(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105677
(43)【公開日】2023-07-31
(54)【発明の名称】分岐部保護部材及び分岐部保護構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20230724BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20230724BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
H02G3/04
H01B7/00 301
H01B7/00 305
F16L57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006653
(22)【出願日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】池園 隆史
【テーマコード(参考)】
3H024
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA01
3H024AB06
3H024AC03
5G309AA09
5G309EA03
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD12
5G357DD14
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネスにおける分岐部を保護できるともに、分岐部に振動が作用しても打音の発生を防止すること。
【解決手段】ワイヤーハーネス100において幹線110から枝線120が分岐する分岐部130と、該分岐部130を挟み込んで保護する分岐部保護部材10Bとが備えられ、分岐部保護部材10Bは、例えば、ポリウレタンフォームあるいは、EPDMフォーム等の樹脂フォーム材から成る、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスにおいて幹線から枝線が分岐する分岐部を挟み込んで保護する分岐部保護部材であり、
前記分岐部保護部材は、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成された
分岐部保護部材。
【請求項2】
前記緩衝素材として、樹脂フォーム材が用いられた
請求項1に記載の分岐部保護部材。
【請求項3】
前記樹脂フォーム材として、ポリウレタンフォームあるいは、EPDMフォームが用いられた
請求項2に記載の分岐部保護部材。
【請求項4】
前記分岐部保護部材は、所定の厚みを有するシート状に形成され、
前記分岐部を挟み込んだ前記分岐部保護部材の挟み込み状態を保持する保持材が設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の分岐部保護部材。
【請求項5】
前記保持材は、シート状に形成された前記分岐部保護部材の少なくとも片面に設けられ、前記分岐部保護部材により変形性の低い粘着層である
請求項4に記載の分岐部保護部材。
【請求項6】
前記分岐部を挟み込む挟み込み状態における内側において、前記分岐部における凸部分に対応して配置され、前記凸部分の保護を補強する補強材が設けられた
請求項4または請求項5に記載の分岐部保護部材。
【請求項7】
内部と外部とを連通し、前記内部に向かって前記分岐部を前記外部から挿入可能な挿入スリットが設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載の分岐部保護部材。
【請求項8】
前記内部に配置される前記分岐部を構成する前記幹線と前記枝線とで形成する仮想平面に沿う前記挿入スリットが形成された
請求項7に記載の分岐部保護部材。
【請求項9】
前記内部に配置される前記分岐部を構成する前記幹線と前記枝線とで形成する仮想平面に交差する方向の前記挿入スリットが形成された
請求項7に記載の分岐部保護部材。
【請求項10】
ワイヤーハーネスにおいて幹線から枝線が分岐する分岐部と、
該分岐部を挟み込んで保護する分岐部保護部材とが備えられ、
前記分岐部保護部材は、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成された
分岐部保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ワイヤーハーネスにおいて枝線が分岐する分岐部を保護する分岐部保護部材及び分岐部保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載される様々な電気機器は、配策したワイヤーハーネス等を介して電力の供給が行われている。このようなワイヤーハーネスにおいて枝線が分岐する分岐部があり、分岐部を保護するものとして、特許文献1に記載するようなシートを用いた分岐部の保護構造が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の分岐部保護構造に用いるシートは枝線が割り込む切れ目が形成されおり、切れ目に枝線を割り込ませたシートで分岐部を包み込み、分岐部を保護することが開示されている。
しかしながら、特許文献1の保護構造では、分岐部を保護することはできるものの、走行時の振動等によってシートで包み込まれた分岐部が周囲に当接してカタカタという打音がするといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、ワイヤーハーネスにおける分岐部を保護できるともに、分岐部に振動が作用しても打音の発生を防止できる分岐部保護部材及び分岐部保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ワイヤーハーネスにおいて幹線から枝線が分岐する分岐部を挟み込んで保護する分岐部保護部材であり、前記分岐部保護部材は、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成されたことを特徴とする。
【0007】
またこの発明は、ワイヤーハーネスにおいて幹線から枝線が分岐する分岐部と、該分岐部を挟み込んで保護する分岐部保護部材とが備えられ、前記分岐部保護部材は、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成された分岐部保護構造であることを特徴とする。
【0008】
この発明により、ワイヤーハーネスにおける分岐部を保護できるともに、振動等が分岐部に作用しても打音が発生することを防止できる。
詳述すると、ワイヤーハーネスにおいて幹線から枝線が分岐する分岐部を挟み込んで保護する分岐部保護部材を、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成するため、振動等が分岐部に作用し、周囲と当接しても、緩衝素材が周囲との当接による衝撃を吸収し、打音が発生することを防止できる。
【0009】
この発明の態様として、前記緩衝素材として、樹脂フォーム材が用いられてもよい。
この発明により、緩衝素材自体が高い衝撃吸収性を有するため、より確実に打音の発生を防止することができる。
【0010】
またこの発明の態様として、前記樹脂フォーム材として、ポリウレタンフォームあるいは、EPDMフォームが用いられてもよい。
【0011】
この発明により、ポリウレタンフォームあるいは、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)フォームは汎用性が高く、かつ耐久性が高いため、安定して、確実に打音の発生を防止することができる。
【0012】
ポリウレタンフォーム(「ウレタンフォーム」とも称する)は、軟質ポリウレタンフォームと硬質ポリウレタンフォームの何れであってもよい。
【0013】
またこの発明の態様として、前記分岐部保護部材は、所定の厚みを有するシート状に形成され、前記分岐部を挟み込んだ前記分岐部保護部材の挟み込み状態を保持する保持材が設けられてもよい。
前記保持材は、前記分岐部を挟み込んだ前記分岐部保護部材の挟み込み状態を保持可能な手段であれば、例えば、粘着層、面ファスナ、クリップ、バンド或いはテープ等で形成してもよい。
【0014】
この発明により、分岐部を挟み込んだ挟み込み状態を保持材で確実に保持することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記保持材は、シート状に形成された前記分岐部保護部材の少なくとも片面に設けられ、前記分岐部保護部材より変形性の低い粘着層であってもよい。
この発明により、前記分岐部保護部材が有する衝撃吸収性を損なうことなく、保持材で挟み込み状態を保持することができる。
詳しくは、前記分岐部保護部材は、テンションが作用する等して伸長した状態(過度に変形した状態)においては、該分岐部保護部材自体に有する本来の変形性(衝撃吸収性)が損なわれるおそれがある。そこで、分岐部保護部材の少なくとも片面に、該分岐部保護部材より変形性が低い粘着層が設けられることで、分岐部保護部材によって分岐部を保護する際に、分岐部保護部材が引っ張られたとしても、該分岐部保護部材の不用意な伸長を粘着層によって規制できる。従って、前記分岐部保護部材は、それ自体が有する変形性が確保され、衝撃吸収することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記分岐部を挟み込む挟み込み状態における内側において、前記分岐部における凸部分に対応して配置され、前記凸部分の保護を補強する補強材が設けられてもよい。
前記補強材には、シート状の前記分岐部保護部材における所定箇所に予め貼り付けておく形態、分岐部保護部材と別体形成しておき、前記分岐部保護部材によって前記分岐部を挟み込む際或いは挟み込んだ状態において該分岐部保護部材に貼り付ける形態の何れであってもよい。また、前記補強材は、前記分岐部保護部材や前記分岐部に貼り付けることなく、例えば、前記分岐部保護部材と前記分岐部との間に単に介在させるなどして備えてもよい。さらにまた、前記補強材は、前記分岐部保護部材に対して内側、外側の何れの側に備えてもよい。
【0017】
この発明により、周囲との当接によって衝撃が作用しやすい凸部分を補強材で補強するため、保護性能をより向上させるとともに、打音の発生を確実に防止することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、内部と外部とを連通し、前記内部に向かって前記分岐部を前記外部から挿入可能な挿入スリットが設けられてもよい。
この発明により、挿入スリットから分岐部を内部に挿入することで、分岐部保護部材の内部に分岐部を収容して保護することができるとともに、打音の発生を防止することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、内部に配置される前記分岐部を構成する前記幹線と前記枝線とで形成する仮想平面に沿う前記挿入スリットが形成されてもよい。
この発明により、前記幹線と前記枝線とで形成する仮想平面に沿う前記挿入スリットから分岐部を挿入することで、挿入スリットの両側の分岐部保護部材で分岐部を挟み込んで保護することができるとともに、打音の発生を防止することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、内部に配置される前記分岐部を構成する前記幹線と前記枝線とで形成する仮想平面に交差する方向の前記挿入スリットが形成されてもよい。
この発明により、前記幹線と前記枝線とで形成する仮想平面に交差する方向の前記挿入スリットから分岐部を挿入することで、挿入スリットから分岐部保護部材の内部に分岐部を挿入して保護することができるとともに、打音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明により、ワイヤーハーネスにおける分岐部を保護できるともに、分岐部に振動が作用しても打音の発生を防止できる分岐部保護部材及び分岐部保護構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)は本実施形態の分岐部保護構造の正面図、(b)は
図1(a)のA-A線に沿った矢視端面図、(c)は
図1(a)のB-B線に沿った矢視端面図。
【
図3】変形例1の分岐部保護部材によって分岐部を保護する前の状態を示す外観図。
【
図5】変形例2の分岐部保護部材によって分岐部を保護する前の状態を示す外観図。
【
図6】他の実施形態の分岐部保護構造の分解斜視図。
【
図7】(a)は変形例1Aの分岐部保護構造の
図3に対応する外観図(b)は変形例1Aに付随する構成の分岐部保護構造の
図3に対応する外観図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
ここで、図中、X方向は、分岐部130における幹線110の長手方向、Y方向は、
図1(a)においてX方向に直交する方向、Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向(
図1(a)において紙面に直交する方向)を、夫々示す。さらに、Xa方向はX方向の一方側、Xb方向はX方向の他方側、Ya方向はY方向の一方側、Yb方向はY方向の他方側、Za方向はZ方向の一方側、Zb方向はZ方向の他方側を、夫々示す。なお、
図1(b)(c)においては、ワイヤーハーネス100の内部構造の図示を省略している。
【0024】
図1(a)(b)(c)に示すように、本実施形態の分岐部保護構造1は、ワイヤーハーネス100において幹線110から枝線120が分岐する分岐部130と、該分岐部130を挟み込んで保護する分岐部保護部材10とが備えられている。
【0025】
ワイヤーハーネス100は、長手方向の各端部が車両に搭載された各種電気機器や電源(バッテリ)などにコネクタを介して電気的に接続され、車両における所定の配索経路に沿って配索される。本実施形態のワイヤーハーネス100は、図示省略するが、複数の電線140(
図1(a)参照)が長手方向における所定間隔ごとに結束バンド等で結束されている。
【0026】
ワイヤーハーネス100は、幹線110(「幹線ハーネス」とも称する)および枝線120(「枝線ハーネス」とも称する)を備えている。幹線110と枝線120とは、何れも少なくとも1本の電線群からなり、幹線110は、一般に枝線120よりも多くの電線140が結束される等して太径に形成された形態としている。
【0027】
前記分岐部130は、幹線110における枝線120が分岐する部分、および枝線120における幹線110から分岐する部分を示している。本実施形態の分岐部130は、2本の枝線120が共に、X方向と平行に延びる幹線110における、Y方向の一方側Yaから分岐する。2本の枝線120は、幹線110からY方向の一方側Ya程X方向に互いに離間するように延びる。
但し、本実施形態の分岐部130は一例であり、T字状、Y字状、X字状など他の分岐形態を採用してもよい。
【0028】
分岐部保護部材10は、本体シート部2と、該本体シート部2を補強する補強シート部3a,3bとを備えている。
【0029】
本体シート部2は、衝撃を緩衝する緩衝素材としての樹脂フォーム材によって、所定の厚みを有するシート状に形成されている。本実施形態の本体シート部2は、クッション性および伸縮性に優れたポリウレタンフォームで形成され、例えば、3mmから7mm程度の厚みで形成されている。
【0030】
また、本体シート部2は、一方の面全体に粘着層4(接着層)が形成されている。粘着層4は、例えば、接着剤を塗布する、或いは両面テープの一方の面を貼り付けるなどして形成することができる。粘着層4は、本体シート部2と比して変形性が低いため、本体シート部2に粘着層4を形成することで、伸縮性に優れた本体シート部2の不用意な伸縮を抑える効果を有する。
【0031】
本体シート部2は、分岐部130をZ方向(厚み方向)の両側から挟み込むようにして分岐部130に装着される。本体シート部2は、分岐部130を挟み込んだ状態において、正面視(
図1(a)に示す状態)でX方向およびY方向に延びる矩形状に形成されている。
【0032】
本実施形態の本体シート部2は、分岐部130を挟み込むようにY方向の中間位置において、2つ折りが可能に全体として1枚のシートで形成されている。
図1(a)(b)(c)は、X方向と平行に延びる折返し部5(
図1(a)(c)参照)を起点として2つ折りした本体シート部2によって分岐部130を挟み込んだ状態を示している。本体シート部2は、分岐部130を構成する幹線110と2本の枝線120とで形成する仮想平面H(
図1(a)参照)上に沿って、すなわちX方向およびY方向に沿って配置される。
【0033】
本体シート部2は、Y方向の中間位置に有する折返し部5に対してY方向の各側に、分岐部配置領域6a,6bを備えている。一対の分岐部配置領域6a,6bは、何れも分岐部130の全体が配置される大きさを有する。
【0034】
図1(b)(c)に示すように、本体シート部2によって分岐部130を挟み込んだ状態において、一対の分岐部配置領域6a,6bのうち、一方の分岐部配置領域6aは、分岐部130に対してZ方向の一方側Zaから配置されるとともに、他方の分岐部配置領域6bは、分岐部130に対してZ方向の他方側Zbから配置される。
【0035】
また、一対の分岐部配置領域6a,6bは、分岐部130の中でも少なくとも幹線110と枝線120とをY方向に跨ぐ長さを有しているため、幹線110の半周と枝線120の半周の夫々の長さを合算した長さよりも長いY方向の長さを有している。
【0036】
さらにまた、一対の分岐部配置領域6a,6bは、分岐部130の中でも少なくとも2本の枝線120をX方向に跨ぐ長さを有しているため、2本の枝線120の半周の夫々の長さを合算した長さよりも長いX方向の長さを有している。なお、本実施形態において一対の分岐部配置領域6a,6bは、Y方向よりもX方向に長い長方形状に形成されている。
【0037】
また、上述した粘着層4は、本体シート部2を折り返した状態において、互いに対向する面に形成されている。具体的には、粘着層4は、一方の分岐部配置領域6aについてはZ方向の他方側Zbの面に形成されるとともに、他方の分岐部配置領域6bについてはZ方向の一方側Zaの面に形成されている。
【0038】
図1(a)(b)(c)に示すように、分岐部保護部材10には、さらに2枚の補強シート部3a,3bを備えている。
図1(b)(c)に示すように、分岐部130を挟み込んだ状態における本体シート部2の内側において、一方の補強シート部3aは、一方の分岐部配置領域6aと分岐部130との間に介在する。一方、分岐部130を挟み込んだ状態における本体シート部2の内側において、他方の補強シート部3bは、他方の分岐部配置領域6bと分岐部130との間に介在する。
【0039】
補強シート部3a,3bは、本体シート部2と同様に衝撃を緩衝する緩衝素材であれば、本体シート部2と異なる素材および厚みで形成されたものであってもよいが、本実施形態においては、本体シート部2と同じ素材および厚みで形成されている。
【0040】
また、一対の補強シート部3a,3bは、互いに同一形状に形成され、何れも一対の分岐部配置領域6a,6bの大きさよりも一回り小さい大きさで形成されている。具体的に、補強シート部3a,3bは、本体シート部2によって分岐部130を挟み込んだ状態において、本体シート部2の正面視で少なくとも分岐部130における凸部分、すなわち、幹線110および枝線120の配置部分に対応して配置される。
【0041】
補強シート部3a,3bは、本体シート部2に配置された状態において、本体シート部2に対して、該本体シート部2に形成した粘着層4を介して接着される。なお、図示省略するが、粘着層は、補強シート部3a,3bにも形成してもよい。すなわち、補強シート部3a,3bは、少なくとも一方の面に粘着層を形成し、本体シート部2や分岐部130に対して積極的に接着する形態としてもよい。
【0042】
続いて、本実施形態の分岐部保護部材10を用いて分岐部130を保護する手順の一例について説明する。
本体シート部2を不図示の布線治具に折り返さない状態で設置する。その状態から本体シート部2における一対の分岐部配置領域6a,6bのうち、例えば、一方の分岐部配置領域6aに、一方の補強シート部3a、分岐部130、他方の補強シート部3bを、この順に積層するように設置する。
【0043】
次いで、本体シート部2における他方の分岐部配置領域6bを、折返し部5を起点として一方の分岐部配置領域6aの側へ折り返す。すなわち、本体シート部2を2つ折りする。これにより、分岐部130は、一対の補強シート部3a,3bと共に一対の分岐部配置領域6a,6bによって挟み込まれた状態となる。
【0044】
その状態において、分岐部130と一対の分岐部配置領域6a,6bとの間に介在する一対の補強シート部3a,3bは、分岐部130の凸部、すなわち2本の枝線120および幹線110の各外周面に対してZ方向の各側から接触する。
【0045】
さらに、一対の本体シート部2は、一対の分岐部配置領域6a,6bが互いに接触する部分については、夫々の粘着層4を介して互いに貼り合わされるとともに、補強シート部3a,3bや分岐部130との接触部分については、該接触部分に対して粘着層4を介して接着される。
以上により、分岐部保護部材10を用いて分岐部130を保護することができる。
【0046】
図1に示すように、上述した本実施形態の分岐部保護構造1は、ワイヤーハーネス100において幹線110から枝線120が分岐する分岐部130と、該分岐部130を挟み込んで保護する分岐部保護部材10とが備えられ、分岐部保護部材10は、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成されているため、ワイヤーハーネス100における分岐部130を保護できるともに、振動等が分岐部130に作用しても打音が発生することを防止できる。
詳述すると、ワイヤーハーネス100において幹線110から枝線120が分岐する分岐部130を挟み込んで保護する分岐部保護部材10に備えた本体シート部2を、衝撃を緩衝する緩衝素材で構成するため、振動等が分岐部130に作用し、周囲と当接しても、緩衝素材が周囲との当接による衝撃を吸収し、打音が発生することを防止できる。
【0047】
また、前記緩衝素材として、ポリウレタンフォームが用いられているため、緩衝素材としてのポリウレタンフォーム自体が高い衝撃吸収性を有し、より確実に打音の発生を防止することができる。
【0048】
さらに、ポリウレタンフォームは汎用性が高く、かつ耐久性が高いため、安定して、確実に打音の発生を防止することができる。
【0049】
また、
図1(b)(c)に示すように、分岐部保護部材10は、所定の厚みを有するシート状に形成された本体シート部2を備え、分岐部130を挟み込んだ本体シート部2の挟み込み状態を保持する保持材として、一対の分岐部配置領域6a,6bの対向面に粘着層4が設けられている。
【0050】
前記構成によれば、分岐部130を挟み込むために一対の分岐部配置領域6a,6bを重ね合わせるだけで粘着層4を介して接着できるため、本体シート部2の挟み込み状態をしっかりと保持することができる。
【0051】
さらに、本体シート部2に粘着層4が設けられているので、本体シート部2の衝撃吸収性を損なうことなく、分岐部130の挟み込み状態を保持することができる。
【0052】
詳しくは、本体シート部2は、テンションが作用する等して伸長した状態(過度に変形した状態)においては、該本体シート部2自体に有する本来の変形性(衝撃吸収性)が損なわれるおそれがある。そこで、本体シート部2の少なくとも片面に、該本体シート部2より変形性が低い粘着層4が設けられることで、分岐部保護部材10によって分岐部130を保護する際に、本体シート部2が引っ張られたとしても、該本体シート部2の不用意な伸長を粘着層4によって規制できる。従って、分岐部保護部材10は、本体シート部2が有する変形性が確保され、衝撃吸収することができる。
【0053】
また、
図1(a)(b)(c)に示すように、分岐部130を挟み込む挟み込み状態における内側において、分岐部130における凸部分に対応して配置され、前記凸部分の保護を補強する補強シート部3a,3b(補強材)が設けられている。
【0054】
前記構成によれば、周囲との当接によって衝撃が作用しやすい分岐部130の凸部分を補強シート部3a,3bで補強するため、分岐部130の保護性能をより向上させるとともに、打音の発生を確実に防止することができる。
【0055】
続いて、本発明の分岐部保護部材の上述した実施形態の変形例に係る分岐部保護部材10A,10Bについて説明する。但し、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
(変形例1)
変形例1の分岐部保護構造1Aに備えた分岐部保護部材10Aは、全体が上述した実施形態の本体シート部2と同じポリウレタンフォームで形成され、
図2に示すように、X方向、Y方向およびZ方向において所定の厚みを有する立体形状に形成されている。なお、変形例1の分岐部保護部材10Aは、補強シート部3a,3bを備えずに形成されるが、適宜、補強シート部3a,3bを備えてもよい。
【0057】
分岐部保護部材10Aは、正面視(Z方向の一方側Zaから視た状態)で上述した実施形態の分岐部保護部材10と略同一形状であるとともに、厚み(Z方向の長さ)が上述した実施形態の本体シート部2よりも厚い(長い)直方体形状に形成されている。
【0058】
換言すると、分岐部保護部材10Aは、分岐部130の厚み(すなわち、分岐部130の最大の厚みを有する幹線110の径)よりも厚く形成されている。これにより、変形例1の分岐部保護部材10Aは、分岐部130を内部に埋設可能な厚みを有して形成される。さらに、変形例1の分岐部保護部材10Aは、正面視で上述した実施形態の分岐部保護部材10における、分岐部130の配置形態と同様の配置形態で分岐部130を保護する。
ここで、
図2に示すように、分岐部保護部材10Aの内部における分岐部130が配置される箇所を、分岐部配置部7に設定する。
【0059】
分岐部配置部7は、分岐部130における幹線110が配置される幹線配置領域71と、2本の枝線120の夫々が配置される枝線配置部72とを備えている。幹線110は、幹線配置領域71に配置された状態において該幹線配置領域71の両端部から外部へと延出するとともに、枝線120は、枝線配置部72に配置された状態において該枝線配置部72の端部から外部へと延出する。
【0060】
図2、
図3に示すように、分岐部保護部材10Aは、該分岐部保護部材10Aの外部から分岐部配置部7に向かって分岐部130を挿入可能な挿入スリット8A(切れ目)が設けられている。
【0061】
挿入スリット8Aは、分岐部130を構成する幹線110と枝線120とで形成する仮想平面H(
図3参照)に沿って形成されている。本実施形態において、挿入スリット8Aは、分岐部保護部材10AのY方向の一方側Yaの端面15faにおける、Z方向の中間位置からY方向と平行にX方向の全長に亘ってY方向の他端側Ybに向けて直線状に形成されている。すなわち、
図2に示すように、挿入スリット8Aは、分岐部130における、幹線110に対して2本の枝線120が延出する側から幹線110(幹線配置領域71)に向けて切り欠き状に形成されている。
【0062】
挿入スリット8Aは、分岐部配置部7と外部とを連通するが、本実施形態において、分岐部配置部7は、挿入スリット8Aの一部を成すように形成され、また、幹線配置領域71は、挿入スリット8Aの最深部に相当する(
図2参照)。
【0063】
変形例1の分岐部保護部材10Aは、伸縮性を有するため、例えば、作業者が挿入スリット8Aを開いた状態から手を離すと、復元力(弾性力)や自重により、挿入スリット8Aが塞がるように変形する。
【0064】
具体的に、分岐部保護部材10Aにおける、挿入スリット8Aの各側に有する対向面11(
図3参照)は、分岐部配置部7に対応する箇所については、分岐部130に対して接触するとともに、分岐部配置部7以外の箇所については、互いに接触するように変形する。
【0065】
また、
図2、
図3に示すように、挿入スリット8Aの各側に有する対向面11には、全体に粘着層4が形成されている。
【0066】
続いて、変形例1の分岐部保護部材10Aを用いて分岐部130を保護する手順の一例について説明する。
分岐部保護部材10AをZ方向の他方側Zbの他端面16fb(
図3参照)を不図示の布線治具に設置し、
図3に示すように、挿入スリット8Aが開くように、該挿入スリット8Aに対してZ方向の一方側部位16aを他方側部位16bに対して捲り上げる。
【0067】
次いで、
図3に示すように、挿入スリット8Aに対して対向する一対の対向面11の夫々に接着剤を塗布するなどして粘着層4を形成する。挿入スリット8Aを開けた状態で分岐部130を分岐部配置部7に差し込むように配置し(
図3中の白抜矢印参照)、その状態から挿入スリット8Aを塞ぐことで、挿入スリット8Aに対してZ方向の一方側部位16aと他方側部位16bとによって分岐部130を挟み込む。
【0068】
これにより、挿入スリット8Aの各側に有する対向面11は、分岐部配置部7に対応する箇所については、該分岐部配置部7に対して粘着層4を介して接着するとともに、分岐部配置部7以外の箇所については、両者の粘着層4を介して互いに貼り合わされる。
以上により、分岐部保護部材10Aを用いて分岐部130を保護することができる。
なお、分岐部保護部材10Aは、分岐部130を挿入スリット8Aを通じて分岐部配置部7まで挿入後に、挿入スリット8Aに対して対向する一対の対向面11に対して接着剤を塗布する等して粘着層4を形成してもよい。これにより、分岐部130を挿入スリット8Aを通じて挿入時に、該分岐部130が粘着層4に不用意に粘着することなく、分岐部配置部7までスムーズに挿入することができる。
【0069】
変形例1の分岐部保護部材10Aは、上述した実施形態の分岐部保護部材10と同様の構成については同一の効果を奏することができる。
加えて、変形例1の分岐部保護部材10Aは、以下の効果を奏することができる。すなわち、
図3に示すように、変形例1の分岐部保護部材10Aは、分岐部配置部7(内部)と外部とを連通し、分岐部配置部7に向かって分岐部130を外部から挿入可能な挿入スリット8Aが設けられたため、挿入スリット8Aから分岐部130を分岐部配置部7に挿入することで、分岐部保護部材10Aの分岐部配置部7に分岐部130を収容して保護することができるとともに、打音の発生を防止することができる。
【0070】
さらに、変形例1の分岐部保護部材10Aは、分岐部配置部7に配置される分岐部130を構成する幹線110と枝線120とで形成する仮想平面H(
図3参照)に沿う挿入スリット8Aが形成されたため、該仮想平面Hに沿う挿入スリット8Aから分岐部130を挿入することができる。従って、分岐部保護部材10Aは、挿入スリット8Aの両側の部位16a,16bで分岐部130を挟み込んで保護することができるとともに、打音の発生を防止することができる。
【0071】
(変形例2)
図4、
図5に示すように、変形例2の分岐部保護構造1Bに備えた分岐部保護部材10Bは、変形例1の分岐部保護部材10Aと同一素材および同一の外観形状に形成されるとともに、同様の配置形態で分岐部130が分岐部配置部7に配置されるが、変形例1の分岐部保護部材10Aとは異なる態様で挿入スリット8Bが形成されている。
【0072】
変形例2の挿入スリット8Bは、分岐部保護部材10Bに、分岐部130を構成する幹線110と枝線120とで形成する仮想平面Hに直交する方向(すなわちZ方向)に切欠き状に形成されるとともに、正面視で分岐部配置部7に対応する部位に沿って延在する。
【0073】
具体的に、挿入スリット8Bは、幹線110を外部から分岐部配置部7の幹線配置領域71まで挿入する幹線挿入スリット8Baと、2本の枝線120の夫々を外部から分岐部配置部7の枝線配置部72まで挿入する枝線挿入スリット8Bbを備えている。
【0074】
幹線挿入スリット8Baは、Z方向の一方側Zaの端面16faからZ方向の他方側Zbへ該Z方向と平行に幹線110(幹線配置領域71)に向けて直線状に形成されている。幹線挿入スリット8Baは、X方向と平行に分岐部保護部材10Bの全長に亘って直線状に延びている。
【0075】
枝線挿入スリット8Bbは、幹線110から分岐する枝線120の付け根部分からY方向の一方側Yaの端面15fa(枝線120が延出する側の面)に至るまでY方向に沿って直線状に延びている。
【0076】
枝線挿入スリット8Bbは、2本の枝線120に対応して一対を備え、Y方向の一方側Ya程X方向において徐々に離間するようにY方向に対して傾斜して延びている。
【0077】
続いて、分岐部保護部材10Bを用いて分岐部130を保護する手順の一例について説明する。
分岐部保護部材10BをZ方向の他端面16fbを下面として不図示の布線治具に設置し、分岐部保護部材10Bの上方において、分岐部130を分岐部配置部7に平面視で一致するように臨ませる。分岐部130を分岐部保護部材10Bの上面(一方側Zaの端面16fa)に配置し、さらに、分岐部130を分岐部保護部材10Bの側へ押し付けることで(
図5中の白抜き矢印参照)、分岐部保護部材10Bは、枝線挿入スリット8Bbが開くように変形する。これにより、分岐部130を挿入スリット8Bを介して分岐部配置部7まで挿入することができる。
【0078】
次いで、挿入スリット8Bに対して該挿入スリット8Bの開口部(先端部)から接着剤を注入するなどにより、スリットの両側の対向面に粘着層4が形成される。これにより、挿入スリット8Bの各側に有する対向面11(
図4参照)は、分岐部配置部7に対応する箇所については、該分岐部配置部7対して粘着層4を介して接着するとともに、分岐部配置部7以外の箇所については、両者の粘着層4を介して互いに貼り合わされる。
以上により、分岐部保護部材10Bを用いて分岐部130を保護することができる。
【0079】
変形例2の分岐部保護部材10Bは、上述した実施形態の分岐部保護部材10または、変形例1の分岐部保護部材10Aと同様の構成については、これらと同一の効果を奏することができる。
加えて、変形例2の分岐部保護部材10Bは、以下の効果を奏することができる。すなわち、変形例2の分岐部保護部材10Bは、Z方向に切り込まれた挿入スリット8Bが形成されるため、挿入スリット8Bに対してZ方向の一方側Zaから分岐部130を押し付けるように挿入することで、分岐部保護部材10Bの内部に有する分岐部配置部7に、分岐部130を配置することができる。
従って、分岐部保護部材10Bを用いて分岐部130を保護することができる。
【0080】
上述した変形例のように、この発明は、上述した実施形態の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
本発明の分岐部保護部材10は、分岐部130を挟み込んで保護する形態であれば、上述した実施形態の分岐部保護部材10のように、1枚物の本体シート部2を折り返して分岐部130を挟み込む形態に限らず、他の形態としてもよい。
【0081】
例えば、
図6に示す分岐部保護構造1’に備えた分岐部保護部材10’のように、一対の分岐部配置領域6a,6bの夫々に対応する大きさで形成した2枚の本体シート部2a’,2b’を備え、分岐部130に対してZ方向の両側から挟み込む形態としてもよい。
【0082】
また、分岐部保護部材10,10A,10B,10’は、緩衝素材として、ポリウレタンフォームで形成するに限らず、EPDMフォームを用いてもよい。EPDMフォームはポリウレタンフォームと同様に汎用性が高く、かつ耐久性が高いため、安定して、確実に打音の発生を防止することができる。
【0083】
また、上述した実施形態の分岐部保護部材10は、補強シート部3a,3bが必須ではなく、本体シート部2のみを備えた形態としてもよい。また、補強シート部は、分岐部130に対してZ方向の何れか一方の側にのみ配置してもよい。
【0084】
また、変形例1の分岐部保護部材10A、変形例2の分岐部保護部材10Bは、何れも直方体形状に限らず、例えば、直方体以外の多面体形状、球状、錐状、柱状等の立体形状であってもよい。
【0085】
また、本発明の分岐部保護部材は、
図5に示す変形例2の分岐部保護部材10Bのように、挿入スリット8Bを仮想平面Hに対して直交する方向に切欠き状に形成するに限らず、仮想平面Hに対して傾斜する方向に切欠き状に形成してもよい(図示省略)。
【0086】
さらにまた、図示省略するが、本発明の分岐部保護部材は、
図3に示す変形例1の分岐部保護部材10Aのように、上方に向けて開く挿入スリット8Aを通じて内部に分岐部130を挿入する形態に限らず、例えば、
図7(a)に示す分岐部保護構造1A’、すなわち変形例1Aの分岐部保護構造1A’に備えた分岐部保護部材10A’のように、下方に向けて開く挿入スリット8A’を通じて内部に分岐部130を挿入してもよい。その際、分岐部保護部材10A’の上端(挿入スリット8A’の奥側部位)は、幹線110から上方へ向けて2股状に分岐する一対の枝線120の夫々の分岐部分に対応する部位に、枝線配置部72A’を設けた構成とすることが好ましい。
【0087】
枝線配置部は、例えば、
図7(a)に示す枝線配置部72A’のように、挿入スリット8A’の奥側部位と、分岐部保護部材10A’に対して外側上方とをZ方向に連通する穴形状に形成してもよく、或いは、
図7(b)に示す枝線配置部72A’’のように、X方向の両外側から中央へ向けて挿入スリット8A’の一部として切り欠き状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1A’,1B,1’…分岐部保護構造
4…粘着層(保持材)
3a,3b…補強シート部(補強材)
7…分岐部配置部(内部)
8A,8B,8A’’…挿入スリット
10,10A,10A’,10B,10’…分岐部保護部材
100…ワイヤーハーネス
110…幹線
120…枝線
130…分岐部
H…仮想平面