(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023105892
(43)【公開日】2023-08-01
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006905
(22)【出願日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渓太
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA17
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB25
5F131EB54
5F131EB79
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】ガスの十分な流量を確保するとともに、早期の破損を防止すること。
【解決手段】基板固定装置は、厚さ方向に貫通する第1の貫通孔を有するベースプレートと、前記ベースプレートに接着されて前記第1の貫通孔に連通する第2の貫通孔を有し、内蔵する電極に電圧が印加される場合に発生する静電力によって吸着対象物を吸着するセラミック板と、前記第1の貫通孔内の前記第2の貫通孔との接続部分に配置される絶縁プラグと、前記絶縁プラグに取り付けられ、前記接続部分の周囲を封止する封止部材とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する第1の貫通孔を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに接着されて前記第1の貫通孔に連通する第2の貫通孔を有し、内蔵する電極に電圧が印加される場合に発生する静電力によって吸着対象物を吸着するセラミック板と、
前記第1の貫通孔内の前記第2の貫通孔との接続部分に配置される絶縁プラグと、
前記絶縁プラグに取り付けられ、前記接続部分の周囲を封止する封止部材と
を有することを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記封止部材は、
一端面が前記セラミック板の前記ベースプレートとの接着面に当接し、他端面が前記絶縁プラグを押接し、
前記絶縁プラグは、
前記ベースプレートに接着されずに前記第1の貫通孔内に固定される
ことを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記絶縁プラグは、
前記第1の貫通孔の径と略同径の大径部と、
前記大径部に重なり、前記大径部より小径の小径部とを有し、
前記封止部材は、
前記小径部を挿入する貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記大径部は、
前記第1の貫通孔の前記第2の貫通孔と接続する開口部に設けられる座ぐり部の径と略同径の円柱形状を有し、全体が前記座ぐり部に収容される
ことを特徴とする請求項3記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記小径部は、
前記大径部より小径の円柱部を有する
ことを特徴とする請求項4記載の基板固定装置。
【請求項6】
前記小径部は
前記大径部からテーパ状に伸びる円錐台部を有する
ことを特徴とする請求項4記載の基板固定装置。
【請求項7】
前記小径部は、
前記大径部からテーパ状に伸びる円錐台部と、
前記円錐台部に重なる円柱部とを有する
ことを特徴とする請求項4記載の基板固定装置。
【請求項8】
前記小径部は、
前記大径部に重なり、前記大径部より小径の第1の円柱部と、
前記第1の円柱部に重なり、前記第1の円柱部より小径の第2の円柱部とを有する
ことを特徴とする請求項4記載の基板固定装置。
【請求項9】
前記小径部は、
前記大径部に重なり、前記大径部より小径の第1の円柱部と、
前記第1の円柱部に重なり、前記大径部より小径かつ前記第1の円柱部より大径の第2の円柱部とを有する
ことを特徴とする請求項4記載の基板固定装置。
【請求項10】
前記第2の貫通孔内に配置され、ガスが通過する複数の孔を有する多孔体プラグ
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項11】
前記絶縁プラグは、複数の孔を有する多孔体である
ことを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【請求項12】
前記絶縁プラグは、前記第1の貫通孔に連通する貫通孔を有する絶縁性スリーブである
ことを特徴とする請求項1記載の基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置は、静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)とも呼ばれ、電極を内蔵するセラミック板を備える。基板固定装置は、セラミック板がベースプレートに固定された構造を有し、セラミック板に内蔵された電極に電圧を印加することにより、静電力を利用してセラミック板表面にウエハを吸着する。セラミック板にウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
このような基板固定装置においては、セラミック板の表面と吸着対象物であるウエハとの間にヘリウム(He)等の不活性ガスを導入し、ウエハの温度が制御されることがある。すなわち、例えばプラズマ環境下でのドライエッチング、成膜(スパッタリング及びCVD)などの工程においては、処理中にウエハの温度が上昇することがある。そこで、ウエハの温度を一定に保つために、ウエハを吸着するセラミック板表面とウエハの間にHe等の不活性ガスを流入させ、ウエハが不活性ガスに接触することでウエハの温度上昇が抑制される。
【0004】
不活性ガスは、基板固定装置に設けられるガス穴から導入される。
図11は、基板固定装置のガス穴周辺の構造を示す断面図である。
図11に示すように、基板固定装置は、ベースプレート10にセラミック板20が接着材30によって接着されて構成される。ベースプレート10及びセラミック板20には、連通するガス穴THが形成されており、不活性ガスは、ベースプレート10側からガス穴THを通過してセラミック板20の表面へ放出される。
【0005】
ベースプレート10のガス穴THは、セラミック板20との接合部付近において大径となっており、この大径部分の内壁面に接着材50によって絶縁プラグ40が接着されている。絶縁プラグ40は例えば多孔体であり、不活性ガスは、絶縁プラグ40が有する多数の孔を通過して、セラミック板20のガス穴THへ流入する。絶縁プラグ40が配置されることにより、ベースプレート10のガス穴THの内壁面が絶縁され、例えばプラズマからベースプレート10への異常放電を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-195346号公報
【特許文献2】特開2020-145281号公報
【特許文献3】国際公開第2016/132909号
【特許文献4】特開2021-044303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように構成された基板固定装置においては、ベースプレートとセラミック板を接着する接着材がガス穴へ流入し、ガス穴の詰まりや狭窄が発生するという問題がある。すなわち、例えば
図11に示した基板固定装置においては、ベースプレート10とセラミック板20を接着する際に、半硬化状態の接着材30がガス穴THへ流入し、ガス穴THが完全に詰まってしまったり、狭窄が生じたりする。また、多孔体である絶縁プラグ40の孔の詰まりが発生することもある。この結果、ガス穴THにおける不活性ガスの流量が低下し、セラミック板20の表面に吸着されたウエハの温度制御が十分に行われないことがある。
【0008】
また、基板固定装置がプラズマ環境下で使用される場合には、プラズマがガス穴THへ流入し、ベースプレート10とセラミック板20を接着する接着材30がダメージを受けて劣化するという問題もある。接着材30が劣化するとベースプレート10とセラミック板20が剥離し、基板固定装置が早期に破損する恐れがある。
【0009】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、ガスの十分な流量を確保するとともに、早期の破損を防止することができる基板固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願が開示する基板固定装置は、1つの態様において、厚さ方向に貫通する第1の貫通孔を有するベースプレートと、前記ベースプレートに接着されて前記第1の貫通孔に連通する第2の貫通孔を有し、内蔵する電極に電圧が印加される場合に発生する静電力によって吸着対象物を吸着するセラミック板と、前記第1の貫通孔内の前記第2の貫通孔との接続部分に配置される絶縁プラグと、前記絶縁プラグに取り付けられ、前記接続部分の周囲を封止する封止部材とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本願が開示する基板固定装置の1つの態様によれば、ガスの十分な流量を確保するとともに、早期の破損を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係る基板固定装置の断面を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、絶縁プラグ及び封止部材の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、基板固定装置の第1の変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、基板固定装置の第2の変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、基板固定装置の第3の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、基板固定装置の第4の変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、基板固定装置の第5の変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、基板固定装置の第6の変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、基板固定装置のガス穴周辺の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願が開示する基板固定装置の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、一実施の形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。
図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110にセラミック板120が接着された構造を有する。
【0015】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、セラミック板120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0016】
セラミック板120は、導電性の電極を内蔵し、電極に電圧が印加される場合に発生する静電力を利用して例えばウエハなどの吸着対象物を吸着する。また、セラミック板120は、吸着対象物を吸着する表面に図示しないガス穴の開口部を有し、開口部から放出される例えばヘリウム(He)等の不活性ガスによって吸着対象物の温度を制御する。セラミック板120の径は、ベースプレート110の径よりも小さく、ベースプレート110の中央に固定される。このとき、セラミック板120は、例えばシリコーン樹脂等からなる接着材によってベースプレート110に接着される。
【0017】
図2は、
図1のI-I線断面を示す模式図である。
図2に示すように、基板固定装置100は、ベースプレート110とセラミック板120とが接着材130によって接着されて構成される。
【0018】
ベースプレート110は、例えば厚さ20~50mm程度の金属製の円形部材である。ベースプレート110の内部には、冷却水の流路となる冷却水路111と、不活性ガスの流路となる貫通孔112とが形成されている。
【0019】
冷却水路111は、ベースプレート110の内部を循環する流路であり、基板固定装置100の外部から冷却水路111へ流入する冷却水によって、セラミック板120を冷却する。セラミック板120が冷却される結果、セラミック板120の表面に吸着される例えばウエハなどの吸着対象物が冷却される。なお、ベースプレート110は、冷却水路111の代わりに、冷却ガスの流路となる冷却ガス路を有していても良い。また、ベースプレート110は、冷却水路111の代わりに、保温媒体の流路を有していても良い。要するに、ベースプレート110は、セラミック板120及び吸着対象物の温度調整をするための媒体の通路を有している。
【0020】
貫通孔112は、ベースプレート110を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、基板固定装置100の外部から貫通孔112へ流入するHe等の不活性ガスをセラミック板120の貫通孔122へ送出する。貫通孔112は、セラミック板120側の開口部付近に、径が大きくなる座ぐり部を有し、座ぐり部には絶縁プラグが配置される。貫通孔112の座ぐり部付近の図中Aの構造については、後に詳述する。
【0021】
セラミック板120は、例えば厚さ4~6mmのセラミックからなる円形板である。セラミック板120は、例えば酸化アルミニウムを用いて作製されたグリーンシートを焼成することにより得られる。セラミック板120の内部には、導電性の電極121と、不活性ガスの流路となる貫通孔122とが形成されている。
【0022】
電極121は、セラミック板120の内部に配置され、電圧が印加されることによって静電力を発生させる。この静電力により、セラミック板120は、表面に例えばウエハなどの吸着対象物を吸着する。
【0023】
貫通孔122は、セラミック板120を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、ベースプレート110の貫通孔112と連通する。すなわち、貫通孔122は、ベースプレート110の貫通孔112から送出される不活性ガスをセラミック板120の表面の開口部から放出する。これにより、セラミック板120の表面に吸着される吸着対象物が不活性ガスに接触し、吸着対象物を冷却することができる。
【0024】
接着材130は、例えばシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂などからなり、ベースプレート110とセラミック板120とを接着する。後述するように、絶縁プラグの周囲に配置される封止部材によって貫通孔112と貫通孔122の接続部分が封止されているため、接着材130は、貫通孔112又は貫通孔122へ進入することがない。
【0025】
図3は、
図2のAを拡大して示す拡大図である。すなわち、
図3は、ベースプレート110の貫通孔112とセラミック板120の貫通孔122との接続部分を拡大して示す。
【0026】
図3に示すように、ベースプレート110の貫通孔112は、セラミック板120の貫通孔122との接続部分において大径となっており、座ぐり部が形成されている。そして、座ぐり部に絶縁プラグ140が配置され、絶縁プラグ140の上面の周縁部には、封止部材150が上方から押接している。なお、ここでは、ベースプレート110に対してセラミック板120が位置する方向を上方向として説明するが、基板固定装置100は、例えば上下反転するなど任意の姿勢で製造・使用されて良い。
【0027】
絶縁プラグ140は、例えばセラミックからなる多孔体であり、貫通孔112へ流入する不活性ガスに多数の孔を通過させ、セラミック板120の貫通孔122へ送出する。絶縁プラグ140は、下側部分が座ぐり部の径と略同径の円柱形状を有し、上側部分が座ぐり部の径よりも小径の円柱形状を有する。つまり、絶縁プラグ140は、径が異なる2段の円柱を重ねた形状を有し、段差部分に封止部材150が押接している。絶縁プラグ140は、封止部材150によってベースプレート110方向へ押圧されているため、絶縁プラグ140が座ぐり部の内周面112aに接着されることはない。すなわち、絶縁プラグ140は、ベースプレート110に接着されることなく、封止部材150からの圧力によって座ぐり部に固定されている。
【0028】
封止部材150は、例えばシリコーン樹脂、フッ素系樹脂、エラストマー樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂又は液晶ポリマなどからなる円環状の部材であり、貫通孔112と貫通孔122の接続部分の周囲を封止する。具体的には、封止部材150は、絶縁プラグ140の上面の周縁部に取り付けられ、上端面がセラミック板120の下面に当接し、下端面が絶縁プラグ140の上面の周縁部を押接する。封止部材150は、接着材130がベースプレート110とセラミック板120を接着する接着力によって、絶縁プラグ140を下方向へ押圧するため、絶縁プラグ140を接着することなく座ぐり部に固定することができる。
【0029】
封止部材150の材料としては、上述した各種樹脂のようにシール性、耐熱性及び耐プラズマ性に優れたものを用いるのが望ましい。例えばシリコーン樹脂及びエラストマー樹脂はシール性に優れているため、シリコーン樹脂又はエラストマー樹脂を用いて封止部材150を形成する場合には、シール性を向上することができる。また、例えばフッ素系樹脂は耐プラズマ性に優れているため、フッ素系樹脂を用いて封止部材150を形成する場合には、プラズマによる封止部材150の劣化を抑制することができる。また、例えばポリイミド樹脂は耐熱性に優れているため、ポリイミド樹脂を用いて封止部材150を形成する場合には、例えば吸着対象物を保温するためのヒータによって封止部材150が加熱されても変形や損傷を抑制することができる。
【0030】
図4は、絶縁プラグ140及び封止部材150の具体例を示す分解図である。
図4に示すように、絶縁プラグ140は、座ぐり部の径と略同径の円柱形状を有する大径部141と、座ぐり部の径よりも小径の円柱形状を有する小径部142とを重ねた形状である。絶縁プラグ140を形成する2段の円柱形状の径の違いにより、大径部141の上面141aが露出して段差部分が形成されている。
【0031】
一方、封止部材150は、中央に貫通孔151を有する円環状の部材であり、貫通孔151内に絶縁プラグ140の小径部142を挿入することにより、絶縁プラグ140に取り付けられる。すなわち、封止部材150の下端面が大径部141の上面141aに当接し、この状態で絶縁プラグ140が座ぐり部に嵌合すると、封止部材150の上端面がセラミック板120の下面に当接する。
【0032】
絶縁プラグ140の大径部141の高さh1は、貫通孔112の座ぐり部の深さよりも小さいため、大径部141の上面141aは、ベースプレート110の上面よりも低い位置にある。すなわち、大径部141は、貫通孔112の座ぐり部に完全に収容される。また、絶縁プラグ140の小径部142の高さh2は、例えば0.2~数mm程度であり、接着材130の厚さよりも大きい。このため、小径部142の下端は、ベースプレート110の上面よりも低い位置に到達し、大径部141の上面141aと同じ高さに位置する。そして、封止部材150の高さh3は、小径部142の高さh2以上の大きさであり、封止部材150が大径部141の上面141aに載置された状態で、小径部142が貫通孔151から突出しないようになっている。
【0033】
絶縁プラグ140の大径部141と小径部142の径の違いによる段差部分の幅d1は、例えば0.1~数mm程度である。また、封止部材150の貫通孔151を除く円環の幅d2は、段差部分の幅d1以上の大きさであり、封止部材150が大径部141の上面141aに載置された状態で、上面141aが露出せずに被覆される。このとき、小径部142の側面は、封止部材150の貫通孔151の内周面によって必ずしも完全に被覆されなくても良い。すなわち、貫通孔151の内周面が例えば凸曲面形状を有し小径部142の側面の中央部のみを被覆しても良いし、貫通孔151の内周面が例えば凹曲面形状を有し小径部142の側面の上下端部のみを被覆しても良い。
【0034】
このように、小径部142の周囲を囲む封止部材150が大径部141の上面141aを被覆するため、絶縁プラグ140が貫通孔112の座ぐり部に嵌合されると、大径部141の上面141aとセラミック板120の下面との間の空間が封止部材150によって充填される。すなわち、封止部材150の上端面がセラミック板120の下面に当接し、下端面が大径部141の上面141aを押接する。このため、絶縁プラグ140をベースプレート110に接着しなくても、封止部材150からの圧力によって絶縁プラグ140を座ぐり部に固定することができる。
【0035】
また、貫通孔112と貫通孔122の接続部分の周囲が封止され、結果として、接着材130が貫通孔112及び貫通孔122へ進入することがなく、不活性ガスの流路である貫通孔112及び貫通孔122の詰まり及び狭窄を防止することができる。同様に、接着材130が絶縁プラグ140に接触することがなく、多孔体である絶縁プラグ140の孔への接着材130の流入を防止することができる。さらに、セラミック板120の貫通孔122へプラズマが流入しても、プラズマが接着材130に接触することがなく、接着材130の劣化を抑制することができる。したがって、ベースプレート110とセラミック板120の剥離を防止することができる。
【0036】
以上のように、本実施の形態によれば、不活性ガスの流路であるベースプレート及びセラミック板の貫通孔の接続部分に、大径部と小径部を有する絶縁プラグを配置し、小径部を囲む封止部材を配置することで、貫通孔の接続部分の周囲を封止する。このため、絶縁プラグを封止部材によって押圧し、接着することなくベースプレートに固定することができる。また、ベースプレートとセラミック板を接着する接着材が不活性ガスの流路に進入することがなく、流路の詰まり及び狭窄を防止して、ガスの十分な流量を確保することができる。さらに、外部から不活性ガスの流路に流入するプラズマが接着材に接触することがなく、接着材の劣化を抑制して、基板固定装置の早期の破損を防止することができる。
【0037】
なお、上記一実施の形態において説明した絶縁プラグ140及び封止部材150の形状は、種々変更することが可能である。以下、基板固定装置100の変形例について、具体的に説明する。
【0038】
図5は、基板固定装置100の第1の変形例を示す図である。
図5において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0039】
図5に示す変形例では、絶縁プラグ140の小径部142が円錐台形状を有する。このため、封止部材150の下端面は、小径部142の側面に応じた斜面になっている。このようにすることにより、絶縁プラグ140をテーパ加工のみで形成することができ、加工コストを低減することができるとともに、封止部材150から絶縁プラグ140かかる圧力による絶縁プラグ140の破損を防止することができる。
【0040】
図6は、基板固定装置100の第2の変形例を示す図である。
図6において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0041】
図6に示す変形例では、絶縁プラグ140の大径部141と小径部142が円錐台を介して重なっている。このため、封止部材150の下端面は、円錐台の側面に応じた斜面になっている。このようにすることにより、
図5に示した第1の変形例と比較して、絶縁プラグ140を封止部材150により確実に固定することができる。
【0042】
図7は、基板固定装置100の第3の変形例を示す図である。
図7において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0043】
図7に示す変形例では、絶縁プラグ140の小径部142が、径が異なる2段の円柱形状を有する。すなわち、小径部142は、大径部141の上方に重なり大径部141より径が小さい第1の小径円柱と、第1の小径円柱の上方に重なり第1の小径円柱より径が小さい第2の小径円柱とを有する。このため、封止部材150の下端面は、小径部142の段差に応じて段差を有している。このようにすることにより、封止部材150によるシール性を向上することができる。
【0044】
図8は、基板固定装置100の第4の変形例を示す図である。
図8において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0045】
図8に示す変形例では、絶縁プラグ140の小径部142が、径が異なる2段の円柱形状を有する。すなわち、小径部142は、大径部141の上方に重なり大径部141より径が小さい第1の小径円柱と、第1の小径円柱の上方に重なり大径部141より径が小さく第1の小径円柱より径が大きい第2の小径円柱とを有する。このため、封止部材150の上端面は、小径部142の段差に応じて段差を有している。このようにすることにより、封止部材150によるシール性を向上することができる。
【0046】
図9は、基板固定装置100の第5の変形例を示す図である。
図9において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0047】
図9に示す変形例では、セラミック板120の貫通孔122に多孔体プラグ122aが配置される。多孔体プラグ122aは、絶縁プラグ140と同様に、例えばセラミックからなる多孔体である。このように、貫通孔122に多孔体プラグ122aが配置される場合でも、封止部材150によって貫通孔112と貫通孔122の接続部分の周囲が封止されるため、接着材130が多孔体プラグ122aに接触することがなく、多孔体プラグ122aの孔への接着材130の流入を防止することができる。
【0048】
図10は、基板固定装置100の第6の変形例を示す図である。
図10において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0049】
図10に示す変形例では、基板固定装置100は、多孔体の絶縁プラグ140に代えてスリーブ型の絶縁プラグ160を有する。絶縁プラグ160は、ベースプレート110の貫通孔112と連通する貫通孔161を有する絶縁性のスリーブである。ベースプレート110の貫通孔112へ流入する不活性ガスは、絶縁プラグ160の貫通孔161を通過してセラミック板120の貫通孔122へ流れる。このように、多孔体の絶縁プラグ140の代わりに絶縁性スリーブの絶縁プラグ160が貫通孔112と貫通孔122の接続部分に配置される場合も、封止部材150によって、ガスの流路への接着材130の流入を防止することができる。絶縁性スリーブは、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム又は窒化アルミニウム等を材料とするセラミックを用いて形成することができる。また、絶縁性スリーブは、例えばポリイミド、フッ素系樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)又はポリカーボネイト等の樹脂材料を用いて形成しても良い。
【0050】
なお、上記一実施の形態及び各変形例は、種々組み合わせて実施することが可能である。例えば第5の変形例と第6の変形例を組み合わせて、ベースプレート110の貫通孔112に絶縁性スリーブの絶縁プラグ160を配置し、セラミック板120の貫通孔122に多孔体プラグ122aを配置するようにしても良い。また、第5の変形例の多孔体プラグ122aを絶縁プラグ160と同様の絶縁性スリーブに置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
110 ベースプレート
111 冷却水路
112、122、151、161 貫通孔
120 セラミック板
121 電極
122a 多孔体プラグ
130 接着材
140、160 絶縁プラグ
141 大径部
142 小径部
150 封止部材