IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図1
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図2
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図3
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図4
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図5
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図6
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図7
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図8
  • 特開-コネクタ及びコネクタ用ゴムシール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105872
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】コネクタ及びコネクタ用ゴムシール
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6581 20110101AFI20230725BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20230725BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01R13/6581
H01R13/52 301F
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006867
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 精一
【テーマコード(参考)】
5E021
5E085
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC21
5E021FC34
5E021LA10
5E021LA14
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085JJ02
5E085JJ13
5E085JJ38
5E087FF08
5E087FF13
5E087LL03
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR03
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】電気信号から高周波領域のノイズを除去することができるとともに、電線にフェライトコアを装着したものよりも組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができるコネクタを提供する。
【解決手段】本願発明に係るコネクタ1は、電線2に取り付けられる端子金具3と、端子金具3を収容するハウジング4と、電線2に外嵌した状態でハウジング4に嵌め込まれるゴムシール5とを備えている。そして、ゴムシール5に磁場の影響下において磁化される軟磁性体部6を設けたものである。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に取り付けられる端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記電線に外嵌した状態で前記ハウジングに嵌め込まれるゴムシールとを備えたコネクタであって、
前記ゴムシールに磁場の影響下において磁化される軟磁性体部を設けた
コネクタ。
【請求項2】
前記軟磁性体部は、
円筒状に形成された軟磁性部材であり、
前記ゴムシールの前記電線を保持する電線保持孔を中心として同軸上に前記軟磁性体部が埋設された
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記軟磁性体部は、
前記ゴムシールの原料に磁性原料を混合して形成されており、
前記ゴムシールの前記電線を保持する電線保持孔を中心として同軸上に前記軟磁性体部が形成された
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ゴムシールに前記ハウジングの電線挿通孔に圧入される円筒部分である圧入部が設けられ、少なくとも前記圧入部の内側に前記軟磁性体部を配置した
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記圧入部の内側における前記軟磁性体部の外周面に凹凸形状が形成された
請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ゴムシールに前記端子金具の電線圧着部が加締められる円筒部分である加締部が設けられ、少なくとも前記加締部の内側に前記軟磁性体部を配置した
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記加締部の内側における前記軟磁性体部の外周面に凹凸形状が形成された
請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記軟磁性体部の内周面が前記電線保持孔の内周面として露出した
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項9】
前記磁性体部は、磁場の影響下において前記電線の長手方向に強く磁化する異方性を有する
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項10】
電線に外嵌した状態でハウジングに嵌め込まれるコネクタ用ゴムシールであって、
磁場の影響下において磁化される軟磁性体部を設けた
コネクタ用ゴムシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタ及びコネクタ用ゴムシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハーネスの接続に用いられるコネクタが知られている。このようなコネクタは、ハウジングの電線挿通孔を通って水滴が内部に浸入しないよう、電線に外嵌した状態でハウジングに嵌め込まれるゴムシールを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、電線を伝達する電気信号に高周波領域のノイズが重畳すると、電気機器が誤作動をおこす可能性がある。そのため、電気信号から高周波領域のノイズを除去すべく、電線を取り囲むようにフェライトコアを装着したものが存在している。しかし、電線の一本一本にフェライトコアを装着するのは、組立作業にかかる工数の増加につながるし、フェライトコアによって外径が大きくなり、また柔軟性が失われるため、配索性が悪化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-207439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、電気信号から高周波領域のノイズを除去することができるとともに、電線にフェライトコアを装着したものよりも組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができるコネクタ及びコネクタ用ゴムシールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、電線に取り付けられる端子金具と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記電線に外嵌した状態で前記ハウジングに嵌め込まれるゴムシールとを備えたコネクタであって、前記ゴムシールに磁場の影響下において磁化される軟磁性体部を設けたことを特徴とする。
また本願発明は、電線に外嵌した状態でハウジングに嵌め込まれるコネクタ用ゴムシールであって、磁場の影響下において磁化される軟磁性体部を設けたことを特徴とする。
【0007】
これらの発明によれば、電気信号から高周波領域のノイズを除去することができるとともに、電線にフェライトコアを装着したものよりも組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができる。
【0008】
詳述すると、本願発明に係るコネクタ及びコネクタ用ゴムシールは、磁場の影響下において磁化される軟磁性体部を有する。そのため、かかる軟磁性体部において、電線を流れる電流の変化に応じて起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能が発揮されることとなる。また、インダクタとしての機能でカバーできない高周波領域の電流の変化に対しては、電流の変化を妨げる抵抗としての機能が発揮されることとなる。したがって、インダクタ成分と抵抗成分の合成インピーダンスが高周波であるほど大きくなるため、電気信号から高周波領域のノイズを除去することができる。さらに、電線にフェライトコアを装着する必要がなくなるため、組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができる。
【0009】
この発明の態様として、前記軟磁性体部は、円筒状に形成された軟磁性部材であり、前記ゴムシールの前記電線を保持する電線保持孔を中心として同軸上に前記軟磁性体部が埋設されてもよい。
【0010】
この発明によれば、ゴムシールによって電線が保持されるとともに、同じくゴムシールによって軟磁性体部が保持される。そのため、ゴムシールに挿通された電線に対して軟磁性体部が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記軟磁性体部は、前記ゴムシールの原料に磁性原料を混合して形成されており、前記ゴムシールの前記電線を保持する電線保持孔を中心として同軸上に前記軟磁性体部が形成されてもよい。
【0012】
この発明によれば、ゴムシールによって電線が保持されるとともに、同じくゴムシールそのものが軟磁性体部として機能する。そのため、ゴムシールに挿通された電線に対して軟磁性体部が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記ゴムシールに前記ハウジングの電線挿通孔に圧入される円筒部分である圧入部が設けられており、少なくとも前記圧入部の内側に前記軟磁性体部を配置してもよい。
この発明によれば、ハウジングの電線挿通孔にゴムシールの圧入部が圧入されると、径内側方向に作用する圧縮荷重が周方向に均等に分布する。そのため、ゴムシールに挿通された電線に対して軟磁性体部が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記圧入部の内側における前記軟磁性体部の外周面に凹凸形状が形成されてもよい。
この発明によれば、軟磁性体部と周囲のゴム部との境界において、接触面積が増加して剥離が生じにくくなるため、軟磁性体部の脱落等の破損を防ぐことできる。また、ハウジングの電線挿通孔にゴムシールの圧入部が圧入されて径内側方向に圧縮荷重が作用しても、凹凸形状にゴム部が押し付けられて軸方向への変形が抑えられるため、電線挿通孔の内周面と圧入部の外周面の密着性が向上して良好な止水性を確保することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記ゴムシールに前記端子金具の電線圧着部が加締められる円筒部分である加締部が設けられており、少なくとも前記加締部の内側に前記軟磁性体部を配置してもよい。
この発明によれば、ゴムシールの加締部に端子金具の電線圧着部が加締められると、径内側方向に作用する圧縮荷重が周方向に均等に分布する。そのため、ゴムシールに挿通された電線に対して軟磁性体部が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記加締部の内側における前記軟磁性体部の外周面に凹凸形状が形成されてもよい。
この発明によれば、軟磁性体部と周囲のゴム部との境界において、接触面積が増加して剥離が生じにくくなるため、軟磁性体部の脱落等の破損を防ぐことできる。また、ゴムシールの加締部に端子金具の電線圧着部が加締められて径内側方向に圧縮荷重が作用しても、凹凸形状にゴム部が押し付けられて軸方向への変形が抑えられるため、加締部の外周面と電線圧着部の内周面の密着性が向上してゴムシールからの端子金具の脱落を防止することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記軟磁性体部の内周面における少なくとも一部が前記電線保持孔の内周面として露出してもよい。
この発明によれば、電線を通過する電流の変化に応じて弱まることなく起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能が確実に発揮されるため、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記磁性体部は、磁場の影響下において前記電線の長手方向に強く磁化する異方性を有してもよい。
この発明によれば、電線を通過する電流の変化に応じて強い起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能が確実に発揮されるため、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、電気信号から高周波領域のノイズを除去することができるとともに、電線にフェライトコアを装着したものよりも組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】コネクタの斜視図。
図2】端子金具の斜視図。
図3】ハウジングの斜視図。
図4】ゴムシールの斜視図。
図5】ゴムシールの側面図。
図6図5におけるA-A矢視断面図。
図7】ハウジングの電線挿通孔に電線に外嵌した状態のゴムシールを圧入した状況を示す部分断面図。
図8図7におけるB-B矢視断面図及びC-C矢視断面図。
図9】他の実施形態に係るゴムシールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
本願においては、全ての図面でコネクタ1の方向を示している。詳しくは、矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Rが右方側を示し、矢印Lが左方側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。加えて、本願においては、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0022】
図1はコネクタ1の斜視図である。図2は端子金具3の斜視図であり、図3はハウジング4の斜視図である。また、図4はゴムシール5の斜視図であり、図5はゴムシール5の側面図であり、図6図5におけるA-A矢視断面図である。さらに、図7はハウジング4の電線挿通孔42hに電線2に外嵌した状態のゴムシール5を圧入した状況を示す部分断面図であり、図8図7におけるB-B矢視断面図及びC-C矢視断面図である。
【0023】
コネクタ1は、電線2の接続に用いられる。図1に示すように、コネクタ1は、端子金具3と、ハウジング4と、ゴムシール5とを備えている。また、ゴムシール5には、軟磁性体部6が埋設されている(図6参照)。以下に、これらの構造について説明し、本願発明が効果を奏する理由について述べる。
【0024】
図2に示すように、端子金具3は、電線2に取り付けられている。より詳しくは、電線2の先端部分に露出した芯線21に取り付けられている。端子金具3は、銅合金等の板材を打ち抜き、所定の形状に折り曲げて形成したものである。端子金具3は、端子本体部31と電線圧着部32を有している。端子本体部31は前後方向Xの前方側F、電線圧着部32は後方側Bに形成されている。但し、端子金具3は、本願に示すものに限定しない。例えばオス形端子であってもよい。
【0025】
端子本体部31は、その断面形状が略矩形状である角筒形に形成されている。端子本体部31は、前端縁における延出部分を内側に折り込んだ弾性接触片311を有している。弾性接触片311は、端子本体部31に挿入される相手側端子(オス形端子)に接触して電気的な接続を可能とする。また、端子本体部31は、その下面における前後方向Xの中央部分に係止穴31hが形成されている。係止穴31hには、後述する端子保持部411の係止爪が引っ掛かることとなる。
【0026】
電線圧着部32は、電線2の芯線21に圧着されるコアバレル部321と、電線2に外嵌されたゴムシール5に圧着されるシースバレル部322とを有している。コアバレル部321は前後方向Xの前方側F、シースバレル部322は後方側Bに形成されている。コアバレル部321は、圧着前の断面形状が上方側Uに開いた略U字状であり、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置された芯線21を加締めることができる。また、シースバレル部322も、圧着前の断面形状が上方側Uに開いた略U字状であり、両側の板片を曲げ込むことで、内側に配置されたゴムシール5のバレル加締部52を加締めることができる。
【0027】
図3に示すように、ハウジング4は、端子金具3を収容するものである。より詳しくは、電線2に取り付けられた端子金具3を所定の位置に所定の姿勢で収容するものである。ハウジング4は、ポリブチレンテレフタラート等の樹脂材を金型内に射出して形成したものである。ハウジング4は、ハウジング嵌合部41とハーネス連絡部42を有している。ハウジング嵌合部41は前後方向Xの前方側F、ハーネス連絡部42は後方側Bに形成されている。但し、ハウジング4は、本願に示すものに限定しない。例えばオス形コネクタであってもよい。
【0028】
ハウジング嵌合部41は、その断面形状が略矩形状である角筒形に形成されている。ハウジング嵌合部41は、その内側に前後方向Xに沿って端子金具3を保持する端子保持部411を有している。端子保持部411には、左右方向Yに3列、上下方向Zに2列のキャビティ41cが互いから所定の間隔を隔てて形成されている。また、ハウジング嵌合部41は、その上面における左右方向Yの中央部分にロックアーム412を有している。ロックアーム412の係止溝には、相手側ハウジング(オス形ハウジング)の係止爪が引っ掛かることとなる。
【0029】
ハーネス連絡部42は、電線2が挿通される複数の電線挿通部421を有している。それぞれの電線挿通部421は、その断面形状が円形状である略円筒形とされており、一つの電線挿通部421に対して一本の電線2が挿通される。そのため、ハーネス連絡部42は、左右方向Yに3列、上下方向Zに2列の電線挿通部421が束ねられた形状とされている。なお、以下においては、電線挿通部421における電線2が挿通される孔を電線挿通孔42hとして説明する。電線挿通孔42hは、前後方向Xに沿ってハウジング4の内部と外部を連通している。
【0030】
図4から図6に示すように、ゴムシール5は、電線2に外嵌した状態でハウジング4に嵌め込まれるものである。より詳しくは、電線2に外嵌した状態で電線挿通部421の電線挿通孔42hに嵌め込まれるものである。ゴムシール5は、シリコーン等の樹脂材を金型内に射出して形成したものである。ゴムシール5は、シール圧入部51とバレル加締部52を有している。シール圧入部51は前後方向Xの後方側B、バレル加締部52は前方側Fに形成されている。なお、ゴムシール5には、軟磁性体部6が埋設されている。軟磁性体部6については後に詳しく説明する。
【0031】
シール圧入部51は、ゴムシール5における前後方向Xの後半部分(後方側Bの部分)に形成された外径が大きい部位を指す。シール圧入部51は、前後方向Xに沿って形成された電線保持孔50hの中心軸Cを中心として電線挿通孔42hの半径とほぼ等しい半径で形成された略円筒形とされている。また、シール圧入部51の外周面には、径外側方向へ突出する二つのシールリップ511,512が形成されている。これらのシールリップ511,512は、電線挿通孔42hに圧入された状態において、径内側方向へ圧縮されることとなる(図7参照)。さらに、シール圧入部51の内周面(電線保持孔50hの内周面)には、径内側方向へ突出する三つのシールリップ513~515が形成されている。これらのシールリップ513~515は、電線2を保持した状態において、径外側方向へ圧縮されることとなる(図7参照)。
【0032】
バレル加締部52は、ゴムシール5における前後方向Xの前半部分に形成された外径が小さい部位を指す。バレル加締部52は、前後方向Xに沿って形成された電線保持孔50hの中心軸Cを中心として電線挿通孔42hの半径よりも小さい半径で形成された略円筒形とされている。また、バレル加締部52の外周面における前端部分には、径外側方向へ突出するフランジ部521が形成されてる。さらに、バレル加締部52の外周面における後端部分にも、径外側方向へ突出するフランジ部522が形成されてる。これらフランジ部521,522は、前述したシースバレル部322の加締め位置を示している。すなわち、フランジ部521とフランジ部522とで挟まれた区間がシースバレル部322の加締め位置であることを示している。そして、加締めたシースバレル部322のズレ止めとしても機能する(図7参照)。
【0033】
ところで、本実施形態に係るゴムシール5には、電線保持孔50hを中心として同軸上に軟磁性体部6が埋設されている。軟磁性体部6は、酸化鉄を主成分としたセラミックス材である、いわゆるNi-Zn系のソフトフェライトであり、電線2を流れる電流の変化に応じて起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとして機能する。また、インダクタとしての機能でカバーできない高周波領域の電流の変化に対しては、電流の変化を妨げる抵抗として機能する。こうして、インダクタ成分と抵抗成分の合成インピーダンスが高周波であるほど大きくなるため、電気信号から高周波領域のノイズを除去することが可能となる。
【0034】
加えて、本実施形態に係るゴムシール5において、軟磁性体部6は、シール圧入部51の内側に埋設されている。軟磁性体部6は、円筒状に形成されているため、シール圧入部51の外周面から軟磁性体部6の外周面までのゴム部の厚さが周方向で一定とされている。したがって、図8の(a)に示すように、ハウジング4の電線挿通孔42hにゴムシール5のシール圧入部51が圧入されると、径内側方向に作用する圧縮荷重F1が周方向に均等に分布する。そのため、電線2に対して軟磁性体部6が偏心してしまうことを防止できる。
【0035】
さらに、本実施形態に係るゴムシール5において、シール圧入部51の内側における軟磁性体部6には、その外周面に凹凸形状61が形成されている。凹凸形状61は、外径が大きい部分である凸部分611と外径が小さい部分である凹部分612とが前後方向Xに向かって交互に形成された形状である。このようにしたのは、軟磁性体部6と周囲のゴム部との接触面積を増加させるためである。また、前述した圧縮荷重F1が作用しても、凸部分611がゴム部に食い込み、同時にゴム部が凹部分612に押し込まれて前後方向Xへの変形が抑えられるからである。
【0036】
加えて、本実施形態に係るゴムシール5において、軟磁性体部6は、シール圧入部51の内側だけでなく、バレル加締部52の内側にも埋設されている。軟磁性体部6は、円筒状に形成されているため、バレル加締部52の外周面から軟磁性体部6の外周面までのゴム部の厚さも周方向で一定とされている。したがって、図8の(b)に示すように、ゴムシール5のバレル加締部52に端子金具3のシースバレル部322が加締められると、径内側方向に作用する圧縮荷重F2が周方向に均等に分布する。そのため、電線2に対して軟磁性体部6が偏心してしまうことを防止できる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るゴムシール5において、バレル加締部52の内側における軟磁性体部6にも、その外周面に凹凸形状61が形成されている。凹凸形状61は、外径が大きい部分である凸部分611と外径が小さい部分である凹部分612とが前後方向Xに向かって交互に形成された形状である。このようにしたのは、軟磁性体部6と周囲のゴム部との接触面積を増加させるためである。また、前述した圧縮荷重F2が作用しても、凸部分611がゴム部に食い込み、同時にゴム部が凹部分612に押し込まれて前後方向Xへの変形が抑えられるからである。
【0038】
さらに加えて、本実施形態に係るゴムシール5において、軟磁性体部6は、その内周面が電線保持孔50hの内周面として露出している。つまり、軟磁性体部6は、その内周面がゴムシール5によって全て覆われているのではなく、内周面の一部が露出している(矢印D参照)。また、軟磁性体部6は、磁場の影響下において前後方向Xに強く磁化する異方性を有している。このようにしたのは、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能を確実に発揮させるためである。
【0039】
以上のように、本願発明に係るコネクタ1は、電線2に取り付けられる端子金具3と、端子金具3を収容するハウジング4と、電線2に外嵌した状態でハウジング4に嵌め込まれるゴムシール5とを備えている。そして、ゴムシール5に磁場の影響下において磁化される軟磁性体部6を設けたものである。
また、本願発明に係るゴムシール5は、磁場の影響下において磁化される軟磁性体部6を設けたものである。
【0040】
このようなコネクタ1及びゴムシール5によれば、電気信号から高周波領域のノイズを除去することができるとともに、電線2にフェライトコアを装着したものよりも組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができる。
【0041】
詳述すると、本願発明に係るコネクタ1及びゴムシール5は、磁場の影響下において磁化される軟磁性体部6を有する。そのため、かかる軟磁性体部6において、電線2を流れる電流の変化に応じて起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能が発揮されることとなる。また、インダクタとしての機能でカバーできない高周波領域の電流の変化に対しては、電流の変化を妨げる抵抗としての機能が発揮されることとなる。したがって、インダクタ成分と抵抗成分の合成インピーダンスが高周波であるほど大きくなるため、電気信号から高周波領域のノイズを除去することができる。さらに、電線2にフェライトコアを装着する必要がなくなるため、組立作業にかかる工数が増加せず、かつ配索性を向上させることができる。
【0042】
また、本願発明に係るコネクタ1において、軟磁性体部6は、円筒状に形成された軟磁性部材であり、ゴムシール5の電線2を保持する電線保持孔50hを中心として同軸上に軟磁性体部6が埋設されている。
【0043】
このようなコネクタ1によれば、ゴムシール5によって電線2が保持されるとともに、同じくゴムシール5によって軟磁性体部6が保持される。そのため、ゴムシール5に挿通された電線2に対して軟磁性体部6が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0044】
また、本願発明に係るコネクタ1においては、ゴムシール5にハウジング4の電線挿通孔42hに圧入される円筒部分であるシール圧入部51が設けられており、少なくともシール圧入部51の内側に軟磁性体部6を配置している。
このようなコネクタ1によれば、ハウジング4の電線挿通孔42hにゴムシール5のシール圧入部51が圧入されると、径内側方向に作用する圧縮荷重F1が周方向に均等に分布する。そのため、ゴムシール5に挿通された電線2に対して軟磁性体部6が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0045】
また、本願発明に係るコネクタ1においては、シール圧入部51の内側における軟磁性体部6の外周面に凹凸形状61が形成されている。
このようなコネクタ1によれば、軟磁性体部6と周囲のゴム部との境界において、接触面積が増加して剥離が生じにくくなるため、軟磁性体部6の脱落等の破損を防ぐことできる。また、ハウジング4の電線挿通孔42hにゴムシール5のシール圧入部51が圧入されて径内側方向に圧縮荷重F1が作用しても、凹凸形状61にゴム部が押し付けられて前後方向Xへの変形が抑えられるため、電線挿通孔42hの内周面とシール圧入部51の外周面の密着性が向上して良好な止水性を確保することができる。
【0046】
また、本願発明に係るコネクタ1においては、ゴムシール5に端子金具3のシースバレル部322が加締められる円筒部分であるバレル加締部52が設けられており、少なくともバレル加締部52の内側に軟磁性体部6を配置している。
このようなコネクタ1によれば、ゴムシール5のバレル加締部52に端子金具3のシースバレル部322が加締められると、径内側方向に作用する圧縮荷重F2が周方向に均等に分布する。そのため、ゴムシール5に挿通された電線2に対して軟磁性体部6が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0047】
また、本願発明に係るコネクタ1においては、バレル加締部52の内側における軟磁性体部6の外周面に凹凸形状61が形成されている。
このようなコネクタ1によれば、軟磁性体部6と周囲のゴム部との境界において、接触面積が増加して剥離が生じにくくなるため、軟磁性体部6の脱落等の破損を防ぐことできる。また、ゴムシール5のバレル加締部52に端子金具3のシースバレル部322が加締められて径内側方向に圧縮荷重F2が作用しても、凹凸形状61にゴム部が押し付けられて前後方向Xへの変形が抑えられるため、バレル加締部52の外周面とシースバレル部322の内周面の密着性が向上してゴムシール5からの端子金具3の脱落を防止することができる。
【0048】
また、本願発明に係るコネクタ1においては、軟磁性体部6の内周面が電線保持孔50hの内周面として露出している。
このようなコネクタ1によれば、電線2を通過する電流の変化に応じて弱まることなく起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能が確実に発揮されるため、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0049】
また、本願発明に係るコネクタ1において、軟磁性体部6は、磁場の影響下において電線2の長手方向(前後方向X)に強く磁化する異方性を有する。
このようなコネクタ1によれば、電線2を通過する電流の変化に応じて強い起電力が発生し、電流の変化を妨げるインダクタとしての機能が確実に発揮されるため、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0050】
本願発明の構成と前述の実施形態との対応において、
コネクタはコネクタ1に対応し、
以下同様に、
電線は電線2に対応し、
端子金具は端子金具3に対応し、
ハウジングはハウジング4に対応し、
ゴムシールはゴムシール5に対応し、
軟磁性体部は軟磁性体部6に対応し、
圧入部はシール圧入部51に対応し、
加締部はバレル加締部52に対応し、
凹凸形状は凹凸形状61に対応し、
電線挿通孔は電線挿通孔42hに対応し、
電線保持孔は電線保持孔50hに対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0051】
本願発明に係るコネクタ1において、軟磁性体部6は、円筒状に形成された軟磁性部材である。しかし、図9に示すように、軟磁性体部6は、ゴムシール5の原料に磁性原料を混合して形成されており、ゴムシール5の電線2を保持する電線保持孔50hを中心として同軸上に軟磁性体部6が形成されてもよい。
【0052】
このようなコネクタ1によれば、ゴムシール5によって電線2が保持されるとともに、同じくゴムシール5そのものが軟磁性体部6として機能する。そのため、ゴムシール5に挿通された電線2に対して軟磁性体部6が偏心せず、より効果的に高周波領域のノイズを除去することができる。
【0053】
加えて、本願発明に係るコネクタ1において、軟磁性体部6は、電線2の一本一本に外嵌されたゴムシール5に埋設又は形成されている。しかし、例えば二つの電線保持孔50hを有し、二本の電線2に外嵌されたゴムシール5に埋設又は形成されてもよい。この場合であっても、ゴムシール5に挿通されたそれぞれの電線2に対して軟磁性体部6を配置する必要がある。つまりは、ゴムシール5に挿通された電線2が複数本であったとしても、それぞれの電線2に対して軟磁性体部6を配置する必要がある。
【符号の説明】
【0054】
1…コネクタ
2…電線
3…端子金具
4…ハウジング
5…ゴムシール
6…軟磁性体部
31…端子本体部
32…電線圧着部
51…シール圧入部
52…バレル加締部
61…凹凸形状
321…コアバレル部
322…シースバレル部
611…凸部分
612…凹部分
42h…電線挿通孔
50h…電線保持孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9