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特開2023-1047845員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置
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  • 特開-5員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置 図1A
  • 特開-5員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置 図1B
  • 特開-5員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置 図1C
  • 特開-5員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置 図2
  • 特開-5員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104784
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】5員環縮合環化合物及びその製造方法、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 85/00 20060101AFI20230721BHJP
   C08L 87/00 20060101ALI20230721BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230721BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230721BHJP
【FI】
C08G85/00
C08L87/00
C08J5/24
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005981
(22)【出願日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J031
4M109
【Fターム(参考)】
4F072AD05
4F072AG03
4F072AG19
4F072AL13
4J002BA012
4J002CE002
4J002CM041
4J002EK036
4J002GF00
4J002GQ00
4J002GQ05
4J031BA04
4J031BB01
4J031BC03
4J031BC11
4J031CA14
4J031CA36
4J031CB09
4M109AA01
4M109EA01
4M109EB02
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB12
4M109EC05
4M109EC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低誘電正接及び優れた耐熱性を高次に両立可能な5員環縮合環化合物の提供。
【解決手段】式(0)で表される構造単位を有する5員環縮合環化合物である。
(Mは式(1)で表される2価の基、Aは置換/非置換のアリーレン基である。)


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(0)で表される構造単位を有する、5員環縮合環化合物。
【化1】
(ここで、
は、下記一般式(1)で表される2価の基であり、
及びRの一方は水素原子、他方はメチル基であり、
及びRの一方は水素原子、他方はメチル基であり、
Aは、非置換又は置換のアリーレン基であり、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【化2】
(ここで、
は、一般式(1)の任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示し、一般式(1)の任意の環構成炭素原子上にあるが、ただし2つの結合手が同一の炭素原子上にあることはない。)
【請求項2】
熱硬化性化合物である、請求項1記載の5員環縮合環化合物。
【請求項3】
ブレンステッド酸の存在下で、下記一般式(2)で表されるインデン化合物への下記一般式(3)で表されるカチオノイド試剤の求電子置換反応を行う、請求項1又は2に記載の5員環縮合環化合物を製造する方法。
【化3】
(ここで、
は、一般式(2)の任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは、0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。)
【化4】
(ここで、
及びRはビニル基であり、
Aは、非置換又は置換のアリーレン基である。)
【請求項4】
請求項1又は2に記載の5員環縮合環化合物と、硬化剤とを含有する硬化性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
補強基材及び前記補強基材に含浸した請求項4に記載の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項7】
請求項6に記載のプリプレグ及び銅箔の積層体である回路基板。
【請求項8】
請求項4に記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
【請求項9】
請求項4に記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、5員環縮合環化合物及びその製造方法、当該5員環縮合環化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、並びに半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の回路基板材料としてエポキシ系樹脂又はBT(ビスマレイミド-トリアジン)系樹脂などの熱硬化性樹脂を、ガラスクロスに含浸、加熱乾燥して得られるプリプレグ、該プリプレグを加熱硬化した積層板、及び該積層板と該プリプレグとを組み合わせて加熱硬化した多層板が、電子機器用の回路基板材料として広く使用されている。中でも、半導体を実装するためのインターポーザの役割を果たすプリント配線板の一種であるパッケージ基板は薄型化が進み、実装時のパッケージ基板の反りが問題となることから、実装時のパッケージ基板の反りを抑制するため、高耐熱性を発現する材料が求められている。
また、近年、信号の高速化及び高周波数化が進み、これらの環境下で十分に低い誘電率を維持し、かつ十分に低い誘電正接を発現する硬化物を形成し得る熱硬化性組成物の提供が望まれている。特に最近では各種電材用途、とりわけ先端材料用途においては、耐熱性、誘電特性に代表される性能の一層の向上、及びこれらを兼備する材料、組成物が求められている。
【0003】
これらの要求に対し、耐熱性と低誘電率・低誘電正接を兼備する材料として炭化水素樹脂が注目されている。
例えば、特許文献1には、優れた耐熱性と電気特性を示し、良好な硬化性を有する硬化性樹脂混合物として、所定のシクロペンタジエン構造を有する硬化性樹脂混合物が開示されている。
また、特許文献2には、空孔導入しなくとも低い誘電率を有し、層間絶縁膜材料として好適な低誘電材料として、所定の構造を有するポリインダン誘導体からなる低誘電材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/031935号
【特許文献2】特開2007-311732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に耐熱性については先端材料用途に要求されるレベルは高く、このレベルに達し、かつ低誘電正接を発現する材料が依然として求められている。
そこで、本開示が解決しようとする技術的課題は、優れた耐熱性及び低誘電正接を発現することができる5員環縮合環化合物及びその製造方法、当該5員環縮合環化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材並びに半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(0):
【化1】
(ここで、
は、下記一般式(1)で表される2価の基であり、
及びRの一方は水素原子、他方はメチル基であり、
及びRの一方は水素原子、他方はメチル基であり、
Aは、非置換又は置換のアリーレン基であり、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【化2】
(ここで、
は、一般式(1)の任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示し、一般式(1)の任意の環構成炭素原子上にあるが、ただし2つの結合手が同一の炭素原子上にあることはない。)
で表される構造単位を有する5員環縮合環化合物を用いることにより、低誘電正接及び優れた耐熱性を高次に両立することができることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低誘電正接及び優れた耐熱性を高次に両立することができる5員環縮合環化合物及びその製造方法を提供することができ、また、当該5員環縮合環化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することができる。さらに、当該硬化性組成物又はその硬化物を用いることにより、低誘電性及び優れた耐熱性が高次に両立した、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施例1で合成した5員環縮合環化合物のGPC測定結果である。
図1B】実施例1で合成した5員環縮合環化合物のFD-MS測定結果である。
図1C】実施例1で合成した5員環縮合環化合物のNMR測定結果である。
図2】実施例2で合成した5員環縮合環化合物のGPC測定結果である。
図3】実施例3で合成した5員環縮合環化合物のGPC測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[用語]
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、目的の5員環縮合環化合物又は当該5員環縮合環化合物を1種又は2種以上含む混合物を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合より形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
【0011】
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、炭素原子数としては1~12のものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基等である。
本明細書における「アルコキシ基」は、アルキル-O-の構造を有し、構造中のアルキル部分に関しては、上記アルキル基の記載が適用される。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等である。
本明細書における「アリール基」は、一価の芳香族炭化水素基であり、単環又は多環のいずれでもよく、炭素原子数としては6~20のものが挙げられ、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基又はインダニル基等である。
本明細書における「アリールオキシ基」は、アリール-O-の構造を有し、構造中のアリール部分に関しては、上記アリール基の記載が適用される。例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等である。
本明細書における「アラルキル基」は、アリール基の1個以上、好ましくは1又は2個、特に1個で置換されたアルキル基であり、アリール基及びアルキル基に関しては、上記のアリール基及びアルキル基の記載が適用される。例えば、ベンジル基又はフェネチル基等である。
本明細書における「アリーレン基」は、二価の芳香族炭化水素基であり、単環又は多環のいずれでもよく、炭素原子数としては6~20のものが挙げられ、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等である。
本明細書における「置換のアリーレン基」は、アリーレン基の1個以上の水素原子が置換基で置き換わっていることいい、置換基としては、アルキル、アリール、アリル等の炭化水素置換基、ヒドロキシ、アルコキシ、チオール、スルフィド等のヘテロ原子を含有する置換基等が挙げられる。2個以上の水素原子が置換基で置き換わっている場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0012】
本明細書における「ブレンステッド酸」は、H(プロトン)を他の物質に供与することができる化学物質であって、無機酸であっても、有機酸であってもよい。例えば、無機酸としては、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、硫酸、亜硫酸、ホウ酸、フッ素化水素酸、フルオロスルホン酸等が挙げられ、有機酸としては、脂肪族カルボン酸(例えば、モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸等)、ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸等)、3価以上のポリカルボン酸(アコニット酸等)等)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)、スルホン酸(例えば、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸、カンファ-スルホン酸等)、置換基を有するスルホン酸(トリフルオロメタンスルホン酸等)、芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等)等が挙げられる。ブレンステッド酸は、水和物の形態であってもよい。
【0013】
本明細書における「数平均分子量(Mn)」、「重量平均分子量(Mw)」及び「分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定した値とする。
【0014】
[5員環縮合環化合物]
本開示に係る5員環縮合環化合物は、下記一般式(0)で表される構造単位を有する。
【化3】
(ここで、
は、下記一般式(1)で表される2価の基であり、
及びRの一方は水素原子、他方はメチル基であり、
及びRの一方は水素原子、他方はメチル基であり、
Aは、非置換又は置換のアリーレン基であり、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【化4】
(ここで、
は、一般式(1)の任意のベンゼン環構成原子上にあり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示し、一般式(1)の任意の環構成炭素原子上にあるが、ただし2つの結合手が同一の炭素原子上にあることはない。)
本開示の5員環縮合環化合物は、構成原子における炭素原子及び水素原子の占める割合が非常に高く、極性官能基の存在を必要としないため、低誘電正接を発現させることができる。また、密なネットワークの形成が可能であることから、高い耐熱性を発現させることができる。
【0015】
一般式(0)において、2つの*は、それぞれ結合手を示す。一般式(0)は、2価の基である。
【0016】
一般式(1)で表されるMは、2価の基である。2つの*は、それぞれ結合手を示し、いずれか一方は、一般式(0)におけるR及びRを有する炭素原子(-CR-)に結合している。
結合手は、それぞれ一般式(1)の任意の環構成炭素原子上にあり、2つの結合手の両方が5員環を構成する炭素原子上にあってもよく、一方の結合手が5員環を構成する炭素原子上にあり、他方の結合手がベンゼン環を構成する炭素原子上にあってもよく、2つの結合手の両方がベンゼン環を構成する炭素原子上にあってもよい。ただし、2つの結合手が同一の炭素原子上にあることはない。
【0017】
一般式(1)において、5員環に示されている2つの破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはない。破線が不在の場合は、単結合となる。破線が不在の場合、インダン構造に相当し、2つの破線の一方が不在であり、他方が二重結合の場合、インデン構造に相当する。
【0018】
一般式(1)において、pが0の場合、5員環が縮合しているベンゼン環は非置換であり、pが1~4の整数の場合、当該ベンゼン環に1~4個のRが置換している構造となる。pは0又は1が好ましく、特に0が好ましい。pが2~4の場合、Rは同一であっても、異なっていてもよく、好ましくは同一である。
2つの結合手が5員環を構成する炭素原子上にある場合、pは0~4の整数であることができ、結合手がベンゼン環を構成する炭素原子上にある場合、pは(4-結合手の数)の整数であることができる。
【0019】
pが1以上の場合、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基又はアリール基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、インダニル基又はインデニル基である。
【0020】
Aは、非置換のアリーレン基が好ましく、より好ましくはフェニレン基(1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基)、ナフチレン基(1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基等)等であり、さらに好ましくは1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等である。
【0021】
5員環縮合環化合物は、一般式(0)の構造単位を1個以上有していればよい。一般式(0)
の構造単位が2個以上存在する場合、構造単位は同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(0)において、Mから延びている結合手が水素原子と結合している場合、5員環縮合環化合物の末端部分を形成することになり、当該部分にはMに由来するインダン構造又はインデン構造が存在することになる。具体的には、以下の一般式(1’)で表される構造である。
【0022】
【化5】
(ここで、R及びpは、一般式(1)と同義であり、一般式(1)におけるR及びpに関する例示及び好適例が適用され、
*は、結合手を示し、一般式(1’)の任意の環構成炭素原子上にある。)
【0023】
[5員環縮合環化合物の製造]
本開示の5員環縮合環化合物は、ブレンステッド酸の存在下で、下記一般式(2):
【化6】
(ここで、
は、一般式(2)の任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは、0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。)で表されるインデン化合物への下記一般式(3):
【化7】
(ここで、
及びRはビニル基であり、
Aは、非置換又は置換のアリーレン基である。)
で表されるカチオノイド試剤の求電子置換反応を行うことで製造することができる。
【0024】
<ブレンステッド酸>
ブレンステッド酸は、有機酸であることができ、溶解性の点から、好ましくはp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等である。これらは水和物であってもよい。
【0025】
<反応原料>
5員環縮合環化合物の製造において、一般式(2)で表されるインデン化合物と、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤は反応原料である。
【0026】
(一般式(2)で表されるインデン化合物)
一般式(2)において、pは、0~4の整数である。一般式(2)において、pが0の場合、5員環が縮合しているベンゼン環は非置換であり、pが1~4の整数の場合、当該ベンゼン環に1~4個のRが置換している構造となる。pは0又は1が好ましく、特に0が好ましい。
【0027】
一般式(2)において、Rは、一般式(2)の任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり、Rは一般式(1)と同義であり、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、又はアラルキル基であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、好ましくは同一である。
pが1以上の場合、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基である。
【0028】
一般式(2)で表されるインデン化合物は単独でも、2種以上を任意の比率で使用してもよい。
【0029】
(カチオノイド試剤)
一般式(3)において、R及びRはいずれもビニル基であるため、カチオノイド試剤はジビニル化合物である。
一般式(3)において、Aは一般式(0)と同義であり、非置換又は置換のアリーレン基であり、非置換のアリーレン基が好ましく、より好ましくはフェニレン基(1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基)、ナフチレン基(1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基等)等であり、さらに好ましくは1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等である。Aがフェニレン基の場合、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤はジビニルベンゼンである。
【0030】
一般式(3)で表されるカチオノイド試剤は単独でも、2種以上を任意の比率で使用してもよい。
【0031】
(その他の成分)
反応原料は、一般式(2)で表されるインデン化合物及び一般式(3)で表されるカチオノイド試剤以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含むことができる。その他の成分としては、下記一般式(4):
【化8】
(ここで、
は、アルキル基であり、
10は、ビニル基であり、
Aは、非置換又は置換のアリーレン基である。)
で表されるモノビニル化合物が挙げられる。その他の成分は、一般式(4)で表されるモノ化合物であることが好ましい。
【0032】
一般式(4)において、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基であり、さらに好ましくはエチル基である。
【0033】
一般式(4)において、Aは一般式(0)と同義であり、非置換又は置換のアリーレン基であり、非置換のアリーレン基が好ましく、より好ましくはフェニレン基(1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基)、ナフチレン基(1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基等)等であり、さらに好ましくは1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等である。Rがエチル基、Aがフェニレン基の場合、一般式(4)で表されるモノビニル化合物は、エチルスチレンである。
【0034】
(配合量)
反応原料における、一般式(2)で表されるインデン化合物と一般式(3)で表されるカチオノイド試剤のモル比(一般式(2)で表されるインデン化合物/一般式(3)で表わされるカチオノイド試剤)は、1~7とすることができ、耐熱性、誘電正接の点から、好ましくは1~5である。
【0035】
反応原料に占める一般式(2)で表されるインデン化合物と一般式(3)で表されるカチオノイド試剤の合計は、反応原料100質量%中、10質量%以上であることができ、反応効率の点から、好ましくは20質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、例えば、90質量%以下とすることができる。
耐熱性、誘電正接の点から、一般式(4)で表されるモノビニル化合物を使用することが好ましく、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤(3)と一般式(4)で表されるモノビニル化合物(4)の合計を100質量%とした場合、一般式(4)で表されるモノビニル化合物が1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以上50質量%以下である。
【0036】
<製造工程>
ブレンステッド酸及び反応原料は、反応容器に一括装入し、所定の温度で反応させることができる。あるいは、反応原料中の一般式(2)で表されるインデン化合物と一般式(3)で表されるカチオノイド試剤の一方とブレンステッド酸を装入し、所定の温度に保ちつつ、反応原料の残部(一般式(2)で表されるインデン化合物と一般式(3)で表されるカチオノイド試剤の他方を含む)を滴下しながら反応させてもよい。
反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒を使用した場合は、必要により、反応後に溶媒と未反応物を留去させて、目的物である5員環縮合環化合物を得ることができる。溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物である5員環縮合環化合物を得ることができる。
【0037】
(使用量)
ブレンステッド酸の使用量は、反応原料(一般式(2)で表されるインデン化合物、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤及びその他の成分)100質量部に対して、0.1~20質量部であることができ、反応効率の点から、好ましくは、0.5~20質量部である。
【0038】
(溶媒)
反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましく、溶媒として有機溶媒が挙げられる。有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等である。溶媒は単独でも、2種以上を任意の比率で用いてもよい。
溶媒を使用する場合、溶媒は、反応原料100質量部に対して、500質量部以下とすることができ、反応効率の点から、好ましくは50~300質量部である。
【0039】
(反応条件)
反応温度は、60~250℃とすることができ、反応の促進の点から、好ましくは80~230℃である。
反応時間は、0.5~24時間とすることができ、反応を十分に進行させ、かつ生成物の熱分解反応等の副反応を抑制する点から、好ましくは、1~23時間である。
【0040】
(中和工程)
反応終了後、反応生成物に塩基性化合物を加えて中和してもよい。塩基性化合物は、無機塩基であっても、有機塩基であってもよく、無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等)等が挙げられ、有機塩基としては、アルキルアンモウムの水酸化物(水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等)、アルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン等)、芳香族アミン(アニリン等)、複素環式のアミン化合物(ピリジン、イミダゾール等)等が挙げられる。
塩基性度が強く、少量添加で中和が可能である点から、無機塩基が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等である。
【0041】
(精製工程)
得られた反応生成物を、場合により中和した後、精製工程に付すことができる。
精製手段は、特に限定されず、公知の方法(例えば、有機溶媒による洗浄、吸着、分別蒸留、イオン交換樹脂処理、再沈殿、晶析、ろ過、加熱又は減圧下での反応溶媒の留去等)を採用することができる。精製工程により、反応溶媒、未反応物等の低分子量成分、イオン性不純物等が除去され、耐熱性、誘電特性をより向上させることができる。
【0042】
得られた反応生成物は、一般式(0)の構造単位を有する5員環縮合環化合物が混在した混合物(5員環縮合環系混合物)であり得、中和及び/又は精製工程に付すことができる。分離工程に付して、特定の分子量を有する5員環縮合環化合物、特定の官能基や不飽和結合を有する5員環縮合環化合物等を回収してもよい。
【0043】
[5員環縮合環系混合物]
反応生成物は、一般式(0)の構造単位を有する5員環縮合環化合物が混在した混合物(5員環縮合環系混合物)を含む。
5員環縮合環系混合物中の一般式(0)の構造単位を有する5員環縮合環化合物は、一般式(0)の構造単位を1個以上有していることができる。一般式(0)の構造単位が直鎖状に連結していることが好ましい。一般式(0)の構造単位が2個以上存在する場合、構造単位は同一であっても、異なっていてもよい。
化合物は、一般式(0)の構造単位と、一般式(0)の構造単位から誘導される単位を有するものであってもよい。例えば、一般式(0)の構造単位に、一般式(2)で表されるインデン化合物、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤、任意のその他の成分(例えば、一般式(4)で表されるモノビニル化合物)のいずれか1個以上が反応した単位が挙げられる。
【0044】
5員環縮合環化合物には、一般式(0)においてMを表す一般式(1)が、下記一般式(i)~(xii)である化合物が包含される。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(ここで、
は、各式における任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり。アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
は0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
は0~3の整数であり、pが2~3の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
は0~2の整数であり、pが2の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【0045】
一般式(1)としては、下記一般式(1A)が挙げられる。
【化13】
(ここで、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示し、一般式(1)の任意の環構成炭素原子上にあるが、ただし2つの結合手が同一の炭素原子上にあることはない。)
【0046】
一般式(1A)には、下記一般式(i-1A)~(xii-1A)が包含される。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
(ここで、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【0047】
一般式(1)、その例示及び好適例の各基は、一般式(0)とは独立して、5員環縮合化合物中に存在していてもよい。
【0048】
5員環縮合環化合物は、下記一般式(0A)で示される構造単位を有することが好ましい。
【化18】
(ここで、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【0049】
5員環縮合環系混合物に含まれる化合物の分子鎖末端は、一般式(2)で表されるインデン化合物、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤、任意のその他の成分(例えば、一般式(4)で表されるモノビニル化合物)に由来する構造であることができる。具体的には、末端はインデン環又はインダン環構造を有することができる。
分子鎖末端に、インデン環構造、一般式(3)で表されるカチオノイド試剤由来のビニル基等の不飽和結合を有する化合物は、熱硬化性を示し、種々の反応又は用途に応用することができる。直鎖状の分子鎖末端の両方に不飽和結合を有する化合物が好ましい。
【0050】
上記分子鎖末端の構造は、一般式(0)において、他の原子との結合を表す*が、水素原子と結合している場合を含む。
【0051】
から延びている結合手が水素原子と結合している場合、分子鎖末端は、一般式(1’)の構造となる。
【化19】
(ここで、
は、一般式(1’)における任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり。アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは、0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、結合手を示す。)
一般式(1’)におけるR及びpについては、一般式(1)におけるR及びpに関する例示及び好適例が適用される。
【0052】
一般式(1’)には、下記一般式(xiii)~(xvi)が包含される。
【化20】
(ここで、
は、各式における任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり。アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
は0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
は0~3の整数であり、pが2~3の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【0053】
一般式(1’)としては、下記一般式(1’A)が挙げられる。
【化21】
(ここで、破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、結合手を示し、式(2)の任意の環構成炭素原子上にある。)
【0054】
一般式(1’A)には、下記一般式(xiii-1’A)~(xvi-1’A)が包含される。
【化22】
(ここで、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線同時に二重結合を示すことはなく、
*は、それぞれ結合手を示す。)
【0055】
一般式(1’)は、下記一般式(1’a)及び(1’a)を包含する。
【化23】
【化24】
【0056】
一般式(1’)、その例示及び好適例の各基は、一般式(0)とは独立して、5員環縮合化合物中に存在していてもよい。
例えば、一般式(0)のMから延びる結合手に、一般式(1’)で示される基が結合していてもよいし、一般式(1)で示される2価の基の1個以上を介して、一般式(1’)で示される基が結合していてもよい。あるいは、一般式(0)とは、独立して、一般式(1’)で示される基が分子鎖末端に存在していてもよく、一般式(1)で示される2価の基の1個以上を介して一般式(1’)で示される基が結合した構造が分子鎖末端であってもよい。例えば、以下の構造である。
【化25】
(ここで、
は、上記式における任意のベンゼン環構成炭素原子上にあり。アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基であり、
pは、0~4の整数であり、pが2~4の整数の場合、複数のRは同一であっても、異なっていてもよく、
nは、1以上の整数であり、
破線は、それぞれ独立して、不在であるか又は二重結合を示すが、ただし2つの破線が同時に二重結合を示すことはなく、
*は、結合手を示す。)
【0057】
分子鎖末端の構造については、下記一般式(5):
【化26】
(ここで、Rはビニル基であり、
*は、結合手を示す。)
で表されるビニル基含有構造、一般式(6):
【化27】
(ここで、Rはアルキル基であり、
*は、結合手を示す。)で表される構造であってもよい。
【0058】
一般式(5)及び(6)は、それぞれ、下記一般式(5a)及び(6a)を包含する。
【化28】
(ここで、*は結合手を示す。)
【化29】
【0059】
5員環縮合環系混合物の数平均分子量(Mn)は、200~10000の範囲であることができ、好ましくは300~8000の範囲である。また、5員環縮合環系混合物の重量平均分子量(Mw)は400~50000の範囲であることができ、好ましくは500~40000の範囲である。この範囲であると、優れた耐熱性及び誘電特性を発現させることができる。
【0060】
5員環縮合環系混合物の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1~10の範囲であることができ、より好ましくは1~7であり、さらに好ましくは1~5である。この範囲であると、優れた耐熱性及び誘電特性を発現させることができる。
【0061】
本開示の5員環縮合環系混合物は、優れた耐熱性及び低誘電正接を示す5員環縮合環化合物を含有するため、5員環縮合環化合物と同様に、硬化性組成物として使用することができる。
ブレンステッド酸の存在下で、反応原料(一般式(2)で表されるインデン化合物及び一般式(3)で表されるカチオノイド試剤を含む)を反応させて得られる反応生成物である5員環縮合環系混合物は、一般式(0)で表される構造単位を有する5員環縮合環化合物以外の化合物(その他の化合物)を含有し得る。その他の化合物としては、例えば、一般式(2)のインデン化合物同士が反応した化合物、一般式(2)のインデン化合物とその他の成分(例えば、一般式(4)で表されるモノビニル化合物)が反応した化合物等が包含され、インデン重合体、インダン重合体等が挙げられる。本開示の目的を損なわない範囲であれば、その他の化合物を分離せずに、5員環縮合環系混合物を硬化性組成物の調製に用いてもよい。
【0062】
[硬化性組成物]
本開示の硬化性組成物は、本開示の5員環縮合環化合物と硬化剤を含有することができる。5員環縮合環化合物は、5員環縮合環系混合物として、硬化性組成物に配合してもよい。
本開示の5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物は、工業的な合成手段で製造でき、樹脂への溶融混練におけるハンドリング性に優れ、5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物を含有する硬化性組成物より得られる硬化物において、優れた耐熱性及び誘電特性を発現させることができる。
【0063】
硬化性組成物100質量部に対し、5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物は、10~90質量部とすることができ、好ましくは20~80質量部である。
【0064】
硬化剤は、本開示の5員環縮合環化合物と反応することができる化合物であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂等の樹脂成分、スチレン、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等の化合物が挙げられる。
【0065】
硬化性組成物100質量部に対し、硬化剤は、10~90質量部とすることができ、好ましくは20~80質量部である。
【0066】
硬化性組成物には、硬化触媒を含有させてもよい。硬化触媒は、特に限定されず、例えば、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトン過酸化物、t-ブチルパーベンゾエート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル等)、フリーラジカル(アゾビスイソブチロニトリル、ガルビノキシル等)等が挙げられる。
【0067】
硬化性組成物には、硬化促進剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤、非ハロゲン系難燃剤、無機充填材、難燃剤(例えば、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤)、溶媒等の種々の配合剤を含有させてもよい。
【0068】
硬化性組成物は、5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物、硬化剤及び任意の成分(例えば、硬化触媒、配合剤等)を均一に混合することにより得ることができる。
【0069】
[硬化物]
本開示の硬化物は、本開示の硬化性組成物を硬化させることにより得ることができる。硬化方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の形態とすることができる。
【0070】
[半導体封止材]
本開示の半導体封止材は、本開示の硬化性組成物を含有することができる。本開示の硬化性組成物は、本開示の5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物を含有するため、上記硬化性組成物を含有する半導体封止材は、優れた耐熱性及び誘電特性を発現させることができる。
【0071】
半導体封止材には、本開示の硬化性組成物に無機充填剤を含有させたものを用いることができる。無機充填剤は、特に限定されず、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を挙げることができる。
硬化性組成物100質量部に対し、無機充填剤は0.5~1200質量部とすることができる。
【0072】
半導体封止材には、種々の配合剤を配合してもよく、配合剤としては硬化性組成物に関し記載されたものが挙げられる。
【0073】
半導体封止材は、本開示の硬化性組成物及び必要に応じて配合剤を混合することで得ることができ、例えば、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法等が挙げられる。
【0074】
[半導体装置]
本開示の半導体装置は、本開示の半導体封止材の硬化物を含むことができる。本開示の半導体装置に用いられる半導体封止材は、本開示の5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物を含有する硬化性組成物を含有する。本開示の半導体装置は、当該半導体封止材の硬化物を含むため、優れた耐熱性及び誘電特性を有する。
【0075】
半導体装置は、本開示の半導体封止材を加熱硬化することで得ることができ、例えば、注型するか、あるいはトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、さらに室温(20℃)~250℃の温度範囲で加熱硬化させる方法等が挙げられる。
【0076】
[プリプレグ]
本開示のプリプレグは、補強基材及びこの補強基材に含浸した本開示の硬化性組成物の半硬化物を有することができる。
硬化性組成物からプリプレグを得る方法は、特に限定されず、後述する有機溶媒を配合してワニス化した硬化性組成物を、補強基材(例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布等)に含浸したのち、用いた溶媒種に応じた加熱温度(好ましくは50~170℃)で加熱して、硬化性組成物を半硬化(あるいは未硬化)する方法が挙げられる。
用いられる硬化性組成物と補強基材の質量割合は、特に限定されないが、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0077】
硬化性組成物の半硬化物は、加熱温度及び加熱時間を調整して、硬化反応を完了させずに途中で停止させることによって得ることができる。半硬化物の硬化度は、例えば85%以下5%以上とすることができる。ここで、硬化物は、半硬化物より高い硬化度を有し得る。
半硬化物の硬化度は、硬化性組成物を加熱する際の硬化発熱量と、その半硬化物の硬化発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(半硬化物の硬化発熱量/硬化性組成物の硬化発熱量)]×100
【0078】
プリプレグの製造に用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶媒の選択、使用量は、用途によって適宜選択し得、例えば、プリプレグから回路基板を製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶媒が好ましく、使用量としては、不揮発分が40~80質量%となる量が好ましい。
【0079】
[回路基板]
本開示の回路基板は、本開示のプリプレグ及び銅箔の積層体からなる。回路基板を得る方法は、特に限定されず、例えば、本開示のプリプレグを必要に応じて積層し、銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0080】
[ビルドアップフィルム]
本開示のビルドアップフィルムは、本開示の硬化性組成物を含有することができる。ビルドアップフィルムを製造する方法は、特に限定されず、例えば、本開示の硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し、硬化性組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0081】
ビルドフィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール、あるいは、スルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが求められるため、硬化性組成物は、このような特性を発現するように、上記各成分を配合することが好ましい。
【0082】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は、通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0083】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の上記硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶媒を乾燥させて硬化性組成物からなる組成物層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0084】
形成される組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0085】
なお、組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0086】
上記した支持フィルム(Y)及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0087】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0088】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0089】
[用途]
本開示の5員環縮合環化合物を含有する硬化性組成物により得られる硬化物は、耐熱性及び誘電特性に優れることから、耐熱部材又は電子部材に好適に使用することができる。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、導電性ペーストを用いた接着剤やレジスト材料等に好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、硬化性組成物に含まれる5員環縮合環化合物又は5員環縮合環系混合物は、各種溶剤への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例0090】
本開示を実施例、比較例により具体的に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0091】
5員環縮合環化合物を5員環縮合環系混合物として合成し、以下のようにして物性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0092】
(1)GPC測定
以下の測定装置、測定条件を用いて、実施例及び比較例で得られた5員環縮合環化合物(5員環縮合環系混合物)についての、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
「測定装置」
東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
「測定条件」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:合成例で得られた5員環縮合環化合物の樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0093】
(2)FD-MS測定
実施例で得られた5員環縮合環化合物のFD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/分
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07秒
【0094】
(3)13C-NMR測定
実施例で得られた5員環縮合環化合物の13C-NMRスペクトルは以下の測定装置、測定条件にて測定した。
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECZ400S」
共鳴周波数:100MHz
積算回数:4000回
溶媒:クロロホルム-d
試料濃度:12質量%
緩和試薬:クロム(III)アセチルアセトネート
【0095】
<実施例1:5員環縮合環化合物(A-1)の合成>
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにインデン289.5部、ジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB-810」ジビニルベンゼン純度81%、エチルスチレンを19%含有)200.0部、パラトルエンスルホン酸1水和物4.9部とトルエン489.5部を仕込んだ。発熱に注意し、フラスコ内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃で2時間撹拌反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、49%水酸化ナトリウム水溶液2.1部を添加して中和した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)244.8部を加え、水489.5部で3回洗浄した。加熱減圧条件下でトルエン、未反応のインデン等を留去し、5員環縮合環化合物(A-1)を得た。得られた(A-1)のGPC、FD-MS及び13C-NMRの各チャートを図1A~1Cに示す。GPC測定結果より、(A-1)のMnは439、Mwは894、Mw/Mnは2.035であった。
【0096】
<実施例2:5員環縮合環化合物(A-2)の合成>
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにインデン231.6部、ジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB-570」ジビニルベンゼン純度57%、エチルスチレンを43%含有)160.0部、パラトルエンスルホン酸1水和物3.9部とトルエン391.6部を仕込んだ。発熱に注意し、フラスコ内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃で2時間撹拌反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、49%水酸化ナトリウム水溶液1.7部を添加して中和した後、MIBK195.8部を加え、水195.8部で3回洗浄した。加熱減圧条件下でトルエン、未反応のインデン等を留去し、5員環縮合環化合物(A-2)を得た。得られた(A-2)のGPCチャートを図2に示す。GPC測定結果より、(A-2)のMnは506、Mwは997、Mw/Mnは1.973であった。
【0097】
<実施例3:5員環縮合環化合物(A-3)の合成>
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにインデン152.0部、ジビニルベンゼン(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「DVB-960」ジビニルベンゼン純度96%、エチルスチレンを4%含有)105.0部、パラトルエンスルホン酸1水和物2.6部とトルエン257.0部を仕込んだ。発熱に注意し、フラスコ内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃で2時間撹拌反応させた。反応終了後、80℃まで冷却し、49%水酸化ナトリウム水溶液1.1部を添加して中和した後、MIBK128.5部を加え、水128.5部で3回洗浄した。加熱減圧条件下でトルエン、未反応のインデン等を留去し、5員環縮合環化合物(A-3)を得た。得られた(A-3)のGPCチャートを図3に示す。GPC測定結果より、(A-3)のMnは789、Mwは2167、Mw/Mnは2.746であった。
【0098】
<比較例1:5員環縮合環化合物(B-1)の合成>
温度計、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにインデン116.0部、カリウム-tert-ブトキシド37.0部、トルエン191.0部を仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温し、4,4′-ビスクロロメチルビフェニル37.5部を30分かけて分割添加した。80℃で3時間反応させた後、同温度でベンズアルデヒド74.5部を30分かけて滴下、2時間反応させて、室温まで冷却し、35%塩酸水溶液104.0部を加え、脱水しながら95℃まで昇温、5時間反応させた。その後、室温において30%水酸化ナトリウム水溶液で中和を行い、水層が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層を加熱減圧条件下でトルエン、未反応のインデン等を留去し、ろ過することによって5員環縮合環化合物(B-1)を得た。
【0099】
合成した5員環縮合環化合物の硬化物を作成し、以下のようにして物性評価を実施した。結果を表1に示す。
(1)耐熱分解性の測定
厚さ2.0mmの硬化物を細かく裁断し、熱重量分析装置(METTLER TOREDO社製熱重量測定装置「TGA/DSC1」)を用いて、昇温速度を5℃/分として窒素雰囲気下で測定を行い、5重量%及び10重量%減少する温度(Td5及びTd10)を求めた。
(2)誘電正接の測定
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHz及び10GHzでの誘電正接を測定した。
【0100】
<実施例4>
表1に示す量(質量部)で、実施例1の(A-1)、1,6'-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製BMI-TMH)及びスチレンを溶融混錬し、ジクミルパーオキサイド(DCPO)を加え、厚さ2mmになるよう加工した型枠内に流し込み、150℃で1時間、250℃で5時間加熱硬化させて硬化物を得た。
【0101】
<実施例5>
実施例1の(A-1)を実施例2の(A-2)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。
【0102】
<比較例2>
表1に示す量(質量部)で、比較例1の(B-1)、1,6'-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製BMI-TMH)及びスチレンを溶融混錬し、ジクミルパーオキサイド(DCPO)を加え、厚さ2mmになるよう加工した型枠内に流し込み、130℃で2時間、150℃で1時間、250℃で5時間加熱硬化させて硬化物を得た。
【0103】
【表1】
【0104】
上記表1に示す結果から、実施例1~2と比較例1とを比較すると、実施例1~2の5員環縮合環化合物(5員環縮合環系混合物)を用いることにより、優れた誘電特性及び耐熱分解性が達成されたことが確認される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示によれば、低誘電正接及び優れた耐熱性を高次に両立することができる5員環縮合環化合物及びその製造方法を提供することができ、また、当該5員環縮合環化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することができる。さらに、当該硬化物により、低誘電性及び優れた耐熱性が高次に両立した、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3