能を有する。断面形状推定システム3は、断面形状寸法を推定する断面形状推定部を含んでいる。断面形状推定部は、コンピュータシステムで実装できる。断面形状推定システム3は、予めデータベース3aに保存しておいた半導体パターンの断面形状と、Top-viewのSEM画像から算出した画像特徴量とを関連付ける。断面形状推定システム3は、その断面形状と画像特徴量との関係に従い、画像特徴量から断面形状寸法を推定するシステムである。
【0133】
このため、変形例では、実施の形態2による結果としての断面形状寸法と断面形状指標との関連付けのデータ・情報を、断面形状推定システム3のデータベース3a(断面形状と画像特徴量との関連付けのデータ・情報)に追加して登録する。言い換えると、データベース3aには、画像特徴量と断面形状指標と断面形状寸法とが関連付けられたデータ・情報が記憶される。これにより、断面形状推定システム3において、効率的に、半導体パターンの断面形状変化を網羅したデータベース3aを作成することができる。言い換えると、実施の形態2での機能に基づいて、断面形状推定システム3での推定のための学習に用いるデータベース3aの情報を効率的に作成できる。これにより、そのデータベース3aに基づいた断面形状推定の精度を高めることができる。
【0134】
また、その際、
図11のステップS207では、複数の指標を用いる場合に、前述の2つの観点に加え、以下の観点も加えて考慮して、断面観察領域を選定するとよい。すなわち、その観点は、データベース3aの構築に関して、複数の断面形状指標間で相関を持たないように、言い換えると相関がなるべく小さいように、独立に変化するような領域を取得するという観点である。上記独立した複数の指標に対応して選定された複数の断面観察領域などの情報がデータベース3aに登録される。これにより、断面形状推定システム3では、そのような相関を持たない情報を用いて、効率的な学習が可能である。
【0135】
<実施の形態3>
図18を用いて、実施の形態3の半導体検査システムについて説明する。実施の形態3の半導体検査システムは、SEM画像の画像特徴量に基づいて半導体デバイスの製造パラメータを制御(言い換えると調整など)する機能を有するシステムである。
【0136】
実施の形態1で説明した、画像特徴量を変換して得た断面形状指標Ieは、局所的な形状ばらつきに対する、ウェハ面上での大域的な変化を示す指標であり、ウェハ面上の断面形状の均一性を定量的に示す指標である。実施の形態3は、この断面形状指標Ieを利用して、製造パラメータの制御を行う。
【0137】
[製造パラメータ制御システム]
実施の形態3の半導体検査システムは、
図1のシステムを同様に適用できる。実施の形態3では、特に、SEM1と、製造パラメータ制御システム4と、半導体デバイス製造装置5とを用いる。製造パラメータ制御システム4は、製造プロセスパラメータ調整部を含んでいる。製造プロセスパラメータ調整部は、プロセッサの処理などによって実現される。製造プロセスパラメータ調整部は、製造プロセスの製造パラメータを調整する処理を行う部分である。また、実施の形態3は、断面形状指標を製造パラメータ制御システム4の製造プロセスパラメータ調整部に入力するための入出力部を有する。この入出力部は、プロセッサシステム100、入力装置205や出力装置206、あるいはクライアント端末7等を同様に適用できる。
【0138】
なお、実施の形態3は、
図1の製造パラメータ制御システム4内にプロセッサシステムを有する構成と捉えてもよい。この製造パラメータ制御システム4内のプロセッサシステムが製造プロセスパラメータ調整部として実施の形態3での特徴的な処理(すなわち指標に基づいた制御パラメータの調整)を実行すると捉えてもよい。また、実施の形態3での必要な処理は、SEM1や製造パラメータ制御システム4等の複数の構成要素に分かれて実装された複数のプロセッサシステムが実行するものと捉えてもよい。
【0139】
[処理フロー]
図18は、実施の形態3の半導体検査システム(特に製造パラメータ制御システム4内のプロセッサ)の処理フローを示す。ステップS301は、実施の形態1の
図6の処理フローと同様の処理であり、対象ウェハについて、SEM画像の画像特徴量から変換によって断面形状指標Ieを取得する処理である。例えば、SEM1内のプロセッサは、この断面形状指標Ieを取得する。あるいは、製造パラメータ制御システム4内のプロセッサが、SEM1から取得した画像に基づいて、同様に断面形状指標Ieを計算してもよい。
【0140】
ステップS302は、入出力部を通じて製造パラメータ制御システム4に上記断面形状指標Ieを入力する処理である。言い換えると、製造パラメータ制御システム4が上記断面形状指標Ieを取得しメモリに記憶する。
【0141】
また、ステップS303で、ユーザは、入出力部を通じて、システム(例えば製造パラメータ制御システム4)が提供する表示画面に対し、断面形状指標の均一性を制御するための目標値を入力する。製造パラメータ制御システム4は、入力された目標値の情報を取得しメモリに記憶する。
【0142】
また、ステップS302の際には、製造パラメータ制御システム4は、入力された断面形状指標に対し、変換前の画像特徴量を参照する。実施の形態1で画像特徴量と断面形状指標とを含む各種のデータ・情報が関連付けられて記憶されているので(例えば
図10)、そのデータ・情報を参照すれば画像特徴量なども得られる。
【0143】
製造パラメータ制御システム4のデータベース4aには、予め、半導体デバイス製造装置5での半導体デバイスの製造に係わる製造パラメータ等の情報が保存されている。この製造パラメータ等の情報は、MES6が管理している情報を利用してもよい。製造パラメータの一例は、半導体デバイス製造装置5がエッチング装置である場合のエッチングパラメータである。エッチングパラメータの一例は、ドライエッチングの場合であればガス圧やバイアス電力などが挙げられる。
【0144】
ステップS304で、製造パラメータ制御システム4は、予めデータベース4aに保存されている製造パラメータ(例えばエッチングパラメータ)と、画像特徴量とを関連付ける。
【0145】
ステップS305で、製造パラメータ制御システム4は、製造パラメータと画像特徴量との関係性に従い、選択された画像特徴量の均一性(例えばウェハ面内での均一性)が、入力された目標値よりも良くなるという条件を満たすように、製造パラメータ、すなわち調整後の製造パラメータを算出する。この際、製造パラメータ制御システム4は、断面形状指標に基づいて、均一性を定量的に評価する。製造パラメータ制御システム4は、算出した調整後の製造パラメータを、メモリに記憶し、またはデータベース4aに保存する。なお、製造パラメータの調整は、元のパラメータ値に対し調整用の係数を乗算するといったものが挙げられるが、これに限定されない。
【0146】
ステップS306で、製造パラメータ制御システム4は、算出した調整後の製造パラメータを、入出力部を通じて、半導体デバイス製造装置5に入力する。言い換えると、半導体デバイス製造装置5は、調整後の製造パラメータを入力し、調整後の製造パラメータが半導体デバイス製造装置5に設定される。その後、半導体デバイス製造装置5は、その調整後の製造パラメータに従って製造プロセス(例えばエッチングプロセス)を実行する。なお、調整後の製造パラメータがMES6に入力されて設定されてもよい。上記のような製造パラメータの調整は、適宜に繰り返して実行できる。
【0147】
[効果等(3)]
実施の形態3によれば、画像特徴量および断面形状指標に基づいて、製造パラメータを好適に調整することができ、ウェハ面上の断面形状の均一性を向上させることができる。
【0148】
実施の形態3では、画像特徴量の変化量を局所的な形状ばらつきによる画像特徴量の揺らぎで正規化した断面形状指標に基づいて、製造パラメータを調整している。これに限定されず、実施の形態2の
図1の断面形状推定システム3にも、これと同様のことを適用できる。
【0149】
図19は、実施の形態3の製造パラメータ調整を実施の形態2の断面形状推定システム3に組み合わせた変形例の構成を示す。この変形例のシステムは、画像特徴量および断面形状指標と、断面形状(例えば断面形状寸法)と、製造パラメータとを関連付ける。この変形例では、プロセッサは、断面形状推定システム3において画像特徴量から推定によって出力する断面形状寸法に対し、断面形状寸法の変化量を局所的な形状ばらつきで正規化した断面形状指標(言い換えると断面形状寸法指標)に基づいて、特定の断面形状寸法(例えば線幅)の均一性が高まるように、製造パラメータを調整する。
【0150】
図19のシステムの構成例は、実施の形態1~3を併合したような構成となっている。まず、SEM1のプロセッサシステム100は、少なくとも特徴量と断面形状指標とを関連付けてデータ・情報を保持している。断面形状推定システム3は、少なくとも特徴量と断面形状寸法とを関連付けてデータ・情報を保持している。製造パラメータ制御システム4は、画像特徴量および断面形状指標と製造パラメータとを関連付けてデータ・情報を保持している。
【0151】
そして、
図19の例で、システム内のいずれかに設けられたプロセッサシステム1900は、画像特徴量および断面形状指標と、断面形状寸法と、製造パラメータとを関連付ける。プロセッサシステム1900は、推定された断面形状寸法のウェハ面内などでの均一性が高くなるように、断面形状指標に基づいて、製造パラメータを調整する。調整後の製造パラメータが、半導体デバイス製造装置5に設定される。
図19のプロセッサシステム1900は、独立したシステムの例を図示しているが、SEM1、断面形状推定システム2、または製造パラメータ制御システム4等に実装されていてもよい。
【0152】
以上、本開示の実施の形態を具体的に説明したが、前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施の形態は、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換などが可能である。特に限定しない場合、各構成要素は、単数でも複数でもよい。各実施の形態を組み合わせた形態も可能である。
【符号の説明】
【0153】
1…走査電子顕微鏡(SEM)、2…断面観察装置、3…断面形状推定システム、4…製造パラメータ制御システム、5…半導体デバイス製造装置、6…製造実行システム、7…クライアント端末、100…プロセッサシステム。