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特開2023-104990ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池
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  • 特開-ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023104990
(43)【公開日】2023-07-28
(54)【発明の名称】ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20230721BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230721BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230721BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230721BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/36 D
H01M4/505
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084797
(22)【出願日】2023-05-23
(62)【分割の表示】P 2021106545の分割
【原出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080492
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】蔡 榮周
(72)【発明者】
【氏名】姜 貴云
(72)【発明者】
【氏名】孔 泳善
(72)【発明者】
【氏名】金 相美
(72)【発明者】
【氏名】金 榮基
(72)【発明者】
【氏名】金 眞永
(72)【発明者】
【氏名】鄭 在容
(72)【発明者】
【氏名】洪 淳基
(57)【要約】
【課題】ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含み、ニッケルの含量が、ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、該二次粒子は、粒子サイズが10μm以上である大粒二次粒子と、粒子サイズが5μm以下である小粒二次粒子と、を含み、該大粒二次粒子のニッケルの含量が、該小粒二次粒子のニッケルの含量に比べて多いニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含み、ニッケルの含量が、ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、
前記二次粒子は、粒子サイズが10μm以上である大粒二次粒子と、粒子サイズが5μm以下である小粒二次粒子と、を含み、
前記大粒二次粒子のニッケルの含量が、前記小粒二次粒子のニッケルの含量に比べて多い、ニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項2】
前記ニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を具備したリチウム二次電池に係わるdQ/dV充放電微分曲線において、1Cの電流でもって、4.1Vないし4.25Vの電圧で示される充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が1.1以上である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項3】
前記充電ピークは、4.17Vないし4.25Vで示されるピークであり、前記放電ピークは、4.14Vないし4.17Vで示されるピークである、請求項2に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項4】
前記dQ/dV充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が1.1ないし1.5である、請求項2に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項5】
前記大粒二次粒子と前記小粒二次粒子とのニッケル含量差は、10モル%以上である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項6】
前記大粒二次粒子において、ニッケルの含量は、遷移金属の総含量を基準にし、85ないし99モル%である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項7】
前記小粒二次粒子において、ニッケルの含量は、前記小粒二次粒子の遷移金属の総含量を基準にし、75ないし89モル%である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項8】
前記大粒二次粒子の粒子サイズは、10μmないし17μmである、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項9】
前記小粒二次粒子の粒子サイズは、2μmないし5μmである、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項10】
前記大粒二次粒子の含量は、前記大粒二次粒子と前記小粒二次粒子との総含量100重量部を基準にし、30ないし90重量部である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項11】
前記ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物:
【化1】
前記化学式1で、Mは、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、またはその組み合わせであり、
M’は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、
0.95≦a≦1.3、0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5、0<x+y+z≦0.5である。
【請求項12】
前記大粒二次粒子は、化学式1で、0.88≦1-x-y-z≦0.95、0.01≦x≦0.08、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01、0<x+y+z≦0.5である化合物であり、
前記小粒二次粒子は、化学式1で、0.75≦1-x-y-z≦0.85、0.01≦x≦0.05、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01、0<x+y+z≦0.5である化合物である、請求項11に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項13】
前記大粒二次粒子は、下記化学式1-1で表される化合物である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物:
【化1-1】
前記化学式1-1で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、
0.95≦a≦1.3、0.88≦1-x-y-z≦0.96、0.01≦x≦0.08、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01である。
【請求項14】
前記小粒二次粒子は、下記化学式1-2で表される化合物である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物:
【化1-2】
前記化学式1-2で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、
0.95≦a≦1.3、0.75≦1-x-y-z≦0.85、0.01≦x≦0.05、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01である。
【請求項15】
ニッケルの含量が、大粒ニッケル系金属水酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上の大粒ニッケル系金属水酸化物、ニッケルの含量が、小粒ニッケル系金属水酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上の小粒ニッケル系金属水酸化物、及びリチウム前駆体を混合し、前駆体混合物を得て熱処理を実施し、
請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物を得る段階を含む、ニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理は、650℃ないし800℃である、請求項15に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項17】
前記大粒ニッケル系金属水酸化物は、前記小粒ニッケル系金属水酸化物に比べ、ニッケルの含量が多く、ニッケルの含量差は、10モル%以上である、請求項15に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項18】
前記大粒ニッケル系金属水酸化物のニッケルの含量は、大粒ニッケル系金属水酸化物の遷移金属の総含量を基準にし、85ないし99モル%であり、
前記小粒ニッケル系金属水酸化物のニッケルの含量は、小粒ニッケル系金属水酸化物の遷移金属の総含量を基準にし、75ないし89モル%である、請求項15に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項19】
前記リチウム前駆体は、水酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、LiCOOH、またはその混合物である、請求項15に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極、負極、及びそれらの間に介在された電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器、通信機器などの発展により、高エネルギー密度のリチウム二次電池開発への必要性が高まっている。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質として、リチウム金属複合酸化物を利用する場合、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを混合すれば、プレス時にも、活物質崩れが抑制され、優秀な性能を示すことができ、高エネルギー密度のリチウム二次電池を製造することができる。
【0004】
大粒二次粒子と小粒二次粒子との混合物を含むリチウム金属複合酸化物の製造時、大粒二次粒子と小粒二次粒子とに対する熱処理過程を同時に実施する。ところで、大粒二次粒子と小粒二次粒子は、その特性が異なり、それを同時熱処理する場合、小粒二次粒子または大粒二次粒子が過焼成されたり、焼成が不完全に進められたりして、性能が低下してしまう。従って、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを別途に熱処理した後、熱処理された混合物を熱処理する段階を経ることになる。しかし、そのように何回もの熱処理工程を経るので、正極活物質の製造工程が複雑となり、製造コストが上昇され、それに対する改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、構造的な安定性が改善されたニッケル系リチウム金属複合酸化物を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を、廉価な製造コスト、及び単純化された製造工程によって得た、ニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を具備し、効率及び寿命が向上されたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面により、一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含み、ニッケルの含量が、ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、二次粒子は、粒子サイズが10μm以上である大粒二次粒子と、粒子サイズが5μm以下である小粒二次粒子と、を含み、大粒二次粒子のニッケルの含量が、小粒二次粒子のニッケルの含量に比べて多いニッケル系リチウム金属複合酸化物が提供される。
【0009】
ニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を具備したリチウム二次電池において、dq/dv充放電微分曲線において、1Cの電流でもって、4.1Vないし4.25Vの電圧で示される充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が1.1以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物が提供される。
【0010】
他の側面により、ニッケルの含量が、大粒ニッケル系金属水酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上の大粒ニッケル系金属水酸化物、ニッケルの含量が、小粒ニッケル系金属水酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上の小粒ニッケル系金属水酸化物、及びリチウム前駆体を混合し、前駆体混合物を得て熱処理を実施し、前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を得る段階を含むニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法が提供される。
【0011】
さらに他の側面により、前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物は、構造的安定性にすぐれる。そのようなニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を具備すれば、寿命特性及び高率特性が改善されたリチウム二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】製作例1及び比較製作例1,2のリチウム二次電池において、最初のサイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したグラフである。
図2】製作例1及び比較製作例2のリチウム二次電池において、30回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したグラフである。
図3】製作例1及び比較製作例2のリチウム二次電池において、50回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したグラフである。
図4】製作例1のリチウム二次電池において、最初のサイクル、30回サイクル後及び50回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したグラフである。
図5】比較製作例2のリチウム二次電池において、最初のサイクル、30回サイクル後及び50回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したグラフである。
図6】実施例1によって得られた複合正極活物質に係わるX線回折分析グラフである。
図7】一具現例によるリチウム二次電池の構造を概略的に示した図面である。
図8】製作例1及び2のリチウム二次電池と、比較製作例1のリチウム二次電池とにおいて、寿命特性を示したグラフである。
図9】製作例1及び比較製作例1によって製作されたコインセルにおいて、充放電特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照しながら、以下において、例示的なニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、及びそれを含む正極を具備したリチウム二次電池について、さらに詳細に説明する。
【0015】
一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含み、ニッケルの含量が、ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、前述の二次粒子は、粒子サイズが10μm以上である大粒二次粒子と、粒子サイズが5μm以下である小粒二次粒子と、を含み、前述の大粒二次粒子のニッケルの含量が、前述の小粒二次粒子のニッケルの含量に比べて多いニッケル系リチウム金属複合酸化物が提供される。粒子サイズは、粒子が球状である場合には、平均粒径を示し、粒子が非球状である場合には、長軸の長さを示す。粒子サイズは、粒子サイズ分析器、走査電子顕微鏡及び/または透過電子顕微鏡によって測定することができる。粒子サイズは、例えば、平均粒径(D50)を示す。
【0016】
本明細書において、平均粒径(D50)は、特に定義されていない限り、粒度分布において累積体積が50体積%に該当する粒子の平均直径を意味し、粒子サイズが最も小さい粒子から最も大きい粒子の順に累積させた分布曲線において、全体の粒子個数を100%としたとき、最も小さい粒子から50%に該当する粒径の値を意味する。平均粒径(D50)は、当業者に広く公知された方法で測定され、例えば、粒度分析器(Particle size analyzer)(例えば、HORIBA,LA-950 Laser particle size analyzer)で測定するか、またはTEM写真もしくはSEM写真からも測定することができる。他の方法としては、動的光散乱法(Dynamic Light-scattering)を用いた測定装置を用いて測定し、データ分析を実施して、それぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウントした後、それをもって、計算を通じて平均粒径(D50)値を簡単に得られる。
【0017】
該ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、ニッケルの含量は、60モル%以上、75モル%以上、または75モル%ないし99モル%である。
【0018】
該ニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を具備したリチウム二次電池に係わる微分容量(differential capacity)dQ/dV充放電微分曲線において、1Cの電流、4.1Vないし4.25Vの電圧で示される充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が1.1以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物が提供される。
【0019】
該dQ/dV充放電微分曲線は、3.0Vないし4.3Vの電圧、例えば、3.0Vないし4.25Vの電圧範囲で得られたものである。
【0020】
該dQ/dV充放電微分曲線において、Vは、負極のリチウム金属に対する電圧を示し、Qは、リチウム二次電池の充電/放電容量を示す。そして、該dQ/dV充放電微分曲線において、X軸は、電圧Vを示し、Y軸は、充放電容量を電圧で微分した値(dQ/dV)を示す。
【0021】
該ニッケル系リチウム金属複合酸化物を利用し、容量特性にすぐれるリチウム二次電池を製造するために、大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体と小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体とリチウム前駆体とを熱処理して製造することが一般的である。
【0022】
該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体と該小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体は、各前駆体の特性が異なり、別途に個別焼成する過程を経た後、それら前駆体とリチウム前駆体とを混合し、二次焼成を進めてこそ、目的とするニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができた。そのように、該ニッケル系リチウム金属複合酸化物を得るのに、3回の焼成工程を経ることになり、製造コストが高く、製造工程が複雑であり、それに対する改善が必要である。
【0023】
そのために、本発明者らは、前述の問題点を解決し、大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体と、小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体との粒子サイズ、及びニッケルの含量を所定範囲に制御しながら、該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体、該小粒ニッケル系リチウム金属前駆体及びリチウム前駆体を、同時に1回熱処理する過程を介して製造された、構造的安定性にすぐれ、容量特性にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物に係わる本願発明を完成するに至った。
【0024】
該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体は、例えば、大粒ニッケル系金属水酸化物であり、該小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体は、例えば、小粒ニッケル系金属水酸化物である。
【0025】
該大粒ニッケル系金属水酸化物と該小粒ニッケル系金属水酸化物において、ニッケルの含量は、該大粒ニッケル系金属水酸化物と該小粒ニッケル系金属水酸化物とにおいて、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上、60モル%以上、75モル%以上、または75モル%ないし99モル%である。
【0026】
該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体、該小粒ニッケル系リチウム金属前駆体のニッケル含量差は、10モル%以上、11モル%以上、11モル%ないし24モル%、例えば、11ないし20モル%、11ないし18モル%、または12ないし16モル%である。該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体と該小粒ニッケル系リチウム金属前駆体とのニッケル含量差が前述の範囲であるとき、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0027】
前述の前駆体から得られたニッケル系リチウム金属複合酸化物に含有された大粒二次粒子と小粒二次粒子とのニッケル含量差は、該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体、該小粒ニッケル系リチウム金属前駆体のニッケル含量差と同一に維持される。
【0028】
該ニッケル系リチウム金属複合酸化物に含有された大粒二次粒子と小粒二次粒子とのニッケル含量差は、10モル%以上、11モル%以上、例えば、11ないし20モル%、11ないし18モル%、または12ないし16モル%である。該大粒二次粒子と小粒二次粒子とのニッケル含量差が前述の範囲であるとき、それらを得るための大粒ニッケル系リチウム金属前駆体と小粒ニッケル系リチウム金属前駆体とを同時に熱処理し、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0029】
該大粒二次粒子において、ニッケルの含量は、遷移金属の総含量を基準にし、85ないし99モル%、例えば、85ないし95モル%、例えば、88ないし95モル%である。そして、前述の小粒二次粒子において、ニッケルの含量は、遷移金属の総含量を基準にし、75ないし89モル%、例えば、80ないし85モル%、例えば、75ないし85モル%である。
【0030】
該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体の粒子サイズは、10μmないし17μm、例えば、12ないし15μmである。そして、該小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体の粒子サイズは、2μmないし5μm、例えば、3ないし4μmである。そのような前駆体から得られたニッケル系リチウム金属(NCA)複合酸化物内に含有された大粒二次粒子の粒子サイズは、10μm以上、12μm以上、14μm以上、15μm以上、例えば、12ないし17μmである。
【0031】
該大粒二次粒子の粒子サイズは、一具現例を挙げれば、10μmないし15μm、例えば、12ないし17μmである。そして、該小粒二次粒子の粒子サイズは、2μmないし5μm、例えば、3ないし4μmである。
【0032】
該大粒二次粒子と該小粒二次粒子との粒子サイズが前述の範囲であるとき、それらを得るための大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体と小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体とを同時に熱処理し、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体の含量は、該大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体と該小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物前駆体との総含量100重量部を基準にし、30ないし90重量部、50ないし90重量部、60ないし90重量部、または80ないし90重量部である。
【0033】
本発明のニッケル系リチウム金属複合酸化物において、大粒二次粒子の含量は、大粒二次粒子と小粒二次粒子との総含量100重量部を基準にし、30ないし90重量部、50ないし90重量部、60ないし90重量部、または80ないし90重量部である。
【0034】
該大粒二次粒子と該小粒二次粒子との混合重量比が前述の範囲であるとき、それらを得るための大粒ニッケル系リチウム金属前駆体と小粒ニッケル系リチウム金属前駆体とを同時に熱処理し、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0035】
一具現例による前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を具備したリチウム二次電池において、1Cの電流、4.3Vないし3.0Vの電圧におけるdQ/dV充放電微分曲線において、充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が1.1以上、例えば、1.1ないし1.5である。前述の充電ピーク及び放電ピークは、1Cの電流、及び4.1Vないし4.25Vの電圧で示される。
【0036】
前述の正極を具備したリチウム二次電池に係わる充放電条件について述べれば、次の通りである。
【0037】
リチウム二次電池に対し、1Cの電流でもって、4.3Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施する。充電が完了した電池は、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを複数回反復して実施して評価する。
【0038】
dQ/dV充放電微分曲線は、初回から100回目までの充放電サイクル後、初回から80回目までの充放電サイクル後、または初回から50回目までの充放電サイクル後に係わるものである。該充放電サイクルは、例えば、合計で50回反復して実施することができる。
【0039】
前述の充電ピークは、例えば、4.17Vないし4.25V、例えば、4.19Vで示され、前述の放電ピークは、例えば、4.14Vないし4.17V、例えば、4.16Vで示される。
【0040】
該dQ/dV充放電微分曲線は、正極活物質に係わる作動イオンの電圧別容量特性を意味する。メインピークに係わる位置、強度差及び面積は、正極活物質の種類、物理的特性などによって違いが見られることになる。
【0041】
dQ/dVは、本発明のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極とリチウム金属負極とを含むリチウム電池について、1Cレートの放電条件を適用し、dq/dv分布を測定した結果を示すグラフである。該ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、例えば、ニッケル酸リチウム(NCA)である。
【0042】
該dQ/dV分布には、3個ないし6個、例えば、5個のメインピークが存在するが、約3.65Vの電圧で示されるピークは、六方晶系(hexagonal)構造から単斜晶系(monoclinic)構造に相転移が起こることと係わるNCAのメインピークに該当する。そして、4.1Vないし4.25Vの電圧領域から出るピークは、NCAの劣化による構造的な変化と示される。
【0043】
前述のdQ/dV充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が1.1ないし1.5である。充電ピークの強度から、リチウム二次電池に保存されている電気エネルギーの量を知ることができ、放電ピークの強度から、構造的変化量を知ることができる。前述のdQ/dV充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)が前述の範囲であるとき、大粒と小粒とのNi含量差及びCoの含量差と関連があり、そのような範囲であるとき、NCAは、表面の抵抗が低く、それを利用すれば、高温寿命特性及び保存特性にすぐれるリチウム二次電池を製造することができる。
【0044】
前述のdQ/dV充放電微分曲線は、リチウム二次電池の最初充放電サイクルから50回目の充放電サイクル後、例えば、最初充放電サイクル後後、30回目の充放電サイクル後または50回目の充放電サイクル後に係わるものである。充放電サイクルの評価条件は、後述する評価例1で記載する通りである。
【0045】
一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物のdQ/dV充放電微分曲線において、3.5Vないし3.8Vの電圧で示される充電ピークは、その傾きが緩やかである。
【0046】
該ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、下記化学式1で表される化合物でもある:
【0047】
【化1】
【0048】
前述の化学式1で、Mは、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、またはその組み合わせであり、M’は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、0.95≦a≦1.3、0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5、0<x+y+z≦0.5である。
【0049】
x+y+zの和は、例えば、0.01ないし0.2、0.01ないし0.12、0.04ないし0.1、または0.04ないし0.08である。
【0050】
化学式1の化合物において、ニッケルの含量が50モル%以上と、コバルト、M及びM’のような遷移金属のそれぞれの含量に比べて多い。そのようなニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を採用すれば、リチウム拡散度が高く、伝導度が良好であり、同一電圧において、さらに大きい容量を有するリチウム二次電池を製造することができる。
【0051】
化学式1で、0.95≦a≦1.3、0<x≦0.3であり、0≦y≦0.5、0≦z≦0.05、0.5≦1-x-y-z≦0.95である。前述の化学式1でaは、例えば、1ないし1.1であり、xは、0.05ないし0.3、または0.05ないし0.1であり、yは、0.05ないし0.3であり、zは、0であるか、またはzは、0.001ないし0.01である。
【0052】
一具現例によれば、化学式1でzは、0である。
【0053】
化学式1の化合物は、例えば、Li1.1Ni0.92Co0.05Al0.032、LiNi0.8Co0.1MnAl0.1、LiNi0.85Co0.1Al0.05、Li1.1Ni0.92Co0.05Mn0.032、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.85Co0.1Mn0.05、Li1.1Ni0.94Co0.03Mn0.03,LiNi0.8Co0.15Al0.05,LiNi0.94Co0.03Al0.03,LiNi0.8Co0.15Al0.05,LiNi0.96Co0.02Al0.02などがある。
【0054】
一具現例によれば、該大粒二次粒子は、化学式1で、0.88≦1-x-y-z≦0.95、0.01≦x≦0.08、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01である化合物である。そして、該小粒二次粒子は、化学式1で、0.75≦1-x-y-z≦0.85、0.01≦x≦0.15、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01である。
【0055】
一具現例による大粒二次粒子は、下記化学式1-1で表される化合物であり、小粒二次粒子は、下記化学式1-2で表される化合物である。
【0056】
【化1-1】
【0057】
前述の化学式1-1で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、0.95≦a≦1.3、0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5である。
【0058】
化学式1-1で、0.88≦1-x-y-z≦0.96、0.01≦x≦0.08、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01であり、
【0059】
【化1-2】
【0060】
前述の化学式1-2で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、0.95≦a≦1.3、0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5である。
【0061】
化学式1-2で、0.75≦1-x-y-z≦0.85、0.01≦x≦0.05、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01である。
【0062】
化学式1-1の大粒二次粒子は、例えば、Li1.1Ni0.92Co0.05Al0.032、LiNi0.94Co0.03Al0.03、LiNi0.88Co0.08Al0.04、LiNi0.90Co0.05Al0.05、LiNi0.96Co0.02Al0.02、LiNi0.88Co0.06Al0.06などであり、化学式1-2の小粒二次粒子は、LiNi0.8Co0.15Al0.052、LiNi0.75Co0.20Al0.05などである。
【0063】
前述の大粒二次粒子の比表面積が0.1ないし1m/g、例えば、0.3ないし0.8m/gであり、前述の小粒二次粒子の比表面積が2ないし15m/g、例えば、2ないし10m/gである。該大粒二次粒子と該小粒二次粒子との比表面積が前述の範囲であるとき、容量特性、寿命特性及び高温保存特性にすぐれる正極及びリチウム二次電池を製造することができる。比表面積は、Brunauer-Emmett-Teller method(BET法)によって測定されたBET比表面積である。
【0064】
化学式1の化合物は、一次粒子が凝集されて二次粒子が球形をなす構造であり、該二次粒子の平均粒径は、1ないし25μm、例えば、5ないし25μmである。
【0065】
以下、一具現例による複合正極活物質の製造方法について述べる。
【0066】
大粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物、小粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物、及びリチウム前駆体を混合し、前駆体混合物を得て、それを熱処理し、複合正極活物質を得ることができる。
【0067】
該ニッケル系金属水酸化物は、ニッケル系リチウム金属複合酸化物の前駆体である。
【0068】
該大粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物の粒子サイズは、10μm以上、例えば、12ないし17μmであり、該小粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物の粒子サイズは、5μm以下、例えば、2ないし5μmである。
【0069】
該ニッケル系金属水酸化物は、下記化学式2で表される化合物でもある。
【0070】
【化2】
【0071】
前述の化学式2で、Mは、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、またはその組み合わせであり、M’は、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5、0<x+y+z≦0.5である。
【0072】
化学式2で、0<x≦0.3であり、0≦y≦0.5、0≦z≦0.05である。化学式2で、x+y+zは、0.01ないし0.25、例えば、0.04ないし0.25である。
【0073】
該ニッケル系金属水酸化物は、下記化学式2-1で表される化合物でもある。
【0074】
【化2-1】
【0075】
前述の化学式2-1で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなる群のうちから選択される元素であり、0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5、0<x+y+z≦0.50である。
【0076】
化学式2-1で、例えば、0<x≦0.3であり、0≦y≦0.5、0≦z≦0.05である。化学式2-1で、x+y+zは、0.01ないし0.25、例えば、0.04ないし0.25である。
【0077】
一具現例によるニッケル系金属水酸化物は、例えば、Ni0.92Co0.05Al0.03(OH)、Ni0.94Co0.03Al0.03(OH)、Ni0.88Co0.06Al0.06(OH)、Ni0.96Co0.02Al0.02(OH)、Ni0.93Co0.04Al0.03(OH)、Ni0.8Co0.15Al0.05(OH)2、Ni0.75Co0.20Al0.05(OH)2、Ni0.92Co0.05Mn0.03(OH)、Ni0.94Co0.03Mn0.03(OH)、Ni0.88Co0.06Mn0.06(OH)、Ni0.96Co0.02Mn0.02(OH)、Ni0.93Co0.04Mn0.03(OH)、Ni0.8Co0.15Mn0.05(OH)2、Ni0.75Co0.20Mn0.05(OH)、またはその組み合わせ物である。
【0078】
本明細書において、大粒及び小粒のニッケル系金属水酸化物の組成は、該大粒及び該小粒のニッケル系金属複合酸化物の組成に対応するように制御される。
【0079】
リチウム前駆体は、例えば、水酸化リチウム、フッ化リチウム、炭酸リチウム、LiCOOH、またはその混合物を使用する。そして、該リチウム前駆体の含量は、ニッケル系金属水酸化物の遷移金属に対するリチウム前駆体のリチウムのモル比(Li/M)が0.95以上、例えば、1.0超過、例えば、1.05ないし1.3、例えば、1.1ないし1.2になるように制御される。
【0080】
該ニッケル系金属水酸化物の遷移金属は、化学式2で、Ni、Co、Mn、M及びM’を合わせた金属を言う。前述のリチウム前駆体と前述のニッケル系金属水酸化物との含量は、前述の化学式1のニッケル系リチウム金属複合酸化物を製造することができるように、化学量論的に調節される。
【0081】
前述の混合は、乾式混合でもあり、ミキサなどを利用しても実施することができる。
【0082】
前述の熱処理は、酸化性ガス雰囲気下で実施される。
【0083】
該酸化性ガス雰囲気は、酸素または空気のような酸化性ガスを利用し、例えば、前述の酸化性ガスは、酸素または空気の10ないし20体積%と、不活性ガス80ないし90体積%からなる。
【0084】
該熱処理は、リチウム前駆体及びニッケル系金属水酸化物の反応が進められながら、高密度化温度以下の範囲における実施が適切である。ここで、該高密度化温度は、結晶化が十分になされ、活物質が充電容量を具現することができる温度を意味する。該熱処理は、650℃ないし800℃、700℃ないし750℃、例えば、700℃ないし720℃で実施される。
【0085】
熱処理時間は、熱処理温度などによって可変的である。
【0086】
大粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物、及び小粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物の混合重量比は、9:1ないし8:2である。
【0087】
前述の大粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物、前述の小粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物は、一般的な方法によって製造可能である。例えば、大粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物、及び小粒二次粒子であるニッケル系金属水酸化物は、ニッケル系金属水酸化物の前駆体(原料物質)の反応時間、及び反応後に得られた生成物の乾燥工程だけ異なり、残り工程は、同一に実施して製造可能である。
【0088】
大粒のニッケル系金属水酸化物の場合、ニッケル系金属水酸化物を得るための反応時間は、例えば、90ないし130時間範囲で実施し、乾燥は、180ないし200℃、185ないし200℃、190ないし200℃、例えば、200℃で実施する。そして、小粒のニッケル系金属水酸化物の場合は、大粒のニッケル系金属水酸化物と比較し、ニッケル系金属水酸化物の前駆体(原料物質)の反応時間が短縮され、例えば、20ないし30時間、例えば、20ないし28時間実施する。そして、反応後の生成物乾燥は、200ないし220℃の範囲で実施される。
【0089】
一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法を利用すれば、高容量であり、充放電効率及び寿命が向上された正極活物質を得ることができる。
【0090】
以下、正極活物質として、一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極、負極、リチウム塩含有非水電解質及びセパレータを有するリチウム二次電池の製造方法を記述する。
【0091】
該正極及び該負極は、集電体上に、正極活物質層形成用組成物、及び負極活物質層形成用組成物を、それぞれ塗布して乾燥させて作製される。前述の正極活物質形成用組成物は、正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒を混合して製造されるが、前述の正極活物質として、一具現例による正極活物質を利用する。
【0092】
該バインダは、活物質と導電剤などとの結合、及び活物質と集電体との結合に一助となる成分であり、該正極活物質の総重量100重量部を基準に、1ないし50重量部で添加される。そのようなバインダの非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。その含量は、正極活物質の総重量100重量部を基準にし、2ないし5重量部を使用する。該バインダの含量が前述の範囲であるとき、集電体に対する活物質層の結着力が良好である。
【0093】
該導電剤としては、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるのではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボン系物質;炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体のような導電性素材などが使用されうる。
【0094】
該導電剤の含量は、正極活物質の総重量100重量部を基準にし、2ないし5重量部を使用する。該導電剤の含量が前述の範囲であるとき、最終的に得られた電極の伝導度特性にすぐれる。
【0095】
該溶媒の非制限的な例として、N-メチルピロリドンなどを使用する。そして、該溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、100ないし3,000重量部を使用する。該溶媒の含量が前述の範囲であるとき、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0096】
前述の正極集電体は、3ないし500μmの厚みであり、当該電池に化学的変化を誘発せずに、高い導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したものなどが使用されうる。該集電体は、その表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体のように、多様な形態が可能である。
【0097】
それと別途に、負極活物質、バインダ、導電剤、溶媒を混合し、負極活物質層形成用組成物を準備する。
【0098】
前述の負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質が使用される。前述の負極活物質の非制限的な例として、黒鉛、炭素のような炭素系材料;リチウム金属、その合金;シリコン酸化物系物質などを使用することができる。本発明の一具現例によれば、シリコン酸化物を使用する。
【0099】
前述のバインダは、非制限的な例として、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン・プロピレン・ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸、及びそれらの水素が、Li、NaまたはCaなどで置換された高分子、または多様な共重合体のような多様な種類のバインダ高分子でもある。前述のバインダは、負極活物質の総重量100重量部を基準に、1ないし50重量部で添加される。そのようなバインダの非制限的な例は、正極と同一種類を使用することができる。
【0100】
前述の負極活物質層形成用組成物は、導電剤をさらに含んでもよい。前述の導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボンブラック;炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;炭素ナノチューブのような導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体のような導電性素材などが使用されうる。前述の導電剤は、望ましくは、カーボンブラックでもあり、さらに具体的には、数十nmの平均粒径を有するカーボンブラックでもある。
【0101】
該導電剤は、負極活物質層の総重量100重量部を基準にし、0.01重量部ないし10重量部、0.01重量部ないし5重量部、または0.1重量部ないし2重量部でもある。
【0102】
前述の負極活物質層形成用組成物は、増粘剤をさらに含んでもよい。前述の増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、澱粉、再生セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールのうち少なくともいずれか一つを使用することができる。
【0103】
前述の溶媒の含量は、負極活物質の総重量100重量部を基準にし、100ないし3,000重量部を使用する。該溶媒の含量が前述の範囲であるとき、負極活物質層を形成するための作業が容易である。該溶媒は、正極製造時と同一種類の物質を使用することができる。
【0104】
前述の負極集電体としては、一般的に、3ないし500μm厚に作られる。そのような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したもの、アルミニウム・カドミウム合金などが使用されうる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成し、負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体のように、多様な形態で使用されうる。
【0105】
前述の過程によって作製された正極と負極との間に、セパレータを介在させる。
【0106】
前述のセパレータは、気孔径が0.01~10μmであり、厚みは、一般的に、5~300μmであるものを使用する。具体的な例として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、またはガラスファイバで作られたシートや不織布などが使用される。電解質として、ポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0107】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解液とリチウム塩とからなっている。該非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0108】
前述の非水電解液としては、非制限的な例として、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、N,N-ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルのような非陽子性有機溶媒が使用されうる。
【0109】
前述の有機固体電解質としては、非制限的な例として、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用されうる。
【0110】
前述の無機固体電解質では、非制限的な例として、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSのようなLiのチッ化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されうる。
【0111】
前述のリチウム塩は、前述の非水系電解質に溶解されやすい物質であり、非制限的な例として、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(FSONLiなどが使用されうる。
【0112】
図7は、一具現例によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に図示した断面図である。
【0113】
図7を参照し、リチウム二次電池21は、正極23、負極22及びセパレータ24を含む。前述の正極23、負極22及びセパレータ24がワインディングされたり、折り畳まれたりして、電池ケース25に収容される。次に、前述の電池ケース25に、有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ26に密封され、リチウム二次電池20が完成される。前述の電池ケース25は、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、前述のリチウム二次電池20は、大型薄膜型電池でもある。前述のリチウム二次電池は、リチウムイオン電池でもある。前述の正極と前述の負極との間にセパレータが配され、電池構造体が形成されうる。前述の電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。また、前述の電池構造体は、複数個積層され、電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用されうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気自動車(EV:electric vehicle)などにも使用される。
【0114】
また、前述のリチウム二次電池は、高温で、保存安定性、寿命特性及び高率の特性にすぐれるので、電気自動車に使用されうる。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)のようなハイブリッド車両にも使用される。
【0115】
以下の実施例及び比較例を介し、さらに詳細に説明される。ただし、該実施例は、例示するためのものであり、それらだけに限定されるものではない。
【0116】
(ニッケル系金属水酸化物の製造)
【0117】
製造例1:大粒ニッケル系金属水酸化物の製造
後述する共沈法によって実施し、大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.94Co0.03Al0.03(OH))を得た。
【0118】
反応器にアンモニア水を付加し、そこにニッケル系金属水酸化物の原料物質を、製造する最終生成物の組成が得られるように、化学量論的に制御しながら添加した水酸化ナトリウムを利用し、反応器の混合物のpHを調節した。次に、撹拌しながら、所望サイズになるまで反応させた後、原料溶液の投入を中止し、乾燥させる過程を経て、目的物を得た。この製造過程について具体的に記述すれば、次の通りである。
【0119】
ニッケル系金属水酸化物の原料物質として、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸コバルト(CoSO・7HO)及び硫酸アルミニウム(Al(SO・HO)を94:3:3モル比になるように、溶媒である蒸溜水に溶かし、混合溶液を準備した。錯化合物形成のために、アンモニア水(NHOH)希釈液と、沈澱剤としても水酸化ナトリウム(NaOH)とを準備した。その後、金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応器内部に投入した。該反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された。次に、撹拌しながら、約95時間反応を実施した後、原料溶液の投入を中止した。
【0120】
反応器内のスラリー溶液を濾過し、高純度の蒸溜水で洗浄した後、200℃の熱風オーブンで24時間乾燥させ、粒子サイズ(D50)が約12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物ニッケル系金属水酸化物(Ni0.94Co0.03Al0.03(OH))粉末を得た。
【0121】
製造例2:小粒ニッケル系金属水酸化物の製造
小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.8Co0.15Al0.05(OH))を得ることができるように、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸コバルト(CoSO・7HO)及び硫酸アルミニウム(Al(SO・HO)の含量が、化学量論的に制御され、前駆体乾燥時、200℃の熱風オーブンで24時間乾燥させる工程の代わりに、210℃の熱風オーブンで24時間乾燥させる工程に変化され、反応時間が25時間に変化されたことを除いては、製造例1と同一過程によって実施し、約3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.8Co0.15Al0.05(OH)))粉末を得た。
【0122】
製造例3:大粒ニッケル系金属水酸化物の製造
大粒ニッケル系金属水酸化物として、Ni0.96Co0.02Al0.02(OH)を得ることができるように、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸コバルト(CoSO・7HO)及び硫酸アルミニウム(Al(SO・HO)の含量が化学量論的に制御されたことを除いては、製造例1と同一過程によって実施し、約12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.96Co0.02Al0.02(OH))粉末を得た。
【0123】
製造例4:大粒ニッケル系金属水酸化物の製造
約12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.94Co0.03Al0.03(OH))の代わりに、約10μmである大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.94Co0.03Al0.03(OH))を得ることができるように、反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された後、撹拌を実施しながら、反応時間が約90時間に変化されたことを除いては、製造例1と同一方法によって実施した。
【0124】
製造例5:大粒ニッケル系金属水酸化物の製造
約12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.94Co0.03Al0.03(OH))の代わりに、約17μmである大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.94Co0.03Al0.03(OH))を得ることができるように、反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された後、撹拌を実施しながら、反応時間が約130時間に変化されたことを除いては、製造例1と同一方法によって実施した。
【0125】
製造例6:小粒ニッケル系金属水酸化物の製造
約3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.8Co0.15Al0.05(OH))の代わりに、約2μmである小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.8Co0.15Al0.05(OH))を得ることができるように、反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された後、撹拌を実施しながら、反応時間が約22時間に変化されたことを除いては、製造例2と同一方法によって実施した。
【0126】
製造例7:小粒ニッケル系金属水酸化物の製造
約3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.8Co0.15Al0.05(OH))の代わりに、約5μmである小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.8Co0.15Al0.05(OH))を得ることができるように、反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された後、撹拌を実施しながら、反応時間が約28時間に変化されたことを除いては、製造例2と同一方法によって実施した。
【0127】
(ニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造)
【0128】
実施例1
製造例1によって得られた12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例2によって得られた3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物とを、80:20の混合重量比で混合した。
【0129】
前述の大粒ニッケル系金属水酸化物と小粒ニッケル系金属水酸化物混合物と水酸化リチウム(LiOH)とを、ヘンシェルミキサを使用し、乾式で1:1.05で混合し、酸素雰囲気で、約720℃で10時間熱処理を施し、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物Li1.05Ni0.92Co0.05Al0.03を得た。前述の大粒二次粒子の平均粒径(D50)は、12μmであり、小粒二次粒子の平均粒径(D50)は、3μmであり、大粒二次粒子と小粒二次粒子との混合重量比は、80:20でり、大粒二次粒子と小粒二次粒子とにおいて、ニッケルの含量差は、14モル%である。
【0130】
実施例2
製造例1によって得られた12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例2によって得られた3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物との混合重量比が90:10重量比に変化され、酸素雰囲気で、約720℃で10時間熱処理を実施したことを除いては、実施例1と同一に実施し、下記表1に示された大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。前述の大粒二次粒子の平均粒径(D50)は、12μmであり、小粒二次粒子の平均粒径(D50)は、3μmであり、大粒二次粒子と小粒二次粒子との混合重量比は、90:10重量比であり、大粒二次粒子と小粒二次粒子とにおいて、ニッケルの含量差は、14モル%である。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例3ないし6
下記表2のように、ニッケル系金属水酸化物の熱処理温度が変化されたことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例7
製造例1によって得られた12μmである大粒ニッケル系金属水酸化物の代わりに、製造例3によるニッケル系金属水酸化物(ニッケル系金属水酸化物(Ni0.96Co0.02Al0.02(OH))を利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、下記表3の条件を満足するニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例8
製造例4の大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例2の小粒ニッケル系金属水酸化物とを利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、下記表4の条件を満足するニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0137】
実施例9
製造例5の大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例2の小粒ニッケル系金属水酸化物とを利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、下記表4の条件を満足するニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0138】
実施例10
製造例1の大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例6の小粒ニッケル系金属水酸化物とを利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、下記表4の条件を満足するニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0139】
実施例11
製造例1の大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例7の小粒ニッケル系金属水酸化物とを利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、下記表4の条件を満足するニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0140】
【表4】
【0141】
比較例1
製造例1によって得られた大粒ニッケル系金属水酸化物として、Ni0.94Co0.03Al0.03(OH)を利用し、製造例3によって得られた小粒ニッケル系金属水酸化物としてNi0.96Co0.02Al0.02(OH)を利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0142】
比較例2
製造例1によって得られた大粒ニッケル系金属水酸化物、及び水酸化リチウム(LiOH)を、ヘンシェルミキサを使用し、乾式で1:1.05モル比で混合し、酸素雰囲気で、約740℃で10時間一次熱処理を施し、大粒二次粒子であるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。前述の大粒二次粒子の平均粒径(D50)は、12μmである。
【0143】
それと別途に、製造例2によって得られた3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物及び水酸化リチウム(LiOH)を、ヘンシェルミキサを使用し、乾式で1:1.01モル比で混合し、酸素雰囲気で、約680℃で10時間二次熱処理を施し、小粒二次粒子であるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。前述の小粒二次粒子の平均粒径(D50)は、3μmである。
【0144】
前述の大粒二次粒子と前述の小粒二次粒子とを80:20重量比で混合した後、約700℃で三次熱処理を施し、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。
【0145】
比較例2によって実施すれば、NCAを得るために、3回の熱処理工程を必ず経なければならず、製造コスト及び時間が多くかかり、この方法を実在的に適用することは、困難であった。
【0146】
(リチウム二次電池の製造)
【0147】
製作例1
正極活物質として、実施例1によって得られたニッケル系リチウム金属複合酸化物二次粒子を利用し、リチウム二次電池を次のように製造した。
【0148】
実施例1によって得られたニッケル系リチウム金属複合酸化物二次粒子96g、ポリフッ化ビニリデン2g、溶媒であるN-メチルピロリドン47g、及び導電剤であるカーボンブラック2gの混合物を、ミキサを利用し、気泡を除去し、均一に分散された正極活物質層形成用スラリーを製造した。
【0149】
前述の過程によって製造されたスラリーを、ドクターブレードを使用し、アルミニウム箔上にコーティングし、薄極板状にした後、それを135℃で3時間以上乾燥させた後、圧延し、真空乾燥過程を経て正極を作製した。
【0150】
前述の正極と、相対極としてのリチウム金属対極とを使用し、2032タイプのコインセル(coin cell)を製造した。前述の正極と前述のリチウム金属対極との間には、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレータ(厚み:約16μm)を介在させ、電解液を注入し、2032型コインセルを作製した。このとき、前述の電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:5の体積比で混合した溶媒に溶解された1.1M LiPFが含まれた溶液を使用した。
【0151】
前述の過程によって作製されたコインセルに係わる化成過程を、次のように実施した。
【0152】
最初充放電は、10時間休止させた後、0.2Cの電流でもって、4.25Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したコインセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した(最初のサイクル)。さらに、約10分間の休止期間を与えた後、2回目の充放電サイクルは、0.2Cの電流でもって、4.25Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したコインセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を遂行した(2回目のサイクル)。
【0153】
製作例2ないし11
実施例1によって製造されたニッケル系リチウム金属複合酸化物の代わりに、実施例2ないし11によって製造されたニッケル系リチウム金属複合酸化物を使用したことを除いては、製作例1と同一方法により、リチウム二次電池を作製した。
【0154】
比較製作例1,2
実施例1によって製造されたニッケル系リチウム金属複合酸化物の代わりに、比較製造例1及び2によって製造されたニッケル系リチウム金属複合酸化物をそれぞれ使用したことを除いては、製作例1と同一方法により、リチウム二次電池を作製した。
【0155】
評価例1:dQ/dV分析
製作例1及び比較製作例1,2によって作製されたコインセルにおいて、充放電特性などを、充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0156】
充放電特性評価過程について、さらに詳細に記述すれば、次の通りである。
【0157】
1Cの電流でもって、4.3Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを実施した(最初のサイクル)。そのような充放電サイクルを反復して実施し、合計で50回充放電サイクルを実施した。
【0158】
最初のサイクル後、30回サイクル後及び50回サイクル後、4.1Vないし4.25Vの電圧範囲で示されるdQ/dV充放電微分曲線分布について求められる充電ピーク強度(A1)に対する放電ピーク強度(A2)の比率(A2/A1)を調査し、下記表5、図1ないし図5に示した。
【0159】
充電ピークは、4.17Vないし4.25Vで示されるピークであり、前述の放電ピークは、4.14Vないし4.17Vで示されるピークである。
【0160】
図1は、製作例1、比較製作例1及び2のリチウム電池において、最初のサイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したものであり、図2は、製作例1及び比較製作例2のリチウム電池において、30回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したものである。
【0161】
図3は、製作例1及び比較製作例2のリチウム電池において、50回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したことで、図4は製作例1のリチウム電池で最初のサイクル、30回サイクル後及び50回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したものである。そして、図5は、比較製作例2のリチウム電池において最初のサイクル、30回サイクル後及び50回サイクル後のdQ/dV充放電微分曲線を示したものである。
【0162】
【表5】
【0163】
図1ないし図5、及び表5を参照し、製作例1のリチウム二次電池において、最初のサイクル後、30回サイクル後及び50回サイクル後、A2/A1が1.1以上である特性を示し、比較製作例1及び2のリチウム電池において、最初のサイクル、30回サイクル後、50回サイクル後、A2/A1が1.0未満である特性を示した。また、製作例1のリチウム電池は、比較製作例1及び2の場合と比較し、A2/A1変化率が低減された結果を示した。A2/A1変化率は、1回サイクルのA2/A1に対する50回サイクルのA2/A1の比を示したものであり、A2/A1変化率が低減されたということは、製作例1のリチウム電池は、充放電サイクル後、劣化による構造的変化が少ないということが分かる。
【0164】
評価例2:X線回折分析
実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対して、Cu Kα radiation(1.54056Å)を利用したX’pert pro(PANalytical)を利用し、X線回折分析を実施した。該X線回折分析結果を図6に示した。
【0165】
図6を参照し、実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物は、不純物がなく、整列された層状構造を形成するということが分かった。
【0166】
評価例3:充放電効率及び容量維持率
製作例1ないし6、及び比較製作例1によって製作されたコインセルにおいて、充放電効率及び容量維持率を、充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)を利用し、次のように評価した。
【0167】
(1)充放電効率
各コインセルに対し、25℃で0.2Cの電流でもって、4.25Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを50回反復して実施して評価した。
【0168】
(2)容量維持率(CRR)
各コインセルに対し、45℃で1Cの電流でもって、4.3Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを50回反復して実施して評価した。
【0169】
容量維持率(CRR:capacity retention ratio)は、下記数式1から計算され、初期充放電効率は、下記数式2から計算され、容量維持率及び初期充放電効率特性の一部を調査し、下記表6及び図8に示した。図8は、製作例1,2及び比較製作例1の容量維持率特性を示したものである。
【0170】
【数1】
【0171】
【数2】
【0172】
【表6】
【0173】
表6及び図8を参照し、製作例1ないし6によって製造されたコインセルは、比較製作例1の場合と比較し、容量維持率特性が改善されるということが分かった。また、製作例1-6のコインセルは、比較製作例1の場合と比較し、改善された初期充放電効率特性を示した。
【0174】
比較製作例2のコインセルは、優秀な容量維持率特性を示した。しかし、比較製作例2のコインセルにおいて、正極は、大粒と小粒とを別途工程によって焼成し、3回焼成を経て得た比較例2のニッケル系リチウム金属複合酸化物を利用し、前述の比較例2のニッケル系リチウム金属複合酸化物は、3回の熱処理工程を必ず経なければならず、製造コスト及び時間が多くかかり、この方法を実際的に適用し難い。
【0175】
また、製作例7ないし11のコインセルに係わる充放電特性を、前述の製作例1のコインセルの充放電特性の評価方法と同一に実施した。
【0176】
評価結果、製作例7ないし11のコインセルに係わる充放電特性は、前述の製作例1のコインセルの充放電特性と比較し、類似したレベルを示した。
【0177】
評価例4:充放電特性
製作例1及び比較製作例1によって製作されたコインセルにおいて、充放電特性を次のような条件で評価した。
【0178】
充放電特性は、各コインセルに対し、25℃で0.2Cの電流でもって、4.25Vに達するまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を実施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流でもって、電圧が3Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを実施した。
【0179】
前述の評価結果を図9に示した。
【0180】
図9に示されているように、製作例1のコインセルは、比較例1のコインセルと比較し、充放電特性が改善された。
【0181】
以上においては、図面及び実施例を参照し、一具現例について説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【符号の説明】
【0182】
21 リチウム二次電池
22 負極
23 正極
24 セパレータ
25 電池ケース
26 キャップアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含み、ニッケルの含量が、ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、遷移金属総含量を基準にし、50モル%以上であるニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、
前記二次粒子は、平均粒径(D50)が10μm以上である大粒二次粒子と、平均粒径(D50)が5μm以下である小粒二次粒子と、を含み、
前記大粒二次粒子のニッケルの含量が、前記小粒二次粒子のニッケルの含量に比べて多い、ニッケル系リチウム金属複合酸化物であって、
前記大粒二次粒子は、下記化学式1-1で表される化合物であり、前記小粒二次粒子は、下記化学式1-2で表される化合物であり、
BET法によって測定された前記小粒二次粒子のBET比表面積が、前記大粒二次粒子のBET比表面積の2倍以上である、ニッケル系リチウム金属複合酸化物:
【化1-1】
Li (Ni 1-x-y-z Co Al )O
前記化学式1-1で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、
0.95≦a≦1.3、0.88≦1-x-y-z≦0.96、0.01≦x≦0.08、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01であり、
【化1-2】
Li (Ni 1-x-y-z Co Al )O
前記化学式1-2で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、またはその組み合わせであり、
0.95≦a≦1.3、0.75≦1-x-y-z≦0.85、0.01≦x≦0.05、0.001≦y≦0.05、0≦z≦0.01である。