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特開2023-103823粗酸化亜鉛の製造方法、及び、煙灰処理方法
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  • 特開-粗酸化亜鉛の製造方法、及び、煙灰処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023103823
(43)【公開日】2023-07-27
(54)【発明の名称】粗酸化亜鉛の製造方法、及び、煙灰処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 19/34 20060101AFI20230720BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20230720BHJP
   C22B 3/00 20060101ALI20230720BHJP
   C22B 5/02 20060101ALI20230720BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20230720BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20230720BHJP
【FI】
C22B19/34
C22B1/02
C22B3/00
C22B5/02
C22B7/02 Z
C01G9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004576
(22)【出願日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高谷 悟
【テーマコード(参考)】
4G047
4K001
【Fターム(参考)】
4G047AA02
4G047AB01
4G047AC03
4G047AD03
4K001AA05
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA20
4K001AA24
4K001AA30
4K001BA14
4K001CA16
4K001CA23
4K001DA06
4K001GA07
4K001HA01
(57)【要約】
【課題】鉄鋼ダストを原材料として用いる粗酸化亜鉛の製造において、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、銅製錬炉で発生する亜鉛及び銅を含有する煙灰を、原材料の一部として有効に利用することができる酸化亜鉛の製造方法を提供すること。
【解決手段】鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る、還元焙焼工程ST21と、粗酸化亜鉛ダストに湿式処理を行って粗酸化亜鉛ケーキを得る、湿式工程ST22と、粗酸化亜鉛ケーキを焼成して、粗酸化亜鉛焼鉱を得る、乾燥加熱工程ST23と、を備える、粗酸化亜鉛の製造方法であって、乾燥加熱工程ST23において、粗酸化亜鉛ケーキと共に、銅製錬炉で発生して回収された煙灰を焼成する、粗酸化亜鉛の製造方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る、還元焙焼工程と、
前記粗酸化亜鉛ダストに湿式処理を行って粗酸化亜鉛ケーキを得る、湿式工程と、
前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成して、粗酸化亜鉛焼鉱を得る、乾燥加熱工程と、
を備える、粗酸化亜鉛の製造方法であって、
前記乾燥加熱工程において、前記粗酸化亜鉛ケーキと共に、銅製錬炉で発生して回収された煙灰を焼成する、
粗酸化亜鉛の製造方法。
【請求項2】
鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る、還元焙焼工程と、
前記粗酸化亜鉛ダストに湿式処理を行って粗酸化亜鉛ケーキを得る、湿式工程と、
前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成して、粗酸化亜鉛焼鉱を得る、乾燥加熱工程と、
を備える、粗酸化亜鉛の製造方法であって、
前記乾燥加熱工程において、前記粗酸化亜鉛ケーキと共に、亜鉛と銅を含み、銅の含有率が10%以上である煙灰を焼成する、
粗酸化亜鉛の製造方法。
【請求項3】
前記銅製錬炉が、銅製錬転炉である、
請求項1に記載の粗酸化亜鉛の製造方法。
【請求項4】
前記煙灰は、鉛の含有率が12%以上で、亜鉛の含有率が4%以上である、
請求項1から3の何れかに記載の粗酸化亜鉛の製造方法。
【請求項5】
銅製錬炉で発生して回収された煙灰であって、鉛の含有率が12%以上である煙灰を処理する煙灰処理方法であって、
前記煙灰を粗酸化亜鉛製造プロセスにおける乾燥加熱工程に投入する二次原材料として用いる煙灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗酸化亜鉛の製造方法、及び、煙灰の処理方法に関する。本発明は、詳しくは、銅製錬炉で発生する煙灰を含む原料から粗酸化亜鉛を製造する方法、及び、銅製錬炉で発生する、亜鉛及び銅を含有する煙灰の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅製錬炉で発生する排ガスから回収されるに煙灰は、銅精鉱に含まれる銅の他、揮発の容易な亜鉛、ビスマス等が多く含まれている。一般的には、銅製錬工程で発生する煙灰は、製錬目的の金属を含むため、再び、銅製錬炉へ繰り返して処理される。
【0003】
しかしながら、上記の煙灰はビスマスを含有するため、これを銅製錬炉に繰り返すと、銅製錬工程で得られる銅アノード中のビスマス等の不純物品位が増加し、次工程である銅精製工程(電解工程)において得られる電気銅の不純物品位が増加する問題が顕在化する。
【0004】
この問題について、特許文献1には、非鉄金属製錬において発生して回収される高濃度で鉛を含有する煙灰を、塩素を含有する鉄鋼ダストとの混合ペレットとしてから、粗酸化亜鉛製造プロセスにおける還元焙焼工程に投入することにより、従来の還元焙焼工程を有する鉄鋼ダストの処理方法と同様の方法で、煙灰を処理する方法が開示されている。
【0005】
ここで、粗酸化亜鉛の製造においては、多くの場合に原材料として鉄鋼ダストが用いられている。そして、この鉄鋼ダストを還元焙焼する工程で副産物として得られる還元鉄ペレットは、製鉄メーカーにおいて再び鉄源としてリサイクルされている。しかしながら、上記のように還元焙焼工程で処理される煙灰が、特に「銅」を含んでいる場合には、この銅が、上記の還元鉄ペレットに分配されてしまうことが新たな問題となる。「銅」は、還元鉄ペレットを用いる製鉄メーカーが、鉄源への混入を最も厳しく制限している不純物の一つであるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-139618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鉄鋼ダストを原材料として用いる粗酸化亜鉛の製造において、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、銅製錬炉で発生する亜鉛及び銅を含有する煙灰を、原材料の一部として有効に利用することができる酸化亜鉛の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来、一次原材料である鉄鋼ダストと共に粗酸化亜鉛の製造プロセス中の上流側工程である還元加熱工程に投入していた煙灰を、二次原材料として下流側の工程である乾燥加熱工程に直接投入するプロセスとすることにより上記課題を解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的に、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る、還元焙焼工程と、前記粗酸化亜鉛ダストに湿式処理を行って粗酸化亜鉛ケーキを得る、湿式工程と、前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成して、粗酸化亜鉛焼鉱を得る、乾燥加熱工程と、を備える、粗酸化亜鉛の製造方法であって、前記乾燥加熱工程において、前記粗酸化亜鉛ケーキと共に、銅製錬炉で発生して回収された煙灰を焼成する、粗酸化亜鉛の製造方法。
【0010】
(1)の粗酸化亜鉛の製造方法によれば、鉄鋼ダストを原材料として用いる粗酸化亜鉛の製造において、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、銅を含有する煙灰を、原材料の一部として有効に利用することができる。そのため、還元鉄ペレットを製鉄メーカー向けの鉄源として出荷するに際して、銅品位が高いことにより出荷を見送る可能性を、大幅に低減することができる。
【0011】
(2) 鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛ダストを得る、還元焙焼工程と、前記粗酸化亜鉛ダストに湿式処理を行って粗酸化亜鉛ケーキを得る、湿式工程と、前記粗酸化亜鉛ケーキを焼成して、粗酸化亜鉛焼鉱を得る、乾燥加熱工程と、を備える、粗酸化亜鉛の製造方法であって、前記乾燥加熱工程において、前記粗酸化亜鉛ケーキと共に、亜鉛と銅を含み、銅の含有率が10%以上である煙灰を焼成する、粗酸化亜鉛の製造方法。
【0012】
(2)の粗酸化亜鉛の製造方法によれば、粗酸化亜鉛の製造現場において、亜鉛と銅を含み、特に銅の含有率が高い煙灰を原材料として用いる場合にも、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、銅を含有する煙灰を、原材料の一部として有効に利用することができる。
【0013】
(3) 前記銅製錬炉が、銅製錬転炉である、(1)に記載の粗酸化亜鉛の製造方法。
【0014】
(3)の粗酸化亜鉛の製造方法によれば、(1)に記載の粗酸化亜鉛の製造方法において、熔体から揮発して飛散する、沸点の比較的低い、鉛、亜鉛、ビスマス等を多く含む銅製錬転炉で発生する煙灰を用いることにより、鉛、亜鉛、ビスマスをより効率良く回収することができる。
【0015】
(4) 前記煙灰は、鉛の含有率が12%以上で、亜鉛の含有率が4%以上である、(1)から(3)の何れかに記載の粗酸化亜鉛の製造方法。
【0016】
(4)の粗酸化亜鉛の製造方法によれば、(1)から(3)の何れかに記載の粗酸化亜鉛の製造方法において、目的金属である、亜鉛及び銅、並びに鉛を、高濃度で含有する煙灰を用いることにより、亜鉛及び銅、並びに鉛を、より効率良く、回収することができる。
【0017】
(5) 銅製錬炉で発生して回収された煙灰であって、鉛の含有率が12%以上である煙灰を処理する煙灰処理方法であって、前記煙灰を粗酸化亜鉛製造プロセスにおける乾燥加熱工程に投入する二次原材料として用いる煙灰処理方法。
【0018】
(5)の煙灰処理方法によれば、銅製錬炉で発生した煙灰であって高濃度で鉛を含有する煙灰を、鉄鋼ダストを原材料として用いる粗酸化亜鉛の製造において、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、有効に利用することができる。そのため、還元鉄ペレットを製鉄メーカー向けの鉄源として出荷するに際して、銅品位が高いことにより出荷を見送る可能性を、大幅に低減することができる。又、煙灰を、乾燥加熱工程で処理するため、上流側の工程である、還元焙焼工程、湿式工程を経る必要が無く、工程を削減することにより、煙灰処理にかかるコストを圧縮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鉄鋼ダストを原材料として用いる粗酸化亜鉛の製造において、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、銅を含有する煙灰を、原材料の一部として有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】銅製錬において発生する煙灰を二次原材料として用いる本発明の粗酸化亜鉛の製造方法の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施態様について適宜図面を参照しながら説明する。図1は、銅製錬において発生する煙灰を原材料の一部として用いる本発明の粗酸化亜鉛の製造方法の流れを示すフロー図である。
【0022】
<粗酸化亜鉛の製造方法>
本発明の粗酸化亜鉛の製造方法は、鉄鋼業における高炉や電気炉等から発生する亜鉛を含有する鉄鋼ダストを原材料とし、当該原材料から不純物を除去して製品亜鉛の原料となる亜鉛品位65%程度の粗酸化亜鉛を製造するプロセスである。
【0023】
本発明の粗酸化亜鉛の製造方法は、図1に基本的な流れを示す従来公知の粗酸化亜鉛製造プロセスP2を行うためのプロセスである。本発明の粗酸化亜鉛の製造方法においても、基本的な工程の流れは図1に示す従来方法と同様である。
【0024】
但し、本発明の粗酸化亜鉛の製造方法は、図1に示すように、銅製錬プロセスP1において銅製錬炉で発生して回収された煙灰等、亜鉛及び銅を少なくとも含有する煙灰(本明細書において「亜鉛・銅含有煙灰」とも言う。)を、二次原材料の一部として、粗酸化亜鉛製造プロセスP2の下流側の一工程である乾燥加熱工程ST23に直接投入することとした点を従来とは異なる新たな特徴とするプロセスである。
【0025】
本発明は、銅製錬において発生する「亜鉛・銅含有煙灰」を、粗酸化亜鉛製造プロセスP2における乾燥加熱工程ST23に投入することによって、副産物であり鉄源として利用可能な還元鉄ペレットへの銅の混入を回避しながら、高い回収率で亜鉛を回収して、上記の煙灰を二次原材料として有効利用することができるという点において、優れた粗酸化亜鉛の製造方法である。
【0026】
又、本発明は、銅製錬において発生する「亜鉛・銅含有煙灰」を、既存の粗酸化亜鉛製造プロセス用のロータリーキルン等、新たな設備投資を行うまでもなく、既存設備において低コストで処理ができるという点において、優れた煙灰の処理方法でもある。
【0027】
<銅製錬プロセスP1>
本発明の粗酸化亜鉛の製造方法において二次原材料として用いる「亜鉛・銅含有煙灰」の供給源となる銅製錬プロセスP1は、銅精鉱から、銅品位98%前後の粗銅を得て最終的に電気銅を得るプロセスである。この銅製錬プロセスP1においては、一般的には、銅製錬の原料である銅精鉱が、先ず、自熔炉で処理されることで、銅品位60%前後のマットとスラグに分離される。ここで得られたマットは次に設けられている転炉工程に送られ、転炉で銅品位98%前後の粗銅となる。この後、次に設けられている精製炉で銅品位99%前後の精製粗銅となり、次に設けられている精製工程で処理するために、アノードとして鋳造される。精製工程では、このアノードから電気銅が得られる。
【0028】
上述の自熔炉、転炉、精製炉では、それぞれ組成や性状の異なる煙灰が発生する。自熔炉で発生する煙灰は、フラッシュ・スメルティングであるため、精鉱等のキャリーオーバーも含まれ、銅品位が高いため、自熔炉へ繰り返し処理することが好ましい。又、精製炉で発生する煙灰は量そのものが非常に少ない。これに対して、転炉で発生する煙灰はバス・スメルティングであるため、熔体から揮発して飛散する沸点の比較的低い、鉛、亜鉛、ビスマス等を多く含む。従って、本発明の粗酸化亜鉛の製造方法において、原材料の一部とする「亜鉛・銅含有煙灰」(或いは、本発明の煙灰の処理方法によって処理対象とする「亜鉛・銅含有煙灰」)は、上記の様々な煙灰のうち、転炉から得られる、鉛、亜鉛品位の高い煙灰とすることが特に好ましい。或いは、本発明の粗酸化亜鉛の製造方法においては、このように銅製錬プロセスの転炉(本明細書において「銅製錬転炉」とも言う)で発生した煙灰を、銅製錬工程内で繰り返し処理した後に得られる、更に、鉛・亜鉛品位の増加した煙灰を用いることもできる。
【0029】
又、本発明の粗酸化亜鉛の製造方法において、原材料の一部とする「亜鉛・銅含有煙灰」(或いは、本発明の煙灰の処理方法によって処理対象とする「亜鉛・銅含有煙灰」)が、亜鉛と銅を含み、銅の含有率が10%以上である場合に、従来技術に対するより顕著な優位性を発揮する。従来においては、このような銅の含有量の大きな煙灰を用いた場合には、還元鉄ペレットへの銅成分の混入により、鉄源としてのリサイクル利用が阻害されるリスクがあったが、上流側工程での煙灰の処理を回避して、下流側の乾燥加熱工程以降で煙灰処理を集中的に行うようにした本発明によれば、そのようなリスクは完全に回避することができる。
【0030】
又、本発明の粗酸化亜鉛の製造方法又は煙灰処理方法においては、上記の「亜鉛・銅含有煙灰」は、鉛の含有率が12%以上で、亜鉛の含有率が4%以上であることが好ましい。高濃度の鉛を含有する煙灰は、銅製錬の現場では繰り返し処理しても、再度揮発してしまい、工程内で循環する物量が大幅に増加してしまう。一方で、このような鉛含有量の大きい「亜鉛・銅含有煙灰」を本発明の製造方法・処理方法に投入することにより、粗酸化亜鉛の製造プロセス、及び、これに引き続く鉛・亜鉛の製造プロセスにおいて、鉛及び亜鉛、並びに銅を、より効率良く、回収することができる。
【0031】
<粗酸化亜鉛製造プロセスP2>
粗酸化亜鉛製造プロセスP2は、以下に詳細を説明する、還元焙焼工程ST21、湿式工程ST22、及び、乾燥加熱工程ST23が順次行われるプロセスである。
【0032】
[還元焙焼工程ST21]
還元焙焼工程ST21では、鉄鋼ダスト等の一次原材料を還元雰囲気中で適当な温度と滞留時間を選んで焙焼することにより、亜鉛、鉛等を還元揮発させて分離し、更に再酸化させることにより粗酸化亜鉛ダストを得る工程である。又、その一方で、この工程では、鉄を固体の還元鉄ペレットとして回収する。この工程を行う還元焙焼炉としてはロータリーキルンを好適に用いることができる。
【0033】
[湿式工程ST22]
湿式工程ST22は、還元焙焼工程ST21を経て再酸化され、酸化亜鉛及び酸化鉛を含む粗酸化亜鉛ダストから、湿式処理により、更に、塩素、フッ素等の他の残存不純物を除去して粗酸化亜鉛の脱水ケーキ(本明細書において「粗酸化亜鉛ケーキ」とも言う)を得る工程である。湿式工程ST22は、従来公知の方法を用いて行なうことができる。
【0034】
[乾燥加熱工程ST23]
乾燥加熱工程ST23は、湿式工程ST22を経た粗酸化亜鉛ケーキを焼成して粗酸化亜鉛焼鉱を得る工程である。この工程により、亜鉛品位65%程度の粗酸化亜鉛の焼鉱(本明細書において「粗酸化亜鉛焼鉱」とも言う)を得ることができる。
【0035】
乾燥加熱工程ST23は、ロータリーキルンを使用し、このロータリーキルンの装入端から原料である粗酸化亜鉛ケーキ、及び、その他の二次原材料を装入する。ロータリーキルンの排出端側にはバーナーが設けられており、このバーナーにより、ロータリーキルン内の原料を乾燥、加熱、焼成し、排出端側では800℃から900℃程度に焼成された粗酸化亜鉛焼鉱を得る。
【0036】
本発明の粗酸化亜鉛の製造方法において、原材料の一部として用いられる上述の銅を含有する煙灰は、この乾燥加熱工程ST23に二次原材料の一部として投入される。
【0037】
尚、煙灰を処理するにあたり、この煙灰に多く含まれる、銅、錫、ビスマスについて、得られる粗酸化亜鉛中の品位を不純物バランスから予想し、粗酸化亜鉛の製造工程の更に下流側の工程として設けられている鉛・亜鉛製錬の脱銅工程で回収されることを前提とした工程基準内となるように、煙灰の処理量を決める。又、乾燥加熱工程ST23において得られた粗酸化亜鉛についても、一定の頻度で分析を行い、上記基準内であることを確認する。
【0038】
又、上記の煙灰を、そのままの形状で乾燥加熱工程に投入すると搬送設備での発塵やロータリーキルンからの排ガスと共にキャリーオーバーしてロータリーキルンに続けて設けられている煙道や洗浄塔の多孔板に付着、これらを閉塞させてしまう。そこで、これを避けるために、煙灰を事前に造粒してペレット状にするか、或いは、事前に、乾燥加熱工程で処理される脱水ケーキ以外の澱物(水分20%~50%)等の原料とローダーで混練して処理することが好ましい。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例]
図1に示す流れで酸化亜鉛製造の試験操業を行った。二次原材料の一部として用いる煙灰としては、銅製錬工場で転炉において発生して回収された煙灰を用いた。この煙灰の組成は下記表1の通りであった。乾燥加熱工程では、上記煙灰を1t/日と、粗酸化亜鉛ケーキ170t/日を、温度800℃~900℃で乾燥、加熱して粗酸化亜鉛焼鉱を得た。粗酸化亜鉛焼鉱の銅品位は、0.21%、錫品位は0.09%、ビスマス品位は0.10%であり、鉛・亜鉛製錬原料として出荷した。又、銅、錫、ビスマスについては、粗酸化亜鉛の製造に続いて行われる、鉛・亜鉛製錬の脱銅工程において、分離・回収した。尚、還元焙焼工程では、鉄鋼ダスト200t/日を、温度1100℃~1200℃で還元焙焼して、酸化亜鉛を含む粗酸化亜鉛ダストと還元鉄ペレットを得て、製鉄メーカー向けの鉄源として出荷した。
【0041】
【表1】
【0042】
[比較例]
上記の煙灰を、従来プロセスと同様、鉄鋼ダスト等の原材料と共に、還元焙焼工程に投入して処理したことの他については、実施例と同一条件で試験操業を行った。還元焙焼工程では、上記煙灰を1t/日と、鉄鋼ダスト200t/日を、温度1100℃~1200℃で還元焙焼して、酸化亜鉛を含む粗酸化亜鉛ダストと還元鉄ペレットを得た。還元鉄ペレットの銅品位は、0.46%、錫品位は0.053%、ビスマス品位は0.092%であり、製鉄メーカー向けの鉄源としての出荷を見送った。
【0043】
本発明の粗酸化亜鉛の製造方法によれば、既存のプロセス及び設備の流用により、銅製錬において発生する亜鉛及び銅を含有する煙灰処理に要するコストを大幅に削減できる。又、銅による既存プロセスへの悪影響も防止できるため、既存の粗酸化亜鉛製造の操業において、還元鉄ペレットの品質も保持することができ、その上で、煙灰に含有される亜鉛及び銅、並びに鉛を高い回収率で回収することができることが分かる。
【符号の説明】
【0044】
P1 銅製錬プロセス
P2 粗酸化亜鉛製造プロセス
ST21 還元焙焼工程
ST22 湿式工程
ST23 乾燥加熱工程
図1