(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103712
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】ポリアセタール重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/10 20060101AFI20230720BHJP
【FI】
C08G65/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004390
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 直裕
(72)【発明者】
【氏名】宇野 希勇
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005BB02
(57)【要約】
【課題】重合触媒の量を低減することができ、当該重合触媒を失活剤との溶融混練により十分に失活することができ、かつ、不安定末端部が少なく熱安定性が高いポリアセタール重合体を製造することができる、ポリアセタール重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)トリオキサンを単独で重合する工程、又は(B)主モノマーとしてトリオキサンと、コモノマーとして前記トリオキサンと共重合し得る化合物とを共重合する工程を含み、該工程において、下記一般式(1)で表される化合物を重合触媒として使用する、ポリアセタール重合体の製造方法である。
【化1】
[一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0~10の整数を示し、xは1~3の整数を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トリオキサンを単独で重合する工程、又は(B)主モノマーとしてトリオキサンと、コモノマーとして前記トリオキサンと共重合し得る化合物とを共重合する工程を含み、
前記工程において、下記一般式(1)で表される化合物を重合触媒として使用する、ポリアセタール重合体の製造方法。
【化1】
[一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0~10の整数を示し、xは1~3の整数を示す。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【化2】
[一般式(2)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、xは1~3の整数を示す。]
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記構造(A)~(D)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【化3】
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記構造(A)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【化4】
【請求項5】
前記工程により得られた重合生成物に固体塩基性化合物を添加して溶融混練する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【請求項6】
前記固体塩基性化合物の添加量が、重合生成物に対して1~1500ppmである、請求項5に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール重合体は、機械的性質、耐薬品性、摺動性等のバランスに優れ、かつ、その加工が容易であることにより、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子部品、自動車部品その他の各種機械部品を中心として広く利用されている。
【0003】
ポリアセタール重合体は、トリオキサンを単独で重合して得られる重合体(ホモポリマー)と、トリオキサンを主モノマーとし、該トリオキサンと共重合し得る化合物をコモノマーとして共重合する共重合体(コポリマー)とがある。例えば、ポリアセタール共重合体(コポリマー)の製造方法として、トリオキサンを主モノマーとし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状エーテル及び/又は環状ホルマールをコモノマーとするカチオン共重合が知られている。共重合に用いるカチオン活性触媒としては、中でも三フッ化ホウ素、又は三フッ化ホウ素と有機化合物、例えばエーテル類との配位化合物は、トリオキサンを主モノマーとする重合触媒として最も一般的であり、工業的にも広く用いられている。
【0004】
しかし、三フッ化ホウ素系化合物等の一般に使用される重合触媒では、重合に比較的多量(例えば全モノマーに対し40ppm又はそれ以上)の触媒を必要とする。そのため、重合後の触媒失活処理を十分に行い難く、また、失活化させたとしても触媒に由来する物質が共重合体中に残存し、共重合体の分解が促進される等の問題が生じる場合がある。また、触媒の失活はトリエチルアミン等の塩基性化合物を含む多量の水溶液中で行うのが一般的であり、触媒失活後に共重合体を処理液と分離して乾燥する工程等、煩雑な工程を必要とするものであり、経済的にも課題を含むものであった。
【0005】
上記のような触媒の失活処理に伴う煩雑さを省くため、生成共重合体に三価のリン化合物を添加する方法(特許文献1参照)やヒンダードアミン化合物を添加する方法(特許文献2参照)の提案もなされているが、期待されるほどの効果は得られていない。
【0006】
一方、上記のように、重合触媒を失活剤により失活した後の重合生成物には、熱的に不安定な末端が存在する。そのため、安定剤としてトリエチルアミン水溶液などを用いた安定化処理が必要であり、その分、工数が増え、コスト増加の原因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭55-42085号公報
【特許文献2】特開昭62-257922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、重合触媒の量を低減することができ、当該重合触媒を失活剤との溶融混練により十分に失活することができ、かつ、不安定末端部が少なく熱安定性が高いポリアセタール重合体を製造することができる、ポリアセタール重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)(A)トリオキサンを単独で重合する工程、又は(B)主モノマーとしてトリオキサンと、コモノマーとして前記トリオキサンと共重合し得る化合物とを共重合する工程を含み、
前記工程において、下記一般式(1)で表される化合物を重合触媒として使用する、ポリアセタール重合体の製造方法。
【0010】
【化1】
[一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0~10の整数を示し、xは1~3の整数を示す。]
【0011】
(2)前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、前記(1)に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【0012】
【化2】
[一般式(2)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、xは1~3の整数を示す。]
【0013】
(3)前記一般式(1)で表される化合物が、下記構造(A)~(D)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、前記(1)又は(2)に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【0014】
【0015】
(4)前記一般式(1)で表される化合物が、下記構造(A)で表される化合物である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【0016】
【0017】
(5)前記工程により得られた重合生成物に固体塩基性化合物を添加して溶融混練する、前記(1)~(4)のいずれかに記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【0018】
(6)前記固体塩基性化合物の添加量が、重合生成物に対して1~1500ppmである、前記(5)に記載のポリアセタール重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、重合触媒の量を低減することができ、当該重合触媒を失活剤との溶融混練により十分に失活することができ、かつ、不安定末端部が少なく熱安定性が高いポリアセタール重合体を製造することができる、ポリアセタール重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態のポリアセタール重合体の製造方法は、(A)トリオキサンを単独で重合する工程、又は(B)主モノマーとしてトリオキサンと、コモノマーとしてトリオキサンと共重合し得る化合物とを共重合する工程を含み、前記工程において、下記一般式(1)で表される化合物を重合触媒として使用する。(A)においてはホモポリマーが得られ、(B)においてはコポリマーが得られる。なお、本実施形態において、「ポリアセタール重合体」の語はホモポリマー及びコポリマーの双方ともに含む。
【0021】
【化5】
[一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0~10の整数を示す。]
【0022】
本実施形態の製造方法においては、所定のモノマーを(共)重合してポリアセタール重合体を製造するに当たり、重合触媒として一般式(1)で表される化合物を用いる。一般式(1)で表される化合物は、重合触媒として高活性であるため、少量の使用でその機能を発揮する。すなわち、重合触媒の使用量が少量で済むため、当該重合触媒を失活する失活剤の使用量も少量とすることができる。失活剤の使用量が少量となることにより、従来のように、重合反応生成物を失活剤の水溶液に長時間浸漬して重合触媒を失活する必要がない。従って、本実施形態においては、重合反応生成物を失活剤の水溶液に長時間浸漬した場合に生じ得る、熱的に不安定な末端の生成が低減される。つまり、重合体の品質悪化を防止することができる。ひいては、本実施形態の製造方法により熱安定性が高いポリアセタール重合体が得られる。その上、重合触媒の失活は溶融混練時に行うことができるため、失活剤の水溶液に浸漬する場合と比較して工数を低減することができる。
【0023】
本実施形態の製造方法において、(A)トリオキサンを単独で重合する工程、すなわちホモポリマーを得る場合においては、トリオキサンをモノマーとし、重合触媒として前記一般式(1)で示される化合物を使用して重合を行う。そして、得られた反応生成物に、塩基性失活剤を添加し、溶融混練処理して重合触媒を失活させる。
【0024】
トリオキサンは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。重合に用いるトリオキサンは、水、メタノールなどの不純物を極力低減させたものが好ましい。
【0025】
一方、本実施形態の製造方法において、(B)主モノマーとしてトリオキサンと、コモノマーとしてトリオキサンと共重合し得る化合物とを共重合する工程、すなわちコポリマーを得る場合は、主モノマーとしてトリオキサンと、コモノマーとしてトリオキサンと共重合し得る化合物とし、重合触媒として前記一般式(1)で示される化合物を使用して共重合を行う。そして、得られた反応生成物に、塩基性失活剤を添加し、溶融混練処理して重合触媒を失活させる。主モノマーとしてのトリオキサンは、上記のホモポリマーの説明において述べたため、以下においてはコモノマーについて説明する。
【0026】
コモノマーは、トリオキサンと共重合し得る化合物が使用される。コモノマーとしては、例えば、少なくとも1つの炭素- 炭素結合を有する環状エーテル及び/又は環状ホルマールが挙げられる。コモノマーとして使用する化合物の代表的な例としては、例えば、1,3-ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,3-ジオキサン、エチレンオキサイド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン等が挙げられる。中でも、重合の安定性から考慮して、1,3-ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,3-ジオキサン、エチレンオキサイドが好ましい。
更に、得られるポリアセタール重合体の性能を大幅に低下させないような範囲ならば、主モノマー、コモノマーに加えて、第三のコモノマー成分として、分岐剤などの公知の変性剤コモノマーを併用添加しても差し支えない。
【0027】
本実施形態において、コモノマーとして用いる、環状エーテル及び/又は環状ホルマールから選ばれる化合物の量は、全モノマー(主モノマーとコモノマーの合計量)中の割合として0.1~20モル%であることが好ましく、0.2~10モル%であることがより好ましい。コモノマーの量が0.1モル%未満であると、重合によって生成するポリアセタール共重合体の不安定末端部が増加して安定性が悪くなることがある。コモノマー量が20モル%を超えると、生成共重合体が軟質となり融点の低下を生じることがある。
【0028】
本実施形態の製造方法においては、重合触媒として下記一般式(1)で表される化合物が用いられる。
【0029】
【化6】
[一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0~10の整数を示し、xは1~3の整数を示す。]
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、上記の通り、重合触媒として高活性であり、使用量が少量で済み、例えば、全モノマー成分に対して0.1~50ppmとすることができる。ただし、本実施形態の製造方法の効果に影響を与えない限り、一般式(1)で表される化合物は50ppmを超える量を使用するのは差し支えない。また、一般式(1)で表される化合物は不揮発性(沸点:350℃以上)であるため、溶融混練時において、失活剤と反応する前に揮発し難い。そのため、揮発により遊離した重合触媒による、生成したポリアセタール重合体の分解を抑制することができる。
なお、一般式(1)で表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
一般式(1)中、Rが表す脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~7のアルキル基(メチル基、エチル基等)が挙げられる。Rが表す脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよく、当該置換基としては、メチル基、メチレン基、エチル基、エチレン基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、Rが表す脂肪族炭化水素基は不飽和結合を有していてもよい。
【0032】
一般式(1)中、Rが表す芳香族炭化水素基としては、フェニル基、アラルキル基、ナフチル等が挙げられる。Rが表す芳香族炭化水素基は置換基を有してもよく、当該置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、炭化水素基等が挙げられる。
【0033】
また、m、nはそれぞれ独立に0~10の整数を示すが、0~5が好ましく、0~3がより好ましく、0~2がさらに好ましい。さらに、m及びnが双方ともに0である場合、すなわち、下記一般式(2)である場合が特に好ましい。
【0034】
【化7】
[一般式(2)中、Rは、置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、xは1~3の整数を示す。]
【0035】
前記一般式(2)の中でも、下記構造(A)~(D)で表される化合物のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、構造(A)で表される化合物が好ましい。なお、構造(A)がx=1、構造(B)がx=2、構造(C)がx=1、構造(D)がx=3である。
【0036】
【0037】
本実施形態の製造方法においては、以上のようにして得られた重合生成物に固体塩基性化合物を添加して溶融混練することが好ましい。固体塩基性化合物は、重合触媒に対して塩基性失活剤としての機能を有し、当該固体塩基性化合物により、重合触媒たる一般式(1)で表される化合物を失活することができる。しかも、従来のように、失活剤の水溶液に長時間浸漬することなく、重合触媒を失活することができる。そのため、失活剤の水溶液に浸漬してから乾燥するまでの工程を省略することができる。さらに、失活剤の水溶液に長時間浸漬することで生成する、熱的に不安定な末端の生成を抑制することができるため、安定化処理を必要としない。熱的に不安定な末端としては、-CH2CH2O-(CH2O)n-CH2OHや-CH2CH2O-(CH2O)n-CH2CHOが挙げられる。上記不安定な末端を示す基の中のnは任意の正の整数を示す。
【0038】
固体塩基性化合物の種類、添加方法は、特に限定されるものでないが、重合反応生成物、すなわち、ポリアセタール重合体を洗浄することなく、ポリアセタール重合体に対して固体塩基性化合物をそのまま添加し溶融混練することで、重合触媒の失活及びポリアセタール重合体の不安定末端の安定化に供することができるものが好ましい。具体的には、固体塩基性化合物は、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩又はその水和物、及びアミノ基又は置換アミノ基を有するトリアジン環含有化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0039】
さらには、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩又はその水和物を使用した場合に、最終的に得られる組成物において、そのホルムアルデヒド発生量は特に低い値となり、より好ましい。具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0040】
本実施形態において、上記の固体塩基性化合物は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよく、それらの水和物や混合物、複塩等の状態であっても構わない。
【0041】
本実施形態においては、上記の通り、重合触媒の使用量が少量であることから、当該重合触媒の失活剤である固体塩基性物質の使用量も少量とすることができる。具体的には、重合生成物に対して1~1500ppmとすることができる。
【0042】
本実施形態においては、分子量調整剤を、ホモポリマーにおいては必須とし、コポリマーにおいては必要に応じて使用してもよい。分子量調整剤としては、線状ホルマール化合物が用いることができる。線状ホルマール化合物としては、メチラール、エチラール、ジブトキシメタン、ビス(メトキシメチル)エーテル、ビス(エトキシメチル)エーテル、ビス(ブトキシメチル)エーテル等が例示される。その中でも、メチラール、エチラール、及びジブトキシメタンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0043】
かかる重合及び失活処理の後、必要に応じて更に未反応モノマーの分離回収、乾燥等を従来公知の方法にて行う。
【0044】
本実施形態のポリアセタール重合体の製造方法においては、重合する工程において、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
【実施例0045】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1~4、比較例1~2]
重合反応装置として連続式二軸重合機を用いた。この重合機は、外側に加熱用又は冷却用の媒体を通すためのジャケットを備え、その内部には撹拌、推進用の多数のバドルを付した2本の回転軸が長手方向に設けられている。そして、重合機の2本の回転軸をそれぞれ150rpmで回転させながら、主モノマー(トリオキサン)及び表1に示すコモノマーを表1に示す割合で加えた。更に分子量調整剤として線状ホルマール化合物を全モノマーに対して1000ppm連続的に供給し、表1に示す重合触媒を表1に示す割合で混合した均一混合物を連続的に添加供給し塊状重合を行った。そして、重合機から排出された反応生成物は速やかに破砕機に通した。その後、得られた反応生成物に、表1に示す失活剤(固体塩基性化合物、割合は表1参照)及び下記添加剤を添加して二軸押出機へ投入して溶融混練(シリンダー温度:200℃)し、重合触媒を失活させ、ポリアセタール重合体のペレットを得た(比較例1を除く。)。
一方、比較例1においては、重合触媒の失活は、反応生成物を、失活剤としてトリエチルアミンを0.1質量%含有する水溶液を使用し、反応生成物を4倍の質量の80℃の当該失活剤水溶液に浸漬し、1時間攪拌することにより行った。その後、ろ過を行いアセトンで洗浄後、80℃で1時間乾燥させ、失活反応生成物を得た。得られた失活反応生成物に、下記添加剤を添加して二軸押出機へ投入して溶融混練(シリンダー温度:200℃)し、ポリアセタール重合体のペレットを得た。
添加剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、Irganox1010)及びメラミン(主モノマー及びコモノマーの合計100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.35質量部、メラミンを0.1質量部含むように添加した。)
また、表1において、コモノマーは略号で示しているが、具体的には以下の通りである。
DO:1,3-ジオキソラン
BDF:1,4-ブタンジオールホルマール
【0047】
[熱安定性(溶融体からのホルムアルデヒド発生量)]
各実施例・比較例において得られたポリアセタール重合体のペレット5gを正確に秤量し、金属製容器中に200℃で5分間保持した後、容器内の雰囲気を蒸留水中に吸収させた。この水溶液のホルムアルデヒド量をJISK0102,29.(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、ポリアセタール重合体から発生するホルムアルデヒドガス量(ppm)を算出した。
【0048】
[不安定成分量]
各実施例・比較例において得られたポリアセタール重合体のペレット1gを0.5%の水酸化アンモニウムを含む50%メタノール水溶液100mLに入れて密閉容器中で180℃ 45分間加熱、冷却した液中のホルムアルデヒド濃度から、ポリアセタール重合体の質量当たりの発生ホルムアルデヒド量を求め、これを不安定成分量(質量%)とした。
【0049】
【0050】
表1より、実施例1~4はいずれもホルムアルデヒド発生量及び不安定成分量が比較例1及び2よりも少なく、熱安定性が高いことが分かる。
これに対して、従来の重合触媒である三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートを用いた比較例1は、重合触媒が大量に必要であり、その結果、失活剤も大量に要したとともに、ホルムアルデヒド発生量及び不安定成分量も多かった。これは、失活剤の水溶液に浸漬中に熱的に不安定な末端が生じたと考えられる。また、重合触媒のみを実施例1と異ならせ、従来の重合触媒を用いた比較例2は、ホルムアルデヒド発生量及び不安定成分量も非常に多かった。これは、大量に使用した重合触媒の失活が不十分であり、得られたポリアセタール重合体が分解され、熱安定性を欠いたと考えられる。