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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001048
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/78 20060101AFI20221222BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221222BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61K31/78
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/16
A61P1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088030
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021102001
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】森 謙一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC16
4C076EE27
4C076FF41
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA68
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ポリカルボフィル及び/又はその塩を含み、吸湿が抑制されている医薬組成物を提供することである。
【解決手段】医薬組成物において、ポリカルボフィル及び/又はその塩と共にジメチコンを含有させることにより、効果的に吸湿を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボフィル及び/又はその塩、及びジメチコンを含有する、医薬組成物。
【請求項2】
ポリカルボフィル及び/又はその塩1重量部当たり、ジメチコンが0.012~0.500重量部含まれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ポリカルボフィル及び/又はその塩を40~98重量%含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ジメチコンを0.5~30重量%含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボフィル及び/又はその塩を含み、吸湿が抑制されている医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカルボフィルカルシウムは、カルシウムが離脱した後、酸性条件下ではわずかしか膨潤しないが、中性条件下では多量の水を吸収して膨潤・ゲル化するという特徴を有している。そのため、下痢状態の時には、増加した余剰な水分を吸収しゲル化することにより、亢進した腸管内容物の輸送を抑制すると共に、便中水分量の増加を抑制して下痢を改善する作用を示す。また、便秘状態の時には、消化管内で水分を吸収・保持して、減少した便中水分量を改善すると共に、膨潤して腸管を刺激することにより遅延した消化管内容物の輸送を改善し、便秘を改善する作用を示す。このような特徴から、ポリカルボフィルカルシウムは過敏性腸症候群治療薬として使用されている。
【0003】
一方、ポリカルボフィルカルシウムは、吸湿性が高いことが知られている。吸湿性が高い医薬組成物は、保管時に水分を吸収することにより、体積の増加、服用感の低下、品質劣化等を生じさせるため、ポリカルボフィルカルシウムを含む医薬組成物では、ポリカルボフィルカルシウムに起因する吸湿を抑制することが重要になる。
【0004】
従来、医薬組成物の吸湿を抑制するために、コーティングを施す方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、医薬組成物においてコーティングを施すと、嵩が増したり、製造工程の増加によって製造効率が低下したりするという欠点がある。また、医薬組成物の吸湿の抑制には、乾燥剤の同梱も有効であるが、乾燥剤の充填工程が必要になったり、使用後に乾燥剤の廃棄による環境面負荷が生じたりするという欠点がある。そこで、ポリカルボフィルカルシウムを含む医薬組成物について、コーティングや乾燥剤を使用した方法以外で吸湿を抑制する技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-184888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリカルボフィル及び/又はその塩を含み、吸湿が抑制されている医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、医薬組成物において、ポリカルボフィル及び/又はその塩と共にジメチコンを含有させることにより、効果的に吸湿を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ポリカルボフィル及び/又はその塩、及びジメチコンを含有する、医薬組成物。
項2. ポリカルボフィル及び/又はその塩1重量部当たり、ジメチコンが0.012~0.500重量部含まれる、項1に記載の医薬組成物。
項3. ポリカルボフィル及び/又はその塩を40~98重量%含む、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4. ジメチコンを0.5~30重量%含む、項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5. カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤である、項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬組成物は、ポリカルボフィル及び/又はその塩による吸湿を抑制できるので、保管時に外気と接触しても、水分の吸収による品質劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医薬組成物は、ポリカルボフィル及び/又はその塩、及びジメチコンを含有することを特徴とする。以下、本発明の医薬組成物について詳述する。
【0011】
[ポリカルボフィル及び/又はその塩]
本発明の医薬組成物は、ポリカルボフィルカルシウムを含有する。ポリカルボフィルとは、3,4-ジヒドロキシ-1,5-ヘキサジエンにより架橋したポリアクリル酸であり、ポリカルボフィル及び/又はその塩は過敏性腸症候群治療薬として使用されている公知の成分である。
【0012】
ポリカルボフィルの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリカルボフィルのアルカリ土類金属塩、好ましくはポリカルボフィルカルシウムが挙げられる。
【0013】
本発明の医薬組成物は、ポリカルボフィル及びその塩の中から1種を選択した単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の医薬組成物におけるポリカルボフィル及び/又はその塩については、医薬組成物の剤型に応じて、一日当たりの投与量が1.5~3g程度となるように適宜設定すればよいが、例えば、40~98重量%、好ましくは40~90重量%、より好ましくは60~85重量%が挙げられる。
【0015】
[ジメチコン]
本発明の医薬組成物は、ポリカルボフィル及び/又はその塩に加えて、ジメチコンを含有する。ポリカルボフィル及び/又はその塩とジメチコンとを併用することにより、ポリカルボフィル及び/又はその塩による吸湿を抑制することが可能になる。
【0016】
ジメチコンとは、ポリジメチルシロキサンとも称され、表面張力を低下させ、消泡作用を示すことが知られている公知の成分である。
【0017】
本発明の医薬組成物において、ポリカルボフィル及び/又はその塩に対するジメチコンの比率としては、例えば、ポリカルボフィル及び/又はその塩1重量部当たり、ジメチコンが0.012~0.500重量部が挙げられる。ポリカルボフィル及び/又はその塩による吸湿をより一層効果的に抑制するという観点から、ポリカルボフィル及び/又はその塩1重量部当たり、ジメチコンが、好ましくは0.020~0.400重量部、より好ましくは0.040~0.300重量部、更により好ましくは0.040~0.250重量部、特に好ましくは0.080~0.250重量部が挙げられる。
【0018】
本発明の医薬組成物におけるジメチコンの含有量については、ポリカルボフィル及び/又はその塩の含有量、医薬組成物の剤型等に応じて、一日当たりの投与量が0.03~0.4g程度の範囲内になるように適宜設定すればよいが、例えば、0.5~30重量%、ポリカルボフィル及び/又はその塩による吸湿をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~25重量%、更により好ましくは7~20重量%が挙げられる。
【0019】
[その他の成分]
本発明の医薬組成物には、前述する成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に制限されないが、例えば、腸管運動改善剤、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、消炎鎮痛剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類や医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
また、本発明の止瀉剤組成物には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤、等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や医薬組成物の剤型等に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
[剤型・包装形態]
本発明の医薬組成物の剤型は、経口投与(内服)又は経腸投与、好ましくは経口投与が可能な固形状製剤であればよい。本発明の医薬組成物の剤型として、具体的には、錠剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、散剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)等が挙げられる。
【0022】
本発明の医薬組成物を前記剤型に調製するには、ポリカルボフィル及び/又はその塩及びジメチコン、並びに必要に応じて添加される薬理成分、基剤、及び添加剤を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0023】
本発明の医薬組成物は、PTP包装、ストリップ包装、ブリスター包装等によって一次包装されていてもよいが、開閉可能なボトル又はパウチ袋に複数回の使用量を一次包装していてもよい。本発明の医薬組成物では、ポリカルボフィル及び/又はその塩による吸湿を抑制できるので、開閉可能なボトル又はパウチ袋に複数回の使用量を一次包装していても、ボトル又はパウチ袋の開閉により内部の医薬組成物が外気と接触しても吸湿による品質劣化を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の医薬組成物では、ポリカルボフィル及び/又はその塩による吸湿を抑制できるので、乾燥剤を同梱することなく包装されていてもよい。
【実施例0025】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
試験例1:細粒での吸湿性の評価
表1に示す成分を混合して細粒(散剤)を調製した。得られた細粒(表1に示す合計量)をシャーレに入れて50℃、60%RHの雰囲気の暗所に1カ月間保存した。保存前後の細粒の重量を測定し、以下の式に従って保存後の吸湿率(%)を算出し、小数点第二位を四捨五入した値を保存後の吸湿率(%)とした。
【数1】
【0027】
結果を表1に示す。ポリカルボフィルカルシウムを単独で含む細粒(比較例1)では、保存後の吸湿率が15%を超えており、吸湿性が認められた。これに対して、ポリカルボフィルカルシウムとジメチコンを含む細粒では、ポリカルボフィルカルシウムを単独で含む場合に比べて保存後の吸湿率が低下していた(実施例1~4)。即ち、本結果から、ポリカルボフィルカルシウムと共にジメチコンを配合して製剤化することにより、ポリカルボフィルカルシウムによる吸湿を抑制できることが確認された。
【0028】
【表1】
【0029】
試験例2:錠剤での吸湿性の評価
表2に示す成分を混合して打錠することにより錠剤を調製した。得られた錠剤20錠をシャーレに入れて50℃、60%RHの雰囲気の暗所に1カ月間保存した。保存前後の錠剤の重量を測定し、前記試験例1と同様の方法で、保存後の吸湿率(%)を算出した。
【0030】
結果を表2に示す。ポリカルボフィルカルシウムを単独で含む錠剤(比較例4)では、保存後の吸湿率が15%を超えており、吸湿性が認められた。これに対して、ポリカルボフィルカルシウムとジメチコンを含む錠剤では、ポリカルボフィルカルシウムを単独で含む場合に比べて保存後の吸湿率が低下していた(実施例5~8)。即ち、本結果からも、ポリカルボフィルカルシウムと共にジメチコンを配合して製剤化することにより、ポリカルボフィルカルシウムによる吸湿を抑制できることが確認された。
【0031】
【表2】
【0032】
処方例
表3及び4に示す組成の医薬組成物(顆粒及び錠剤)を調製し、試験例1と同様の方法で、各医薬組成物の保存後の吸湿率を評価したところ、処方例1~10のいずれの医薬組成物においても、ポリカルボフィルカルシウムに起因する吸湿を抑制できることが確認された。
【0033】
【表3】
表中、各成分の単位はmgである。
【0034】
【表4】
表中、各成分の単位はmgである。