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特開2023-103725光学測定用セル、光学分析装置、窓形成部材、及び光学測定用セルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103725
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】光学測定用セル、光学分析装置、窓形成部材、及び光学測定用セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20230720BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N21/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004415
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】中田 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
(72)【発明者】
【氏名】坂口 有平
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
(72)【発明者】
【氏名】赤松 武
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AC01
2G057AC03
2G057BA01
2G057BA05
2G057BB09
2G057BC05
2G057BD03
2G057BD04
2G057DB02
2G057DC06
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB04
2G059DD12
2G059EE01
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ03
2G059KK02
2G059MM01
2G059MM12
2G059NN02
(57)【要約】
【課題】気密性や耐熱性等の要求される種々の性能を満たす光学測定用セルを原子拡散接合により製造するうえで、窓材の割れを防ぐ。
【解決手段】光が透過する透光窓W1、W2を有し、内部に試料が導入される光学測定用セル2であって、透光窓W1、W2を形成する窓材221と、金属薄膜Mを介して窓材221が接合されたフランジ部材222とを備え、窓材221の熱膨張係数に対するフランジ部材222の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下であるようにした。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が透過する透光窓を有し、内部に試料が導入される光学測定用セルであって、
前記透光窓を形成する窓材と、
金属薄膜を介して前記窓材が接合されたフランジ部材とを備え、
前記窓材の熱膨張係数に対する前記フランジ部材の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下であることを特徴とする光学測定用セル。
【請求項2】
前記窓材がセレン化亜鉛又はサファイアからなり、前記フランジ部材がチタン又はステンレスインバーからなる、請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項3】
前記窓材がフッ化バリウムからなり、前記フランジ部材がステンレス又はニッケルからなる、請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学測定用セルと、
前記光学測定用セルに光を照射する光照射部と、
前記光学測定用セルを透過した光を検出する光検出部と、
前記光検出部により得られた光強度信号を用いて前記試料中の成分濃度を算出する濃度算出部とを備える、光学分析装置。
【請求項5】
光が透過する透光窓を有し、内部に試料が導入される光学測定用セルの製造方法であって、
前記透光窓が、窓材と、前記窓材を支持するフランジ部材とを備え、前記窓材の熱膨張係数に対する前記フランジ部材の熱膨張係数の比率が、0.5以上、1.5倍以下のものにおいて、
前記窓材と前記フランジ部材とを原子拡散接合させることを特徴とする光学測定用セルの製造方法。
【請求項6】
内部に試料が導入される光学測定用セルに用いられる窓形成部材であって、
光が透過する透光窓を形成する窓材と、
金属薄膜を介して前記窓材が接合されたフランジ部材とを備え、
前記窓材の熱膨張係数に対する前記フランジ部材の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下であることを特徴とする窓形成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定用セル、及び、当該光学測定用セルを用いた光学分析装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばNDIRなどの光学分析装置に用いられる光学測定用セルは、特許文献1に示すように、セル本体に窓材を有する窓形成部材を取り付ける構成のものが考えられる。
【0003】
この窓形成部材において窓材を気密に固定する構造としてOリングを用いた場合には、わずかではあるがガスがOリングとシール箇所との隙間から又はOリング自体を透過して漏れてしまい、高気密のシールができない。また、ガスが反応性を有するものの場合には、当該ガスによってOリングが劣化することもある。
【0004】
このOリングに代えてメタルOリングを用いることも考えられるが、この場合には、シール時の線荷重が小さいと一時的にはシール性を保てても、熱サイクルが繰り返されるとリークに至る。一方、線荷重を大きくすると、窓材が割れてしまう。
【0005】
そこで、気密性を担保する構造として、図7に示すように、窓材の平面部(主面)にフランジ部材に形成した接合部を接合させる構造が考えられている。
【0006】
そして、この構造の接合部分には、非常に低いリークレートが要求されるだけでなく、プロセス中の温度(200℃)に耐えられる耐熱性をも求められ、しかも製造過程における窓材の割れをも防ぐ必要があるなど、種々の性能が要求される。
【0007】
このような中で、本願発明者は、窓材をフランジ部材の接合部に気密に接合する方法として、例えば接着剤やろう付けを検討したものの、何れの方法も要求される種々の性能を全て満たすことは極めて困難であるとの結論に到った。
【0008】
そこで、本願発明者はさらなる鋭意検討を重ねた結果、窓材と接合部とを原子拡散接合により接合することで、要求される種々の性能を全て満たし得る可能性を見出した。
【0009】
しかしながら、フランジ部材として例えばステンレス鋼からなるものを用いて、窓材として例えばZnSeからなるものを用いる場合など、フランジ部材と窓材との熱膨張係数の差が大きいと、例えばプロセス中の熱影響により窓材が撓んだり、フランジ部材が熱変形したりして、窓材が割れてしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-40655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、気密性や耐熱性等の要求される種々の性能を満たす光学測定用セルを原子拡散接合により製造するうえで、窓材の割れを防ぐことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る光学測定用セルは、光が透過する透光窓を有し、内部に試料が導入される光学測定用セルであって、前記透光窓を形成する窓材と、金属薄膜を介して前記窓材が接合されたフランジ部材とを備え、前記窓材の熱膨張係数に対する前記フランジ部材の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下であることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成された光学測定用セルによれば、フランジ部材に金属膜を介して窓材が接合されており、言い換えれば、フランジ部材に窓材が原子拡散接合されているので、これらの間に要求される気密性や耐熱性等の種々の性能を満たすことができる。
しかも、窓材の熱膨張係数に対するフランジ部材の熱膨張係数の比率が0.5倍以上、1.5倍以下であり、両部材の熱膨張係数が近いことから、窓材の割れを防ぐことができる。
【0014】
具体的な実施態様としては、前記窓材がセレン化亜鉛又はサファイアからなり、前記フランジ部材がチタン又はステンレスインバーからなる態様や、前記窓材がフッ化バリウムからなり、前記フランジ部材がステンレス又はニッケルからなる態様を挙げることができる。なお、窓材として、セレン化亜鉛又はフッ化バリウムからなるものを用いる態様は、長波長域の光(例えば7μm以上の赤外線)を用いた分析に資する。
【0015】
また、本発明に係る光学分析装置は、上述した光学測定用セルと、前記光学測定用セルに光を照射する光照射部と、前記光学測定用セルを透過した光を検出する光検出部と、前記光検出部により得られた光強度信号を用いて前記試料中の成分濃度を算出する濃度算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明に係る光学測定用セルの製造方法は、光が透過する透光窓を有し、内部に試料が導入される光学測定用セルの製造方法であって、前記透光窓が、窓材と、前記窓材を支持するフランジ部材とを備え、前記窓材の熱膨張係数に対する前記フランジ部材の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下のものにおいて、前記窓材と前記フランジ部材とを原子拡散接合させることを特徴とする方法である。
【0017】
加えて、本発明に係る窓形成部材は、内部に試料が導入される光学測定用セルに用いられる窓形成部材であって、光が透過する透光窓を形成する窓材と、金属薄膜を介して前記窓材が接合されたフランジ部材とを備え、前記窓材の熱膨張係数に対する前記フランジ部材の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下であることを特徴とするものである。
【0018】
これらの本発明に係る光学分析装置、光学測定用セルの製造方法、及び窓形成部材によれば、上述した光学測定用セルと同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、気密性や耐熱性等の要求される種々の性能を満たす光学測定用セルを原子拡散接合により製造しつつも、窓材の割れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るガス分析装置の全体模式図である。
図2】同実施形態の窓形成部材の構造を示す(a)斜視図、及び(b)正面図である。
図3】同実施形態の窓形成部材の構造を示す断面図である。
図4】同実施形態の窓形成部材の形成方法の一例を示す模式図である。
図5】同実施形態の窓形成部材を用いた実験結果を示す写真。
図6】その他の実施形態の窓形成部材を用いた実験結果を示す写真。
図7】従来の窓形成部材の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係るガス分析装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
<1.全体構成>
本実施形態のガス分析装置100は、例えば非分散型赤外線吸収法(NDIR)を用いて試料ガス中の成分を分析するものである。なお、試料ガスとしては、半導体製造プロセスに用いられる材料ガスや内燃機関から排出される排ガス等が考えられる。
【0023】
具体的にガス分析装置100は、図1に示すように、試料ガスが導入される光学測定用セル2と、当該光学測定用セル2に赤外光を照射する光照射部3と、光学測定用セル2を通過した赤外光を検出する光検出部4と、光検出部4により得られた光強度信号を用いて試料ガス中の成分濃度を算出する濃度算出部5とを備えている。
【0024】
光学測定用セル2は、赤外光が透過する一対の透光窓W1、W2を有し、導入ポートP1から試料ガスが導入されて、導出ポートP2から試料ガスが導出されるフローセルタイプのものである。
【0025】
具体的に光学測定用セル2は、導入ポートP1及び導出ポートP2が設けられたセル本体21と、セル本体21に固定されるとともに、透光窓W1、W2を形成する窓材221を有した窓形成部材22とを備えている。なお、光学測定用セル2の窓形成部材22の詳細構造は、後述する。
【0026】
光照射部3は、光学測定用セル2に赤外光を照射するものであり、例えば赤外線ランプである。その他、赤外光を射出するLEDであっても良い。この光照射部3から射出された赤外光は、光学測定用セル2の一方の透光窓W1を通って、光学測定用セル2の内部空間を通過し、他方の透光窓W2を通って、光検出部4により検出される。
【0027】
光検出部4は、光学測定用セル2を通過した赤外光を検出するものであり、光学測定用セル2の他方の透光窓W2から出た赤外光を検出する光検出器41と、他方の透光窓W2及び光検出器41の間の光路上に設けられ、赤外光のうち一部の波長のみを通過させる波長選択フィルタ42とを有している。光検出器41により得られた光強度信号は濃度算出部5に出力される。
【0028】
濃度算出部5は、光検出器41により得られた光強度信号を用いて試料ガス中の所定成分の濃度を算出するものである。具体的に濃度算出部5は、光強度信号から吸光度を演算し、当該吸光度と予め作成されメモリに記録された検量線とに基づいて試料ガス中の所定成分の分圧を求める。そして、濃度算出部5は、光学測定用セル2又はその前後の配管に設けられた圧力計(不図示)によって測定された光学測定用セル2内の試料ガスの全圧に基づいて、所定成分の濃度(=所定成分の分圧/試料ガスの全圧)を算出する。なお、濃度算出部5は、例えばCPU、メモリ、AD変換器、入出力インターフェース等からなるコンピュータにより、その機能が発揮される。
【0029】
<2.光学測定用セル2の窓形成部材22の詳細構造>
次に、光学測定用セル2の窓形成部材22の詳細構造について説明する。
なお、一方の透光窓W1を形成する窓形成部材22の詳細構造と、他方の透光窓W2を形成する窓形成部材22の詳細構造とは同一又は類似しているので、以下では、一方の透光窓W1を形成する窓形成部材22の詳細構造を代表して説明する。
【0030】
窓形成部材22は、図2及び図3に示すように、透光窓W1を形成する平板状の窓材221と、当該窓材221が接合されることにより窓材221を支持するフランジ部材222とを有しており、フランジ付き観察窓とも称されるものである。なお、ここでいう平板状とは、全く曲がりのない平板のみならず、球面又は非球面の平凸のレンズ形状やウエッジ角度の付いたくさび形状なども含む概念である。
【0031】
窓材221は、赤外光を透過させる材質から形成されており、平面視において円形状をなす平板である。本実施形態の窓材221は、7μm以上の長波長の赤外光を透過するものであり、この実施形態ではセレン化亜鉛(ZnSe)から形成されている。
【0032】
フランジ部材222は、特に図3に示すように、窓材221を支持する筒状の接合支持部222aと、窓材221を取り囲むように接合支持部222aに連続して設けられたフランジ部222bとを有している。また、フランジ部材222の中央部には、窓材221を通過した赤外光が通過する通過孔H1が形成されている。さらに、本実施形態では、接合支持部222a及びフランジ部222bは一体形成されている。
【0033】
接合支持部222aは、窓材221の主面(平面部)を支持するものであり、本実施形態では円筒形状をなすものである。
【0034】
フランジ部222bは、その一方の面に接合支持部222aが設けられており、本実施形態では円環形状をなすものである。このフランジ部222bは、例えば金属製のガスケット(不図示)を介してセル本体21に取り付けられるものであり、フランジ部222bにおけるセル本体21への取付面には、ICF規格のナイフエッジ部222xが形成されている。また、フランジ部222bには、セル本体21にネジ固定するための貫通孔222hが周方向に複数形成されている。
【0035】
上述した構成において、窓材221とフランジ部材222との間を気密に接合する方法としては、これらの部材を例えば接着剤、ろう付け等により接合する方法が考えられる。
しかしながら、接着剤を用いる場合は、接着剤からの脱ガス、腐食性ガスによる劣化、窓材221とフランジ部材222との熱膨張率の差による窓材221の割れなどが懸念される。
また、ろう付けをする場合は、ろう材に銀や銅などが含まれていると、半導体プロセスにおけるメタルコンタミとなるので使用することができず、そうするとセレン化亜鉛からなる窓材221に適するろう材が無い。仮に、使用可能なろう材があったとしても、接着剤と同様に窓材221の割れが懸念される。
【0036】
そこで、本実施形態の窓形成部材22は、窓材221とフランジ部材222とを原子拡散接合により接合することで構成されている。
【0037】
原子拡散接合とは、2つの部材それぞれの接合面の間に金属膜を介在させ、これらの部材を加圧することにより接合する方法である。この実施形態では、窓材221及びフランジ部材222は、例えば数百nm程度のAu膜等の金属薄膜Mを介して加圧接合されている。
【0038】
ところで、上述したように窓材221とフランジ部材222とを原子拡散接合してなる窓形成部材22は、例えばプロセス中の熱影響を受けることから、窓材221の熱膨張係数と、フランジ部材222の熱膨張係数との差が大きい場合、窓材221が撓んだりフランジ部材222が熱変形したりして、窓材221の割れが生じ得る。
【0039】
そこで、本実施形態の窓形成部材22は、窓材221の熱膨張係数に対するフランジ部材222の熱膨張係数の比率が、0.5倍以上、1.5倍以下となるように構成されており、より好ましくは、この比率が0.66倍以上、1.5倍以下である。
なお、以下で述べる熱膨張係数は、温度を変化させた際の試料の長さを測定することで得られた値や、例えば理科年表などに記載されている公知の値や、例えば下記の規格に基づいて測定した値などである。
・JIS K 0129 熱分析通則
【0040】
より具体的に説明すると、本実施形態の窓材221は、上述した通り、セレン化亜鉛(ZnSe)からなるものであり、その熱膨張係数は7.1×10-6/Kであることから、上述した比率に鑑みて、本実施形態のフランジ部材222は、チタンからなるものであり、その熱膨張係数は8.9×10-6/Kである。
なお、フランジ部材222として、熱膨張係数が11.3×10-6/Kのハステロイを用いた場合、窓材221の割れが生じるといった実験結果が得られている。
【0041】
次に、上述した窓材221及びフランジ部材222の接合方法の一例について図4を参照しながら説明する。
【0042】
まず、図4に示すように、窓材221及びフランジ部材222の対向面である接合面T1それぞれに、金属薄膜Mを形成する(S1)。本実施形態では、金属薄膜Mを、接合面T1にスパッタして形成する。
【0043】
そして、金属薄膜Mが設けられた接合面T1を互いに対面させ(S2)、窓材221及びフランジ部材222を対向する向きに加圧することにより、窓材221及びフランジ部材222を原子拡散接合(加圧接合)する(S3)。
【0044】
このようにして、窓材221及びフランジ部材222が原子拡散接合されて、窓形成部材22が構成される。
【0045】
このように構成された窓形成部材22において、図3に示すように、窓材221と接合支持部222aとの間の接合部分に、フランジ部222bの熱膨張による熱応力が加わりにくくするように構成してある。
具体的には、フランジ部222bにおいて接合支持部222a側の面(取付面とは反対側の面)には、接合支持部222aを取り囲むように環状の溝222Mが形成されている。ここでは、溝222Mは、接合支持部222aと同軸上に形成された円環状をなすものである。この溝222Mの深さは、例えば、フランジ部222bの板厚の半分以上とすることが考えられる。
【0046】
ここで、フランジ部材222における溝222Mの内側に位置する内側壁部222Kの壁厚(肉厚)は、接合支持部222aの壁厚(肉厚)よりも小さくなるように構成されている。このように、接合支持部222aの壁厚を大きくし、内側壁部222Kの壁厚を小さくすることにより、窓材221と接合支持部222aとの間の接合面積を大きくしつつ、窓材221と接合支持部222aとの間の接合部分に対してフランジ部222bの熱膨張による熱応力が加わりにくくすることができる。
【0047】
さらに、このように溝222Mを設けることにより、フランジ部材222を例えばネジ等で別部材に取り付ける際に生じるフランジ部材222の歪みを、窓材221と接合支持部222aとの間の接合部分に伝わりにくくすることもできる。
【0048】
<3.本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のガス分析装置100によれば、フランジ部材222に窓材221が原子拡散接合されているので、これらの間に要求される気密性や耐熱性等の種々の性能を満たすことができる。
しかも、窓材221の熱膨張係数に対するフランジ部材222の熱膨張係数の比率が近いので、窓材221の割れを防ぐことができる。
【0049】
ここで、図5に示す写真は、窓材をフランジ部材に120℃で原子拡散接合した後、室温に冷却した場合に、窓材に割れが生じるか否かを実験した結果を示すものである。
この実験結果から分かるように、窓材がセレン化亜鉛からなり、フランジ部材がハステロイからなる場合(図5の左側)は、これらの材料の熱膨張係数の差に起因して、窓材に割れが生じているのに対して、本実施形態のように、窓材がセレン化亜鉛からなり、フランジ部材がチタンからなる場合(図5の右側)は、窓材に割れが生じていないことが示されている。
【0050】
また、窓材221が、熱膨張率の低いセレン化亜鉛からなるものなので、長波長域(例えば7μm以上)の分析に資する。
【0051】
<4.その他の実施形態>
例えば、窓形成部材22は、前記実施形態では、セレン化亜鉛からなる窓材221と、チタンからなるフランジ部材222とを用いて構成されていたが、セレン化亜鉛からなる窓材221と、ステンレスインバーからなるフランジ部材222とを用いて構成されていても良い。なお、ステンレスインバーの熱膨張係数は5.0×10-6/Kである。これらの材料の組み合わせを採用した場合においても、図6に示すように、窓材には割れが生じていないことが分かる。
【0052】
また、窓形成部材22は、サファイアからなる窓材221と、チタン又はステンレスインバーからなるフランジ部材222とを用いて構成されていても良い。
【0053】
さらに、窓形成部材22は、フッ化バリウム(BaF2)からなる窓材221と、ステンレス又はニッケルからなるフランジ部材222とを用いて構成されていても良い。なお、フッ化バリウム(BaF2)の熱膨張係数は18.1×10-6/Kであり、ステンレス(SUS316)の熱膨張係数は16.0×10-6/Kであり、ニッケルの熱膨張係数は13.3×10-6/Kである。
【0054】
セレン化亜鉛の透過波長は0.5~22μmであり、フッ化バリウムの透過波長は0.15~12μmであり、何れも長波長(例えば7μm以上)の赤外線を透過するものであり、長波長域の分析に資する。
【0055】
前記実施形態では、窓材221とフランジ部材222とが原子拡散接合されていたが、これらの部材は、例えば溶接、半田付け、ロウ付け、接着剤、陽極接合などにより接合されていても良いし、それぞれの部材をイオンミリング等により界面活性化させて接合する表面活性化法を適用しても良い。
【0056】
さらに、前記実施形態では、原子拡散接合に用いる金属薄膜MとしてAu薄膜を採用していたが、金属薄膜としてはこれに限らず、例えば、AlやCrなどからなる薄膜であっても良い。
【0057】
前記実施形態の光学測定用セル2は、一対の透光窓W1、W2を有する構成であったが、1つの透光窓を有する構成としても良い。この場合、1つの透光窓において光の入射及び出射が行われる。また、光学測定用セル2は、3つ以上の透光窓を有する構成としても良い。
【0058】
前記実施形態では、接合支持部222aとフランジ部222bとは一体形成されるものであったが、それらを別部品としても良い。
【0059】
前記実施形態の窓材221は平面視において円形状をなすものであったが、例えば平面視において矩形状をなすなどのその他の形状であっても良い。
【0060】
加えて、前記実施形態のガス分析装置は、非分散型赤外吸収法(NDIR)を用いたものであったが、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いたものであっても良いし、赤外光以外の光を用いた光学分析法を用いたものであっても良い。また、本発明の光学分析装置は、試料としてガスを分析する他に、液体を分析するものであっても良い。
【0061】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0062】
100・・・ガス分析装置(光学分析装置)
2・・・光学測定用セル
3・・・光照射部
4・・・光検出部
5・・・濃度算出部
W1、W2・・・透光窓
221・・・窓材
222a・・・接合支持部
222b・・・フランジ部
T1・・・接合面
M・・・金属薄膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7