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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023010415
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】抵抗体、抵抗体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20230113BHJP
   H01C 17/12 20060101ALI20230113BHJP
   H01C 17/065 20060101ALI20230113BHJP
   H01C 17/08 20060101ALI20230113BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20230113BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230113BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20230113BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230113BHJP
   H01C 7/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01C7/00 324
H01C17/12
H01C17/065 100
H01C17/08
H01B1/20 C
H01B13/00 503Z
C23C14/08 H
C23C16/40
H01C7/00 400
H01C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114532
(22)【出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕二
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5E032
5E033
5E034
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA22
4K029BA43
4K029BC05
4K029CA06
4K029CA17
4K029DC03
4K029DC08
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA01
4K030BA42
4K030CA06
4K030CA18
4K030EA04
4K030FA10
4K030JA10
5E032BA07
5E032BB01
5E033AA12
5E033AA18
5E033AA23
5E033AA27
5E033BA03
5E033BC01
5E033BD01
5E034GA04
5E034GA05
5G301DA23
5G301DA29
5G301DA42
5G301DD09
5G301DE01
5G323AA03
(57)【要約】
【課題】鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体を提供することを目的とする。
【解決手段】一対の電極と、
前記一対の電極間に配置された抵抗膜と、を有し、
前記抵抗膜は、ガラスと、導電粒子と、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有する導電成分とを有しており、
前記抵抗膜中の前記導電成分の含有割合が質量割合で100ppm以上5000ppm以下であり、抵抗値が50Ω以上1000Ω以下である抵抗体を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記一対の電極間に配置された抵抗膜と、を有し、
前記抵抗膜は、ガラスと、導電粒子と、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有する導電成分とを有しており、
前記抵抗膜中の前記導電成分の含有割合が質量割合で100ppm以上5000ppm以下であり、抵抗値が50Ω以上1000Ω以下である抵抗体。
【請求項2】
前記抵抗膜は、走査型広がり抵抗顕微鏡法により抵抗値の分布を計測した場合に、前記導電粒子間に前記ガラスよりも抵抗値の小さい低抵抗領域を有する請求項1に記載の抵抗体。
【請求項3】
ガラス粒子の表面の少なくとも一部に、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有する導電成分を配置し、被覆付きガラス粒子を形成する被覆付きガラス粒子形成工程と、
導電粒子と、前記被覆付きガラス粒子とを混合し、抵抗膜用ペーストを調製するペースト調製工程と、
一対の電極間に前記抵抗膜用ペーストを塗布し、抵抗膜を形成する抵抗膜形成工程と、を有し、
前記抵抗膜中の前記導電成分の含有割合が質量割合で100ppm以上5000ppm以下であり、抵抗値が50Ω以上1000Ω以下である抵抗体の製造方法。
【請求項4】
前記被覆付きガラス粒子形成工程において、スパッタリング法、およびCVD法から選択された1種類以上の方法により、前記ガラス粒子の表面に前記導電成分を配置する請求項3に記載の抵抗体の製造方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の抵抗体の製造方法により得られた抵抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗体、抵抗体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の抵抗体を形成方法としては、抵抗ペーストを用いる厚膜方式と、膜形成材料を用いてスパッタリングなどにより成膜する薄膜方式と、がよく知られている。
【0003】
厚膜方式は、抵抗ペーストをセラミック基板上に印刷、焼成して抵抗体を形成するものであり、設備が安価で、生産性も高いことから、チップ抵抗器やハイブリッドICなどの抵抗体の製造に広範に利用されている。
【0004】
厚膜方式に用いる抵抗ペーストは、導電性粒子とガラスフリット、およびそれらを印刷に適したペースト状にするための有機ビヒクルから実質的に構成される。導電性粒子としては、二酸化ルテニウム(RuO)やパイロクロア型ルテニウム系酸化物(PbRu7-x、BiRu)が一般に使用されている。特許文献1によれば、導電性粒子としてRu系酸化物を使用することで、平方当り100オームよりも低い値から平方当り180000オームを超える高い値に至る抵抗領域に対して、1℃当り約0.01%以下のTCRをもつセラミック抵抗素子を提供できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、無機結合剤としてガラスフリットに相当するガラスを添加することが開示されており、ガラスとしては、珪酸鉛ガラスや、硼珪酸鉛ガラスなど鉛を多量に含むガラスを用いることが開示されている。
【0006】
ガラスフリットに硼珪酸鉛系ガラスが用いられるのは、Ru系酸化物との濡れ性が良く、基板と熱膨張係数の値が近く、焼成時の粘性などが適しているからである。(非特許文献1)
ところが、近年、電子機器から毒性のある鉛の使用を排除することが求められることにより、高抵抗領域の厚膜抵抗体用の導電粉としてルテニウム酸鉛粉に代わる、鉛を含有しない導電粉が望まれている。また、厚膜抵抗体から完全に鉛を排除するためには、同時に用いられるガラスフリットからも鉛を排除する必要がある。しかし、抵抗ペーストから鉛を全て排除した状態でも、抵抗温度係数等の電気特性について、良好な抵抗体とすることが求められている。
【0007】
特許文献3においては、導電物として、酸化イリジウム(IrO)を使用することが提案されている。導電粉として酸化イリジウム粉を用いた厚膜抵抗体形成用ペーストは特にルテニウム酸鉛粉に代わる鉛を含まない高抵抗領域の厚膜抵抗体形成用ペーストとして有用である。
【0008】
厚膜ではなく薄膜抵抗を用いて鉛フリー抵抗体を製造することも検討されている。
NiやCrの単層膜やNi-Crの合金膜が実用化されているが、金属膜は低抵抗であるため高抵抗の抵抗体が作成できない。
【0009】
特許文献4には塊状にて抵抗温度係数の大きさが異なる金属の2層以上の薄膜から成り、各々の薄膜は正負の抵抗温度係数を有し且つ該薄膜の膜厚と各々の膜厚比が制御されることによって所定の抵抗値と小さな抵抗温度係数を有することを特徴とする薄膜抵抗体が記載されている。
【0010】
しかし、上述のような金属薄膜を用いた抵抗体は、該金属薄膜を基板上に形成するため、ペースト材を用いることができないという問題がある。
【0011】
非特許文献2や特許文献5に示すように樹脂と導電性フィラーを用いた導電性接着剤や樹脂抵抗体の開発も進められているが抵抗温度係数が低い抵抗体は難しく、得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭54-1917号公報
【特許文献2】特開平6-45102号公報
【特許文献3】特開2007-277040号公報
【特許文献4】特公昭50-25149号公報
【特許文献5】特開2001-2892号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】M.Prudenziati J.Hormadaly 「Printed films」 2012 Woodhead Publishing limited Oxford
【非特許文献2】小日向茂 エレクトロニクス実装学会誌Vol .9 No.6(2006)pp495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明は、
一対の電極と、
前記一対の電極間に配置された抵抗膜と、を有し、
前記抵抗膜は、ガラスと、導電粒子と、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有する導電成分とを有しており、
前記抵抗膜中の前記導電成分の含有割合が質量割合で100ppm以上5000ppm以下であり、抵抗値が50Ω以上1000Ω以下である抵抗体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一態様に係る抵抗体の説明図である。
図2】本開示の一態様に係る抵抗体の抵抗膜のSSRMにより分析した結果の例である。
図3】ペースト調製工程で得られる抵抗膜用ペースト中に含まれる導電粒子と、被覆付きガラス粒子について、任意の一断面での断面模式図である。
図4】多角バレルスパッタリング法の説明図である。
図5】CVD法による成膜装置の一構成例の説明図である。
図6】CVD法による成膜装置の一構成例の説明図である。
図7】CVD法による成膜装置の一構成例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の抵抗体、抵抗体の製造方法について説明する。
[抵抗体]
本発明の発明者は鉛成分を含有せず、抵抗温度係数を抑制できる抵抗体について検討を行った。そして、正の抵抗温度係数を有する導電粒子と、負の抵抗温度係数を有する導電成分とを含有する抵抗体とすることで、抵抗温度係数を抑制した抵抗体にできることを見出した。
【0019】
図1に、本実施形態の抵抗体の説明図を示す。図1は、以下に説明する一対の電極111と、抵抗膜112とを配列した方向と平行な面における、抵抗体10の断面図を模式的に示したものである。図1においては、説明の便宜上、導電粒子や、導電成分を、実際よりも大きく記載している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の抵抗体10は、一対の電極111と、一対の電極111間に配置された抵抗膜112とを有することができる。
【0021】
抵抗膜112は、ガラス12と、導電粒子13と、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有する導電成分14とを有することができる。
【0022】
そして、抵抗膜112中の導電成分14の含有割合を質量割合で100ppm以上5000ppm以下にできる。また、抵抗体10は抵抗値を50Ω以上1000Ω以下にできる。
【0023】
本実施形態の抵抗体では、一対の電極111間に配置された抵抗膜112において、導電粒子13、および導電成分14を介して電流が生じ、一対の電極111間に電気を流すことができる。
【0024】
具体的には例えば図1中に点線Aで示した様に、導電粒子13間に配置された導電成分14がホッピング伝導による導電経路を形成し、導電粒子13間を電気的に接続していると考えられる。そして、上記導電粒子13と、導電成分14により形成された導電経路により、電極111間に電流が流れると考えられる。
【0025】
本発明の抵抗体が有する各部材について説明する。
(1)抵抗膜
図1に示すように、本実施形態の抵抗体10が有する抵抗膜112は、ガラス12と、導電粒子13と、導電成分14とを有しており、導電粒子13、および導電成分14はガラス12内に配置できる。
(1-1)導電粒子
本実施形態の抵抗体は、後述するように、例えば導電粒子と、被覆付きガラス粒子を含む抵抗膜用ペーストを電極111間に塗布し、乾燥、焼成することで形成できる。このため、導電粒子は、抵抗膜用ペーストを加熱する際の熱処理により抵抗が変化しない材料であることが好ましく、例えばAu(金)、Ag(銀)、Pd(パラジウム)等の貴金属や、RuO(酸化ルテニウム)、IrO(酸化イリジウム)等から選択された1種類以上の材料であることが好ましい。なお、導電粒子は、Ag粉末と、Pd粉末のように、複数種類の導電粒子を同時に用いることもできる。
【0026】
導電粒子の形状は特に限定されず、例えば球状、フレーク状等から選択された1種類以上の形状を有することができる。また、導電粒子の平均粒径も特に限定されないが、例えば0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0027】
導電粒子の製造方法は特に限定されず、用いる材料の種類等に応じて、各種製造方法により製造できる。
【0028】
抵抗体10における導電粒子13の含有割合は特に限定されず、抵抗体10に要求される抵抗値等に応じて選択できる。例えば抵抗体10の抵抗値を抑制する、すなわち小さくことが求められる場合には導電粒子13の含有割合を増加させることができる。また、抵抗体10の抵抗値を大きくすることが求められる場合には、導電粒子13の含有割合を減少させることができる。
(1-2)導電成分
導電成分14は、ガラス12と化合物を形成しない導電性材料であることが好ましく、例えば酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムを含有できる。
【0029】
本実施形態の抵抗体は、例えば導電粒子と、被覆付きガラス粒子を含む抵抗膜用ペースト(以下、単に「ペースト」と記載する場合もある)を電極111間に塗布し、乾燥、焼成することで形成できる。
【0030】
導電成分14は、含有量が微量であるため、抵抗膜112内での具体的な状態を分析し、特定することが困難ではある。しかし、導電成分14は、被覆付きガラス粒子の表面に配置した導電成分に由来し、被覆付きガラス粒子を熱処理した際に、該被覆付きガラス粒子間の粒界であった部分に配置されると考えられる。そして、導電成分14は、ホッピング伝導による導電経路を形成しやすいように、図1に示すように、導電成分14は非連続的に、離隔して配置されることが好ましい。
【0031】
このため、導電成分14は、例えばガラス粒子の表面に膜状に形成しやすく、かつ被覆付きガラス粒子を熱処理した際に、該導電成分の膜が壊れやすい材料であることが好ましい。そこで、導電成分14は、既述のように、例えば酸化ルテニウム、または酸化イリジウムを含むことが好ましい。なお、導電成分14は、酸化ルテニウム、または酸化イリジウムから構成することもできる。
【0032】
上述のように、抵抗膜112内での導電成分14の状態を分析し、特定することは、困難であるが、導電成分14は、導電粒子13間にホッピング伝導による導電経路を形成していると考えられる。このことは、本実施形態の抵抗体10が有する抵抗膜112の成分分析を行った場合に導電成分14を含有していること、および導電成分14を添加していない場合と比較して抵抗値を抑制した抵抗体にできることからも明らかである。そして、導電成分14は、上述のようにホッピング伝導による導電経路を形成することで、負の抵抗温度係数を示すものと考えられる。
【0033】
本実施形態の抵抗体10は、抵抗値が50Ω以上1000Ω以下であって、抵抗膜112中の導電成分14の含有割合を、質量割合で100ppm以上5000ppm以下とすることが好ましい。抵抗膜112内の導電成分14の含有割合を質量割合で100ppm以上とすることで、導電粒子13間に十分な導電経路を形成し、抵抗体10の抵抗値、および抵抗温度係数を所望の値とすることができる。また、抵抗体10の抵抗値が上記範囲の場合に、抵抗膜112内の導電成分14の含有割合を、質量割合で5000ppmより多くした場合、抵抗膜112内の導電成分14の含有割合が高くなり、ホッピング伝導以外の導電経路が形成される場合があり、抵抗温度係数を十分に抑制できない恐れがある。このため、抵抗膜112内の導電成分の含有割合を、質量割合で5000ppm以下にすることが好ましい。
【0034】
図2に、本実施形態の抵抗体10の抵抗膜112をSSRMにより分析した結果を示す。SSRM(Scanning Spread Resistance Microscope)は、走査型広がり抵抗顕微鏡であり、導電性のカンチレバーで試料表面を走査し、抵抗値の分布を二次元的に計測可能な装置である。SSRMによれば、ナノメートルレベルでの局所抵抗測定を行うことができる。
【0035】
図2に示すように、本実施形態の抵抗体10が有する抵抗膜112は、抵抗値が低い導電粒子13の領域と、導電粒子13よりも抵抗値が高いガラス12の領域とを有している。そして、ガラス12と導電粒子13との界面や、導電粒子13間に抵抗値がガラス12よりも低い低抵抗領域21が点在していることを確認できる。係る低抵抗領域21は導電成分14によるものと推認される。
【0036】
すなわち、本実施形態の抵抗体10の抵抗膜112は、走査型広がり抵抗顕微鏡法により抵抗値の分布を計測した場合に、導電粒子13間にガラス12よりも抵抗値の低い低抵抗領域を有することができる。係る低抵抗領域は、既述のようにホッピング伝導による導電経路を形成し、負の抵抗温度係数を示すことから、抵抗体10の抵抗温度係数を特に抑制できる。
(1-3)ガラス
ガラス12について、その組成等は限定されない。ガラス12としては、例えばホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸カルシウム系ガラス、ホウケイ酸バリウムガラスなどの鉛を含有しない組成系のガラスを使用できる。
(1-4)その他の成分
抵抗膜112は、抵抗膜112を構成する材料に加えて、ビヒクル等を添加し、抵抗膜用ペーストとしてから、該ペーストを一対の電極111間に塗布、乾燥、焼成することで形成される。このため、抵抗膜112は、既述のガラス12、導電粒子13、および導電成分14に加えて、ビヒクル等に起因する不可避成分を含んでいても良い。
【0037】
また、抵抗膜112は、面積抵抗値や抵抗温度係数の調整、膨張係数の調整、耐電圧性の向上やその他の改質を目的とした添加剤を含むこともできる。添加剤としては、MnO、CuO、TiO、Nb、Ta、SiO、Al、ZrO、ZrSiOなどが一般に用いられている。また、添加剤の割合は、既述の導電粒子、導電成分、ガラスの合計の質量に対して、質量割合で0.05%以上20%以下とすることが一般的である。
(2)電極
一対の電極111の材料は特に限定されず、抵抗体に用いられる各種電極とすることができる。なお、本実施形態の抵抗体10は、各種絶縁性基板上に形成することができる。
【0038】
本実施形態の抵抗体が有する各部材は鉛を含有しないことが好ましい。ここでいう鉛を含有しないとは、意図して添加していないことを意味し、不可避成分として含まれる場合を排除するものではない。
【0039】
以上に説明した本実施形態の抵抗体によれば、導電粒子13と、導電成分14とを含む抵抗膜112を有している。このため、導電粒子13の添加量等を調整することで、抵抗体10の抵抗値を容易に制御し、抵抗温度係数を抑制できる。従って、鉛成分を含有する材料を用いなくても、所望の抵抗値とし、抵抗温度係数を抑制した抵抗体とすることができる。
【0040】
本実施形態の抵抗体は、既述のように、導電成分の含有量が微量であり、かつ導電領域が数nm程度と微小なサイズであるため、出願時の分析技術の技術水準では、導電成分の状態を分析し、特定することは困難である。このため、本実施形態の抵抗体は、以下に説明する抵抗体の製造方法により得られた抵抗体と表記することもできる。
[抵抗体の製造方法]
本実施形態の抵抗体の製造方法について説明する。本実施形態の抵抗体の製造方法によれば、既述の抵抗体を製造できる。このため、既に説明した事項については説明を省略する。
【0041】
本実施形態の抵抗体の製造方法は、以下の被覆付きガラス粒子形成工程と、ペースト調製工程と、抵抗膜形成工程とを有することができる。
【0042】
以下、各工程の説明を行う。
(1)被覆付きガラス粒子形成工程
被覆付きガラス粒子形成工程は、ガラス粒子の表面の少なくとも一部に、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有する導電成分を配置し、被覆付きガラス粒子を形成できる。
(1-1)被覆付きガラス粒子
(1-1-1)ガラス粒子
被覆付きガラス粒子が有するガラス粒子は、既述の抵抗膜112内のガラス12となる材料であり、その組成は特に限定されない。ガラス粒子としては、例えばホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸カルシウム系ガラス、ホウケイ酸バリウムガラスなどの鉛を含有しない組成系のガラス粒子、粉末を使用できる。
【0043】
ガラス粒子の製造方法についても特に限定されないが、ガラスは、一般的に、所定の成分またはそれらの前駆体を目的とする抵抗値が得られるような配合で混合してガラス原料を調製し、該ガラス原料を溶融、急冷することで製造できる。ガラス原料の溶融は、ガラス原料にもよるが、例えば溶融温度を1400℃前後として実施できる。また、急冷は溶融物を冷水中に入れるか、冷ベルト上に流すことで、通常行われている。そして、急冷後に得られたガラスを必要に応じて粉砕することでガラス粒子、ガラス粉末を得ることができる。ガラスの粉砕はボールミル、振動ミル、遊星ミル、あるいはビーズミルなどで目的とする粒度まで行うことができる。なお、必要に応じてガラス粒子の粒度を調整するために、粉砕後、さらに篩掛け等を行うこともできる。
【0044】
ガラス粒子の粒径も限定されないが、ガラス粒子の平均粒径は5μm以下が好ましく、3μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値50%での粒径を意味する。
【0045】
ガラス粉末の平均粒径を5μm以下とすることで、得られる抵抗体の面積抵抗値のばらつきを抑制し、負荷特性を向上することができる。
【0046】
なお、ガラス粉末の平均粒径の下限値は特に限定されないが、ガラス粉末の平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましい。
(1-1-2)導電成分
導電成分は、既述の抵抗体で説明した導電成分14となる成分であり、ガラス粒子の表面の少なくとも一部に配置できる。導電成分は酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムを含有でき、酸化ルテニウムまたは酸化イリジウムから構成することもできる。
【0047】
図3に、後述するペースト調製工程で得られる抵抗膜用ペースト30中に含まれる導電粒子13と、被覆付きガラス粒子31について、任意の一断面での断面模式図を示す。図3に示すように、被覆付きガラス粒子31は、ガラス粒子311と、該ガラス粒子311の表面の少なくとも一部に配置された導電成分312とを有することができる。導電成分312は、抵抗体で既述のように、抵抗体の抵抗膜内で、ホッピング伝導による導電経路を形成する成分であり、例えば抵抗膜内に、非連続的に離隔して設けることができる。このため、導電成分312は、図3に示すように、ガラス粒子311の表面全体に膜状に形成されていても良いが、一部または全部が、ガラス粒子311の表面に島状(点状)に分散して配置されていても良い。なお、導電成分312は、ガラス粒子311の表面全体に膜状に形成されていたとしても、後述する抵抗膜形成工程の熱処理の際に壊れ、抵抗膜内に非連続的に離隔して配置されると考えられる。
【0048】
導電成分312の厚さは特に限定されないが、例えば平均厚さが1nm以上50nm以下であることが好ましい。導電成分の平均厚さを1nm以上とすることで、抵抗膜112内に十分な量の導電成分を供給でき、ホッピング伝導による導電経路を容易に形成できる。また、導電成分の平均厚さを50nm以下とすることで、抵抗膜112中で、導電成分の一部が凝集することを防止し、導電成分を特に適切な距離で離隔して、非連続的に配置することができる。
【0049】
導電成分の平均厚さの測定に当たっては、まず被覆付きガラス粒子をFIB加工などにより該粒子の断面観察が可能な状態とする。なお、被覆付きガラス粒子は、FIB加工の前に予め樹脂などに埋め込み、必要に応じてクロスセクションポリッシャー加工などを行っておくこともできる。そして、TEM(透過型電子顕微鏡)またはFE-SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用いて、上記被覆付きガラス粒子において、3箇所以上の任意の箇所で、導電成分の厚さを測定して、粒子ごとの導電成分の平均厚さを求める。
【0050】
同様にして10個以上の被覆付きガラス粒子について求めた粒子ごとの導電成分の平均厚さを平均することで、被覆付きガラス粒子における、導電成分の平均厚さを求めることができる。
【0051】
ガラス粒子の表面の少なくとも一部に導電成分を配置する具体的な方法は特に限定されず、スパッタリング法、蒸着法やCVD法のような気相法や、ゾルゲル法等のような湿式法を用いることができる。特に、被覆付きガラス形成工程においては、スパッタリング法、およびCVD法から選択された1種類以上の方法により、ガラス粒子311の表面に導電成分312を配置することが好ましい。これは、スパッタリング法、CVD法によれば、立体的な形状を有するガラス粒子311の表面に容易に導電成分を配置し、例えばその膜厚等の制御も行うことができるからである。
(A)スパッタリング法
導電成分を、ガラス粒子の表面にスパッタリング法により成膜する場合、多角バレルスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0052】
多角バレルスパッタリング法は、例えば図4に示したスパッタリング装置40を用いて実施できる。なお、図4は多角バレルスパッタリング法を実施できるスパッタリング装置について、多角形の容器41の回転軸に沿って見た側面図になる。該スパッタリング装置40は、多角形の容器(バレル)41と、カソード42、ターゲット43とを有することができる。また、スパッタリングを行っている間の雰囲気を制御するため、チャンバー44を有することができる。チャンバー44内は、例えば真空排気し、アルゴン等のガスを導入しておくことができる。
【0053】
多角形の容器41は図中の回転軸Cを中心として、両矢印Bに沿って回転や、揺動可能に構成されている。なお、カソード42およびターゲット43は回転しないように構成されている。このため、多角形の容器41内に収容された図示しないガラス粒子は多角形の容器41の回転、揺動に伴って移動する。ただし、多角形の容器41の回転の角度が一定角度以上になると、ガラス粒子は多角形の容器41の内周面から外れて、落下する。その際、ガラス粒子は回転して、ターゲット43側に向ける面が変化することになる。
【0054】
このように、多角バレルスパッタリング法によれば、多角形の容器41内にガラス粒子を収容し、多角形の容器41を回転や揺動させることにより、ガラス粒子のターゲット43側に向ける面を変化させながら、スパッタリング成膜を行うことができる。従って、ガラス粒子の表面に均一な膜を成膜できる。
【0055】
酸化ルテニウムや、酸化イリジウムのような、金属状態から酸化した場合に体積膨張が起きる物質は、金属膜の形成後に酸化処理を行うと膜がガラス粒子から剥がれ易くなる。このため、上述のように多角バレルスパッタリング法等により、酸化ルテニウム膜や酸化イリジウム膜を成膜する場合、ターゲットとしてルテニウム金属ターゲットや、イリジウム金属ターゲットを用い、スパッタガスに酸素を混合して、成膜を行うことが好ましい。スパッタガスに酸素を混合しておくことで、酸化ルテニウム膜や、酸化イリジウム膜をガラス粒子表面に直接成膜できる。スパッタガス中の酸素の含有割合は特に限定されないが、例えば5体積%以上20体積%以下であることが好ましい。
【0056】
なお、ターゲットとして酸化ルテニウムや酸化イリジウムのターゲットを用いることも考えられるが、酸化ルテニウムや酸化イリジウムは、昇華性があるため焼結が難しく、ターゲットを製造することが難しい。これに対して、金属であるルテニウムやイリジウムのターゲットは、例えばプラズマ熔解による熔解法により製造できる。また、金属ルテニウムや金属イリジウムのターゲットは、金属ルテニウム粉末や金属イリジウムを原料として、ホットプレス法や熱間圧縮(HIP)等により製造することもできる。
(B)CVD法
(B-1)第1形態
導電成分を、ガラス粒子の表面にCVD法により成膜する場合、例えば図5に示す成膜装置50を用いて実施できる。
【0057】
導電成分の材料であるイリジウムの酸化物やルテニウムの酸化物、すなわちIrOやRuOは高温で蒸気圧が高く、揮発する。そして、上記酸化物は低温になると安定な酸化物、具体的には例えばIrOやRuOとして析出する。
【0058】
例えばイリジウムは1369Kを超えるとガス状酸化物の揮発が始まり、1500K以上ではガス状酸化物の主成分がIrOであることが知られている。そして、イリジウムは、高温で圧延や溶接が可能であるため、板状や、筒状の加工製品を容易に入手できる。
【0059】
そこで、図5に示した成膜装置50の場合、耐火物製の反応容器51内に、イリジウム製の筒体52を配置し、その下方にガラス粒子55を配置しておくことができる。ガラス粒子55は例えば坩堝等に入れ、多孔質フィルター54上に設置できる。また、多孔質フィルター54は排気管512と接続しておくことができる。
【0060】
そして、反応容器51の上方に設けた気体供給管511から、酸素を含有するキャリアガスを矢印に沿って供給しながら、反応容器51の外周に配置した高周波コイル53により、イリジウム製の筒体52を1100K以上に高周波加熱できる。上述のようにキャリアガスを供給しながら、イリジウム製の筒体52を加熱することにより、揮発性イリジウム酸化ガスを発生させ、低温部に置かれたガラス粒子55の表面にIrOとして析出させることができる。
【0061】
なお、反応容器51内において、ガラス粒子55はガラス粒子の融点以下になる位置に設置でき、800K以下の領域に設置することが好ましく、500K以下の領域に設置することがより好ましい。必要に応じて、反応容器51のガラス粒子55を配置する領域を水や、風等により冷却することもできる。
【0062】
また、ガラス粒子55の表面に、導電成分を均一に析出させることや、生成した被覆付きガラス粒子同士が固着することを防止するため、多孔質フィルター54は回転軸56により回転可能に構成することが好ましい。さらに、ガラス粒子55を撹拌等するために図示しないスクリュー型の回転はねや邪魔板を設置してもよい。
【0063】
IrOを析出させた後のガスは、多孔質フィルター54、および排気管512を介して、外部へ排気できる。
【0064】
ここでは、ガラス粒子の表面に、導電成分として酸化イリジウムを析出する場合を例に説明したが、筒体52をルテニウム製に変え、必要に応じて加熱温度等を調整することで、図5に示した成膜装置50を用いて、ガラス粒子の表面に導電成分として酸化ルテニウムを析出、配置することもできる。
(B-2)第2形態
導電成分を、ガラス粒子の表面にCVD法により成膜する場合、例えば図6に示す成膜装置60を用いて実施できる。
【0065】
図6に示すように、ボート等の容器621に導電成分の原料となる成膜原料622を入れ、反応管61内に配置できる。例えば導電成分が酸化ルテニウムの場合、成膜原料622としては金属ルテニウムや、酸化ルテニウム(RuO)が挙げられる。導電成分が酸化イリジウムの場合、成膜原料622としては、金属イリジウムや、酸化イリジウム(IrO)が挙げられる。
【0066】
そして、反応管61の一方の端部側から、矢印に沿って、酸素を含む気体、例えばアルゴン等の不活性ガスと酸素との混合ガスを供給しながら、ヒーター等の加熱装置64により成膜原料622を加熱し、成膜原料622を気化させることができる。気流の下流側、例えば気化した成膜原料の成分が析出する温度域に設置されたガラス粒子632を配置しておくことで、ガラス粒子の表面に導電成分を析出させることができる。なお、ガラス粒子632についてもボート等の容器631に入れ、反応管61内に設置できる。ガラス粒子632は、例えば40℃以下の温度領域内に設置しておくことが好ましい。
【0067】
なお、成膜装置60において、上述のように成膜原料としてルテニウムを含有する材料を用いる場合、RuOは強い酸化性があるので、Oリングやゴム栓等のRuOと接触する部分には有機材料を使用しないことが好ましい。
(B-3)第3形態
導電成分を、ガラス粒子の表面にCVD法により成膜する場合、例えば図7に示す成膜装置70を用いて実施できる。
【0068】
図7に示すように、導電成分となる成膜原料を、反応容器71内で生成し、気化した成膜原料を、供給配管75を介して、吸着器76に供給できる。そして、供給された成膜原料を、吸着器76内に設置したガラス粒子761の表面に接触、析出させることで、ガラス粒子761の表面に導電成分を成膜できる。
【0069】
例えば酸性溶液中のRuは、HClO、KIO、NaIO、NaCrO、KCr、NaBrO、Ce(SO、PbO、KMnO、NaBiO、(NHKIOなどの酸化剤と加熱すると、RuOを生成して揮発する。
【0070】
そこで、例えば反応容器71内に酸化剤と、酸性溶液とを含む反応溶液711を入れておく。酸性溶液としては特に限定されないが、例えばルテニウム源として塩化ルテニウムを用いた場合、酸性溶液として硫酸を用いると反応が進行しやすいことから、硫酸を好適に用いることができる。
【0071】
そして、反応溶液711に対して、原料供給管73を介して、ルテニウム源、例えば塩化ルテニウムを滴下することで、RuOを生成できる。なお、反応溶液711をルテニウム源と、酸性溶液との混合溶液とし、原料供給管73を介して酸化剤を供給するように構成しても良い。
【0072】
生成したRuOを気化するため、またRuOの生成反応を促進するため、必要に応じて反応溶液711をマントルヒーター等の加熱装置72により例えば40℃以上に加熱しても良い。また、生成したRuOを気化することや、吸着器76に供給する成膜原料の濃度を調整することを目的として、気体供給管74等によりアルゴンガス等の不活性ガスを反応溶液711に吹き込むこともできる。
【0073】
そして、生成し、気化したRuOは、既述のように供給配管75を介して吸着器76に供給し、吸着器76内に設置したガラス粒子761の表面に接触、析出させることができる。なお、ガラス粒子761の表面にRuOを析出しやすくするために、例えば水槽77内の冷却水に吸着器76を入れ、吸着器76を冷却しても良い。
【0074】
排気ガスは、例えば吸着器76の下流側に配置したモレキュラーシーブ等の吸着剤762を通してから排気管78により系外に排出できる。
【0075】
なお、成膜装置70において、上述のように成膜原料としてルテニウムを含有する材料を用いる場合、RuOは強い酸化性があるので、Oリングやゴム栓等のRuOと接触する部分には有機材料を使用しないことが好ましい。
【0076】
ここでは、導電成分として酸化ルテニウムを用いる場合を例に説明したが、係る形態に限定されない。例えば、導電成分として酸化イリジウムを用いる場合、シクロオクタジエン系イリジウム化合物やβ-ジケトン系イリジウム化合物のような有機金属化合物を気化させ、吸着器76において、ガラス粒子の表面に酸化イリジウムを成膜することもできる。
(2)ペースト調製工程
ペースト調製工程は、導電粒子と、被覆付きガラス粒子とを混合し、抵抗膜用ペーストを調製できる。
【0077】
導電粒子、被覆付きガラス粒子については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0078】
抵抗膜用ペーストに含まれる導電粒子と、被覆付きガラス粒子との含有割合は特に限定されず、抵抗体に要求される抵抗値等に応じて任意に選択できる。
【0079】
本実施形態の抵抗体の製造方法により得られる抵抗体は、抵抗膜中の導電成分の含有割合を、質量割合で100ppm以上5000ppm以下とし、抵抗値が50Ω以上1000Ω以下とすることができる。このため、用いる被覆付きガラス粒子が有する導電成分の平均厚さ等に応じて、抵抗膜中の導電成分の含有割合や、抵抗体の抵抗値が所望の値となるように、導電粒子と、被覆付きガラス粒子との混合割合を選択することが好ましい。
【0080】
導電粒子と被覆付きガラス粒子の混合割合は導電粒子の粒径や被覆付きガラス粒子が有する導電成分の厚さ、さらには抵抗体に要求される抵抗値、抵抗温度係数の範囲等により選択できるため、特に限定されない。例えば導電粒子と、被覆付きガラス粒子との合計を100質量%とした場合に、導電粒子の含有割合を10質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。すなわち、被覆付きガラス粒子の含有割合を30質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。
【0081】
ペースト調製工程では、上記導電粒子と、被覆付きガラス粒子以外に、ペーストにするために、ビヒクルと呼ばれる樹脂成分を溶解した溶剤を添加し、該溶剤中に導電粒子等を分散できる。
【0082】
ビヒクルの樹脂や溶剤の種類や配合は特に限定されない。
【0083】
樹脂成分としては、エチルセルロース、マレイン酸樹脂、ロジン等の抵抗膜用ペーストに用いられる樹脂成分から選択された1種類以上を用いることができる。
【0084】
溶剤としては、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等の抵抗膜用ペーストに用いられる溶剤から選択された1種類以上を用いることができる。
【0085】
ビヒクルに用いる樹脂成分や、溶剤の配合についても特に限定されず、抵抗膜用ペーストに求められる粘度等によって選択、調整できる。また、ビヒクルには、抵抗膜用ペーストの乾燥を遅らせる目的で沸点が高い溶剤を加えることもできる。
【0086】
導電粒子と、被覆付きガラス粒子とから構成される抵抗体用組成物に対するビヒクルの割合は特に限定されないが、質量割合で例えば30質量%以上100質量%以下とすることができる。
【0087】
厚膜抵抗体用組成物をビヒクル中に分散させて抵抗膜用ペーストを調製する手段は特に限定されないが、例えば、スリーロールミルや、遊星ミル、ビーズミル等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0088】
なお、抵抗膜用ペーストを調製する手順は特に限定されず、例えば、予め厚膜抵抗体用組成物をボールミルや、らいかい機で混合してから、ビヒクル中に分散させても良い。
【0089】
抵抗膜用ペーストを調製する際には、厚膜抵抗体用組成物を構成する導電粒子等の凝集を解し、ビヒクル中に十分に分散するように、分散条件を選択することが好ましい。
【0090】
抵抗膜は、面積抵抗値や抵抗温度係数の調整、膨張係数の調整、耐電圧性の向上やその他の改質を目的とした添加剤を含むこともできる。このため、抵抗膜用ペーストにも、必要に応じて添加剤を添加することもできる。添加剤については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0091】
抵抗膜用ペーストは、不可避不純物を含有することもできるが、不純物イオン濃度のうち、加水分解性塩素イオンについては100ppm以下であることが好ましく、アルカリなどの金属イオンについては50ppm以下であることが好ましい。不純物イオン濃度を上記範囲とすることで、電子部品の接合時にペーストの染み出し等を防止し、接着強度、耐熱性、耐湿性、耐ヒートサイクル性、導電性、作業性などの特性を特に高めることができる。
【0092】
抵抗膜用ペーストは、上記した成分以外に、必要に応じてブロックイソシアネートなどの硬化促進剤や接合強度を向上させるためのシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤や、顔料、染料などの着色剤を含有することもできる。
(3)抵抗膜形成工程
抵抗膜形成工程は、一対の電極間に抵抗膜用ペーストを塗布し、抵抗膜を形成できる。
【0093】
具体的には、予め絶縁性基板上に形成されている一対の電極間に抵抗膜用ペーストを塗布し、乾燥、熱処理することで、抵抗体を形成できる。
【0094】
この際の塗布条件は特に限定されず。抵抗膜用ペーストの組成や、抵抗体に要求される特性等に応じて選択できる。
【0095】
また、乾燥、熱処理の条件についても特に限定されず、抵抗膜用ペーストに含まれる各成分に応じて乾燥、熱処理条件を選択できる。乾燥、熱処理温度は被覆付きガラス粒子に含まれるガラスの軟化点以上が好ましく、例えば650℃以上900℃以下が好ましい。例えば室温から熱処理温度まで昇温し、熱処理温度で10分以上2時間以下定温保持した後、炉外に取り出し自然放冷できる。
【0096】
図3に、後述するペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペースト30中に含まれる導電粒子13と、被覆付きガラス粒子31について、任意の一断面での断面模式図を示す。図3に示すように、被覆付きガラス粒子31は、ガラス粒子311と、該ガラス粒子311の表面の少なくとも一部に配置された導電成分312とを有することができる。
【0097】
そして、抵抗膜形成工程で、抵抗膜用ペーストを乾燥、熱処理することで、被覆付きガラス粒子31のガラス粒子311が軟化し、図1に示した様に、導電粒子13の周辺にガラス12が拡がり、抵抗膜112を形成できる。
【0098】
また、熱処理を行った際に、被覆付きガラス粒子31の表面に配置されていた導電成分312が被覆付きガラス粒子31の粒界であった部分に配置され、ホッピング伝導による導電経路を形成できる。なお、導電成分312がガラス粒子311の表面に膜状に形成されていたとしても、熱処理を行った際に、該膜は破壊され、抵抗膜内に非連続的に離隔して配置されることになる。
【実施例0099】
以下に具体的な実施例、比較例等を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
以下の実施例、比較例で作製した抵抗体の評価方法について説明する。
(1)抵抗値測定
膜厚は、各実施例、比較例で同じ条件で作製した5個の抵抗体について、触針の厚さ粗さ計(東京精密社製 型番:サーフコム480B)により膜厚を測定し、測定した値を平均することで算出した。
【0100】
製造した5個の抵抗体について、デジタルマルチメーター(KEITHLEY社製、2001番)により抵抗値を測定し、得られた抵抗値を、抵抗体の厚さが6μmの場合に換算した。そして、換算後の5個の厚膜抵抗体の抵抗値の平均を該厚膜抵抗体の抵抗値とした。
(2)抵抗温度係数
抵抗温度係数は次の手順で算出した。
【0101】
以下の各実施例、比較例で同じ条件で幅1mm、長さ10mmの抵抗体を5個作製し、各抵抗体を-55℃、25℃、125℃にそれぞれ15分保持してから抵抗値を測定した。各厚膜抵抗体の各温度での抵抗値はR-55、R25、R125とする。例えばR-55は、-55℃での抵抗値を意味する。
【0102】
次に各厚膜抵抗体について以下の式(A)、式(B)によって低温側の抵抗温度係数COLD-TCRと、高温側の抵抗温度係数HOT-TCRとを算出し、5個の抵抗体の平均を各実施例、比較例の厚膜抵抗体の抵抗温度係数(COLD-TCR、HOT-TCR)とした。
COLD-TCR(ppm/℃)=(R-55-R25)/R25/(-80)×10・・・(A)
HOT-TCR(ppm/℃)=(R125-R25)/R25/(100)×10・・・(B)
なお、抵抗温度係数は0に近いことが望ましく、-100ppm/℃≦抵抗温度係数≦100ppm/℃であることが優れた抵抗体の目安とされている。
(3)導電成分の含有割合
得られた抵抗膜中の導電成分の含有割合について、ICP発光分光分析装置(島津製作所製 型式:ICPS8100)を用いて、ICP発光分光法により評価した。
(製造条件)
[実験例1]
[実施例1-1]
(被覆付きガラス粒子形成工程)
平均粒径が1.5μmのガラス粉末を、図4に示した多角バレルスパッタリング法によるスパッタリング装置40に入れて、バレル回転速度を0.1rpmとした。すなわち、200秒で回転軸Cを回転の中心として120度の割合で回転させた。スパッタ前のチャンバー44内の真空度は2×10-4Pa、スパッタガスとしてはAr:O混合ガスを用い、流量比はAr:O=9:1とした。
【0103】
そして、絶縁粒子の表面に酸化ルテニウム膜を平均で2nmとなるように成膜した。なお、評価を行ったところ、得られた被覆粒子が有する酸化ルテニウム膜の膜厚は2nmであることを確認できた。
【0104】
酸化ルテニウム膜の膜厚の測定に当たっては、まず被覆粒子を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリッシャー加工を行った後、FIB(収束イオンビーム)加工を行い、TEM(透過型電子顕微鏡)により該粒子の断面観察を行った。そして、上記樹脂中の被覆付きガラス粒子において、3箇所の任意の箇所で、酸化ルテニウム膜の厚さを測定して、粒子ごとの酸化ルテニウム膜の平均厚さを求めた。
【0105】
同様にして10個の被覆付きガラス粒子について求めた粒子ごとの酸化ルテニウム膜の平均厚さを平均することで、被覆付きガラス粒子における、酸化ルテニウム膜の厚さを求めた。
【0106】
ガラス粒子としては、SiO:35質量%-B:20質量%-Al:5質量%-CaO:5質量%-BaO:20質量%-ZnO:15質量%の割合で各成分を含有するガラスの粒子を使用した。
(ペースト調製工程)
平均粒径が1.0μmのAg粉末と、平均粒径が0.3μmのPd粉末と、上記被覆付きガラス粒子とを、エチルセルロース10質量%とターピネオール90質量%とからなるビヒクルにスリーロールミルで分散させて抵抗膜用ペーストを調製した。
【0107】
なお、混合する際Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=40:17:43とした。
(抵抗膜形成工程)
ペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペーストを、予め一対の電極が形成されたアルミナ基板上に、マスクを介して塗布し、幅1mmで長さ10mm、塗布膜の平均膜厚は10μmとした。なお、電極はAgペーストを用いて予め作製した。
【0108】
上記塗布膜を室温で30分放置後、電気オーブン中で150℃、5分間加熱して乾燥させた。その後、15分間で850℃まで加熱し、850℃で10分間保持した。なお、焼成後の膜厚は5.9μm~6.2μmとなった。
【0109】
得られた抵抗体について、抵抗値、抵抗温度係数、および導電成分の含有量の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例1-2]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=15:1:84とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0110】
評価結果を表1に示す。
[比較例1-1]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=44:32:24とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0111】
なお、得られた抵抗体の抵抗値を測定したが、導通がなく、抵抗値、および抵抗温度係数は測定できなかった。
[実験例2]
[実施例2-1]
(被覆付きガラス粒子形成工程)
平均粒径が1.5μmのガラス粉末を、図4に示した多角バレルスパッタリング法によるスパッタリング装置40に入れて、バレル回転速度を0.1rpmとした。すなわち、200秒で回転軸Cを回転の中心として120度の割合で回転させた。スパッタ前のチャンバー44内の真空度は2×10-4Pa、スパッタガスとしてはAr:O混合ガスを用い、流量比はAr:O=9:1とした。
【0112】
そして、絶縁粒子の表面に酸化イリジウム膜を平均で2nmとなるように成膜した。なお、評価を行ったところ、得られた被覆粒子が有する酸化イリジウム膜の膜厚は2nmであることを確認できた。
【0113】
酸化イリジウム膜の膜厚の測定は、実施例1-1の場合と同様にして実施した。
【0114】
ガラス粒子としては、SiO:35質量%-B:20質量%-Al:5質量%-CaO:5質量%-BaO:20質量%-ZnO:15質量%の割合で各成分を含有するガラスの粒子を使用した。
(ペースト調製工程)
平均粒径が1.0μmのAg粉末と、平均粒径が0.3μmのPd粉末と、上記被覆付きガラス粒子とを、エチルセルロース10質量%とターピネオール90質量%とからなるビヒクルにスリーロールミルで分散させて抵抗膜用ペーストを調製した。
【0115】
なお、混合する際Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=40:17:43とした。
(抵抗膜形成工程)
ペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペーストを、予め一対の電極が形成されたアルミナ基板上に、マスクを介して塗布し、幅1mmで長さ10mm、塗布膜の平均膜厚は10μmとした。なお、電極はAgペーストを用いて予め作製した。
【0116】
上記塗布膜を室温で30分放置後、電気オーブン中で150℃、5分間加熱して乾燥させた。その後、15分間で850℃まで加熱し、850℃で10分間保持した。
【0117】
得られた抵抗体について、抵抗値、抵抗温度係数、および導電成分の含有量の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2-2]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=15:1:84とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0118】
評価結果を表1に示す。
[比較例2-1]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=44:32:24とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0119】
なお、得られた抵抗体の抵抗値を測定したが、導通がなく、抵抗値、および抵抗温度係数は測定できなかった。
[実験例3]
[実施例3-1]
(被覆付きガラス粒子形成工程)
平均粒径が1.5μmのガラス粒子55を坩堝に入れ、図5に示した成膜装置50の反応容器51内の多孔質フィルター54上に載置した。
【0120】
そして、加熱中のイリジウムの気化を防ぐために、反応容器51内に気体供給管511からArガスを2L/minで流し、高周波コイル53により、反応容器51内に設置したイリジウム製の筒体52を1573Kまで加熱した。
【0121】
次いで、気体供給管511から供給する気体を、Arガス90容量%-Oガス10容量%の混合ガスに切り替え、上記温度での加熱を継続した。これにより、イリジウムの酸化物を気化させて、ガラス粒子55の表面にIrOを析出させた。
【0122】
なお、ガラス粒子55を入れた坩堝の周囲の反応容器51の温度が400K以下になるように、反応容器51の下部を水冷した。また、筒体52の温度は、放射温度計により測定した。
【0123】
ガラス粒子の表面に酸化イリジウム膜を平均で2nmとなるように加熱時間を調整して成膜した。なお、評価を行ったところ、得られた被覆付きガラス粒子が有する酸化イリジウム膜の膜厚は2nmであることを確認できた。
【0124】
酸化イリジウム膜の膜厚の測定は、実施例1-1の場合と同様にして実施した。
【0125】
ガラス粒子としては、SiO:35質量%-B:20質量%-Al:5質量%-CaO:5質量%-BaO:20質量%-ZnO:15質量%の割合で各成分を含有するガラスの粒子を使用した。
(ペースト調製工程)
平均粒径が1.0μmのAg粉末と、平均粒径が0.3μmのPd粉末と、上記被覆付きガラス粒子とを、エチルセルロース10質量%とターピネオール90質量%とからなるビヒクルにスリーロールミルで分散させて抵抗膜用ペーストを調製した。
【0126】
なお、混合する際Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=40:17:43とした。
(抵抗膜形成工程)
ペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペーストを、予め一対の電極が形成されたアルミナ基板上に、マスクを介して塗布し、幅1mmで長さ10mm、塗布膜の平均膜厚は10μmとした。なお、電極はAgペーストを用いて予め作製した。
【0127】
上記塗布膜を室温で30分放置後、電気オーブン中で150℃、5分間加熱して乾燥させた。その後、15分間で850℃まで加熱し、850℃で10分間保持した。
【0128】
得られた抵抗体について、抵抗値、抵抗温度係数、および導電成分の含有量の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例3-2]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=15:1:84とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0129】
評価結果を表1に示す。
[比較例3-1]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=44:32:24とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0130】
なお、得られた抵抗体の抵抗値を測定したが、導通がなく、抵抗値、および抵抗温度係数は測定できなかった。
[実験例4]
[実施例4-1]
(被覆付きガラス粒子形成工程)
図6に示した成膜装置60を用いて、被覆付きガラス粒子を形成した。
【0131】
ZrO製の皿である容器621に導電成分の原料となる成膜原料622を入れ、反応管61である石英チューブ内に配置した。成膜原料としては、平均粒径が0.5μmのRuO粉末を用いた。
【0132】
そして、反応管61の一方の端部側から、矢印に沿って、Arガス90容量%-Oガス10容量%の混合ガスを供給しながら、マントルヒーターである加熱装置64により成膜原料622を加熱し、成膜原料622を気化させ、気流中にRuOを供給した。
【0133】
気流の下流側には、予めZrO製の皿である容器631に入れたガラス粒子632を配置しておき、上記RuOを含む気流を吹き付けることで、ガラス粒子632の表面にRuOを吸着させた。なお、本実施例では、図6の成膜装置60とは異なり、容器631に入れたガラス粒子632は、反応管61と配管で接続され石英フラスコ内に入れ、該石英フラスコを25℃の水を張った水槽内に入れておくことで、冷却しながら、上記吸着を行った。
【0134】
RuOは室温では不安定であることから、酸素が脱離してRuOになるが、念のため、ホットプレート上で、大気中、150℃で1時間保持して、RuO(沸点129℃)を除去して、RuOが付着したガラス粒子を作製した。
【0135】
RuOは、ガラス粒子の表面に酸化ルテニウム膜を平均で2nmとなるように予備試験で求めておいた成膜条件(成膜時間)に基づいて成膜した。なお、評価を行ったところ、得られた被覆付きガラス粒子が有する酸化ルテニウム膜の膜厚は2nmであることを確認できた。
【0136】
酸化ルテニウム膜の膜厚の測定は、実施例1-1の場合と同様にして実施した。
【0137】
ガラス粒子としては、SiO:35質量%-B:20質量%-Al:5質量%-CaO:5質量%-BaO:20質量%-ZnO:15質量%の割合で各成分を含有するガラスの粒子を使用した。
(ペースト調製工程)
平均粒径が1.0μmのAg粉末と、平均粒径が0.3μmのPd粉末と、上記被覆付きガラス粒子とを、エチルセルロース10質量%とターピネオール90質量%とからなるビヒクルにスリーロールミルで分散させて抵抗膜用ペーストを調製した。
【0138】
なお、混合する際Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=40:17:43とした。
(抵抗膜形成工程)
ペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペーストを、予め一対の電極が形成されたアルミナ基板上に、マスクを介して塗布し、幅1mmで長さ10mm、塗布膜の平均膜厚は10μmとした。なお、電極はAgペーストを用いて予め作製した。
【0139】
上記塗布膜を室温で30分放置後、電気オーブン中で150℃、5分間加熱して乾燥させた。その後、15分間で850℃まで加熱し、850℃で10分間保持した。
【0140】
得られた抵抗体について、抵抗値、抵抗温度係数、および導電成分の含有量の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例4-2]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=15:1:84とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0141】
評価結果を表1に示す。
[比較例4-1]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=44:32:24とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0142】
なお、得られた抵抗体の抵抗値を測定したが、導通がなく、抵抗値、および抵抗温度係数は測定できなかった。
[実験例5]
[実施例5-1]
(被覆付きガラス粒子形成工程)
図7に示した成膜装置70を用いて、被覆付きガラス粒子を形成した。
【0143】
容量が2000mLである4つ口フラスコである反応容器71内に酸性溶液である0.5Mの硫酸溶液1.8Lを入れ、さらに酸化剤であるKIO(富士フイルム和光純薬(株)製)を50g加え、反応溶液711とした。
【0144】
反応容器71は、マントルヒーターである加熱装置72に入れて、反応溶液711を96℃まで加熱した。
【0145】
一方、予めRuCl・3HO(富士フイルム和光純薬(株)製)を0.5Mの硫酸溶液に溶解し、滴下ロートに入れておいた。なお、図7中の原料供給管73を滴下ロートとした。そして、滴下ロートから、反応溶液711に対して、Ru量として12mg/時間になるように、上記塩化ルテニウムを硫酸溶液に溶解した溶液を滴下した。
【0146】
反応容器71内には、気体供給管74からアルゴンガスを吹き込み、生成、気化したRuOを、供給配管75を介して吸着器76に供給し、吸着器76内に設置した平均粒径1.5μmのガラス粒子761の表面に接触、析出させた。なお、ガラス粒子761の表面にRuOを析出しやすくするために、水槽77内に張った25℃の水に吸着器76を入れ、吸着器76を冷却しておいた。
【0147】
排気ガスは、例えば吸着器76の下流側に配置したモレキュラーシーブである吸着剤762を通してから排気管78により系外に排出した。
【0148】
RuOは室温では不安定であることから、酸素が脱離してRuOになるが、念のため、ホットプレート上で、大気中、150℃で1時間保持して、RuO(沸点129℃)を除去して、RuOが付着したガラス粒子を作製した。
【0149】
RuOは、ガラス粒子の表面に酸化ルテニウム膜を平均で2nmとなるように予備試験で求めておいた成膜条件(成膜時間)に基づいて成膜した。なお、評価を行ったところ、得られた被覆付きガラス粒子が有する酸化ルテニウム膜の膜厚は2nmであることを確認できた。
【0150】
酸化ルテニウム膜の膜厚の測定は、実施例1-1の場合と同様にして実施した。
【0151】
ガラス粒子としては、SiO:35質量%-B:20質量%-Al:5質量%-CaO:5質量%-BaO:20質量%-ZnO:15質量%の割合で各成分を含有するガラスの粒子を使用した。
(ペースト調製工程)
平均粒径が1.0μmのAg粉末と、平均粒径が0.3μmのPd粉末と、上記被覆付きガラス粒子とを、エチルセルロース10質量%とターピネオール90質量%とからなるビヒクルにスリーロールミルで分散させて抵抗膜用ペーストを調製した。
【0152】
なお、混合する際Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=40:17:43とした。
(抵抗膜形成工程)
ペースト調製工程で得られた抵抗膜用ペーストを、予め一対の電極が形成されたアルミナ基板上に、マスクを介して塗布し、幅1mmで長さ10mm、塗布膜の平均膜厚は10μmとした。なお、電極はAgペーストを用いて予め作製した。
【0153】
上記塗布膜を室温で30分放置後、電気オーブン中で150℃、5分間加熱して乾燥させた。その後、15分間で850℃まで加熱し、850℃で10分間保持した。
【0154】
得られた抵抗体について、抵抗値、抵抗温度係数、および導電成分の含有量の評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例5-2]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=15:1:84とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0155】
評価結果を表1に示す。
[比較例5-1]
ペースト調製工程において、Ag粉末と、Pd粉末と、被覆付きガラス粒子との配合は、質量比で、Ag粉末:Pd粉末:被覆付きガラス粒子=44:32:24とした。以上の点以外は実施例1-1と同様の方法でペーストと抵抗体を作成して評価を行った。
【0156】
なお、得られた抵抗体の抵抗値を測定したが、導通がなく、抵抗値、および抵抗温度係数は測定できなかった。
【0157】
【表1】
表1に示した様に導電粒子と、所定の含有割合の導電成分を含む実施例1-1、実施例1-2、実施例2-1、実施例2-2、実施例3-1、実施例3-2、実施例4-1、実施例4-2、実施例5-1、実施例5-2においては、鉛成分を含有していない抵抗体が得られ、抵抗温度係数が-100ppm以上+100ppm以下の範囲内に抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0158】
10 抵抗体
111 電極
112 抵抗膜
12 ガラス
13 導電粒子
14、312 導電成分
30 抵抗膜用ペースト
31 被覆付きガラス粒子
311、55、632、761 ガラス粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7