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特開2023-103645微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103645
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20230720BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230720BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C12N1/12 A
C12N1/00 C
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004281
(22)【出願日】2022-01-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム「低CO2と低環境負荷を実現する微細藻バイオリファイナリーの創出」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】安保 貴永
(72)【発明者】
【氏名】中原 禎仁
(72)【発明者】
【氏名】山村 寛
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB16
4B065AA83X
4B065BC07
4B065BC12
4B065CA03
4B065CA41
4B065CA50
(57)【要約】
【課題】大気への二酸化炭素の拡散を抑制しつつ、効率よく微細藻類を培養できる微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置の提供。
【解決手段】微細藻類の培養方法及び培養装置1であって、微細藻類の培養方法では、培養液Sから微細藻類を除去して分離液を得る分離工程と、分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液Wを得る溶解工程と、溶解液Wと前記培養液Sを接触させ、前記培養液Sに炭素源を供給する供給工程とを有する。微細藻類の培養装置1は、培養液Sを収容する培養槽10と、培養液Sから微細藻類を除去して分離液を得る分離手段20と、分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液Wを得る溶解手段30と、溶解液Wと前記培養液Sを接触させ、前記培養液Sに炭素源を供給する供給手段40とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養槽に培養液を収容し、微細藻類を培養する方法であって、
前記培養液から前記微細藻類を除去して分離液を得る分離工程と、
前記分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液を得る溶解工程と、
前記溶解液と前記培養液を接触させ、前記培養液に炭素源を供給する供給工程と、を有する、微細藻類の培養方法。
【請求項2】
前記分離工程が、前記培養槽中で行われる、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項3】
前記分離工程が、前記培養槽から培養液の一部を抜き出し、前記培養槽の外側で行われる、請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項4】
前記溶解工程が、気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させて前記溶解液を得る工程である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項5】
非多孔質膜を用いる方法又は加圧溶解による方法により、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、請求項4に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項6】
前記非多孔質膜が、高分子膜である、請求項5に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項7】
二酸化炭素を含む排ガスを利用して、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、請求項4~6のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項8】
前記排ガスが、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場及び製鉄所から選択される1つ以上より排出される排ガスである、請求項7に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項9】
前記微細藻類が、ユーグレナ、シュードコリシスチス及びスピルリナから選択される1種以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項10】
前記培養槽が、フォトバイオリアクター型水槽である、請求項1~9のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項11】
前記培養液又は前記分離液に、水、又は炭酸物質以外の有用成分を含む水溶液を混合する混合工程をさらに有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項12】
微細藻類の培養装置であって、
培養液を収容する培養槽と、
前記培養液から前記微細藻類を除去して分離液を得る分離手段と、
前記分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液を得る溶解手段と、
前記溶解液と前記培養液を接触させ、前記培養液に炭素源を供給する供給手段と、を備える、微細藻類の培養装置。
【請求項13】
前記分離手段が、前記培養槽中に存在する、請求項12に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項14】
前記分離手段が、前記培養槽から培養液の一部を抜き出し、前記微細藻類を除去して前記分離液を得る手段であり、前記培養槽の外側に存在する、請求項12に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項15】
前記溶解手段が、気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させて前記溶解液を得る手段である、請求項12~14のいずれか一項に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項16】
非多孔質膜を用いる方法又は加圧溶解による方法により、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、請求項15に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項17】
前記非多孔質膜が、高分子膜である、請求項16に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項18】
二酸化炭素を含む排ガスを利用して、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、請求項15~17のいずれか一項に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項19】
前記排ガスが、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場及び製鉄所から選択される1つ以上より排出される排ガスである、請求項18に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項20】
前記微細藻類が、ユーグレナ、シュードコリシスチス及びスピルリナから選択される1種以上である、請求項12~19のいずれか一項に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項21】
前記培養槽が、フォトバイオリアクター型水槽である、請求項12~20のいずれか一項に記載の微細藻類の培養装置。
【請求項22】
前記培養液又は前記分離液に、水、又は炭酸物質以外の有用成分を含む水溶液を混合する混合手段をさらに備える、請求項12~21のいずれか一項に記載の微細藻類の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細藻類等の光合成微生物を原料として生産されるバイオ燃料が、化石燃料に代わるエネルギー源として注目されている。また、微細藻類には多くの栄養素を含むものがあり、そのような微細藻類は食品や化粧品等にも利用される。
このような背景のもとに、微細藻類を培養する方法が検討されている。
微細藻類の培養は、培養液に二酸化炭素を気体の状態で供給して行われるのが一般的である。
【0003】
しかし、二酸化炭素の供給量が過剰となると、微細藻類が消費しきれなかった余剰な二酸化炭素は培養液から大気へ拡散されることとなり、地球温暖化の原因となる。
そこで、二酸化炭素を水に溶解させた溶解液を培養液に供給する方法が検討されている。
ガスを水に溶解させて微細藻類の培養を行う方法として、例えば特許文献1には、ガスを微細気泡化して微細気泡を含んだ微細気泡水を生成し、この微細気泡水を培養液に供給する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-193588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二酸化炭素を水に溶解させた溶解液を培養槽の容量を超えて供給することはできないため、二酸化炭素の供給量には限界がある。
本発明は、大気への二酸化炭素の拡散を抑制しつつ、効率よく微細藻類を培養できる微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 培養槽に培養液を収容し、微細藻類を培養する方法であって、
前記培養液から前記微細藻類を除去して分離液を得る分離工程と、
前記分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液を得る溶解工程と、
前記溶解液と前記培養液を接触させ、前記培養液に炭素源を供給する供給工程と、を有する、微細藻類の培養方法。
[2] 前記分離工程が、前記培養槽中で行われる、前記[1]の微細藻類の培養方法。
[3] 前記分離工程が、前記培養槽から培養液の一部を抜き出し、前記培養槽の外側で行われる、前記[1]の微細藻類の培養方法。
[4] 前記溶解工程が、気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させて前記溶解液を得る工程である、前記[1]~[3]のいずれかの微細藻類の培養方法。
[5] 非多孔質膜を用いる方法又は加圧溶解による方法により、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、前記[4]の微細藻類の培養方法。
[6] 前記非多孔質膜が、高分子膜である、前記[5]の微細藻類の培養方法。
[7] 二酸化炭素を含む排ガスを利用して、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、前記[4]~[6]のいずれかの微細藻類の培養方法。
[8] 前記排ガスが、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場及び製鉄所から選択される1つ以上より排出される排ガスである、前記[7]の微細藻類の培養方法。
[9] 前記微細藻類が、ユーグレナ、シュードコリシスチス及びスピルリナから選択される1種以上である、前記[1]~[8]のいずれかの微細藻類の培養方法。
[10] 前記培養槽が、フォトバイオリアクター型水槽である、前記[1]~[9]のいずれかの微細藻類の培養方法。
[11] 前記培養液又は前記分離液に、水、又は炭酸物質以外の有用成分を含む水溶液を混合する混合工程をさらに有する、前記[1]~[10]のいずれかの微細藻類の培養方法。
【0007】
[12] 微細藻類の培養装置であって、
培養液を収容する培養槽と、
前記培養液から前記微細藻類を除去して分離液を得る分離手段と、
前記分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液を得る溶解手段と、
前記溶解液と前記培養液を接触させ、前記培養液に炭素源を供給する供給手段と、を備える、微細藻類の培養装置。
[13] 前記分離手段が、前記培養槽中に存在する、前記[12]の微細藻類の培養装置。
[14] 前記分離手段が、前記培養槽から培養液の一部を抜き出し、前記微細藻類を除去して前記分離液を得る手段であり、前記培養槽の外側に存在する、前記[12]の微細藻類の培養装置。
[15] 前記溶解手段が、気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させて前記溶解液を得る手段である、前記[12]~[14]のいずれかの微細藻類の培養装置。
[16] 非多孔質膜を用いる方法又は加圧溶解による方法により、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、前記[15]の微細藻類の培養装置。
[17] 前記非多孔質膜が、高分子膜である、前記[16]の微細藻類の培養装置。
[18] 二酸化炭素を含む排ガスを利用して、前記気体状の二酸化炭素を前記分離液に溶解させる、前記[15]~[17]のいずれかの微細藻類の培養装置。
[19] 前記排ガスが、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場及び製鉄所から選択される1つ以上より排出される排ガスである、前記[18]の微細藻類の培養装置。
[20] 前記微細藻類が、ユーグレナ、シュードコリシスチス及びスピルリナから選択される1種以上である、前記[12]~[19]のいずれかの微細藻類の培養装置。
[21] 前記培養槽が、フォトバイオリアクター型水槽である、前記[12]~[20]のいずれかの微細藻類の培養装置。
[22] 前記培養液又は前記分離液に、水、又は炭酸物質以外の有用成分を含む水溶液を混合する混合手段をさらに備える、前記[12]~[21]のいずれかの微細藻類の培養装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大気への二酸化炭素の拡散を抑制しつつ、効率よく微細藻類を培養できる微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一の態様の微細藻類の培養装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
図2】本発明の第二の態様の微細藻類の培養装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置の一実施形態を挙げ、図1、2を適宜参照しながら詳述する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、図2おいて、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0011】
本発明において、微細藻類とは、合成機能を有する単細胞生物であり、体長(細胞の長径)が100μm以下のものをいう。
本発明で培養される微細藻類としては特に制限されないが、例えば藍藻類、原核緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クリプト藻類、渦鞭毛藻類、黄金色藻類、珪藻類、褐藻類、黄緑藻類、ハプト藻類、ラフィド藻類(緑色鞭藻類)、クロララクニオン藻類、ミドリムシ藻類(ユーグレナ)、プラシノ藻類、緑藻類、車軸藻類などが挙げられる。これらの中でも、多くの栄養素を含み、食品、化粧品等に好適に利用できる観点から、ユーグレナ、緑藻類の一種であるシュードコリシスチス、藍藻類の一種であるスピルリナが好ましい。
【0012】
また、本発明において、炭酸物質とは、二酸化炭素(CO)、炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(重炭酸イオン)(HCO )、炭酸イオン(CO 2-)の総称である。
【0013】
本発明の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置は、温室効果ガスの排出を軽減できる観点から、二酸化炭素を含む排ガスを利用して微細藻類を培養することが好ましい。
微細藻類の培養に利用する排ガスとしては、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場、製鉄所等の化石燃料を使用する施設から排出される排ガスが挙げられる。
排ガスには、二酸化炭素(CO)、酸素(O)、窒素(N)、二酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO)等の硫黄酸化物(SOx)などが含まれる。また、排ガスは、これらのガス成分に加えて、ばいじん、重金属等の有害成分を含むこともある。
排ガスに含まれるガス成分のうち、二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)及び硫黄酸化物(SOx)が微細藻類の主な有用成分である。
【0014】
「第一の態様」
[微細藻類の培養装置]
図1に、本発明の第一の態様の微細藻類の培養装置の一例を示す。
図1に示す微細藻類の培養装置1は、培養槽10と、分離手段20と、溶解手段30と、供給手段40と、混合手段50とを備える。
【0015】
培養槽10は、培養液Sを収容する槽である。
培養槽10としては、微細藻類の培養を閉鎖系で行う場合は閉鎖系の培養槽を用い、微細藻類の培養を開放系で行う場合は開放系の培養槽を用いればよい。
ここで、「閉鎖系」とは、培養槽内の環境が培養槽の外の環境と遮断されていることを意味する。培養液Sに供給された二酸化炭素等の有用成分が水面から気相へ放出されにくい点、培養槽の外の環境に微細藻類の培養が影響を受けにくい点、ゴミ等の異物混入を防止できる点などから、微細藻類の培養を閉鎖系で行うことが好ましい。
【0016】
閉鎖系の培養槽としては、例えばフォトバイオリアクター型水槽などが挙げられる。
フォトバイオリアクター型水槽としては、例えば平板型水槽、チューブ型水槽、太陽光集光型水槽、内部照射型水槽などが挙げられる。
開放系の培養槽としては、例えばレースウェイ型水槽などが挙げられる。また、培養槽10に代えて、池などで微細藻類の培養を行ってもよい。
【0017】
培養槽10に収容される培養液Sとしては、培養する微細藻類の種類に応じて適宜、決定すればよい。
【0018】
分離手段20は、培養液Sから微細藻類を除去して分離液を得る手段である。
図1に示す分離手段20は、培養槽10内に配置された第一の分離膜モジュール21を備える。すなわち、図1に示す分離手段20は、培養槽10中に存在する。
第一の分離膜モジュール21を用いることにより、培養液Sから微細藻類を高い分離能で除去し、微細藻類が十分に除去された分離液を得ることができる。
【0019】
第一の分離膜モジュール21は、精密濾過膜、限外濾過膜等の濾過膜(固液分離膜)を備える。精密濾過膜としては、中空糸膜、平膜、チューブラ膜、モノリス型膜等が挙げられる。限外濾過膜としては、中空糸膜、平膜、チューブラ膜等が挙げられる。これらの中でも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましく用いられる。
【0020】
第一の分離膜モジュール21の濾過膜に中空糸膜を用いる場合、その材質としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)等が挙げられる。これらの中でも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、ポリフッ化ビニリデンジフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)が好ましい。
第一の分離膜モジュール21の濾過膜にモノリス型膜を用いる場合、セラミック製の膜を用いることが好ましい。
【0021】
精密濾過膜または限外濾過膜に形成される微細孔の平均孔径は、0.01~1.0μmが好ましく、0.05~0.45μmがより好ましい。微細孔の平均孔径が上記下限値以上であれば、固液分離に要する圧力を十分小さく抑えられる。微細孔の平均孔径が上記上限値以下であれば、微細藻類が分離液中に漏出しにくくなる。
【0022】
図1に示す第一の分離膜モジュール21には、分離液供給ライン22が接続されている。
分離液供給ライン22は、第一の分離膜モジュール21の濾過膜を透過した透過液、すなわち培養液Sから微細藻類が除去された分離液を溶解手段30に供給する配管である。
分離液供給ライン22には、ポンプ23が設置されている。これにより、分離液を培養槽10から排出し、溶解手段30に供給できるようになっている。
【0023】
溶解手段30は、分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液Wを得る手段である。
図1に示す溶解手段30は、二酸化炭素を含む排ガスを利用し、排ガスに含まれる二酸化炭素を分離液に溶解させて溶解液Wを得る手段である。
図1に示す溶解手段30は、溶解槽31と、ガス分離膜321とを備える。
【0024】
溶解槽31は、溶解液Wを得るための槽である。排ガスを供給する前の溶解槽31には、分離手段20から供給された分離液が貯留されており、溶解槽31に貯留された分離液に二酸化炭素が溶解することで、溶解液Wが得られる。
【0025】
ガス分離膜321は、排ガスから有用成分を分離しつつ、排ガスから分離した有用成分を分離液に供給する供給手段である。
ガス分離膜321は、排ガスから有用成分を分離できるものであれば特に制限されず、多孔質膜であってもよいし、非多孔質膜であってもよい。また、高分子膜であってもよいし、セラミックス、金属等の無機系材料からなる分離膜であってもよい。中でも、ガス分離膜321としては、多孔質の高分子膜又は非多孔質の高分子膜が好ましい。
特に、ガス分離膜321が非多孔質膜であれば、排ガスが有害成分を含んでいる場合、排ガスから有害成分を分離することなく、すなわち、有害成分を分離液側に透過せずに、排ガスから有用成分を分離して分離液中に供給することができる。
なお、排ガスが有害成分を含んでいない場合、あるいは、排ガスが有害成分を含んでいても、有害成分の大きさ(粒子径等)よりも細孔の孔径が小さい場合は、ガス分離膜321として多孔質膜を用いてもよい。
【0026】
非多孔質膜は、高分子材料、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂から選ばれる1種以上を含む材料からなる高分子膜であることが好ましい。特に、排ガスから有用成分を効率よく分離して、十分な量の有用成分を分離液中に供給できる観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びシリコーン系樹脂から選ばれる1種以上を含む材料からなることが好ましい。
多孔質膜は、高分子材料、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びフッ素系樹脂から選ばれる1種以上を含む材料からなる高分子膜であることが好ましい。
【0027】
ガス分離膜321は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。ガス分離膜321が複層構造である場合、例えば2層の多孔質層と、その間に設けられた1層の非多孔質層を含む複層構造が好ましい。
【0028】
ガス分離膜321の平均膜厚は、0.7~1.3μmが好ましく、0.8~1.2μmがより好ましい。ガス分離膜321の平均膜厚が上記下限値以上であれば、製造時に欠陥が発生することなく、安定的に生産することが可能になる。ガス分離膜321の平均膜厚が上記上限値以下であれば、有用成分の透過性を良好に維持できる。
ガス分離膜321の平均膜厚は、ガス分離膜321の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、この画像を解析してガス分離膜321の膜厚を複数箇所(5箇所以上)で測定し、その平均値を求めたものである。
【0029】
ガス分離膜321の形態としては特に制限されず、中空糸膜、平膜など、用途に応じた形状をとすることができる。中でも、中空糸膜が好ましい。
また、ガス分離膜321には、ガス分離膜321を補強するための支持体(例えば、編紐や組紐等の繊維状物)を設けてもよい。例えばガス分離膜321の形態が中空糸膜である場合、中空状の支持体上に非多孔質膜又は多孔質膜を形成したものをガス分離膜321としてもよい。
【0030】
ガス分離膜321は、溶解槽31に貯留された分離液に浸漬している。なお、溶解液Wが得られた後には、ガス分離膜321は溶解液Wに浸漬していることになる。
図示例のガス分離膜321は、中空糸膜であり、第二の分離膜モジュール32の状態で、分離液(又は溶解槽31内で得られた溶解液W)に浸漬している。
図示例の第二の分離膜モジュール32は、複数のガス分離膜321で構成されたシート状物322と、一対のハウジング323とを備えている。
【0031】
シート状物322は、複数のガス分離膜321同士が一定間隔離れて配置されている。なお、ガス分離膜321が複数束ねられて分離膜束を形成し、複数の分離膜束同士が一定間隔離れて配置されてシート状物322を形成していてもよい。
シート状物322の長手方向の両端は、一対のハウジング323内に挿入されて支持されている。
一対のハウジング323は、シート状物322の両端が挿入、固定される略中空状の部材であり、図1に示す例では、第1のハウジング323a及び第2のハウジング323bから構成される。すなわち、シート状物322は、第1のハウジング323aと第2のハウジング323bとの間で保持される。
【0032】
第1のハウジング323aには排ガスライン331が接続され、排ガスが第1のハウジング323aの内部に供給されるように構成されている。一方、第2のハウジング323bには排出ライン332が接続され、排ガスから分離されなかった、すなわちガス分離膜321を透過しなかった残りのガス成分(以下、「オフガス」ともいう。)が排出されるように構成されている。
そして、第二の分離膜モジュール32は、排ガスが第1のハウジング323aを介して複数のガス分離膜321の中空部内に送り込まれ、排ガスから有用成分を分離し、分離液中に有用成分を供給するように構成される。すなわち、図1に示すように、排ガスに含まれる有用成分(CO、NOx及びSOx等)は、ガス分離膜321を透過して分離液中に拡散され、溶解液Wが得られる。ガス分離膜321を用いることで、排ガスに含まれる気体状の二酸化炭素等の有用成分が、分離液に溶解しつつ、拡散する。
また、第二の分離膜モジュール32は、排ガスから分離されなかった、すなわちガス分離膜321を透過しなかったオフガスが第2のハウジング323bを介して溶解槽31の系外へ排出されるように構成される。オフガスは、主に、N、Oである。排ガスが有害成分を含む場合、ガス分離膜321として非多孔質膜を用いるか、有害成分の大きさ(粒子径等)よりも細孔の孔径が小さい多孔質膜を用いれば、有害成分もオフガスと共に溶解槽31の系外へ排出される。
【0033】
供給手段40は、溶解液Wと培養液Sを接触させ、培養槽10中の培養液Sに炭素源を供給する手段える。
供給手段40は、溶解液供給ライン41を備える。
溶解液供給ライン41は、溶解槽31内で得られた溶解液Wを培養槽10に供給する配管である。
【0034】
図1に示す混合手段50は、分離液に水(X1)、又は炭酸物質以外の有用成分を含む水溶液(X2)を混合する手段である。なお、本発明において水(X1)及び水溶液(X2)を総称して「液体(X)」ともいう。
混合手段50は、タンク51と、液体供給ライン52とを備える。
タンク51は、液体(X)を収容するタンクである。
液体供給ライン52は、タンク51に収容された液体(X)を分離液に供給する配管であり、分離液供給ライン22の途中で合流することで、分離液供給ライン22中で分離液に液体(X)を供給できるように構成されている。
炭酸物質以外の有用成分としては、例えばリン、窒素、カリウム等の微量元素が挙げられる。
【0035】
[微細藻類の培養方法]
以下、本発明の第一の態様の微細藻類の培養方法の一例について説明する。なお、以下に説明する微細藻類の培養方法は、図1に示す微細藻類の培養装置1を用いた微細藻類の培養方法の一例である。
本実施形態の微細藻類の培養方法は、培養液Sから微細藻類を除去して分離液を得る分離工程と、分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液Wを得る溶解工程と、溶解液Wと培養液Sを接触させ、培養液Sに炭素源を供給する供給工程と、分離液に液体(X)を混合する混合工程とを有する。
具体的には、以下の通りである。
【0036】
まず、分離液供給ライン22の途中に設けられたポンプ23を駆動させ、培養液Sを第一の分離膜モジュール21の濾過膜により膜濾過し、濾過膜を透過した、すなわち培養液Sから微細藻類が除去された分離液を培養槽10から排出し、溶解手段30の溶解槽31に供給する(分離工程)。
【0037】
第二の分離膜モジュール32が浸漬する程度の量の分離液が溶解槽31に貯留された後に、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場、製鉄所等の化石燃料を使用する施設から排出される排ガスを、排ガスライン331及び第1のハウジング323aを介してガス分離膜321の中空部内に送り込む。
ガス分離膜321に送り込まれた排ガスをガス分離膜321によって分離する。具体的には、排ガスに含まれる有用成分をガス分離膜321によって排ガスから分離し、分離した有用成分を溶解槽31内にて分離液に溶解させ、溶解液Wを得る(溶解工程)。ガス分離膜321は溶解槽31に貯留された分離液に浸漬しているので、ガス分離膜321を透過した有用成分は直接、分離液中に拡散される。その際、気泡が発生しにくいので、気体状の二酸化炭素等の有用成分が分離液に溶解しやすい。
排ガスから分離されなかった、すなわちガス分離膜321を透過しなかった残りのガス成分(オフガス)を第2のハウジング323bを介して溶解槽31の系外へ排出する。
【0038】
次いで、溶解液供給ライン41を介して、溶解液Wを培養槽10に添加することで、溶解液Wと培養液Sを接触させ、培養槽10中の培養液Sに炭素源を供給する(供給工程)。供給工程は、培養の進み具合に応じて、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
培養が進行し、培養液S中の微細藻類の濃度が高くなった場合には、培養槽10から培養液Sを抜き出すことが好ましい。培養槽10から培養液Sを抜き出すと、培養槽10中の培養液Sの量が減るため、混合手段50により液体(X)を分離液に供給して、培養槽10中の培養液Sの量を調節することが好ましい(混合工程)。
【0039】
微細藻類の培養条件としては特に限定されず、培養する微細藻類の種類に応じて決定すればよい。
微細藻類の培養は、閉鎖系で行ってもよいし、開放系で行ってもよい。培養液Sに供給された有用成分が水面から気相へ放出されにくい点、培養槽の外の環境に微細藻類の培養が影響を受けにくい点、ゴミ等の異物混入を防止できる点などから、微細藻類の培養を閉鎖系で行うことが好ましい。
また、排ガスが有害成分を含んでいる場合は、排ガスから有害成分を分離することなく、すなわち、有害成分を培養液S側に透過せずに、排ガスから有用成分を分離して培養液S中に供給することが好ましい。
培養温度は4~40℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
微細藻類に照射する光は太陽光でもよいし、人工光でもよい。
【0040】
[作用効果]
以上説明した、本発明の第一の態様の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置では、培養液から微細藻類を除去した分離液に対して二酸化炭素を溶解させ、得られた溶解液を培養液に返送するので、培養槽の容量を超えることなく、必要な量の二酸化炭素を培養液に供給できる。しかも、培養の進み具合に応じて培養液に溶解させる二酸化炭素の濃度を調節でき、最適な量の二酸化炭素を培養液に供給できるので、二酸化炭素の供給量が過剰となりにくい。また、二酸化炭素を分離液に溶解させて培養液に供給するので、分離液と溶解液とが混ざり合い、二酸化炭素は溶解液に溶解した状態となる。そのため、二酸化炭素が消費しきれなかったとしても、余剰な二酸化炭素は培養液に溶解しているので、二酸化炭素が大気へ拡散しにくい。
よって、本発明の第一の態様の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置であれば、大気への二酸化炭素の拡散を抑制しつつ、効率よく微細藻類を培養できる。
特に、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場、製鉄所等の化石燃料を使用する施設から排出される排ガスを二酸化炭素の供給源として利用すれば、温室効果ガスの排出を軽減できる。
【0041】
本発明により培養された微細藻類は、例えば食品、化粧品、バイオ燃料などに利用される。
特に、有害成分を含んだ排ガスを微細藻類の培養に利用する場合、排ガスから有害成分を分離することなく、すなわち、有害成分を培養液側に透過せずに、排ガスから有用成分を分離して培養液中に供給して培養された微細藻類は、食品、化粧品などの原料として好適である。
【0042】
なお、図示例の微細藻類の培養装置1は、1つの培養槽10を備えているが、複数の培養槽を設置して微細藻類を同時に培養してもよい。
複数の培養槽を設置する場合、各培養槽では、同じ種類の微細藻類を培養してもよいし、異なる種類の微細藻類を培養してもよい。また、少なくとも1つの培養槽では培養を閉鎖系で行い、残りの培養槽では培養を開放系で行ってもよい。
また、図示例の微細藻類の培養装置1では、1つの培養槽10に、1つの第一の分離膜モジュール21が浸漬しているが、培養槽10の大きさに応じて、複数の第一の分離膜モジュール21を浸漬させてもよい。
【0043】
また、第一の態様では、非多孔質膜等のガス分離膜321を用いて気体状の二酸化炭素を分離液に溶解させて溶解液Wを調製しているが、加圧溶解による方法で気体状の二酸化炭素を分離液に溶解させて溶解液Wを調製してもよい。具体的には、溶解槽31の気相部に二酸化炭素を充填して溶解槽31を密閉し、溶解槽31内を加圧することで気体状の二酸化炭素を分離液に溶解させて溶解液Wを調製してもよい。
さらに、排ガスに代えて、気体状の二酸化炭素を直接、溶解槽31に供給して溶解液Wを調製してもよいし、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)及び重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等)のいずれか一方又は両方を直接又は水溶液の状態で、溶解槽31に供給して溶解液Wを調製してもよい。ただし、溶解液W中の炭酸物質の濃度を制御しやすい観点で、気体状の二酸化炭素を分離液に溶解させて溶解液Wを調製することが好ましい。その中でも、効率よく二酸化炭素を分離液に溶解できる観点から、非多孔質膜等のガス分離膜321を用いる方法が特に好ましい。
【0044】
また、図示例の微細藻類の培養装置1では、液体供給ライン52が分離液供給ライン22の途中で合流しており、分離液供給ライン22中で分離液に液体(X)を供給しているが、液体(X)を培養槽10中の培養液Sに直接添加し、混合してもよい。
【0045】
「第二の態様」
[微細藻類の培養装置]
図2に、本発明の第二の態様の微細藻類の培養装置の一例を示す。
図2に示す微細藻類の培養装置2は、培養槽10と、分離手段20と、溶解手段30と、供給手段40と、混合手段50とを備える。
培養槽10、溶解手段30、供給手段40及び混合手段50は、第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0046】
図2に示す分離手段20は、培養槽10の外側に配置された第一の分離膜モジュール21を備える。すなわち、図2に示す分離手段20は、培養槽10から培養液Sの一部を抜き出し、抜き出した培養液Sから微細藻類を除去して分離液を得る手段であり、培養槽10の外側に存在する。
第一の分離膜モジュール21としては、第一の態様の説明において先に例示した第一の分離膜モジュールが挙げられる。
【0047】
図2に示す第一の分離膜モジュール21には、分離液供給ライン22と、培養液供給ライン24と、濃縮液返送ライン25とが接続されている。
分離液供給ライン22は、第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
培養液供給ライン24は、培養槽10から培養液Sの一部を抜き出し、抜き出した培養液Sを第一の分離膜モジュール21に供給する配管である。培養液供給ライン24の一端は培養槽10に接続され、他端は第一の分離膜モジュール21に接続されている。
濃縮液返送ライン25は、第一の分離膜モジュール21の濾過膜を透過せず、微細藻類が濃縮された濃縮液を培養槽10に返送する配管である。濃縮液返送ライン25の一端は第一の分離膜モジュール21に接続され、他端は培養槽10に接続されている。これにより、培養槽10から抜き出された培養液S中の微細藻類が、培養槽10と分離手段20とを循環できるようになっている。
また、濃縮液返送ライン25の途中には、濃縮液排出ライン26が接続されており、濃縮液の少なくとも一部を排出できるようになっている。
【0048】
[微細藻類の培養方法]
以下、本発明の第二の態様の微細藻類の培養方法の一例について説明する。なお、以下に説明する微細藻類の培養方法は、図2に示す微細藻類の培養装置2を用いた微細藻類の培養方法の一例である。
本実施形態の微細藻類の培養方法は、培養液Sから微細藻類を除去して分離液を得る分離工程と、分離液に炭酸物質を溶解させて溶解液Wを得る溶解工程と、溶解液Wと培養液Sを接触させ、培養液Sに炭素源を供給する供給工程と、分離液に液体(X)を混合する混合工程とを有する。
具体的には、以下の通りである。
【0049】
まず、分離液供給ライン22の途中に設けられたポンプ23を駆動させ、培養槽10から培養液Sの一部を抜き出し、培養液供給ライン24を介して抜き出した培養液Sを分離手段20の第一の分離膜モジュール21に供給する。引き続き、培養液Sを第一の分離膜モジュール21の濾過膜により膜濾過し、濾過膜を透過した、すなわち培養液Sから微細藻類が除去された分離液を溶解手段30の溶解槽31に供給する(分離工程)。
第一の分離膜モジュール21の濾過膜を透過せず、微細藻類が濃縮された濃縮液は、濃縮液返送ライン25を介して培養槽10に返送される。なお、培養が進行し、培養液S中の微細藻類の濃度が高くなった場合には、濃縮液排出ライン26を介して、濃縮液の少なくとも一部を排出する。
【0050】
分離工程に続く溶解工程及び供給工程及は、第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
また、上述したように、培養が進行して濃縮液の少なくとも一部を排出した場合は、培養槽10中の培養液Sの量が減るため、混合手段50により液体(X)を分離液に供給して、培養槽10中の培養液Sの量を調節することが好ましい(混合工程)。
微細藻類の培養条件等は、第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0051】
[作用効果]
以上説明した、本発明の第二の態様の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置では、培養液から微細藻類を除去した分離液に対して二酸化炭素を溶解させ、得られた溶解液を培養液に返送するので、培養槽の容量を超えることなく、必要な量の二酸化炭素を培養液に供給できる。しかも、培養の進み具合に応じて培養液に溶解させる二酸化炭素の濃度を調節でき、最適な量の二酸化炭素を培養液に供給できるので、二酸化炭素の供給量が過剰となりにくい。また、二酸化炭素を分離液に溶解させて培養液に供給するので、分離液と溶解液とが混ざり合い、二酸化炭素は溶解液に溶解した状態となる。そのため、二酸化炭素が消費しきれなかったとしても、余剰な二酸化炭素は培養液に溶解しているので、二酸化炭素が大気へ拡散しにくい。
よって、本発明の第一の態様の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置であれば、大気への二酸化炭素の拡散を抑制しつつ、効率よく微細藻類を培養できる。
特に、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場、製鉄所等の化石燃料を使用する施設から排出される排ガスを二酸化炭素の供給源として利用すれば、温室効果ガスの排出を軽減できる。
また、本発明の第二の態様の微細藻類の培養装置は、培養槽の外側に分離手段が存在しているので、第一の分離膜モジュール21のメンテナンス(例えば濾過膜の洗浄等)が容易である。
【0052】
なお、図示例の微細藻類の培養装置2は、1つの培養槽10を備えているが、複数の培養槽を設置して微細藻類を同時に培養してもよい。
複数の培養槽を設置する場合、各培養槽では、同じ種類の微細藻類を培養してもよいし、異なる種類の微細藻類を培養してもよい。また、少なくとも1つの培養槽では培養を閉鎖系で行い、残りの培養槽では培養を開放系で行ってもよい。
また、図示例の微細藻類の培養装置2では、1つの培養槽10に、1つの第一の分離膜モジュール21が浸漬しているが、培養槽10の大きさに応じて、複数の第一の分離膜モジュール21を浸漬させてもよい。
【0053】
また、第二の態様では、非多孔質膜等のガス分離膜321を用いて気体状の二酸化炭素を水に溶解させて溶解液Wを調製しているが、加圧溶解による方法で気体状の二酸化炭素を水に溶解させて溶解液Wを調製してもよい。具体的な方法は、第一の態様と同様である。
さらに、排ガスに代えて、気体状の二酸化炭素を直接、溶解槽31に供給して溶解液Wを調製してもよいし、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)及び重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等)のいずれか一方又は両方を直接又は水溶液の状態で、溶解槽31に供給して溶解液Wを調製してもよい。
【0054】
また、図示例の微細藻類の培養装置2では、液体供給ライン52が分離液供給ライン22の途中で合流しており、分離液供給ライン22中で分離液に液体(X)を供給しているが、液体(X)を培養槽10中の培養液Sに直接添加し、混合してもよい。また、液体供給ライン52を培養液供給ライン24の途中で合流させ、培養液供給ライン24中で、培養槽10から抜き出した培養液Sに供給してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 微細藻類の培養装置
2 微細藻類の培養装置
10 培養槽
20 分離手段
21 第一の分離膜モジュール
22 分離液供給ライン
23 ポンプ
24 培養液供給ライン
25 濃縮液返送ライン
26 濃縮液排出ライン
30 溶解手段
31 溶解槽
32 第二の分離膜モジュール
321 ガス分離膜
322 シート状物
323 ハウジング
323a 第1のハウジング
323b 第2のハウジング
331 排ガスライン
332 排出ライン
40 供給手段
41 溶解液供給ライン
50 混合手段
51 タンク
52 液体供給ライン
S 培養液
W 溶解液
図1
図2